(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】塗料組成物、硬化物及び成形物
(51)【国際特許分類】
C09D 167/00 20060101AFI20221220BHJP
C09D 161/20 20060101ALI20221220BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20221220BHJP
【FI】
C09D167/00
C09D161/20
C09D7/47
(21)【出願番号】P 2019009853
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2018011286
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝介
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 滋
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-130571(JP,A)
【文献】特開平08-325347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール(A)、及びアミノ樹脂(B)を固形分の重量比率(A)/(B)=50/50~95/5で含有する塗料組成物であり、
(A)成分が、-70℃以上20℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルポリオール(A1)を、(A)成分の総重量に対して少なくとも50重量%以上含有
し、
(A)成分が、20℃以上80℃以下のガラス転移温度を有するポリエステルポリオール(A2)を含有し、
(A)成分における(A1)成分及び(A2)成分の固形分の重量比率が50/50~99/1であり、
(A2)成分の水酸基価が43~200mgKOH/gである、
塗料組成物。
【請求項2】
更に、酸触媒(C)を含有する請求項
1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
更に、表面調整剤(D)を含有する請求項
1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
更に、有機溶剤(E)を含有する請求項
1~3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれかに記載の塗料組成物の硬化物。
【請求項6】
基材の少なくとも片面に、請求項
5に記載の硬化物を有する成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、硬化物及び成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、自動車用部品等の各種工業製品には、ABS、ポリカーボネート等のプラスチック基材が用いられており、その表面には、製品の輸送時や組み立て時、特に使用時に製品表面に偶発的に生じる多数の擦傷や汚れから製品を保護し、美観や意匠性を維持するためにコーティングが施されている。これらのコーティングには、その目的から各種基材に対する密着性、傷に対する耐性、薬品等による汚染に対する耐性等が求められる。
【0003】
塗料皮膜の傷や汚れを生じにくくするための方法として、プラスチック基材を紫外線硬化型樹脂等でハードコートする方法が用いられることがある。しかし、このようなハードコートでは硬化時の塗料皮膜収縮により基材との密着性が不十分であり、塗料皮膜が硬くて脆いことからクラックや割れが発生しやすいといった問題がある。
【0004】
このような問題を解消する方法として、生じた傷が短時間で消失する自己修復性の塗料皮膜を各種基材の表面に形成できる塗料組成物が開示されている。そのような塗料組成物として例えば、特許文献1のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示された塗料組成物は各種基材に対して良好な密着性を示し塗料皮膜にクラックや割れが生じることもなく、擦傷に対しても良好な耐性を示すが、防汚性に改良の余地があった。
【0007】
本発明は、金属ブラシ等により強い力で傷をつけても、生じた傷が経時で消失する自己修復性を有し、かつ防汚性も有する塗料皮膜を形成する塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリエステルポリオール及びアミノ樹脂を特定の固形分の重量比率で含有する塗料組成物を用いることにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の項1~項7に関する。
【0010】
項1. ポリエステルポリオール(A)、及びアミノ樹脂(B)を固形分の重量比率(A)/(B)=50/50~95/5で含有する塗料組成物であり、
(A)成分が、-70℃以上20℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルポリオール(A1)を、(A)成分の総重量に対して少なくとも50重量%以上含有する塗料組成物。
【0011】
項2. 更に、(A)成分が、20℃以上80℃以下のガラス転移温度を有するポリエステルポリオール(A2)を含有し、
(A)成分における(A1)成分及び(A2)成分の固形分の重量比率が50/50~99/1である前項1に記載の塗料組成物。
【0012】
項3. 更に、酸触媒(C)を含有する前項1又は2に記載の塗料組成物。
【0013】
項4. 更に、表面調整剤(D)を含有する前項1~3のいずれかに記載の塗料組成物。
【0014】
