(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】記録タイミングの決定方法、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 107
(21)【出願番号】P 2018240836
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】奥山 智幸
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-088439(JP,A)
【文献】特開2010-214806(JP,A)
【文献】米国特許第06109721(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸に沿って順に並ぶ第1ノズル群と第3ノズル群と第2ノズル群とを有する記録ヘ
ッドによって前記第1軸と交差する第2軸に沿って配置される複数のパッチを媒体に記録
する記録工程と、
前記媒体に記録された複数のパッチから、選択されたパッチに基づいて前記記録ヘッド
の記録タイミングを決定するタイミング決定工程と、を含み、
前記複数のパッチは、
前記第1ノズル群と前記第2ノズル群とで記録されるオーバーラップ領域と、前記第
3ノズル群で記録される第1領域及び第2領域と、を有し、
前記第1領域及び前記第2領域の前記第2軸における幅をA、前記オーバーラップ領
域の前記第2軸における幅をBとした時、A≧Bを満たすように記録され、
前記複数のパッチの各前記オーバーラップ領域の幅Bは、前記第2軸の中央から両端に
向かうにつれて狭くなるように記録され、
前記記録工程は、
前記記録ヘッドが前記第2軸の一方に移動する第1の記録において、前記第1ノズル
群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第1領域とを記録し、
前記記録ヘッドが前記第2軸の他方に移動する第2の記録において、前記第2ノズル
群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第2領域とを記録
し、
前記複数のパッチは、B≧A/2を満たすように記録され、
前記複数のパッチのうちの前記両端に配置される端部パッチの前記幅Bは、B=A/2
であり、前記第1の記録による記録位置と前記第2の記録による記録位置との前記第2軸
に沿う差の最大値と等しくなるように記録される、
ことを特徴とする記録タイミングの決定方法。
【請求項2】
前記オーバーラップ領域のインク量は、前記第1領域のインク量、又は前記第2領域の
インク量よりも多い、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録タイミングの決定方法。
【請求項3】
前記複数のパッチのうちの中央に配置される中央パッチの前記幅Bは、B=Aとなるよ
うに記録され、
前記第2軸において、前記複数のパッチは、前記中央パッチに関して対称となるように
記録される、
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の記録タイミングの決定方法。
【請求項4】
第1軸に沿って順に並ぶ第1ノズル群と第3ノズル群と第2ノズル群とを有し、前記第
1軸と交差する第2軸に沿って配置される複数のパッチを媒体に記録する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドが搭載されるキャリッジを前記第2軸に沿って往復移動させるヘッド移
動部と、
前記記録ヘッドの記録タイミングを決定する記録タイミング決定部を含む制御部と、を
備え、
前記複数のパッチは、
前記第1ノズル群と前記第2ノズル群とで記録されるオーバーラップ領域と、前記第
3ノズル群で記録される第1領域及び第2領域と、を有し、
前記第1領域及び前記第2領域の前記第2軸における幅をA、前記オーバーラップ領
域の前記第2軸における幅をBとした時、A≧Bを満たすように記録され、
前記複数のパッチの各前記オーバーラップ領域の幅Bは、前記第2軸の中央から両端に
向かうにつれて狭くなるように記録され、
前記制御部は、
前記記録ヘッドを前記第2軸の一方に移動させる第1の記録において、前記第1ノズ
ル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第1領域とを記録し、
前記記録ヘッドを前記第2軸の他方に移動させる第2の記録において、前記第2ノズ
ル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第2領域とを記録し、
前記媒体に記録された複数のパッチから、選択されたパッチに基づいて前記記録タイ
ミングを決定
し
前記複数のパッチは、B≧A/2を満たすように記録され、
前記複数のパッチのうちの前記両端に配置される端部パッチの前記幅Bは、B=A/2
であり、前記第1の記録による記録位置と前記第2の記録による記録位置との前記第2軸
に沿う差の最大値と等しくなるように記録される、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録タイミングの決定方法、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1軸に沿って並ぶノズルを備えた記録ヘッドを第1軸と交差する第2軸に移動させ、記録データに従ってノズルからインク滴を吐出して媒体にドットを形成する記録装置が知られていた。記録装置は、記録ヘッドを第2軸に沿って一方に移動する往動と他方に移動する復動とを交互に行う双方向記録(以下、Bi-d記録と記す)に対応する。例えば、特許文献1には、複数の縦罫線で構成されるテストパターンを記録させて双方向調整(以下、Bi-d調整と記す)を行う記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録装置には、異なる複数のノズルを使用して1つのラスターラインを形成するPOL記録を行うものがある。しかしながら、Bi-d調整前の記録装置にて、テストパターンとしての複数のパッチをPOL記録した場合、POL記録されるオーバーラップ領域の画像が第2軸において広く記録される。このため、最適なパッチを選定するのが困難となり、選択されたパッチに基づいて行うBi-d調整、すなわち記録ヘッドの最適な記録タイミングが求められない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の記録タイミングの決定方法は、第1軸に沿って順に並ぶ第1ノズル群と第3ノズル群と第2ノズル群とを有する記録ヘッドによって前記第1軸と交差する第2軸に沿って配置される複数のパッチを媒体に記録する記録工程と、前記媒体に記録された複数のパッチから、選択されたパッチに基づいて前記記録ヘッドの記録タイミングを決定するタイミング決定工程と、を含み、前記複数のパッチは、前記第1ノズル群と前記第2ノズル群とで記録されるオーバーラップ領域と、前記第3ノズル群で記録される第1領域及び第2領域と、を有し、前記第1領域及び前記第2領域の前記第2軸における幅をA、前記オーバーラップ領域の前記第2軸における幅をBとした時、A≧Bを満たすように記録され、前記複数のパッチの各前記オーバーラップ領域の幅Bは、前記第2軸の中央から両端に向かうにつれて狭くなるように記録され、前記記録工程は、前記記録ヘッドが前記第2軸の一方に移動する第1の記録において、前記第1ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第1領域とを記録し、前記記録ヘッドが前記第2軸の他方に移動する第2の記録において、前記第2ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第2領域とを記録することを特徴とする。
【0006】
上記の記録タイミングの決定方法において、前記オーバーラップ領域のインク量は、前記第1領域及び前記第2領域のインク量よりも多いことが好ましい。
【0007】
上記の記録タイミングの決定方法において、前記複数のパッチは、B≧A/2を満たすように記録され、前記複数のパッチのうちの前記両端に配置される端部パッチの前記幅Bは、B=A/2であり、前記第1の記録による記録位置と前記第2の記録による記録位置との前記第2軸に沿う差の最大値と等しくなるように記録されることが好ましい。
【0008】
