(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】固形燃料、固形燃料の製造方法および固形燃料の製造装置
(51)【国際特許分類】
C10L 5/46 20060101AFI20221220BHJP
B09B 3/20 20220101ALI20221220BHJP
C10L 5/48 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C10L5/46
B09B3/20
C10L5/48
(21)【出願番号】P 2019002371
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元
(72)【発明者】
【氏名】中園 実
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 努
(72)【発明者】
【氏名】日下 哲志
(72)【発明者】
【氏名】小関 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-025701(JP,A)
【文献】特開昭60-023489(JP,A)
【文献】特開2013-031945(JP,A)
【文献】特開昭59-184295(JP,A)
【文献】特開2003-147377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/40
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機汚泥、パルパー粕およびスクリーン粕を含む固形燃料であって、
前記有機汚泥の混合比率をx(絶乾ベースでの重量%)、前記固形燃料の1粒あたりの実容積をy(cm
3)としたときに、下記式(1)を満たすことを特徴とする固形燃料。
34≦y≦(11.6-0.092x)
3・・・式(1)
【請求項2】
請求項1に記載の固形燃料の製造方法であって、
混合部で有機汚泥、パルパー粕およびスクリーン粕を混合する工程と、
造粒部で少なくとも前記混合部で得られた混合原料を固形燃料に成型する工程とを含む、固形燃料の製造方法。
【請求項3】
前記混合部で、水分含有率60質量%以下の状態で混合する工程を含む、請求項2に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項4】
前記混合部に投入する前に前記パルパー粕を予め破砕処理する工程を含む、請求項2または請求項3に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項5】
前記造粒部で、140℃未満に加熱して助熱圧縮混錬する工程を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項6】
前記造粒部で、水分含有率5~35質量%の状態で搾り出し成型する工程を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項7】
前記造粒部の後段に放冷乾燥部を置き、
前記放冷乾燥部でブロア送風を行って水分含有率30質量%以下に乾燥する工程を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の固形燃料の製造装置であって、
有機汚泥、パルパー粕およびスクリーン粕を混合する混合部と、
前記混合部で得られた混合原料を固形燃料に成型する造粒部とを含む、固形燃料の製造装置。
【請求項9】
前記混合部の前段に前記パルパー粕を破砕処理する破砕機を含む、請求項8に記載の固形燃料の製造装置。
【請求項10】
前記造粒部が、前記混合原料を助熱圧縮混錬できる助熱圧縮混練部を含む、請求項8または9に記載の固形燃料の製造装置。
【請求項11】
前記造粒部が、前記混合原料を搾り出し成型できる搾り出し成型部を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の固形燃料の製造装置。
【請求項12】
