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特許7196557動態画像解析装置及び動態画像解析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】動態画像解析装置及び動態画像解析システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A61B6/00 350C
A61B6/00 330A
A61B6/00 350D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018217827
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020081185
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松谷 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】谷 徹
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018317(JP,A)
【文献】特開2015-084894(JP,A)
【文献】特開2009-136573(JP,A)
【文献】特開2017-113344(JP,A)
【文献】特開2017-176202(JP,A)
【文献】特開2018-130264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0330557(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0189320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより得られた動態画像から心臓領域又は肺野領域を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された心臓領域の面積、径、若しくは画素値、又は前記抽出手段により抽出された肺野領域の画素値に基づいて、前記被検体の心機能の評価値として、一回拍出量、心拍出量、血圧、肺動脈圧、動脈圧、又は中心静脈圧を算出する算出手段と、
を備える動態画像解析装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記抽出手段により抽出された予め定められた心拍位相の心臓領域の面積、径、又は平均画素値に基づいて、前記心機能の評価値を算出する請求項に記載の動態画像解析装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記抽出手段により抽出された心臓領域の面積、径、又は平均画素値の心拍一周期における極大値と極小値の差分に基づいて、前記心機能の評価値を算出する請求項1又は2に記載の動態画像解析装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記抽出手段により抽出された心臓領域の面積、径、又は平均画素値の心拍一周期における平均に基づいて、前記心機能の評価値を算出する請求項1~のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記抽出手段により抽出された予め定められた呼吸位相の肺野領域の平均画素値に基づいて、前記心機能の評価値を算出する請求項1~のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記抽出手段により抽出された肺野領域の平均画素値の呼吸一周期における極大値と極小値の差分に基づいて、前記心機能の評価値を算出する請求項1~のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記抽出手段により抽出された肺野領域の平均画素値の呼吸一周期における平均に基づいて、前記心機能の評価値を算出する請求項1~のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項8】
前記抽出手段により抽出された心臓領域を心房と心室に区分する手段を備え、
前記算出手段は、前記心臓領域の平均画素値に基づいて前記心機能の評価値を算出する場合、前記心房に区分された領域の平均画素値と前記心室に区分された領域の平均画素値に基づいて、心房と心室のそれぞれの前記心機能の評価値を算出する請求項1~のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項9】
前記抽出手段により抽出された心臓領域を左心と右心に区分する手段を備え、
前記算出手段は、前記心臓領域の平均画素値に基づいて前記心機能の評価値を算出する場合、前記左心に区分された領域の平均画素値と前記右心に区分された領域の平均画素値に基づいて、左心と右心のそれぞれの前記心機能の評価値を算出する請求項1~4、8のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項10】
前記算出手段は、前記算出した心機能の評価値を前記心臓領域の面積、前記肺野領域の面積、前記被検体の身長、又は体重に基づく補正係数で正規化する請求項1~のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項11】
前記算出手段により算出された前記心機能の評価値を表示する表示手段を備える請求項1~10のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項12】
手術前に撮影された動態画像から算出された前記心機能の評価値と、手術中又は手術後に撮影された動態画像から算出された前記心機能の評価値との差分解析を行う解析手段を備える請求項1~11のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項13】
前記動態画像から被写体以外の陰影の信号成分を除去する除去手段を備え、
前記抽出手段及び前記算出手段は、前記除去手段により前記被写体以外の陰影の信号成分が除去された動態画像に基づいて前記抽出及び前記算出を行う請求項1~12のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項14】
前記抽出手段及び前記算出手段は、撮影装置により順次取得される動態画像に対して順次前記抽出及び前記算出を行って前記心機能の評価値を算出し、
前記算出手段により算出された前記心機能の評価値に基づいて、前記撮影装置により照射する放射線量を制御する制御手段を備える請求項1~13のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項15】
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより得られた動態画像から心臓領域又は肺野領域を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された心臓領域の面積、径、若しくは画素値、又は前記抽出手段により抽出された肺野領域の画素値に基づいて、前記被検体の心機能の評価値又は水分量の評価値を算出する算出手段と、
を備え、
前記抽出手段及び前記算出手段は、撮影装置により順次取得される動態画像に対して順次前記抽出及び前記算出を行って前記心機能の評価値又は前記水分量の評価値を算出し、
前記算出手段により算出された前記心機能の評価値又は前記水分量の評価値に基づいて、前記撮影装置により照射する放射線量を制御する制御手段を備える動態画像解析装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の動態画像解析装置と、
前記動態画像を撮影する撮影装置と、
