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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20221220BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20221220BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20221220BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221220BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20221220BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20221220BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
B41J29/46 Z
B41J29/38 204
B41J29/38 301
B41J29/38 302
B41J2/01 301
B41J2/175 301
G03G21/00 386
G03G21/00 512
H04N1/00 002A
H04N1/00 002B
H04N1/00 002Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018219363
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020086839
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】山田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】新里 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-057632(JP,A)
【文献】特開2006-243377(JP,A)
【文献】特開2010-011097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B41J 2/01-2/21
B41J 29/38
B41J 29/46-29/48
G03G 21/00-21/20
H04N 1/00-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換又は補充により回復が可能な消耗品と、
前記消耗品の残量情報に基づき警告情報を報知する報知部と、
前記消耗品の前記残量情報を取得する残量情報取得部と、
前記消耗品の交換又は補充の状態を判断するための判断情報を取得する判断情報取得部と、
前記残量情報と前記判断情報とを対応付けた学習モデルに基づいて、前記警告情報の前記報知を機械学習する学習部と、
を備え
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われた場合、
前記学習部は、前記警告情報の前記報知のタイミングを早めるように前記機械学習し、
前記報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われない場合、
前記報知部は、前記警告情報を再報知し、
前記学習部は、再報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われたとしても、前記警告情報の前記報知のタイミングを早めるような前記機械学習を行わず、
前記報知に対する操作は、前記報知部に前記報知された内容を確認したことを示す操作を含み、
前記警告情報に対応する操作は、前記消耗品の交換又は補充により前記消耗品の状態を回復する操作を含む
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記学習部は、前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われたタイミングに応じて、前記警告情報の前記報知のタイミングを前記機械学習する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われない場合、
前記学習部は、前記警告情報の前記報知のタイミングを遅らせるように前記機械学習する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われない場合、
前記学習部は、前記警告情報を前記報知するか否かを前記機械学習する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記学習部は、前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われたタイミングに応じて、前記警告情報を前記報知するか否かを判定する前記残量情報の判定閾値を前記機械学習する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われない場合、
前記学習部は、前記判定閾値が低くなるように前記機械学習する、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われた場合、
前記学習部は、前記判定閾値が高くなるように前記機械学習する、
ことを特徴とする請求項又はに記載の電子機器。
【請求項8】
前記報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われない場合、
前記報知部は、前記警告情報を再報知し、
前記学習部は、再報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われたとしても、前記判定閾値が高くなるような前記機械学習を行わない、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターやデジタルカメラなどの電子機器には、当該電子機器の各種情報を使用者に報知するディスプレイを備えたものが知られている。このような電子機器が有するディスプレイには、電子機器の製造番号などを示す機器個別情報、電子機器が正常に動作する動作状態を示す動作情報、電子機器の動作異常や消耗品の残量不足を示す警告情報、電子機器の過去の動作情報及び異常情報を示す履歴情報、電子機器の各種設定状態を示す設定情報など、様々な情報が表示される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ディスプレイとしてLCDパネルを有するデジタルカメラであって、当該LCDパネルが画像再生及び電子ビューファインダとして機能するほか、設定画面、及び電池の交換を促す警告メッセージ(警告情報)を表示する表示ディスプレイとして用いられる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-257601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のデジタルカメラにおいて、電池の交換を促す警告情報は、あらかじめ定められたタイミングと設定に基づいて電源のオン又はオフの操作に応答して表示される。しかしながら、使用者が求める警告情報の表示タイミングは、電子機器の使用環境や動作状況に応じて異なる。そのため、あらかじめ定められたタイミングと設定に基づいて表示される警告情報が、使用者が求めるタイミングで表示されないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子機器の一態様は、