前記造粒部の後段に放冷乾燥部を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の固形燃料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形燃料、固形燃料の製造方法および固形燃料の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥などの有機汚泥を埋め立て材料やセメント材料として再利用する方法が知られていたが、近年では下水汚泥が燃料または肥料として再利用されるよう努めることの責務を下水道法で規定された。下水汚泥などの有機汚泥を用いた固形燃料として、有機汚泥およびRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)を混合した固形燃料が知られている(特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1には、有機性廃棄物は、嫌気性消化汚泥または下水処理場で発生した汚泥であり、RPF製造原料は、プラスチックおよび/または紙を合計で50質量%以上含むものであり、有機性廃棄物の水分含有率をx(質量%)、有機性廃棄物とRPF製造原料との合計質量に対する有機性廃棄物の質量の割合(質量%)をyとしたときに、下記式(I)を満たすように、有機性廃棄物とRPF製造原料との混合比を調整し、これらを含む混合原料を得る混合工程と、混合原料から成型体を得る成型工程と、を備える固形燃料の製造方法が記載されている。
式(I):y≦-0.0436x2+1.7458x+40.0
【0004】
特許文献2には、下水汚泥、し尿汚泥、食品廃棄物、畜産廃棄物またはこれらの消化汚泥について乾燥処理を施して、水分含有率を20~50質量%に調整した有機性廃棄物を、20~65℃の温度雰囲気内に12~120時間保持して、熟成廃棄物を得る熟成工程と、熟成廃棄物とプラスチックおよび/または紙を合計で50質量%以上含むものであるRPF製造原料とを含む混合原料を得る混合工程と、混合原料から成型体を得る成型工程と、を備える固形燃料の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6022259号
【文献】特許第6047337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、製紙工場では、古紙を原料にパルプを製造する工程で、パルパー粕やスクリーン粕、クリーナー粕、ラガー等の廃棄物が発生する。ここで、スクリーン粕は、水に溶解した古紙パルプから離解が不十分で製紙原料にできない結束繊維等からなる異物で、水分60質量%以上の高い水分含有率で古紙パルプ製造工程から排出される。一方、パルパー粕は、古紙を水に溶解する際に水に溶けずに残ったビニル紐やフィルムなどの廃プラスチック類を多く含む異物で、水分は概ね50質量%以下であるが、固形燃料の原料とするには大きな異物を含むことから、他の固形燃料原料と混合する前に破砕処理が必要となることもある。
【0007】
実際、特許文献1および2には、有機汚泥に対して、古紙などの紙および/またはプラスチックを混合して固形燃料化することしか記載されておらず、スクリーン粕やパルパー粕を再利用することは検討されていなかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、有機汚泥および製紙工場内で発生するスクリーン粕やパルパー粕等の廃棄物を有効利用でき、かつ、安定形状を保てる固形燃料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、有機汚泥、スクリーン粕およびパルパー粕を含む固形燃料の構成とすることにより、有機汚泥および製紙工場内で発生するスクリーン粕やパルパー粕等の廃棄物を同時に有効利用でき、かつ、安定形状を保てる固形燃料を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明の構成と、本発明の好ましい構成を以下に記載する。
【0011】
[1] 有機汚泥、パルパー粕およびスクリーン粕を含む固形燃料であって、有機汚泥の混合比率をx(絶乾ベースでの重量%)、固形燃料の1粒あたりの実容積をy(cm3)としたときに、下記式(1)を満たすことを特徴とする固形燃料。