上記の記録タイミングの決定方法において、前記複数のパッチのうちの中央に配置される中央パッチの前記幅Bは、B=Aとなるように記録され、前記第2軸において、前記複数のパッチは、前記中央パッチに関して対称となるように記録されることが好ましい。
【0009】
本願の記録装置は、第1軸に沿って順に並ぶ第1ノズル群と第3ノズル群と第2ノズル群とを有し、前記第1軸と交差する第2軸に沿って配置される複数のパッチを媒体に記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドが搭載されるキャリッジを前記第2軸に沿って往復移動させるヘッド移動部と、前記記録ヘッドの記録タイミングを決定する記録タイミング決定部を含む制御部と、を備え、前記複数のパッチは、前記第1ノズル群と前記第2ノズル群とで記録されるオーバーラップ領域と、前記第3ノズル群で記録される第1領域及び第2領域と、を有し、前記第1領域及び前記第2領域の前記第2軸における幅をA、前記オーバーラップ領域の前記第2軸における幅をBとした時、A≧Bを満たすように記録され、前記複数のパッチの各前記オーバーラップ領域の幅Bは、前記第2軸の中央から両端に向かうにつれて狭くなるように記録され、前記制御部は、前記記録ヘッドを前記第2軸の一方に移動させる第1の記録において、前記第1ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第1領域とを記録し、前記記録ヘッドを前記第2軸の他方に移動させる第2の記録において、前記第2ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第2領域とを記録し、前記媒体に記録された複数のパッチから、選択されたパッチに基づいて前記記録タイミングを決定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る記録装置の概略構成を示す斜視図。
【
図6】記録動作を説明するためのノズル列の構成を示す図。
【
図7】ノズル列と媒体との相対位置関係、及び記録結果を説明する図。
【
図9】記録タイミング決定方法を説明するフローチャート図。
【
図10】1Pass Bi-dによるテストパターンの記録方法を説明する図。
【
図11】媒体に記録されたテストパターンの一例を説明する図。
【
図12】3Pass Bi-dによるテストパターンの記録方法を説明する図。
【
図13】従来技術によるテストパターンの一例を説明する図。
【
図14】1Pass Bi-dによるテストパターンの記録方法を説明する図。
【
図15】媒体に記録されたテストパターンの一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、
図5及び
図9を除く各図では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及びZ軸を図示しており、軸を図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「-側」としている。また、Y軸は、第1軸に相当し、搬送方向ともいう。X軸は、第2軸に相当し、主走査方向とも言う。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
図2は、記録装置の概略構成を示す断面図である。まず、本実施形態に係る記録装置100の概略構成について
図1及び
図2を参照して説明する。なお、本実施形態では、媒体Sに画像などを形成するインクジェット式の記録装置100を例に上げて説明する。記録装置100は、比較的大型のメディア(媒体)を扱うロール・ツー・ロール方式のラージフォーマットプリンター(LFP)である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、記録装置100は、媒体Sを搬送方向に搬送させる搬送ローラー対21、ロール体R1の媒体Sを搬送ローラー対21に供給するための媒体供給部14、搬送される媒体Sに記録を行う記録部58、記録された媒体Sをロール状に巻き取る媒体巻取部15、を含んで構成される。記録部58は、略直方体状の筐体部51内に設けられる。これらの各部は、車輪12が下端に取り付けられた一対の脚部13に支持される。なお、本実施形態においては、重力方向をZ軸とし、Z軸の+側を「上」、-側を「下」とする。Z軸方向と交差する筐体部51の長手方向をX軸とし、X軸の+側を「左」、-側を「右」とする。また、Z軸及びX軸の双方と交差する方向をY軸とし、Y軸の+側を「前」、-側を「後」とする。また、媒体Sの搬送方向に沿う位置関係を「上流」「下流」ともいう。
【0014】
媒体供給部14は、筐体部51の後部に設けられる。媒体供給部14には、未使用の媒体Sが円筒状に巻き重ねられたロール体R1が保持される。媒体供給部14には、媒体SのX軸に沿う幅や巻き数の異なるロール体R1が交換可能に装填される。媒体Sは、ロール体R1から巻き解かれて記録部58へ給送される。媒体Sとしては、例えば、64インチ程度の幅を有する塩化ビニル系フィルム等が使用される。
【0015】
媒体巻取部15は、筐体部51の前部に設けられる。媒体巻取部15には、記録部58で記録された媒体Sが円筒状に巻き取られてロール体R2が形成される。媒体巻取部15は、媒体Sを巻き取ってロール体R2を形成させるための芯材を挟む一対のホルダー17を備える。一方のホルダー17aには、芯材に回動力を供給する図示しない巻取モーターが備えられる。媒体巻取部15には、自重によって垂れ下がる媒体Sの裏面を押圧し、媒体巻取部15に巻き取られる媒体Sに張力を付与するテンションローラー16が備えられる。
【0016】
なお、本実施形態の記録装置100は、媒体Sをロール体R2に巻き取ることなく排出することも可能である。例えば、記録後の媒体Sは、媒体巻取部15に替えて取り付けられる排出バスケットに収容される。
【0017】
記録装置100は、媒体Sを搬送経路22に沿って下方から支持する媒体案内部を備える。媒体案内部は、上流案内部23、プラテン24および下流案内部25で構成される。上流案内部23は、筐体部51の後部に設けられ、媒体供給部14から供給される媒体Sを搬送ローラー対21に案内する。プラテン24は、記録部58と対向する位置に設けられ、記録中の媒体Sを支持する。下流案内部25は、筐体部51の前部に設けられ、記録された媒体Sをプラテン24から媒体巻取部15へ案内する。上流案内部23、プラテン24及び下流案内部25は、媒体Sの搬送経路22を構成している。なお、搬送方向は、媒体Sが記録部58と対向する位置においてY軸である。
【0018】
記録装置100は、媒体Sを加熱する第1ヒーター26、第2ヒーター27、第3ヒーター28を備える。第1、第2及び第3ヒーター26,27,28は、例えば、チューブヒーターであり、アルミテープ等を介して、上流案内部23、プラテン24及び下流案内部25のそれぞれの下面に貼付される。第1ヒーター26は、上流案内部23に支持される媒体Sを予熱する。第2ヒーター27は、記録部58と対向するプラテン24上の媒体Sを所定の温度に保つ。第3ヒーター28は、下流案内部25に支持される媒体Sをされに加熱する。これにより、媒体Sに吐出されたインクが速やかに乾燥定着され、滲みやぼやけの少ない、品質の高い画像が形成される。なお、記録装置100は、第1~第3ヒーター26,27,28に替えて、媒体Sに吐出されたインクを乾燥させる乾燥機構を備える構成であってもよい。また、媒体Sに吐出されたインクを自然乾燥させる構成であってもより。
【0019】
搬送ローラー対21は、X軸に延在し、プラテン24と上流案内部23との間に設けられる。搬送ローラー対21は、搬送経路22の下側に配置されて回転駆動する搬送駆動ローラー21aと、この搬送駆動ローラー21aの上側に配置され、搬送駆動ローラー21aの回転に従動して回転する搬送従動ローラー21bとを備える。搬送従動ローラー21bは、搬送駆動ローラー21aに対して離間又は圧接するように移動可能に構成される。搬送駆動ローラー21aと搬送従動ローラー21bとが圧接された状態において、搬送ローラー対21は、媒体Sを挟持しつつ下流に位置する記録部58に送り出す。筐体部51内には、搬送駆動ローラー21aに回転動力を出力する動力源としての図示しない搬送用モーターが設けられる。搬送用モーターが駆動されて搬送駆動ローラー21aが回転駆動することで、搬送従動ローラー21bと搬送駆動ローラー21aとの間に挟持された媒体Sが搬送方向へ搬送される。
