(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構
(51)【国際特許分類】
F03B 13/10 20060101AFI20221220BHJP
B63G 8/26 20060101ALI20221220BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20221220BHJP
【FI】
F03B13/10
B63G8/26
B63B35/00 T
(21)【出願番号】P 2019002917
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 真之
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0036731(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0257492(US,A1)
【文献】特表2013-535605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
B63B 35/00
B63G 8/26; 8/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電タービンの回転軸線が延在する方向に所定の長さを有する浮体と、
前記浮体に設けられ、係留索が連結される連結部と、
前記連結部の位置を前記浮体の重心に対して接近又は離間させる連結部可変機構と、を備え
、
前記連結部可変機構は、
前記浮体の底部壁体の貫通部を貫通し、前記浮体の外部に張り出すと共に前記連結部が設けられた駆動軸と、
前記駆動軸の軸線方向に前記駆動軸を進退させる駆動源と、を備え、
前記駆動源は、前記浮体の内部に配置されている浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構。
【請求項2】
発電タービンの回転軸線が延在する方向に所定の長さを有する浮体と、
前記浮体に設けられ、係留索が連結される連結部と、
前記連結部の位置を前記浮体の重心に対して接近又は離間させる連結部可変機構と、を備え
、
前記連結部可変機構は、
前記浮体の底部壁体の貫通部を貫通し、前記浮体の外部に張り出すと共に前記連結部が設けられた駆動軸と、
前記駆動軸の軸線方向に前記駆動軸を進退させる駆動源と、
前記貫通部に設けられた軸封部と、を備える浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構。
【請求項3】
前記連結部可変機構は、前記連結部の位置を、上下方向に移動させる請求項1
又は2に記載の浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構。
【請求項4】
前記浮体の姿勢を検出する姿勢センサと、
前記姿勢センサによって検出した前記浮体の姿勢に基づいて、前記連結部可変機構を制御するコントローラと、を備える請求項1~3の何れか一項に記載の浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構。
【請求項5】
前記コントローラは、前記浮体の前部が後部よりも高い位置に配置された上向き姿勢の場合に、前記連結部を前記浮体の重心に接近させるように移動させる制御を行う請求項4に記載の浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構。
【請求項6】
前記コントローラは、前記浮体の後部が前部よりも高い位置に配置された下向き姿勢の場合に、前記連結部を前記浮体の重心とは反対側に離間させるように移動させる制御を行う請求項4又は5に記載の浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用タービンが設けられた水中浮遊式発電装置の姿勢調整システムがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の姿勢調整システムは、複数のタンクを備え、これらのタンク間で液体を移動させることで、水中浮遊式発電装置の重心を移動させ、姿勢を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、水中で浮遊する浮体の内部に、複数のタンク、配管等の機器を配置する必要があるので、これらの機器を浮体の内部に配置するための設置スペースを確保する必要がある。本開示は、浮体の内部の省スペース化を図りつつ、浮体の姿勢を調整することができる浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構は、発電タービンの回転軸線が延在する方向に所定の長さを有する浮体と、浮体に設けられ、係留索が連結される連結部と、連結部の位置を浮体の重心に対して接近又は離間させる連結部可変機構と、を備える。
