(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/22 20060101AFI20221220BHJP
A61L 9/18 20060101ALI20221220BHJP
B03C 3/02 20060101ALI20221220BHJP
F24F 3/16 20210101ALI20221220BHJP
F24F 8/192 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
A61L9/22
A61L9/18
B03C3/02 Z
F24F3/16
F24F8/192
(21)【出願番号】P 2018213860
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】斎木 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】小前 草太
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-259474(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065205(WO,A1)
【文献】特開2002-273133(JP,A)
【文献】特開2012-125360(JP,A)
【文献】特開2017-127818(JP,A)
【文献】特開2008-149293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B03C 3/00-11/00
F24F 7/003
F24F 3/16
F24F 8/00-8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が室内給気口に接続され、空気を前記室内給気口から室内に送出するための給気部と、
前記給気部に設けられ、荷電粒子を空気中に放出する空気清浄部と、
前記給気部における前記空気清浄部と前記室内給気口との間又は前記室内給気口に設けられ、前記荷電粒子を捕捉可能な除去部と、
前記室内の人の有無を検知する人感センサと、を備え、
前記除去部は、
導電体と、
前記人感センサにより前記室内で人が検知されている場合に、前記導電体を、前記荷電粒子が帯びる電荷とは反対の極性を有する電位
にし、前記人感センサにより前記室内で人が検知されていない場合に、前記導電体を、前記荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位にする電圧印加部と、を備えた空気清浄装置。
【請求項2】
一端が室内給気口に接続され、空気を前記室内給気口から室内に送出するための給気部と、
前記給気部に設けられ、荷電粒子を空気中に放出する空気清浄部と、
前記給気部における前記空気清浄部と前記室内給気口との間又は前記室内給気口に設けられ、前記荷電粒子を捕捉可能な除去部と、
前記室内の人の有無を検知する人感センサと、を備え、
前記除去部は、
導電体と、
前記人感センサにより前記室内で人が検知されている場合に、前記導電体を接地電位にする接地部と、
前記人感センサにより前記室内で人が検知されていない場合に、前記導電体を、前記荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位にする電圧印加部と、を備えた空気清浄装置。
【請求項3】
前記空気清浄部は、
一対の電極を有する放電部と、
前記放電部の電極間に電圧を印加する電源部と、を備えた請求項1
又は請求項
2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記空気清浄部は、
光により前記荷電粒子を放出する触媒と、
前記触媒に光を照射する発光部と、を備えた請求項1
又は請求項
