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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】水熱反応処理装置及び水熱反応処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 3/04 20060101AFI20221220BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20221220BHJP
   B01J 3/02 20060101ALI20221220BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B01J3/04 D
G21F9/06 Z
B01J3/02 E
B01J3/04 A
C02F1/58 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018238230
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020099847
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 元
(72)【発明者】
【氏名】高井 正和
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232016(JP,A)
【文献】特開2015-127673(JP,A)
【文献】特開平10-230155(JP,A)
【文献】特開2009-115691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/00- 3/08
G21F 9/00- 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水熱反応処理装置であって、
反応対象物と水とを含む被処理液を加熱加圧して水熱反応させる反応容器と、
前記反応容器を覆い、溶融塩で形成される溶融塩層と、
前記溶融塩層を加熱して、溶融塩を溶融する加熱部と、
を備えることを特徴とする水熱反応処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水熱反応処理装置であって、
前記反応容器は、加圧可能な圧力容器で構成されており、
前記圧力容器は、圧力容器本体と、前記圧力容器本体に開閉可能に設けられる蓋体と、を有しており、
前記圧力容器を収容する圧力容器収容体を備え、
前記溶融塩層は、前記圧力容器と前記圧力容器収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成されていることを特徴とする水熱反応処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水熱反応処理装置であって、
前記反応容器は、反応管で構成されており、
前記反応管の一端側と第一圧力配管で接続されており、前記被処理液を加圧する加圧ポンプと、
前記反応管の他端側と第二圧力配管で接続されている保圧弁と、を備え、
前記反応管を収容する反応管収容体を有し、
前記溶融塩層は、前記反応管と前記反応管収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成されていることを特徴とする水熱反応処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水熱反応処理装置であって、
前記第一圧力配管を収容する第一圧力配管収容体と、
前記第一圧力配管と前記第一圧力配管収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成される第一溶融塩部と、
前記第一溶融塩部を加熱して、溶融塩を溶融する第一加熱体と、
前記第二圧力配管を収容する第二圧力配管収容体と、
前記第二圧力配管と前記第二圧力配管収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成される第二溶融塩部と、
前記第二溶融塩部を加熱して、溶融塩を溶融する第二加熱体と、
を備えることを特徴とする水熱反応処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の水熱反応処理装置であって、
