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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】鋼管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20221220BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20221220BHJP
   B23K 13/00 20060101ALI20221220BHJP
   B21C 37/08 20060101ALI20221220BHJP
   C21D 9/08 20060101ALN20221220BHJP
   C21D 9/50 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/38
B23K13/00 A
B21C37/08 A
C21D9/08 F
C21D9/50 101A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018212955
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079434
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】秋月 誠
(72)【発明者】
【氏名】三町 翔平
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-234348(JP,A)
【文献】特開平11-197850(JP,A)
【文献】特開平03-068740(JP,A)
【文献】特開2008-208417(JP,A)
【文献】特開2009-197327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
B23K 13/00
B21C 37/08
C21D 9/08
C21D 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.4質量%以上1.5質量%以下、P:0.03質量%以下、Cu:0.3質量%以下、Si:2.0質量%以下、Mn:0.1質量%以上2.0質量%以下、S:0.02質量%以下、Al:0.2質量%以下、およびCr:5.0質量%以下を含む、鋼板または鋼帯の端部同士が溶接された鋼管の製造方法であって、
上記鋼板または鋼帯を曲げて、上記端部の角を押し潰し、上記鋼板または鋼帯の板幅方向における、押し潰された部分に対応する長さを、上記鋼板または鋼帯の板厚に対し5%以上40%以下とした上記端部同士を接触させる工程と、
加熱によって上記端部が溶融することで形成されるボンド部の幅が、上記鋼板または鋼帯の板厚に対し0.2%以上1.2%以下となるように、上記端部同士を加熱し、上記板厚に対し20%以上30%以下の押し潰し量となるように互いに押圧した状態で、1200℃以上1700℃以下の温度で溶接する工程と、を含むことを特徴とする鋼管の製造方法。
【請求項2】
上記鋼管における上記Cの含有量は、0.6質量%以上1.2質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管の製造方法
【請求項3】
o:0.5質量%以下の条件をさらに満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管の製造方法
【請求項4】
Ti:0.3質量%以下、Nb:0.5質量%以下、V:1.5質量%以下、およびB:0.01質量%以下のうち少なくとも1つの条件をさらに満たすことを特徴とする請求項に記載の鋼管の製造方法
【請求項5】
上記溶接は、高周波溶接であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の鋼管の製造方法
【請求項6】
記鋼板または鋼帯の上面または下面を含む平面と、上記押し潰しによって形成された面とがなす角度のうち小さい方の角度20度以上60度以下となるように、上記端部の角を押し潰すことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の鋼管の製造方法
【請求項7】