【0020】
筐体部51の右上部には、操作パネル32が設けられる。操作パネル32は、記録条件設定画面等が表示される表示部34と、記録条件等の入力及び各種指示を与える際に操作される操作部33とを備える。筐体部51の右下部には、インクを収容可能な図示しないインクカートリッジを装着するインク装着部35が設けられる。インク装着部35には、インクの種類や色に対応して、複数のインクカートリッジが装着される。さらに、筐体部51内には、記録装置100の各部に備えられる装置の動作を制御する制御部1が設けられる。
【0021】
筐体部51の内部には、記録部58が備えられる。筐体部51の後面には、記録部58へ媒体Sを供給するための供給口18が形成される。また、筐体部51の前面には、記録部58で記録された媒体Sを排出するための排出口19が形成される。
【0022】
記録部58は、プラテン24の配置位置に対して上方に配置される。記録部58は、搬送ローラー対21によって搬送されプラテン24に載置された媒体Sに対してインクを吐出する記録ヘッド60、記録ヘッド60が搭載されるキャリッジ55、キャリッジ55を移動させるヘッド移動部59などを有する。
【0023】
ヘッド移動部59は、X軸に沿って配置されるガイドレール56,57に支持されたキャリッジ55及びキャリッジ55に搭載された記録ヘッド60を、X軸に沿って往復移動可能に構成される。ヘッド移動部59の機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などを採用することができる。さらに、ヘッド移動部59には、キャリッジ55を移動させるための動力源として、図示しないモーターが設けられる。
【0024】
ガイドレール56,57の両端部には、記録ヘッド60と媒体SとのZ軸に沿う離間距離を調整するための調整機構53が設けられる。また、キャリッジ55の媒体Sと対向する面には、媒体SのX軸に沿う端部を検知し、媒体Sの紙幅を算出するための反射型センサー54が備えられる。
【0025】
図3は、記録ヘッドの一例を示す平面図である。
図4は、記録ヘッドの内部構成を示す断面図である。次に、記録ヘッド60の構成について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3に示すように、記録ヘッド60は、媒体Sと対向する面にノズルプレート62を備える。ノズルプレート62には、媒体Sに向けてインクを吐出するための複数のノズル63が設けられる。例えば、複数のノズル63はX軸に沿って並ぶ8列のノズル列64を構成し、各ノズル列64は異なる色のインクを吐出する。本実施形態では、8列のノズル列64は、濃シアン(C)、濃マゼンタ(M)、イエロー(Y)、濃ブラック(K)、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)、淡ブラック(LK)、極淡ブラック(LLK)のインク色に対応する。
【0026】
各ノズル列64は、例えば、180dpi(dots per inch)のノズルピッチで、Y軸に沿って並ぶノズル番号#1~#180で示す180個のノズル63で構成される。なお、各ノズル列64を構成するノズル63の数、ノズル列64の列数、ノズルピッチ、及びインクの種類は一例であり、これに限定するものではない。また、ノズル列64は、異なる色のインクを吐出するものと説明したが、ノズル列64が吐出するものは、媒体Sにインクの浸透を促す浸透液や媒体Sに記録された画像の表面を保護する保護液であってもよい。また、記録ヘッド60は、複数の記録ヘッドがY軸に沿ってスタガ配置されたヘッドユニットであってもよい。
【0027】
図4に示すように、記録ヘッド60は、複数の圧電振動子142、固定板143、及び、フレキシブルケーブル144等をユニット化した振動子ユニット140と、この振動子ユニット140を収納可能なケース141と、ケース141の下端面に接合された流路ユニット150とを備える。ケース141は、上端と下端とが共に開放された収納空部145が形成された合成樹脂製のブロック状部材であり、収納空部145内に振動子ユニット140が収納固定される。
【0028】
圧電振動子142は、縦方向に細長い櫛歯状に形成される。この圧電振動子142は、圧電体と内部電極とを交互に積層して構成された積層型の圧電振動子であって、積層方向に直交する縦方向であるZ軸方向に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子である。そして、各圧電振動子142の下端面が、流路ユニット150の島部146に接合される。なお、この圧電振動子142はコンデンサーと同じように振る舞う。即ち、信号の供給が停止された場合において、圧電振動子142の電位は、停止直前の電位で保持される。
【0029】
流路ユニット150は、流路形成基板153を間に挟んでノズルプレート62を流路形成基板153の下面に配置し、弾性板154をノズルプレート62とは反対側となる上面に配置して積層することで構成される。ノズルプレート62は、接着部材を介して流路形成基板153に接合される。接着部材としては、エポキシ系接着剤や、アクリル系接着剤などを採用することができる。
【0030】
ノズルプレート62は、複数のノズル63をY軸に沿って形成した薄厚のステンレス鋼やシリコンによって構成される。流路形成基板153は、共通インク室156、インク供給口157、圧力室158、及び、ノズル連通口159からなる一連のインク流路が形成された板状部材である。例えば、流路形成基板153は、シリコンウェハーのエッチング処理によって作製される。弾性板154は、ステンレス製の支持板152に樹脂フィルム151をラミネート加工した二重構造の複合板材である。島部146は、圧力室158に対応した部分の支持板152を環状に除去することで形成される。
【0031】
共通インク室156から圧力室158を通ってノズル63に至る一連のインク流路は、ノズル63毎に形成される。そして、圧電振動子142を充電したり放電したりすることで圧電振動子142が変形する。即ち、この縦振動モードの圧電振動子142は、充電によって圧電振動子142の長手方向であるZ軸に沿って収縮し、放電によってZ軸に沿って伸長する。従って、充電によって電位を上昇させると、島部146が圧電振動子142側に引っ張られ、島部146周辺の樹脂フィルム151が変形して圧力室158が膨張する。また、放電によって電位を下降させると、圧力室158が収縮する。このように、圧電振動子142の電位を制御して、圧力室158を膨張させた直後に収縮させることで、圧力室158内に滞留するインクに圧力変動を生じさせることができる。この圧力変動により、インクがノズル63から液滴に吐出され、媒体S上にドットが形成される。
【0032】
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電振動子142を用いた構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば、圧電振動子は、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成して撓み変形させる横振動型であってもよい。また、記録ヘッドは、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させて液滴を吐出させる、いわゆる静電式アクチュエーターを用いた構成であってもよい。また、記録ヘッドは、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって液滴を吐出させる構成であってもよい。
【0033】
本実施形態では、記録装置の一例として長尺の媒体Sをロール方式で供給し、搬送ローラー対21で搬送するLFPを例に上げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、記録装置は、媒体を無端状の搬送ベルトに密着させ、搬送ベルトを回転することで媒体を搬送させるベルト搬送方式の構成や、載置部に載置させた媒体に対して記録ヘッドを移動させて記録するフラッドベッド方式の構成であってもよい。また、媒体の供給は、予め所定の長さにカットされた短票紙を枚葉式で供給する構成であってもよい。
【0034】
図5は、記録装置の概略構成を示すブロック図である。次に、記録装置100の電気的構成について
図5を参照して説明する。