前記被処理液は放射性廃液であり、前記反応対象物はジブチルリン酸であり、前記水熱反応は亜臨界水反応であることを特徴とする水熱反応処理装置。
【請求項6】
水熱反応処理方法であって、
反応対象物と水とを含む被処理液を、溶融塩で形成される溶融塩層で覆われた反応容器に入れ、前記溶融塩層を加熱して溶融塩を溶融させることにより、前記被処理液を加熱加圧して水熱反応させる水熱反応工程と、
前記水熱反応工程の後に、前記溶融塩層を冷却して溶融塩を固化する冷却工程と、
前記固化した溶融塩に前記被処理液または反応生成物が含まれているか否かを判別する判別工程と、
前記固化した溶融塩に前記被処理液または前記反応生成物が含まれている場合には、前記固化した溶融塩を除去する除去工程と、
を備えることを特徴とする水熱反応処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の水熱反応処理方法であって、
前記被処理液は放射性廃液であり、前記反応対象物はジブチルリン酸であり、前記水熱反応は亜臨界水反応であることを特徴とする水熱反応処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水熱反応処理装置及び水熱反応処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業廃液に含まれる有機物や有害化学物質、放射性廃液に含まれる化学物質等を水熱反応により分解処理することが行われている。特許文献1には、放射性廃液に含まれるジブチルリン酸(DBP)を分解処理することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】2014-232016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記のような化学物質を含む廃液等の水熱反応処理は、高温高圧で水熱分解して行われている。このため水熱反応処理に用いられる反応容器は、高温高圧に曝される。反応容器が高温高圧に曝されると、水熱反応中に反応容器のシール部や継手部等から廃液または反応生成物が漏洩する可能性がある。反応容器から廃液等が漏洩すると散逸して、漏れた廃液等の廃棄が煩雑となり、水熱反応処理効率が低下する可能性がある。
【0005】
そこで本開示の目的は、水熱反応処理効率を向上させることが可能な水熱反応処理装置及び水熱反応処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る水熱反応処理装置は、反応対象物と水とを含む被処理液を加熱加圧して水熱反応させる反応容器と、前記反応容器を覆い、溶融塩で形成される溶融塩層と、前記溶融塩層を加熱して、溶融塩を溶融する加熱部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示に係る水熱反応処理装置において、前記反応容器は、加圧可能な圧力容器で構成されており、前記圧力容器は、圧力容器本体と、前記圧力容器本体に開閉可能に設けられる蓋体と、を有しており、前記圧力容器を収容する圧力容器収容体を備え、前記溶融塩層は、前記圧力容器と前記圧力容器収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成されていてもよい。
【0008】
本開示に係る水熱反応処理装置において、前記反応容器は、反応管で構成されており、前記反応管の一端側と第一圧力配管で接続されており、前記被処理液を加圧する加圧ポンプと、前記反応管の他端側と第二圧力配管で接続されている保圧弁と、を備え、前記反応管を収容する反応管収容体を有し、前記溶融塩層は、前記反応管と前記反応管収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成されていてもよい。
【0009】
本開示に係る水熱反応処理装置は、前記第一圧力配管を収容する第一圧力配管収容体と、前記第一圧力配管と前記第一圧力配管収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成される第一溶融塩部と、前記第一溶融塩部を加熱して、溶融塩を溶融する第一加熱体と、前記第二圧力配管を収容する第二圧力配管収容体と、前記第二圧力配管と前記第二圧力配管収容体との間の空間に溶融塩が充填されて形成される第二溶融塩部と、前記第二溶融塩部を加熱して、溶融塩を溶融する第二加熱体と、を備えていてもよい。
【0010】
本開示に係る水熱反応処理装置において、前記被処理液は放射性廃液であり、前記反応対象物はジブチルリン酸であり、前記水熱反応は亜臨界水反応であってもよい。
