(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G03G21/00 386
G03G21/00 380
G03G21/00 370
(21)【出願番号】P 2018223960
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-219460(JP,A)
【文献】特開2009-065562(JP,A)
【文献】特開2004-093961(JP,A)
【文献】特開2011-180481(JP,A)
【文献】特開2010-013270(JP,A)
【文献】特開2012-216156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00-29/70
G03G 13/00
13/34-15/00
15/36
21/00-21/02
21/14-21/20
G06F 3/01
3/048-3/04895
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式により画像形成処理を実行する画像形成装置であって、
音声メッセージを出力する音声メッセージ出力手段と、
ジョブ実行に伴って発生する装置本体からの動作音の大小に応じて、前記音声メッセージの音量を変更する音量変更手段と、を備え、
前記音量変更手段は、前記音声メッセージの音量を単語単位に変更する
ことを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項2】
電子写真方式により画像形成処理を実行する画像形成装置であって、
音声メッセージを出力する音声メッセージ出力手段と、
ジョブ実行に伴って発生する装置本体からの動作音の大小に応じて、前記音声メッセージの音量を変更する音量変更手段と、
前記音声メッセージの出力と並行して実行される動作が停止又は速度変更可能かどうかを判定する判定手段と、
判定結果が肯定的な場合、該当する動作の停止または動作速度の変更を実施して、動作音の低減を図る動作速度変更手段と、
前記音量変更手段と前記動作速度変更手段とを択一的に選択する選択手段
と、を備え、
前記選択手段は、
動作音量が規定以上になると判断した場合には、前記動作速度変更手段によって前記動作速度を変更し、
動作音量が規定未満になると判断した場合には、前記音量変更手段によって前記音声メッセージの音量を変更する、
ように前記選択を実行する
ことを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項3】
電子写真方式により画像形成処理を実行する画像形成装置であって、
音声メッセージを出力する音声メッセージ出力手段と、
ジョブ実行に伴って発生する装置本体からの動作音の大小に応じて、前記音声メッセージの音量を変更する音量変更手段と、
音声メッセージの出力タイミングを変更するタイミング変更手段と、
音量変更手段とタイミング変更手段とを択一的に選択する選択手段と、を備え、
前記選択手段は、
動作音量が規定以上になると判断した場合には、前記タイミング変更手段によって前記出力タイミングを変更し、
動作音量が規定未満になると判断した場合には、前記音量変更手段によって前記音声メッセージの音量を変更する、
ように前記選択を実行する
ことを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項4】
前記音量変更手段は、ジョブ実行時に発生する動作音が大きいほど、前記音声メッセージの音量が大きくなるように変更する
ことを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記音量変更手段は、画像形成装置本体に搭載されたオプション機器の動作音量に基づいて前記音声メッセージの音量を変更する
ことを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記音量変更手段は、ジョブのステータス毎に前記音声メッセージの音量を変更する
ことを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記音量変更手段は、更に、他の画像形成装置の動作音の大小に応じて前記音声メッセージの音量を変更する
ことを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記音声メッセージの出力と並行して実行される動作が停止又は速度変更可能かどうかを判定する判定手段と、
判定結果が肯定的な場合、該当する動作の停止または動作速度の変更を実施して、動作音の低減を図る動作速度変更手段と、を備える
ことを特徴とする請求項
1または3に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記動作が停止するまで、或いは動作速度が変更されるまで、前記音声メッセージの出力タイミングを遅延させるタイミング遅延手段を備える
ことを特徴とする請求項
2または8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー装置、プリンター装置、ファクシミリ装置など、電子写真方式により画像形成処理を実行する画像形成装置に関し、殊に、画像形成装置本体から動作中にユーザー等に対して発される音声ガイドや警報メッセージ等のユーザーインターフェイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声認識技術の発展に伴いスマートフォン、家電製品等の電子機器の操作を、音声を通じて対話的に行うユーザーインターフェイスが普及している。一般的なパネル操作である操作部を操作して入力指示する形態と比べ、人の発する音声を通じて行う入力形態は、直感的に指示することができる特長をもつ。
【0003】
この場合、ユーザーが所望する指示や設定を、音声を通じて正確に機器に反映する必要があるし、更に、機器が発する音声ガイドやメッセージをユーザーが正確に聴き取ることも対話型ユーザーインターフェイスにおいては重要になる。
【0004】
しかしながら、MFP(Multi-Function Peripheral)等の画像形成装置においては、コピー、プリント等のジョブ実行中に音声を通じて操作を行うと、画像形成装置の動作音が重畳することによって音声認識が精度よくできない為、誤操作になってしまうことがあるし、画像形成装置が音声メッセージを発する場合も、動作音が妨げとなってユーザーが音声メッセージを十分に聴き取れないことがある。
【0005】
前者の場合、即ち、音声を通じて画像形成装置の操作を行う場合においては、ユーザーの指示音声から音声信号を生成し、この音声信号から動作音によるノイズ成分を除去すれば、音声認識の精度を向上させることができるので、ユーザーの指示を適切に解釈し、実行することができる。
