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  • 特許-戸別受信機及び緊急通報方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】戸別受信機及び緊急通報方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20221220BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G08B27/00 C
G10K11/178 120
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019005702
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020113223
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 康英
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170018(JP,A)
【文献】特開2018-36327(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118218(WO,A1)
【文献】特開2001-296874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B23/00-31/00
G10K11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局からの緊急通報の無線電波を受信するアンテナと、
前記緊急通報を屋内に音声として出力するスピーカと、
窓の屋内側に外向きに設置されて前記窓から侵入する音を入力する接触型マイクと、
前記窓の屋内側に外向きに設置されて前記接触型マイクが入力した音の逆特性の音を出力する振動スピーカと、
前記振動スピーカが低減した後の前記窓から侵入する音を入力する誤差集音マイクと、
前記無線電波を前記音声に変換し、前記接触型マイクが入力した音に基づいて前記逆特性の音を生成し、前記誤差集音マイクが入力した音を用いて、前記振動スピーカの発音をフィードフォワード制御し、前記スピーカの発音をフィードバック制御する本体部と
を備える戸別受信機。
【請求項2】
前記本体部は、
前記アンテナで受信した無線電波を処理して受信信号とする受信部と、
前記受信信号を復調して音声信号とする音声復調部と、
前記接触型マイクが入力した音から前記逆特性の音を生成する位相反転部と、
前記フィードフォワード制御及び前記フィードバック制御を行う適応制御部と、
前記適応制御部の前記フィードフォワード制御に従って、前記振動スピーカの発音の位相及び振幅を調整する適応フィルタと、
前記適応制御部のフィードバック制御に従って、前記誤差集音マイクが入力した音の位相を制御する位相制御部と、
前記音声信号と、前記位相制御した音の信号とをミキシングするミキサーとを有する
請求項1記載の戸別受信機。
【請求項3】
アンテナが受信した親局からの緊急通報の無線電波を音声に変換し、スピーカを介して屋内に出力するステップと、
窓の屋内側に外向きに設置された接触型マイクを介して前記窓から侵入する音を入力し、逆特性の音を生成し、前記窓の屋内側に外向きに設置された振動スピーカを介して出力するステップと、
前記振動スピーカが低減した後の前記窓から侵入する音を誤差集音マイクを介して入力するステップと、
前記誤差集音マイクが入力した音を用いて、前記振動スピーカの発音をフィードフォワード制御し、前記スピーカの発音をフィードバック制御するステップとを有する
緊急通報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は戸別受信機及び緊急通報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市町村防災デジタル同報無線システムは、地震や津波が発生したとき、ミサイルが発射されたときなどに、住民に対して緊急告知(緊急通報)を行うためのものであって、市役所、町役場などに設置される親局と、屋外に設置されて親局から配信された音声を拡声放送する屋外拡声子局と、各家庭に設置される戸別受信機(例えば、防災ラジオなど)とで構成される。
【0003】
このうち、屋外拡声子局の音声は、音源が複数あったり、音が反射したりして発生するエコーにより聞き取りにくいことがあるため、音声が聞き取りやすい戸別受信機の普及が望まれている。
戸別受信機は緊急通報時に音量を強制的に最大化してユーザに注意を喚起する仕組みになっている。しかしながら、豪雨などにより屋外の騒音が大きい場合は、最大音量でも明瞭に聞き取れないことがある。
そこで、例えば、特許文献1記載の騒音低減装置を導入して屋外から屋内に侵入してくる騒音の量を低減することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-296874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、屋外から屋内に侵入してくる騒音の量を低減しきれないことがあって、緊急通報を聞き取りやすくするための更なる工夫が必要であった。
