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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】全方向移動台車
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20221220BHJP
   B62D 15/00 20060101ALI20221220BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20221220BHJP
【FI】
B60L9/18 P
B62D15/00
H02P29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019017807
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020127278
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 聡史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148728(JP,A)
【文献】特開2010-029013(JP,A)
【文献】特開2014-033506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60W 10/00-20/50
B62D 15/00
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車部と、
前記台車部の下部に設けられた少なくとも3個の全方向移動車輪と、
それぞれの前記全方向移動車輪を駆動するそれぞれのモータユニットと、
それぞれの前記モータユニットに駆動電流を供給するバッテリと、
それぞれの前記モータユニットの制御量を求め、求めた前記制御量に基づいてそれぞれの前記モータユニットを制御する制御装置と、
を有する、全方向移動台車であって、
前記バッテリの前記モータユニットへ供給可能な電流である供給可能電流を検出するバッテリ状態検出手段を備え、
それぞれの前記全方向移動車輪は、駆動軸線回りに回転する駆動軸に連結された車輪と、接地されている前記車輪が前記駆動軸線方向に移動可能となるように前記車輪の外周に沿って設けられた複数の回転ローラと、を有しており、
それぞれの前記モータユニットは、前記駆動軸を回転させる電動モータと、前記電動モータへ供給する電流を制御するドライバ回路と、を有しており、
前記制御装置は、
前記バッテリ状態検出手段から前記供給可能電流を取得し、
それぞれの前記モータユニットに対応する制御量に基づいて、それぞれの前記モータユニットにて消費される電流であるそれぞれのユニット消費電流を予測し、
予測したそれぞれの前記ユニット消費電流の和である全消費電流を予測し、
前記供給可能電流が、予測した前記全消費電流以下である場合、同時に使用する前記モータユニットの数を制限するバッテリ節約制御を行う、
全方向移動台車。
【請求項2】
請求項1に記載の全方向移動台車であって、
前記制御装置は、
前記バッテリ節約制御を行って前記モータユニットの数を2つに制限する場合、
前記駆動軸線が互いに交差する2つの前記全方向移動車輪を選定し、選定した2つの前記全方向移動車輪を駆動する2つの前記モータユニットを制御する、
全方向移動台車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の全方向移動台車であって、
警報装置を有し、
前記制御装置は、
前記バッテリ節約制御を行って数を制限した前記モータユニットにて予測した前記全消費電流が前記供給可能電流以上であると判定した場合、前記警報装置を用いて警報を出力する、
全方向移動台車。
【請求項4】
台車部と、
前記台車部の下部に設けられた少なくとも3個の全方向移動車輪と、
それぞれの前記全方向移動車輪を駆動するそれぞれのモータユニットと、
それぞれの前記モータユニットに駆動電流を供給するバッテリと、
それぞれの前記モータユニットの制御量を求め、求めた前記制御量に基づいてそれぞれの前記モータユニットを制御する制御装置と、
を有する、全方向移動台車であって、
それぞれの前記全方向移動車輪は、駆動軸線回りに回転する駆動軸に連結された車輪と、接地されている前記車輪が前記駆動軸線方向に移動可能となるように前記車輪の外周に沿って設けられた複数の回転ローラと、を有しており、