交換又は補充により回復が可能な消耗品と、
前記消耗品の残量情報に基づき警告情報を報知する報知部と、
前記消耗品の前記残量情報を取得する残量情報取得部と、
前記消耗品の交換又は補充の状態を判断するための判断情報を取得する判断情報取得部と、
前記残量情報と前記判断情報とを対応付けた学習モデルに基づいて、前記警告情報の報知を機械学習する学習部と、
を備える。
【0007】
前記電子機器の一態様において、
前記学習部は、前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われたタイミングに応じて、前記警告情報の前記報知のタイミングを前記機械学習してもよい。
【0008】
前記電子機器の一態様において、
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われない場合、
前記学習部は、前記警告情報の前記報知のタイミングを遅らせるように前記機械学習してもよい。
【0009】
前記電子機器の一態様において、
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われない場合、
前記学習部は、前記警告情報を前記報知するか否かを前記機械学習してもよい。
【0010】
前記電子機器の一態様において、
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われた場合、
前記学習部は、前記警告情報の前記報知のタイミングを早めるように前記機械学習してもよい。
【0011】
前記電子機器の一態様において、
前記報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われない場合、
前記報知部は、前記警告情報を再報知し、
前記学習部は、再報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われたとしても、前記警告情報の前記報知のタイミングを早めるような前記機械学習を行わなくてもよい。
【0012】
前記電子機器の一態様において、
前記学習部は、前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われたタイミングに応じて、前記警告情報を前記報知するか否かを判定する前記残量情報の判定閾値を前記機械学習してもよい。
【0013】
前記電子機器の一態様において、
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われない場合、
前記学習部は、前記判定閾値が低くなるように前記機械学習してもよい。
【0014】
前記電子機器の一態様において、
前記警告情報の前記報知の後、前記報知に対する操作が行われた場合、
前記学習部は、前記判定閾値が高くなるように前記機械学習してもよい。
【0015】
前記電子機器の一態様において、
前記報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われない場合、
前記報知部は、前記警告情報を再報知し、
前記学習部は、再報知に対する操作が行われた後、前記警告情報に対応する操作が行われたとしても、前記判定閾値が高くなるような前記機械学習を行わなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】インクジェットプリンターの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図2】インクジェットプリンターの概略的な内部構造の一例を示す断面図である。
図3】吐出部の概略構成を示す断面図である。
図4】複数のノズルの配置の一例を示す図である。
図5】駆動信号COMの一例を示す図である。
図6】駆動信号選択制御回路の電気構成を示すブロック図である。
図7】選択回路の電気構成を示す回路図である。
図8】デコーダーにおけるデコード内容を示す図である。
図9】駆動信号選択制御回路の動作を説明するための図である。
図10】消耗品判定制御部の構成、及び消耗品判定制御部の周辺の構成を示すブロック図である。
図11】残量判断部の判定閾値の更新動作を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。以下では、本発明に係る電子機器の一例として、インクジェットプリンターを例に挙げて説明する。
【0018】
1.液体吐出装置の概要
本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図である。また、図2は、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す断面図である。本実施形態では、インクジェットプリンター1がラインプリンターである場合を示す。
【0019】
インクジェットプリンター1には、不図示のパーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgが入力される。そして、インクジェットプリンター1は、印刷データImgが示す画像を記録用紙Pに形成する印刷処理を実行する。
【0020】
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、駆動信号生成ユニット2、印刷ユニット3、記憶ユニット5、制御ユニット6、搬送ユニット7、及び電源ユニット9を備える。なお、以下では、駆動信号生成ユニット2、印刷ユニット3、記憶ユニット5、制御ユニット6、及び搬送ユニット7を、「動作ユニット」と称する場合がある。
【0021】
記憶ユニット5は、不図示のRAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、又はPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーと、の一方、又は両方を含んで構成される。そして、記憶ユニット5は、印刷データImg、インクジェットプリンター1の制御プログラム及びその他の各種情報を記憶する。
【0022】
制御ユニット6は、不図示のCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。また、制御ユニット6は、CPUの代わりに、又はCPUに加えて、不図示のFPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。そして、制御ユニット6が有する当該CPUが、記憶ユニット5に記憶されている制御プログラムを実行する。
【0023】
また、制御ユニット6は、印刷制御部61、及び消耗品判定制御部66を有する。印刷制御部61は、印刷ユニット3に設けられた駆動信号選択制御回路31を制御するための印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHと、駆動信号生成ユニット2に設けられた駆動信号生成回路20を制御するための波形指定信号dCOMと、搬送ユニット7を制御するための搬送制御信号と、を生成する。
【0024】
消耗品判定制御部66は、インクジェットプリンター1で用いられるインク、記録用紙P、その他各種消耗品の状態に基づいて、当該消耗品の交換又は補充による回復が必要か否かを判定する。