を備える動態画像解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動態画像解析装置及び動態画像解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショックや心不全などの重篤な循環状態患者の心機能を測定するためには、肺動脈カテーテルが用いられている。しかし、肺動脈カテーテルは侵襲性が大きく、長期間留置出来ないという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、被写体の心臓部を動態撮影し、複数の時間位相におけるX線画像を用いて、心機能に関する評価値を算出することが記載されている。具体的には、大動脈の脈動部の重心を算出して、重心の単位時間における移動量を血流速の評価値として算出すること、脈動部の体積を心拍出量の評価値として算出すること、心臓の局部の動き量、方向性の評価値、及び周期性の評価値を算出すること、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-136573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、血管内の脈動部の濃度や形状、心臓の局所的な動き(画素単位の動き)から心機能の評価値を算出している。しかしながら、患者被曝低減の観点により、一般的に、動態撮影の各撮影では静止画撮影よりも線量を低減して撮影を行う。そのため、静止画に比べて画質が低下する。また、肺動脈カテーテルのように手術中にリアルタイムで心機能を評価する場合には、撮影時間が長くなるため、さらにフレーム画像毎の線量を低減する必要があり、さらに画質が低下する。このような低画質の画像から血管内の脈動部の濃度や形状、心臓の局所的な動きを正確に検出することは難しい。また、大動脈などの血管は、正面撮影だと胸椎と重なるため、認識することは困難である。さらに、特許文献1には、胸部の動態画像から被検体の水分量の評価値を算出することについて記載されていない。
【0006】
本発明の課題は、胸部動態画像から被検体の心機能の評価値又は水分量の評価値を精度良く算出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、発明の第1の側面による動態画像解析装置は、
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより得られた動態画像から心臓領域又は肺野領域を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された心臓領域の面積、径、若しくは画素値、又は前記抽出手段により抽出された肺野領域の画素値に基づいて、前記被検体の心機能の評価値として、一回拍出量、心拍出量、血圧、肺動脈圧、動脈圧、又は中心静脈圧を算出する算出手段と、
を備える。
【0008】
また、本発明の第2の側面による動態画像解析装置は、
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより得られた動態画像から心臓領域又は肺野領域を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された心臓領域の面積、径、若しくは画素値、又は前記抽出手段により抽出された肺野領域の画素値に基づいて、前記被検体の心機能の評価値又は水分量の評価値を算出する算出手段と、
を備え、
前記抽出手段及び前記算出手段は、撮影装置により順次取得される動態画像に対して順次前記抽出及び前記算出を行って前記心機能の評価値又は前記水分量の評価値を算出し、
前記算出手段により算出された前記心機能の評価値又は前記水分量の評価値に基づいて、前記撮影装置により照射する放射線量を制御する制御手段を備える
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、胸部動態画像から被検体の心機能の評価値又は水分量の評価値を精度良く算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る動態画像解析システムの全体構成を示す図である。
図2図1のコンソールの機能的構成を示すブロック図である。
図3】(a)は、胸部動態画像から抽出された心臓領域の面積と心拍出量の関係を示す散布図であり、(b)は、胸部動態画像から抽出された肺野領域内の画素値と心拍出量の関係を示す散布図である。
図4図2の制御部により実行される心機能測定処理Aを示すフローチャートである。
図5】胸部動態画像の一例を示す図である。
図6】胸部動態画像における心臓面積の時間変化及び心拍周期、極大値、極小値を示す図である。
図7】(a)は、胸部動態画像から抽出された心臓領域の面積と血圧の関係を示す散布図であり、(b)は、胸部動態画像から抽出された肺野領域内の画素値と血圧の関係を示す散布図である。
図8】(a)は、胸部動態画像から抽出された心臓領域の面積と肺動脈圧の関係を示す散布図であり、(b)は、胸部動態画像から抽出された肺野領域内の画素値と肺動脈圧の関係を示す散布図である。
図9図2の制御部により実行される心機能測定処理Bを示すフローチャートである。
図10】左心と右心の区分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明に係る好適な実施形態について説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0026】
<第1の実施形態>
(動態画像解析システム100の構成)
まず、本発明に係る第1の実施形態の構成について説明する。
図1に、本実施形態における動態画像解析システム100の全体構成例を示す。
動態画像解析システム100は、例えば、集中治療室や手術室等に在室している移動が困難な患者を被検者として撮影を行うための回診用のシステムであり、放射線発生装置1と、コンソール2と、アクセスポイント3と、FPD(Flat Panel Detector)カセッテ4と、を備えて構成されている。放射線発生装置1は、車輪を有し、コンソール2やアクセスポイント3を設置した移動可能な回診車として構成されている。動態画像解析システム100において、コンソール2は、アクセスポイント3を介して放射線発生装置1及びFPDカセッテ4と通信接続可能である。
【0027】
動態画像解析システム100は、図1に示すように、手術室(集中治療室)Rc等に持ち込まれ、FPDカセッテ4を、例えばベッドBに寝ている被検者H(被検体)とベッドBとの間もしくは、図示しないベッドBの被検者Hとは反対面に設けられた挿入口に差し込む等した状態で、放射線発生装置1のポータブルの放射線源11から放射線を照射して、被検者Hの動態撮影を行うシステムである。
動態撮影とは、被検者Hに対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(
連続照射)ことで、複数の画像を取得することをいう。動態撮影では、例えば、呼吸運動
に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ被検者Hの動態を撮影する。この連続撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
本実施形態においては、動態画像解析システム100は、被検者Hの胸部正面の動態を撮影するものとして説明する。
【0028】
以下、動態画像解析システム100を構成する各装置について説明する。
放射線発生装置1は、パルス照射、連続照射の少なくともいずれか一方が可能な放射線発生装置である。放射線発生装置1は、放射線を照射する放射線源11と、放射線照射制御部12と、曝射スイッチ13等を備えて構成されている。
【0029】
放射線源11は、放射線照射制御部12の制御に従って、被検者Hに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御部12は、コンソール2から送信された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、管電流、管電圧、フレームレート(1単位時間(1秒)当たりに撮影するフレーム画像数)、1撮影当たりの総撮影時間もしくは総撮影フレーム画像数、付加フィルター種、パルス照射の場合は1フレーム画像当たりの放射線照射時間等である。
曝射スイッチ13は、押下されることにより、放射線照射指示信号をコンソール2に入力する。
【0030】
コンソール2は、放射線照射条件を放射線発生装置1に出力し、画像読取条件をFPDカセッテ4に出力して、放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御したり、FPDカセッテ4から送信された胸部動態画像に基づいて被検者Hの心機能の評価値として、一回拍出量(SV)や心拍出量(CO)を算出し、算出結果を表示したりする。
【0031】
図2に、コンソール2の機能構成例を示す。図2に示すように、コンソール2は、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25、コネクター26等を備えて構成され、各部はバス27により接続されている。
【0032】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、コンソール2各部の動作や、放射線発生装置1及びFPDカセッテ4の動作を集中制御する。また、制御部21は、展開されたプログラムに従って後述する心機能評価処理Aを始めとする各種処理を実行し、抽出手段、算出手段、解析手段、制御手段、除去手段として機能する。