【0011】
本開示に係る水熱反応処理方法は、反応対象物と水とを含む被処理液を、溶融塩で形成される溶融塩層で覆われた反応容器に入れ、前記溶融塩層を加熱して溶融塩を溶融させることにより、前記被処理液を加熱加圧して水熱反応させる水熱反応工程と、前記水熱反応工程の後に、前記溶融塩層を冷却して溶融塩を固化する冷却工程と、前記固化した溶融塩に前記被処理液または反応生成物が含まれているか否かを判別する判別工程と、前記固化した溶融塩に前記被処理液または前記反応生成物が含まれている場合には、前記固化した溶融塩を除去する除去工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本開示に係る水熱反応処理方法において、前記被処理液は放射性廃液であり、前記反応対象物はジブチルリン酸であり、前記水熱反応は亜臨界水反応であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成によれば、反応容器から被処理液または反応生成物が漏洩した場合でも容易に廃棄できるので、水熱反応処理効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第一実施形態において、水熱反応処理装置の構成を示す図である。
図2】本開示の第一実施形態において、水熱反応処理方法を示すフローチャートである。
図3】本開示の第二実施形態において、水熱反応処理装置の構成を示す図である。
図4】本開示の第二実施形態において、水熱反応処理方法を示すフローチャートである。
図5】本開示の第三実施形態において、水熱反応処理装置の構成を示す図である。
図6】本開示の第三実施形態において、水熱反応処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
以下に本開示の第一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、水熱反応処理装置10の構成を示す図である。水熱反応処理装置10は、反応対象物と水とを含む被処理液を亜臨界環境等により水熱反応処理するための装置である。反応対象物は、特に限定されないが、有機物、有害化学物質、放射性廃液に含まれる化学物質等とすることができる。例えば、被処理液は、ジブチルリン酸(DBP)と水とを含む放射性廃液とするとよい。プルトニウム抽出時の副生成物として生成するジブチルリン酸は、ガラス固化工程での操業性の足かせとなっており、分解除去することが好ましい。このような放射性廃液に含まれるジブチルリン酸は、亜臨界環境における水熱反応により分解処理することができる。
【0016】
水熱反応処理装置10は、反応対象物と水とを含む被処理液を加圧可能な圧力容器12を備えている。圧力容器12は、被処理液を加熱加圧して水熱反応させる反応容器としての機能を有している。圧力容器12は、圧力容器本体14と、圧力容器本体14に開閉可能に設けられる蓋体16と、を備えている。圧力容器本体14は、圧力容器本体14の上側に被処理液を投入する投入口18が設けられている。圧力容器本体14は、圧力容器本体14の下側に反応生成物を排出する排出口20が設けられている。
【0017】
圧力容器12は、真空ポンプ等により圧力容器12内を排気することができる。圧力容器12は、ガス供給装置等によりアルゴンガス等の不活性ガスや窒素ガス等を圧力容器12内に供給して加圧することができる。圧力容器12は、例えば、オートクレーブ等で構成することが可能である。
【0018】
圧力容器12は、オーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼で形成されているとよい。ステンレス鋼は、硬度が高い炭素鋼等とは異なり、後述する溶融塩に対して割れ感受性を示さない。このため、後述するように圧力容器12が溶融塩層24で覆われている場合でも、圧力容器12の割れを抑制できる。オーステナイト系ステンレス鋼には、一般的なSUS304、SUS316L等を用いることが可能である。
【0019】
圧力容器収容体22は、圧力容器12を収容可能に形成されている。圧力容器収容体22は、後述する溶融塩を排出可能な排出蓋を有しているとよい。排出蓋は、例えば、圧力容器収容体22の下側に開閉可能に設けることができる。圧力容器収容体22は、圧力容器収容体22に溶融塩を投入するための投入蓋を有しているとよい。投入蓋は、例えば、圧力容器収容体22の上側に開閉可能に設けることができる。なお、排出蓋と投入蓋とは別々の蓋でなく、同じ蓋で構成してもよい。