それぞれの前記モータユニットは、前記駆動軸を回転させる電動モータと、前記電動モータへ供給する電流を制御するドライバ回路と、を有しており、
前記制御装置は、
前記バッテリから前記モータユニットへ供給可能な電流である供給可能電流を取得し、
それぞれの前記モータユニットに対応する制御量に基づいて、それぞれの前記モータユニットにて消費される電流であるそれぞれのユニット消費電流を予測し、
予測したそれぞれの前記ユニット消費電流の和である全消費電流を予測し、
前記供給可能電流が、予測した前記全消費電流以下である場合、同時に使用する前記モータユニットの数を制限するバッテリ節約制御を行い、
前記バッテリ節約制御を行って前記モータユニットの数を2つに制限する場合、
前記駆動軸線が互いに平行となる2つの前記全方向移動車輪を選定し、選定した2つの前記全方向移動車輪を駆動する2つの前記モータユニットを制御する、
全方向移動台車。
【請求項5】
台車部と、
前記台車部の下部に設けられた少なくとも3個の全方向移動車輪と、
それぞれの前記全方向移動車輪を駆動するそれぞれのモータユニットと、
それぞれの前記モータユニットに駆動電流を供給するバッテリと、
それぞれの前記モータユニットの制御量を求め、求めた前記制御量に基づいてそれぞれの前記モータユニットを制御する制御装置と、
を有する、全方向移動台車であって、
それぞれの前記全方向移動車輪は、駆動軸線回りに回転する駆動軸に連結された車輪と、接地されている前記車輪が前記駆動軸線方向に移動可能となるように前記車輪の外周に沿って設けられた複数の回転ローラと、を有しており、
それぞれの前記モータユニットは、前記駆動軸を回転させる電動モータと、前記電動モータへ供給する電流を制御するドライバ回路と、を有しており、
前記制御装置は、
前記バッテリから前記モータユニットへ供給可能な電流である供給可能電流を取得し、
それぞれの前記モータユニットに対応する制御量に基づいて、それぞれの前記モータユニットにて消費される電流であるそれぞれのユニット消費電流を予測し、
予測したそれぞれの前記ユニット消費電流の和である全消費電流を予測し、
前記供給可能電流が、予測した前記全消費電流以下である場合、同時に使用する前記モータユニットの数を制限するバッテリ節約制御を行い、
前記全方向移動台車は、所定の使用場所にて使用され、
前記使用場所内には、前記バッテリを充電可能な充電場所が設けられており、
前記制御装置は、前記使用場所内において指定された目的地に向かって前記モータユニットを制御しており、
前記制御装置は、記憶手段と、前記使用場所内における前記全方向移動台車の位置を検出可能な位置検出手段と、を有しており、
前記記憶手段には、前記使用場所の地図情報が記憶されており、
前記地図情報には、前記充電場所と前記目的地が設定されており、
前記制御装置は、
前記バッテリ節約制御を行っている場合、
前記バッテリから供給可能な電流量であるバッテリ残量を取得し、
前記位置検出手段と前記地図情報とを用いて、前記地図情報内における前記全方向移動台車の現在位置を取得し、
前記地図情報内において、前記現在位置から前記目的地までの距離である目的地移動距離と、前記目的地から前記充電場所までの距離である充電移動距離と、を求め、
前記目的地移動距離と前記充電移動距離と前記全消費電流とに基づいて、前記全方向移動台車を、前記現在位置から前記目的地へ移動させた後、さらに前記充電場所まで移動させるように、数を制限した前記モータユニットを制御した場合の電流の消費量である全電流消費量を予測し、
前記バッテリ残量が、予測した前記全電流消費量よりも大きい場合、前記全方向移動台車を、前記現在位置から前記目的地へと移動させた後、前記充電場所まで移動させるように、数を制限した前記モータユニットを制御し、
前記バッテリ残量が、予測した前記全電流消費量以下の場合、前記全方向移動台車を、前記現在位置から前記充電場所まで移動させるように、数を制限した前記モータユニットを制御する、
全方向移動台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動化された倉庫等において物品を搬送するための自律走行型台車が用いられており、搬送作業等の自動化が図られている。自律走行型台車として種々のものが開発されており、電動モータで駆動される全方向移動車輪を用いた自律走行型台車も開発されている。全方向移動車輪としてのオムニホイール(登録商標)は、駆動軸線回りに回転する駆動軸に連結された車輪と、接地されている車輪が駆動軸線方向に移動可能となるように車輪の外周に沿って設けられた複数の回転ローラと、を有している。