【0035】
記録装置100は、入力装置110から入力される記録データに基づいて媒体Sに画像などを記録する。入力装置110は、パーソナルコンピューター等であり、記録装置100と同じ筐体に設けられた構成であってもよい。入力装置110は、記録装置100に記録を行わせるジョブの制御を行うものであり、記録装置100の制御部1と協調して記録装置100を制御する。入力装置110が動作するソフトウェアには、画像データを扱う一般的な画像処理アプリケーションソフトウェアや、記録装置100に記録を実行させるための記録データを生成するプリンタードライバーソフトウェアが含まれる。
【0036】
記録装置100は、記録装置100に備えられる各部の制御を行う制御部1を有する。制御部1は、インターフェイス部(I/F)2、CPU3、制御回路4、メモリー5、操作部33などを含んで構成される。
インターフェイス部2は、入力信号や画像を取り扱う入力装置110と制御部1との間でデータの送受信を行うためのものであり、入力装置110で生成された記録データなどを受信する。
CPU3は、各種の入力信号処理や、メモリー5に格納されているプログラムおよび入力装置110から受信した記録データに従って記録装置100全体の制御を行うための演算処理装置である。CPU3は、後述する記録ヘッド60の記録タイミングを決定する記録タイミング決定部3aを含む。
メモリー5は、CPU3のプログラムを格納する領域や作業領域などを確保するための記憶媒体であり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの記憶素子を有している。
操作部33は、記録条件や各種指示などの入力を受付け、電気信号に変換する。
【0037】
制御回路4は、記録データおよびCPU3の演算結果に基づいて記録ヘッド60、ヘッド移動部59、搬送ローラー対21などを制御するための制御信号を生成する回路である。制御回路4は、駆動信号生成部4a、吐出信号生成部4b、移動信号生成部4cを含んでいる。
駆動信号生成部4aは、各ノズル63に対応する圧電振動子142を駆動するための駆動制御信号を生成する回路である。生成された駆動信号を圧電振動子142に印加することでノズル63から液滴が吐出される。
吐出信号生成部4bは、記録データおよびCPU3の演算結果に基づいて、インクを吐出させるノズル63の選択、インクを吐出させる記録タイミングなどを制御するための吐出制御信号を生成する回路である。
移動信号生成部4cは、記録データおよびCPU3の演算結果に基づいて、ヘッド移動部59、搬送ローラー対21を駆動するための移動制御信号を生成する回路である。
【0038】
制御部1は、制御回路4から出力する制御信号によって、ノズル63からインクを吐出させながらキャリッジ55を主走査方向であるX軸に沿って移動させる主走査を行うことで、X軸に沿ってドットの並ぶラスターラインを媒体S上に形成する。また、制御部1は、制御回路4から出力する制御信号によって、媒体Sを搬送方向であるY軸に沿って移動させる副走査を行う。この主走査と副走査とを交互に行うことにより、画像データに基づく所望の画像が媒体Sに記録される。なお、以下の説明では、主走査を「パス」ともいう。
【0039】
次に、記録装置100の通常記録時の動作について説明する。
図6は、記録動作を説明するためのノズル列の構成を示す図である。
図7は、ノズル列と媒体との相対位置関係、及び記録結果を説明する図である。なお、
図6及び
図7に示すノズル列は、Z軸の+側から-側に向って透視した場合を示している。
【0040】
図6に示すように、説明の便宜上、記録ヘッド60は、ノズル番号#1~#16までの16個のノズル63を有する1列のノズル列64で構成されるものとする。ノズル列64は、ノズル番号#1~#4のノズル63で構成される第1ノズル群63aと、ノズル番号#13~#16のノズル63で構成される第2ノズル群63bと、ノズル番号#5~#12のノズル63で構成される第3ノズル群63cとを有する。なお、
図6及び
図7では、第1ノズル群63aに属するノズル63を「白三角」で、第2ノズル群63bに属するノズル63を「白四角」で、第3ノズル群63cに属するノズル63を「白丸」で表す。以下の説明では、ノズル63のノズル番号を特定する場合、例えば、ノズル番号#1のノズル63を「ノズル#1」と記す。
【0041】
第1ノズル群63a及び第2ノズル群63bに属するノズル63は、ノズル使用率20%~80%でインクを吐出し、第3ノズル群63cに属するノズル63は、ノズル使用率100%でインクを吐出する。ノズル使用率とは、媒体Sへの記録解像度において、単位面積当たりの画素にインクが吐出される割合である。
図6に示す16個のノズル63の場合は、ノズル#1及びノズル#16のノズル使用率は20%であり、ノズル#2及びノズル#15のノズル使用率は40%であり、ノズル#3及びノズル#14のノズル使用率は60%であり、ノズル#4及びノズル#13のノズル使用率は80%である。ノズル#5~ノズル#12のノズル使用率は100%である。
【0042】
図7左側に示す図は、副走査と主走査とを3回繰り返した場合の記録ヘッド60のノズル列64と媒体SとのY軸に沿う相対位置関係を表す。
図7では、例えば、1回目の主走査を「パス1」と記し、ノズル列64の上部に該当するパス数を示す。
図7では、記録ヘッド60のノズル列64が媒体Sに対して移動するように描かれているが、実際にはノズル列64に対して媒体SがY軸の-側から+側に搬送される。各パスでのノズル列64の位置表記が重ならないように、ノズル列64のX軸の位置をずらして図示しているので、ノズル列64と媒体SとのX軸に沿う位置関係は意味を成さない。なお、パス1においてインクを吐出しないノズル63の領域を黒塗りで示す。
【0043】
図7右側に示す表は、パス1~パス3におけるドット形成位置を示す。なお、媒体SのX軸に沿う画像数は5画素であり、Y軸に沿う画素は、ラスターライン番号Ln(n=1、2、3・・・)で示す。
表中の「パス1」~「パス3」列は、各パスにおいてインクが吐出される画素位置をドットで示す。第1ノズル群63aに属するノズル63によって形成されるドットを「黒三角」、第2ノズル群63bに属するノズル63によって形成ドットを「黒四角」、第3ノズル群63cに属するノズル63によって形成ドットを「黒丸」で示す。パス数の下段には、各パスにおける記録ヘッド60のノズル列64のX軸に沿う移動方向を矢印で示す。「パス1-3」列は、パス1~パス3において形成される全てのドットを示す。
【0044】
パス1では、第2ノズル群63bのノズル#13~#16は使用されない。媒体Sは、Y軸に沿う副走査によりノズル#12の位置まで搬送される。パス1は、ノズル列64が媒体S上をX軸に沿って-側から+側に移動する往動によってラスターラインL1~L12の所定の画素にドットを吐出する。第3ノズル群63cのノズル#5~#12は、ノズル使用率100%でラスターラインL1~L8を形成する全ての画素にドットを吐出する。
【0045】
第1ノズル群63aのノズル#1~#4は、ノズル使用率20%~80%でラスターラインL9~L12の画素にドットを吐出する。詳しくは、ノズル#4は、ラスターラインL9を形成する全画素のうち80%の画素にドットを吐出する。本実施形態では、全5画素のうち4画素にドットが吐出される。ノズル#3は、ラスターラインL10を形成する全画素のうち60%に相当する3画素にドットを吐出する。ノズル#2は、ラスターラインL11を形成する全画素のうち40%に相当する2画素にドットを吐出する。ノズル#1は、ラスターラインL12を形成する全画素のうち20%に相当する1画素にドットを吐出する。
パス1が終了した後、媒体Sが副走査によって8ノズル分搬送される。
【0046】
パス2は、ノズル列64が媒体S上をX軸に沿って+側から-側に移動する復動によってラスターラインL9~L24の所定の画素にドットを吐出する。
第2ノズル群63bのノズル#13~#16は、ノズル使用率80%~20%でラスターラインL9~L12の画素にドットを吐出する。詳しくは、ノズル#16は、ラスターラインL9を形成する全画素のうち20%に相当する、パス1で吐出されなかった1画素にドットを吐出する。ノズル#15は、ラスターラインL10を形成する全画素のうち40%に相当する、パス1で吐出されなかった2画素にドットを吐出する。ノズル#14は、ラスターラインL11を形成する全画素のうち60%に相当する、パス1で吐出されなかった3画素にドットを吐出する。ノズル#13は、ラスターラインL12を形成する全画素のうち80%に相当する、パス1で吐出されなかった4画素にドットを吐出する。