y≦(11.6-0.092x)3・・・式(1)
[2] [1]に記載の固形燃料の製造方法であって、混合部で有機汚泥、パルパー粕およびスクリーン粕を混合する工程と、造粒部で少なくとも混合部で得られた混合原料を固形燃料に成型する工程とを含む、固形燃料の製造方法。
[3] 混合部で水分含有率60質量%以下の状態で混合する工程を含む、[2]に記載の固形燃料の製造方法。
[4] 混合部に投入する前にパルパー粕を予め破砕処理する工程を含む、[2]または[3]に記載の固形燃料の製造方法。
[5] 造粒部で140℃未満に加熱して助熱圧縮混錬する工程を含む、[2]~[4]のいずれか1項に記載の固形燃料の製造方法。
[6] 造粒部で水分含有率5~35質量%の状態で搾り出し成型する工程を含む、[2]~[5]のいずれか1項に記載の固形燃料の製造方法。
[7] 造粒部の後段に放冷乾燥部を置き、放冷乾燥部でブロア送風を行って水分含有率30質量%以下に乾燥する工程を含む、[2]~[6]のいずれか1項に記載の固形燃料の製造方法。
[8] [1]に記載の固形燃料の製造装置であって、
有機汚泥、パルパー粕およびスクリーン粕を混合する混合部と、
混合部で得られた混合原料を固形燃料に成型する造粒部とを含む、固形燃料の製造装置。
[9] 混合部の前段にパルパー粕を破砕処理する破砕機を含む、[8]に記載の固形燃料の製造装置。
[10] 造粒部が、混合原料を助熱圧縮混錬できる助熱圧縮混練部を含む、[8]または[9]に記載の固形燃料の製造装置。
[11] 造粒部が、混合原料を搾り出し成型できる搾り出し成型部を含む、[8]~[10]のいずれか1項に記載の固形燃料の製造装置。
[12] 造粒部の後段に放冷乾燥部を含む、[8]~[11]のいずれか1項に記載の固形燃料の製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機汚泥および製紙工場内で発生するスクリーン粕やパルパー粕等の廃棄物を同時に有効利用でき、かつ、安定形状を保てる固形燃料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の固形燃料の製造装置の一例が製紙工場に設置された、固形燃料の活用システムの一例を示した概略図である。
【
図2】
図2は、有機汚泥の混合比率に対する固形燃料1粒あたりの最大実容積の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
[固形燃料]
本発明の固形燃料は、有機汚泥、スクリーン粕およびパルパー粕を含む固形燃料であって、有機汚泥の混合比率をx(絶乾ベースでの重量%)、固形燃料の1粒あたりの実容積をy(cm3)としたときに、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
y≦(11.6-0.092x)3・・・式(1)
本発明によれば、有機汚泥および製紙工場内で発生するスクリーン粕やパルパー粕等の廃棄物を同時に有効利用でき、かつ、安定形状を保てる固形燃料を提供できる。従来、乾燥下水汚泥を一般的な方法で固形燃料化すると、小さな粉状であり、形状安定性に乏しくて崩れやすい固形燃料しか製造できないのが実情であった。一方、製紙工場からのスクリーン粕は、繊維を多く含み、含水状態から水分を失う際に繊維同士が水素結合で結合し、架橋構造を構築する。本発明では、架橋構造を構築したスクリーン粕が有機汚泥とパルパー粕を架橋構造内に安定に固定化することで、安定した形状と強度を維持できる。これにより、有機汚泥および製紙工場内で発生するスクリーン粕やパルパー粕等の廃棄物を同時に有効利用でき、かつ、安定形状を保つことができる。
以下、本発明の好ましい態様を説明する。
【0016】
<固形燃料のサイズ、形状、特性>
本発明の固形燃料は、有機汚泥の混合比率をx(絶乾ベースでの重量%)、固形燃料の1粒あたりの実容積をy(cm3)としたときに、下記式(1)を満たす。
y≦(11.6-0.092x)3・・・式(1)