項5. 更に、有機溶剤(E)を含有する前項1~4のいずれかに記載の塗料組成物。
【0015】
項6. 前項1~5のいずれかに記載の塗料組成物の硬化物。
【0016】
項7. 基材の少なくとも片面に、前項6に記載の硬化物を有する成形物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗料組成物を使用することで、各種基材の表面に自己修復性の塗料皮膜を形成でき、その表面に生じた傷を経時で消失できるだけでなく、防汚性を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ポリエステルポリオール(A)(以下、(A)成分という)及びアミノ樹脂(B)(以下、(B)成分という)を含有する塗料組成物である。なお、本発明の塗料組成物を使用した塗料皮膜は各種基材に対する密着性に優れる他、耐溶剤性、耐ブロッキング性、耐湿熱性にも優れる。それゆえ、本発明の塗料組成物は、プラスチック基材のみに限らず、鋼鈑、蒸着層、メッキ層等の金属素材へのコーティング、複雑な形状への追従が必要なインモールド成形、フィルムインサート成形、真空圧空成形等の加飾フィルムへのコーティング等にも応用可能である。以下、各成分について詳細に説明する。
【0019】
<(A)成分について>
(A)成分は、-70℃以上20℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルポリオール(A1)(以下、(A1)成分という)を、(A)成分の総重量に対して少なくとも50重量%以上含有する。
【0020】
<(A1)成分について>
(A1)成分は、塗料皮膜が自己修復性に優れることから-70℃以上20℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルポリオールであれば特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(A1)成分のガラス転移温度は、塗料皮膜の自己修復性及び防汚性の点で、好ましくは-70℃以上10℃以下であり、より好ましくは-70℃以上5℃以下であり、さらにより好ましくは-65℃以上5℃以下である。(A1)成分のガラス転移温度が-70℃未満のポリエステルポリオールの合成は現実的に難しく、20℃以上の場合、塗料皮膜が自己修復性を示さなくなる。
【0021】
(A1)成分としては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸(a1-1)(以下、(a1-1)成分という)及びジオール(a1-2)(以下、(a1-2)成分という)、必要に応じて、3官能以上のカルボン酸(a1-3)(以下、(a1-3)成分という)、3官能以上の水酸基を有する化合物(a1-4)(以下、(a1-4)成分という)を反応させてなる、分岐していてもよいポリエステルポリオールが好適である。(A1)成分は単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
(a1-1)成分としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(a1-1)成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、当該芳香族ジカルボン酸のジエステル化合物;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、当該脂肪族ジカルボン酸のジエステル化合物;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、当該脂環族ジカルボン酸のジエステル化合物が挙げられる。これらを単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
(a1-2)成分としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(a1-2)成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール;ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール等の分岐状脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマー酸を水素化して得られるジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等の脂環族ジオール等;カテコール、キシリレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等の芳香族ジオール等の低分子ジオールの他、イソソルビド、オリゴマージオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール等の高分子ジオールが挙げられる。これらを単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。(a1-2)成分としては、(A1)成分のガラス転移温度を考慮すると脂肪族ジオールを使用することが好ましい。
【0024】
(a1-3)成分としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(a1-3)成分としては、例えば、トリメリット酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、トリメリット酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸無水物、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物等の3官能以上のカルボン酸が挙げられる。これらを単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