【0006】
これに対して、後者の場合、即ち、画像形成装置からユーザーへ音声メッセージを出力する場合に、機器の発生させる動作音やノイズのために、ユーザーが音声メッセージを聴き取れなくなることがあるが、このような問題に対処する従来技術は知られていない。
【0007】
特に画像形成装置においては、ユーザーに対して音声メッセージを出力する際に、並行してジョブを実行すると画像形成装置の動作音の影響で、音声メッセージがユーザーに聴き取れなくなることが多く発生すると、音声メッセージに対してユーザーが適切に対処することができない。
【0008】
こういった場合、音声メッセージを出力する期間内はジョブの実行を一時停止することで上記問題を回避することはできるが、それでは、当該ジョブを投入した他のユーザーに不便が生じたり、ジョブの完了が遅くなったりするという障害がある。
【0009】
また、音声メッセージを、画像形成装置が発生させる最大の動作音量を考慮した音量で出力することによって、上記課題を回避する手法も考えられるが、ジョブを実行しておらず動作音が発生していない場合にまで、メッセージ音量が大きすぎてうるさくなるといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特開2004-163458号公報は、使用環境に応じてノイズキャンセル特性を制御する技術を開示しており、これを画像形成装置の動作音除去に利用することが検討されたが、ノイズキャンセル技術そのものは、定常的なノイズに限られ画像形成装置の動作音のように急激な音量の変化を伴う非定常的なノイズは除去することができない。
【0012】
本発明は、上記の諸課題に鑑み、音量が非定常に変化する動作音の存在下でも、音声メッセージをユーザーに的確に伝達することのできる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、電子写真方式により画像形成処理を実行する画像形成装置であって、音声メッセージを出力する音声メッセージ出力手段と、ジョブ実行に伴って発生する装置本体からの動作音の大小に応じて、前記音声メッセージの音量を変更する音量変更手段と、を備え、前記音量変更手段は、前記音声メッセージの音量を単語単位に変更することを特徴とする。
また、本発明に係る画像形成装置は、電子写真方式により画像形成処理を実行する画像形成装置であって、音声メッセージを出力する音声メッセージ出力手段と、ジョブ実行に伴って発生する装置本体からの動作音の大小に応じて、前記音声メッセージの音量を変更する音量変更手段と、前記音声メッセージの出力と並行して実行される動作が停止又は速度変更可能かどうかを判定する判定手段と、判定結果が肯定的な場合、該当する動作の停止または動作速度の変更を実施して、動作音の低減を図る動作速度変更手段と、前記音量変更手段と前記動作速度変更手段とを択一的に選択する選択手段と、を備え、前記選択手段は、動作音量が規定以上になると判断した場合には、前記動作速度変更手段によって前記動作速度を変更し、動作音量が規定未満になると判断した場合には、前記音量変更手段によって前記音声メッセージの音量を変更する、ように前記選択を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る画像形成装置は、電子写真方式により画像形成処理を実行する画像形成装置であって、音声メッセージを出力する音声メッセージ出力手段と、ジョブ実行に伴って発生する装置本体からの動作音の大小に応じて、前記音声メッセージの音量を変更する音量変更手段と、音声メッセージの出力タイミングを変更するタイミング変更手段と、音量変更手段とタイミング変更手段とを択一的に選択する選択手段と、を備え、前記選択手段は、動作音量が規定以上になると判断した場合には、前記タイミング変更手段によって前記出力タイミングを変更し、動作音量が規定未満になると判断した場合には、前記音量変更手段によって前記音声メッセージの音量を変更する、ように前記選択を実行することを特徴とする。
【0014】
この場合において、前記音量変更手段は、ジョブ実行時に発生する動作音が大きいほど、前記音声メッセージの音量が大きくなるように変更することを特徴とする。
【0015】
また、前記音量変更手段は、画像形成装置本体に搭載されたオプション機器の動作音量に基づいて前記音声メッセージの音量を変更することを特徴とする。
【0016】
また、前記音量変更手段は、ジョブのステータス毎に前記音声メッセージの音量を変更することを特徴とする。
【0018】
また、前記音量変更手段は、更に、他の画像形成装置の動作音の大小に応じて前記音声メッセージの音量を変更することを特徴とする。
【0019】
また、前記音声メッセージの出力と並行して実行される動作が停止又は速度変更可能かどうかを判定する判定手段と、判定結果が肯定的な場合、該当する動作の停止または動作速度の変更を実施して、動作音の低減を図る動作速度変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、前記動作が停止するまで、或いは動作速度が変更されるまで、前記音声メッセージの出力タイミングを遅延させるタイミング遅延手段を備える。
【発明の効果】
【0023】
上記構成によれば、変更手段が、ジョブ実行に伴って発生する装置本体からの動作音に応じて、音声メッセージ出力手段における音量を変更する。
【0024】
例えば、音声メッセージの音量を、装置本体からの動作音よりも大きくすることで、ユーザーの聞き取りミスを防止することができる。この場合、音量は常時大きな値にするのではなく、動作音に応じて変更するので、うるさくて耳障りであるといった悪環境は将来しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施例に係る画像形成装置1の外観斜視図である。
【
図2】画像形成装置1のシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】メインコントローラー100、音声処理部180、音声出力部190の構成を示すブロック図である。
【
図4】(A)は、ジョブ毎に各ジョブステータスの有無を示すテーブルであって、〇印は当該ジョブステータスが有ることを表し、×印は当該ジョブステータスが無いことを表しており、(B)は、画像形成装置1に各オプションを装着した場合におけるスキャンジョブの各ジョブステータスにおける画像形成装置1の動作音量を示すテーブルであり、(C)は、画像形成装置1に各オプションを装着した場合におけるプリントジョブの各ジョブステータスにおける画像形成装置1の動作音量を示すテーブルである。
【
図5】音声処理部180の動作を示すフローチャートである。
【