xは0を超え100未満であり、20~90であることが好ましく、30~80であることがより好ましく、40~60であることが特に好ましく、45~55であることがより特に好ましい。有機汚泥の混合比率の絶乾ベースでの重量%は、JIS Z 7302-3の廃棄物固形化燃料-第3部:水分試験方法に準じた方法で測定した値を用いる。
なお、固形燃料の1粒あたりの実容積yは、固形燃料10粒の実測値の平均値を用いて計算したが、少なくとも1粒の固形燃料が式(1)を満たせば本発明の固形燃料に含まれる。
【0017】
その他の固形燃料のサイズおよび形状としては特に制限はない。固形燃料をRPFと類似するサイズおよび形状とすることが、既存のRPF搬送用の搬送手段を活用しつつ、固形燃料ボイラーに提供できる観点から好ましい。なお、一般的なRPFのサイズおよび形状は、例えば直径5~100mmの円筒形または円柱形の形状で、直径は好ましくは10~70mm、より好ましくは15~50mm、もっとも好ましくは20~40mmである。ただし、本発明は一般的なRPFのサイズおよび形状の態様に限定されない。割れる等して設定寸法から外れた規格外品の重量比率や、コンベアでの輸送中に発生した粉塵の重量比率を少なくする観点から、固形燃料が円柱形の形状である場合の直径は10~60mmであることが好ましく、20~50mmであることがより好ましく、20~40mmであることが特に好ましい。同様の観点から、固形燃料の長さは10~120mmであることが好ましく、30~100mmであることがより好ましく、50~80mmであることが特に好ましい。
RPFサイズの固形燃料とすることで、表面積が減るために搬送時の臭気を抑制でき、小さい粒径のものを減らせる(粒径分布を均一化できる)ために搬送時の粉塵を抑制できる。
本発明では、微細化しやすい有機汚泥の含有率に応じて固形燃料の最大実容積を定めることで、安定形状を保ち、例えば割れるなどして搬送トラブルや臭気トラブルに繋がることを防止する。
【0018】
固形燃料の形状等は特に限定されず、例えば、ペレット状の円筒形または円柱形や俵状などがある。式(1)を満たすように実体積を制御しやすい観点から、円柱形であることが好ましい。
また、固形燃料の水分は特に限定されず、35質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の固形燃料は、重油等の助燃剤を継続的に用いることなく容易に燃焼させることができる。そのため、CO2排出量やカーボンニュートラルの観点で特に好ましい燃料とすることができる。
【0020】
<有機汚泥>
有機汚泥としては、製紙工場で発生するペーパースラッジや排水汚泥、余剰汚泥があり、この場合、水分含有率を60質量%以下の脱水汚泥とすることが好ましい。
さらに有機汚泥としては、公共下水処理場で発生する未消化汚泥や消化汚泥、食品工場等の製紙工場以外の民間工場で発生する汚泥(例えば、焼酎粕)等も利用でき、この場合、水分含有率を80質量%以下の脱水汚泥とすることが好ましく、60質量%以下とすることがより好ましく、35質量%以下とすることがさらに好ましく、20質量%以下とすることが特に好ましい。
【0021】
脱水汚泥の態様は、脱水機で処理された脱水ケーキ様やさらに乾燥設備で乾燥させた態様など固形状のものであっても流動性を有するものであってもよい。脱水汚泥が流動性を有する場合、流動性の程度は特に限定されないが、吸引車、所謂、バキュームカーにより吸い上げることができればよい。
【0022】
<スクリーン粕>
スクリーン粕としては、製紙工場からのスクリーン粕であれば特に制限はない。
本発明では、スクリーン粕が、長さ0.1mm以上のパルプ繊維を含むことが好ましく、長さ0.2mm以上のパルプ繊維を含むことがより好ましく、長さ0.5mm以上のパルプ繊維を含むことがさらに好ましい。スクリーン粕は、生産工程で発生する汚泥で、排水処理工程で発生するペーパースラッジとは異なり、パルプ繊維を主たる構成要素とし、余剰汚泥(バクテリア)を含まないことを特徴とする。また、スクリーン粕は、構成するパルプ繊維同士は結合されず、ほぐれた状態にある非成型品であり、パルプ繊維同士が水素結合で結合した成型品である紙とは異なる。
