(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】巻取り装置および印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 18/10 20060101AFI20221220BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B65H18/10
B41J15/16
(21)【出願番号】P 2018221631
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018066429
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新谷 明広
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-191844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/00-15/24
B65H 18/00-18/28
B65H 75/00-75/32
A01K 89/00
A01K 89/01
A01K 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り軸と、
前記巻取り軸に回転可能に設けられ、連続媒体が巻き取られる巻取りコア部と、
前記巻取り軸に対して、前記巻取り軸の延在方向に移動可能に設けられ、前記巻取りコア部に巻き取られる前記連続媒体を前記連続媒体の幅方向にガイドするフランジ部と、
前記フランジ部と一体に移動可能なフランジ側係合部と、
前記フランジ側係合部と係合するカム側係合部が設けられたカム、を有し、前記フランジ部を、複数のフランジ位置に移動させるフランジ移動部と、
を備え
、
前記カム側係合部には、前記フランジ部を前記フランジ位置に維持するカム側維持係合部と、前記フランジ部を前記フランジ位置間で移動させるカム側移動係合部と、が含まれることを特徴とする巻取り装置。
【請求項2】
前記フランジ移動部は、
前記カムを作動させる操作部と、
規制係合部と係合することで、前記操作部を規制する操作規制部と、を有し、
前記操作規制部が前記規制係合部と係合した際に、前記カム側係合部が前記カム側維持係合部において前記フランジ側係合部と係合することを特徴とする請求項
1に記載の巻取り装置。
【請求項3】
前記フランジ移動部は、
前記カムを作動させる操作部と、
規制係合部と係合することで、前記操作部を規制する操作規制部と、を有し、
前記操作規制部が前記規制係合部と係合した際に、前記フランジ部が前記フランジ位置に位置することを特徴とする請求項1に記載の巻取り装置。
【請求項4】
前記フランジ部には、前記巻取り軸が挿入される軸挿入穴が設けられ、
前記フランジ部は、前記軸挿入穴に前記巻取り軸が挿入されることで、前記巻取り軸の延在方向と交差する方向に位置決めされることを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一項に記載の巻取り装置。
【請求項5】
前記カムは、前記巻取り軸の延在方向と平行な回転軸周りに回転可能であり、
前記フランジ部は、前記カムが回転することで、前記巻取り軸の延在方向に移動することを特徴とする請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の巻取り装置。
【請求項6】
巻取り軸と、
前記巻取り軸に回転可能に設けられ、連続媒体が巻き取られる巻取りコア部と、
前記巻取り軸に対して、前記巻取り軸の延在方向に移動可能に設けられ、前記巻取りコア部に巻き取られる前記連続媒体を前記連続媒体の幅方向にガイドするフランジ部と、
前記フランジ部と一体に移動可能なフランジ側係合部と、
前記フランジ側係合部と係合するカム側係合部が設けられたカム、を有し、前記フランジ部を、複数のフランジ位置に移動させるフランジ移動部と、
を備え
、
前記カム側係合部は、前記カムの周面に溝状に設けられており、
前記フランジ側係合部は、前記カム側係合部に係合する係合凸部、を有することを特徴とする巻取り装置。
【請求項7】
前記カム側係合部において、前記巻取り軸の延在方向における2つの壁部のうち、前記フランジ部側の壁部は、前記係合凸部を前記カム側係合部に対して抜止め状態にする抜止め部として機能することを特徴とする請求項
6に記載の巻取り装置。
【請求項8】