【0033】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、図4に示す心機能測定処理Aを実行するためのプログラムを記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
また、記憶部22は、動態撮影時の放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。放射線照射条件及び画像読取条件は、操作部23の操作によりユーザーが設定可能である。
【0034】
また、記憶部22は、年齢及び体格(例えば、身長及び/又は体重)の組み合わせ毎に、胸部動態画像の心臓面積の心拍一周期における極大値と極小値の差分値から一回拍出量を算出するための算出式(直線の式)に用いられる係数を格納した係数テーブルを記憶している。
この係数テーブルに格納されている係数は、実験的に求められたものである。
【0035】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0036】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0037】
通信部25は、無線LANアダプタ等を備え、アクセスポイント3を介して無線LAN等の通信ネットワークに接続された放射線発生装置1、FPDカセッテ4を始めとする外部機器との間のデータ送受信を制御する。
【0038】
コネクター26は、図示しないケーブルを介してFPDカセッテ4と通信接続するためのコネクターである。
【0039】
図1に戻り、アクセスポイント3は、放射線発生装置1とコンソール2との間の通信や、コンソール2とFPDカセッテ4との間の通信等を中継する。
【0040】
FPDカセッテ4は、動態撮影対応の可搬型の放射線検出器である。FPDカセッテ4は、ガラス基板等の基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被検者Hを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の放射線検出素子がマトリックス状(二次元状)に配列されて構成されている。各放射線検出素子には、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部が接続され、スイッチング部により各放射線検出素子への電気信号の蓄積及び読み取りが制御され、画像データ(フレーム画像)が取得される。FPDには放射線をシンチレータを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、放射線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
【0041】
FPDカセッテ4は、スイッチング部による電気信号の蓄積及び読み取りを制御する読取制御部と、アクセスポイント3を介してコンソール2と通信接続するための通信部とを備えている(何れも図示せず)。フレームレート、1撮影当たりの撮影フレーム画像数、画像サイズ(マトリックスサイズ)等の画像読取条件は、通信部を介してコンソール2により設定される。読取制御部は、設定された画像読取条件に基づいて、スイッチング部による各放射線検出素子への電気信号の蓄積及び読み取りを制御する。また、FPDカセッテ4は、コネクターを有し、図示しないケーブルを介してコンソール2と通信接続可能である。
【0042】
なお、FPDカセッテ4は、放射線技師等の撮影実施者が持参してもよいが、FPDカセッテ4は比較的重く、落下すると壊れたり故障したりする可能性があるため、回診車に設けられたカセッテ用のポケット61aに挿入されて搬送できるようになっている。
【0043】
(動態画像解析システム100の動作)
次に、動態画像解析システム100における動作について説明する。
まず、撮影実施者は、コンソール2の操作部23により被検者Hの患者情報(氏名、年齢、性別、体格等)、検査情報(検査対象部位(ここでは、胸部)、検査年月日等)を入力するとともに、放射線源11やFPDカセッテ4を所定の位置にセットする。
コンソール2の制御部21は、検査対象部位(ここでは胸部)に対応する放射線照射条件を放射線照射制御部12に設定するとともに、画像読取条件をFPDカセッテ4に設定する。
曝射スイッチ13が押下されると、制御部21は、放射線照射制御部12及びFPDカセッテ4を制御して、被検者Hの胸部の動態撮影を行わせる。FPDカセッテ4は、撮影により取得したフレーム画像を順次コンソール2に送信する。
【0044】
コンソール2においては、FPDカセッテ4から送信された胸部動態画像のフレーム画像の受信が開始されると、心機能測定処理Aを開始する。
【0045】
ここで、本願発明者は、多数の被検者について、肺動脈カテーテルを用いた熱希釈法などの方法で心拍出量を測定するとともに、測定時の胸部動態画像から心臓面積を算出し、心拍出量と心臓面積との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から肺野領域を抽出し、心拍出量と肺野領域内の平均画素値との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から心臓領域を抽出し、心拍出量と心臓領域内の平均画素値との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から心臓領域の直径(例えば、心臓領域の水平方向の直径の最大、以下同じ。)を算出し、心拍出量と心臓の直径との関係について検討した。なお、検討は、被検者の年齢及び体格によってグループ分けして行った。
【0046】
図3(a)は、上記検討の一例として作成した、心収縮期(心拍位相のうち最も心臓が収縮した位相を指す。以下同じ。)に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓面積と心拍出量との関係を示す散布図、図3(b)は、胸部動態画像の肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均と心拍出量との関係を示す散布図である。図3(a)~(b)に示すように、心臓面積、肺野領域の平均画素値は、それぞれ心拍出量と高い相関があり、両者の関係は、直線の式により表すことができることがわかる。
【0047】
図3(a)においては、心収縮期に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓面積と心拍出量との関係を一例として示しているが、検討の結果、所定の心拍位相(例えば、心収縮期や心拡張期(心拍位相のうち最も心臓が拡張した位相を指す。以下同じ。))に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓面積と心拍出量、胸部動態画像から算出された心臓面積の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と心拍出量、胸部動態画像から算出された心臓面積の心拍一周期における平均と心拍出量についても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。また、多数の被検者について、熱希釈法などにより測定された心拍出量から一回拍出量を算出して検討した結果、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓面積と一回拍出量、胸部動態画像から算出された心臓面積の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と一回拍出量、胸部動態画像から算出された心臓面積の心拍一周期における平均と心拍出量についても同様に、直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0048】
また、図3(b)においては、胸部動態画像から算出された肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均と心拍出量との関係を一例として示しているが、検討の結果、所定の呼吸位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された肺野領域内の平均画素値と心拍出量、胸部動態画像から算出された肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における極大値と極小値の差分値と心拍出量についても同様に、直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。また、多数の被検者について、熱希釈法などにより測定された心拍出量から一回拍出量を算出して同様に検討した結果、胸部動態画像から算出された肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均と一回拍出量、所定の呼吸位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された肺野領域内の平均画素値と一回拍出量、胸部動態画像から算出された肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における極大値と極小値の差分値と一回拍出量についても同様に、直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0049】