スクリーン粕は、水分含有率70質量%程度以上で工程から排出され、スクリュープレス等の脱水機で水分含有率を50~60質量%に低減することが好ましい。スクリーン粕をスクリュープレス等で脱水処理する前に有機汚泥を混合することで、有機汚泥を単独で脱水する場合より全体の水分含有率を低減できるスクリーン粕の脱水助剤効果が期待できる。この場合、ミキサーなどを用いて混錬し、スクリーン粕と有機汚泥を十分に混合することが好ましい。有機汚泥の水分含有率が高い場合、スクリーン粕をスクリュープレス等で脱水処理する前に、有機汚泥をスクリーン粕と混合することが効果的である。一方、有機汚泥の水分含有率がパルパー粕と同程度に低い場合、例えば有機汚泥からなる固形燃料などは、混合部で混合することが効果的である。
【0023】
<パルパー粕>
パルパー粕は、古紙を水に溶解する縦型パルパーや横型ドラム式パルパーなどで古紙を溶解する際に、水に溶けずに残った残渣である。パルパー粕には、フィルムやビニル紐などのプラスチック物を多く含む。古紙は、新聞古紙、ダンボール古紙、雑誌古紙、雑紙など特に限定はされない。パルパー粕として固形燃料の成型後の辺長よりも大きなものが含まれる場合には、破砕機やシュレッダー等により、固形燃料の成型後の辺長よりも小さなサイズに破砕もしくは裁断することが望ましい。破砕機は、一軸破砕機より二軸破砕機が望ましい。
【0024】
<その他の材料>
固形燃料の原料となるその他材料として、ラガーがある。ラガーはダンボール原紙など板紙工場のパルパーに設置される異物除去装置からの排出物で、ロープにビニル紐等が絡んだプラスチックを主とした廃棄物であり、適切に断裁、破砕した上で、単独もしくはパルパー粕と混合して固形燃料の原料とすることができる。
【0025】
RPFとは、JIS Z 7311に規定された廃棄物由来の紙、プラスチックなどの固形化燃料であり、水分は5質量%以下と規定されている。本発明の固形燃料は、必ずしもJIS Z 7311の規格に拘泥するものではない。
【0026】
ペーパースラッジとは、製紙工場の排水処理汚泥(脱水汚泥)である。ペーパースラッジをその他の材料として用いる前に沈殿槽やロータリースクリーンで濃縮し、スクリュープレスやベルトフィルターで脱水してもよい。ペーパースラッジとしては、工場で発生するすべての排水処理汚泥を混合した混合汚泥、パルプ系の排水から加圧浮上装置や単純沈殿池、凝集沈殿池、繊維回収装置等で回収した繊維質を中心とした汚泥(DIPスラッジ)、活性汚泥装置で発生する余剰汚泥、抄紙工程のスクリーンリジェクト、クリーナーリジェクト、損紙、コートブローク、ドライブローク、もしくはウェットブロークを含む。例えばスクリーンで分離されずに排水から回収された繊維質としては、長さ0.1mmに満たない繊維が含まれる。
【0027】
熱量を高める観点から、石炭などの化石燃料をさらに混合原料に混合してもよい。
混合原料および化石燃料の混合物を固形燃料に成型する態様では、得られる固形燃料の熱量を、高めることができる。ここで、高品質の混合原料を製造するための原料(特に、製紙工場からのパルパー粕およびスクリーン粕)は、供給量に制限がある場合がある。混合原料および化石燃料を固形燃料に成型することにより得られた高品質のRPFサイズの固形燃料を、既存のRPF搬送用の搬送手段を活用しつつ、固形燃料ボイラーに提供できる。
例えば、混合原料および石炭の混合物を固形燃料に成型する態様では、固形燃料が石炭を固形燃料の全質量に対して15質量%以下含むことが好ましく、10質量%以下含むことがより好ましく、8質量%以下含むことがさらに好ましく、7質量%以下含むことが特に好ましい。固形燃料が石炭を固形燃料の全質量に対して1質量%以上含むことが好ましく、2質量%以上含むことがより好ましく、3質量%以上含むことが特に好ましい。
【0028】
固形燃料を搬送する場合の臭気を抑制する観点から、消臭剤をさらに混合原料に混合してもよい。
消臭剤としては、特に制限はなく、例えば植物由来の消臭剤を挙げることができる。