【0025】
搬送ユニット7は、制御ユニット6から入力される搬送制御信号に基づいて、印刷ユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させる。
【0026】
駆動信号生成ユニット2は、複数の駆動信号生成回路20を有する。複数の駆動信号生
成回路20には、制御ユニット6から波形指定信号dCOMが入力される。ここで、波形指定信号dCOMとは、駆動信号COMの波形を規定するデジタルの信号である。駆動信号生成回路20は、不図示のD/A変換回路を含み、入力される波形指定信号dCOMをアナログ信号に変換する。そして、当該アナログ信号を増幅することで、駆動信号COMを生成する。
【0027】
印刷ユニット3は、インクを吐出する吐出部600が設けられた複数の印刷モジュール30を有する。各印刷モジュール30は、M個の吐出部600と駆動信号選択制御回路31とを備える。駆動信号選択制御回路31には、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び駆動信号COMが入力される。駆動信号選択制御回路31は、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMを選択又は非選択とすることで、M個の吐出部600のそれぞれに対応する供給駆動信号VINを生成する。そして、駆動信号選択制御回路31は、供給駆動信号VINを対応する吐出部600に出力する。M個の吐出部600のそれぞれは、対応する供給駆動信号VINが入力されることで、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHにより規定された所定量のインクを所定のタイミングで吐出する。
【0028】
電源ユニット9は、インクジェットプリンター1が備える複数の動作ユニットに対して電力PWを供給する。電源ユニット9は、不図示の基板上に設けられた、電圧変換回路91、平滑化回路92、温度検出回路93、及び温度判定回路94を備える。電圧変換回路91は、商用交流電源から供給される交流電圧を変圧し、変圧後の交流電圧を平滑化回路92に出力する。平滑化回路92は、電圧変換回路91から入力される交流電圧を平滑化して直流電圧に変換する。温度検出回路93は、電源ユニット9の温度を検出するサーミスタ等の検出素子を備え、当該検出素子により検出される電源ユニット9の温度を検出し、当該温度の検出結果を示す温度情報XSを出力する。温度判定回路94には、温度情報XSが入力される。そして、温度判定回路94は、温度情報XSに基づいて、電源ユニット9の温度状態を示す温度判定情報XHを出力する。
【0029】
ここで、電源ユニット9は、インクジェットプリンター1が備える複数の動作ユニットに対して電力PWを供給する。そのため、インクジェットプリンター1の動作ユニットのいずれかにおいて異常が生じた場合、電源ユニット9が出力する電力PWが増加する。そして、電力PWの増加に伴って、電源ユニット9の発熱が増加する。すなわち、電源ユニット9の温度の変動、温度の上昇値、及び温度の上昇時間を検出することで、当該検出結果に基づいて、インクジェットプリンター1が有する複数の動作ユニットの内、いずれの動作ユニットで、異常が生じたのかを判断することが可能となる。
【0030】
以上のように構成されたインクジェットプリンター1において、印刷処理が実行された場合、印刷制御部61は、まず、ホストコンピューターから入力される印刷データImgを、記憶ユニット5に記憶させる。次に、印刷制御部61は、記憶ユニット5に記憶されている印刷データImg等の各種データに基づいて、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、波形指定信号dCOM、及び搬送制御信号等の各種信号を生成する。そして、印刷制御部61は、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、波形指定信号dCOM、及び搬送制御信号と、記憶ユニット5に記憶されている各種データとに基づいて、印刷ユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるように搬送ユニット7を制御しつつ、吐出部600が駆動されるように印刷ユニット3を制御する。これにより、印刷制御部61は、吐出部600からのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及びインクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像を記録用紙Pに形成する。
【0031】
また、インクジェットプリンター1は、表示部4及び操作部8を含む。表示部4は、例
えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等で構成される。表示部4は、印刷制御部61の制御に基づいて、インクジェットプリンター1の動作状態を示す動作情報、動作異常の有無を示す異常情報、インクや記録用紙P等の消耗品の残量を示す残量情報等の各種情報を表示する。操作部8は、インクジェットプリンター1の印刷処理を開始させる開始操作、当該印刷処理を停止させる停止操作、インクジェットプリンター1の動作異常などから復旧させる復旧操作、及び表示部4に表示される各種情報の確認操作を含む各種操作を使用者が実行するための使用者インターフェース(UI:User Interface)である。ここで、操作部8は、タッチパネルのように表示部4と一体に形成された構成であってもよい。
【0032】
図2は、インクジェットプリンター1の内部構成の概略を示す一部断面図である。なお、図2では、インクカートリッジ40が、印刷ユニット3に設けられる場合を例示しているが、インクカートリッジ40は、インクジェットプリンター1の他の場所に設けられても良い。また、図2では、インクジェットプリンター1が4つのインクカートリッジ40を備える場合を例示しているが、インクジェットプリンター1が備えるインクカートリッジ40の数は、5個以上、又は3個以下であってもよい。
【0033】
インクカートリッジ40は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの、4色と1対1に対応して設けられる。各インクカートリッジ40には、当該インクカートリッジ40に対応する色のインクが充填されている。また、各インクカートリッジには、充填されるインクの残量を検出するためのセンサー素子が設けられる。当該センサー素子は、インクカートリッジ40に充填されたインクの重量に基づいてインクの残量を検出する構成であってもよく、また、インクカートリッジ40に供給される電圧もしくは電流の波形に基づいてインクの残量を検出する構成であってもよい。このインクカートリッジ40に設けられたセンサー素子の出力信号は、消耗品判定制御部66に入力される。
【0034】
搬送ユニット7は、記録用紙Pを搬送するための駆動源となる搬送モーター70と、印刷ユニット3からインクが吐出される吐出方向において記録用紙Pを介して設けられたプラテン74と、搬送モーター70の作動により回転する搬送ローラー73と、回転自在に設けられたガイドローラー75と、記録用紙Pをロール状に巻き取った状態で収納するための収納部76と、を備える。また、収納部76には、記録用紙Pの残量を検出するためのセンサー素子が設けられる。当該センサー素子は、収納部76に収納された記録用紙Pの重量に基づいて記録用紙Pの残量を検出する構成であってもよく、また、ロール状に巻き取られた記録用紙Pのロールの径に基づいて、記録用紙Pの残量を検出する構成であってもよい。