【0006】
この浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構では、係留索が連結された連結部の位置を浮体の重心に対して接近又離間させるように移動させることができる。これにより、浮体に作用するモーメントを変えることができるので、浮体の姿勢を変更することができる。この姿勢調整機構を用いて、浮体の姿勢を変更することができるので、浮体の内部においてタンク、配管等の設置スペースを削減できる。
【0007】
連結部可変機構は、連結部の位置を、上下方向に移動させてもよい。これにより、水平方向であり、且つ、係留索が延在する方向と交差する方向に延在する仮想線回りのモーメントの大きさを変えることができる。このように浮体に作用するモーメントを変えることで、浮体の姿勢を変更できる。
【0008】
連結部可変機構は、浮体の底部壁体の貫通部を貫通し、浮体の外部に張り出すと共に連結部が設けられた駆動軸と、駆動軸の軸線方向に駆動軸を進退させる駆動源と、貫通部に設けられた軸封部と、を備えていてもよい。これにより、駆動源を用いて駆動軸を駆動することで、浮体に対して連結部を移動させることができる。浮体に作用するモーメントを変えて、浮体の姿勢を変更することができる。
【0009】
浮遊式水流発電装置の姿勢調整機構は、浮体の姿勢を検出する姿勢センサと、姿勢センサによって検出した浮体の姿勢に基づいて、連結部可変機構を制御するコントローラと、を備えていてもよい。これにより、浮体の姿勢を把握して連結部可変機構を制御することで、浮体の姿勢を修正できる。
【0010】
コントローラは、浮体の前部が後部よりも高い位置に配置された上向き姿勢の場合に、連結部を浮体の重心に接近させるように移動させる制御を行ってもよい。コントローラを用いて、連結部を浮体の重心に接近させることで、浮体に作用するモーメントを減少させて、浮体の上向き姿勢を修正できる。
【0011】
コントローラは、浮体の後部が前部よりも高い位置に配置された下向き姿勢の場合に、連結部を浮体の重心とは反対側に離間させるように移動させる制御を行ってもよい。コントローラを用いて、連結部を浮体の重心とは反対側に離間させることで、浮体に作用するモーメントを増加させて浮体の下向き姿勢を修正できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、浮体の内部の省スペース化を図りつつ、浮体の姿勢を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態に係る水流発電装置を示す側面図である。
【
図2】浮体に配置された姿勢調整機構を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、上向き姿勢の浮体を示す側面図である。
図3(b)は、水平状態の浮体を示す側面図である。
【
図5】浮体の姿勢調整の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1に示されるように、水流発電装置(浮遊式水流発電装置)1は、水中に浮体2を浮遊させ、浮体2に設けられたタービン(発電タービン)3を水流FWによって回転させ、タービン3の回転によって発電を行う装置である。例えば、水流発電装置1は、海洋に設置され、海流によって発電する場合に用いられる。浮体2は、係留索4を介してアンカー5に係留されている。浮体2は、左右二つの発電用ポッドをビームによって連結して構成されているものでもよい。ビームは、例えば矩形の板状体を水平に配置して設けられる。本実施形態において水流FWの上流側を前側とし、水流FWの下流側を後側とする。
【0016】
なお、各図において直交する3方向をX方向、Y方向、Z方向として図示している。X方向及びY方向は、水平方向に沿っている。X方向は、例えば水流FWに沿う方向である。Y方向は、水流FWとは交差する方向である。Z方向は上下方向に沿う方向である。また、各図において浮体2の長手方向に沿う仮想の直線L1が図示されている。
図1及び
図2において、直線L1はX方向に延在している。
【0017】
アンカー5は、浮体2が水流FWによって流されないように保持するための構造物であり、例えばコンクリート製又は金属製のものが用いられる。アンカー5は、水底Bに配置されている。アンカー5は、重量の大きい構造物の自重により位置を維持するシンカーであってもよいし、グラウンドアンカーなどの支持力も用いて位置を維持するタイプであってもよい。
【0018】