前記フランジ部と前記巻取りコア部とは一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の巻取り装置。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記巻取りコア部に固定されていることを特徴とする請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の巻取り装置。
【請求項10】
連続媒体に印刷を行う印刷部と、
巻取り軸と、
前記巻取り軸に回転可能に設けられ、前記連続媒体が巻き取られる巻取りコア部と、
前記巻取り軸に対して、前記巻取り軸の延在方向に移動可能に設けられ、前記巻取りコア部に巻き取られる前記連続媒体を前記連続媒体の幅方向にガイドするフランジ部と、
前記フランジ部と一体に移動可能なフランジ側係合部と、
前記フランジ側係合部と係合するカム側係合部が設けられたカム、を有し、前記フランジ部を、複数のフランジ位置に移動させるフランジ移動部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続媒体を巻き取る巻取り装置および印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1が開示するように、内筒、第1フランジ部を備える第1外筒、第2フランジ部を備える第2外筒、および紙芯によりドラム部を構成し、連続媒体を巻き取る巻き取り装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の巻取り装置では、巻き取り機構を組み立てる際に、第2フランジ部の軸方向の位置を、巻き取る連続媒体の幅に合致した紙芯の幅に合わせる必要があり、フランジ部の位置調整の操作が煩雑である。
【0005】
本発明は、フランジ部を連続媒体の幅に応じた位置に容易に移動させることができる巻取り装置および印刷装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の巻取り装置は、巻取り軸と、巻取り軸に回転可能に設けられ、連続媒体が巻き取られる巻取りコア部と、巻取り軸に対して、巻取り軸の延在方向に移動可能に設けられ、巻取りコア部に巻き取られる連続媒体を連続媒体の幅方向にガイドするフランジ部と、フランジ部と一体に移動可能なフランジ側係合部と、フランジ側係合部と係合するカム側係合部が設けられたカム、を有し、フランジ部を、複数のフランジ位置に移動させるフランジ移動部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の印刷装置は、連続媒体に印刷を行う印刷部と、巻取り軸と、巻取り軸に回転可能に設けられ、連続媒体が巻き取られる巻取りコア部と、巻取り軸に対して、巻取り軸の延在方向に移動可能に設けられ、巻取りコア部に巻き取られる連続媒体を連続媒体の幅方向にガイドするフランジ部と、フランジ部と一体に移動可能なフランジ側係合部と、フランジ側係合部と係合するカム側係合部が設けられたカム、を有し、フランジ部を、複数のフランジ位置に移動させるフランジ移動部と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】テープ印刷装置と、本発明の一実施形態に係る巻取り装置とを備えた印刷システムの斜視図である。
【
図2】テープ印刷装置および巻取装置を、
図1とは別の角度から見た斜視図である。
【
図4】巻取り本体およびフランジ移動部の斜視図である。
【
図5】巻取り本体およびフランジ移動部を+Z側から見た図である。
【
図6】巻取り本体およびフランジ移動部を、Z方向と直交する方向から見た図であり、巻取り本体の一部を断面にして示す図である。
【
図7】テープ印刷装置の歯車列と巻取り装置の歯車列とを示す図である。
【
図8】テープ印刷装置から送られたテープが巻取り装置により巻き取られる状態を示す図である。
【
図9】テープ印刷装置から送られたテープが巻取り装置により巻き取られる状態を、
図8とは別の角度から見た図である。
【0009】
以下、添付の図面を参照しつつ、テープ印刷装置と巻取り装置とを備えた印刷システムの一実施形態について説明する。なお、以下の図面では、各部の配置関係を明確にするために、XYZ直交座標系を表示するが、それが本発明を何ら限定するものではないことは、言うまでもない。また、各部の個数などを示す数値は、いずれも例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
[テープ印刷装置および巻取り装置の概要]
図1および
図2に基づいて、印刷システムSyを構成するテープ印刷装置101および巻取り装置201の概要について説明する。テープ印刷装置101は、テープ401(