図6】フローチャートに従って制御された動作の具体例を示す図であり、(A)は画像形成装置1の動作音量の推移を示し、(B)は音声メッセージの推移を示し、(C)は、(B)における時刻t2~t3間のプリントジョブシーケンスをステータス毎に表示し、(D)は、同期間音声メッセージの音量レベルを示している。
【
図7】
図6とは別のジョブを実行する場合の動作例を示す図であり、(A)、(B)、(C)および(D)の各図は、
図6の(A)、(B)、(C)および(D)と対応している。
【
図8】画像形成装置1において音量を調整するすべての場合を示す一覧表である。
【
図9】画像形成装置1に接続されるオプション装置の一覧と音量補正値を示す図である。
【
図10】オプション装置が画像形成装置1に接続されている場合に
図5に示したフローチャートを修正する箇所を示すフローチャートである。
【
図11】(A)は、オプション装置が接続されている場合の動作音量、(B)はオプション装置が接続されている場合のメッセージ音量を示す図である。
【
図12】画像形成装置1の近くに他の画像形成装置が設置されている場合を示す図である。
【
図13】他機から自機に対して音量レベルを通信する手順を示す図である。
【
図14】自機が他機からの送信データを逐次記憶する処理を示す図である。
【
図15】自機が他機の音量レベルを含めて音声メッセージの音量レベルを計算するシーケンスを示す図である。
【
図16】自機が他機の音量レベルを考慮して音量補正した状態の動作例を示す図である。
【
図17】メッセージの音量レベルが定められている場合の音声処理部180の動作を示すフローチャートである。
【
図19】本発明の第5の実施の形態に係る画像形成装置1のシステム構成を示す図である。
【
図20】第5の実施の形態に係る画像形成装置1の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]第1の実施例
(1-1)画像形成装置の構成
本実施の形態に係る画像形成装置の全体斜視図を
図1に示す。
図1に示す画像形成装置1は、いわゆる複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)であって、下部に給紙部140を有し、その上部に画像形成部120を搭載している。給紙部140は、引き出し式の給紙トレイを複数段有しており、給紙トレイ毎に異なるサイズの記録紙を収容することができる。画像形成部120の上部には記録紙の排出トレイ121が設けられている。
【0027】
排出トレイ121の上に記録紙束の積載空間を隔てて、画像読み取り部110が搭載されている。自動原稿搬送部(ADF: Automatic Document Feeder)150は、画像読み取り部110がシートスルー方式で原稿から画像を読み取る場合に、原稿束から1枚ずつ原稿を搬送する。また、画像読み取り部110は、プラテンガラス上に載置された原稿をスキャナー移動方式で読み取ることもできる。
【0028】
画像読み取り部110の右端側前方には、ジョブ条件等を指示する操作ボタン131および、指示されたジョブ条件やその他の必要な指標を表示するタッチパネル132からなる操作パネル130が設けられている。操作パネル130には、図示はしないが音声入力部としてのマイク、出力部としてのスピーカーが操作ボタン131の近くに埋設されている。
【0029】
画像形成部120は、周知の電子写真方式により記録紙上に画像を形成するものである。即ち、感光体表面に一様な電荷を主帯電させ、画像データに従って光変調した露光光を用いて、感光体表面を露光して静電潜像を形成し、その潜像にトナー粒子を供給して顕像化し、記録紙上に転写し、その後、この記録紙にトナー像を熱定着する。定着後の記録紙は、排出トレイ121上に排出される。なお、記録紙は給紙部140から供給される。
【0030】
画像形成装置1は、図示はしないが、有線LAN(Local Area Network)或いは無線LANを通じてPC(Personal Computer)端末や他の画像形成装置と相互接続することができ、このようなLANを経由して、PC端末から直接、画像形成装置1に対してジョブ(JOB)の実行を依頼することができる。
【0031】
ユーザーが原稿を、必要部数コピーするといったコピージョブを依頼する場合は、画像形成装置1までユーザーが行って、原稿束を自動原稿搬送部150にセットし、コピー条件を操作パネル130で入力し、コピーボタンを操作することになる。
(1-2)システム構成
図2は、画像形成装置1のシステム構成を概略的に示したブロック図である。図に示すように画像形成装置1は、メインコントローラー100に、画像読み取り部110、画像形成部120、操作パネル130、給紙部140、自動原稿搬送部150、通信部160および音声処理部180を接続し、音声処理部180には音声入力部170および音声出力部190を接続したものである。
【0032】
メインコントローラー100は、ROM(Read Only Memory)101、HDD(Hard Disk Drive)102、RAM(Random Access Memory)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)104、CPU(Central Processing Unit)105等を備えており、ROM101からブートプログラムを読み出して起動したCPU105が、RAM103を作業用記憶領域として、HDD102から読み出したプログラムを実行し、また、プログラムを実行する際にASIC104を動作させることによって、各種の機能を実現する。
【0033】
操作パネル130は、タッチパネル132にてユーザーに情報提示を行ったり、操作ボタン131やタッチパネル132を用いてユーザーからの指示入力を受け付けたりすることによって、例えば、ジョブを受け付ける。通信部160は、不図示の通信ネットワークを経由して、他の装置からジョブを受け付けたり、他の装置へ画像データ等を送信したりする。
【0034】
音声入力部150は、ユーザーが音声によって指示入力を行うことによって、ジョブを受け付ける等する。画像形成装置1は、操作パネル130、通信部160および音声入力部150にてジョブを受け付けると、当該ジョブの指示内容に応じて画像読み取り処理(スキャン)や画像形成処理(印刷)などの処理を実行する。
【0035】
ユーザーが音声メッセージを音声入力部170に入力すると、音声入力部170は当該音声メッセージからアナログ音声信号を生成し、更に当該アナログ音声信号をデジタル音声信号に変換して、音声処理部180に入力する。音声処理部180は、デジタル音声信号を用いて音声認識処理を実行し、テキストデータを生成する。このテキストデータを言語解析することによって、ジョブが生成される。
【0036】