【0047】
第3ノズル群63cのノズル#5~#12は、ノズル使用率100%でラスターラインL13~L20を形成する全ての画素にドットを吐出する。
第1ノズル群63aのノズル#1~#4は、ノズル使用率20%~80%でラスターラインL21~L24の画素にドットを吐出する。ラスターラインL21~L24に形成されるドットの数はパス1と同じなので、その説明を省略する。
パス2が終了した後、媒体Sが副走査によって12ノズル分搬送される。
【0048】
パス3は、ノズル列64が往動によってラスターラインL21~L36(図示せず)の所定の画素にドットを吐出する。ラスターラインL21~L36に形成されるドットの数はパス2と同じなので、その説明を省略する。以降、副走査とパスとを繰り返す。
【0049】
図7の「パス1-3」列に示すように、副走査とパスとを繰り返すことにより、全ての画素にドットが形成される。媒体Sには、1回のパスで1つのラスターラインを記録する1パス領域SPと、往動と復動との2回のパスで1つのラスターラインをPOL記録するオーバーラップ領域OLと、で画像が形成される。ノズル列64の一端部である第1ノズル群63aと他端部である第2ノズル群63bとを使用してオーバーラップ領域OLを形成することで、ノズル列64の繋ぎ目で生じるスジやムラなどを視認させ難くすることができる。この記録動作は、オーバーラップ領域OLを除き、基本的に往動又は復動の1回のパスでラスターラインを形成するので記録速度が向上する。以下の説明では、この記録動作を「1Pass Bi-d記録」という。
【0050】
Bi-d記録を行う記録装置100は、往動時に吐出されたインクの着弾位置と、復動時に吐出されたインクの着弾位置とを合わせるBi-d調整のために、複数のパッチで構成されたテストパターンを記録し、選択されたパッチに基づいて往動時と復動時との記録タイミングの調整を行う。なお、記録タイミングの調整とは、ノズル63からインクを吐出するために、圧電振動子142に電位を印加し始める時間を調整する。記録タイミングの決定とは、その時間を決定する。
【0051】
ここで、従来から用いられていたテストパターン170の一例について
図13~
図15を参照して説明する。
図13は、従来技術によるテストパターンの一例を説明する図である。
図14は、1Pass Bi-dによるテストパターンの記録方法を説明する図である。
図15は、媒体に記録されたテストパターンの一例を説明する図である。
【0052】
図13に示すように、記録データであるテストパターン170は、X軸に沿って配置される複数のパッチ171~177で構成される。上述した1Pass Bi-d記録の場合、往動と復動との両方のパスで形成されるラスターラインは、オーバーラップ領域OLだけである。Bi-d調整するためのテストパターン170の記録は、オーバーラップ領域OLを形成する第1ノズル群63a、第2ノズル群63bを用いて行う必要がある。
【0053】
各パッチ171~177は、Y軸に沿う第1領域Fdと、オーバーラップ領域OLと、第2領域Sdとを有する。各パッチ171~177は、第1領域Fdとオーバーラップ領域OLとに形成されるY軸に沿って長い矩形状の第1矩形画像Fiと、オーバーラップ領域OLと第2領域Sdとに形成されるY軸に沿って長い矩形状の第2矩形画像Siと、の組合せである。第1矩形画像Fiと第2矩形画像Siとは同じ形状であり、オーバーラップ領域OLで重なっている。
【0054】
パッチ171からパッチ177は、X軸に沿って等間隔で配置される。パッチ171からパッチ177は、第1領域Fd及び第2領域SdのX軸の幅をA、オーバーラップ領域OLのX軸の幅をBとした時、B≧Aを満たす。パッチ171からパッチ177の各オーバーラップ領域の幅Bは、X軸の両端に向かうにつれて広くなる。詳しくは、パッチ174は、X軸の中央に配置され、第1矩形画像Fiと第2矩形画像SiとのX軸の位置は同じである。換言すると、パッチ171からパッチ177のうち、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とがX軸において一致しているのは、パッチ174である。パッチ171からパッチ173は、第1矩形画像Fiに対して第2矩形画像Siの位置がX軸の-側にずれ、-側に配置されるパッチ程そのずれ量が大きい。パッチ175からパッチ177は、第1矩形画像Fiに対して第2矩形画像Siの位置がX軸の+側にずれ、+側に配置されるパッチ程そのずれ量が大きい。
【0055】
テストパターン170は、往動と復動との2回のパスで形成される。
図14左側に示す図は、ノズル列64と媒体Sとの相対位置関係を表す。
図14右側の「パス1」列は、パス1での記録結果を示す。「パス2」列は、パス2での記録結果を示す。「パス1-2」列は、2回のパスで媒体Sに形成されるテストパターン170の形状を示す。
図14では、ノズル63及びドットの表示を省略する。また、ノズル列64のうち、インクを吐出しない領域を黒塗りで示す。
図14及び
図15中に記載の左下がり斜線のハッチングは、第1ノズル群63a、及び第1ノズル群63aで記録される部位を示す。右下がり斜線のハッチングは、第2ノズル群63b、及び第2ノズル群63bで記録される部位を示す。点線のハッチングは、第3ノズル群63c、及び第3ノズル群63cで記録される部位を示す。また、格子のハッチングは、第1ノズル群63aと第2ノズル群63bとでPOL記録される部位を示す。
【0056】
パス1は、往動によって画像を媒体Sに形成する。パス1では、
図13に示す各パッチ171~177の画像のうち、第1領域Fdに属する画像が第3ノズル群63cによってノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第1ノズル群63aによってノズル使用率80%~20%で形成される。
パス2は、復動によって画像を媒体Sに形成する。パス2では、
図13に示す各パッチ171~177の画像のうち、第2領域Sdに属する画像が第3ノズル群63cによってノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第2ノズル群63bによってノズル使用率20%~80%で形成される。
【0057】
往動時の記録位置と復動時の記録位置とが一致している場合、すなわち往動時に吐出されたインクの着弾位置と復動時に吐出されたインクの着弾位置とが一致している場合は、
図14の「パス1-2」列に示すように、
図13に示す記録データであるパッチ171~177と同じ形状の記録パッチ171a~177aが媒体S上に記録される。媒体Sに記録されたパッチを「記録パッチ」という。
【0058】
図15に示すように、往動時に吐出されたインクの着弾位置と復動時に吐出されたインクの着弾位置とがずれている場合は、パッチ171~177と異なる形状の記録パッチ171b~177bが媒体S上に記録される。
図15では、パス1で記録された画像に対してパス2の記録タイミングが早く、
図14の「パス2」列で示した画像全体が、X軸に沿って+側にシフトして記録されている。これにより、POL記録されるオーバーラップ領域OLの画像がX軸に広がって記録される。詳しくは、記録パッチ171b~177bのうち、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが、X軸において一致しているのは、記録パッチ172bである。記録パッチ172bのオーバーラップ領域OLには、格子のハッチングで示すPOL記録された部位と、X軸の両側に広がる右下がり斜線又は左下がり斜線のハッチングで示すPOL記録されなかった部位とが記録される。これにより、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが一致した記録パッチ172bにおいて、オーバーラップ領域の幅Cは、第1領域Fd及び第2領域Sdの幅Aよりも広く記録される。
【0059】
Bi-d調整のために、X軸における、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが一致した記録パッチ172bが選択される。しかしながら、Bi-d調整前の記録装置100では、従来のパッチ171~177は、オーバーラップ領域OLの画像がX軸に広がって記録されるため、最適なパッチを選択するのが困難であった。