図3参照)に印刷を行い、印刷が行われたテープ401を巻取り装置201に送る。巻取り装置201は、テープ印刷装置101から送られたテープ401を巻き取る。なお、テープ401は、本発明の「連続媒体」の一例である。
【0011】
テープ印刷装置101は、装置ケース103と、装着部カバー105とを備えている。装置ケース103は、略直方体状に形成されている。装置ケース103には、+X側の面にテープ導入口107が設けられ、-X側の面にテープ排出口109が設けられている。テープ導入口107には、テープ印刷装置101外からテープ401が導入される。テープ排出口109からは、印刷が行われたテープ401が排出される。また、装置ケース103の+Z側の面には、カートリッジ装着部(図示省略)が設けられている。装着部カバー105は、+Y側の端部を中心として回動可能なように、装置ケース103の+Z側に設けられている。装着部カバー105は、カートリッジ装着部を開閉する。カートリッジ装着部には、インクリボンが収容されたリボンカートリッジ(図示省略)が着脱可能に装着される。
【0012】
装置ケース103内には、プラテン軸113と、サーマルヘッド(図示省略)と、送りモーター121(
図7参照)とが設けられている。プラテン軸113には、プラテンローラー(図示省略)が回転可能に装着される。送りモーター121が作動すると、プラテンローラーが回転し、サーマルヘッドとプラテンローラーとの間に挟持されたテープ401およびインクリボンが送られる。このとき、サーマルヘッドが発熱することにより、テープ401に印刷が行われる。
【0013】
巻取り装置201は、テープ印刷装置101のテープ排出口109側に設置される。巻取り装置201は、基台部203と、巻取り部205と、巻取りガイド部207とを備えている。
【0014】
基台部203は、テープ印刷装置101の装置ケース103よりもZ方向の寸法が小さい、略直方体状に形成されている。なお、基台部203の+Z側の面には、ダイヤル251の摘み部267が回転可能に設けられている。詳細は後述するが、ユーザーは、摘み部267を摘んでダイヤル251を回転させることにより、巻取り部205をZ方向に移動させることができる。
【0015】
巻取り部205には、テープ印刷装置101から送られたテープ401が巻き取られる。巻取り部205は、巻取り本体209と、巻取り取付体211とを備えている。巻取り本体209は、基台部203の+Z側の面に回転可能に設けられている。巻取り取付体211は、巻取り本体209に着脱可能に取り付けられ、巻取り本体209と一体に回転する。
【0016】
巻取り本体209は、巻取りコア部213(
図4参照)と、第1フランジ部215とを備えている。巻取り本体209は、第1フランジ部215が基台部203の+Z側の面に設けられた円形開口217に埋め込まれるようにして、基台部203に設けられている。巻取り取付体211は、第2フランジ部219を備えている。第1フランジ部215および第2フランジ部219は、略円板状に形成されている。巻取り取付体211は、第2フランジ部219が第1フランジ部215と向かい合うようにして、巻取り本体209に取り付けられる。テープ印刷装置101から送られたテープ401は、第1フランジ部215および第2フランジ部219によりテープ401の幅方向にガイドされながら、巻取りコア部213に巻き取られる。なお、第1フランジ部215は、本発明の「フランジ部」の一例である。
【0017】
巻取りガイド部207は、基台部203の+Z側の面に設けられている。巻取りガイド部207は、テープ印刷装置101のテープ排出口109から巻取り部205に送られるテープ401をガイドする。巻取りガイド部207は、第1ガイドローラー221と、摩擦部材223と、第2ガイドローラー225と、ガイド壁226とを備えている。第1ガイドローラー221は、テープ排出口109から摩擦部材223へ送られるテープ401をガイドする。摩擦部材223は、テープ401に摩擦抵抗を付与することにより、テープ401が巻取り部205側に引っ張られることを抑制する。第2ガイドローラー225は、摩擦部材223から巻取り部205へ送られるテープ401をガイドする。ガイド壁226は、第1ガイドローラー221から摩擦部材223へ送られるテープ401が、巻取り部205側へ弛むことを阻止する。なお、第2ガイドローラー225は、テープ401の仕様や、巻取り部205によるテープ401の巻取り速度等の条件により、設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0018】