上記鋼管が、丸管、角管、または異形管であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の鋼管の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管、軸受用鋼管、および鋼管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接鋼管は、一般的に、鋼板または鋼帯などを溶接することで製造される。例えば、特許文献1には、炭素量が0.15質量%以上0.4質量%以下である低炭素鋼板を高周波溶接した後、電縫溶接部のボンド幅が25μm以下となるよう縮径圧延により機械的に狭くした、溶接鋼管の一種である電縫溶接鋼管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-147751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高炭素鋼管において、溶接部の加工性を向上させるために焼鈍処理が施される。特許文献1には、低炭素鋼管における溶接部のボンド幅を狭くすることで、溶接部の強度低下を防ぐことが開示されている。しかしながら、高炭素鋼管における溶接部のボンド幅が、当該溶接部の加工性を向上するための焼鈍時間に与える影響については開示されていない。
【0005】
本発明の一態様は、溶接部の焼鈍時間を短縮することができる高炭素鋼管を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、C:0.4質量%以上1.5質量%以下、P:0.03質量%以下、およびCu:0.3質量%以下を含む鋼板または鋼帯の端部を溶接することにより形成され、上記端部同士は、1200℃以上1700℃以下の溶接温度で溶接されており、加熱によって上記端部が溶融することで形成されるボンド部の幅は、上記鋼板または鋼帯の板厚に対し0.2%以上1.2%以下であることを特徴とする。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、上記鋼管における上記Cの含有量は、0.6質量%以上1.2質量%以下であってもよい。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、Si:2.0質量%以下、Mn:0.1質量%以上2.0質量%以下、S:0.02質量%以下、およびAl:0.2質量%以下のうちの少なくとも1つの条件をさらに満たしていてもよい。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、Cr:5.0質量%以下およびMo:0.5質量%以下のうち少なくとも1つの条件をさらに満たしていてもよい。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、Ti:0.3質量%以下、Nb:0.5質量%以下、V:1.5質量%以下、およびB:0.01質量%以下のうち少なくとも1つの条件をさらに満たしていてもよい。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、上記溶接は、高周波溶接であってもよい。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、上記端部同士が加熱され、上記板厚に対し20%以上30%以下の押し潰し量となるように互いに押圧されることで形成されてもよい。
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、上記端部は、角が押し潰されており、上記鋼板または鋼帯の板幅方向における、押し潰された部分に対応する長さは、上記板厚に対し5%以上40%以下であり、上記鋼板または鋼帯の上面または下面を含む平面と、上記押し潰しによって形成された面とがなす角度のうちの小さい方の角度は、20度以上60度以下であってもよい。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管は、丸管、角管、または異形管であってもよい。
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る軸受用鋼管は、上記の何れかに記載の鋼管を含むことを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼管の製造方法は、C:0.4質量%以上1.5質量%以下、P:0.03質量%以下、およびCu:0.3質量%以下を含む、鋼板または鋼帯の端部同士が溶接された鋼管の製造方法であって、上記鋼板または鋼帯を曲げて上記端部同士を接触させる工程と、加熱によって上記端部が溶融することで形成されるボンド部の幅が、上記鋼板または鋼帯の板厚に対し0.2%以上1.2%以下となるように、上記端部同士を互いに押圧した状態で、1200℃以上1700℃以下の温度で溶接する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、溶接部の焼鈍時間を短縮することができる高炭素鋼管を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る鋼管の溶接部を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る鋼管の溶接部を示す写真を表す図である。