2に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気清浄装置においては、ケーシングの内部に空気流路が形成され、この空気流路に、ストリーマ放電部と、荷電部と、集塵部とが設けられた空気清浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に示された空気清浄装置においては、ストリーマ放電部に放電電極と対向電極とが設けられる。電源からこれらの電極に電圧が印加されると、放電電極から対向電極に向かってストリーマ放電が行われる。この結果、有害物質を分解するためのイオン等の荷電粒子又はラジカルである活性種が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような空気清浄装置では、空気を清浄化する過程において、荷電粒子又はラジカルを空気中に放出する。空気清浄化能力を高めたい場合には、空気中に放出する荷電粒子又はラジカルの濃度(数)が必然的に増加する。このため、このような空気清浄装置により清浄された空気を室内に導入する場合、空気を清浄化する過程で放出された荷電粒子又はラジカルが、そのまま人のいる室内に流出してしまうおそれがある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、空気を清浄化する過程において空気中に放出された荷電粒子又はラジカルの室内への流出を抑制できる空気清浄装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る空気清浄装置は、一端が室内給気口に接続され、空気を前記室内給気口から室内に送出するための給気部と、前記給気部に設けられ、荷電粒子を空気中に放出する空気清浄部と、前記給気部における前記空気清浄部と前記室内給気口との間又は前記室内給気口に設けられ、前記荷電粒子を捕捉可能な除去部と、前記室内の人の有無を検知する人感センサと、を備え、前記除去部は、導電体と、前記人感センサにより前記室内で人が検知されている場合に、前記導電体を、前記荷電粒子が帯びる電荷とは反対の極性を有する電位にし、前記人感センサにより前記室内で人が検知されていない場合に、前記導電体を、前記荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位にする電圧印加部と、を備える。
【0007】
または、この発明に係る空気清浄装置は、一端が室内給気口に接続され、空気を前記室内給気口から室内に送出するための給気部と、前記給気部に設けられ、荷電粒子を空気中に放出する空気清浄部と、前記給気部における前記空気清浄部と前記室内給気口との間又は前記室内給気口に設けられ、前記荷電粒子を捕捉可能な除去部と、前記室内の人の有無を検知する人感センサと、を備え、前記除去部は、導電体と、前記人感センサにより前記室内で人が検知されている場合に、前記導電体を接地電位にする接地部と、前記人感センサにより前記室内で人が検知されていない場合に、前記導電体を、前記荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位にする電圧印加部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る空気清浄装置によれば、空気を清浄化する過程において空気中に放出された荷電粒子又はラジカルの室内への流出を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る空気清浄装置を換気装置とともに設けた全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る空気清浄装置が備える空気清浄部の一例の構成を示す図である。
【
図3】この発明の実施の形態1に係る空気清浄装置が備える空気清浄部の一例の構成を示す図である。
【
図4】この発明の実施の形態1に係る空気清浄装置が備える空気清浄部の一例の構成を示す図である。
【
図6】この発明の実施の形態1に係る空気清浄装置が備える除去部の一例の構成を示す斜視図である。
【
図7】この発明の実施の形態1に係る空気清浄装置が備える除去部の一例の構成を示す図である。
【
図8】この発明の実施の形態1に係る空気清浄装置を空気調和装置とともに設けた全体構成を模式的に示す図である。
【
図9】この発明の実施の形態2に係る空気清浄装置が備える除去部の一例の構成を示す図である。
【
図10】この発明の実施の形態2に係る空気清浄装置が備える除去部の一例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1から
図8は、この発明の実施の形態1に係るものである。
図1は空気清浄装置を換気装置とともに設けた全体構成を模式的に示す図である。
図2から
図4は空気清浄装置が備える空気清浄部の一例の構成を示す図である。
図5は
図4の断面A-Aによる断面図である。
図6は空気清浄装置が備える除去部の一例の構成を示す斜視図である。
図7は空気清浄装置が備える除去部の一例の構成を示す図である。そして、