本開示の目的は、このような問題を解決するためになされたもので、屋外から屋内に侵入してくる騒音の量を二重に低減し、屋内で緊急通報を聞き取りやすくすることができる戸別受信機及び緊急通報方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る戸別受信機は、親局からの緊急通報の無線電波を受信するアンテナと、緊急通報を屋内に音声として出力するスピーカと、窓の屋内側に外向きに設置されて窓から侵入する音を入力する接触型マイクと、窓の屋内側に外向きに設置されて接触型マイクが入力した音の逆特性の音を出力する振動スピーカと、振動スピーカが低減した後の窓から侵入する音を入力する誤差集音マイクと、無線電波を音声に変換し、接触型マイクが入力した音に基づいて逆特性の音を生成し、誤差集音マイクが入力した音を用いて、振動スピーカの発音をフィードフォワード制御し、スピーカの発音をフィードバック制御する本体部とを備えるものである。
【0007】
また、本発明に係る緊急通報方法は、アンテナが受信した親局からの緊急通報の無線電波を音声に変換し、スピーカを介して屋内に出力するステップと、窓の屋内側に外向きに設置された接触型マイクを介して窓から侵入する音を入力し、逆特性の音を生成し、窓の屋内側に外向きに設置された振動スピーカを介して出力するステップと、振動スピーカが低減した後の窓から侵入する音を誤差集音マイクを介して入力するステップと、誤差集音マイクが入力した音を用いて、振動スピーカの発音をフィードフォワード制御し、スピーカの発音をフィードバック制御するステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、屋外から屋内に侵入してくる騒音の量を二重に低減し、屋内で緊急通報を聞き取りやすくする戸別受信機及び緊急通報方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る戸別受信機1の概略構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る戸別受信機1の動作手順を示すフローチャートである。
図3】実施の形態に係る屋外の音と振動スピーカ40から出力する打消し用の音との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態に係る戸別受信機について説明する。
まず、本実施の形態に係る戸別受信機の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る戸別受信機1の概略構成を示す図である。
戸別受信機1は、例えば、家屋(又は、建物)の窓の屋内側に設置されるもので、アンテナ10、スピーカ20、接触型マイク30、振動スピーカ40、誤差集音マイク50、本体部60などを備える。
【0011】
アンテナ10は、親局からの緊急通報の無線電波を受信する。
スピーカ20は、当該緊急通報を屋内に向けて音声として出力する。
接触型マイク30は、窓に外向きに設置されて窓から侵入する音を入力する。
振動スピーカ40は、やはり、窓に接触するように外向きに設置され、接触型マイク30が入力した音の逆特性、すなわち、逆位相かつ同振幅の音で当該窓を振動し、窓から屋内に入る音を低減する。
【0012】
誤差集音マイク50は、振動スピーカ40が低減した後に窓から侵入する音を入力する。
本体部60は、アンテナ10が受信した緊急通報の無線電波を音声に変換し、接触型マイク30が入力した音の逆特性の音を発生し、誤差集音マイク50が入力した屋内の音を適応制御して、振動スピーカ40の発音をフィードフォワード制御し、スピーカ20の発音をフィードバック制御する。
【0013】
このために、本体部60は、受信部61、音声復調部62、位相反転部63、適応制御部64、適応フィルタ65、位相制御部66、ミキサー67などを有する。
受信部61は、アンテナ10で受信した無線電波を処理して受信信号とする。
音声復調部62は、当該受信信号を復調して音声信号にする。
位相反転部63は、接触型マイク30が入力した音からその逆特性の音を発生する。
適応制御部64は、適応制御(フィードフォワード制御、フィードバック制御)を行う。
【0014】
適応フィルタ65は、適応制御部64の適応制御(フィードフォワード制御)に従って、振動スピーカ40の発音の位相及び振幅を調整する。
位相制御部66は、適応制御部64の適応制御(フィードバック制御)に従って、誤差集音マイク50が入力した音の位相を制御する
ミキサー67は、音声復調部62が復調した音声信号と、位相制御部66が位相制御した音信号とをミキシングする。
【0015】
このような構成により、本実施の形態に係る戸別受信機1は、屋外から屋内に侵入してくる騒音の量を二重に低減し、屋内で緊急通報を聞き取りやすくすることができる。
【0016】
なお、本体部60が実現する各構成要素は、例えば、コンピュータである本体部60が備える演算装置(図示せず)の制御によって、プログラムを実行させることにより実現できる。
【0017】
具体的には、本体部60は、記憶部(図示せず)に格納されたプログラムを主記憶装置(図示せず)にロードし、演算装置の制御によってプログラムを実行して実現する。また、各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせなどにより実現しても良い。
【0018】