図3】(a)~(d)はそれぞれ、鋼管1の断面形状を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る鋼管のクラッシング幅およびクラッシング角度を示す模式図である。
図5】(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係る鋼管のアプセット量を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1および図2を参照して詳細に説明する。以下では、本発明における溶接方法の一例として電縫溶接を挙げて説明するが、本発明における溶接方法は、電縫溶接に限定されず、鋼管のシーム部を加熱することにより溶接接合する方法であればよい。
【0020】
<鋼管1>
図1は、本実施形態に係る鋼管1の溶接部3を示す模式図である。鋼管1は、C:0.4質量%以上1.5質量%以下、P:0.03質量%以下、およびCu:0.3質量%以下を含む鋼板または鋼帯の端部を溶接することにより形成されている。上記端部同士は、1200℃以上1700℃以下の溶接温度で溶接されており、加熱によって上記端部が溶融することで形成されるボンド部4の幅は、上記鋼板または鋼帯の板厚に対し0.2%以上1.2%以下である。
【0021】
図1に示すように、溶接部3は、鋼帯2が溶接されている部分であり、例えば、溶接ビード部である。なお、鋼帯2は鋼板であってもよい。
【0022】
溶接部3には、ボンド部4および熱影響部5が形成される。ボンド部4は、溶接部3において、2つの熱影響部5の間に形成される。電縫溶接時において、電縫溶接部は固液共存域まで加熱される。これにより、電縫溶接部外に含まれるCは液相では濃化し、固相では減少する。Cが濃化された上記液相は、鋼帯2の端部同士の押圧(アプセット)により電縫溶接部の外側に排出され、ビードを形成する。一方、Cが減少した上記固相は溶接部3に残存し、当該固相によってボンド部4が形成される。また、熱影響部5は、電縫溶接時の熱によって、上記端部における金属組織が変化した領域であって、ボンド部4以外の領域である。
【0023】
溶接部3は、加工性を向上させるために、後述する球状化焼鈍処理が施されることが好ましい。溶接部3において、熱影響部5は、溶接時の加熱によって、未溶解炭化物およびマルテンサイトが混在した組織となる。一方、ボンド部4は、溶接時の加熱によって熱影響部5よりも高温となるため、上記未溶解炭化物が含まれないマルテンサイトのみの組織となる。したがって、溶接部3に球状化焼鈍を施した場合、熱影響部5は上記未溶解炭化物を核として炭化物が成長することから短時間で球状化焼鈍が終了するが、ボンド部4は上記未溶解炭化物が含まれない。そのため、ボンド部4では、まずボンド部4内部に炭化物が析出した後に、当該炭化物が成長する。
【0024】
その結果、ボンド部4は熱影響部5よりも長時間の球状化焼鈍が施される必要がある。また、ボンド部4の幅が広いほど、更に長時間の球状化焼鈍が施される必要がある。すなわち、ボンド部4の幅を狭くすることで、溶接部3への球状化焼鈍に必要な時間を短くすることができる。
【0025】
図2は、鋼管1の溶接部3を示す写真を表す図である。図2に示すように、鋼管1は、ボンド部4の幅が、鋼帯2の板厚に対し0.2%以上1.2%以下となるように形成される。このようなボンド部4の幅を実現するには、溶接温度が1200℃以上1700℃以下であることが好ましい。このように、ボンド部4の幅が前記板厚に対し1.2%以下であれば、溶接後の球状化焼鈍時間は、比較的短時間にすることができる。また、ボンド部4の幅が0(ゼロ)であった場合、溶接が適切に行われたか判断できなくなるため、ボンド部4の幅は、前記板厚に対し0.2%以上であることが好ましい。
【0026】
また、鋼管1は、上述のように特定の成分を特定の量だけ含むことにより、転動疲労寿命にも優れる。ここで、「転動疲労寿命」とは、鋼管1を用いた軸受が転がり運動することによって、鋼管1の母材および溶接部3において表面剥離が発生するまでの期間のことをいう。
【0027】
また、「転動疲労寿命に優れる」とは、上記期間が、従来から高炭素鋼管として多用されるシームレス鋼管と同等に長いことをいう。転動疲労寿命は、例えば、溶接された鋼管を切り開いて板状に加工した後に、スラスト型転動疲労試験により母材および溶接部3において表面剥離が発生するまでの期間を測定することによって求めることができる。
【0028】
また、鋼管1に硫化物および酸素などの非金属介在物が含まれていてもよい。ただし、非金属介在物のうち、硫化物、なかでもMnSが鋼管表面に凝集および析出することで、非金属介在物を起点とする割れおよび表面傷の原因となり、結果的に転動疲労寿命を低減する虞がある。