浮体2は、本体6及びタービン3を備えている。浮体2の本体6は、発電機7を搭載する耐圧容器を含む。タービン3は、本体6の後側に設けられている。タービン3は、ブレード3a及びハブ3bを備えている。ブレード3aは、水流FWを受けて回転力を発生させる翼部材であり、ハブ3bの外周に径方向へ向けて複数設けられている。タービン3は、二つのブレード3aを備えていてもよく、三つのブレード3aを備えていてもよい。ハブ3bは、浮体2の前後方向に向けた軸線を中心に回転可能に設けられている。ハブ3bは、例えば発電機7の回転軸8に取り付けられ、回転軸8と一体に回転する。
【0019】
発電機7は、タービン3の回転による運動エネルギを電気エネルギに変換する機器であり、タービン3の回転駆動力を受けて発電する。発電機7にはパワーコンディショナが接続されていてもよい。発電機7は、パワーコンディショナに対し発電電力を出力する。パワーコンディショナは、発電機7の発電電力の調整及び発電運転制御を行うことができる。発電電力の調整は、交流電力である発電電力を直流電力に変換し、所望の周波数となるように直流電力を交流電力に変換して行われる。パワーコンディショナには、高圧受電部が接続されていてもよい。高圧受電部は、パワーコンディショナから出力される交流電力を変圧する。
【0020】
また、水流発電装置1には、
図1に示されるように、発電機7で発電された電力を送電する送電ケーブル9が設けられている。送電ケーブル9は、浮体2から垂れ下がり、水底B近傍に到達し、水底Bに沿って配置されていてもよい。送電ケーブル9は、例えば地上の電力系統に接続されている。
【0021】
水流発電装置1は、
図2に示されるように、浮体2の姿勢を調整する姿勢調整機構10を備えている。姿勢調整機構10は浮体2に設けられている。姿勢調整機構10は、係留索4が連結される連結部11と、連結部11の位置を浮体2の重心G(
図3及び
図4参照)に対して接近又は離間させる連結部可変機構12と、を含む。連結部可変機構12は、重心Gに対して連結部11の位置を変えることができる。連結部可変機構12は、モータ(駆動部)13、動力伝達部14、シャフト(駆動軸)15、軸封部16を含んでもよい。
【0022】
また、浮体2の姿勢として、例えば浮体2の長手方向に沿う直線L1の角度を適用することができる。例えば、Y方向から見た場合において、X方向に沿う基準線L0に対する角度(傾斜角θ、
図3(a)参照)を、浮体2の姿勢としてもよい。
【0023】
モータ13はシャフト15を移動させる動力を発生させる駆動源である。動力伝達部14は、モータ13による動力をシャフト15に伝達する。動力伝達部14は、モータ13による回転運動を直線運動に変換する。動力伝達部14は、例えば、カップリング17、台形ねじ18、接続部19等を含んでもよい。モータ13は、シャフト15の軸線方向に、シャフト15を進退させる駆動源である。
【0024】
カップリング17は、モータ13の回転軸13aに取り付けられた軸継手である。カップリング17は、回転軸13aと台形ねじ18とを接続する。台形ねじ18は、回転軸13aの回転に伴って回転する。台形ねじ18のおねじ部には、接続部19が取り付けられている。接続部19には、台形ねじ18のおねじ部に嵌まるめねじ部が設けられている。台形ねじ18が軸線L2回りに回転すると、接続部19は台形ねじ18の長手方向に沿って移動する。軸線L2は、例えばモータ13の回転軸13aに沿う仮想の直線である。接続部19の外面には例えば接続部19の回転を防止すると共に移動方向を案内するガイドが設けられていてもよい。
【0025】
接続部19には、シャフト15が連結されている。モータ13の回転軸13a、台形ねじ18、接続部19、シャフト15は例えば同軸(軸線L2)上に配置されている。シャフト15は例えば金属製の棒状の部材である。シャフト15は、金属以外のその他の材質によって形成されていてもよい。シャフト15は、所定の強度を有する。シャフト15は、浮体2の本体6の内部から外部まで、延在している。例えば、浮体2の長手方向が水平方向(X方向)に沿って配置されている場合において、シャフト15は上下方向(Z方向)に延在している。
【0026】
シャフト15は、浮体2の本体6の底部壁体20の貫通部21を貫通して、浮体2の外部に張り出している。本体6は、例えば円筒状を成し、底部壁体20は、本体6の下側の壁体である。底部壁体20は、本体6の底面を含む。浮体2の本体6の長手方向が水平方向に沿って配置されている場合において、底部壁体20の板厚方向は上下方向に沿っている。貫通部21には、底部壁体20において板厚方向に貫通する貫通穴を含む。
【0027】
貫通部21には軸封部16が設けられている。軸封部16は、シャフト15をスライド可能に支持する軸受部を含んでもよい。軸封部16は、シャフト15の外周面との間の隙間を封止するシール部を含む。これにより、本体6内への海水の浸入が防止される。