【0035】
インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合、搬送ユニット7は、記録用紙Pを収納部76から繰り出して、ガイドローラー75、プラテン74、及び搬送ローラー73により規定される搬送方向Mvに沿って搬送する。なお、図2では、記録用紙Pが、長尺状のロール紙である場合を例示しているが、記録用紙Pは、例えば、A4サイズ等の矩形の用紙であってもよい。この場合、搬送ユニット7は、記録用紙Pを、プラテン74上に、搬送方向Mvに沿って1枚ずつ間欠的に送り出すように動作する。
【0036】
印刷ユニット3に設けられている各吐出部600には、インクカートリッジ40からインクが供給される。各吐出部600は、インクカートリッジ40から供給されたインクを内部に充填するとともに、充填したインクを吐出する。そして、各吐出部600は、搬送ユニット7が記録用紙Pをプラテン74上に搬送するタイミングで、記録用紙Pに対してインクを吐出する。これにより、画像を構成するためのドットを記録用紙Pに形成する。
【0037】
2.印刷モジュールの構成及び動作
ここで、印刷モジュール30が有する吐出部600の構成及び動作について説明する。図3は、吐出部600の概略構成を示す断面図である。図3に示すように、印刷モジュール30は、吐出部600とリザーバー641とを含む。
【0038】
リザーバー641には、インクが供給口661からインクが導入される。また、リザーバー641は、インクの色毎に設けられている。
【0039】
吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631及びノズル651を含む。このうち、振動板621は、キャビティー631と圧電素子60との間に設けられ、上面に設けられた圧電素子60の駆動によって変位し、インクが充填されるキャビティー631の内部容積を拡大/縮小させるダイヤフラムとして機能する。ノズル651は、ノズルプレート632に設けられるとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。キャビティー631は、内部にインクが充填され、圧電素子60の変位により内部容積が変化する圧力室として機能する。ノズル651は、キャビティー631に連通し、キャビティー631の内部容積の変化に応じてキャビティー631内のインクを吐出する。
【0040】
圧電素子60は、圧電体601を一対の電極611,612で挟んだ構造である。電極611には、供給駆動信号VINが供給される。電極612には、一定電圧の信号が供給される。ここで、電極612に供給される一定電圧の信号とは、グラウンド電位の信号であってもよく、またDC5V等の一定の電位の信号であってもよい。なお、以下の説明において、圧電素子60の電極612に供給される信号を基準電圧信号VBSと称する場合がある。このような構造の圧電素子60は、電極611と電極612との電位差に応じて駆動する。これにより、電極611,612及び振動板621の中央部分が両端部分に対して上下方向に変位する。そして、振動板621の変位に伴いノズル651からインクが吐出される。すなわち、吐出部600は、電極611と電極612との電位差により圧電素子60が駆動し、当該圧電素子60の駆動によりノズル651からインクを吐出する。
【0041】
図4は、印刷モジュール30に設けられた複数のノズル651の配置の一例を示す図である。なお、図4では、印刷ユニット3が、4個の印刷モジュール30を有する場合を例示している。
【0042】
図4に示すように、印刷モジュール30には、所定の方向に列状に設けられた複数のノズル651からなるノズル列Lが形成されている。各ノズル列Lは、列状に配置されたn個のノズル651によって形成されている。ここで、図4に示すノズル列Lは一例であって異なる構成であってもよい。例えば、各ノズル列Lにおいて、端から数えて偶数番目のノズル651と奇数番目のノズル651とで互いに位置が相違するように、n個のノズル651が千鳥状に配置されてもよい。また、各印刷モジュール30には、「2」以上のノズル列Lが形成されてもよい。
【0043】
次に、印刷モジュール30が有する駆動信号選択制御回路31の構成及び動作について説明する。駆動信号選択制御回路31の説明をするにあたり、まず、図5を用いて、駆動信号選択制御回路31に供給される駆動信号COMの一例について説明する。その後、図6から図9を用いて、駆動信号選択制御回路31の構成及び動作について説明する。
【0044】
図5は、駆動信号COMの一例を示す図である。図5には、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1と、期間T1の後、次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T2と、期間T2の後、ラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T3とを示している。なお、この期間T1,T2,T3からなる周期が、記録用紙Pに新たなドットを形成する周期Taとなる。
【0045】
図5に示すように、駆動信号生成回路20は、期間T1において電圧波形Adpを生成する。電圧波形Adpが圧電素子60に供給された場合、対応する吐出部600から所定量、具体的には中程度の量のインクが吐出される。また、駆動信号生成回路20は、期間T2において電圧波形Bdpを生成する。電圧波形Bdpが圧電素子60に供給された場合、対応する吐出部600から上記所定量よりも少ない小程度の量のインクが吐出される。また、駆動信号生成回路20は、期間T3において電圧波形Cdpを生成する。電圧波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、圧電素子60は、対応する吐出部600からインクが吐出されない程度に変位する。したがって、電圧波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、記録用紙Pにはドットが形成されない。この電圧波形Cdpは、吐出部600のノズル開孔部付近のインクを微振動させてインクの粘度が増大することを防止するための電圧波形である。以下の説明において、インクの粘度が増大することを防止するために、吐出部600からインクが吐出されない程度に圧電素子60を変位させることを「微振動」と称する場合がある。
【0046】
ここで、電圧波形Adp、電圧波形Bdp及び電圧波形Cdpの開始タイミングでの電圧値及び終了タイミングでの電圧値は、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、電圧波形Adp,Bdp,Cdpは、電圧値が電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する電圧波形である。したがって、駆動信号生成回路20は、電圧波形Adp,Bdp,Cdpが周期Taにおいて連続した電圧波形の駆動信号COMを出力する。
【0047】