【0029】
また、転がり軸受の転動体と接触する表面部に、MnSなどの硫化物が存在する場合は、その部分の大幅な旋削加工が必要となり、製造コストが増加する虞がある。そのため、硫化物などの非金属介在物の粒径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。鋼管1における非金属介在物の粒径が上述の好ましい範囲のように小さいことで、特に当該非金属介在物が硫化物である場合には、転動疲労寿命の低減および製造コストの増加を防止することができる。
【0030】
また、鋼管1が非金属介在物として酸素を含む場合、鋼管1における酸素の含有量は20ppm以下であることが好ましく、15ppm以下であることがより好ましい。鋼管1における酸素の含有量が上述の好ましい範囲であることで、より清浄度の高い鋼管1を得ることができる。その結果、転動疲労寿命により優れた鋼管1を得ることができる。
【0031】
鋼管1の直径は、直径15mm以上300mm以下であることが好ましい。また、鋼管1を形成するために用いられる鋼板または鋼帯の厚さは、2mm以上10mm以下であることが好ましい。鋼管1の直径および上記鋼板または鋼帯の厚さが上述の好ましい範囲であることにより、特殊な製造条件を必要とせずに鋼管1を製造することができる。
【0032】
図3の(a)~(d)はそれぞれ、鋼管1の断面形状を示す断面図である。図3の(a)に示すように、鋼管1は、鋼管1の延伸方向に垂直な断面の断面形状が略円形である丸管であってもよい。また、図3の(b)に示すように、鋼管1は、上記断面形状が略矩形である角管であってもよい。また、上記断面形状が略円形・略矩形以外である異形管であってもよい。なお、上記異形管の上記断面形状として、例えば、図3の(c)に示すような半円形、または図3の(d)に示すような鼓形等が挙げられる。
【0033】
〔鋼帯2〕
鋼帯2は、鋼管1の素形材として好適に用いられる。鋼帯2は、ロール成形を施されることで管状に形成され、溶接、焼入処理、焼戻処理および球状化焼鈍を施されることで、鋼管1となる。
【0034】
ここで、溶接部3が存在しない鋼管であるシームレス鋼管は、母材である棒鋼の中心偏析の影響により、鋼管外面側と内面側とで非金属介在物の量および大きさに差異が生じる。外面側の非金属介在物は微細かつ微量であるが、内面側では非金属介在物は多量に存在するとともに内表面に露出している。
【0035】
そのため、シームレス鋼管を軸受に用いた場合、転がり軸受の外輪はシームレス鋼管の内表面を使用することとなるが、内表面に多量に存在する非金属介在物は転動疲労寿命に大きな影響を及ぼす。このことから、転動疲労寿命を長くするには、転動体と接触する部分を大幅に旋削加工する必要があり、加工コストが高くなる。
【0036】
これに対し、鋼管1、すなわち、鋼帯2が溶接された電縫鋼管などの溶接鋼管は、シームレス鋼管と異なり、非金属介在物の多くが鋼帯の内部に存在し、表裏面にほとんど存在しない。そのため、素形材として鋼帯を用いた溶接鋼管は、シームレス鋼管に比べて、内面側における清浄度が高く、鋼管における内面と外面との清浄度の差を小さくすることができる。
【0037】
以上のことから、鋼管1は、内面側の清浄度が高いため、部品形状に加工する際の切削量を低減しながら、シームレス鋼管と同程度の優れた転動疲労寿命を得ることができる。
【0038】
また、鋼管1は、鋼帯2を溶接することで得られるため、棒材を穿孔して鋼管を製造する場合に比べて、鋼管を容易に大量生産することができる。
【0039】
なお、鋼帯2とは、鋼板のなかでも、例えば、厚さ10mm以下のコイル状のものをいう。本実施形態では、鋼帯2および鋼板のいずれも本実施形態の素形材として使用できるが、鋼帯2を用いて鋼管1を製造することが好ましい。鋼板よりも薄く、後述するロール成形性に優れる鋼帯2を用いることで、生産性が向上する。これにより、鋼管1をより効率的に製造することができる。なお、鋼帯2は、例えば鋼を熱間圧延することによって得ることができる。
【0040】
(ロール成形)
本実施形態におけるロール成形では、ローラーの間に鋼帯2を通すことで鋼帯2を管状に成形加工する。ここで、上記鋼板よりも鋼帯2を素形材として用いたほうがロール成形しやすくなるため、ロール成形前に鋼に熱間圧延などを施すことでコイル状の鋼帯2にすることが好ましい。また、鋼帯2をロール成形する前に、酸で洗浄したり、600℃以上800℃以下、1時間以上50時間以下の条件で焼鈍したりしてもよい。これによって、よりロール成形しやすくなる。
【0041】
(クラッシング)