【0028】
シャフト15の先端部には、連結部11が設けられている。シャフト15の先端部は、本体6の内部に配置された基端部とは反対側の端部である。連結部11は、浮体2の外部に配置されている。連結部11としてアイプレートを用いることができる。連結部11は、シャフト15の先端部に固定される固定部を含んでもよい。また、連結部11は、固定部に接合されたプレートを含んでもよい。連結部11には、係留索4が連結される開口部11aが形成されていてもよい。係留索4の端部4aが連結部11の開口部11aに挿通されて、係留索4が連結部11に連結されていてもよい。また、係留索4の端部4aには、例えばU字金具などの連結具が連結されていてもよい。係留索4の端部4aには、例えばフックなどの係合部が設けられていてもよい。シャフト15及び連結部11は、浮体2の長手方向において、重心Gよりも前側に配置されている。
【0029】
シャフト15がシャフト15の軸線方向に移動すると、連結部11が変位する。シャフト15の本体6の外部への張り出し量Cを増加させることで、連結部11を底部壁体20から離間させることができる。シャフト15の張り出し量Cとしては、例えば軸線L2が延在する方向において、本体6の底部壁体20の外面20aから連結部11の開口部11aまでの長さとすることができる。
【0030】
また、シャフト15の本体6の外部への張り出し量Cを減少させることで、連結部11を底部壁体20に接近させることができる。これにより、浮体2の重心Gに対して、連結部11を接近させることができる。
【0031】
連結部11には、係留索4が接続されているので、係留索4による張力が作用している。これにより、直線L1が延在する方向に沿う力F4(
図3及び
図4参照)が作用しているので、連結部11を変位させることで、浮体2に作用するモーメントを変化させることができる。その結果、浮体2の姿勢が調整される。
【0032】
シャフト15は、シャフト15の軸線方向に移動可能となっている。Y方向から見た場合に、シャフト15は、浮体2の長手方向(直線L1)に対して直交するように配置され、シャフト15の軸線方向に移動可能である。直線L1が延在する方向から見た場合に、シャフト15は、Y方向に延在する直線に対して直交するように配置され、シャフト15の軸線方向に移動可能である。また、Y方向から見た場合に、シャフト15は、浮体2の長手方向に対して傾斜するように配置されて、シャフト15の軸線方向に移動可能なものでもよい。また、直線L1が延在する方向から見た場合に、シャフト15は、Y方向に延在する直線に対して傾斜するように配置されて、シャフト15の軸線方向に移動可能なものでもよい。
【0033】
姿勢調整機構10は、連結部可変機構12の動作を制御するコントローラ22を含んでもよい。コントローラ22は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。コントローラ22は、連結部可変機構12のモータ13と電気的に接続されている。
【0034】
コントローラ22には各種センサが接続されていてもよい。コントローラ22には、例えば姿勢センサ23が接続されていてもよい。姿勢センサ23は、浮体2の姿勢を検出するセンサである。姿勢センサ23は例えばジャイロスコープでもよい。姿勢センサ23は、浮体2の姿勢として、例えば基準線L0に対する直線L1の傾斜角θを検出することができる(
図3(a)及び
図4参照)。
【0035】
コントローラ22は、姿勢センサ23によって検出された浮体2の姿勢に基づいて、連結部可変機構12を制御することができる。コントローラ22は、浮体2の姿勢に基づいて、連結部可変機構12を作動させるか否かを判定する判定部を含んでもよい。
【0036】
図3(a)では、浮体2の上向き姿勢が図示されている。浮体2の上向き姿勢では、浮体2の前部2aが後部2bよりも高い位置に配置されている。コントローラ22は、浮体2が上向き姿勢である場合に、連結部11を浮体2の重心Gに接近させるように移動させることができる。コントローラ22は、モータ13に指令信号を出力して、モータ13を回転させて、シャフト15の張り出し量Cを減少させる。例えば、軸線L2が延在する方向において、浮体2の重心Gから連結部11までの長さL21を、
図3(b)に示されるように、長さL22に変更する(L21>L22)。
【0037】
これにより、浮体2の後部2bを下方に押し下げるように作用するモーメントM1を減少させることができる。例えば、モーメントM1を、モーメントM2に減少させることができる(M1>M2)。その結果、浮体2の後部2bが上方に移動するので、浮体2の上向き姿勢を修正することができる。例えば、浮体2の長手方向に沿う仮想の直線L1が基準線L0に沿うように、浮体2の姿勢を修正してもよい。