【0020】
圧力容器収容体22と、圧力容器12の投入口18との接続部と、圧力容器収容体22と、圧力容器12の排出口20との接続部とは、後述する溶融塩が漏れないようにシール部材等でシールされているとよい。また、圧力容器収容体22は、オーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼で形成されているとよい。圧力容器収容体22は、後述するように溶融塩と接触しているので、圧力容器12と同様の理由により圧力容器収容体22の割れを抑制できる。
【0021】
溶融塩層24は、圧力容器12と圧力容器収容体22との間の空間に溶融塩が充填されて形成されている。これにより圧力容器12を溶融塩層24で覆うことができる。後述するように水熱反応中では、圧力容器12が溶融した溶融塩で覆われているので、例えば、圧力容器本体14と蓋体16とのシール部等から被処理液または反応生成物が漏れた場合でも、漏れた被処理液または反応生成物を溶融した溶融塩で捕捉して封じ込めることができる。また、水熱反応中では、圧力容器12が溶融した溶融塩で覆われているので、圧力容器12が固体の溶融塩で覆われている場合よりも漏れた被処理液または反応生成物の捕捉性を向上させることができる。更に、漏れた被処理液または反応生成物は溶融した溶融塩で捕捉されているので、溶融した溶融塩を冷却して固化することにより、漏れた被処理液または反応生成物を容易に廃棄することができる。
【0022】
溶融塩は、特に限定されないが、例えば、NaNO―KNO―NaNO、NaOH-KOH、NaNO-KNO、KNO-Ba(NO、NaOH-NaNO、NaNO-NaCl、NaF-BeF、LiCl-KCl、LiF-BeF等の溶融塩を用いることができる。
【0023】
被処理液が、ジブチルリン酸(DBP)と水とを含む放射性廃液の場合には、溶融塩には、硝酸塩系溶融塩を用いるとよい。硝酸塩系溶融塩には、アルカリ硝酸塩と亜硝酸塩との混合塩であるNaNO―KNO―NaNO(モル比%が7-44-49)を用いるとよい。この混合塩は、約300℃以上では無色透明の液状を呈し、142℃(融点)以下では白色の固体となる。
【0024】
加熱部26は、圧力容器収容体22の外側に設けられている。加熱部26は、圧力容器収容体22を加熱することにより溶融塩層24を加熱して、溶融塩を溶融させる機能を有している。加熱部26は、溶融塩を溶融可能であればよく、特に限定されない。加熱部26は、リボンヒータ等の電気抵抗式発熱体のような一般的なヒータ等で構成することができる。
【0025】
制御部は、圧力容器12と、加熱部26とを制御することができる。制御部は、圧力容器12を制御して圧力容器12内の圧力を調節することができる。制御部は、加熱部26を制御して、溶融塩層24の加熱温度を調節することができる。制御部は、一般的なコンピュータシステム等で構成可能である。
【0026】
次に、水熱反応処理装置10を用いた水熱反応処理方法について説明する。図2は、水熱反応処理方法を示すフローチャートである。水熱反応処理方法は、水熱反応工程(S10)と、冷却工程(S12)と、判別工程(S14)と、除去工程(S16)と、を備えている。
【0027】
水熱反応工程(S10)は、反応対象物と水とを含む被処理液を、溶融塩で形成される溶融塩層24で覆われた反応容器としての圧力容器12に入れ、溶融塩層24を加熱して溶融塩を溶融させることにより、被処理液を加熱加圧して水熱反応させる工程である。圧力容器12の蓋体16を閉じた状態で被処理液を投入口18から投入する。圧力容器12内に不活性ガスまたは窒素ガスを供給して、圧力容器12内を水熱反応可能な所定圧力に調節する。加熱部26により圧力容器収容体22を加熱することにより溶融塩層24を加熱して、溶融塩を溶融させて液状にする。圧力容器12は、溶融した溶融塩により水熱反応可能な所定温度に加熱される。これにより、圧力容器12内で反応対象物と水とが水熱反応する。亜臨界水反応により水熱反応させる場合には、例えば、圧力容器12の加熱温度を150℃から350℃、圧力容器12内の圧力を1.5MPaから2MPaとするとよい。
【0028】
例えば、ジブチルリン酸(DBP)と水とを含む放射性廃液のジブチルリン酸を水熱反応により分解処理するためには、圧力容器12の加熱温度を150℃から350℃、圧力容器12内の圧力を1.5MPaから2MPaで亜臨界水反応させればよい。