[テープ]
図3に基づいて、テープ401について説明する。テープ401には、幅の異なる複数種のものがあり、例えば、9mm幅、12mm幅、18mm幅、24mm幅および36mm幅および50mm幅の6種類が含まれる。このうち、9mm幅、12mm幅、18mm幅および24mm幅の4種類については、テープ印刷装置101において、テープ401の幅方向における中心位置が略一致するようにして、送られる。このため、テープ401の幅方向の両端の位置が、テープ401の幅ごとに異なっている。また、36mm幅および50mm幅のテープ401についても、テープ401の幅方向の両端の位置が、他のテープ401と異なっている。
【0019】
[巻取り本体]
図4ないし
図6に基づいて、巻取り本体209について説明する。巻取り本体209は、上記の巻取りコア部213および第1フランジ部215のほか、フランジ側係合部227を備えている。
【0020】
巻取りコア部213は、Z方向に延在する略円柱状に形成されている。巻取りコア部213の周面には、2つの係合部形成面229が設けられている。各係合部形成面229には、5つのコア側係合部231が巻取りコア部213の延在方向に並ぶように形成されている(
図6参照)。5つのコア側係合部231は、12mm幅から50mm幅までの5種類のテープ401の幅に対応した位置に設けられている。コア側係合部231には、巻取り取付体211に設けられたレバー233(
図1参照)のレバー側係合部(図示省略)が係合する。コア側係合部231にレバー側係合部が係合することで、巻取り取付体211が、巻取り本体209に対して、テープ401の幅に応じた位置に取り付けられる。
【0021】
第1フランジ部215は、巻取りコア部213の-Z側の端部に設けられている。第1フランジ部215と巻取りコア部213とは、一体に形成されている。第1フランジ部215の中心には、軸挿入穴235が設けられている。軸挿入穴235には、Z方向に延在する巻取り軸237が挿入されている。巻取り本体209は、巻取り軸237に、回転可能、且つ、巻取り軸237の延在方向に移動可能に、支持されている。また、第1フランジ部215は、軸挿入穴235に巻取り軸237が挿入されることで、巻取り軸237の延在方向と交差する方向に、すなわちX方向およびY方向に、位置決めされる。なお、巻取り軸237は、基台部203に内蔵された巻取り側支持プレート220(
図7参照)に固定されており、巻取り側支持プレート220から+Z側に突出している。
【0022】
第1フランジ部215は、+Z側の非歯車部239と、-Z側のフランジ歯車部241とを備えている。フランジ歯車部241は、出力歯車287(
図7参照)と噛み合っている。なお、フランジ歯車部241と出力歯車287との噛み合いは、巻取り本体209が巻取り軸237の延在方向に移動した際にも、維持される。出力歯車287には、テープ印刷装置101に備えられた送りモーター121の動力が伝達される。すなわち、巻取り部205は、送りモーター121を駆動源として回転する。なお、巻取り部205は、巻取り装置201に備えられたモーターを駆動源として回転する構成でもよい。
【0023】
フランジ側係合部227は、第1フランジ部215の-Z側の面の略中心から-Z側に突出するようにして、第1フランジ部215に固定されている。フランジ側係合部227の先端部には、係合凸部243がフランジ状に設けられている。フランジ側係合部227は、係合凸部243において、後述するカム側係合部259と係合している。
【0024】
[歯車列および検出部]
図7に基づいて、テープ印刷装置101および巻取り装置201に備えられた歯車列と、テープ印刷装置101に備えられた検出部127とについて説明する。テープ印刷装置101は、印刷側第1歯車列129と、印刷側第2歯車列131とを備えている。印刷側第1歯車列129の入力側の歯車は、送り歯車列125の出力側の歯車、すなわちプラテン回転部材123と一体に回転するプラテン歯車133、と噛み合っている。印刷側第1歯車列129は、送り歯車列125から入力した動力を、後述する巻取り側第1歯車列279に伝達する。印刷側第2歯車列131は、後述する巻取り側第2歯車列281から入力した動力を、検出部127の検出回転体135に伝達する。
【0025】