【0038】
図4では、浮体2の下向き姿勢が図示されている。浮体2の下向き姿勢では、浮体2の前部2aが後部2bよりも低い位置に配置されている。コントローラ22は、浮体2が下向き姿勢である場合に、連結部11を浮体2の重心Gから離間させるように移動させることができる。コントローラ22は、モータ13に指令信号を出力して、モータ13を回転(逆回転)させて、シャフト15の張り出し量Cを増加させる。例えば、軸線L2が延在する方向において、浮体2の重心Gから連結部11までの長さL23を、
図3(b)に示されるように、長さL22に変更する(L23>L22)。
【0039】
これにより、浮体2の後部2bを下方に押し下げるように作用するモーメントM3を増加させることができる。例えば、モーメントM3を、モーメントM2に増加させることができる(M3<M2)。その結果、浮体2の後部2bが下方に移動するので、浮体2の下向き姿勢を修正することができる。例えば、浮体2の長手方向に沿う仮想の直線L1が基準線L0に沿うように、浮体2の姿勢を修正してもよい。
【0040】
次に、
図5を参照して、水流発電装置1で実行される浮体2の姿勢調整の手順について説明する。通常の使用時において、水流発電装置1の浮体2は水中で浮遊し、例えば、アンカー5より下流に存在していてもよい。水流発電装置1は水流を受けてタービン3を回転させて、発電機7によって発電する。
【0041】
姿勢調整機構10の姿勢センサ23は、浮体2の姿勢を検出する(ステップS1)。姿勢センサ23は、浮体2の姿勢として、傾斜角θを検出する。姿勢センサ23によって検出された浮体2の姿勢に関するデータは、コントローラ22に出力される。
【0042】
次に、コントローラ22は、浮体2の姿勢を変更するか否かを判定する(ステップS2)。コントローラ22は、例えば傾斜角θが判定閾値を超えている場合に、浮体2の姿勢を変更すると判定することができる。浮体2の姿勢を変更する場合(ステップS2:YES)には、ステップS3に進む。浮体2の姿勢を変更しない場合(ステップS2:NO)には、ステップS1に戻り、ステップS1,S2を繰り返す。判定閾値は、例えば、過去のデータや実験結果に基づいて設定することができる。
【0043】
ステップS3では、コントローラ22は、浮体2が上向き姿勢であるか否かを判定する。コントローラ22は、例えば傾斜角θに基づいて、浮体2が上向き姿勢であるか否かを判定することができる。浮体2が上向き姿勢である場合(ステップS3:YES)には、ステップS4に進み、浮体2が上向き姿勢ではない場合(ステップS3:NO)には、ステップS5に進む。ここでの浮体2が上向き姿勢ではない場合とは、浮体2が下向き姿勢の場合である。
【0044】
ステップS4では、コントローラ22は、連結部可変機構12に指令信号を送信して、モータ13を駆動して、シャフト15の張り出し量Cを減少させる。軸線L2が延在する方向において、連結部11を上方に移動させて浮体2の重心に接近させる。これにより、浮体2の後部2bを下方に押し下げるように作用するモーメントM1を減少させることができる。これにより浮体2の後部2bを上げるように、浮体2の姿勢が調整される。
【0045】
ステップS5では、コントローラ22は、連結部可変機構12に指令信号を送信して、モータ13を駆動して、シャフト15の張り出し量Cを増加させる。軸線L2が延在する方向において、連結部11を下方に移動させて浮体2の重心から離間させる。これにより、浮体2の後部2bを下方に押し下げるように作用するモーメントM3を増大させることができる。その結果、浮体2の後部2bを下げるように、浮体2の姿勢が調整される。
【0046】
このような水流発電装置1の姿勢調整機構10によれば、浮体2の重心Gに対して、連結部11の位置を変更することができる。力F4が作用する連結部の位置を変更することにより、浮体2に作用するモーメントを変えて、浮体2の姿勢を変更することができる。この水流発電装置1では、姿勢調整機構10を用いて、浮体2の姿勢を変更できるので、浮体2の内部において、浮体2の姿勢調整用のタンク、配管等の機器類を設置しなくてもよい。このような水流発電装置1では、浮体2の姿勢調整用のタンク、配管等の機器類の設置スペースを削減できる。浮体2の本体6の内部に設置される機器類を削減することで、浮体2の本体6の小型化を図ることができる。また、本体6の内部に機器類を搭載する必要がなくなるので、浮体2の軽量化を図ることができる。
【0047】
連結部可変機構12では、連結部11の位置を軸線L2が延在する方向に移動させることができるので、Y軸回りのモーメントM1~M3の大きさを変えることができる。これにより、浮体2の重心Gに対して、浮体2の後部2bを上げるように、または、下げるように、浮体2の姿勢を変更することができる。