【0029】
水熱反応後の反応生成物は、圧力容器12の排出口20から排出されて回収される。水熱反応中の圧力容器12は液状の溶融した溶融塩で覆われているので、例えば、圧力容器本体14と蓋体16のシール部等から被処理液または反応生成物が漏洩した場合でも、溶融した溶融塩で捕捉して封じ込めることができる。
【0030】
冷却工程(S12)は、溶融した溶融塩を冷却して固化する工程である。水熱反応後は、加熱部26による加熱を停止して溶融した溶融塩を固化するまで冷却する。溶融した溶融塩は、例えば、室温まで冷却するとよい。
【0031】
判別工程(S14)は、固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれているか否かを判別する工程である。固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれているか否かを判別するためには、圧力容器収容体22の排出蓋を開けて、固化した溶融塩を外観観察して判別するとよい。また、固化した溶融塩を化学分析して、固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれているか否かを判別してもよい。更に、水熱反応中に圧力容器12の圧力が低下した場合には、圧力容器12から被処理液または反応生成物が漏洩したとみなして、固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれていると判定してもよい。
【0032】
除去工程(S16)は、固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれている場合には、固化した溶融塩を除去する工程である。判別工程(S14)により固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれていると判定された場合には、圧力容器収容体22の排出蓋を開けて固化した溶融塩を除去する。このように被処理液または反応生成物が圧力容器12から漏洩した場合でも、容易に廃棄することができる。
【0033】
以上、上記構成によれば、反応容器としての圧力容器から被処理液または反応生成物が漏洩した場合でも、漏洩した被処理液または反応生成物を溶融塩で捕捉して容易に廃棄することができる。これにより水熱反応処理効率を向上させることが可能となる。また、上記構成によれば、ジブチルリン酸と水とを含む放射性廃液のジブチルリン酸を水熱反応により分解処理する際に、圧力容器から放射性廃液が漏れた場合でも、放射性廃液を固化した溶融塩に封じ込めることができるので、放射性廃液の散逸が抑制される。
【0034】
[第二実施形態]
以下に本開示の第二実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図3は、水熱反応処理装置30の構成を示す図である。なお、同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
水熱反応処理装置30は、反応対象物と水とを含む被処理液を水熱反応させる反応管32を備えている。反応管32は、被処理液を加熱加圧して水熱反応させる反応容器としての機能を有している。反応管32は、後述するように溶融塩で覆われていることから、割れを抑制するためにオーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼で形成されているとよい。
【0036】
水熱反応処理装置30は、反応管32の一端側と第一圧力配管34で接続されており、被処理液を加圧する加圧ポンプ36を備えている。加圧ポンプ36は、反応管32の長手方向の一端側と第一圧力配管34で接続されている。加圧ポンプ36は、被処理液を溜めた被処理液タンク38と配管40で接続されている。加圧ポンプ36は、被処理液を加圧して反応管32へ搬送する機能を有している。加圧ポンプ36は、一般的な液送ポンプ等で構成することが可能である。
【0037】
水熱反応処理装置30は、反応管32の他端側と第二圧力配管42で接続されている保圧弁44を備えている。保圧弁44は、反応管32の長手方向の他端側と第二圧力配管42で接続されている。保圧弁44は、一般的な電磁弁等で構成することができる。保圧弁44は、被処理液を水熱反応させた反応生成物を回収する回収タンク46と配管48で接続されている。
【0038】