図6は駆動信号選択制御回路31の電気構成を示すブロック図である。駆動信号選択制御回路31は、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、駆動信号COMに含まれる電圧波形Adp,Bdp,Cdpを選択するか否かを切り替えことで、周期Taにおいて、供給駆動信号VINを生成し出力する。図6に示すように、駆動信号選択制御回路31は、選択制御回路210及び複数の選択回路230を含む。
【0048】
選択制御回路210には、クロック信号SCK、印刷信号SI、ラッチ信号LAT及びチェンジ信号CHが供給される。選択制御回路210には、シフトレジスター212(S/R)とラッチ回路214とデコーダー216との組が、吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、印刷モジュール30には、吐出部600の総数nと同数のシフトレジスター212とラッチ回路214とデコーダー216との組が設けられている。
【0049】
シフトレジスター212は、対応する吐出部600毎に、印刷信号SIに含まれる2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を一旦保持する。詳細には、吐出部600に対応した段数のシフトレジスター212が互いに縦続接続されるとともに、シリアルで供給された印刷信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段に転送される。なお、図4には、シフトレジスター212を区別するために、印刷信号SIが供給される上流側から順番に1段、2段、…、n段と表記している。
【0050】
n個のラッチ回路214のそれぞれは、対応するシフトレジスター212で保持された印刷データ[SIH,SIL]をラッチ信号LATの立ち上がりでラッチする。n個のデコーダー216の各々は、対応するラッチ回路214によってラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をデコードして選択信号Sを生成し、選択回路230に供給する。
【0051】
選択回路230は、吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、1つの印刷モジュール30が有する選択回路230の数は、印刷モジュール30に含まれる吐出部600の総数nと同じである。選択回路230は、デコーダー216から供給され
る選択信号Sに基づいて、駆動信号COMの圧電素子60への供給を制御する。
【0052】
図7は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の電気構成を示す回路図である。図7に示すように、選択回路230は、インバーター232及びトランスファーゲート234を有する。また、トランスファーゲート234は、NMOSトランジスターであるトランジスター235及びPMOSトランジスターであるトランジスター236を含む。
【0053】
選択信号Sは、デコーダー216からトランジスター235のゲート端子に供給される。また選択信号Sは、インバーター232によって論理反転されて、トランジスター236のゲート端子にも供給される。トランジスター235のドレイン端子及びトランジスター236のソース端子には、駆動信号COMが入力される。そして、トランジスター235及びトランジスター236が、選択信号Sに従ってオン又はオフに制御されることで、トランジスター235のソース端子及びトランジスター236のドレイン端子が共通に接続される接続点から供給駆動信号VINが出力される。
【0054】
次に、図8を用いてデコーダー216のデコード内容について説明する。図8は、デコーダー216におけるデコード内容を示す図である。デコーダー216には、2ビットの印刷データ[SIH,SIL]、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。そして、デコーダー216は、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHで規定される期間T1,T2,T3のそれぞれに対して、印刷データ[SIH,SIL]で規定された論理レベルの選択信号Sを出力する。例えば、デコーダー216に、印刷データ[SIH,SIL]として、[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、期間T1,T2,T3でH,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。ここで、選択信号Sの論理レベルは、不図示のレベルシフターによって、高電圧の信号に高振幅論理にレベルシフトされる。
【0055】
以上に説明した駆動信号選択制御回路31において、駆動信号COMに基づく供給駆動信号VINが生成され、印刷モジュール30に含まれる吐出部600に供給される動作について、図9を用いて説明する。
【0056】
図9は、駆動信号選択制御回路31の動作を説明するための図である。図9に示すように駆動信号選択制御回路31には、印刷信号SIがクロック信号SCKに同期してシリアルで供給され、吐出部600に対応するシフトレジスター212において順次転送される。そして、クロック信号SCKの供給が停止すると、シフトレジスター212のそれぞれには、吐出部600に対応した印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、印刷信号SIは、シフトレジスター212における最終n段、…、2段、1段の吐出部600に対応した順番で供給される。
【0057】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、対応するシフトレジスター212に保持された印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。図9において、LT1、LT2、…、LTnは、1段、2段、…、n段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0058】
デコーダー216は、ラッチされた印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、図8に示される内容に従う論理レベルの選択信号Sを出力する。
【0059】
印刷データ[SIH,SIL]が[1,1]の場合、選択回路230は、選択信号Sに
従い、期間T1において電圧波形Adpを選択し、期間T2において電圧波形Bdpを選択し、期間T3において電圧波形Cdpを選択しない。その結果、図9に示す大ドットに対応する供給駆動信号VINが生成される。したがって、周期Taにおいて吐出部600から中程度の量のインクと小程度の量のインクとが吐出される。これにより、記録用紙Pに「大ドット」が形成される。
【0060】
また、印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択回路230は、選択信号Sに従い、期間T1において電圧波形Adpを選択し、期間T2において電圧波形Bdpを選択せず、期間T3において電圧波形Cdpを選択しない。その結果、図9に示す中ドットに対応する供給駆動信号VINが生成される。したがって、周期Taにおいて吐出部600から中程度の量のインクが吐出される。これにより、記録用紙Pに「中ドット」が形成される。
【0061】