上記ロール成形によって管状に成形加工された鋼帯2の端部同士は、溶接部3の形状および強度を調節するために、上記端部における管の内側に位置する角の部分がクラッシングロールによって押し潰される(以下、「クラッシング」)。クラッシングの幅および角度を適切に設定することにより、後述する突き合わせ溶接において、強度低下の少ない健全な溶接部3を得ることができる。
【0042】
図4は、本実施形態に係る鋼管1のクラッシング幅Cおよびクラッシング角度θを示す模式図である。図4に示すように、上記クラッシングの幅(クラッシング幅C)は、鋼帯2の板厚に対し5%以上40%以下の幅となることが好ましい。なお、クラッシング幅Cとは、鋼管1の長手方向に沿う方向を鋼帯2の長手方向としたときの、鋼帯2の板幅方向における、鋼帯2の角部が押し潰された部分に対応する長さを意味する。
【0043】
クラッシング角度θは、鋼帯2の下面2A(または上面)を含む平面と、クラッシングによって形成された面2Bとがなす角度のうちの小さい方の角度を意味する。クラッシング角度θは、20度以上60度以内であることが好ましく、45度が最も好ましい。
【0044】
クラッシング幅Cが小さい場合、またはクラッシング角度θが小さい場合、溶接時に生じる溶融金属が、鋼帯2の溶接される端部同士の境界部分から排出される量(溶融メタル排出量)が少なくなるため、ボンド部4において幅が広い部分が形成されてしまい、当該幅が広い部分において長時間の焼鈍処理が必要となる。また、クラッシング幅Cが広い場合、またはクラッシング角度θが大きい場合、鋼帯2の溶接される端部の面積が少なくなるため、溶接部3の強度が低下する。
【0045】
一方、クラッシング幅Cが上記板厚に対し5%以上40%以下の幅である場合、上記溶接部3の温度に斑が生じず、形成されるボンド部4の幅を一定にすることができる。そのため、ボンド部4の一部が広いことによる、長時間の焼鈍処理が必要ない。
【0046】
(溶接)
本実施形態における溶接では、上記クラッシングが施された鋼帯2の端部同士を突き合わせ溶接する。これにより、鋼管1が得られる。
【0047】
図5の(a)および(b)は、本実施形態に係る鋼管1のアプセット量を示す模式図である。上記突き合わせ溶接において、上記端部同士は互いに押圧されて突き合わされる。このとき、図5の(a)に示すように、溶接される前の鋼帯2の一方の端部から板幅方向に所定の距離Xだけ離れた点をP1とし、鋼帯2の他方の端部から板幅方向に所定の距離Yだけ離れた点をP2とした場合に、図5の(b)に示すように、上記端部が互いに押圧されて突き合わせて溶接されると、溶接後のP1とP2との間の距離Zは、距離Xと距離Yとを足し合わせた長さよりも短くなる。このように、上記端部が互いに押圧される方向(換言すれば、板幅方向)における、その押圧によって短くなった当該端部の長さ(X+Y-Z)のことを、アプセット量という。
【0048】
各端部のアプセット量は、鋼帯2の板厚に対して20%以上30%以下であることが好ましい。アプセット量が上記板厚の20%未満である場合、溶融メタル排出量が低減する。そのため、ボンド部4に残存する上記溶融金属の量が増大し、結果としてボンド部4の幅が広がる。また、アプセット量が上記板厚の30%より大きい場合、上記端部が過度に押し潰されてしまう。
【0049】
上記のように、鋼帯2の板厚に対して20%以上30%以下であるアプセット量によれば、ボンド部4の幅を狭くするために十分な溶融メタル排出量が得られる。
【0050】
本実施形態における溶接の方法としては、例えば、抵抗溶接、レーザービーム溶接および電子ビーム溶接などの高密度エネルギー溶接を挙げることができるが、抵抗溶接が好ましく、抵抗溶接のなかでも高周波溶接(高周波抵抗溶接)が好ましい。高周波溶接とは、溶接継手に加圧力を与えながら高周波電流による抵抗熱で接合を行う抵抗溶接である。本実施形態において、高周波接触抵抗溶接を用いてもよいし、高周波誘導抵抗溶接を用いてもよい。鋼帯2を高周波溶接によって溶接することで、効率的かつ低コストで鋼帯2を溶接することができる。
【0051】
また、溶接温度は1200℃以上1700℃以下で行うことが好ましい。溶接温度が高すぎると、溶接時に生じる溶融金属の量が増加するため、ボンド部4の幅が広くなってしまう。また、溶接温度が1200℃以下の場合、上記溶融金属の量が少なくなり、溶接部3の一部に溶接されていない部分が生じてしまう。上記のような溶接温度であれば、ボンド部4の幅が鋼帯2の板厚に対し0.2%以上1.2%以下となるように溶接することができる。
【0052】
また、上記溶接は、1枚の鋼帯2または鋼板の端部同士を溶接して鋼管を形成するものであってもよく、2枚以上の鋼帯2または鋼板の端部同士を継ぎ合わせるものであってもよい。
【0053】
(焼入れ・焼戻し)
鋼管1には、溶接の後、焼入処理および焼戻処理が施されている。これにより、溶接部3の溶接割れを防止することができる。
【0054】
(球状化焼鈍処理)