また、胸部動態画像から算出された心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における平均と心拍出量、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓領域内の平均画素値と心拍出量、胸部動態画像から算出された心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と心拍出量についても同様に検討した結果、それぞれ直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。また、多数の被検者について、熱希釈法などにより求めた心拍出量から一回拍出量を算出して同様に検討した結果、心拍一周期における心臓領域内の平均画素値の平均と一回拍出量、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓領域内の平均画素値と一回拍出量、心拍一周期における心臓領域内の平均画素値の極大値と極小値の差分値と一回拍出量についても同様に、直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0050】
また、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓領域の直径(例えば、水平方向の直径の最大)と心拍出量、胸部動態画像から算出された心臓領域の直径の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と心拍出量、胸部動態画像から算出された心臓領域の直径の心拍一周期における平均と心拍出量についても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。また、多数の被検者について、熱希釈法などにより測定した心拍出量から一回拍出量を算出して同様に検討した結果、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓領域の直径と一回拍出量、胸部動態画像から算出された心臓領域の直径の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と一回拍出量、胸部動態画像から算出された心臓領域の直径の心拍一周期における平均と一回拍出量についても同様に、直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0051】
コンソール2は、これらの検討結果に基づいて、胸部動態画像から一回拍出量、心拍出量を算出する。本実施形態では、一例として、胸部動態画像から算出された心臓面積の心拍一周期における極大値と極小値の差分値をパラメーターとして一回拍出量及び心拍出量を算出する心機能測定処理Aについて説明する。
【0052】
図4に、コンソール2により実行される心機能測定処理Aの流れを示す。心機能測定処理Aは、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0053】
まず、制御部21は、受信したフレーム画像から心臓面積を算出する(ステップS1)。
図5は、胸部動態画像のフレーム画像を模式的に示す図である。図5に示すように、胸部正面の動態画像では、心臓(図5においてR1で示す領域)は略楕円形状の領域として描画される。
【0054】
ステップS1において、制御部21は、まず、受信したフレーム画像から心臓領域を抽出する。心臓領域の抽出は、特に限定されないが、例えば、テンプレートマッチング処理を用いて行うことができる。例えば、記憶部22に心臓のテンプレート画像を記憶しておき、フレーム画像内においてテンプレート画像を移動させながらテンプレート画像とテンプレート画像に重なる部分の類似度を算出し、類似度が最も高い領域を心臓領域として抽出する。類似度は、例えば、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)等を用いて算出することができる。次いで、求めた心臓領域の画素数をカウントして画素サイズを乗算することにより、心臓面積を算出することができる。
【0055】
次いで、制御部21は、算出済みの心臓面積の時間変化に基づいて、心拍一周期分のフレーム画像の心臓面積を算出したか否かを判断する(ステップS2)。心拍一周期分のフレーム画像の心臓面積を算出していないと判断した場合(ステップS2;NO)、制御部21は、ステップS1に戻る。
【0056】
心拍一周期分の心臓面積を算出したと判断した場合(ステップS2;YES)、制御部21は、図6に示すように、取得した周期の心臓面積の極大値と極小値を算出し、その差分値を算出する(ステップS3)。
【0057】
次いで、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの年齢及び体格に応じた係数を取得して、取得した係数を用いた算出式(直線式)にステップS3で求めた差分値を代入して、被検者Hの心臓の一回拍出量を算出する(ステップS4)。
【0058】
次いで、制御部21は、心拍数を算出し、一回拍出量及び心拍数から心拍出量を算出する(ステップS5)。
まず、制御部21は、心臓面積の時間変化の周期[sec]を算出する。この周期は、心拍周期に相当する。次いで、(式1)により心拍数を算出する。
心拍数=60÷周期[sec]・・・(式1)
次いで、制御部21は、以下の(式2)により心拍出量を算出する。
心拍出量=一回拍出量×心拍数・・・(式2)
なお、算出した心拍数、一回拍出量及び心拍出量は、胸部動態画像から算出した心臓面積、肺野面積、被検者Hの身長、又は体重に基づく補正係数で正規化することが好ましい。
【0059】
次いで、制御部21は、算出した心拍数、一回拍出量及び心拍出量を表示部24に表示する(ステップS6)。
本実施形態では、FPDカセッテ4から心拍一周期分のフレーム画像が受信される毎に、心拍数、一回拍出量及び心拍出量が算出され、表示部24に表示される(表示が更新される)。すなわち、ほぼリアルタイムに心拍数、一回拍出量及び心拍出量を測定して表示することができる。
【0060】
ステップS6における表示例としては、例えば、受信したフレーム画像を順次表示するとともに、算出された最新の心拍数、一回拍出量及び心拍出量を数値で表示する。または、算出された心拍数、一回拍出量及び心拍出量をそれぞれ時系列のグラフとして表示してもよい。或いは、表示するフレーム画像の心臓領域を、心拍数、一回拍出量又は心拍出量の値に応じた色で表示することとしてもよい。心拍数、一回拍出量、心拍出量のいずれを表示するかは、ユーザーが設定できるようにしてもよい。
【0061】
次いで、制御部21は、FPDカセッテ4からの動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了したか否かを判断する(ステップS7)。例えば、FPDカセッテ4から動態画像のフレーム画像の送信終了が通知された場合に、制御部21は、動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了したと判断する。
【0062】
動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了していないと判断した場合(ステップS7;NO)、制御部21は、ステップS1に戻る。
動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了したと判断した場合(ステップS7;YES)、制御部21は、心機能測定処理Aを終了する。
【0063】
このように、心機能測定処理Aにおいては、胸部動態画像の各フレーム画像から心臓領域を抽出し、抽出した心臓領域から算出した心臓面積を、被検者Hの年齢や体格に応じた係数を用いた算出式に代入することにより一回拍出量を算出し、一回拍出量と、心臓面積の時間変化から求めた心拍数に基づいて心拍出量を算出する。したがって、従来のように、胸部動態画像の各フレーム画像から血管内の脈動部や心臓の局所的な部分等の認識しづらい微細な構造を検出してその計測値や画素値を利用するのではなく、容易に認識することが可能な心臓領域の面積を利用して心拍数、一回拍出量及び心拍出量を算出するため、心拍数、一回拍出量及び心拍出量を精度良く算出することが可能となる。