図8は空気清浄装置を空気調和装置とともに設けた全体構成を模式的に示す図である。
【0012】
この実施の形態に係る空気清浄装置は、建物の室内に送出する空気を清浄化するものである。空気清浄装置は、建物10に設置されている。建物10は、外壁部11及び内壁部12を備えている。内壁部12は、建物10における外壁部11よりも内側に設けられている。建物10の外壁部11よりも外側は、屋外である。建物10の外壁部11よりも内側は、屋内13である。そして、建物10の内壁部12よりも内側は、室内14である。
【0013】
建物10の外壁部11には、外気取込口1及び屋外吹出口4が形成されている。建物10の内壁部12における例えば室内14の天井部には、室内給気口2及び室内排気口3が形成されている。建物10の屋内13における例えば天井裏等には、給気ダクト21及び排気ダクト22が敷設されている。
【0014】
給気ダクト21は、中空筒状の部材である。給気ダクト21の一端は、外気取込口1に接続されている。給気ダクト21の他端は、室内給気口2に接続されている。給気ダクト21の内部を介して、外気取込口1から室内給気口2までが通じている。給気ダクト21の内部には、外気取込口1から取り込んだ屋外の空気を室内14に導入するための給気風路が形成されている。この実施の形態における給気ダクト21は、一端が室内給気口2に接続され、空気を室内給気口2から室内14に送出するための給気部に相当する。
【0015】
排気ダクト22は、中空筒状の部材である。排気ダクト22の一端は、室内排気口3に接続されている。排気ダクト22の他端は、屋外吹出口4に接続されている。排気ダクト22の内部を介して、室内排気口3から屋外吹出口4までが通じている。排気ダクト22の内部には、室内排気口3から取り込んだ室内14の空気を屋外に排出するための排気風路が形成されている。
【0016】
給気ダクト21及び排気ダクト22の中間部には、全熱交換式換気装置30が設けられている。全熱交換式換気装置30の内部において、前述した給気風路と排気風路とは交差している。この交差部分において、給気風路と排気風路とは、当該空気中の顕熱及び水分を通過させるが空気は通さない素材により仕切られている。給気風路を通過する空気と排気風路を通過する空気とは、全熱交換式換気装置30の当該交差部分において、顕熱及び潜熱すなわち全熱を交換する。
【0017】
全熱交換式換気装置30は図示しない換気ファンを備えている。換気ファンが動作すると、室内14の空気は、室内排気口3に吸い込まれて排気ダクト22を通り、屋外吹出口4から屋外に排出される。同時に、屋外の空気が外気取込口1から取り込まれて給気ダクト21を通り、室内給気口2から室内14に導入される。
【0018】
前述した給気部すなわち給気ダクト21には、空気清浄部60が設けられている。空気清浄部60は、給気ダクト21を通って室内給気口2から室内14に送出される空気を清浄化するためのものである。空気清浄部60は、空気を清浄化する過程において、荷電粒子及びラジカルの一方又は両方を空気中に放出する。次に、
図2から
図4を参照しながら、空気清浄部60の構成について、具体的な例を挙げて説明する。
【0019】
まず、
図2に示すのは、空気清浄部60の構成の1つめの例である。同図に示す構成例では、空気清浄部60は、集塵ユニット61を備えている。集塵ユニット61は、通過する空気中の粒子状物質を除去して空気を清浄化する。集塵ユニット61が除去する粒子状物質には、具体的に例えば、塵、埃、綿ゴミ、ダニ、PM2.5及び花粉等が含まれる。
【0020】
集塵ユニット61は、放電電極62、対向電極63、高電圧電源64、高圧極65及び対向極66を備えている。放電電極62は複数設けられる。対向電極63も複数設けられる。放電電極62及び対向電極63は、集塵ユニット61を通過する空気流の方向と直交する方向に沿って、交互に並んでいる。
【0021】
放電電極62は、長尺な板状部材で構成されている。放電電極62の材質には導電体が用いられる。具体的には、タングステン、銅、ニッケル、亜鉛、鉄、モリブデン等の金属、又は、これらの金属を主成分とするステンレス等の合金、もしくは、これらの金属又は合金の表面に、銀、金、白金等の貴金属をメッキしたもの、あるいは、これらの金属又は合金の表面に、炭素(グラファイト)層又は酸化膜を生成したもの等を用いることができる。
【0022】