なお、ここで記載している構成は、音声処理部180や音声入力部170をメインコントローラー100に接続する形態としているが、音声処理部180の一部または全体をメインコントローラー100内部に含む構成とすることもできるし、音声入力部170と音声処理部180を一体化した構成としてもよい。
(1-3)詳細構成
図3は、メインコントローラー100、音声処理部180、音声出力部190の構成を示したブロック図である。音声出力部190は、内部にスピーカー201およびDA(Digital to Analogue)コンバーター202を有しており、DAコンバーター202は音声処理部180から入力されたデジタル音声データをアナログ音声信号に変換し、スピーカー201は当該アナログ音声信号に応じた音声を出力する。
【0037】
音声処理部180は、内部にメッセージ分割部210と音量制御部211とを備え、音声出力部190およびメインコントローラー100に接続されている。
【0038】
メインコントローラー100は、装置状態検知部220を用いて、画像読み取り部110、画像形成部120、操作パネル130、給紙部140、自動原稿搬送部150および通信部160の装置状態を監視し、音声メッセージを出力すべき装置状態であるかを検知する。この検知結果に基づいて、音声生成部221は、装置状態に対応する音声メッセージを生成し、当該音声メッセージを音声処理部180のメッセージ分割部210へ出力する。
【0039】
例えば、装置状態検知部220が装置状態としてジャムを検知すると、音声生成部221が「○○部でジャムが発生しました」との音声メッセージを生成する。また、装置状態検知部220が装置状態としてA4用紙のペーパーエンプティを検知すると、音声生成部221が「A4用紙の紙切れが発生しました」との音声メッセージを生成する。
【0040】
なお、音声生成部221は、予め各装置状態に対応付けて音声メッセージのテキストデータを記憶しておき、装置状態に応じて当該テキストデータを読み出すことによって音声メッセージを生成してもよい。
【0041】
ジョブステータス検知部222は、画像形成装置1によるジョブ実行の進捗状態、すなわちジョブステータスを検知する。
図4(A)に示すように、ジョブ種別がプラテンガラス上に載置された原稿をスキャナー移動方式で読み取るコピー(プラテン)ジョブである場合には、ジョブステータスは「原稿読み取り」、「用紙給紙」、「用紙搬送」、「転写」、「定着」および「排紙」の順に遷移する。各ジョブステータスは、画像形成装置1の動作状態に対応している。
【0042】
ジョブステータス検知部222は、メインコントローラー100により画像形成装置1の各部の制御状態を監視したり、画像形成装置1の各部の動作状態を監視したりすることによってジョブステータスを特定する。ジョブステータス検知部222は、現在実行中のジョブのジョブ種別とジョブステータスを音声処理部180の音量制御部211に通知する。
【0043】
音声処理部180のメッセージ分割部210は、音声生成部221から受け付けた音声メッセージを分割して、分割した音声メッセージ(以下、「分割メッセージ」という。)を順次、音量制御部211に入力する。音声処理部180は、音声メッセージの分割位置を予め記憶しておいてもよいし、或いは音声メッセージを言語解析することによって分割位置を決定してもよい。また、単語ごとに音声メッセージを分割してもよい。
【0044】
音量制御部211は、ジョブステータス検知部222からジョブ種別とジョブステータスを通知されるたびに音声メッセージを出力する音量を決定する。音量制御部211は、音声処理部180から分割メッセージを受け付けると、当該分割メッセージのデジタル音声データであって、現在のジョブステータスに対応する音量のデジタル音声データを音声合成する。音量制御部211は、音声合成したデジタル音声データを音声出力部190のDAコンバーター202に入力する。
(1-4)音量制御部211
音量制御部211は、音量を決定するために、例えば、
図4(B)および(C)に示すような音量テーブルを参照する。
【0045】
図4(A)に示すように、画像形成装置1が実行するジョブのジョブステータスには、「原稿給紙」、「原稿読み取り」、「原稿排紙」、「用紙給紙」、「用紙搬送」、「転写」、「定着」および「排紙」の8つがある。ただし、すべてのジョブがこれら8つのジョブステータスを取る訳ではなく、ジョブによって取り得るジョブステータスが異なる。
図4(A)において、〇印は左端の「ジョブ種別」欄に記載されたジョブが当該ジョブステータスを取り得ることを表し、×印は当該ジョブステータスを取らないことを表している。
【0046】
画像形成装置1がジョブの実行を開始すると、ジョブステータス検知部222はどのジョブがどのジョブステータスを取っているかを音量制御部211に通知する。また、画像形成装置1がジョブの実行を完了し、引き続いて実行すべきジョブが無い場合には、その旨をジョブステータス検知部222が音量制御部211に通知すると、音量制御部211は音声メッセージの出力音量をデフォルト音量に戻す。
【0047】
音量制御部211は、ジョブステータス検知部222から実行中のジョブの種別とジョブステータスとの通知を受けると、ジョブ種別がスキャン動作を要するジョブを指している場合には、
図4(B)の表を参照して、ジョブ種別が「コピー(プラテン)」、「スキャン(プラテン)」または「FAX(プラテン)」である場合には、オプション欄が「なし」である行のうち、通知されたジョブステータスに対応する欄を参照して、音量を取得する。
【0048】
また、ジョブ種別が「コピー(循環式ADF)」、「スキャン(循環式ADF)」または「FAX(循環式ADF)」である場合には、オプション欄が「循環式ADF」である行のうち、通知されたジョブステータスに対応する欄を参照して、音量を取得する。ジョブ種別が「コピー(1パス両面ADF)」、「スキャン(1パス両面ADF)」または「FAX(1パス両面ADF)」もまた同様である。
【0049】
例えば、ジョブ種別が「スキャン(循環式ADF)」でジョブステータスが「原稿給紙」である場合には、
図4(C)のテーブルでオプション欄が「循環式ADF」である行のうち、ジョブステータスが「原稿給紙」である欄を参照して、当該欄に記載されている音量「2」を取得する。
【0050】
また、音量制御部211は、画像形成装置1のオプション構成を予め記憶しておいてもよい。例えば、実行中のジョブが「プリント」であって、ジョブステータスが「用紙給紙」であり、かつオプションとして大容量トレイ(LCT: Large Capacity Tray)が装着されている場合には、
図4(C)のテーブルを参照してオプション欄が「LCT」である行のうち、ジョブステータス「用紙給紙」に対応する欄を参照して、音量「5」を取得する。一方、給紙オプションが装着されていない倍には、オプション欄が「給紙オプション無し」である行のうち、ジョブステータス「用紙給紙」に対応する欄を参照して、音量「2」を取得する。