上述したように、ボンド部4の金属組織は硬質なマルテンサイトとなることがある。そのため、溶接部3の加工性が低下する。上記加工性の低下を改善するために行われる焼鈍処理として、例えば、球状化焼鈍処理が行われることが好ましい。球状化焼鈍処理とは、高炭素鋼中に含まれる炭化物が球状化して析出されるように、高炭素鋼をA1変態点付近の温度により焼鈍処理することである。球状化焼鈍処理を行うことで、高炭素鋼が柔らかくなり加工性が向上する。
【0055】
ボンド部4は、球状化焼鈍処理によってマルテンサイト組織を球状炭化物が分散したフェライト組織に変態させることができる。この結果、ボンド部4の加工性が向上する。
【0056】
以上のような方法によれば、縮径圧延工程を施す必要なく、ボンド部4の幅が鋼帯2の板厚に対し0.2%以上1.2%以下となる溶接部3を備える鋼管1を製造することができる。
【0057】
〔鋼管1に含まれる成分〕
鋼管1は、C(炭素):0.4質量%以上1.5質量%以下、P:0.03質量%以下、およびCu:0.3質量%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。鋼管1は、特定の成分を特定の量だけ含み、不純物の含有量が少ないため、硬度および清浄度が高いため、転動疲労寿命に優れる。
【0058】
(C)
鋼管1は0.4質量%以上1.5質量%以下のCを含む。すなわち、鋼管1は高炭素溶接鋼管である。Cは、炭素鋼において最も基本となる元素であり、含有量によって鋼管の硬さおよび炭化物量が大きく変動する。Cの含有量が0.4質量%以上であることにより、軸受などの機械部品として使用するために必要な強度を得ることができる。また、Cの含有量が0.6質量%以上であることにより、軸受などの機械部品として使用するために必要な強度を得る効果が顕著になる。
【0059】
また、Cの含有量が1.5質量%以下であることにより、球状化焼鈍処理によって球状炭化物を形成しない炭化物の析出が抑制できる。そのため、球状化焼鈍処理によって、溶接部3に十分な加工性を付与することができる。
【0060】
(P)
P(リン)は鋼管の延性および靱性を低下させる元素である。鋼管1におけるPの含有量は、0.03質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましい。Pの含有量が0.03質量%以下であることにより、焼入後に鋼管1における旧オーステナイト粒界の靭性が高まり、熱処理後の鋼管1の転動疲労性が低下するのを防ぐことができる。
【0061】
(Cu)
Cu(銅)は、熱間圧延中に鋼帯に生成する酸化スケールの剥離性を向上させることで、鋼帯および鋼帯から得られる鋼管の表面性状を改善する元素である。鋼管1におけるCuの含有量は、0.3質量%以下であることが好ましい。Cuの含有量が0.3質量%以下であることで、鋼帯2および鋼帯2から得られる鋼管1の表面に微細なクラックが生じにくくなる。
【0062】
〔鋼管に含まれ得るその他の成分〕
また、鋼管1は、高炭素の溶接鋼管を効率的に製造するという課題を解決できる範囲で、上述の成分以外にSi、Mn、Cr、S、Al、Cr、Mo、Ti,Nb,V,およびBのうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。ここで、P、Mo、S、およびAlの少なくともいずれかを含む場合、これらの成分の含有量の総量は鋼管1に対して7.2質量%以下とすることが好ましく、6.0質量%以下とすることがより好ましく、4.0質量%以下とすることがさらに好ましい。上述の好ましい範囲にあることにより、鋼管1に含まれる不純物を少なし、鋼管1の清浄度をより高めることができる。その結果、転動疲労寿命により優れた鋼管1を得ることができる。
【0063】
(Si)
Si(ケイ素)は、球状化焼鈍処理における炭化物の析出を遅らせる元素である。鋼管1におけるSiの含有量は、2.0質量%以下であることが好ましい。このようにSiの含有量が多すぎないことで、球状化焼鈍処理において球状炭化物の析出が妨げられず、効率よく球状化焼鈍処理が進行する。
【0064】
また、Siの固溶強化作用によるフェライトの硬化を防ぎ、これによって成形加工時に鋼管1に割れが発生するのを防ぐことができる。また、製造工程で鋼帯2の表面にスケール疵が発生するのを防いだり、鋼管1の焼入加熱中に粒界酸化が起こることで転動疲労寿命が低下するのを防いだりすることができる。
【0065】
(Mn)
Mn(マンガン)は、鋼管を焼入加熱した場合、当該焼入後の冷却過程で鋼管における鋼のフェライト変態を抑制し、比較的遅い冷却速度でもマルテンサイト中心の組織になることにより、鋼管の焼入性を高める元素である。
【0066】