対向電極63は、例えば金属製の板状部材に切断と曲げ加工とを行うことによって製作される。対向電極63を形成する金属としては、例えば、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄又はモリブデン等が好適である。また、対向電極63は、体積抵抗率が107Ω・cm以下となるように導電材を配合した樹脂で平板状に成形されてもよい。
【0023】
放電電極62の断面は、短辺及び長辺によって周囲が囲まれた矩形形状を呈する。放電電極62の断面の短辺の長さは、例えば、0.01mmから0.1mmである。放電電極62の断面の長辺の長さは、例えば、0.1mmから1.0mmである。放電電極62をこのような形状にすることで、放電電極62の強度を増すことができる。したがって、放電電極62をこのような形状にすることで、放電電極62の形状の経年変化を大幅に抑制することが可能である。
【0024】
高電圧電源64は、放電電極62と対向電極63との間に電圧を印加する。高電圧電源64は、例えば、接地電位に対して4~7kVの正電圧を放電電極62に印加する。対向電極63は、接地されている。この構成例における放電電極62及び対向電極63は、一対の電極を有する放電部に相当する。そして、この構成例における高電圧電源64は、前述した放電部の電極間に電圧を印加する電源部に相当する。
【0025】
放電電極62及び対向電極63よりも、集塵ユニット61を通過する空気流の下流側には、高圧極65及び対向極66が配置されている。高圧極65及び対向極66は、それぞれが複数設けられる。高圧極65及び対向極66は、集塵ユニット61を通過する空気流の方向と直交する方向に沿って、一定の間隔で交互に並んでいる。
【0026】
高圧極65は、体積抵抗値が108~1013Ω・cmの半導電性樹脂を用いて平板状に成形される。対向極66は、体積抵抗率が107Ω・cm以下となるように導電材を配合した樹脂で平板状に成形される。平板状の高圧極65及び対向極66を集塵ユニット61を通過する空気流の方向と直交する方向に沿って対向させて並べることで、高圧極65及び対向極66に、粒子等が付着しても圧力損失の上昇を抑制できる。なお、対向電極63及び対向極66の両方を導電材を配合した樹脂で成形する場合、これらを一体に成形してもよい。このようにすることで、集塵ユニット61を軽量化できる。対向極66は、接地されている。高圧極65は、接地電位に対して正電圧が印加されている。
【0027】
以上のように構成された集塵ユニット61を通過する空気は、まず、放電電極62と対向電極63との間の空間を通過する。このとき、高電圧電源64が電圧を印加していれば、放電電極62と対向電極63との間でコロナ放電が生じる。そして、空気中の粒子状物質は、コロナ放電が起きている放電電極62と対向電極63との間の空間を通過する際に帯電される。放電電極62と対向電極63との間を通過した空気は、次に高圧極65と対向極66との間を通る。この際、帯電された粒子状物質は、高圧極65と対向極66との間の電界から受ける力等により吸着されて捕集される。このようにして、集塵ユニット61は通過する空気中から粒子状物質を除去する。
【0028】
以上のような空気清浄部60の構成例においては、前述した電源部は、放電電極62に対向電極63に対して正極性となる電圧を印加している。そして、この正電圧の印加により空気中で放電が発生し、空気中の成分がイオン化されて荷電粒子が生成される。生成される荷電粒子は、電源部が印加した正電圧に対応して、正の電荷を帯びるものが圧倒的に多数である。ここでは、空気清浄部60から放出される荷電粒子の圧倒的多数が帯びる電荷の極性のことを、単に、空気清浄部60から放出される荷電粒子が帯びる電荷の極性ともいう。
【0029】
なお、前述した電源部である高電圧電源64は、放電電極62に対向電極63に対して負極性となる電圧を印加してもよい。さらに、高電圧電源64が放電電極62に印加する電圧の極性を切り替えることができるようにしてもよい。
【0030】
次に、
図3に示すのは、空気清浄部60の構成の2つめの例である。同図に示す構成例では、空気清浄部60は、放電により生成した放電生成物を放出する放出ユニットを備えている。放出ユニットは、放電電極62、対向電極63及び高電圧電源64を備えている。放出ユニットの放電電極62には、突起部62aが形成されている。
【0031】
放電電極62の材質は、チタン等の発泡金属(金属多孔質体)である。この金属多孔質体における孔径は50~150μmで、空隙率は70~80%である。このような孔径、空隙率とすることで、例えば周囲の空気中の水を取り込んで、放電電極62の全体(特に突起部62a)に水を含浸することが可能となる。