【0060】
次に、本実施形態のテストパターンについて
図8を参照して説明する。
図8は、テストパターンの形状を説明する図である。
図8に示すように、テストパターン70は、X軸に沿って配置される複数のパッチ71~77で構成される。各パッチ71~77は、Y軸に沿う第1領域Fdと、オーバーラップ領域OLと、第2領域Sdとを有する。本実施形態のパッチ71~77は、従来技術のパッチ171~177とオーバーラップ領域OLの画像形状が異なる。パッチ71~77は、第1矩形画像Fiと第2矩形画像Siとが重複する部分のみをオーバーラップ領域OLの画像形状とする。
【0061】
パッチ71からパッチ77は、X軸に沿って等間隔で配置される。パッチ71からパッチ77は、第1領域Fd及び第2領域SdのX軸の幅をA、オーバーラップ領域OLのX軸の幅をBとした時、A≧B≧A/2を満たす。パッチ71からパッチ77の各オーバーラップ領域の幅Bは、X軸の中央から両端に向かうにつれて狭くなる。詳しくは、パッチ74は、X軸の中央に配置され、第1矩形画像Fiと第2矩形画像SiとのX軸の位置は同じである。すなわち、パッチ74の幅Bは、幅Aと一致する。換言すると、パッチ71からパッチ77のうち、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とがX軸において一致しているのは、パッチ74である。
【0062】
パッチ71からパッチ73は、第1矩形画像Fiに対して第2矩形画像Siの位置がX軸の-側にずれ、-側に配置されるパッチ程そのずれ量が大きい。パッチ75からパッチ77は、第1矩形画像Fiに対して第2矩形画像Siの位置がX軸の+側にずれ、+側に配置されるパッチ程そのずれ量が大きい。詳しくは、X軸の中央に配置される中央パッチであるパッチ74の幅Bは、B=Aである。X軸の-側端部に配置される端部パッチとしてのパッチ71及びX軸の+側端部に配置される端部パッチとしてのパッチ77の幅Bは、B=A/2である。X軸において、複数のパッチ71~77は、パッチ74を基準として対称の形状をなし、対称の位置に配置される。なお、テストパターンのパッチの数、及び形状は、一例であり、これに限定するものではない。
【0063】
次に、記録装置100の記録タイミング決定方法について
図9~
図11を参照して説明する。
図9は、記録タイミング決定方法を説明するフローチャート図である。
図10は、1Pass Bi-dによるテストパターンの記録方法を説明する図である。
図11は、媒体に記録されたテストパターンの一例を説明する図である。
図10及び
図11の記載方法は、
図14及び
図15と同じであるので、その説明を省略する。
図9に示す、第1の記録工程及び第2の記録工程は、複数のパッチ71~77を媒体Sに記録する記録工程である。
【0064】
ステップS101は、制御部1が、第1の記録である、記録ヘッド60のノズル列64を往動させるパス1にて、第1ノズル群63aによるオーバーラップ領域OLと第3ノズル群63cによる第1領域Fdとを記録する、第1の記録工程である。パス1では、各パッチ71~77の画像のうち、第1領域Fdに属する画像が第3ノズル群63cによってノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第1ノズル群63aによってノズル使用率80%~20%で形成される。第1の記録工程での記録結果を
図10の「パス1」列に示す。
【0065】
ステップS102は、制御部1が、第2の記録である、記録ヘッド60のノズル列64を復動させるパス2にて、第2ノズル群63bによるオーバーラップ領域OLと第3ノズル群63cによる第2領域Sdとを記録する、第2の記録工程である。パス2では、各パッチ71~77の画像のうち、第2領域Sdに属する画像が第3ノズル群63cによってノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第2ノズル群63bによってノズル使用率20%~80%で形成される。第2の記録工程での記録結果を
図10の「パス2」列に示す。
【0066】
往動時に吐出されたインクの着弾位置と復動時に吐出されたインクの着弾位置とが一致している場合は、
図10の「パス1-2」列に示すように、
図8に示すパッチ71~77と同じ形状の記録パッチ71a~77aが媒体S上に記録される。
往動時に吐出されたインクの着弾位置と復動時に吐出されたインクの着弾位置とがずれている場合は、例えば、
図11に示すように、パッチ71~77と異なる形状の記録パッチ71b~77bが媒体S上に記録される。
図11では、1パスで記録された画像に対して2パスの記録タイミングが早く、
図10の「パス2」列で示した画像全体が、X軸に沿って+側にシフトして記録されている。
【0067】
ステップS103は、0以外の調整値が入力されたかを判断する判断工程である。調整値とは、記録工程で媒体Sに記録された記録パッチから選択された記録パッチに対応する値である。各パッチ71~77、及び各記録パッチの上部に、対応する調整値が示される。記録パッチのうちから、X軸における、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが一致した記録パッチが選択される。例えば、
図10の「パス1-2」に示す記録パッチ71a~77aの場合、記録パッチ74aが選択され、操作部33から対応する調整値「0」が入力される。例えば、
図11に示す記録パッチ71b~77bの場合、記録パッチ72bが選択され、操作部33から対応する調整値「-2」が入力される。
【0068】
記録パッチの選択は、記録装置100のユーザーが目視で行うことができる。
図11に示すように、本実施形態のパッチ71~77を用いると、往動時に吐出されたインクの着弾位置と復動時に吐出されたインクの着弾位置とがずれている場合であっても、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが一致した記録パッチ72bのオーバーラップ領域OLの幅Dは、第1領域Fd及び第2領域Sdの幅Aと略一致する。これにより、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが一致した記録パッチ72bを容易に見つけることができる。さらには、パッチ71~77は、中央パッチとしてのパッチ74に関して対称に配置されているので、最適な記録パッチ72bを容易に選択することができる。
調整値「0」以外が入力された場合(ステップS103:Yes)は、ステップS104に進む。調整値「0」が入力された場合、又は操作部33に何も入力されなかった場合(ステップS103:No)は、本フローを終了する。
【0069】
ステップS104は、制御部1が、選択された記録パッチに基づいて記録ヘッド60の記録タイミングを決定するタイミング決定工程である。操作部33は、入力された調整値を電気信号に変換する。CPU3は、入力された調整値に基づいて、往動時の記録タイミングと復動時の記録タイミングとの少なくとも一方を変更し、往動時に吐出されるインクの着弾位置と復動時に吐出されるインクの着弾位置とを一致させる記録タイミングを決定する。吐出信号生成部4bは、決定された記録タイミングに基づいて各ノズル63からインクを吐出させる吐出制御信号を生成する。これにより、X軸における、往動時に記録される画像位置と復動時に記録される画像位置とが一致し、入力装置110から入力された記録データに忠実な画像が記録される。
【0070】
なお、最適な記録パッチの選択、及び調整値の入力は、ユーザーが行うものと説明したが、これに限定するものではない。例えば、記録装置は画像を読取るスキャナーを備え、制御部1又は入力装置110が、スキャナーで読取った記録パッチ71b~77bの画像データと、パッチ74の画像データとを比較することで最適な記録パッチ72bを選択し、対応する調整値を求めてもよい。また、記録パッチ71b~77bの画像データは、記録装置100の外部に設けられたスキャナーで読取り、入力装置110に入力されたものであってもよい。
【0071】
端部パッチであるパッチ71及びパッチ77の幅Bは、往動時に吐出されるインクの着弾位置と復動時に吐出されるインクの着弾位置とのX軸に沿う最大の差、すなわち記録装置100の最大の着弾ずれ量と等しいことが好ましい。これにより、媒体Sに記録された記録パッチ71b~77bの中に、X軸において、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが一致した最適な記録パッチが形成されるので、