【0064】
心機能測定処理Aにおいては、FPDカセッテ4から順次送信される胸部動態画像のフレーム画像から、心拍一周期毎に心臓面積の極大値と極小値の差分値を算出し、算出した差分値を用いて一回拍出量を算出し、一回拍出量と心拍数から心拍出量を算出する例について説明したが、一回拍出量や心拍出量を求めるためのパラメーターとしては、上記差分値に限定されない。例えば、記憶部22の係数テーブルに、実験により検証された、胸部動態画像から算出された以下のいずれかのパラメーターの値から一回拍出量を算出するための算出式に用いられる係数を記憶しておき、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた係数を取得して、取得した係数を用いた算出式に胸部動態画像から算出されたパラメーターの値を代入して一回拍出量を算出してもよい。そして、算出した一回拍出量と心拍数から心拍出量を算出してもよい。または、記憶部22の係数テーブルに、以下のいずれかのパラメーターの値から一回拍出量及び心拍出量のそれぞれを算出するための算出式に用いられる係数を記憶しておき、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた係数を取得して、取得した係数を用いた算出式に胸部動態画像から算出されたパラメーターの値を代入して、一回拍出量及び心拍出量を算出してもよい。
【0065】
以下のパラメーターは、フレーム画像から容易に認識可能な心臓領域の面積、径、画素値、又は肺野領域の画素値から求められるものであり、パラメーターの算出に微細な構造の抽出や認識を伴わないため、精度良く一回拍出量及び心拍出量を算出することが可能である。
なお、心臓面積又は心臓領域の画素値に基づくパラメーターを用いる場合は、体動や呼吸による誤差を低減するため、動態撮影を行う際に、被検者Hに息止めを指示して息止めの状態で動態撮影を行うことが好ましい。
【0066】
〈パラメーター例〉
・予め定められた心拍位相(例えば、心収縮期、心拡張期、その中間等)の心臓面積
・心臓面積の心拍一周期における平均値
・肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均
・予め定められた呼吸位相(例えば、最大呼気位、最大吸気位、その中間等)の肺野領域内の平均画素値
・肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における極大値と極小値の差分値
・心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における平均
・予め定められた心拍位相(例えば、心収縮期、心拡張期、その中間等)の心臓領域内の平均画素値
・心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における極大値と極小値の差分値
・心臓領域の直径の心拍一周期における平均
・予め定められた心拍位相(例えば、心収縮期、心拡張期、その中間等)の心臓領域の直径
・心臓領域の直径の極大値と極小値の心拍一周期における差分値
【0067】
なお、第1の実施形態においては、心機能の評価値を算出するための算出式に用いる係数を予め実験的に求めて記憶部22に記憶しておくこととしたが、一回拍出量を算出する直前に、熱希釈法等の他の手法により被検者から心拍出量を測定し、測定した心拍出量及び測定時の胸部動態画像のフレーム画像から算出したパラメーター(上述した心臓領域の面積、径、画素値又は肺野領域の画素値)に基づいて係数を算出することとしてもよい。例えば、(式2)より心拍出量=一回拍出量×心拍数なので、
心拍出量=パラメーター×係数×心拍数・・・(式3)
となる。よって、係数は、(式4)により求めることができる。
係数=心拍出量÷(パラメーター×心拍数)・・・(式4)
【0068】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、胸部動態画像から算出した心臓面積に基づいて、心機能の評価値として、心拍数、一回拍出量及び心拍出量を算出する場合について説明したが、第2の実施形態においては、胸部動態画像から算出した肺野領域内の画素値に基づいて、心機能の評価値として血圧(BP)、肺動脈圧(PAP)、動脈圧(AP)、及び中心静脈圧を算出し、被検者Hの水分量の評価値として肺水分量及び全身水分量を算出する場合を例にとり説明する。
【0069】
第2の実施形態において、記憶部22には、後述する心機能測定処理Bを実行するためのプログラムが記憶されている。また、記憶部22には、年齢及び体格(例えば、身長及び/又は体重)の組み合わせ毎に、胸部動態画像における肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均から血圧を算出するための算出式(直線の式)に用いられる係数(血圧測定用の係数)、肺動脈圧を算出するための算出式(直線の式)に用いられる係数(肺動脈圧測定用の係数)、動脈圧を算出するための算出式(直線の式)に用いられる係数(動脈圧測定用の係数)、中心静脈圧を算出するための算出式(直線の式)に用いられる係数(中心静脈圧測定用の係数)、肺水分量を算出するための算出式(直線の式)に用いられる係数(肺水分量測定用の係数)、全身水分量を算出するための算出式(直線の式)に用いられる係数(全身水分量測定用の係数)がそれぞれ記憶されている。
【0070】
その他の第2の実施形態における動態画像解析システム100の構成は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用する。また、動態画像解析システム100における胸部動態画像の撮影動作についても、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、以下、コンソール2において、FPDカセッテ4から胸部動態画像のフレーム画像の受信が開始された際に開始される心機能測定処理Bについて説明する。
【0071】
ここで、本願発明者は、多数の被検者について、血圧計で血圧を測定するとともに、測定時の胸部動態画像から心臓面積を算出し、血圧と心臓面積との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から肺野領域を抽出し、血圧と肺野領域内の平均画素値との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から心臓領域を抽出し、血圧と心臓領域内の平均画素値との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から心臓の直径を算出し、血圧と心臓領域の直径との関係について検討した。なお、検討は、被検者の年齢及び体格によってグループ分けして行った。
【0072】
図7(a)は、上記検討の一例として、心収縮期に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓面積と血圧との関係を示す散布図、図7(b)は、胸部動態画像の肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均と血圧との関係を示す散布図である。図7(a)~(b)に示すように、心臓面積、肺野領域内の平均画素値は、それぞれ血圧と高い相関があり、両者の関係は、直線の式により表すことができることがわかる。
【0073】
図7(a)においては、心収縮期に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓面積と血圧との関係を一例として示しているが、検討の結果、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓面積と血圧、心臓面積の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と血圧、心臓面積の心拍一周期における平均と血圧についても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0074】
また、図7(b)においては、胸部動態画像の肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均と血圧との関係を一例として示しているが、検討の結果、所定の呼吸位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された肺野領域内の平均画素値と血圧、肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における極大値と極小値の差分値と血圧についても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0075】