【0003】
走行面には回転ローラが接地しており、駆動軸によって車輪が回転すると回転ローラが走行面に順次接地して駆動力が伝達される。また、車輪が駆動軸の軸方向に移動するときは、走行面に対して接地している回転ローラが自由に回転して駆動軸の軸方向の移動を許容するものである。
【0004】
一般的に、電動モータを回転させるために必要な最低の電流を回転最低電流LMCとすると、電動モータは、この回転最低電流LMCより大きい電流が供給されると回転を開始し、供給された電流に比例して回転数が大きくなる(図20参照)。例えば、回転最低電流LMCは、一定の値ではなく、電動モータの特性、走行させる自律走行型台車の機台等の重量、電動モータが駆動する全方向移動車輪の径等に依存する。
【0005】
ここで、特許文献1には、バッテリと、モータ(電動モータに相当)と、バッテリの残量を検出する残量検出手段(バッテリ状態検出手段に相当)と、を有する印刷物配送装置が記載されている。特許文献1に記載の印刷物配送装置は、印刷物の配送中において、残量検出手段によりバッテリの残量(Ah)の低下を検出すると、モータの目標回転速度(回転数)を下げて、消費電流(A)を低下させバッテリを節約することで、印刷物配送装置の稼働時間を延長させることができる。
【0006】
また、特許文献2には、4個の全方向移動用車輪(全方向移動車輪に相当)と、4個のモータ(電動モータに相当)と、台車部と、を有する4輪式の自走式搬送台車(全方向移動台車に相当)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-19265号公報
【文献】特開2008-155652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の4個のモータを有する自走式搬送台車において、バッテリの残量(Ah)が低下した場合に、特許文献1に記載の印刷物配送装置のように、4個のモータのそれぞれの回転数を下げバッテリを節約すれば、モータの稼働時間を少し延長させることができる、と思われる。
【0009】
しかし、例えば、自走式搬送台車において、4個のモータのそれぞれの回転最低電流LMCが100mAの場合、バッテリの供給可能な電流(供給可能電流)が400mAまで低下すると、400mAの供給可能電流を4個のモータのそれぞれに均等に100mAずつ振り分けると、どのモータも回転できず、自走式搬送台車は稼働を停止する。つまり、上記の例では、4個全てのモータを同時に使用した場合、モータの回転数を下げても、バッテリからの供給可能電流が400mA以下になると、自走式搬送台車を稼働させることができない。
【0010】
しかし、例えば、同時に使用するモータ数を2個に制限すると、供給可能電流が400mAであっても、2個のモータのそれぞれには200mAの電流を供給できるため、2個のモータのそれぞれを同時に回転させることができ、自走式搬送台車を稼働させることができ、稼働時間を延長させることができる。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、モータユニット(電動モータ、ドライバ回路)を備えた全方向移動台車において、バッテリの供給可能な電流に応じて駆動させるモータユニットの数を制限し、モータユニットで消費される全消費電流を減らして、稼働可能な時間をより延長させることができる、全方向移動台車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、第1の発明は、台車部と、前記台車部の下部に設けられた少なくとも3個の全方向移動車輪と、それぞれの前記全方向移動車輪を駆動するそれぞれのモータユニットと、それぞれの前記モータユニットに駆動電流を供給するバッテリと、それぞれの前記モータユニットの制御量を求め、求めた前記制御量に基づいてそれぞれの前記モータユニットを制御する制御装置と、を有する、全方向移動台車であって、それぞれの前記全方向移動車輪は、駆動軸線回りに回転する駆動軸に連結された車輪と、接地されている前記車輪が前記駆動軸線方向に移動可能となるように前記車輪の外周に沿って設けられた複数の回転ローラと、を有しており、それぞれの前記モータユニットは、前記駆動軸を回転させる電動モータと、前記電動モータへ供給する電流を制御するドライバ回路と、を有しており、前記制御装置は、前記バッテリから前記モータユニットへ供給可能な電流である供給可能電流を取得し、それぞれの前記モータユニットに対応する制御量に基づいて、それぞれの前記モータユニットにて消費される電流であるそれぞれのユニット消費電流を予測し、予測したそれぞれの前記ユニット消費電流の和である全消費電流を予測し、前記供給可能電流が、予測した前記全消費電流以下である場合、同時に使用する前記モータユニットの数を制限するバッテリ節約制御を行う、全方向移動台車である。