【0032】
対向電極63は、略円形の円形孔63aが設けられた金属板で形成されている。この対向電極63の材質は、導電性をもったものであればよい。ここでは、例えば、ステンレスを用いる。対向電極63は、放電電極62の突起部62a側に、該突起部62aの先端から間隔をあけて対向して設置されている。この際、放電電極62の突起部62aの先端の延長線上に、対向電極63の円形孔63aの中心が位置するように配置される。
【0033】
高電圧電源64は、放電電極62と対向電極63との間に電圧を印加する。高電圧電源64は、例えば、接地電位に対して-6~-3kVの電圧すなわち3~6kVの負電圧を放電電極62に印加する。対向電極63は、接地されている。この構成例における放電電極62及び対向電極63は、一対の電極を有する放電部に相当する。そして、この構成例における高電圧電源64は、前述した放電部の電極間に電圧を印加する電源部に相当する。
【0034】
このように構成された空気清浄部60の放出ユニットにおいては、放電電極62の突起部62aにまで水が含浸されている状態で、高電圧電源64により放電電極62及び対向電極63間に直流電圧が印加されると、放電電極62の突起部62aの先端部に保持された水と対向電極63との間にクーロン力が働き、水の表面が局所的に盛り上がってテイラーコーンが生成される。そして、クーロン力が水の表面張力を超えると、テイラーコーンが分裂し、直径数nm程度の帯電水滴となり空気中に放出される。こうして、静電霧化装置7から霧状の帯電水滴が生成されて放出される。
【0035】
また、放電により、突起部62aの水分中の成分等がイオン化等されてイオン、ラジカル等も生成されて放出される。このようにして、この構成例の空気清浄部60においては、帯電水滴、イオン等の荷電粒子が空気中に放出される。そして、この荷電粒子により、給気ダクト21内の空気中に含まれる微生物及び臭気物質を分解除去し、あるは、給気ダクト21内の空気中に含まれる粒子状物質を帯電させて除去し、室内14に清浄な空気を供給できる。
【0036】
以上のような空気清浄部60の構成例においては、前述した電源部は、放電電極62に対向電極63に対して負極性となる電圧を印加している。そして、この負電圧の印加により空気中で放電が発生し、荷電粒子が生成される。電源部が印加した負電圧に対応して、生成される荷電粒子が帯びる電荷の極性は負である。
【0037】
なお、前述した電源部である高電圧電源64は、放電電極62に対向電極63に対して正極性となる電圧を印加してもよい。さらに、高電圧電源64が放電電極62に印加する電圧の極性を切り替えることができるようにしてもよい。また、放電電極62の有する突起部62aの数は、1個でもよいし複数個でもよい。放電電極62に突起部62aを複数個設けることにより、設けた突起部62aの数に応じて放出される帯電水滴等の荷電粒子の量を増加させることができる。
【0038】
最後に、
図4及び
図5に示すのは、空気清浄部60の構成の3つめの例である。これらの図に示す構成例では、空気清浄部60は、ケーシング67、光触媒部68及び発光部69を備えている。ケーシング67には、ケーシング67の内部に空気を通過させるための開口が形成されている。ケーシング67の内部には、光触媒部68及び発光部69が設けられている。
【0039】
光触媒部68は、例えば、通気性を有する多孔質メッシュ材に、光触媒を担持して形成されている。変形例として、光触媒を含む塗料等をケーシング67の内壁に塗布して光触媒部68を形成してもよい。光触媒部68は、特定の波長の光が照射されると励起されて活性化する。活性化した光触媒部68は、周囲の空気中の成分等をイオン化等してイオン、ラジカル等を生成する。この構成例の光触媒部68は、光により荷電粒子を放出する触媒に相当する。
【0040】
発光部69は、光触媒部68を励起可能な前述した特定の波長の光を含む光を照射する。具体的に例えば、発光部69が照射する光は紫外光である。ただし、発光部69が照射する光は、光触媒部68を励起する光であれば、紫外光に限らず、可視光でも赤外光でもよい。
【0041】
このようにして、この構成例の空気清浄部60においては、イオン、ラジカル等の荷電粒子が空気中に放出される。そして、この荷電粒子により、給気ダクト21内の空気中に含まれる微生物及び臭気物質を分解除去し、あるは、給気ダクト21内の空気中に含まれる粒子状物質を帯電させて除去し、室内14に清浄な空気を供給できる。