検出部127は、巻取り部205の回転速度を検出する。検出部127は、検出回転体135と、フォトインターラプター137とを備えている。検出部127としては、例えばロータリーエンコーダーを用いることができる。検出回転体135は、複数の扇形部が放射状に設けられた板状に形成されている。検出回転体135が回転すると、フォトインターラプター137の発光素子から受光素子へ発せられた光が、検出回転体135により断続的に遮断される。これにより、フォトインターラプター137は、検出回転体135の回転速度に応じた検出信号を、テープ印刷装置101に備えられた制御部139に出力する。制御部139は、図示省略したが、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサーと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの各種メモリーとを備えている。なお、印刷側第1歯車列129の一部の歯車と、印刷側第2歯車列131と、検出部127とは、印刷側支持プレート141に支持されている。
【0026】
巻取り装置201は、巻取り側第1歯車列279と、巻取り側第2歯車列281とを備えている。巻取り側第1歯車列279は、印刷側第1歯車列129から入力した動力を、巻取り部205に伝達する。巻取り側第1歯車列279は、中間歯車283と、トルクリミッター285と、出力歯車287とを備えている。中間歯車283、トルクリミッター285および出力歯車287は、互いに同軸上に設けられている。トルクリミッター285は、中間歯車283と出力歯車287との間に設けられており、中間歯車283から出力歯車287へ伝達されるトルクを、所定の値に制限する。出力歯車287は、巻取り部205の第1フランジ部215と噛み合っている。また、出力歯車287は、巻取り側第2歯車列281の入力側の歯車とも噛み合っている。巻取り側第2歯車列281は、出力歯車287から入力した動力を、印刷側第2歯車列131に伝達する。なお、巻取り側第1歯車列279および巻取り側第2歯車列281は、基台部203に内蔵された図示しない支持プレートに支持されている。
【0027】
テープ印刷装置101と巻取り装置201とが接続されると、印刷側第1歯車列129の出力側の歯車と、巻取り側第1歯車列279の入力側の歯車とが噛み合い、巻取り側第2歯車列281の出力側の歯車と、印刷側第2歯車列131の入力側の歯車とが噛み合う。この状態で、テープ印刷装置101に備えられた送りモーター121が作動すると、送りモーター121の動力は、送り歯車列125、印刷側第1歯車列129および巻取り側第1歯車列279を介して、巻取り部205へ伝達される。
【0028】
ここで、巻取り部205によるテープ401の巻取り速度の方が、プラテンローラーによるテープ401の送り速度に比べて速くなるように、送り歯車列125、印刷側第1歯車列129および巻取り側第1歯車列279の減速比が設定されている。このため、テープ401に張力が掛かった状態でテープ401が巻取り部205に巻き取られる。そして、第1フランジ部215と噛み合っている出力歯車287は、巻取り部205に巻き取られるテープ401の張力を受け、トルクリミッター285によりスリップしながら回転する。これにより、プラテンローラーによるテープ401の送り速度と、巻取り部205によるテープ401の巻取り速度との速度差が吸収される。出力歯車287は、巻取り部205の回転速度に応じた回転速度で回転する。また、巻取り部205は、トルクリミッター285により制限された、一定のトルクで回転する。
【0029】
送りモーター121の動力は、第1フランジ部215に伝達されるだけでなく、出力歯車287から巻取り側第2歯車列281および印刷側第2歯車列131を介して、検出回転体135へ伝達される。このため、検出回転体135は、巻取り部205の回転速度に応じた回転速度で回転する。これにより、検出部127は、巻取り部205の回転速度を検出する。すなわち、制御部139は、フォトインターラプター137から出力された検出信号に基づいて、巻取り部205の回転速度を取得する。
【0030】
このように、巻取り装置201は、巻取り部205の回転速度を検出する検出手段を自ら備えることなく、巻取り部205の回転速度に応じた回転速度で回転する出力歯車287の動力を、巻取り側第2歯車列281によりテープ印刷装置101に伝達することで、巻取り部205の回転速度をテープ印刷装置101に検出させることができる。また、上述したように、巻取り装置201は、巻取り部205の駆動源を自ら備えることなく、テープ印刷装置101から入力した動力を、巻取り側第1歯車列279により巻取り部205に伝達することで、巻取り部205を回転させることができる。これらの構成により、巻取り装置201は、電気的回路を備える必要がなく、巻取り装置201の信頼性を向上させることができる。
【0031】