(a1-4)成分としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(a1-4)成分としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、オリゴマーポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等の高分子ポリオール等が挙げられる。これらを単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
(a1-1)~(a1-4)成分の使用量は、得られる(A1)成分のガラス転移温度を考慮して適宜決定すればよい。例えば、(a1-1)成分及び(a1-3)成分の合計モル数、並びに(a1-2)成分及び(a1-4)成分の合計モル数の比率が1:1程度であり、かつ、(a1-1)~(a1-4)成分の合計モル数における(a1-3)成分と(a1-4)成分との合計モル数が好ましくは1~40%程度、より好ましくは1~35%であり、さらにより好ましくは1~30%である。
【0027】
(A1)成分は、各種公知の方法で製造でき、原料を一括で反応させても、逐次的に反応させても良い。製造条件も特に限定されないが、例えば、温度が通常150~280℃程度、時間が通常15~30時間程度である。また、製造は常圧下又は減圧下で行えるが、減圧条件の変更によっても(A1)成分の物性を調節することが可能となる。また、テトラブチルチタネート、三酸化アンチモンや酸化ジブチルスズ等の触媒も適宜使用できる。
【0028】
(A1)成分の水酸基価は、特に限定されないが、塗料皮膜の自己修復性及び防汚性の点で、好ましくは2~400mgKOH/gであり、より好ましくは10~350mgKOH/gであり、さらにより好ましくは10~310mgKOH/gである。
【0029】
(A1)成分の含有量は、自己修復性に優れることから、(A)成分の総重量100重量%に対して少なくとも50重量%以上であり、好ましくは55重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上である。
【0030】
<(A2)成分について>
更に、(A)成分は、塗料皮膜の耐ブロッキング性、防汚性及び耐溶剤性の点で、20℃以上80℃以下のガラス転移温度を有するポリエステルポリオール(A2)(以下、(A2)成分という)を含有することが望ましい。
【0031】
(A2)成分としては、塗料皮膜が耐ブロッキング性、防汚性及び耐溶剤性に優れることから20℃以上80℃以下のガラス転移温度を有するポリエステルポリオールであれば特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(A2)成分のガラス転移温度は、塗料皮膜の耐ブロッキング性及び防汚性の点で好ましくは25℃以上80℃以下であり、より好ましくは25℃以上70℃以下である。(A2)成分のガラス転移温度が、80℃超過の場合、現実的には合成が困難である。
【0032】
(A2)成分としては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸(a2-1)(以下、(a2-1)成分という)及びジオール(a2-2)(以下、(a2-2)成分という)、必要に応じて3官能以上のカルボン酸(a2-3)(以下、(a2-3)成分という)、3官能以上の水酸基を有する化合物(a2-4)(以下、(a2-4)成分という)を反応させてなる、分岐していてもよいポリエステルポリオールが好適である。(A2)成分は1種を単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
(a2-1)~(a2-4)成分としては、例えば、前記(a1-1)~(a1-4)成分と同一のものが使用できる(複合同順)。また、(a2-2)成分としては、(A2)成分のガラス転移温度を考慮すると脂肪族ジオール及び/又は芳香族ジオールを使用することが好ましい。
【0034】
(a2-1)~(a2-4)成分の使用量は、得られる(A2)成分のガラス転移温度を考慮して適宜決定すればよい。例えば、(a2-1)成分及び(a2-3)成分の合計モル数、並びに(a2-2)成分及び(a2-4)成分の合計モル数の比率が1:1程度であり、かつ、(a2-1)~(a2-4)成分の合計モル数における(a2-3)成分と(a2-4)成分との合計モル数が好ましくは0~40%程度、さらに好ましくは0~30%である。
【0035】
(A2)成分は各種公知の方法で製造でき、その製造条件等は(A1)成分の製造方法に記載のとおりである。
【0036】
(A2)成分の水酸基価は、特に限定されないが、塗料皮膜の自己修復性及び防汚性の点で、好ましくは2~250mgKOH/gであり、より好ましくは10~200mgKOH/gである。
【0037】
(A1)成分及び(A2)成分の固形分の重量比率としては、特に限定されないが、塗料皮膜の自己修復性及び防汚性の点で、好ましくは50/50~99/1であり、より好ましくは55/45~95/5であり、さらにより好ましくは60/40~95/5である。(A2)成分の固形分の重量比率が50を上回ると塗料皮膜が硬くなり、自己修復性がなくなる。
【0038】
また、(A)成分の水酸基価は、特に限定されないが、塗料皮膜の自己修復性、防汚性及び耐溶剤性の点で、好ましくは2~400mgKOH/gであり、より好ましくは10~350mgKOH/gであり、さらにより好ましくは10~310mgKOH/gである。