【0042】
なお、光触媒部68は、発光部69よりも上流側に配置するとよい。このようにすることで、ケーシング67内を通過する空気中に含まれる粒子状物質を光触媒部68で除去できるため、発光部69の表面に付着する粒子状物質を減少させ、発光部69の発光量を維持できる。
【0043】
この実施の形態に係る空気清浄装置は、除去部70を備えている。除去部70は、前述した給気部である給気ダクト21における空気清浄部60と室内給気口2との間又は室内給気口2に設けられている。
図1に示す構成例では、除去部70は、室内給気口2に設けられている。除去部70は、空気清浄部60から放出された前述の荷電粒子を捕捉可能である。次に、
図6及び
図7を参照しながら、除去部70の構成について、具体的な例を挙げて説明する。
【0044】
まず、
図6に示すのは、除去部70の構成の1つめの例である。同図に示す構成例では、除去部70は、導電体71及びアース線72を備えている。導電体71は、室内給気口2の内側及び周縁の一方又は両方に配置されている。導電体71は、金属、導電材を配合した樹脂、又は、表面にメッキを施した樹脂等により構成されている。導電体71は、アース線72により接地されている。このため、導電体71の電位は接地電位である。この構成例におけるアース線72は、導電体71を接地電位とする電圧印加部に相当する。
【0045】
次に、
図7に示すのは、除去部70の構成の2つめの例である。同図に示す構成例では、除去部70は、導電体71、アース線72及び除去部電源73を備えている。導電体71は、金属又は導電材を配合した樹脂により構成されている。導電体71には、複数のスリット状の開口が形成されている。導電体71のこれらの開口は、室内給気口2に通じている。導電体71には、除去部電源73が電気的に接続されている。除去部電源73はアース線72により接地されており、導電体71は、除去部電源73により接地電位に対して電圧が印加される。
【0046】
除去部電源73が導電体71に印加する電圧は、導電体71が、空気清浄部60から放出された荷電粒子が帯びる電荷とは反対の極性を有する電位となるような電圧である。換言すれば、除去部電源73は、空気清浄部60の高電圧電源64が印加する電圧とは反対の極性の電圧を導電体71に印加する。
【0047】
図7に示す除去部70の構成例では、除去部電源73は、接地電位に対して負電圧を導電体71に印加している。すなわち、
図7の構成例は、空気清浄部60が特に
図2又は
図3に示す構成例であって、高電圧電源64が、放電電極62に対向電極63に対して正極性となる電圧を印加している場合に用いられる。
図2又は
図3に示す構成例の空気清浄部60において、高電圧電源64が、放電電極62に対向電極63に対して負極性となる電圧を印加している場合は、除去部電源73は、接地電位に対して正電圧を導電体71に印加すればよい。
【0048】
なお、除去部70の構成は以上の例に限られない。除去部70の導電体71が室内給気口2の通風を妨げるものでなければよい。このような除去部70の変形例として、導電体71を、グリル形状としたり、パンチングメタル、メッシュ、ガラリ等を用いたものにしたりしてもよい。
【0049】
このように、この実施の形態に係る空気清浄装置は、空気清浄部60と室内給気口2との間又は室内給気口2に設けられた除去部70を備えている。この除去部70は、導電体71と電圧印加部とを備えている。そして、電圧印加部は、導電体71を、空気清浄部60から放出された荷電粒子が帯びる電荷とは反対の極性を有する電位又は接地電位とする。このため、除去部70の導電体71と空気清浄部60から放出された荷電粒子との間で電気的な吸引力が働き、荷電粒子は導電体71に吸着される。すなわち、除去部70は、空気清浄部60から放出された荷電粒子を捕捉可能である。
【0050】
したがって、給気ダクト21を通って室内給気口2から室内14に導入される空気中の荷電粒子は、室内給気口2の通過前又は室内給気口2の通過時に、除去部70により捕捉されて除去される。よって、空気を清浄化する過程において空気中に放出された荷電粒子が、人のいる室内14へと流出することを抑制できる。このため、荷電粒子が室内14で発生した揮発性有機物(VOC)と接触することを抑制でき、荷電粒子と揮発性有機物との接触により室内14で微粒子が発生することを抑制することが可能である。よって、荷電粒子により室内14で微粒子を発生させることなく、空気清浄部60が空気中に放出する荷電粒子の濃度(数)を増加させて空気清浄化能力を高くできる。