【0048】
また、姿勢調整機構10では、姿勢センサ23及びコントローラ22を備えているので、浮体2の姿勢を把握して連結部可変機構12を制御することができる。姿勢調整機構10によれば、浮体2の姿勢に応じて、好適に浮体2の姿勢を修正できる。
【0049】
コントローラ22は、浮体2が上向き姿勢である場合に、軸線L2が延在する方向において、浮体2の重心Gに接近させるように連結部11を移動させる制御を行うことができる。連結部11を浮体2の重心Gに接近させることで、浮体2に作用するモーメントM1を減少させて、浮体2の上向き姿勢を修正できる。
【0050】
コントローラ22は、浮体2が下向き姿勢である場合に、軸線L2が延在する方向において、浮体2の重心Gから離間させるように連結部11を移動させる制御を行うことができる。連結部11を浮体2の重心Gから離間させることで、浮体2に作用するモーメントM3を増大させて、浮体2の下向き姿勢を修正できる。
【0051】
この水流発電装置1では、浮体2の軽量化を図ることができるので、浮体2の設置場所まで浮体2を運搬するための起重機船(クレーン船)の傭船費を抑えることができる。また、従前のように浮体2の姿勢を調整するためのバラスト(流体)を浮体2に収容する必要がないので、バラストが漏洩するおそれがない。また、この水流発電装置1によれば、液体であるバラストの自由面による浮体2の姿勢変動の影響を抑制することもできる。
【0052】
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0053】
上記の実施形態では、軸線L2が延在する方向に連結部11を移動させているが、その他の方向に連結部11を移動させることで、浮体2の重心Gに対する連結部11の位置を変化させてもよい。また、上記の実施形態では、シャフト15が浮体2の本体6の底部壁体20を貫通するように配置されているが、シャフト15は浮体2のその他の壁体を貫通するように配置されていてもよい。例えば、シャフト15は、浮体2の本体6の側部壁体を貫通するように配置されていてもよい。例えば、浮体2の長手方向に延在する直線L1がX軸に沿って延在する場合において、シャフト15は、Z軸に対して傾斜する方向に延在していてもよい。
【0054】
上記の実施形態では、駆動源としてモータ13を備える構成としているが、駆動源はモータに限定されず、油圧シリンダ等その他の駆動源を備えるものでもよい。また、連結部可変機構は、例えば、ボールねじ、ラックアンドピニンオン機構等のその他の機構を含むものでもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、浮体2が上向き姿勢である場合に、コントローラ22は、連結部11を浮体2の重心Gに接近させているが、コントローラ22は、浮体2が上向き姿勢である場合において、連結部11を重心Gから離間させて、浮体2の姿勢を調整してもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、浮体2が下向き姿勢である場合に、コントローラ22は、連結部11を浮体2の重心Gから離間させているが、コントローラ22は、浮体2が下向き姿勢である場合において、連結部11を重心Gに接近させて、浮体2の姿勢を調整してもよい。
【0057】
また、浮体2の長手方向に延在する直線L1が基準線L0に沿うように配置されている場合において、姿勢調整機構10は、連結部11の位置を移動させて、浮体2の姿勢を調整してもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、シャフト15及び連結部11が、浮体2の長手方向において、重心Gよりも前側に配置されている場合について例示しているが、シャフト15及び連結部11は、浮体2の長手方向において、重心Gよりも後側に配置されていてもよい。また、シャフト15及び連結部11は、浮体2の長手方向において、重心Gに対して、タービン3とは反対側に配置されていてもよく、重心Gとタービン3との間に、シャフト15及び連結部11が配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 水流発電装置(浮遊式水流発電装置)
2 浮体
2a 浮体の前部
2b 浮体の後部
3 タービン(発電タービン)
4 係留索
8 回転軸(発電タービンの回転軸)
10 姿勢調整機構
11 連結部
12 連結部可変機構
13 モータ(駆動源)
15 シャフト(駆動軸)
16 軸封部
20 底部壁体
21 貫通部
22 コントローラ
23 姿勢センサ
G 浮体の重心
L1 浮体の長手方向に延在する直線
L2 軸線(駆動軸の軸線)