【0039】
(A)成分は、(A1)成分に加えて、又は、(A1)成分と(A2)成分に加えて、さらに-70℃未満又は80℃超のガラス転移温度を有するポリエステルポリオールを、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
【0040】
<(B)成分について>
(B)成分は、アミノ基をもつ化合物、たとえば尿素、メラミン、グアナミン等とホルムアルデヒドの反応から得られる樹脂の総称である。(B)成分を使用することで、塗料皮膜の防汚性及び耐溶剤性に優れる。
【0041】
(B)成分としては、特に限定されず、例えば、メラミン樹脂(B1)(以下、(B1)成分という)、グアナミン樹脂(B2)(以下、(B2)成分という)、尿素樹脂(B3)(以下、(B3)成分という)等が挙げられる。(B)成分は、(B1)~(B3)成分の中から1種を単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。(B)成分としては、塗料皮膜の防汚性及び耐溶剤性の点で、好ましくは(B1)成分及び/又は(B2)成分であり、より好ましくは(B1)成分である。
【0042】
(B1)成分としては、特に限定されず、例えば、メチル化メラミン樹脂、ノルマルブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、オクチル化メラミン樹脂、メチル-ブチル混合アルキル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂;メチロール基含有メチル化メラミン樹脂、メチロール基含有ブチル化メラミン樹脂等のメチロール基含有アルキル化メラミン樹脂;イミノ基含有メチル化メラミン樹脂、イミノ基含有ブチル化メラミン樹脂等のイミノ基含有アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。これらを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。(B1)成分としては、塗料皮膜の防汚性の点で、好ましくはアルキル化メラミン樹脂であり、より好ましくはメチル化メラミン樹脂である。
【0043】
(B1)成分は、市販されている製品を使用してもよい。当該製品としては、特に限定されず、例えば、メチル化メラミン樹脂(商品名「アミディア(登録商標)」、品番名「L-105-60」、DIC(株)製)、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂(商品名「CYMEL(登録商標)(以下、「サイメル」ともいう。) 303 LF resin」、Allnex Japan Inc.製)、メチロール基含有メチル化メラミン樹脂(商品名「CYMEL 370 resin」、Allnex Japan Inc.製)、イミノ基含有メチル化メラミン樹脂(商品名「CYMEL 325 resin」、Allnex Japan Inc.製)、ブチル化メラミン樹脂(商品名「アミディア」、品番名「J-820-60」「G-821-60」「L-166-60B」等、いずれもDIC(株)製)等が挙げられる。なお、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂とは、メラミン樹脂中のアミノ基が高度にメチル化されたものを主成分とするもののことである。
【0044】
(B2)成分としては、特に限定されず、例えば、メチル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等のアルキル化ベンゾグアナミン樹脂;ベンゾグアナミン樹脂;アセトグアナミン樹脂;スピログアナミン樹脂等が挙げられる。これらを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。(B2)成分としては、塗料皮膜の防汚性の点で、好ましくはベンゾグアナミン樹脂又はアルキル化ベンゾグアナミン樹脂であり、さらにより好ましくはメチル化ベンゾグアナミン樹脂又はブチル化ベンゾグアナミン樹脂である。
【0045】
(B2)成分は、市販されている製品を使用してもよい。当該製品としては、特に限定されず、例えば、メチル化ベンゾグアナミン樹脂(商品名「BL-60」、(株)三和ケミカル製)、n-ブチル化ベンゾグアナミン樹脂(商品名「アミディア」、品番名「TD-126」、DIC(株)製)、イソブチル化ベンゾグアナミン樹脂(商品名「アミディア」、品番名「15-594」、DIC(株)製)等が挙げられる。
【0046】
(B3)成分としては、特に限定されず、例えば、メチル化尿素樹脂、及びブチル化尿素樹脂等のアルキル化尿素樹脂;チオ尿素樹脂等が挙げられる。これらを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
(B3)成分は、市販されている製品を使用してもよい。当該製品としては、特に限定されず、例えば、メチル化尿素樹脂(商品名「ニカラック」、品番名「MX-270」、三和ケミカル(株)製)、ブチル化尿素樹脂(商品名「アミディア」、品番名「P-138」「P-196-M」等、いずれもDIC(株)製、商品名「ニカラック」、品番名「MX-279」等、三和ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0048】
(A)成分と(B)成分の固形分の重量比率としては、塗料皮膜が自己修復性、耐ブロッキング性、耐溶剤性、耐湿熱性及び防汚性に優れることから(A)/(B)=50/50~95/5であり、好ましくは55/45~90/10であり、より好ましくは55/45~85/15である。(A)成分の固形分の重量比率が50未満であると塗料皮膜が硬くなり自己修復性が損なわれ、(A)成分の固形分の重量比率が95を上回ると塗料皮膜の硬化が不十分であり防汚性及び耐溶剤性が損なわれる。