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明に係る全方向移動台車であって、前記バッテリの前記供給可能電流を検出するバッテリ状態検出手段を備え、前記制御装置は、前記バッテリ状態検出手段から前記供給可能電流を取得する、全方向移動台車である。
【0014】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明に係る全方向移動台車であって、前記制御装置は、前記バッテリ節約制御を行って前記モータユニットの数を2つに制限する場合、前記駆動軸線が互いに交差する2つの前記全方向移動車輪を選定し、選定した2つの前記全方向移動車輪を駆動する2つの前記モータユニットを制御する、全方向移動台車である。
【0015】
第4の発明は、上記第1又は第2の発明に係る全方向移動台車であって、前記制御装置は、前記バッテリ節約制御を行って前記モータユニットの数を2つに制限する場合、前記駆動軸線が互いに平行となる2つの前記全方向移動車輪を選定し、選定した2つの前記全方向移動車輪を駆動する2つの前記モータユニットを制御する、全方向移動台車である。
【0016】
第5の発明は、上記第1の発明~第4の発明のいずれか1つに係る全方向移動台車であって、警報装置を有し、前記制御装置は、前記バッテリ節約制御を行って数を制限した前記モータユニットにて予測した前記全消費電流が前記供給可能電流以上であると判定した場合、前記警報装置を用いて警報を出力する、全方向移動台車である。
【0017】
第6の発明は、上記第1の発明~第5の発明のいずれか1つに係る全方向移動台車であって、前記全方向移動台車は、所定の使用場所にて使用され、前記使用場所内には、前記バッテリを充電可能な充電場所が設けられており、前記制御装置は、前記使用場所内において指定された目的地に向かって前記モータユニットを制御しており、前記制御装置は、記憶手段と、前記使用場所内における前記全方向移動台車の位置を検出可能な位置検出手段と、を有しており、前記記憶手段には、前記使用場所の地図情報が記憶されており、前記地図情報には、前記充電場所と前記目的地が設定されており、前記制御装置は、前記バッテリ節約制御を行っている場合、前記バッテリから供給可能な電流量であるバッテリ残量を取得し、前記位置検出手段と前記地図情報とを用いて、前記地図情報内における前記全方向移動台車の現在位置を取得し、前記地図情報内において、前記現在位置から前記目的地までの距離である目的地移動距離と、前記目的地から前記充電場所までの距離である充電移動距離と、を求め、前記目的地移動距離と前記充電移動距離と前記全消費電流とに基づいて、前記全方向移動台車を、前記現在位置から前記目的地へ移動させた後、さらに前記充電場所まで移動させるように、数を制限した前記モータユニットを制御した場合の電流の消費量である全電流消費量を予測し、前記バッテリ残量が、予測した前記全電流消費量よりも大きい場合、前記全方向移動台車を、前記現在位置から前記目的地へと移動させた後、前記充電場所まで移動させるように、数を制限した前記モータユニットを制御し、前記バッテリ残量が、予測した前記全電流消費量以下の場合、前記全方向移動台車を、前記現在位置から前記充電場所まで移動させるように、数を制限した前記モータユニットを制御する、全方向移動台車である。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、モータユニット(電動モータ、ドライバ回路)を備えた全方向移動台車において、バッテリの供給可能な電流に応じて駆動させるモータユニットの数を制限し、モータユニットで消費される全消費電流を減らして、稼働可能な時間をより延長させることができる。また、バッテリ等に何らかの異常が生じ、供給可能電流が低下した場合でも、全方向移動台車の稼働を維持できる。
【0019】
第2の発明によれば、バッテリ状態をより正確に取得でき、制限するモータユニットの数をより最適にできる。
【0020】