反応管収容体50は、反応管32を収容可能に形成されている。反応管収容体50は、後述する溶融塩を排出可能な排出蓋を有しているとよい。排出蓋は、例えば、反応管収容体50の下側に開閉可能に設けることができる。反応管収容体50は、後述する溶融塩を投入するための投入蓋を有しているとよい。投入蓋は、例えば、反応管収容体50の上側に開閉可能に設けることができる。なお、排出蓋と投入蓋とは別々の蓋でなく、同じ蓋で構成してもよい。
【0039】
反応管収容体50と第一圧力配管34との接続部と、反応管収容体50と第二圧力配管42との接続部とは、後述する溶融塩が漏れないようにシール部材等でシールされているとよい。また、反応管収容体50は、後述するように溶融塩と接触していることから、割れを抑制するためにオーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼で形成されているとよい。
【0040】
溶融塩層52は、反応管32と反応管収容体50との間の空間に溶融塩が充填されて形成されている。これにより反応管32を溶融塩層52で覆うことができる。反応管32が溶融塩層52で覆われていることにより、例えば、反応管32から被処理液または反応生成物が漏れた場合でも、漏れた被処理液または反応生成物を溶融塩層52で捕捉して封じ込めることができる。なお、反応管32には、反応管32と第一圧力配管34との接続部や、反応管32と第二圧力配管42との接続部も含まれる。溶融塩層52は、第一実施形態の溶融塩層24の溶融塩と同様のものを適用することが可能である。
【0041】
加熱部54は、反応管収容体50の外側に設けられている。加熱部54は、反応管収容体50を加熱することにより溶融塩層52を加熱して溶融塩を溶融させる機能を有している。加熱部54は、第一実施形態の加熱部26と同様にヒータ等で構成することが可能である。
【0042】
制御部は、加圧ポンプ36と、保圧弁44と、加熱部54とを制御することができる。制御部は、加圧ポンプ36と保圧弁44とを制御して、反応管32の圧力を調節することができる。制御部は、加熱部54を制御して、溶融塩層52の加熱温度を調節することができる。制御部は、一般的なコンピュータシステム等で構成可能である。
【0043】
次に、水熱反応処理装置30を用いた水熱反応処理方法について説明する。図4は、水熱反応処理方法を示すフローチャートである。水熱反応処理方法は、水熱反応工程(S20)と、冷却工程(S22)と、判別工程(S24)と、除去工程(S26)と、を備えている。
【0044】
水熱反応工程(S20)は、反応対象物と水とを含む被処理液を、溶融塩で形成される溶融塩層52で覆われた反応容器としての反応管32に入れ、溶融塩層52を加熱して溶融塩を溶融させることにより、被処理液を加熱加圧して水熱反応させる工程である。被処理液は、被処理液タンク38から配管40で搬送されて、加圧ポンプ36で水熱反応可能な所定圧力に加圧される。加圧された被処理液は、第一圧力配管34で搬送されて反応管32の一端側の接続部から導入される。加熱部54により反応管収容体50を加熱することにより溶融塩層52を加熱して、溶融塩を溶融させて液状にする。反応管32は、溶融した溶融塩により水熱反応可能な加熱温度に加熱される。これにより、反応管32内で反応対象物と水とが水熱反応する。水熱反応後の反応生成物は、反応管32の他端側の接続部から排出されて第二圧力配管42と保圧弁44と配管48とを経由して回収タンク46に回収される。反応管32及び反応管32の接続部は、溶融した溶融塩で覆われているので、反応管32及び反応管32の接続部から被処理液または反応生成物が漏洩した場合でも溶融した溶融塩で捕捉して封じ込めることができる。
【0045】
冷却工程(S22)は、溶融した溶融塩を冷却して固化する工程である。水熱反応後は、加熱部54による加熱を停止して溶融した溶融塩を固化するまで冷却する。溶融した溶融塩は、例えば、室温まで冷却するとよい。
【0046】
判別工程(S24)は、固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれているか否かを判別する工程である。判別方法は、判別工程(S14)と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0047】
除去工程(S26)は、固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれている場合には、固化した溶融塩を除去する工程である。判別工程(S24)により固化した溶融塩に被処理液または反応生成物が含まれていると判定された場合には、反応管収容体50の排出蓋を開けて固化した溶融塩を除去する。このように被処理液または反応生成物が反応管32及び反応管32の接続部から漏洩した場合でも、容易に廃棄することができる。