図9に示す記録タイミングの決定方法のフローを1回実行することによって、最適な記録タイミングを求めることができる。
【0072】
また、制御部1は、オーバーラップ領域OLのインク量は、第1領域Fd及び第2領域Sdよりも多くする制御を行う。例えば、
図11に示す、X軸において、第1領域Fdの画像位置と第2領域Sdの画像位置とが一致した記録パッチ72bのオーバーラップ領域OLの幅Dは、第1領域Fd及び第2領域Sdの幅Aと同じである。しかし、往動時の着弾位置と復動時の着弾位置とがずれているため、オーバーラップされていない、非オーバーラップ部のインク量が少なくなる。例えば、
図11に示すオーバーラップ領域OLにおいて、右下がり斜線又は左下がり斜線のハッチングで示すPOL記録されなかった部位は、第1領域Fd及び第2領域Sdよりインク量が少ない。そこで、記録装置100は、テストパターン70の記録において、オーバーラップ領域OLのインク量を通常記録時よりも増加させたパッチ71~77の記録データを使用する。これにより、オーバーラップ領域OLのPOL記録されない部位のインク量が増し、第1、第2領域Fd,SdとPOL記録されない部位との濃度差が小さくなるので、最適な記録パッチ72bを容易に選定することができる。インク量の増加は、ノズル使用率を変更させてもよいし、ノズル63から吐出させるインク滴の大きさを変更させてもよい。
【0073】
次に、3Pass Bi-d記録によるテストパターンの記録について説明する。上記では、1Pass Bi-d記録について説明したが、
図8に示したテストパターン70は、奇数Pass Bi-d記録のBi-d調整である記録タイミング決定方法に使用することができる。
【0074】
図12は、3Pass Bi-dによるテストパターンの記録方法を説明する図である。
図12左側に示す図は、ノズル列64と媒体Sとの相対位置関係を表す。
図12右側の「パス1」列~「パス8」列は、各パスにおいてテストパターン70が記録される画素を示す。「パス1-8」列は、8回のパスで記録される画素位置を示す。
図12では、ノズル63及びドットの表示を省略する。また、ノズル列64のうち、インクを吐出しない領域を黒塗りで示す。また、画像を記録しない「パス2」列及び「パス7」列の表示を省略する。また、以下の説明では、パッチ71~77によって記録パッチ71a~77aが形成されるものとする。
図12中に記載の左下がり斜線のハッチングは、第1ノズル群63a、及び第1ノズル群63aで記録される画素の水平位置を示す。右下がり斜線のハッチングは、第2ノズル群63b、及び第2ノズル群63bで記録される画素の水平位置を示す。点線のハッチングは、第3ノズル群63c、及び第3ノズル群63cで記録される画素の水平位置を示す。また、格子のハッチングは、第1ノズル群63aと第2ノズル群63bとでPOL記録される画素の水平位置を示す。
【0075】
3Pass Bi-d記録とは、オーバーラップ領域OLを除き、基本的に往動又は復動の3回のパスでラスターラインを形成する。詳しくは、X軸に沿う画素には、水平位置1~3で示す3分類された画素が繰り返し並ぶ。
図12では、紙面の制約上、各水平位置に付き2個目までの画素を示す。パス1、パス4、パス7・・・は、水平位置1の画素に画像を記録し、パス2、パス5、パス8・・・は、水平位置2の画素に画像を記録し、パス3、パス6、パス9・・・は、水平位置3の画素に画像を記録する。なお、3Pass Bi-d記録では、副走査による媒体Sの搬送量は、1Pass Bi-d記録時の搬送量の1/3となる。オーバーラップ領域OLは、例えば、パス1の第1ノズル群63aと、パス4の第2ノズル群63bとによって形成される。
【0076】
パス1は、往動によって画像を媒体Sに形成する。パス1では、各パッチ71~77の画像のうち、第1領域Fdに属する画像が第3ノズル群63cによって水平位置1の画素にノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第1ノズル群63aによって水平位置1の画素にノズル使用率80%~20%で形成される。
【0077】
パス2は、復動によって画像を媒体Sに形成する。テストパターン70の記録においては、画像を形成しない。
【0078】
パス3は、往動によって画像を媒体Sに形成する。パス3では、各パッチ71~77の画像のうち、第1領域Fdに属する画像が第3ノズル群63cによって水平位置3の画素にノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第1ノズル群63aによって水平位置3の画素にノズル使用率80%~20%で形成される。
【0079】
パス4は、復動によって画像を媒体Sに形成する。パス4では、各パッチ71~77の画像のうち、第2領域Sdに属する画像が第3ノズル群63cによって水平位置1の画素にノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第2ノズル群63bによって水平位置1の画素にノズル使用率20%~80%で形成される。パス1とパス4とによって、水平位置1の画素だけで形成される記録パッチ71a~77aが完成する。
【0080】
パス5は、往動によって画像を媒体Sに形成する。パス5では、各パッチ71~77の画像のうち、第1領域Fdに属する画像が第3ノズル群63cによって水平位置2の画素にノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第1ノズル群63aによって水平位置2の画素にノズル使用率80%~20%で形成される。
【0081】
パス6は、復動によって画像を媒体Sに形成する。パス6では、各パッチ71~77の画像のうち、第2領域Sdに属する画像が第3ノズル群63cによって水平位置3の画素にノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第2ノズル群63bによって水平位置3の画素にノズル使用率20%~80%で形成される。パス3とパス6とによって、水平位置3の画素だけで形成される記録パッチ71a~77aが完成する。
【0082】
パス7は、往動によって画像を媒体Sに形成する。テストパターン70の記録においては、画像を形成しない。
【0083】
パス8は、復動によって画像を媒体Sに形成する。パス8では、各パッチ71~77の画像のうち、第2領域Sdに属する画像が第3ノズル群63cによって水平位置2の画素にノズル使用率100%で形成され、オーバーラップ領域OLに属する画像が第2ノズル群63bによって水平位置2の画素にノズル使用率20%~80%で形成される。パス5とパス8とによって、水平位置2の画素だけで形成される記録パッチ71a~77aが完成する。
【0084】
以上、説明したように、3Pass Bi-d記録において各水平位置の画像ごとの記録パッチ71a~77aを形成することができる。詳細の説明は省略するが、3pass以上の奇数Pass Bi-d記録においても、同様に記録パッチ71a~77aを形成できる。したがって、上述した記録タイミング決定方法は、奇数Pass Bi-d記録を行う記録装置100に適用することができる。
【0085】
以上述べたように、本実施形態に係る記録タイミングの決定方法及び記録装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0086】
記録タイミングの決定方法は、複数のパッチ71~77を媒体Sに記録する第1の記録工程及び第2の記録工程と、選択された記録パッチ72bに基づいて記録ヘッド60の記録タイミングを決定するタイミング決定工程とを含んでいる。複数のパッチ71~77のオーバーラップ領域OLの幅Bは、オーバーラップ領域OL以外の第1領域Fd及び第2領域Sdの幅A以下であり、X軸の両端に向かうにつれて狭くなる。これにより、媒体Sに記録された記録パッチ71b~77bのうちから選択される最適な記録パッチ72bにおいては、オーバーラップ領域OLの画像がX軸に広がらずに記録されるので、最適な記録パッチ72bを容易に選定することができる。したがって、記録ヘッド60の最適な記録タイミングを求める記録タイミングの決定方法を提供することができる。
【0087】