また、印刷データ[SIH,SIL]が[0,1]の場合、選択回路230は、選択信号Sに従い、期間T1において電圧波形Adpを選択せず、期間T2において電圧波形Bdpを選択し、期間T3において電圧波形Cdpを選択しない。その結果、図9に示す小ドットに対応する供給駆動信号VINが生成される。したがって、周期Taにおいて吐出部600から小程度の量のインクが吐出される。これにより、記録用紙Pに「小ドット」が形成される。
【0062】
また、印刷データ[SIH,SIL]が[0,0]の場合、選択回路230は、選択信号Sに従い、期間T1において電圧波形Adpを選択せず、期間T2において電圧波形Bdpを選択し、期間T3において電圧波形Cdpを選択しない。その結果、図9に示す微振動に対応する供給駆動信号VINが生成される。したがって、周期Taにおいて吐出部600からインクは吐出されずに微振動する。この場合、記録用紙Pにはドットが形成されない。
【0063】
3.消耗品判定制御部の構成及び動作
以上のように構成されたインクジェットプリンター1では、インクカートリッジ40に充填されたインクや、記録用紙P等の交換又は補充により回復が可能な消耗品が用いられる。これらの消耗品の残量は、センサー素子等を用いて検出され、制御ユニット6の消耗品判定制御部66に入力される。そして、消耗品判定制御部66は、当該消耗品の残量において、使用者の要求する印刷品質を満たすことができるか否かを判定し、当該判定結果を示す信号を印刷制御部61に出力する。そして、印刷制御部61は、当該判定結果に基づく警告情報を表示部4に表示させることで、使用者に対して各種消耗品の残量を報知し、当該消耗品の交換又は補充を促す。
【0064】
しかしながら、消耗品の最適な交換又は補充のタイミングは、使用者によって異なる。例えば、インクジェットプリンター1に用いられるインクカートリッジ40に充填されるインクは、残量が満充填の場合に対して3%から5%程度の量となった場合に、当該インクの残量が残りわずかであることを示す所謂ニアエンドとして報知される。しかしながら、ロール紙などの媒体に対して連続印刷を行う使用環境の場合、連続印刷中にインク残量が不足し印刷品質が低下すると、当該ロール紙の全てが破棄される場合がある。そのため、連続印刷を行う使用環境においては、ニアエンドの報知がなされる前に、使用者においてインクカートリッジ40の交換がなされる場合がある。
【0065】
また、インクジェットプリンター1において、インクの残量が十分な印刷品質を担保できない所謂エンドの状態であっても、当該インク残量において使用者が求める印刷品質を確保できている場合、使用者は、インクカートリッジ40の交換を行わないまま、継続して印刷処理を実行する場合がある。
【0066】
以上のように、消耗品の残量がニアエンドの状態であるのか、又はエンドの状態であるのかを示す警告情報を使用者に報知する最適なタイミングは、使用者及び使用環境によって異なる。本発明では、以上のような問題に鑑みて、インクジェットプリンター1が備える消耗品判定制御部66において、使用者に適したタイミングにおける警告情報の報知を可能としている。
【0067】
図10及び図11を用いて本実施形態における消耗品判定制御部66の構成及び動作について説明する。図10に示すように、本実施形態におけるインクジェットプリンター1は、交換又は補充により回復が可能な消耗品の残量情報XCに基づき警告情報を表示する表示部4と、消耗品の残量情報XCを取得する消耗品残量検出回路64と、消耗品の交換又は補充の状態を判断するための判断情報を取得する残量判断部62と、残量情報XCと判断情報とを対応付けた学習モデルに基づいて、警告情報の表示を機械学習する判定閾値更新部63と備える。
【0068】
図10は、消耗品判定制御部66の構成、及び消耗品判定制御部66の周辺の構成を示すブロック図である。図10に示すように、消耗品判定制御部66は、残量判断部62及び判定閾値更新部63を有する。
【0069】
残量判断部62には、消耗品残量検出回路64で検出された消耗品の残量を示す残量情報XCが入力される。残量判断部62は、入力される残量情報XCが所定の判定閾値を超えているか否かに基づいて、消耗品の残量が充分であるのか、ニアエンドであるのか、又はエンドであるのかを判断する。具体的には、残量判断部62は、残量情報XCとして入力される消耗品の残量が、所定の判定閾値を下回っているか否かに基づいて消耗品の残量を判断する。すなわち、残量判断部62が、消耗品の交換又は補充の状態を判断するための判断情報を取得する判断情報取得部の一例である。そして、残量判断部62は、当該判断情報を示す残量判定情報XLを生成し、印刷制御部61に出力する。ここで、残量判断部62に入力される残量情報XCは、消耗品残量検出回路64に含まれるセンサー素子等が検出したアナログの信号であってもよく、消耗品残量検出回路64においてデジタルの信号に変換された信号であってもよい。なお、図10には、1つの消耗品残量検出回路64を記載しているが、消耗品残量検出回路64は、インクジェットプリンター1に用いられる消耗品の数、消耗品の種類に応じて複数設けられてもよい。例えば、本実施形態における消耗品残量検出回路64は、図示を省略するが、インクカートリッジ40のインク残量を検出するセンサー素子、記録用紙Pの残量を検出するためのセンサー素子等複数のセンサー素子を備える。以上のように、消耗品の残量情報を取得するセンサー素子を有する消耗品残量検出回路64が残量情報取得部の一例である。
【0070】
印刷制御部61は、入力される残量判定情報XLに基づいて、インクジェットプリンター1の消耗品の残量がニアエンドもしくはエンドを示す警告情報を生成し、表示部4に表示させるため表示情報Cdとして表示部4に出力する。表示部4は、入力される表示情報Cdに従って、警告情報を表示する。すなわち、消耗品の残量情報XCに基づいて警告情報を表示することで使用者に報知する表示部4が報知部の一例である。
【0071】
また、印刷制御部61は、操作部8に対して、表示部4に表示された警告情報に対する操作を有効とするための信号を含む操作情報Csを出力する。また、印刷制御部61は、操作部8において表示部4の表示される警告情報に対する操作が行われた場合、当該操作に対応する情報を表示部4に表示させてもよい。操作部8において、表示部4の表示に対する操作が行われた場合、印刷制御部61は、表示部4の表示に対する操作が実施されたことを示す信号を、制御情報XOとして判定閾値更新部63に出力する。さらに、印刷制御部61は、消耗品の残量に対して交換又は補充による回復処理が実行された場合、当該
処理が完了したことを示す信号を制御情報XOとして、判定閾値更新部63に出力する。
【0072】
判定閾値更新部63には、制御情報XOと残量情報XCとが入力される。そして、判定閾値更新部63は、残量情報XCと制御情報XOとを用いて、残量情報XCと判断情報とを対応付けた学習モデルに基づいて、警告情報の表示を機械学習する。その後、判定閾値更新部63は、当該機械学習の学習結果に基づいて、残量判断部62に保持される判定閾値を更新するための更新信号XUDを出力する。ここで、判定閾値更新部63が、学習部の一例である。
【0073】
ここで、図11を用いて、残量判断部62の判定閾値の更新動作について説明する。図11は、残量判断部62の判定閾値の更新動作を説明するためのフローチャート図である。
【0074】