鋼管1におけるMnの含有量は、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。このように、Mnの含有量が0.1質量%以上であることで、鋼管1の焼入性の低下を防止し、かつ、冷却中に鋼管1の鋼にパーライトおよび上部ベイナイトなどの高温生成物が形成されるのを防止することができる。これにより、鋼管1を軸受として用いた場合に軸受に必要な硬さを得ることができる。また、Mnの含有量が2.0質量%以下であることで、フェライトが硬化し、造管時のロール成形が阻害されるのを防ぐことができる。
【0067】
(S)
S(硫黄)は、鋼管の加工性および転動疲労寿命に影響を及ぼす元素である。鋼管1におけるSの含有量は、0.02質量%以下であることが好ましい。SはMnS系の非金属介在物を生成する。MnS系の非金属介在物が生成されることにより、応力集中による疲労破壊の起点となり、転動疲労寿命が低減する虞がある。これに対し、Sの含有量が0.02質量%以下であることにより、MnS系の非金属介在物の生成を抑え、転動疲労寿命の低減を防ぐことができる。また、Sの含有量が0.02質量%以下であることにより、造管前のスリットコイル端面形状における二次せん断面およびタングの生成を抑え、好適な溶接部を形成することができる。
【0068】
(Al)
Al(アルミニウム)は、溶鋼の脱酸剤として使用され、N(窒素)を固定する作用も呈する元素である。鋼管1におけるAlの含有量は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上0.05質量%以下であることがより好ましい。Alの含有量が0.005質量%以上であることにより、Nを固定する作用がより顕著になる。Alの含有量が0.2質量%以下であることにより、鋼の清浄度が損なわれるのを防ぎ、その結果、疲労破壊による転動疲労寿命の低減を防ぐことができる。また、鋼帯2の表面品質の低下を防ぐことができる。
【0069】
(Cr)
Cr(クロム)は、焼入性の改善に有効な元素である。鋼管1におけるCrの含有量は、5.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上1.6質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以上1.5質量%以下であることがさらに好ましい。Crの含有量が0.2質量%以上であることにより、鋼管1の焼入性をより改善することができる。また、Crの含有量が5.0質量%以下であることにより、Crの含有量が多すぎないため、加工性が低下するのを防ぐことができる。
【0070】
(Mo)
Mo(モリブテン)は少量の添加でCrと同様に鋼管の焼入性および焼戻し軟化抵抗の改善に寄与する元素である。鋼管1におけるMoの含有量は、0.5質量%以下であることが好ましい。Moの含有量が0.5質量%以下と多すぎないことにより、鋼帯2に焼鈍処理を施す際に軟質化しやすく、造管時のロール成形性が低下するのを防ぐことができる。
【0071】
(Nb)
Nb(ニオブ)は、鋼の鋳造後の冷却過程において、鋼中に非常に硬質なNb・Ti系炭化物粒子を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する元素である。ただし、Nbを多量に添加するとNb・Ti系炭化物粒子の生成量が過大となり、靭性を損なう要因となる。そのため、鋼管1におけるNbの含有量は、0.5質量%以下であることが好ましい。
【0072】
(Ti)
Ti(チタン)は、Nbと同様、鋼の鋳造後の冷却過程において、鋼中に非常に硬質なNb・Ti系炭化物粒子を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する元素である。ただし、Tiを多量に添加すると靭性を損なう要因となる。そのため、鋼管1におけるTiの含有量は、0.3質量%以下であることが好ましい。
【0073】
(V)
V(バナジウム)は、鋼の靭性向上に有効な元素である。しかし、Vを過剰に添加してもコストに見合った靭性向上効果は期待できない。そのため、鋼管1におけるVの含有量は、1.5質量%以下であることが好ましい。
【0074】
(B)
B(ホウ素)は、鋼管の熱間加工性を向上させ、熱延時の割れ防止に有効な元素である。しかし、鋼管は、過剰量のBを含有すると、却って熱間加工性が低下する。そのため、鋼管1におけるBの含有量は、0.01質量%以下であることが好ましい。
【0075】
<鋼管1の製造方法>
本実施形態における鋼管1の製造方法は、鋼帯2を成形する工程および鋼帯2の端部同士を溶接する工程を含む。これらの工程は、それぞれ上述のロール成形処理および溶接処理と同様である。換言すれば、鋼管1は、上記鋼板または鋼帯2を曲げて、上記鋼板又は鋼帯2の端部同士を接触させる工程と、加熱によって上記端部が溶融することで形成されるボンド部4の幅が、上記板厚に対し0.2%以上1.2%以下となるように、上記端部同士を互いに押圧した状態で、1200℃以上1700℃以下の温度で溶接する工程と、を含む製造方法により製造される。