第1の記録工程及び第2の記録工程において、制御部1は、オーバーラップ領域OLのインク量を第1領域Fd及び第2領域Sdのインク量よりも多くする制御を行う。これにより、記録パッチ72bにおける第1、第2領域Fd,Sdと、オーバーラップ領域OLのPOL記録されない部位との濃度差が小さくなるので、最適な記録パッチ72bを容易に選定することができる。
【0088】
端部パッチであるパッチ71,77の幅Bは、B=A/2であり、記録装置100の最大の着弾ずれ量と等しい。これにより、記録パッチ71b~77bの中に最適な記録パッチが含まれることになるので、記録タイミングの決定方法のフローを1回実行することによって、最適な記録タイミングを求めることができる。
【0089】
複数のパッチ71~77は、中央パッチであるパッチ74に関して対称に配置されているので、最適な記録パッチ72bを容易に選択することができる。
【0090】
記録装置100の制御部1は、記録ヘッド60によって複数のパッチ71~77を媒体Sに記録し、記録タイミング決定部3aによって媒体Sに記録された複数の記録パッチ71b~77bから選択された記録パッチ72bに基づいて記録ヘッドの記録タイミングを決定する。複数のパッチ71~77のオーバーラップ領域OLの幅Bは、オーバーラップ領域OL以外の第1領域Fd及び第2領域Sdの幅A以下であり、X軸の両端に向かうにつれて狭くなる。これにより、媒体Sに記録された記録パッチ71b~77bのうちから選択される最適な記録パッチ72bにおいては、オーバーラップ領域OLの画像がX軸に広がらずに記録されるので、最適な記録パッチ72bを容易に選定することができる。したがって、記録ヘッド60の最適な記録タイミングを求める記録装置100を提供することができる。
【0091】
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
【0092】
本願の記録タイミングの決定方法は、第1軸に沿って順に並ぶ第1ノズル群と第3ノズル群と第2ノズル群とを有する記録ヘッドによって前記第1軸と交差する第2軸に沿って配置される複数のパッチを媒体に記録する記録工程と、前記媒体に記録された複数のパッチから、選択されたパッチに基づいて前記記録ヘッドの記録タイミングを決定するタイミング決定工程と、を含み、前記複数のパッチは、前記第1ノズル群と前記第2ノズル群とで記録されるオーバーラップ領域と、前記第3ノズル群で記録される第1領域及び第2領域と、を有し、前記第1領域及び前記第2領域の前記第2軸における幅をA、前記オーバーラップ領域の前記第2軸における幅をBとした時、A≧Bを満たすように記録され、前記複数のパッチの各前記オーバーラップ領域の幅Bは、前記第2軸の中央から両端に向かうにつれて狭くなるように記録され、前記記録工程は、前記記録ヘッドが前記第2軸の一方に移動する第1の記録において、前記第1ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第1領域とを記録し、前記記録ヘッドが前記第2軸の他方に移動する第2の記録において、前記第2ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第2領域とを記録することを特徴とする。
【0093】
この方法によれば、記録タイミングの決定方法は、複数のパッチを媒体に記録する記録工程と、媒体に記録された複数のパッチから選択されたパッチに基づいて記録ヘッドの記録タイミングを決定するタイミング決定工程とを含んでいる。複数のパッチのオーバーラップ領域の幅Bは、オーバーラップ領域以外の第1領域及び第2領域の幅A以下であり、第2軸の両端に向かうにつれて狭くなる。これにより、媒体に記録されたパッチから選択される最適なパッチにおいては、オーバーラップ領域の画像が第2軸に広がらずに記録されるので、最適なパッチを容易に選定することができる。したがって、記録ヘッドの最適な記録タイミングを求める記録タイミングの決定方法を提供することができる。
【0094】
上記の記録タイミングの決定方法において、前記オーバーラップ領域のインク量は、前記第1領域及び前記第2領域のインク量よりも多いことが好ましい。
【0095】
この方法によれば、オーバーラップ領域の濃度が増すので、最適なパッチ画像を容易に選定することができる。
【0096】
上記の記録タイミングの決定方法において、前記複数のパッチは、B≧A/2を満たすように記録され、前記複数のパッチのうちの前記両端に配置される端部パッチの前記幅Bは、B=A/2であり、前記第1の記録による記録位置と前記第2の記録による記録位置との前記第2軸に沿う差の最大値と等しくなるように記録されることが好ましい。
【0097】
この方法によれば、媒体に記録された複数のパッチのなかに最適なパッチが含まれることになるので、記録タイミングの決定方法を1回実行することで、最適な記録タイミングを求めることができる。
【0098】
上記の記録タイミングの決定方法において、前記複数のパッチのうちの中央に配置される中央パッチの前記幅Bは、B=Aとなるように記録され、前記第2軸において、前記複数のパッチは、前記中央パッチに関して対称となるように記録されることが好ましい。
【0099】
この方法によれば、複数のパッチは、中央パッチに関して対称に配置されているので、媒体に記録されたパッチから最適なパッチを容易に選択することができる。
【0100】
本願の記録装置は、第1軸に沿って順に並ぶ第1ノズル群と第3ノズル群と第2ノズル群とを有し、前記第1軸と交差する第2軸に沿って配置される複数のパッチを媒体に記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドが搭載されるキャリッジを前記第2軸に沿って往復移動させるヘッド移動部と、前記記録ヘッドの記録タイミングを決定する記録タイミング決定部を含む制御部と、を備え、前記複数のパッチは、前記第1ノズル群と前記第2ノズル群とで記録されるオーバーラップ領域と、前記第3ノズル群で記録される第1領域及び第2領域と、を有し、前記第1領域及び前記第2領域の前記第2軸における幅をA、前記オーバーラップ領域の前記第2軸における幅をBとした時、A≧Bを満たすように記録され、前記複数のパッチの各前記オーバーラップ領域の幅Bは、前記第2軸の中央から両端に向かうにつれて狭くなるように記録され、前記制御部は、前記記録ヘッドを前記第2軸の一方に移動させる第1の記録において、前記第1ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第1領域とを記録し、前記記録ヘッドを前記第2軸の他方に移動させる第2の記録において、前記第2ノズル群による前記オーバーラップ領域と前記第3ノズル群による前記第2領域とを記録し、前記媒体に記録された複数のパッチから、選択されたパッチに基づいて前記記録タイミングを決定することを特徴とする。
【0101】
この構成によれば、制御部は、記録ヘッドによって複数のパッチを媒体に記録し、記録タイミング決定部によって媒体に記録された複数のパッチから選択されたパッチに基づいて記録ヘッドの記録タイミングを決定する。複数のパッチのオーバーラップ領域の幅Bは、オーバーラップ領域以外の第1領域及び第2領域の幅A以下であり、第2軸の両端に向かうにつれて狭くなる。これにより、媒体に記録されたパッチから選択される最適なパッチにおいては、オーバーラップ領域の画像が第2軸に広がらずに記録されるので、最適なパッチを容易に選定することができる。したがって、記録ヘッドの最適な記録タイミングを求める記録装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…制御部、2…インターフェイス部、3…CPU、3a…記録タイミング決定部、4…制御回路、4a…駆動信号生成部、4b…吐出信号生成部、4c…移動信号生成部、5…メモリー、14…媒体供給部、15…媒体巻取部、21…搬送ローラー対、22…搬送経路、23…上流案内部、24…プラテン、25…下流案内部、33…操作部、51…筐体部、55…キャリッジ、58…記録部、59…ヘッド移動部、60…記録ヘッド、63…ノズル、63a…第1ノズル群、63b…第2ノズル群、63c…第3ノズル群、64…ノズル列、70,170…テストパターン、71~77,171~177…パッチ、71a~77a,71b~77b,171a~177a,171b~177b…記録パッチ、100…記録装置、110…入力装置、S…媒体、Fd…第1領域、Sd…第2領域、OL…オーバーラップ領域。