[フランジ移動部]
図4ないし
図6に基づいて、フランジ移動部245について説明する。フランジ移動部245は、第1フランジ部215をZ方向に、すなわち巻取り軸237の延在方向に位置決め可能に移動させるためのものである。上述したように、テープ印刷装置101においては、テープ401の幅方向の両端の位置が、テープ401の幅ごとに異なった状態で、テープ401が送られる。このため、巻取り装置201においても、テープ401の幅方向の両端の位置が、テープ401の幅ごとに異なった状態で、テープ401が巻取り部205へ送られる。これに対応するため、巻取り装置201は、第1フランジ部215が、上記した6種類のテープ401の幅に応じた6つのフランジ位置に位置決め可能に移動するように、巻取り部205を巻取り軸237の延在方向に移動させるフランジ移動部245を備えている。
【0032】
フランジ移動部245は、円筒カム247と、フランジ移動歯車249と、ダイヤル251と、フック253とを備えている。
【0033】
円筒カム247は、巻取り軸237の延在方向と平行な回転軸周りに、回転可能に構成されている。円筒カム247は、+Z側に設けられたカム本体255と、-Z側に設けられたカム歯車部257とを備えている。カム本体255とカム歯車部257とは、一体に形成されている。
【0034】
カム本体255は、円筒状に形成されている。カム本体255の周面には、カム本体255を一周する溝状のカム側係合部259が設けられている。カム側係合部259には、上記のフランジ側係合部227が係合している。円筒カム247が回転すると、カム側係合部259に係合したフランジ側係合部227が巻取り軸237の延在方向に移動する。これにより、フランジ側係合部227が固定された第1フランジ部215が、フランジ側係合部227と一体に巻取り軸237の延在方向に移動する。なお、円筒カム247は、本発明の「カム」の一例である。
【0035】
カム側係合部259は、6つのカム側維持係合部261と、6つのカム側移動係合部263とを備えている。カム側維持係合部261とカム側移動係合部263とは、カム本体255の周方向において交互に設けられている。すなわち、カム側移動係合部263は、一のカム側維持係合部261と他のカム側維持係合部261とを接続するように設けられている。
【0036】
6つのカム側維持係合部261は、巻取り軸237の延在方向において、上記の6つのフランジ位置に対応した位置に設けられている。すなわち、カム側係合部259がカム側維持係合部261においてフランジ側係合部227と係合しているときは、第1フランジ部215が6つのフランジ位置のうち、1つのフランジ位置に位置する。また、カム側維持係合部261は、巻取り軸237の延在方向に垂直な面に対して略平行に設けられている。さらに、カム側維持係合部261は、周方向において、フランジ側係合部227と係合するための所定の長さを有している。これらにより、円筒カム247が回転する際に、カム側係合部259がカム側維持係合部261においてフランジ側係合部227と係合している間は、第1フランジ部215が巻取り軸237の延在方向に移動することなく、1つのフランジ位置に維持される。
【0037】
一方、カム側移動係合部263は、巻取り軸237の延在方向に垂直な面に対して斜めに交差するように設けられている。このため、円筒カム247が回転する際に、カム側係合部259がカム側移動係合部263においてフランジ側係合部227と係合している間は、第1フランジ部215が、1つのフランジ位置と隣接する他のフランジ位置との間で移動する。
【0038】
このように、カム側係合部259が、第1フランジ部215を1つのフランジ位置に維持する6つのカム側維持係合部261と、第1フランジ部215を1つのフランジ位置と隣接する他のフランジ位置との間で移動させる6つのカム側移動係合部263とを備えていることで、第1フランジ部215を6つのフランジ位置に位置決め可能に移動させることができる。
【0039】
また、カム側係合部259において、巻取り軸237の延在方向における2つの壁部のうち、+Z側の壁部、すなわち第1フランジ部215側の壁部は、抜止め部265として機能している。すなわち、抜止め部265は、係合凸部243をカム側係合部259に対して抜止め状態にしている。これにより、ユーザーにより巻取り本体209が+Z側に引っ張られた際などに、係合凸部243がカム側係合部259から外れることが抑制される。
【0040】
カム歯車部257は、カム本体255よりも小径の円板状に形成されている。カム歯車部257は、フランジ移動歯車249と噛み合っている。
【0041】