【0051】
なお、変形例として、除去部70の電圧印加部は、導電体71を、空気清浄部60から放出された荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位とすることが可能であるようにしてもよい。すなわち、除去部70の除去部電源73は、導電体71に印加する電圧の極性を切り替えられるようにしてもよい。または、除去部70は、導電体71を除去部電源73を介して接地するのか、アース線72により直接に接地するのかを切り替えるスイッチを備えてもよい。
【0052】
除去部70の導電体71を、空気清浄部60から放出された荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位にすると、除去部70の導電体71と空気清浄部60から放出された荷電粒子との間で電気的な反発力が働く。このため、荷電粒子は、導電体71に吸着されずに室内14へと流出する。
【0053】
この変形例によれば、例えば室内14に人がいない場合等に、空気清浄部60から放出された荷電粒子を室内14に供給して、室内14の空気を荷電粒子で直接的に清浄化できる。この変形例の空気清浄装置は、室内14の人の有無を検知する人感センサを備えてもよい。そして、人感センサにより室内14にいる人が検知されていない場合に、除去部70の導電体71を、空気清浄部60から放出された荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位としてもよい。
【0054】
なお、空気清浄部60は、空気を清浄化するためにラジカルを空気中に放出するものであってもよい。この場合、除去部70の導電体71は、アース線72により接地される。そして、導電体71によりラジカルを吸着することで、除去部70によりラジカルを捕捉して、室内給気口2から室内14に送出される空気中からラジカルを除去できる。
【0055】
この実施の形態に係る空気清浄装置を空気調和装置とともに設けてもよい。
図8に示すのは、空気清浄装置を全館空気調和装置40とともに設置した場合の構成例である。同図に示す構成例では、全館空気調和装置40は、建物10の外壁部11と内壁部12との間の屋内13に設置されている。内壁部12の側壁には、室内排気口3が形成されている。室内排気口3は、全館空気調和装置40の図示しない吸込口に通じている。全館空気調和装置40は図示しない送風ファンを備えている。送風ファンが動作すると、室内14の空気は、室内排気口3から排出されて全館空気調和装置40に吸い込まれる。
【0056】
全館空気調和装置40は図示しない空気調和手段を備えている。空気調和手段は、例えば熱交換器を有する冷凍サイクル等である。全館空気調和装置40に吸い込まれた空気は、空気調和手段により、温度、湿度等が調整される。そして、調整後の空気は、全館空気調和装置40の図示しない吹出口から吹き出される。建物10の内壁部12における例えば室内14の天井部には、室内給気口2が形成されている。全館空気調和装置40の吹出口は、給気ダクト21介して室内給気口2に通じている。
【0057】
全館空気調和装置40の吹出口部分には、空気清浄部60が設けられている。そして、給気ダクト21における空気清浄部60と室内給気口2との間又は室内給気口2には、除去部70が設けられている。
図8に示す構成例では、除去部70は、室内給気口2に設けられている。このような構成例でも、
図1に示すような全熱交換式換気装置30とともに空気清浄装置を設けた場合と同様の効果を奏することができる。
【0058】
なお、この実施の形態に係る空気清浄装置を単体で、例えば建物10の室内14等に設置してもよい。この場合には、空気清浄装置の筐体に室内給気口2が形成される。また、空気清浄装置の筐体の内部に、前述した給気部と空気清浄部60とが設けられる。そして、除去部70が、室内給気口2又は空気清浄装置の筐体の内部等に設けられる。
【0059】
また、以上においては、空気清浄装置を建物10に設置した構成例について説明した。この建物10としては、例えば,オフィスビル、一般家屋、店舗の建物等が具体例として挙げられる。また、建物10でなく、他に例えば、エレベータの乗りかごに設けられる空気清浄装置に適用することもできる。この場合、清浄化した空気を乗りかごのかご室内に導入する。
【0060】
実施の形態2.