第3の発明によれば、例えば、掃除用アタッチメントが正面に取り付けられた全方向移動台車のように、全方向移動台車の進行方向の正面が決められており、かつ、当該正面の方向に進行させるための2個の駆動輪の駆動軸線が互いに交差する場合において、制限するモータユニットの位置を予め決めることで、全方向移動台車の前面に対して最適な駆動輪を選定できる。
【0021】
第4の発明によれば、全方向移動台車の進行方向に対してより最適な駆動輪を選定し、バッテリをより節約できる。
【0022】
第5の発明によれば、作業者(使用者)に対して、異常の発生を容易に知らせることができ作業者(使用者)に対し対処を促すことができる。
【0023】
第6の発明によれば、バッテリ残量を適切に把握し、目的地を経由して充電場所に移動できるか適切に判断するため、移動中にバッテリ残量がなくなることなく目的地及び充電場所、あるいは充電場所に、確実に移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態における全方向移動台車の外観の例を示す斜視図である。
図2】全方向移動台車の全体構成を説明する模式図である。
図3】全方向移動車輪の外観の例を示す斜視図である。
図4】同時に使用するモータユニットを制限しない場合の全方向移動台車(4輪)の走行方向(直進方向)を説明する模式図である。
図5】同時に使用するモータユニットを制限しない場合の全方向移動台車(4輪)の走行方向(その場で右旋回)を説明する模式図である。
図6】同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(4輪)の走行方向(直進方向)を説明する模式図である。
図7】同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(4輪)の走行方向(直進方向)を説明する模式図である。
図8】同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(4輪)の走行方向(その場で右旋回)を説明する模式図である。
図9】全方向移動台車の制御手段の全体の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図10】制御手段における全方向移動台車の制御モードの設定の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図11】バッテリ節約モードにおいて、使用場所における最適な走行ルートの選定を説明する図である。
図12】同時に使用するモータユニットを制限しない場合の全方向移動台車(3輪)の走行方向(直進方向)を説明する模式図である。
図13】同時に使用するモータユニットを制限しない場合の全方向移動台車(3輪)の走行方向(その場で右旋回)を説明する模式図である。
図14】同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(3輪)の走行方向(直進方向)を説明する模式図である。
図15】同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(3輪)の走行方向(その場で右旋回)を説明する模式図である。
図16】同時に使用するモータユニットを制限しない場合の全方向移動台車(図12図15とは異なる配置の3輪)の走行方向(直進方向)を説明する模式図である。
図17】同時に使用するモータユニットを制限しない場合の全方向移動台車(図12図15とは異なる配置の3輪)の走行方向(その場で右旋回)を説明する模式図である。
図18】同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(図12図15とは異なる配置の3輪)の走行方向(直進方向)を説明する模式図である。
図19】同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(図12図15とは異なる配置の3輪)の走行方向(その場で右旋回)を説明する模式図である。
図20】電動モータに供給する電流[A]と回転数[RPM]との関係を示す図である。
図21】供給可能な電流と同時に動作させることができるモータユニットの数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている図において、X軸とY軸とZ軸は互いに直交している。また、Z軸方向は鉛直上向き方向を示し、X軸方向は全方向移動台車の前方向を示し、Y軸方向は全方向移動台車の左方向を示している。また、U軸とV軸とW軸が記載されている図において、U軸とV軸とW軸は互いに直交している。また、W軸方向は鉛直上向き方向を示し、U軸方向は実際の使用場所の奥行方向における手前に向かう方向を示し、V軸方向は実際の使用場所の幅方向における右方向を示している。