ダイヤル251は、円筒カム247を作動させるためのものである。ダイヤル251は、上記の摘み部267と、ダイヤル本体269とを備えている。ダイヤル本体269は、基台部203内に収容されており、摘み部267と一体となって回転するように、摘み部267に連結されている。ダイヤル本体269は、+Z側に設けられたダイヤル円筒部271と、-Z側に設けられたダイヤル歯車部273とを備えている。ダイヤル円筒部271とダイヤル歯車部273とは、一体に形成されている。ダイヤル円筒部271は、略円筒状に形成されており、その周面には、6つのダイヤル側係合凹部275が周方向に等間隔で設けられている。そのため、ユーザーは、ダイヤル251の位置、すなわち、カム側維持係合部261とフランジ側係合部227との係合位置を、容易に把握することができる。ダイヤル歯車部273は、ダイヤル円筒部271よりも小径の円板状に形成されている。ダイヤル歯車部273は、フランジ移動歯車249と噛み合っている。このため、ユーザーが摘み部267を摘んでダイヤル251回転させると、フランジ移動歯車249が回転し、さらにカム歯車部257および円筒カム247が回転する。また、6つのダイヤル側係合凹部275は、周方向に等間隔で設けられているとしたが、等間隔で設けなくてもよい。なお、ダイヤル251は、本発明の「操作部」の一例である。
【0042】
フック253は、フック支持軸(図示省略)に回動可能に支持されている。フック253の先端部には、フック側係合部277が設けられている。フック253は、+Z側から見て反時計回りに、すなわちフック側係合部277がダイヤル本体269の回転中心に向かう回動方向に、図示省略したフックバネにより力が付与されている。このため、フック253は、ダイヤル円筒部271に設けられたダイヤル側係合凹部275と係合することで、ダイヤル251の回動を規制する。なお、フックバネとしては、例えば、フック支持軸に設けられたねじりコイルバネを用いることができる。なお、フック253は、本発明の「操作規制部」の一例である。また、ダイヤル側係合凹部275は、本発明の「規制係合部」の一例である。
【0043】
ここで、6つのダイヤル側係合凹部275は、円筒カム247に設けられた6つのカム側維持係合部261と対応している。すなわち、カム側係合部259がカム側維持係合部261においてフランジ側係合部227と係合する際に、ダイヤル円筒部271においてフック253と係合する位置に、ダイヤル側係合凹部275が設けられている。これにより、フック253がダイヤル側係合凹部275と係合すると、カム側係合部259がカム側維持係合部261においてフランジ側係合部227と係合する。このため、ダイヤル251が、フック253がダイヤル側係合凹部275と係合する回転位置まで、すなわちフック253によりダイヤル251の回転が規制される回転位置まで、回転すると、カム側係合部259がカム側維持係合部261においてフランジ側係合部227と係合し、第1フランジ部215が1つのフランジ位置に移動する。換言すれば、ユーザーは、ダイヤル251の回転が規制される回転位置まで、すなわちクリック感を感じる回転位置まで、ダイヤル251を回転させることで、第1フランジ部215を1つのフランジ位置に移動させることができる。
【0044】
また、円筒カム247は、ダイヤル本体269およびフランジ移動歯車249を介して、フック253により回転が規制させる。このため、巻取り部205が回転しているときに、巻取り部205の回転力によって円筒カム247が回転することが抑制される。したがって、巻取り部205が回転しているときに、ユーザーの意図に反して、第1フランジ部215が巻取り軸237の延在方向に移動してしまうことが抑制される。
【0045】
さらに、巻取り取付体211を、テープ401の幅に合わせて巻取り本体209に取り付けることにより、テープ印刷装置101から送られたテープ401は、第1フランジ部215および第2フランジ部219によりガイドされながら、巻取りコア部213に巻き取られる(
図8および
図9参照)。
【0046】
以上のように、本実施形態の巻取り装置201は、巻取り軸237と、巻取りコア部213と、第1フランジ部215と、フランジ側係合部227と、フランジ移動部245とを備えている。巻取りコア部213は、巻取り軸237に回転可能に設けられている。巻取りコア部213には、テープ401が巻き取られる。第1フランジ部215は、巻取り軸237に対して、巻取り軸237の延在方向に移動可能に設けられている。第1フランジ部215は、巻取りコア部213に巻き取られるテープ401をテープ401の幅方向にガイドする。フランジ側係合部227は、第1フランジ部215と一体に移動可能である。フランジ移動部245は、円筒カム247を備えている。円筒カム247には、フランジ側係合部227と係合するカム側係合部259が設けられている。フランジ移動部245は、第1フランジ部215を、テープ401の幅に応じた複数のフランジ位置に位置決め可能に移動させる。