植物由来の消臭剤としては特に制限はない。例えば、活性炭などの多孔質材料;臭気成分を包接したり、かかる成分と化合して塩を形成したり、キレートを形成してこれを捕捉したり、あるいは悪臭成分を中和することにより大気中への揮散を防止する物質;柑橘系、樹木系、ハーブ系、フローラル系などの各種の植物精油(例えば、リモネン、シネオール、シトラール、リナロール等の天然精油)、およびこれらの混合物、ならびにこれらを適当な媒体中に溶解させたものを挙げることができる。植物由来の消臭剤としては、例えば、株式会社 湊つくり製、商品名「スメオールL21」等が挙げられる。この消臭剤には、石油化学系の精油、香料、界面活性剤、防腐剤、溶剤等のPRTR法に該当する物質は使用されておらず、カーボンニュートラルの観点で好ましい。
植物由来の消臭剤は、多孔質材料であることが好ましく、活性炭であることがより好ましい。
植物由来の消臭剤は溶液状であっても粉末状であってもよいが、粉末状であることが好ましい。粉末状の活性炭であることがより好ましい。
固形燃料を搬送する場合の臭気を抑制する場合、固形燃料が消臭剤を固形燃料の全質量に対して15質量%以下含むことが好ましく、10質量%以下含むことがより好ましく、8質量%以下含むことがさらに好ましく、7質量%以下含むことが特に好ましい。固形燃料が消臭剤を固形燃料の全質量に対して1質量%以上含むことが好ましく、2質量%以上含むことがより好ましく、3質量%以上含むことが特に好ましい。
【0029】
[固形燃料の製造方法、固形燃料の製造装置]
本発明の固形燃料の製造装置の構成の一例を
図1に示す。
図1に示した固形燃料の製造装置は、有機汚泥1、スクリーン粕2およびパルパー粕3を混合する混合部6と、造粒部9(脱水固化部)とを備え、造粒部9(脱水固化部)が、少なくとも混合部6で得られる混合原料を固形燃料に成型する。
スクリーン粕2を脱水する目的で、混合部6の手前に、スクリュープレス等の脱水機5を備えてもよい。脱水機5を通過したスクリーン粕2の水分量は60質量%以下であることが好ましく、50~60質量%であることがより好ましい。
パルパー粕3を適切な大きさに裁断する目的で、混合部6の前段に、パルパー粕を破砕処理する破砕機4を備えても良い。
有機汚泥1については、スクリーン粕2およびパルパー粕3とは独立に混合部6に供給して、1段階で混合してもよい。予めスクリーン粕2と第一混合部6Aで混合(混錬)し、脱水機5で処理の上、混合部6(第二混合部6B)に供給して、2段階で混合しても良い。また、有機汚泥1を単独で乾燥させる乾燥装置7を備えていても良い。
混合部6の水分含有率、すなわち混合原料の全水分は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
造粒部は、順に混錬脱水部、助熱圧縮混練部、搾り出し成型部、および成型品貯留部を有することが好ましい。造粒部9(脱水固化部)では混合原料の温度を昇温することが好ましく、加熱して助熱圧縮混錬する工程を含むことが好ましい。このときの温度は、140℃以下とすることが好ましく、100℃以下とすることがより好ましく、90℃以下とすることがさらに好ましい。70℃以上にすることが好ましい。好ましい範囲の上限値以下に抑えることにより、パルパー粕に含まれるプラスチックフィルムが熱によって伸びるのを抑え、ちぎれやすくして、搾り出し成型における切れを向上し、スクレーパー適性を高めることができる。造粒部で水分含有率5~35質量%の状態で搾り出し成型する工程を含むことが好ましく、水分含有率15~25質量%の状態で搾り出し成型することが特に好ましい。搾り出し成型の絞り出し速度は3~20cm/秒であることが好ましく、5~15cm/秒であることがより好ましい。
混合部6と造粒部9(脱水固化部)の間に磁力式異物除去装置8(磁選機)を備えても良い。
造粒部9(脱水固化部)で成型された固形燃料は、放冷乾燥部10および天日もしくは熱風による乾燥部11を経て、完成された固形燃料となる。造粒部9が成型品貯留部を有する場合は、成型品貯留部にブロアを設置して後段の放冷乾燥部10の一部または全部を兼ねる構造とすることが好ましい。放冷乾燥部10を経た後の固形燃料の水分含有率は30質量%以下であることが好ましい。天日もしくは熱風による乾燥部11を経た後の固形燃料の水分含有率は5質量%以下であることが好ましい。