【0026】
●[全方向移動台車の外観(図1)、全体構成(図2)と全方向移動車輪(図3)]
図1は、本発明の第1の実施形態における全方向移動台車1の外観の例を示す斜視図である。図2は、全方向移動台車1の全体構成を説明する模式図である。図3は、全方向移動車輪(左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR)の外観の例を示す斜視図である。全方向移動台車には、用途や作業現場等に応じて種々の外観のものがあるが、本実施の形態の説明では図1に示すように、円柱状の外観を有し、4個の全方向移動車輪を備える全方向移動台車1を例として説明する。
【0027】
図1に示すように、全方向移動台車1は、ボディ2(台車部に相当)、荷台3、物体検出手段11、全方向移動車輪である左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR、右床面検出手段12R、左床面検出手段12L、メインスイッチ13A、走行開始スイッチ13B、タッチモニタ31、アンテナ32、音声出力手段33、通信用コネクタ34、ドライバユニット35DU、制御装置40、バッテリユニット38U、バッテリ38等を有している。全方向移動台車1は、工場内や仕分けエリアといった、予め走行する範囲が決められている所定の使用場所で使用される。
【0028】
全方向移動車輪は、ボディ2の下部に設けられた、左前の駆動輪である左前駆動輪4FL、右前の駆動輪である右前駆動輪4FR、左後の駆動輪である左後駆動輪4BL、右後の駆動輪である右後駆動輪4BR、から構成される。
【0029】
左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR、のそれぞれは、隣接する全方向移動車輪の駆動軸線4JLが互いに直交するように設けられている。
【0030】
つまり、2組の対向する一対の全方向移動車輪(左前駆動輪4FLと右後駆動輪4BRの組と、右前駆動輪4FRと左後駆動輪4BLの組)のそれぞれにおいて、対向する一方の全方向移動車輪の駆動軸線4JLは、他方の全方向移動車輪の駆動軸線4JLと一致するように設けられている。
【0031】
図3に示すように、全方向移動車輪(左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR)は、駆動軸線4JL回りに回転する駆動軸4JKに連結された車輪4Wと、接地されている車輪4Wが駆動軸線4JL方向に移動可能となるように車輪4Wの外周に沿って設けられた複数の回転ローラ4Rと、を有している。例えば、矢印(白抜き)の方向に沿って車輪4Wが移動すると、回転ローラ4Rは、矢印(黒抜き)の方向に沿って回転される。全方向移動車輪(左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR)は、例えばオムニホイール(登録商標)である。
【0032】
図2に示すように、ドライバユニット35DUは、ドライバ回路35D1、ドライバ回路35D2、ドライバ回路35D3、ドライバ回路35D4を有している。バッテリユニット38Uは、バッテリ38B1、バッテリ38B2、バッテリ38B3、バッテリ38B4、バッテリ状態検出手段38M1、バッテリ状態検出手段38M2、バッテリ状態検出手段38M3、バッテリ状態検出手段38M4を有している。
【0033】
モータユニット35MU1、35MU2、35MU3、35MU4のそれぞれは、全方向移動車輪である左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、右後駆動輪4BR、左後駆動輪4BL、のそれぞれを駆動し、制御装置40(制御手段41)により制御されている。モータユニット35MU1は、電動モータ35FLとドライバ回路35D1を有している。モータユニット35MU2は、電動モータ35FRとドライバ回路35D2を有している。モータユニット35MU3は、電動モータ35BRとドライバ回路35D3を有している。モータユニット35MU4は、電動モータ35BLとドライバ回路35D4を有している。
【0034】