【0047】
この構成によれば、円筒カム247が回転すると、第1フランジ部215が、テープ401の幅に応じたフランジ位置に位置決めされて移動する。したがって、第1フランジ部215をテープ401の幅に応じたフランジ位置に容易に移動させることができる。
【0048】
[変形例]
本発明は、上記の実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態は、上述したほか、以下のような形態に変更することができる。
【0049】
本発明の「カム側係合部」は、カム側係合部259のように、カム側維持係合部261と、カム側移動係合部263とが含まれる構成に限定されず、例えば、カム側係合部259の全体が、巻取り軸237の延在方向に垂直な面に対して斜めに交差した構成でもよい。すなわち、円筒カム247が回転している間は、巻取り部205が常に巻取り軸237の延在方向に移動する構成でもよい。この構成では、6つのダイヤル側係合凹部275は、6つのフランジ位置と対応する。すなわち、第1フランジ部215がフランジ位置に位置する際に、ダイヤル円筒部271においてフック253と係合する位置に、ダイヤル側係合凹部275が設けられている。これにより、フック253がダイヤル側係合凹部275と係合すると、第1フランジ部215がフランジ位置に位置する。このため、ダイヤル251が、フック253がダイヤル側係合凹部275と係合する回転位置まで回転すると、第1フランジ部215がフランジ位置に移動する。したがって、この構成においても、ユーザーは、ダイヤル251の回転が規制される回転位置までダイヤル251を回転させることで、第1フランジ部215をフランジ位置に移動させることができる。
【0050】
本発明の「連続媒体」は、テープ401のように、テープ状のものに限定されず、例えば、ロール紙でもよい。「連続媒体」の長さ、幅および材質についても、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明の「巻取りコア部」と「フランジ部」とは、巻取りコア部213と第1フランジ部215とのように、一体に形成された構成に限定されず、別体に形成されていてもよい。この場合、「フランジ部」は、「巻取りコア部」に対して固定されていてもよく、「巻取りコア部」に対して移動可能に取り付けられていてもよい。
【0052】
本発明の「カム」は、円筒カム247に限定されず、例えば、板カム、直動カムなどを用いてもよい。
【0053】
本発明の「フランジ側係合部」および「カム側係合部」は、フランジ側係合部227およびカム側係合部259のように、「フランジ側係合部」が凸状で「カム側係合部」が凹状である構成に限定されず、例えば、これとは逆に、「フランジ側係合部」が凹状で「カム側係合部」が凸状である構成でもよい。
【0054】
本発明の「規制係合部」は、ダイヤル側係合凹部275のように、ダイヤル251に設けられた構成に限定されず、例えば、円筒カム247に設けられた構成でもよい。
【0055】
本実施形態のテープ印刷装置101に本発明の「印刷装置」を適用してもよい。すなわち、テープ印刷装置101が、本実施形態の巻取り軸237、巻取りコア部213、第1フランジ部215、フランジ側係合部227およびフランジ移動部245と同様のものを備えた構成でもよい。換言すれば、テープ印刷装置101と巻取り装置201とが、一体化された構成でもよい。本発明の「印刷装置」は、テープ状のものに印刷を行う構成に限定されず、例えば、ロール紙に印刷を行うものでもよい。また、本発明の「印刷部」は、サーマルヘッドのように、サーマル方式により印刷を行うものに限定されず、例えば、インクジェット方式、電子写真方式、或いはドットインパクト方式により印刷を行うものでもよい。
【符号の説明】
【0056】
101…テープ印刷装置、201…巻取り装置、213…巻取りコア部、215…第1フランジ部、227…フランジ側係合部、235…軸挿入穴、237…巻取り軸、243…係合凸部、245…フランジ移動部、247…円筒カム、251…ダイヤル、253…フック、259…カム側係合部、261…カム側維持係合部、263…カム側移動係合部、265…抜止め部、275…ダイヤル側係合凹部、401…テープ。