上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、本体部60に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。
【0019】
非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0020】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によって本体部60に供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバなどの有線通信路、または無線通信路を介して、プログラムを本体部60に供給できる。
【0021】
次に、本実施の形態に係る戸別受信機の動作、すなわち、緊急通報方法について説明する。
図2は、本実施の形態に係る戸別受信機1の動作手順を示すフローチャートである。
戸別受信機1は、アンテナ10を介して親局からの緊急通報の無線電波を受信する(ステップS10)と、接触型マイク30が屋外の音を入力し(ステップS20)、位相反転部63でその逆特性の音を発生し(ステップS30)、振動スピーカ40から出力して(ステップS40)、屋外の音を窓で軽減する。
【0022】
図3は、本実施の形態に係る屋外の音と振動スピーカ40から出力する打消し用の音との関係を示す図である。これらの音は位相及び振幅が逆になっており、重ね合わせることで消音することができる。
次に、誤差集音マイク50で振動スピーカ40が低減した後に窓から侵入した屋外の音を入力し(ステップS50)、適応制御部64で当該屋外の音に基づいて逆特性の音の位相を適応フィルタ65を介して適応制御(フィードフォワード制御)し、振動スピーカ40から出力する(ステップS60、ステップS70)。
【0023】
また、適応制御部64で誤差集音マイク50が入力した屋外の音の位相を位相制御部66を介して適応制御(フィードバック制御)し(ステップS80、ステップS90)、ミキサー67で緊急通報の音とミキシングし(ステップS100)、スピーカ20から屋内に向けて出力する(ステップS110)。
【0024】
このような動作により、本実施の形態に係る戸別受信機1は、屋外から屋内に侵入してくる騒音の量を二重に低減し、屋内で緊急通報を聞き取りやすくすることができる。
また、戸別受信機1は、緊急通報の無線電波を受信しているとき以外は、屋外の音を低減することはせず、屋内の人が屋外の音を聞こえるようにする。
【0025】
なお、本実施の形態に係る戸別受信機1では、種々の変更が可能である。
例えば、上記の説明では、戸別受信機1を家屋の窓の屋内側に設置する一体型のものとしたが、接触型マイク30、位相反転部63、振動スピーカ40などを戸別受信機1から分離して家屋の窓の屋内側に設置し、戸別受信機1を当該窓から離れたところに設置しても良い。
【0026】
以上、説明したように、本実施の形態に係る戸別受信機1は、親局からの緊急通報の無線電波を受信するアンテナ10と、緊急通報を屋内に音声として出力するスピーカ20と、窓の屋内側に外向きに設置されて窓から侵入する音を入力する接触型マイク30と、窓の屋内側に外向きに設置されて接触型マイク30が入力した音の逆特性の音を出力する振動スピーカ40と、振動スピーカ40が低減した後の窓から侵入する音を入力する誤差集音マイク50と、無線電波を音声に変換し、接触型マイク30が入力した音に基づいて逆特性の音を生成し、誤差集音マイク50が入力した音を用いて、振動スピーカ40の発音をフィードフォワード制御し、スピーカ20の発音をフィードバック制御する本体部60とを備えるものである。
【0027】
また、本実施の形態に係る戸別受信機は、本体部60が、アンテナ10で受信した無線電波を処理して受信信号とする受信部61と、受信信号を復調して音声信号とする音声復調部62と、接触型マイク30が入力した音から逆特性の音を生成する位相反転部63と、フィードフォワード制御及びフィードバック制御を行う適応制御部64と、適応制御部64のフィードフォワード制御に従って、振動スピーカ40の発音の位相及び振幅を調整する適応フィルタ65と、適応制御部64のフィードバック制御に従って、誤差集音マイク50が入力した音の位相を制御する位相制御部66と、音声信号と、位相制御した音の信号とをミキシングするミキサー67とを有することが好ましい。
【0028】
また、本実施の形態に係る緊急通報方法は、アンテナが受信した親局からの緊急通報の無線電波を音声に変換し、スピーカを介して屋内に出力するステップと、窓の屋内側に外向きに設置された接触型マイクを介して窓から侵入する音を入力し、逆特性の音を生成し、窓の屋内側に外向きに設置された振動スピーカを介して出力するステップと、振動スピーカが低減した後の窓から侵入する音を誤差集音マイクを介して入力するステップと、誤差集音マイクが入力した音を用いて、振動スピーカの発音をフィードフォワード制御し、スピーカの発音をフィードバック制御するステップとを有するものである。
【符号の説明】
【0029】
1 戸別受信機
10 アンテナ
20 スピーカ
30 接触型マイク
40 振動スピーカ
50 誤差集音マイク
60 本体部
61 受信部
62 音声復調部
63 位相反転部
64 適応制御部
65 適応フィルタ
66 位相制御部
67 ミキサー
図1
図2
図3