【0049】
<(C)成分について>
本発明の塗料組成物には、更に酸触媒(C)(以下、(C)成分という)を含んでもよい。(C)成分が含まれることにより、塗料被膜を形成する際、より低温での硬化(低温焼付)が可能となり、産業上のコストの面から好ましい。
【0050】
(C)成分としては、特に限定されず、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸化合物;シュウ酸;塩酸;硫酸;リン酸;酢酸;硝酸;クエン酸;グリコール酸;乳酸;マロン酸;コハク酸;マレイン酸;サリチル酸;フマル酸;フッ化水素;これらの酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等);これらの酸の錯体(例えばエーテル錯体等);これらの酸の水和物;加熱により酸が遊離されるブロック酸触媒;酸エステル;酸とエポキシド官能性化合物との反応生成物等が挙げられる。酸触媒は、溶媒に溶解された液体状であってもよく、固体状であってもよい。これら(C)成分を単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。(C)成分は、活性の点で、好ましくはパラトルエンスルホン酸又はその水和物である。なお、この活性とは、化学反応における触媒の反応促進能力のことである。
【0051】
(C)成分の含有量は、特に限定されず、通常、(A)成分100重量%に対して固形分換算で0~5重量%程度、好ましくは0.1~3重量%となる範囲で使用する。
【0052】
<(D)成分について>
本発明の塗料組成物は、主に塗装時のレベリング性や塗料皮膜の耐ブロッキング性を向上させる目的で、各種公知の表面調整剤(D)(以下、(D)成分という)を含んでもよい。
【0053】
(D)成分としては、特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、シリコーン変性アクリルポリマー等のシリコーン系表面調整剤;フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系表面調整剤;パーフルオロアルキル変性シリコーン等のシリコーン-フッ素系表面調整剤;ウレタン変性アクリルポリマー、ポリエステル変性アクリルポリマー、パーフルオロアルキル変性アクリルポリマー等のアクリル系表面調整剤等が挙げられる。これらを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
(D)成分の含有量は、通常、(A)成分100重量%に対して固形分換算で0~7重量%程度、好ましくは0.1~5重量%となる範囲で使用する。
【0055】
<(E)成分について>
本発明の塗料組成物は、各種公知の有機溶剤(E)(以下、(E)成分という)に溶解した溶液状態としても利用できる。
【0056】
(E)成分としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ぎ酸エチル、プロピオン酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等のエステル系有機溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤;水等が挙げられる。これらを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。中でも(A1)成分及び(A2)成分に対する溶解性の点より炭化水素系有機溶剤及び/又はケトン系有機溶剤が好ましい。
【0057】
(E)成分の使用量は、特に限定されないが、通常は本発明の塗料組成物の不揮発分が0~70重量%程度であり、好ましくは20~70重量%程度となる量で使用すればよい。
【0058】
<その他配合可能な剤>
本発明の塗料組成物には、更に、顔料、アクリル樹脂、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の各種公知の樹脂、シリカ等のフィラー、充填剤、離型剤、難燃剤、密着付与剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、消泡剤、着色剤、安定剤等を配合できる。
【0059】
<硬化物>
塗料組成物の硬化物もまた本発明の1つである。硬化方法としては、特に限定されず、例えば乾燥機等を用いて熱硬化する方法等が挙げられる。熱硬化の条件も特に限定されないが、通常は70~280℃程度、1分~1時間程度である。
【0060】
<塗料皮膜及び塗工方法>
硬化物を塗料皮膜として用いた場合、塗料皮膜の膜厚は、塗料皮膜の良好な自己修復性及び乾燥性の点で、好ましくは3~200μmであり、より好ましくは10~50μmである。塗料皮膜は、耐擦傷性や防汚性に優れるので、各種基材のトップコートに好適に用いることができる。塗料皮膜形成における塗工方法としては、スプレー法、ナチュラルロールコート法、リバースロールコート、カーテンフローコート法等が挙げられる。塗工量は通常10~30g/m2程度である。
【0061】
<成形物>
硬化物を有する成形物もまた本発明の1つである。成形物としては、特に限定されず、プラスチック筐体等の各種プラスチック部品、冷蔵庫等の家電製品、タッチパネルの画面保護フィルム等が挙げられる。顔料等により着色された基材においては傷や汚れが目立ち易いことから、プラスチック部品に対して好適である。
【0062】
<適用可能な基材>