【0051】
図4(B)、(C)のテーブルを参照して、実行中のジョブのジョブステータスに対応する動作音量を取得したら、当該動作音量に応じて音声メッセージの音量(以下、「メッセージ音量」という。)を決定する。メッセージ音量は、例えば、画像形成装置1の動作音量以上の音量にしてもよい。メッセージ音量は、画像形成装置1の動作音量との大小関係に関わらず、画像形成装置1のユーザーが音声メッセージの内容を聞き取れる音量であればよい。
【0052】
なお、
図4(B)、(C)のテーブルに実行中のジョブに対応する欄に音量が指定されていない場合や、実行中のジョブに対応する欄が無い場合には、音量制御部211はメッセージ音量としてデフォルトの音量を採用する。
(1-5)音量可変制御のフローチャート
図5は、音声処理部180の動作を示すフローチャートである。
【0053】
このフローチャートは、例えば、画像形成装置1がプリントジョブ1を実行している最中にペーパーエンプティが発生し、プリントジョブ1の実行を継続できなくなった時点で、プリントジョブ1が使用する給紙トレイとは異なる給紙トレイを使用するプリントジョブ2の実行を開始する場合に、ペーパーエンプティを通知する音声メッセージが、プリントジョブ2の実行によって発生する画像形成装置1の動作音によって聴き取り難くならないように、メッセージ音量を設定する場合を想定したものであるが、他の状況においても音声処理部180は同様にしてメッセージ音量を適切に調整することによって、音声メッセージを聞き取り易くすることができる。
【0054】
なお、先行ジョブを中断して音声メッセージを出力する場合であっても、後続のジョブが無かったり、画像形成装置1の機械的動作を必要としないジョブが後続したりする場合には、画像形成装置1の動作音は発生しないので、メッセージ音量を調整する必要はなく、デフォルト音量で音声出力すれば足りる。
【0055】
また、プリントジョブ1、2が同じ給紙トレイを使用する場合であって、かつ、プリントジョブ1、2以外のジョブが画像形成装置1に投入されていない場合に、当該給紙トレイのペーパーエンプティが発生すると、プリントジョブ2を実行することができないので、このような場合においてもメッセージ音量の調整は不要である。
【0056】
図5に示すように、音声生成部221からメッセージ分割部210が例えばペーパーエンプティ等の音声メッセージの入力を受け付けると(S1)、音声メッセージを単語単位に分割し(S2)、当該音声メッセージ中の何番目の単語であるかを表す変数nを初期化して値「1」をセットする(S3)。そして、音量制御部211はジョブステータス検知部222からの通知を参照して、画像形成装置1がジョブを実行中であるかどうか判定し、実行中でなければ(S4:N)、音量調整することなく、デフォルトの音量で音声メッセージを音声出力する(S5)。
【0057】
ジョブを実行中である場合は、ジョブステータス検知部222からの通知を参照して、実行中のジョブのジョブステータスを取得し(S6)、
図4(B)、(C)のテーブルを参照して(S7)、動作音量を取得する(S8)。例えば、実行中のジョブの種別がコピー(循環式ADF)で、ジョブステータスが原稿給紙である場合には、
図4(B)から動作音量は「2」となる。
【0058】
これを得て、n=1番目の単語の音量を調整する。音声メッセージが「ペーパーエンプティ発生」であって、単語「ペーパー」、「エンプティ」、「発生」の3つに分割する場合には、最初の「ペーパー」の音量を調整する(S9)。調整方法としては、動作音量が2である場合には、音量を2より大きな3、或いは4以上とすることができる。ただし、動作音量よりもメッセージ音量を大きくすることは必須ではない。要は、ユーザーに動作音によって阻害されることなく、音声メッセージの各単語が聞き取れればいい。
【0059】
ユーザーが画像形成装置1内の動作音源よりも操作パネル130に近い位置にいる場合には、動作音量とメッセージ音量が同じであっても、音声メッセージは操作パネル130から音声出力されるので、ユーザーには聞き取りやすい。すなわち、メッセージ音量が動作音量以下であっても、ユーザーが音声メッセージを十分聞き取れる場合がある。また、動作音の周波数が低く、音声メッセージの周波数が高い場合など、動作音と音声メッセージとで周波数が大きく異なる場合にも、メッセージ音量が動作音量ほど大きくなくても聴き取り易い場合がある。
【0060】
従って、動作音や動作音量ごとに音声メッセージの聴き取り易いメッセージ音量を実験等によって求めておき、予め設定しておいてもよい。
【0061】
その後、当該メッセージ音量の当該単語分のデジタル音声データが、音声出力部190に入力され、スピーカー201から音声出力される(S10)。
【0062】
次にステップS11に進み、ジョブステータス検知部222からの通知を参照して、元のジョブステータスが終了したかどうか判断する。まだ終了していなければ(S11:N)、当該音声メッセージを構成するすべての単語の出力を終了したかどうか判断する。出力を終了していなければ(S17:N)、変数nをインクリメントして(S12)、次の単語「エンプティ」の音量を調整し(S9)、音声出力する(S10)。
【0063】
その後も元のジョブステータスが終了しておらず(S11:N)、すべての単語の出力を完了していなければ(S17:N)、nをさらにインクリメントして(S12)、最後の単語「発生」についてもメッセージ音量を調整して(S9)、音声出力する(S10)。
【0064】
一方、例えば「エンプティ」を出力した段階で、元のジョブステータスが終了したが(S11:Y)、次のジョブステータスへ遷移してジョブを実行中である場合には(S13:N)、次の単語が存在するなら(S14:N)、変数nをインクリメントして(S16)、現在のジョブステータスを取得し(S6)、そのステータスでの動作音量を取得して(S7、S8)、最後の単語「発生」のメッセージ音量を調整する(S9)。
【0065】
図4(A)のテーブルでは、プリントジョブ2の「用紙給紙」の次のジョブステータスは「用紙搬送」であり、
図4(C)から、オプションの有無にかかわらず、動作音量は「1」であることが分かる。従って、単語「発生」のメッセージ音量はこのレベル1の動作音量に対して調整されることとなる。
図4(C)では、ジョブステータス「用紙搬送」の前のジョブステータス「用紙給紙」での動作音量は、オプションの有無にかかわらず、ジョブステータス「用紙搬送」での動作音量よりも大きいので、単語「発生」は、その前の単語「ペーパー」「エンプティ」よりも小さなメッセージ音量で音声出力されることとなる。
【0066】