図9及び
図10は、この発明の実施の形態2に係るもので、空気清浄装置が備える除去部の一例の構成を示す図である。
【0061】
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、除去部に2つの導電体を設け、2つの導電体の電位を異ならせたものである。以下、この実施の形態2に係る空気清浄装置について、実施の形態1との相違点を中心に説明する。説明を省略した構成については実施の形態1と基本的に同様である。
【0062】
この実施の形態に係る空気清浄装置における導電体71は、
図9及び
図10に示すように、導電体として、第1の導電体71aと第2の導電体71bの2つが設けられている。第2の導電体71bは、第1の導電体71aよりも空気清浄部60の側に配置されている。
【0063】
第1の導電体71a及び第2の導電体71bは、いずれも複数の孔が形成されて空気の通過が可能な導電性の部材からなる。
図9に示す構成例は、第1の導電体71a及び第2の導電体71bをパンチングメタルとしたものである。
図10に示す構成例は、第1の導電体71a及び第2の導電体71bをメッシュ状の導電体としたものである。
【0064】
第2の導電体71bの電位は、空気清浄部60から放出された荷電粒子が帯びる電荷とは反対の極性を有する電位又は接地電位である。
図9及び
図10に示す構成例では、第2の導電体71bは、アース線72により接地されている。
【0065】
第1の導電体71aの電位は、空気清浄部60から放出された荷電粒子が帯びる電荷と同じ極性を有する電位である。
図9及び
図10に示す除去部70の構成例では、除去部電源73は、接地電位に対して正電圧を第1の導電体71aに印加している。すなわち、これらの構成例は、空気清浄部60が特に
図2又は
図3に示す構成例であって、高電圧電源64が、放電電極62に対向電極63に対して正極性となる電圧を印加している場合に用いられる。
図2又は
図3に示す構成例の空気清浄部60において、高電圧電源64が、放電電極62に対向電極63に対して負極性となる電圧を印加している場合は、除去部電源73は、接地電位に対して負電圧を第1の導電体71aに印加すればよい。
【0066】
以上のように構成された空気清浄装置においては、除去部70の第2の導電体71bと空気清浄部60から放出された荷電粒子との間で電気的な吸引力が働き、荷電粒子は第2の導電体71bに吸着される。したがって、給気ダクト21を通って室内給気口2から室内14に導入される空気中の荷電粒子は、室内給気口2の通過前又は室内給気口2の通過時に、除去部70により捕捉されて除去される。
【0067】
一方、除去部70の第1の導電体71aと空気清浄部60から放出された荷電粒子との間では、電気的な反発力が働く。このため、例えば、速度が速いために第2の導電体71bに吸着されずに通過しようとする荷電粒子の速度を、第2の導電体71bよりも空気流の下流側にある第1の導電体71aと反発力により遅くすることができる。そして、荷電粒子の速度を遅くすることで、荷電粒子が第2の導電体71bに、より吸着されやすくすることが可能である。したがって、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのに加えて、除去部70における荷電粒子の除去率の向上を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 外気取込口
2 室内給気口
3 室内排気口
4 屋外吹出口
10 建物
11 外壁部
12 内壁部
13 屋内
14 室内
21 給気ダクト
22 排気ダクト
30 全熱交換式換気装置
40 全館空気調和装置
60 空気清浄部
61 集塵ユニット
62 放電電極
62a 突起部
63 対向電極
63a 円形孔
64 高電圧電源
65 高圧極
66 対向極
67 ケーシング
68 光触媒部
69 発光部
70 除去部
71 導電体
71a 第1の導電体
71b 第2の導電体
72 アース線
73 除去部電源