【0048】
以上、上記構成によれば、反応容器としての反応管から被処理液または反応生成物が漏洩した場合でも、漏洩した被処理液または反応生成物を溶融塩で捕捉して容易に廃棄することができる。これにより水熱反応処理効率を向上させることが可能となる。また、上記構成によれば、ジブチルリン酸と水とを含む放射性廃液のジブチルリン酸を水熱反応により分解処理する際に、反応管から放射性廃液が漏れた場合でも、放射性廃液を固化した溶融塩に封じ込めることができるので、放射性廃液の散逸が抑制される。
【0049】
[第三実施形態]
以下に本開示の第三実施形態について図面を用いて詳細に説明する。第三実施形態の水熱反応処理装置は、第二実施形態の水熱反応処理装置30に対して、更に、第一圧力配管34と第二圧力配管42とが溶融塩で覆われている点で相違している。図5は、水熱反応処理装置60の構成を示す図である。なお、同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
水熱反応処理装置60は、第二実施形態の水熱反応処理装置30の構成を備えている。そして、水熱反応処理装置60は、更に、第一圧力配管34を収容する第一圧力配管収容体62と、第一圧力配管34と第一圧力配管収容体62との間の空間に溶融塩が充填されて形成される第一溶融塩部64と、第一溶融塩部64を加熱して、溶融塩を溶融する第一加熱体66と、を備えている。
【0051】
第一圧力配管収容体62は、反応管収容体50と同様に形成することが可能である。第一圧力配管収容体62と、第一圧力配管34との接続部は、溶融塩が漏れないようにシール部材等でシールされているとよい。第一圧力配管収容体62と、第一圧力配管34とは、溶融塩による割れを抑制するために、オーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼で形成されているとよい。
【0052】
第一溶融塩部64は、第一圧力配管34と第一圧力配管収容体62との間の空間に溶融塩が充填されて形成されている。これにより、第一圧力配管34を第一溶融塩部64で覆うことができる。なお、第一圧力配管34には、加圧ポンプ36と第一圧力配管34との接続部も含まれる。第一溶融塩部64は、溶融塩層52の溶融塩と同様のものを用いることができる。
【0053】
第一加熱体66は、第一圧力配管収容体62の外側に設けられている。第一加熱体66は、第一圧力配管収容体62を加熱することにより、第一溶融塩部64を加熱して溶融塩を溶融させる機能を有している。第一加熱体66は、加熱部54と同様にヒータ等で構成することができる。
【0054】
水熱反応処理装置60は、第二圧力配管42を収容する第二圧力配管収容体68と、第二圧力配管42と第二圧力配管収容体68との間の空間に溶融塩が充填されて形成される第二溶融塩部70と、第二溶融塩部70を加熱して、溶融塩を溶融する第二加熱体72と、を備えている。
【0055】
第二圧力配管収容体68は、反応管収容体50と同様に形成することが可能である。第二圧力配管収容体68と、第二圧力配管42との接続部は、溶融塩が漏れないようにシール部材等でシールされているとよい。第二圧力配管収容体68と、第二圧力配管42とは、溶融塩による割れを抑制するために、オーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼で形成されているとよい。
【0056】
第二溶融塩部70は、第二圧力配管42と第二圧力配管収容体68との間の空間に溶融塩を充填して形成されている。これにより、第二圧力配管42を第二溶融塩部70で覆うことができる。なお、第二圧力配管42には、保圧弁44と第二圧力配管42との接続部も含まれている。第二溶融塩部70は、溶融塩層52の溶融塩と同様のものを用いることができる。
【0057】
第二加熱体72は、第二圧力配管収容体68の外側に設けられている。第二加熱体72は、第二圧力配管収容体68を加熱することにより、第二溶融塩部70を加熱して溶融塩を溶融させる機能を有している。第二加熱体72は、加熱部54と同様にヒータ等で構成することができる。
【0058】