【0076】
<軸受用鋼管>
本実施形態に係る軸受用鋼管は、上述の本実施形態に係る鋼管1を含む。換言すれば、鋼管1は、特定の成分を特定の量だけ含み、不純物の含有量が少ないため、硬度および清浄度が高いことから、軸受用鋼管に好適に利用することができる。
【0077】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0078】
<実施例および比較例>
〔鋼の製造〕
まず、表1に示す成分組成の鋼を製造した。なお、備考欄において、本発明の一実施形態に係る鋼管は「本発明例」とし、比較例に係る鋼管は「比較例」とした。
【0079】
【表1】
【0080】
〔溶接鋼管の製造〕
表1の各種鋼のスラブを1250~1300℃に加熱し熱間圧延することにより、厚さ6.0mmの熱延コイル(鋼帯)を製造した。得られた熱延コイルを酸洗し、すべての鋼種に対して750℃の条件下で10時間の焼鈍を施した。その後、熱延コイルを長手方向にスリットし、ロール成形した。ロール成形後、相対する熱延コイルの端面同士を種々の溶接温度(加熱温度)、クラッシング量、およびアプセット量により高周波溶接して、直径34mm、厚さ6.0mmの鋼管を製造した。溶接後の鋼管に、焼鈍処理を施した。焼鈍処理は、700℃で均熱保持後、空冷した。
【0081】
〔鋼管の評価〕
(焼鈍試験)
鋼の炭素がすべて球状炭化物として析出した場合、鋼の含有炭素量c(mass%)と球状炭化物の面積率fは以下の式で表される。
【0082】
f=15.3c (式1)
球状炭化物析出量について、上記溶接後の鋼管を、700℃で50時間均熱保持後、空冷した際に球状炭化物面積率(球状炭化物析出率)がfの90%以上の場合を○、90%未満の場合を×と評価した。
【0083】
ボンド部の幅であるボンド幅の測定は、ボンド部を100mmおきに5箇所測定し、最も幅の広い箇所を最大ボンド幅とした。
【0084】
球状炭化物面積率を求めるために、最大ボンド幅の位置で20箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率5000倍にて写真撮影した。当該写真におけるボンド部の球状炭化物面積を測定し、当該球状炭化物面積の測定値を平均化することにより、球状炭化物面積率を求めた。
【0085】
(結果)
各鋼種において、種々の溶接条件にて製造された鋼管における球状炭化物析出量を評価した結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
このように、本発明例はいずれの条件においても、球状炭化物の面積率がfの90%以上となり、良好な球状炭化物の析出量が得られた。一方、比較例においては、本発明例のような良好な球状炭化物の析出量が得られなかった。以下にその理由について考察した。
【0088】
溶接温度が1700℃よりも高い条件では(No.2,7,9,17,19,23,27,31,35)、溶接部に生じる溶融金属の量が増加し、ボンド幅は広くなった。なお、「ボンド幅が広い」とは、ボンド幅が、鋼帯の板厚6mmの1.2%である72μmよりも広い場合を指す。
【0089】
クラッシング量が0.3mm未満、すなわち鋼帯の板厚に対して%未満である場合(No.4,7,10,12,23,29,35)、または2.4mm超、すなわち上記板厚に対して40%より大きい場合(No.21)、加熱時における溶接部の温度に斑が発生し、ボンド部においてボンド幅が広い個所が形成された。
【0090】
アプセット量が1.2mm未満、すなわち上記板厚に対して20%未満である場合(No.12,15,17,23,25,31,33,35)、溶接部において溶融メタル排出量が少なくなり、ボンド幅が広くなった。
【0091】
上述した種々の理由からボンド幅が広くなった場合、球状炭化物析出率が90%未満となった。そのため、球状炭化物の析出量は×と評価された。
【0092】
(まとめ)
以上のように、本発明例においては、いずれも球状炭化物の面積率がfの90%以上となり、良好な球状炭化物の析出量が得られた。すなわち、50時間の焼鈍処理により、良好な加工性を備えるボンド部が得られた。一方、比較例においては、いずれも球状炭化物の面積率がfの90%未満となり、50時間の焼鈍処理では十分な球状炭化物の析出が得られなかった。すなわち、比較例に係る鋼管において、良好な加工性を備えるボンド部を得るためには、より長時間の焼鈍処理が必要であることが示唆された。
【符号の説明】
【0093】
1 鋼管
2 鋼帯
2A 下面
2B クラッシングによって形成された面
3 溶接部
4 ボンド部
5 熱影響部
図1
図2
図3
図4
図5