まず、消耗品残量検出回路64が消耗品の残量を取得する。消耗品残量検出回路64が取得した消耗品の残量は、残量情報XCとして、残量判断部62に入力される(ステップS100)。その後、残量判断部62は、残量情報XCが所定の判定閾値よりも小さいかを判断する(ステップS110)。これにより、残量判断部62は、インクジェットプリンター1が有する消耗品の残量が十分であるのか、ニアエンドなのか、又はエンドなのかを判断する。
【0075】
残量判断部62において、残量情報XCが所定の判定閾値よりも大きいと判断された場合(ステップS110のN)、消耗品残量検出回路64が、消耗品の残量を取得し、当該消耗品の残量は、残量情報XCとして、残量判断部62に入力される(ステップS100)。
【0076】
残量判断部62において、残量情報XCが所定の判定閾値よりも小さいと判断された場合(ステップS110のY)、表示部4には、消耗品の残量がニアエンド、又はエンドであることを示す警告情報が表示される(ステップS120)。より具体的には、残量判断部62は、残量情報XCに基づいて取得した判断情報が、ニアエンドを示す所定の判定閾値よりも小さいか否か、又はエンドを示す所定の判定閾値よりも小さいか否かを判断し、当該判断結果に基づいて、消耗品の交換又は補充の状態を示す判断情報を取得し、当該判断情報を示す残量判定情報XLを出力する。残量判定情報XLは、印刷制御部61に入力される。印刷制御部61は、残量判定情報XLに基づく警告情報を表示部4に表示させるため表示情報Cdを出力する。これにより、表示部4には、消耗品の残量がニアエンドであるのか、又はエンドであるのかを示す警告情報が表示される。
【0077】
その後、印刷制御部61には、操作部8において、表示部4の表示に対する操作が行われたか否かを示す操作情報Csが入力される。そして、印刷制御部61は、入力される操作情報Csに基づいて表示部4の表示に対する操作が行われたか否かを判断する。換言すれば、印刷制御部61は、操作情報Csに基づいて、警告情報は使用者に確認されたかを判断する(ステップS130)。ここで、表示部4の表示に対する操作とは、表示部4に表示された内容を確認したことに対応する操作を含む。例えば、操作部8における表示部4の表示に対する操作とは、表示部4に「インクの残量が少なくなっています。」との警告情報が表示された場合に、使用者が操作部8を操作することで、当該警告情報に付加される「確認」ボタン等を選択、又は押下する操作を含む。
【0078】
印刷制御部61が、操作情報Csに基づいて、警告情報は、使用者に確認されたと判断した場合(ステップS130のY)、印刷制御部61は、警告情報が使用者に確認されたことを示す制御情報XOを生成し、判定閾値更新部63に出力する。そして、判定閾値更新部63は、使用者により警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の
残量情報XCを保持する(ステップS140)。
【0079】
判定閾値更新部63に制御情報XO、及び残量情報XCが保持された後、又は、印刷制御部61が、操作情報Csに基づいて、警告情報は、使用者に確認されていないと判断した場合(S130のN)、印刷制御部61は、警告情報に対応する操作が行われたかを判断する(ステップS150)。ここで、警告情報に対応する操作とは、消耗品の交換又は補充により消耗品の状態を回復する操作を含む。例えば、表示部4に「インクの残量が少なくなっています。」との警告情報が表示された後、インクカートリッジ40の交換、又はインクカートリッジ40へのインクの補充を行うための操作を含む。
【0080】
そして、印刷制御部61が、警告情報に対応する操作が行われたと判断した場合(ステップS150のY)、判定閾値更新部63は、警告情報に対応する操作が行われたことを示す制御情報XO、及び操作時の残量情報XCを保持する(ステップS160)。一方、印刷制御部61が、警告情報に対応する操作が行われていないと判断した場合(ステップS150のN)、印刷制御部61は、操作情報Csに基づいて、警告情報は使用者に確認されたかを判断する(ステップS130)。
【0081】
判定閾値更新部63は保持している、使用者により警告情報が確認されたことを示す制御情報XO及び確認時の残量情報XCと、警告情報に対応する操作が行われたことを示す制御情報XO及び操作時の残量情報XCとに基づいて、機械学習を行い、学習結果に基づいて残量判断部62の判定閾値を更新する(ステップS170)。これにより、表示部4に当該警告情報が表示されるタイミングが変更される。ここで、判定閾値更新部63が保持する警告情報が確認されたことを示す制御情報XO及び確認時の残量情報XCと、警告情報に対応する操作が行われたことを示す制御情報XO及び操作時の残量情報XCとに基づく機械学習の結果が、学習モデルの一例である。
【0082】
以上のように、本実施形態にけるインクジェットプリンター1は、判定閾値更新部63により残量情報XCの判定閾値を機械学習し、当該判定閾値を学習結果に基づいて適宜更新する。これにより、残量判断部62は、使用者に適したタイミングで消耗品のニアエンド、又はエンドを判断することが可能となる。よって、印刷制御部61は、使用者に適したタイミングで表示部4に警告情報を表示することが可能となる。
【0083】
4.消耗品判定制御部の動作の一例
以上のように、本実施形態におけるインクジェットプリンター1は、警告情報の報知の後、報知に対する操作部8において操作が行われたタイミングに応じて、判定閾値更新部63は、警告情報の報知のタイミング、又は警告情報を報知する残量情報XCの判定閾値を機械学習する。ここで、図10及び図11に基づいて、消耗品判定制御部66における機械学習の具体例について説明する。
【0084】
例えば、警告情報の報知の後、報知に対する操作が行われない場合において、判定閾値更新部63は、警告情報の報知のタイミングを遅らせるように、又は、警告情報を報知する残量情報XCの判定閾値が低くなるように機械学習してもよい。
【0085】
具体的には、図11において、表示部4に警告情報が表示された場合(ステップS120)に、印刷制御部61において当該警告情報が使用者に確認されていないと判断された場合(S130のN)、判定閾値更新部63には、使用者により警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の残量情報XCが保持されない。そして、判定閾値更新部63に警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の残量情報XCが保持されない状態で、判定閾値更新部63が機械学習を行った場合、判定閾値更新部63は、現在の残量情報XCに対応する消耗品の残量におけるインクジェットプリンター1の
印刷品質は、使用者が要求する印刷品質を満たすものであると機械学習する。したがって、判定閾値更新部63は、使用者が求める警告情報を表示するか否かの判定閾値は、現在の残量情報XCの判定閾値よりも低いものであると機械学習する。すなわち、判定閾値更新部63は、警告情報の報知タイミングを遅らせるように機械学習する。これにより、使用者により適したタイミングで警告情報の表示が可能となる。
【0086】
さらに、警告情報の報知の後、報知に対する操作が行われない場合において、判定閾値更新部63は、警告情報を報知するか否かを機械学習してもよい。
【0087】