また、胸部動態画像の心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における平均と血圧、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓領域内の平均画素値と血圧、心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と血圧についても同様に検討した結果、それぞれ直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0076】
また、検討の結果、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓領域の直径(例えば、水平方向の直径の最大)と血圧、胸部動態画像の心臓領域の直径の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と血圧、心臓領域の直径の心拍一周期における平均と血圧についても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0077】
同様に、本願発明者は、多数の被検者について、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量をそれぞれ測定するとともに、測定時の胸部動態画像から心臓面積を算出し、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれと心臓面積との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から肺野領域を抽出し、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれと肺野領域内の平均画素値との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から心臓領域を抽出し、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれと心臓領域内の平均画素値との関係について検討した。また、測定時の胸部動態画像から心臓の直径を算出し、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれと心臓の直径との関係について検討した。なお、検討は、被検者の年齢及び体格によってグループ分けして行った。また、肺動脈圧の測定は、肺動脈カテーテル等によって測定し、動脈圧及び肺水分量の測定は、循環動態モニター等で測定した。また、中心静脈圧は中心静脈カテーテルで測定し、全身水分量は輸液量及び尿量と出血量から判断した。
【0078】
図8(a)は、上記検討の一例として、心収縮期に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓面積と肺動脈圧との関係を示す散布図、図8(b)は、胸部動態画像の肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均と肺動脈圧との関係を示す散布図である。図8(a)~(b)に示すように、心臓面積、肺野領域内の平均画素値は、それぞれ肺動脈圧と高い相関があり、両者の関係は、直線の式により表すことができることがわかる。
【0079】
図8(a)においては、心収縮期に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓面積と肺動脈圧との関係を一例として示しているが、検討の結果、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓面積と肺動脈圧、胸部動態画像の心臓面積の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と肺動脈圧、心臓面積の心拍一周期における平均と肺動脈圧についても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量についても同様であった。ただし、直線の式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0080】
また、図8(b)においては、胸部動態画像の肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均と肺動脈圧との関係を一例として示しているが、検討の結果、所定の呼吸位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された肺野領域内の平均画素値と肺動脈圧、胸部動態画像の肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における極大値と極小値の差分値と肺動脈圧についても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量についても同様であった。ただし、直線の式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0081】
また、胸部動態画像の心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における平均と肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれ、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)から算出された心臓領域内の平均画素値と肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれ、心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれについても同様に検討した結果、それぞれ直線の式により両者の関係を表すことができることが見出された。ただし、直線式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0082】
また、検討の結果、所定の心拍位相に撮影された胸部動態画像(フレーム画像)の心臓領域の直径(例えば、水平方向の直径の最大)と肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれ、胸部動態画像の心臓領域の直径の心拍一周期における極大値と極小値の差分値と肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれについても同様に、直線の式によりその関係を表すことができることが見出された。ただし、直線の式の係数は、それぞれ異なるものであった。
【0083】
コンソール2は、これらの検討結果に基づいて、胸部動態画像から血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量を算出する。本実施形態では、一例として、最大呼気位における肺野領域内の平均画素値の平均をパラメーターとして、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量を算出する心機能測定処理Bについて説明する。
【0084】
図9に、心機能測定処理Bの流れを示す。心機能測定処理Bは、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0085】
まず、制御部21は、受信したフレーム画像から肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域内の平均画素値を算出する(ステップS11)。
【0086】
ステップS11において、制御部21は、まず、受信したフレーム画像から肺野領域を抽出する。肺野領域は、例えば、各画素の画素値のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近の小領域でエッジが最大となる点を境界に沿って抽出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。
【0087】
次いで、制御部21は、算出済みの平均画素値の時間変化に基づいて、呼吸一周期分のフレーム画像から肺野領域内の平均画素値を算出したか否かを判断する(ステップS12)。呼吸一周期分のフレーム画像から肺野領域内の平均画素値を算出していないと判断した場合(ステップS12;NO)、制御部21は、ステップS11に戻る。
【0088】