尚、この実施例において、音声メッセージは一度出力されると、ジョブステータスが後続のジョブステータスに遷移していても、繰り返して音声出力されることはない。勿論、回数を定めて、音声出力を繰り返すこともできる。
【0067】
また、上記した例では、メッセージを単語単位に分割して、ステータスに応じた動作音に応じてメッセージの音量を調整しているが、単語単位に分割せずに、音声出力の途中であってもジョブステータスに遷移すると、遷移後のジョブステータスでの動作音量に合わせて、メッセージの音量を変更してもよい。その場合は、音声出力部190に入力するデジタル音声データの音量を変更せずに、音声出力部190に別途、メッセージ音量を指示することによって、音声出力部190に音量を変更させてもよい。
(1-6)具体例
後続ジョブの実行中に、先行ジョブに係る音声メッセージを音声出力する場合のメッセージ音量の調整について具体例を挙げて説明する。
(1-6-1)具体例1
図6は、上記フローチャートに従って制御された動作の具体例を示している。画像形成装置1においてプリントジョブ1を実行中にペーパーエンプティが発生し、別のプリントジョブ2の実行を開始した後で、ペーパーエンプティをユーザーに通知する場合の動作音量並びにメッセージ音量の推移を示している。
【0068】
図6(A)は、画像形成装置1の動作音量の推移を示し、
図6(B)は、並行するメッセージ音量の推移を示している。
【0069】
図6(A)では、プリントジョブ1を実行中に時刻0でペーパーエンプティが発生して、プリントジョブ1の実行が中断された後、時刻t1にプリントジョブ2の実行が開始される。尚、プリントジョブ2は、ペーパーエンプティが発生した給紙トレイとは別の給紙トレイを使用する。従って、ペーパーエンプティでプリントジョブ1が中断しても、プリントジョブ2は実行できる。
【0070】
また、ペーパーエンプティが発生した時点は時刻0であるが、画像形成装置1がそれを検出し、表示等するのは多少遅れ、時刻t2にペーパーエンプティの発生を通知する音声メッセージ(「下段給紙カセットにA3用紙をセットしてください」)が出力される。
【0071】
ペーパーエンプティが時刻t3で解消すると、プリントジョブ1の中断条件が解消するが、プリントジョブ2がプリント中の為、そのプリントが終わる時刻t4まで待って、プリントジョブ1を再開する。そして、時刻t5にプリントジョブ1はプリントを終了する。
【0072】
以上において、画像形成装置1は、それぞれの時刻において図中に示す動作音量の動作音を発生させる。時刻t1の前より後において動作音量が大きいのは、時刻0から時刻t1まではペーパーエンプティが生じたためにプリントジョブ1の実行が中断され、時刻t1以降はプリントジョブ2が実行されるからである。
【0073】
図6(B)は、各時刻において、音声メッセージを音声出力する場合のメッセージ音量を示している。本例において音声メッセージが出力されるのは、時刻t2からt3までの期間、t4からt5までの期間、およびt5以降の期間の3回である。メッセージの内容は、該当する時刻のところに記載した文字列が示している。
【0074】
次に
図6(C)は、
図6(B)における時刻t2からt3までの期間内のジョブステータス毎の動作音量の推移を表示したものである。給紙・搬送、転写等の各ジョブステータスにおいて動作音量が変化していることが分かる。
図6(D)は各ジョブステータスにおいて音声メッセージを出力する場合のメッセージ音量を示している。
【0075】
尚、
図6(C)、(D)において、LCT有、無、は、上下昇降量が大きいために動作音が大きい大容量給紙トレイ(LCT: Large Capacity Tray)の有無を示し、フィニッシャー有、無は、画像形成装置1の排紙口に接続される後処理装置の有無を示している。LCTとかフィニッシャーは、画像形成装置1のオプション装置であり、これらのオプション装置を搭載した場合は動作音量が大きくなるので、メッセージ音量も大きくしているのである。これらのオプション装置を搭載した場合の詳細は次の実施例において説明する。
(1-6-2)具体例2
図7(A)は、
図6とは別のジョブを実行する場合の動作例を示している。即ち、スキャン(ADF)ジョブを実行中にジャムが発生すると共に、プリントジョブの割り込みがあった場合の動作音量の推移を示す。なお、ジャムは時刻0で発生し、時刻t2でジャムを通知する音声メッセージの出力が開始される。
図7(B)は、
図7(A)に対応するメッセージ音量の推移を示している。更に、時刻t2からt3までの期間内におけるジョブステータス毎の動作音量並びにメッセージ音量の推移を
図7(C)、(D)に示す。
図6と同様、動作音量、メッセージ音量が変化している点は同じであるので、詳細な説明は省略する。
(1-6-3)他の具体例
上記の具体例以外にも
図8に示すような場合にメッセージ音量を調整すると有効である。
図8に示すように、先行するジョブの実行中にステータス欄に記載した事象の発生によって、先行ジョブの実行を中断し、割り込みジョブ欄に記載した割り込みジョブを実行する場合に、先行ジョブ毎にステータス欄に記載された事象と割り込みジョブとの組み合わせのうち、当該組み合わせに対応する欄に「音量可変」と記載されている組み合わせについては、当該欄の括弧内に記載された通知に係る音声メッセージのメッセージ音量を、割り込みジョブのジョブステータスに応じて調整する。
【0076】
例えば、プリントジョブの実行中に用紙給紙ジャムが発生し、割り込みジョブとして、コピー(ADF)、コピー(プラテン)、スキャン(ADF)およびスキャン(プラテン)を実行する場合には、割り込みジョブのジョブステータスに応じて用紙給紙ジャム通知のメッセージ音量を調整する。このようにすれば、画像形成装置1の動作音によって音声メッセージが聴き取り難くなるのを防止することができる。
【0077】
この場合には、画像形成装置1のユーザーが音声メッセージを聴き取って、ジャム紙を速やかに除去することができるので、割り込みジョブに先行するプリントジョブを速やかに再開させ、完了させることができる。従って、当該ユーザーが用紙給紙ジャム通知の音声メッセージを聴き取りそびれてしまい、用紙給紙ジャムの解消されずに、当該プリントジョブの実行が中断したままになる場合と比較して、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0078】
他の先行ジョブと割り込みジョブとの組み合わせについても、先行ジョブの実行中断を速やかに解消したり、先行ジョブの完了を速やかに通知したりすることができるので、先行ジョブを投入したユーザーによる画像形成装置1の円滑な利用を推進することができる。
[2]第2の実施例
この実施例では、第1実施例に係る画像形成装置1にオプション装置を搭載した場合のメッセージ音量の調整を説明する。
【0079】