具体的には、判定閾値更新部63が、使用者により警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の残量情報XCを保持していない場合、判定閾値更新部63は、上述のように現在の残量情報XCに対応する消耗品の残量におけるインクジェットプリンター1の印刷品質は、使用者が要求する印刷品質を満たすものであると学習するとともに、使用者が、当該警告情報の表示を必要としていないと学習してもよい。換言すれば、判定閾値更新部63は、当該警告情報は使用者にとって必要としない警告情報であるとして学習してもよい。これにより、表示部4に、使用者が必要としない警告情報が表示されるおそれを低減することが可能となる。
【0088】
また、警告情報の報知の後、報知に対する操作が行われた場合、判定閾値更新部63は、警告情報の報知のタイミングを早めるように、又は、警告情報を報知する残量情報XCの判定閾値が高くなるように機械学習してもよい。
【0089】
具体的には、図11において、表示部4に警告情報が表示された場合(ステップS120)に、印刷制御部61が、当該警告情報が使用者に確認されたと判断した場合(S130のY)、判定閾値更新部63は、使用者により警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の残量情報XCを保持する。そして、判定閾値更新部63に警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の残量情報XCが保持された状態で、機械学習が実行された場合、警告情報が表示部4に表示されたタイミングにおいて、使用者が要求する印刷品質を満足できていないおそれがあると学習する。そのため、判定閾値更新部63は、使用者にとっての消耗品の残量がニアエンド、又はエンドであることを示す警告情報を表示する最適な判定閾値は、現在の残量情報XCよりも高いと機械学習する。すなわち、判定閾値更新部63は、警告情報の報知タイミングを早めるように機械学習する。これにより、表示部4には、使用者により適したタイミングで消耗品の残量に対応する警告情報を表示することが可能となる。
【0090】
ここで、報知に対する操作が行われた後、警告情報に対応する操作が行われない場合、印刷制御部61は、表示部4に警告情報を再報知させてもよい。このような場合において、判定閾値更新部63は、当該再報知に対する操作が行われた後、警告情報に対応する操作が行われたとしても、警告情報の報知のタイミングを早めるような、又は警告情報を報知する残量情報XCの判定閾値が高くなるような機械学習を行わないことが好ましい。
【0091】
具体的には、図11において、表示部4に警告情報が表示された場合(ステップS120)に、印刷制御部61において当該警告情報が使用者に確認されたと判断された場合(S130のY)、判定閾値更新部63は、使用者により警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の残量情報XCを保持する。しかしながら、消耗品に対して交換又は補充などの回復処理を含む警告情報に対応する操作が行われていない場合(ステップS150のN)、現在の残量情報XCに対応する消耗品の残量におけるインクジェットプリンター1の印刷品質は、使用者が要求する印刷品質を満たすものであり、そのため、使用者が当該警告情報に対応する操作を実行しなかったものであると学習する。したがって、判定閾値更新部63は、使用者にとって、警告情報を表示するか否かの最適な判定閾
値は、現在の判定閾値よりも高いものではないと機械学習する。すなわち、判定閾値更新部63は、警告情報の報知タイミングを早めるような機械学習を行わない。これにより、表示部4には、使用者が求めるより適したタイミングで警告情報を表示することが可能となる。
【0092】
さらに、判定閾値更新部63は、上述した表示部4の表示に対する操作、及び警告情報に対応する操作を複数組み合わせて機械学習してもよい。
【0093】
具体的には、判定閾値更新部63は、使用者により警告情報が確認されたことを示す制御情報XO、及び確認時の残量情報XCが保持された履歴と、警告情報に対応する操作が行われたことを示す制御情報XO、及び操作時の残量情報XCが保持された履歴とから、警告情報を表示するか否かの判定閾値をどの程度高くするのか、又は低くするのかを機械学習してもよく、また、警告情報の報知タイミングをどの程度早くするのか、又は遅くするのかを気が学習してもよい。これにより、使用者により適したタイミングで警告情報を表示することが可能となる。
【0094】
また、消耗品の残量情報XCは、複数の消耗品の残量を示す信号であってもよい。使用者が求めるより最適な警告表示のタイミングは、インク、記録用紙P、その他消耗品を含む複数の消耗品の残量が互いに寄与する場合がある。消耗品の残量情報XCが、これらの複数の消耗品の残量を示す信号を含み、判定閾値更新部63が、複数の消耗品の残量を示す信号を含む残量情報XCに基づいて機械学習することで、使用者により適したタイミングでの警告情報の表示が可能となる。
【0095】
5.作用効果
以上に説明したように、本実施形態における電子機器の一例としてのインクジェットプリンター1では、消耗品残量検出回路64が検出した消耗品の残量を示す残量情報XCと、残量判断部62において検出された消耗品の交換又は補充の状態を判断するための判断情報とを関係付けた学習モデルに基づいて、判定閾値更新部63が、機械学習を行い、当該機械学習の学習結果に基づいて消耗品の交換又は補充の状態を判断するための判定閾値を更新することで、使用者の使用環境により適したタイミングで、消耗品の残量情報に基づく警告情報を表示することが可能となる。
【0096】
6.変形例
本実施形態においては、電子機器の一例としてインクジェットプリンター1を示して説明を行ったが、消耗品を有する電子機器であればよく、例えば、消耗品としてトナーカートリッジを有するレーザープリンターや、消耗品としての電池を備える携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラなどの各種携帯用電子機器、その他の家庭用、商業用、産業用の各種電子機器であってもよい。いずれの電子機器であっても、本実施形態に示した作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0097】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0098】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0099】
1…インクジェットプリンター、2…駆動信号生成ユニット、3…印刷ユニット、4…表示部、5…記憶ユニット、6…制御ユニット、7…搬送ユニット、8…操作部、9…電源ユニット、20…駆動信号生成回路、30…印刷モジュール、31…駆動信号選択制御回路、40…インクカートリッジ、60…圧電素子、61…印刷制御部、62…残量判断部、63…判定閾値更新部、64…消耗品残量検出回路、66…消耗品判定制御部、70…搬送モーター、73…搬送ローラー、74…プラテン、75…ガイドローラー、76…収納部、91…電圧変換回路、92…平滑化回路、93…温度検出回路、94…温度判定回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、235,236…トランジスター、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、L…ノズル列、P…記録用紙
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図11