なお、完成された固形燃料は、固形燃料ボイラー12へ搬送される。
【0030】
例えば、下水汚泥などの有機汚泥を、スクリーン粕およびパルパー粕とともに造粒して固形燃料とすることで、臭気および粉塵を抑制しつつ、ボイラー投入用の固形燃料とすることができる。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、具体的には、有機汚泥を造粒することで、固形燃料を固形燃料ボイラーへ搬送しやすくなるために、搬送コストを大幅に削減ができる。特に固形燃料の製造装置が、固形燃料ボイラーへの搬送部(不図示)を造粒部と一体化して備える場合は、トラックなどの車両での搬送と比較して搬送コストを大幅に削減ができる。搬送部はコンベアであることが好ましい。また、下水汚泥などの有機汚泥を造粒することで、表面積が減るために、搬送時の臭気を抑制できる。また、下水汚泥などの有機汚泥、特に乾燥汚泥を造粒することで、小さい粒径のものを減らせる(粒径分布を均一化できる)ために、搬送時の粉塵を抑制できる。
【0031】
固形燃料ボイラーとしては特に制限はなく、バイオマスボイラーや化石燃料ボイラー(特に石炭ボイラー)を挙げることができる。固形燃料ボイラーはバイオマスボイラーであることが好ましい。
固形燃料ボイラーの燃焼方式としては特に制限はなく、(循環)流動床/流動層炉、ストーカー炉、溶融炉、ロータリーキルン等を挙げることができる。これらの中でも、メンテナンスおよび燃焼効率の観点から(循環)流動床/流動層炉が好ましい。(循環)流動床/流動層炉は、炉内温度管理の観点から循環流動床炉であることがより好ましい。
【0032】
固形燃料ボイラーがさらに追加燃料の投入部を備えていてもよい。追加燃料が石炭、プラスチック、紙、木くずおよびゴムのうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。追加燃料は、繊維屑などを含んでいてもよい。固形燃料と、他の追加燃料を固形燃料ボイラーに投入することにより、高い熱量を得ることができる。
【0033】
<その他の装置>
固形燃料の製造装置は、その他の機能を有する部分を備えていてもよい。
例えば、臭気を処理する脱臭部、粉塵を処理する集塵部、減温塔、反応塔、灰ピット、排気を外部に排出できる煙突などの排気部、熱交換装置、静音装置、脱臭剤噴霧装置などを備えることが、通常は好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0035】
[実施例1]
製紙工場内に設置した、
図1に記載の固形燃料の製造装置を用いて、以下の方法で固形燃料を製造した。
有機汚泥として、製紙工場で発生したペーパースラッジ、排水汚泥、余剰汚泥に対し、乾燥装置を適宜用いて水分含有率を60~80質量%としたものを用いた。スクリーン粕として、製紙工場内で発生した、長さ0.5mm以上のパルプ繊維を含む、水分含有率が約70質量%のスクリーン粕を用いた。この有機汚泥とスクリーン粕とを混練機(第一混合部)で混練し、スクリュープレス(脱水機)で水分含有率50~60質量%に調整した。
一方、ダンボール古紙を用いる製紙工場内で発生した、プラスチックフィルムおよび廃プラスチックを含むパルパー粕を破砕機に投入して、混合部に投入する前にパルパー粕を予め破砕処理する工程を行った。
スクリュープレスで脱水された有機汚泥およびスクリーン粕と、破砕処理されたパルパー粕を、有機汚泥の絶乾ベースで全原料に対する混合比率xを50重量%として混合部(第二混合部)に投入して混合し、混合原料を得た。混合原料は、磁力式異物除去装置によって異物を除去した。
この混合原料を、脱水固化部(造粒部)内に導入し、水分含有率5~35質量%の状態で混練・脱水(スクリュー)を行い、140℃以下(70~90℃)に加熱して助熱圧縮混錬した後、直径60mmのダイスで絞り出し速度5~15cm/秒で搾り出し成型した。
造粒部の後段の成型品貯留部(全面網目の受け容器)以降に放冷乾燥部を置き、放冷乾燥部でブロア送風を行って水分含有率30質量%以下に乾燥し、続く天日乾燥部で水分含有率5質量%以下まで乾燥し、長さ120mmの円柱状の固形燃料を製造した。