本発明の塗料組成物は、金属、プラスチック、フィルム、ガラス等の各種基材に適用できる。金属としては、鉄、アルミニウム、アルミめっき鋼板、チンフリー鋼板(TFS)、ステンレス鋼板、リン酸亜鉛処理鋼板、亜鉛・亜鉛合金めっき鋼板(ボンデ鋼板)等の処理鋼板が挙げられる。また、プラスチックとしては、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル、FRP等が挙げられる。フィルムとしては、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの合成例、実施例のみに限定されるものではない。なお、各例中、部は特記しない限り重量基準である。
【0064】
各合成例において、水酸基価はJIS K0070に準じて求めた値であり、ガラス転移温度は市販の測定装置(商品名「EXSTAR6000 DSC 6200」、セイコーインスツル(株)製)を用いて得た値である。
【0065】
[(A1)成分の製造]
合成例1
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、イソフタル酸417.4部、アジピン酸448.7部、エチレングリコール67.6部、1,6-ヘキサンジオール471.5部、トリメチロールプロパン194.8部仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、180℃にて1.0kPa以下で3時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が-25℃、水酸基価が114mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A1-1)(以下、(A1-1)成分という)を得た。表1に詳細な組成及び物性を示す。
【0066】
合成例2
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、イソフタル酸456.3部、アジピン酸401.3部、エチレングリコール66.5部、1,6-ヘキサンジオール548.2部、トリメチロールプロパン127.8部仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、225℃にて1.0kPa以下で3時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が-25℃、水酸基価が78mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A1-2)(以下、(A1-2)成分という)を得た。表1に詳細な組成及び物性を示す。
【0067】
(A1-3)成分として、市販のポリカプロラクトントリオール(商品名「プラクセル305」、(株)ダイセル製)を用いた。表1に詳細な物性を示す。
【0068】
合成例3
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、イソフタル酸493.7部、アジピン酸425.5部、トリメリット酸無水物7.6部、エチレングリコール143.8部、2-メチル1,3-プロパンジオール208.8部、ネオペンチルグリコール313.6部、トリメチロールプロパン6.9部仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに2時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.04部を加え、30分保温した後、235℃にて1.0kPa以下で6時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が0℃、水酸基価が12mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A1-4)(以下、(A1-4)成分という)を得た。表1に詳細な組成及び物性を示す。
【0069】
合成例4
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル166.8部、エチレングリコール80.8部、ネオペンチルグリコール104.8部、ブチルエチルプロパンジオール494.2部、シクロヘキサンジメタノール42.7部、トリメチロールプロパン21.2部、酢酸亜鉛2水和物0.09部仕込み、加熱溶融して留出するメタノールを系外に除きながら210℃まで反応系を徐々に昇温させ、さらに2時間保持した。その後、テレフタル酸227.0部、セバシン酸322.2部、ヘキサヒドロフタル酸無水物140.4部仕込み、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら250℃まで反応系を徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、240℃にて1.0kPa以下で2時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が5℃、水酸基価が32mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A1-5)(以下、(A1-5)成分という)を得た。表1に詳細な組成及び物性を示す。
【0070】
合成例5
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、アジピン酸868.6部、エチレングリコール71.9部、2-メチル-1,3-プロパンジオール160.1部、1,6-ヘキサンジオール292.0部、トリメチロールプロパン207.4部仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、180℃にて1.0kPa以下で3時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が-50℃、水酸基価が123mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A1-6)(以下、(A1-6)成分という)を得た。表1に詳細な組成及び物性を示す。