呼吸一周期分のフレーム画像から肺野領域内の平均画素値を算出したと判断した場合(ステップS12;YES)、制御部21は、最大呼気位における肺野領域内の平均画素値を取得する(ステップS13)。最大呼気位における肺野領域内の平均画素値は、呼吸一周期分の各フレーム画像における肺野領域内の平均画素値のうち、最も低い値である。
【0089】
次いで、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報(年齢及び体格)に応じた血圧測定用の係数を取得して、取得した係数を用いた算出式にステップS13で算出した平均画素値を代入して、被検者Hの血圧を算出する(ステップS14)。
【0090】
次いで、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた肺動脈圧測定用の係数を算出して、取得した係数を用いた算出式にステップS13で取得した平均画素値を代入して、被検者Hの肺動脈圧を算出する(ステップS15)。
【0091】
次いで、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた動脈圧測定用の係数を算出して、取得した係数を用いた算出式にステップS13で取得した平均画素値を代入して、被検者Hの動脈圧を算出する(ステップS16)。
【0092】
次いで、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた中心静脈圧測定用の係数を算出して、取得した係数を用いた算出式にステップS13で取得した平均画素値を代入して、被検者Hの中心静脈圧を算出する(ステップS17)。
【0093】
次いで、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた肺水分量測定用の係数を取得して、取得した係数を用いた算出式にステップS13で算出した平均画素値を代入して、被検者Hの肺水分量を算出する(ステップS18)。
【0094】
次いで、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた全身水分量測定用の係数を取得して、取得した係数を用いた算出式にステップS13で算出した平均画素値を代入して、被検者Hの全身水分量を算出する(ステップS19)。
なお、算出した各評価値は、胸部動態画像から算出した心臓面積、肺野面積、被検者Hの身長、又は体重に基づく補正係数で正規化することが好ましい。
【0095】
次いで、制御部21は、算出した血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量を表示部24に表示する(ステップS20)。
本実施形態では、FPDカセッテ4から最大呼気位のフレーム画像が受信される毎に、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量が算出され、表示部24に表示される(表示が更新される)。すなわち、ほぼリアルタイムに血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量を測定して表示することができる。
【0096】
ステップS20における表示例としては、例えば、受信したフレーム画像を順次表示するとともに、算出された最新の血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量を数値で表示する。または、算出された血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量をそれぞれ時系列のグラフとして表示してもよい。表示するフレーム画像の心臓領域を、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量又は全身水分量の値に応じた色で表示することとしてもよい。フレーム画像の心臓領域をいずれの評価値に応じた色で表示するかは、ユーザーが設定できるようにしてもよい。
【0097】
次いで、制御部21は、FPDカセッテ4からの動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了したか否かを判断する(ステップS21)。例えば、FPDカセッテ4から動態画像のフレーム画像の送信終了が通知された場合に、制御部21は、動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了したと判断する。
【0098】
動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了していないと判断した場合(ステップS21;NO)、制御部21は、ステップS11に戻る。
動態画像の一連のフレーム画像の受信が終了したと判断した場合(ステップS20;YES)、制御部21は、心機能測定処理Bを終了する。
【0099】
このように、心機能測定処理Bにおいては、胸部動態画像の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域から算出した平均画素値の呼吸一周期分の平均を、患者の年齢や体格に応じた係数を用いた算出式に代入することにより血圧を算出する。また、算出式の係数を変えて肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量を算出する。したがって、従来のように、胸部動態画像の各フレーム画像から血管内の脈動部や心臓の局所的な部分等の認識しづらい微細な構造を検出してその計測値や画素値を利用するのではなく、容易に認識することが可能な肺野領域の画素値を利用して血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量及び全身水分量を算出するため、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量を精度良く算出することが可能となる。
【0100】
心機能測定処理Bにおいては、FPDカセッテ4から順次送信される胸部動態画像のフレーム画像から、最大呼気位の肺野領域内の平均画素値を算出し、算出した平均画素値を用いて血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量を算出する例について説明したが、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、及び全身水分量を求めるためのパラメーターとしては、上記肺野領域内の平均画素値に限定されない。例えば、記憶部22の係数テーブルに、実験により検証された、胸部動態画像から算出された以下のいずれかのパラメーターの値から血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれを算出するための算出式に用いられる係数をそれぞれ記憶しておき、制御部21は、記憶部22の係数テーブルから被検者Hの患者情報に応じた血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれの測定用の係数を取得して、取得した係数を用いた算出式に胸部動態画像から算出されたパラメーターの値を代入し、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量のそれぞれを算出してもよい。以下のパラメーターは、フレーム画像から抽出した心臓領域の面積、径、画素値、又は肺野領域の画素値から求められるものであり、パラメーターの算出に微細な構造の抽出や認識を伴わないため、精度良く血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧、肺水分量、全身水分量を算出することが可能である。
なお、心臓面積又は心臓領域の画素値に基づくパラメーターを用いる場合は、体動や呼吸による誤差を低減するため、動態撮影を行う際に、被検者Hに息止めを指示して息止めの状態で動態撮影を行うことが好ましい。
【0101】
〈パラメーター例〉
・所定の心拍位相(例えば、心収縮期、心拡張期、その中間等)の心臓面積
・心臓面積の心拍一周期における平均値
・心臓面積の心拍一周期における極大値と極小値の差分値
・肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における平均
・所定の呼吸位相(例えば、最大呼気位、最大吸気位、その中間等)の肺野領域内の平均画素値
・肺野領域内の平均画素値の呼吸一周期における極大値と極小値の差分値
・心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における平均
・所定の心拍位相(例えば、心収縮期、心拡張期、その中間等)の心臓領域内の平均画素値