固形燃料の1粒あたりの実容積yは339cm
3となり、このとき式(1)の右辺=(11.6-0.092x)
3=343cm
3を下回った。完成した固形燃料の歩留まりを求めた結果、割れる等して設定寸法から外れた規格外品の重量比率は9%であり、コンベアでの輸送中に発生した粉塵の重量比率は0.9%であった。
【0036】
[実施例2]
有機汚泥の絶乾ベースで全原料に対する混合比率xを50重量%として混合し、直径45mmのダイスで搾り出し成型し、長さ90mmの固形燃料を製造した以外は実施例1と同様にして、固形燃料を製造した。固形燃料の1粒あたりの実容積は143cm3となり、このとき式(1)の右辺=(11.6-0.092x)3=343cm3を下回った。完成した固形燃料の歩留まりを求めた結果、割れる等して設定寸法から外れた規格外品の重量比率は3%であり、コンベアでの輸送中に発生した粉塵の重量比率は0.3%であった。
【0037】
[実施例3]
有機汚泥の絶乾ベースで全原料に対する混合比率xを50重量%として混合し、直径40mmのダイスで搾り出し成型し、長さ70mmの固形燃料を製造した以外は実施例1と同様にして、固形燃料を製造した。固形燃料の1粒あたりの実容積は88cm3となり、このとき式(1)の右辺=(11.6-0.092x)3=343cm3を下回った。完成した固形燃料の歩留まりを求めた結果、割れる等して設定寸法から外れた規格外品の重量比率は1%であり、コンベアでの輸送中に発生した粉塵の重量比率は0.1%以下であった。
【0038】
[比較例1]
有機汚泥の絶乾ベースで全原料に対する混合比率xを50重量%として混合し、直径60mmのダイスで搾り出し成型し、長さ150mmの固形燃料を製造した以外は実施例1と同様にして、固形燃料を製造した。固形燃料の1粒あたりの実容積は424cm3となり、このとき式(1)の右辺=(11.6-0.092x)3=343cm3を上回った。完成した固形燃料の歩留まりを求めた結果、割れる等して設定寸法から外れた規格外品の重量比率は47%であり、コンベアでの輸送中に発生した粉塵の重量比率は13%であった。
【0039】
[比較例2]
有機汚泥の絶乾ベースで全原料に対する混合比率xを50重量%として混合し、直径70mmのダイスで搾り出し成型し、長さ120mmの固形燃料を製造した以外は実施例1と同様にして、固形燃料を製造した。固形燃料の1粒あたりの実容積は462cm3となり、このとき式(1)の右辺=(11.6-0.092x)3=343cm3を上回った。完成した固形燃料の歩留まりを求めた結果、割れる等して設定寸法から外れた規格外品の重量比率は32%であり、コンベアでの輸送中に発生した粉塵の重量比率は9%であった。
【0040】
【0041】
上記表1より、本発明の固形燃料は、有機汚泥および製紙工場内で発生するスクリーン粕やパルパー粕等の廃棄物を同時に有効利用でき、かつ、安定形状を保てることがわかった。
一方、式(1)を満たさない比較例1および2の固形燃料は安定形状を保てず、各実施例と比較して、規格外品の重量比率および粉塵の重量比率が高いことがわかった。
【0042】
[実施例101~107および参考例1]
有機汚泥の混合比率xおよび固形燃料の最大直径を下記表2のように変更した以外は実施例1と同様にして固形燃料を製造した場合における、安定形状を保つことができる固形燃料1粒あたりの最大実容積yを、下記表2に記載した。
また、得られた結果をもとに、有機汚泥の混合比率に対する固形燃料1粒あたりの最大実容積の関係を示したグラフを作成し、
図2に示した。
【0043】
【0044】
上記表2および
図2より、有機汚泥の混合比率をx(絶乾ベースでの重量%)、固形燃料の1粒あたりの実容積をy(cm
3)としたときに、y≦(11.6-0.092x)
3、すなわち式(1)を満たす場合に安定形状を保つことができることがわかった。
【符号の説明】
【0045】
1 有機汚泥
2 スクリーン粕
3 パルパー粕
4 破砕機
5 脱水機
6 混合部
6A 第一混合部
6B 第二混合部
7 乾燥装置
8 磁力式異物除去装置
9 造粒部
10 放冷乾燥部
11 天日もしくは熱風による乾燥部
12 固形燃料ボイラー