図9は画像形成装置1に接続されるオプション装置を示している。LCTおよびフィニッシャーは、
図6のところで説明したとおりである。オプション装置としてはその他に循環式ADF、1パス式ADF、パンチキット、インナー・フィニッシャーがある。パンチキットは、トナー像を定着した記録紙の指定された位置に穿孔するオプション装置である。インナー・フィニッシャーは、画像形成装置1の胴内空間に搭載される後処理装置である。胴内空間とは、画像読み取り部110と画像形成部120との間の空間である。
【0080】
画像形成装置1は、どのオプション装置を搭載するかによって動作音量が異なるため、メッセージ音量もまたオプション装置に応じて調整する必要がある。
図9は、オプション装置のタイプ毎にメッセージ音量に加算すべき音量補正値を示す表である。この
図9の表は、音量制御部211(
図3参照)が補正テーブルとして記憶している。
【0081】
図10は、オプション装置が接続されていた場合において、
図5に示したメインフローを修正する箇所を示すフローチャートである。ステップS8、S9、S10は、
図5のフローチャート中のステップである。新たに追加したステップはS101~S104である。
【0082】
まず、S8において、動作音量を取得したら、続いてオプション装置が搭載されているかどうかを画像形成装置1の装置構成から判断する(S101)。オプション装置が搭載されている場合は(S101:Y)、S102に進み、
図9の補正テーブルを参照して(S102)、接続されているオプション装置の音量補正値を読み出す(S103)。そして、ステップS9においてn番目の単語の音量調整が行われた後、読み出した音量補正値をメッセージ音量に加算する(S104)。加算後のメッセージ音量が入力されると、音声出力部190は、加算後のメッセージ音量でスピーカー201を用いて音声メッセージを出力する(S10)。
【0083】
図11(A)、(B)は、画像形成装置1にオプション装置が接続されている場合における、動作音量並びにメッセージ音量の推移を示している。
[3]第3の実施例
これまでの実施例は、1台の画像形成装置1を対象として、その動作音量に従ってメッセージ音量を調整していたが、この実施例では、複数、例えば2台の画像形成装置が互いに他方の画像形成装置の動作音が届く距離に配設されている場合において、他方の画像形成装置の動作音量を考慮してメッセージ音量を調整する例を開示する。
【0084】
図12は、画像形成装置1から比較的近い距離に画像形成装置12が設置されている場合を示している。画像形成装置12もまた第1実施例で示した画像形成装置1と同様の構成をしており、自己の動作シーケンスのそれぞれのステータスにおける動作音を検出し、且つ、ステータス毎に音声メッセージの音量を可変とする機能を有していてもよい。画像形成装置1、12は通信ネットワークで接続されていて、相互に通信することができる。以下においては、画像形成装置1を自機とし、画像形成装置12を他機として自機が他機の動作音量に基づいて、メッセージ音量を調整する処理を説明する。
【0085】
これは、例えば、自機においてペーパーエンプティが発生した旨の音声メッセージを出力しようとした場合に、並行して他機がジョブを実行することによって動作音が発生する際に、自機が出力する音声メッセージがユーザーに聞き取りやすくなるように、そのメッセージ音量を調整するための処理である。
【0086】
図13は、他機が自機に対して動作音量を通知する処理を示している。他機は最初、自機と通信を確立する処理(S200)を行って後、ジョブの実行が開始されると(S201:Y)、ジョブステータスが変化するのを監視する。ジョブステータスが変化すると(S202:Y)、変化後のジョブステータスに基づいて動作音量を検出する(S203)。そして、検出した動作音量を直ちに送信する(S204)。その後、ジョブの実行を終了したら(S205:Y)、動作音量として0を自機へ送信し(S206)、ステップS201へ進んで上記の処理を繰り返す。
【0087】
一方、自機は
図14に示す処理を実行する。即ち、他機との通信を確立した後(S300)、他機から動作音量を受信する度に(S301:Y)、他機の音量レベルを記憶する領域に受信した動作音量を上書きすることによって、他機の動作音量を記録(S302)。これにより、記憶領域には、何時も他機の最新の動作音量が記録されることになる。
【0088】
この記録処理を並行して、自機は同時に
図15に示すように、メッセージ音量の補正処理を実行する。
図15においては、
図5に示したメインフローを修正する箇所のみが示されている。ステップS8、S9、S10は、
図5のフローチャート中のステップである。新たに追加したステップはS400~S402である。
【0089】
n番目の単語のメッセージ音量を調整した後(S9)、自機は
図14に示す処理で記録した他機の動作音量を参照し(S400)、他機の動作音量を他機から自機までの距離に応じて変更することによって音量補正値を算出する(S401)。一般的に、他機から自機までの距離が2倍になると、他機からの動作音量は6デシベルだけ減衰する。このため、他機から自機までの距離が基準距離である場合の基準距離と動作音量とを記憶しておき、実際の距離と基準距離との比から音量補正値を算出してもよい。
【0090】
ステップS9で取得したメッセージ音量に、ステップS401で算出した他機の動作音量を加算することによって、最終的なメッセージ音量を算出した後(S402)、当該メッセージ音量で音声メッセージを出力する(S10)。
【0091】
このようにすれば、自機は、他機の動作音も加味して、メッセージの音量レベルを設定することができ、他機が動作中であっても音声メッセージの聞き取りミスを改善することができる。
【0092】
図16は、自機が、他機の音量レベルを考慮してメッセージ音量を補正する動作例を示している。
図16に示すように、自機のメッセージ音量は、プリントジョブ2を実行する際の動作音量に応じたメッセージ音量(実線のグラフ)に、他機の動作音量に相当する音量補正値を加算した音量(破線のグラフ)になる。なお、
図16は、他機の動作音量が一定の場合を例示している。
[4]第4の実施例
画像形成装置1の動作音量に応じてメッセージ音量を調整すると、動作音量が特に大きい場合にはメッセージ音量も併せて大きくすると、動作音量とメッセージ音量との合計音量がかなり大きくなって、画像形成装置1の設置環境における静謐性を損なうおそれがある。例えば、オフィス環境で静謐性が損なわれると、当該オフィスでの作業効率が低下する不都合が生じ得る。このため、音声メッセージを聴き取り易くする際には、メッセージ音量を大きくする以外の方策も必要になる。
【0093】
この実施例は、画像形成装置1の動作音量とメッセージ音量との合計音量を抑制しながら、音声メッセージを聴き取り易くするための対処法を開示している。