・心臓領域内の平均画素値の心拍一周期における極大値と極小値の差分値
・心臓領域の直径の心拍一周期における平均
・所定の心拍位相(例えば、心収縮期、心拡張期、その中間等)の心臓領域の直径
・心臓領域の直径の心拍一周期における極大値と極小値の差分値
【0102】
また、上記のパラメーターのいずれかと、実験的に予め求められた係数を用いた算出式に基づいて、輸液量を求めることとしてもよい。
【0103】
なお、第2の実施形態においては、心機能の評価値及び水分量の評価値を算出するための算出式に用いる係数を予め実験的に求めて記憶部22に記憶しておくこととしたが、各評価値を算出する直前に、他の検査(例えば、血圧の場合は血圧計による検査、肺動脈圧の場合は肺動脈カテーテルによる検査、動脈圧及び肺水分量の場合は循環動態モニターによる検査、中心静脈圧の場合は中心静脈カテーテルによる検査、全身水分量の場合は、輸液量、尿量と出血量の検査)により被検者から各評価値を測定し、測定した評価値及び測定時のフレーム画像から算出したパラメーターに基づいて、各評価値を算出するための係数を算出することとしてもよい。
【0104】
以上説明したように、コンソール2の制御部21によれば、胸部の動態を放射線撮影することにより得られた動態画像から心臓領域又は肺野領域を抽出し、抽出した心臓領域の面積、径、若しくは画素値、又は肺野領域の画素値に基づいて、心機能の評価値を算出し、表示部24に表示させる。
したがって、心機能の評価値の算出のために、低画質の動態画像から血管等の微細な構造の抽出や認識を行う必要がないため、精度良く心機能の評価値を算出することができる。
【0105】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明に係る動態画像解析システムの好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0106】
例えば、第1の実施形態においては一回拍出量及び心拍量を、第2の実施形態においては血圧、肺動脈圧、動脈圧、及び肺水分量を算出する場合について説明したが、コンソール2において一回拍出量、心拍量、血圧、肺動脈圧、動脈圧、及び肺水分量を全て算出することとしてもよいし、いずれか一つを算出してもよいし、いずれか二以上を算出することとしてもよい。
【0107】
また、上記実施形態においては、各パラメーターから心機能の評価値を算出するための算出式の係数を記憶部22に記憶しておくこととしたが、算出式そのものを記憶部22に記憶しておくこととしてもよい。また、各パラメーターの値と心機能の評価値との対応関係を示すテーブルを記憶部22に記憶しておき、テーブルを参照して心機能の評価値を求めることとしてもよい。
【0108】
また、例えば、心臓領域の平均画素値をパラメーターとして心機能の評価値(心拍数、一回拍出量、心拍出量、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧等)を測定する場合、制御部21は、心臓領域を心房と心室とに区分して、心房と心室のそれぞれの心機能の評価値を測定することとしてもよい。
心臓領域を心房と心室に区分する手法としては、例えば、血流波形のタイミングから判断する方法がある。例えば、肺野領域の血流による画素値(平均画素値)の時間変化において、血液が肺野に充満する(画素値が低下する)タイミングを基準とし、心臓領域上に複数のROIを配置し、基準と同タイミングで画素値が上昇する(血液が減る)ROIの位置を心室、基準と同タイミングで画素値が低下(血液が増える)ROIの位置を心房と区分することができる。
ここで、肺野領域の血流による画素値の時間変化は、例えば、肺野領域の画素値の時間変化方向を時間方向のハイパスフィルター(例えば、カットオフ周波数0.80Hz)でフィルタリングすることで取得することができる。肺野領域の画素値の時間変化に対して時間方向のバンドパスフィルター(例えば、低域のカットオフ周波数0.8Hz、高域のカットオフ周波数2.4Hz)を用いてフィルタリングを行うこととしてもよい。
このように、心房と心室のそれぞれの心機能の評価値(心拍数、一回拍出量、心拍出量、血圧、肺動脈圧、動脈圧、中心静脈圧等)を測定することで、ユーザーが心房と心室のそれぞれの心機能を把握し、心機能の低下等がある場合は、その箇所を特定することが可能となる。
【0109】
また、図10に示すように、胸部動態画像において、左心は心臓領域の長軸の上側、右心は下側に位置している。そこで、心臓領域や心臓領域の平均画素値をパラメーターとして心機能の評価値を測定する場合、心臓領域の長軸の上側を左心、下側を右心として、左心と右心を区別して心機能の評価値を測定してもよい。これにより、ユーザーが右心と左心のそれぞれの心機能を把握し、心機能の低下等がある場合は、その箇所を特定することが可能となる。
また、心房と心室の区別と左心と右心の区別を組み合わせて、左心房、左心室、右心房、右心室を区別して、それぞれの心機能の評価値を測定することとしてもよい。これにより、心機能の低下等がある場合は、その箇所をより詳細に特定することが可能となる。
【0110】
また、手術前と、手術中及び/又は手術後とにおいて、上述の動態撮影及び心機能測定処理A及び/又は心機能測定処理Bを行って心機能の評価値や水分量の評価値を取得し、制御部21は、手術前に取得した心機能の評価値や水分量の評価値を基準として、手術中及び/又は手術後の心機能の評価値の差分値や水分量の評価値を算出して表示部24に表示することとしてもよい。これにより、手術前と手術中及び/又は手術後の心機能の差異や水分量の差異をユーザーが直感的に把握することが可能となる。
【0111】
手術中の撮影では、医療器具や医師の手が撮影したフレーム画像に写りこみ、心機能や水分量の測定に影響を及ぼす可能性がある。そこで、制御部21は、受信したフレーム画像に対し、まず、画素値における被写体(人体の胸部)以外の陰影の信号成分を除去する処理を施してから、ステップS1又はステップS11の処理を開始することが好ましい。被写体以外の陰影の領域(医療器具や手の領域)は、その形状や画素値により特定することができる。例えば、閾値処理、パターン認識、ディープラーニング等の機械学習により構築した識別器等を用いて特定することができる。また、被写体以外の陰影の信号成分は、例えば、胸部ファントムを撮影したX線画像と胸部ファントムに被写体以外の構造物(医療器具等)を配置した状態で撮影したX線画像を用いてディープラーニング等の機械学習により構築した識別器を用いて推定することができる。フレーム画像において認識された領域の画素値から推定された画素値を減算することで、被写体以外の陰影の信号成分を除去することができる。
【0112】
また、上記実施形態では、コンソール2の制御部21は、動態撮影中において取得されたフレーム画像を順次受信して心機能の評価値や水分量の評価値を算出したが、例えば、算出した心機能の評価値又は水分量の評価値が良好な状態であることを示す所定の範囲である場合、照射する放射線量を変更(低減)するよう放射線発生装置1を制御することとしてもよい。心機能の評価値が良好な状態である場合、大まかな評価値がわかればよいので、測定精度が少し低減しても被曝量を低減させた方が好ましいからである。なお、照射する放射線量を変更した場合は、放射線量に応じて測定に用いる係数も変更する。
【0113】
また、上記実施形態においては、本発明の動態画像解析システムが回診用のシステムである場合を例にとり説明したが、本発明は、撮影室で撮影を行い、得られた動態画像に解析を行う動態画像解析システムにおいても適用可能である。回診用のシステムとすることで、災害現場、戦場などの屋外環境で撮影して被検者の心機能の評価値や水分量の評価値を測定することが可能となる。
【0114】
また、上記実施形態においては、心臓領域や肺野領域全体をROIとしてそのROI内の平均画素値に基づいて心機能の評価値や水分量の評価値を算出することとして説明したが、心臓領域や肺野領域の一部にROIを設定してROI内の平均画素値に基づいて心機能の評価値や水分量の評価値を算出することとしてもよい。
【0115】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0116】
その他、動態画像解析システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0117】
100 動態画像解析システム
1 放射線発生装置
11 放射線源
12 放射線照射制御部
13 曝射スイッチ
2 コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 コネクター
27 バス
3 アクセスポイント
4 FPDカセッテ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10