制御部は、第二実施形態の制御部の機能を備えていると共に、第一加熱体66と第二加熱体72とを制御することができる。制御部は、第一加熱体66を制御して、第一溶融塩部64の加熱温度を調節することができる。制御部は、第二加熱体72を制御して、第二溶融塩部70の加熱温度を調節することができる。
【0059】
次に、水熱反応処理装置60を用いた水熱反応処理方法について説明する。図6は、水熱反応処理方法を示すフローチャートである。水熱反応処理方法は、水熱反応工程(S30)と、冷却工程(S32)と、判別工程(S34)と、除去工程(S36)と、を備えている。
【0060】
水熱反応工程(S30)は、水熱反応工程(S20)の構成に加えて、更に、第一溶融塩部64と第二溶融塩部70を加熱して溶融塩を溶融させる。第一加熱体66により第一圧力配管収容体62を加熱することにより第一溶融塩部64を加熱して、溶融塩を溶融させて液状にする。第二加熱体72により第二圧力配管収容体68を加熱することにより第二溶融塩部70を加熱して、溶融塩を溶融させて液状にする。第一圧力配管34には高圧が負荷されているが、第一圧力配管34は、溶融した溶融塩で覆われているので、被処理液が漏洩した場合でも、漏れた被処理液を溶融した溶融塩で捕捉して封じ込めることができる。同様に、第二圧力配管42には高圧が負荷されているが、第二圧力配管42は、溶融した溶融塩で覆われているので、僅かに残留した被処理液または反応生成物が漏洩した場合でも、漏れた被処理液または反応生成物を溶融した溶融塩で捕捉して封じ込めることができる。
【0061】
また、第一溶融塩部64の加熱温度は、溶融塩の融点以上であり、溶融塩層52の加熱温度より低い温度にするとよい。より詳細には、第一溶融塩部64の加熱温度は、溶融塩の融点以上であり、水熱反応温度よりも低い温度とすることが好ましい。これにより、第一圧力配管34中での被処理液の水熱反応を抑制することができる。第二溶融塩部70の加熱温度は、溶融塩の融点以上であり、溶融塩層52の加熱温度より低い温度にするとよい。第二圧力配管42により搬送されるものは殆どが反応生成物であるが、第二溶融塩部70の加熱温度を溶融塩層52の加熱温度より低い温度にすることで処理コストを低減できるからである。
【0062】
冷却工程(S32)は、冷却工程(S22)の構成に加えて、更に、第一加熱体66による加熱を停止して、第一溶融塩部64の溶融した溶融塩を固化するまで冷却する。第二加熱体72による加熱を停止して、第二溶融塩部70の溶融した溶融塩を固化するまで冷却する。溶融した溶融塩は、例えば、室温まで冷却するとよい。
【0063】
判別工程(S34)は、判別工程(S24)の構成に加えて、更に、第一溶融塩部64及び第二溶融塩部70における固化した溶融塩に被処理物または反応生成物が含まれているか否かを判別する。被処理物または反応生成物の判別方法については、判別工程(S24)の判別方法と同様に行えばよい。
【0064】
除去工程(S36)は、除去工程(S26)の構成に加えて、判別工程(S34)により第一溶融塩部64及び第二溶融塩部70の固化した溶融塩に被処理物または反応生成物が含まれていると判定された場合には、第一圧力配管収容体62または第二圧力配管収容体68から固化した溶融塩を除去する。このように、被処理物または反応生成物が第一圧力配管34及び第二圧力配管42から漏洩した場合でも、容易に廃棄することができる。
【0065】
以上、上記構成によれば、第二実施形態の効果を奏すると共に、高圧が負荷されている第一圧力配管及び第二圧力配管から被処理物または反応生成物が漏洩した場合でも、漏洩した被処理物または反応生成物を溶融塩で捕捉して容易に廃棄することができる。これにより水熱反応処理効率を向上させることが可能となる。また、上記構成によれば、ジブチルリン酸と水とを含む放射性廃液のジブチルリン酸を水熱反応により分解処理する際に、更に、第一圧力配管及び第二圧力配管から放射性廃液が漏れた場合でも、漏れた放射性廃液を固化した溶融塩に封じ込めることができるので、放射性廃液の散逸が抑制される。
【符号の説明】
【0066】
10、30、60 水熱反応処理装置
12 圧力容器
14 圧力容器本体
16 蓋体
22 圧力容器収容体
24、52 溶融塩層
26、54 加熱部
32 反応管
34 第一圧力配管
36 加圧ポンプ
42 第二圧力配管
44 保圧弁
50 反応管収容体
62 第一圧力配管収容体
64 第一溶融塩部
66 第一加熱体
68 第二圧力配管収容体
70 第二溶融塩部
72 第二加熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6