【0071】
【表1】
プラクセル305:ポリカプロラクトントリオール
表1中、(a1-1)成分及び(a1-3)成分の使用量は、(a1-1)成分と(a1-3)成分の合計を100モル%としたときの各原料のモル%で示す。また、(a1-2)成分及び(a1-4)成分の使用量は、(a1-2)成分と(a1-4)成分の合計を100モル%としたときの各原料のモル%で示す。
【0072】
[(A2)成分の製造]
合成例6
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸164.3部、イソフタル酸657.3部、エチレングリコール245.5部、2-メチル-1,3-プロパンジオール267.3部、トリメチロールプロパン265.5部仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、220℃にて1.0kPa以下で10時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が38℃、水酸基価が180mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A2-1)(以下、(A2-1)成分という)を得た。表2に詳細な組成及び物性を示す。
【0073】
合成例7
攪拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸251.2部、イソフタル酸544.3部、セバシン酸40.8部、トリメリット酸無水物6.5部、2-メチル-1,3-プロパンジオール230.2部、ネオペンチルグリコール211.4部、ブチルエチルプロパンジオール315.6部仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.16部を加え、30分保温した後、250℃にて1.0kPa以下で4時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が45℃、水酸基価が14mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A2-2)(以下、(A2-2)成分という)を得た。表2に詳細な組成及び物性を示す。
【0074】
合成例8
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸206.7部、イソフタル酸383.9部、エチレングリコール43.0部、ネオペンチルグリコール168.4部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2mol付加物797.9部仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.06部を加え、30分保温した後、235℃にて1.3kPaで2時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が59℃、水酸基価が43mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A2-3)(以下、(A2-3)成分という)を得た。表2に詳細な組成及び物性を示す。
【0075】
合成例9
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル292.0部、エチレングリコール57.9部、2-メチル-1,3-プロパンジオール56.0部、ネオペンチルグリコール129.4部、ブチルエチルプロパンジオール199.6部、シクロヘキサンジメタノール179.2部、トリメチロールプロパン83.4部、酢酸亜鉛2水和物0.16部仕込み、加熱溶融して留出するメタノールを系外に除きながら210℃まで反応系を徐々に昇温させ、さらに2時間保持した。その後、テレフタル酸119.2部、イソフタル酸158.9部、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸123.5部、ヘキサヒドロフタル酸無水物73.7部、セバシン酸96.7部、トリメリット酸無水物30.6部仕込み、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら250℃まで反応系を徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、220℃にて1.0kPa以下で3.5時間減圧重縮合反応を行い、ガラス転移温度が27℃、水酸基価が70mgKOH/gの淡黄色透明状のポリエステルポリオール(A2-4)(以下、(A2-4)成分という)を得た。表2に詳細な組成及び物性を示す。
【0076】
【表2】
表2中、(a2-1)成分及び(a2-3)成分の使用量は、(a2-1)成分と(a2-3)成分の合計を100モル%としたときの各原料のモル%で示す。また、(a2-2)成分及び(a2-4)成分の使用量は、(a2-2)成分と(a2-4)成分の合計を100モル%としたときの各原料のモル%で示す。
【0077】
[塗料組成物の調製]
実施例1