【0094】
図17は、本実施例に係る音量調整処理のフローチャートである。
【0095】
まず、ジョブの実行中にジャムやペーパーエンプティ等、エラーを通知すべき事象が発生すると、当該事象の発生をユーザーに通知する音声メッセージの入力を受け付けるとともに(S500)、当該ジョブの実行を中断している間に割り込み実行するジョブがあるか確認する。割り込み実行するジョブがない場合には(S501:N)、画像形成装置1はジョブの実行を停止しており、動作音は特に大きくないので、デフォルトのメッセージ音量で音声メッセージを出力する(S506)。
【0096】
割り込みジョブがある場合には(S501:Y)、当該割り込みジョブの現在のジョブステータスにおける動作音量を特定して(S502)、当該動作音量が上限値を超えているか否かを確認する。動作音量が上限値を超えていない場合には(S503:N)、音声メッセージを出力しても合計音量は大きくなり過ぎないと考えられるので、当該動作音量に応じてメッセージ音量を調整し(S507)、当該メッセージ音量で音声メッセージを出力する(S506)。
【0097】
現在のジョブステータスにおける動作音量が上限値を超えている場合には(S503:Y)、
図18に例示するような速度可変リストを参照する。速度可変リストは、各種の割り込みジョブのジョブステータスごとに画像形成装置1の動作速度を低下させることができるか否かが記録されている。例えば、割り込みジョブが「コピー(プラテン)ジョブ」であって、ジョブステータスが「用紙搬送」である欄は「可」となっており、画像形成装置1の動作速度を低下させることができる。
【0098】
割り込みジョブの当該ジョブステータスにおいて画像形成装置1の動作速度を低下させることができる場合には(S504:Y)、画像形成装置1の動作速度を低下させる(S505)。すると、画像形成装置1の動作音量が低下するので、動作音と音声メッセージとの合計音量を抑制することができる。
【0099】
一方、動作速度を低下させることができない場合には(S504:N)、当該ジョブステータスでの動作音量に応じて音声メッセージのメッセージ音量を調整して(S507)、音声メッセージを出力する(S506)。この場合には、合計音量を抑制するのには限界があるが、上記実施の形態と同様に、ユーザーに音声メッセージを聴き取り易くすることができる。
[5]第5の実施例
この実施例では、動作音量が大き過ぎるために、音声メッセージを聴き取り易くなる程度までメッセージ音量を大きくすることができない場合や、或いは画像形成装置1の設置環境が静謐性を要求するために、メッセージ音量を大きくするのに限界がある場合に対処する技術を開示する。
【0100】
図19は画像形成装置1の詳細なシステム構成を表している。既に説明した
図3のシステムと異なるのは、音声処理部180に音声出力タイミング遅延部212と選択部213とを設けている点である。
【0101】
音声出力タイミング遅延部212は、音声メッセージを時間遅延して出力する処理を実行する。遅延時間は、動作音量が上限値以下となるジョブステータスに遷移するか、またはジョブが完了するまでの時間である。
【0102】
例えば、画像形成装置1にオプション装置としてLCTが搭載されており、かつ動作音量の上限値が「4」であって、先行するプリントジョブでペーパーエンプティが発生し、割り込みジョブとしてLCTを使用するプリントジョブを実行する場合について考える。
【0103】
この場合、ペーパーエンプティの発生を通知する音声メッセージは、割り込みジョブのジョブステータスが「用紙給紙」である期間中は、
図4(C)に示すように、オプション装置としてLCTを搭載し、かつジョブステータスが「用紙給紙」であるときの動作音量「5」は上限値「4」よりも大きい。また、
図18に示すように、プリントジョブでは、ジョブステータスが「用紙給紙」である場合には、画像形成装置1の動作速度を低下させることができない。
【0104】
このため、割り込みジョブのジョブステータスが「用紙給紙」である期間中は、音声メッセージの出力が抑制される。その後、割り込みジョブのジョブステータスが「用紙搬送」になると、
図4(C)に示すように、動作音量は「1」であって、上限値「4」よりも小さいので、音声メッセージの出力が開始される。
【0105】
更に、画像形成装置1にオプション装置としてインナー・フィニッシャーを搭載している場合には、割り込みジョブのジョブステータスが「排紙」ときの動作音量が「7」であり、上限値「4」よりも大きい。この場合には、
図18に示すように、プリントジョブでは、ジョブステータスが「排紙」である場合には、画像形成装置1の動作速度を低下させることができる。
【0106】
このため、割り込みジョブのジョブステータスが「排紙」である期間中は、画像形成装置1の動作速度を低下させて、動作音量を小さくした状態で音声メッセージが出力される。なお、この場合のメッセージ音量は、デフォルト音量であってもよいし、動作速度を低下させた状態での動作音量に応じたメッセージ音量であってもよい。
【0107】
選択部213は、音量制御部211の出力と、音声出力タイミング遅延部212の出力とを択一的に選択して音声出力部190へ出力する。選択部213は、
図20に示すように画像形成装置1の動作音量が上限値を超えているか否かを判定して、動作音量が上限値を超えている場合には(S603:Y)、音声出力タイミング遅延部212の出力を選択して(S604)、音声メッセージの出力タイミングを調整して音声出力する(S606)。
【0108】
一方、動作音量が上限値以下である場合には(S603:N)、音量制御部211の出力を選択して(S605)、メッセージ音量を調整して、音声メッセージを出力する(S606)。
[6]変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(6-1)上記実施の形態においては、画像形成装置1が複合機である場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、複合機に代えて、プリンター装置、コピー装置、ファクシミリ装置といった単機能の画像形成装置や、スキャナー装置のような単機能の画像処理装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る画像形成装置は、装置が動作音を発生している状態で、同装置がユーザーなどに対して音声メッセージを発する場合に、ユーザーがそのメッセージを聞き逃し等しないよう対処できる。
【符号の説明】
【0110】
180…音声処理部
190…音声出力部
220…装置状態検知部
221…音声生成部
222…ジョブステータス検知部
210…メッセージ分割部
211…音量制御部
212 音声出力タイミング遅延部
213 選択部