合成例1と同様のフラスコに、(A1-1)成分を60部、(A2-1)成分を40部、サイメル 303 LF resin(Allnex Japan Inc.製)を25部、パラトルエンスルホン酸(商品名「パラトルエンスルホン酸 特号品」、盟友産業(株)製)0.5部、シリコン系表面調整剤(商品名「BYK-SILCLEAN(登録商標)3700」、ビッグケミー・ジャパン(株)製)を3.2部(不揮発分0.8g)、メチルイソブチルケトンを93.6部、メチルエチルケトンを93.6部を仕込み、25℃で1時間撹拌し、不揮発分が40重量%の塗料組成物を調製した。
【0078】
実施例2~4、6、8~13、比較例1~4、及び参考例1~2
原料及び使用量を表3、4に示すように変更した他は実施例1と同様にして不揮発分が40重量%の各塗料組成物を得た。
【0079】
比較例5
合成例1と同様のフラスコに、(A1-2)成分を80部、(A2-3)成分を20部、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(商品名「コロネート(登録商標)2851」、東ソー(株)製)を27.7部、スズ系硬化触媒(商品名「ネオスタン(登録商標)U810」、日東化成(株)製)を0.02部、シリコン系表面調整剤(商品名「BYK-SILCLEAN3700」、ビッグケミー・ジャパン(株)製)を3.2部(不揮発分0.8g)、メチルイソブチルケトンを95.2部、メチルエチルケトンを95.2部を仕込み、25℃で1時間撹拌し、不揮発分が40重量%の塗料組成物を調製した。
【0080】
[塗料皮膜の作製]
評価例1
実施例1の塗料組成物を、乾燥膜厚が20μmとなるようにポリカーボネート(PC)板に、バーコーターで塗布し、140℃の乾燥機で3分間乾燥させて試験片を作成した。実施例1の塗料組成物については、PETフィルム、ボンデ鋼鈑を用いて同様の条件で試験片を作製した。
【0081】
評価例2~4、6、8~13、比較評価例1~4、及び参考評価例1~2
実施例2~4、6、8~13、比較例1~4、及び参考評価例1~2の塗料組成物について、評価例1と同様の条件にて試験片をそれぞれ作製した。
【0082】
比較評価例5
比較例5の塗料組成物について、乾燥膜厚が20μmとなるようにPC板にバーコーターで塗布し、80℃の乾燥機で30分間乾燥させて試験片を作成した。比較例5の塗料組成物についても、PETフィルム、ボンデ鋼鈑を用いて同様の条件で試験片を作製した。
【0083】
[性能評価]
<自己修復性>
25℃において、PC板を用いた試験片の塗料皮膜表面を真鍮ブラシ(アズワン(株)製)で強く擦り、傷をつけた後、塗料皮膜の自己修復性を以下の基準で目視評価し、24時間以内に擦傷跡が消失するものを合格とした。結果を表3及び4に示す。
◎:12時間以内に擦傷痕が消失する。
○:24時間以内に擦傷痕が消失する。
×:24時間経過後も擦傷痕が認められる。
【0084】
<密着性試験>
各試験片について、塗料皮膜面の素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、1mm×1mmのマス目を100個作成した。各試験片の塗料皮膜面にセロハンテープを気泡を含まないように貼り付け、それを急激に剥離した後の塗料皮膜の剥離状態を以下の基準で評価した。結果を表3及び4に示す。
○:100個あるマス目のうち、100個とも剥離しない。
×:100個あるマス目のうち、1~100個が剥離する。
【0085】
<ブロッキング試験>
ボンデ鋼板を用いて作製した試験片について、塗料皮膜面にガーゼを載せた状態でブロッキング試験機(製品名「C0-202永久歪試験機」、テスター産業(株)製)を用い、50℃下で1kgの荷重をかけた。その後、ガーゼを剥がした際にガーゼ跡が塗料皮膜上に残るか否かにより、塗料皮膜の耐ブロッキング性を評価した。結果を表3及び4に示す。
◎:ガーゼ跡が全く残らない
○:若干のガーゼ跡残りがある
×:明らかなガーゼ跡残りがある
【0086】
<耐湿熱性試験>
PC板を用いた試験片について、温度80℃、湿度95%の条件下で400時間保管した後、常温に戻した際の塗料皮膜面の外観を目視評価した。また、自己修復性についても評価した。結果を表3及び4に示す。
(外観)
○:変化なし
×:白濁している
【0087】
(自己修復性)
◎:12時間以内に擦傷痕が消失する。
○:24時間以内に擦傷痕が消失する。
×:24時間経過後も擦傷痕が認められる。
【0088】
<防汚性>
PC板を用いた試験片について、塗料皮膜面に黒色の油性マジック(商品名「アスクル油性マーカー 太字」、ASKUL(株)製)を用いて線幅4.2mmで5cmの直線を引き、25℃で24時間静置後に油性マジックを拭き取り、塗料皮膜面におけるインキの残留の程度を目視評価した。評価結果を表3及び4に示す。
◎:インキが完全に拭き取れる
○:インキがほぼ拭き取れる
×:インキが明瞭に残留する
【0089】
<耐溶剤性>
PETフィルムを用いた試験片について、メチルエチルケトンを含浸させた綿棒を用いて塗料皮膜面の同一箇所を擦り、素地が露出するまで擦った回数にて耐溶剤性を評価した。なお、塗料皮膜面を擦った回数は1往復を1回とし、以下の基準で評価した。
◎:200回以上
○:100回以上~200回未満
×:100回未満
【0090】
【0091】
【表4】
サイメル 303 LF resin:完全アルキル型メチル化メラミン樹脂(Allnex Japan Inc.製)
コロネート 2851:ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(東ソー(株)製)
BYK-SILCLEAN 3700:水酸基含有シリコン変性アクリルポリマー(ビッグケミー・ジャパン(株)製)
PC:ポリカーボネート板(日本テストパネル(株)製)
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック(株)製)
ボンデ鋼鈑:電気亜鉛めっき鋼鈑(日本テストパネル(株)製)