電動モータ35FL、35FR、35BL、35BRのそれぞれは、左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BRのそれぞれにおける駆動軸4JK(図3参照)を回転させる。ドライバ回路35D1、35D2、35D3、35D4のそれぞれは、電動モータ35FL、35FR、35BR、35BLのそれぞれへ供給する電流量、印加する電圧値等を制御する。また、ドライバ回路35D1、35D2、35D3、35D4のそれぞれは、図示は省略するがドライバ回路の内部に電流計測手段が設けられており、それぞれのモータユニットに供給される電流(A)を計測し、制御装置40(制御手段41)へ出力する。これにより、制御装置40(制御手段41)は、モータユニット(35MU1、35MU2、35MU3、35MU4)のそれぞれに供給される電流(ユニット消費電流)を測定し、全消費電流(A)を予測することができる。
【0035】
バッテリ状態検出手段38M1、38M2、38M3、38M4のそれぞれは、バッテリ38B1、38B2、38B3、38B4のそれぞれからモータユニット35MU1、35MU2、35MU3、35MU4のそれぞれに電流を供給するとともに、自身に接続されたバッテリからモータユニットへ供給可能な電流である供給可能電流(A)をそれぞれ検出し、制御装置40(制御手段41)に出力する。バッテリ状態検出手段38M1、38M2、38M3、38M4は、バッテリの状態(電圧(V)、供給可能な電流(A)、バッテリ残量(Ah)、バッテリの温度等)を検出し、それぞれの情報を取得する。なお、バッテリ残量(Ah)は、バッテリ38B1、38B2、38B3、38B4のそれぞれから供給可能な電流量である。
【0036】
右床面検出手段12Rは、例えば超音波センサであり、右前駆動輪4FRの前方の床面の障害物を検出し、床面検出情報を制御手段41(に出力する。同様に、左床面検出手段12Lは、例えば超音波センサであり、左前駆動輪4FLの前方の床面の障害物を検出し、床面検出情報を制御装置40(制御手段41)に出力する。
【0037】
メインスイッチ13Aは、制御装置40の起動と停止を行うためのスイッチであり、作業者によって操作される。走行開始スイッチ13Bは、全方向移動台車1の走行を開始させるスイッチであり、作業者によって操作される。メインスイッチ13Aは、制御装置40の起動(ON)と停止(OFF)の状態を保持できるスイッチである。走行開始スイッチ13Bは、例えば押されている間のみONされるスイッチである。
【0038】
タッチモニタ31は、全方向移動台車1の動作状態やバッテリ残量(Ah)等の表示を行い、作業者からの入力(目的地の入力等)の受け付けも行う。音声出力手段33は、例えばスピーカであり、作業者に対して種々の情報を知らせるための音声や音楽等を出力する。
【0039】
タッチモニタ31と音声出力手段33は、警報装置としても用いられ、警報を出力する。タッチモニタ31は、警報内容に応じた文字等を表示する。音声出力手段33は、警報内容に応じた音声又は音を出力する。
【0040】
通信用コネクタ34は、制御手段41に種々のデータ等を送信、あるいは制御手段41から種々のデータ等を受信、するためのパーソナルコンピュータ等を接続するためのコネクタである。例えば作業者は、パーソナルコンピュータに記憶されている使用場所UP(図11参照)の地図情報42V(図11参照)を、通信用コネクタ34を介して記憶手段42に記憶させることができる。また、上記種々のデータ送受信等は、通信用コネクタ34による有線方式の通信の代わりにアンテナ32による無線方式の通信により、記憶手段42への記憶させることもできる。なお、地図情報42Vは、全方向移動台車1を使用する使用場所UPの広さ、使用場所UPに配置されている物品等の位置等の自律走行に必要な情報であり、使用場所UPにおける全方向移動台車の充電場所CP(図11参照)と作業等を実施する目的地に関する情報が設定されている。
【0041】
バッテリ38は、全方向移動台車1内の制御装置40や検出手段等の機器に電力を供給する電源である。なお、バッテリ38の代わりに、バッテリユニット38Uを使用する構成にしても良い。
【0042】
制御装置40は、図2に示すように、制御手段41(例えばCPU)と、位置検出手段41aと、記憶手段42(例えばHard Disk Drive)等を有している。制御手段41には、物体検出手段11からの検出情報、右床面検出手段12R及び左床面検出手段12Lからの床面検出情報、メインスイッチ13A、走行開始スイッチ13Bからの操作信号等が入力される。
【0043】
また制御手段41は、記憶手段42からのデータ等の読み出しと記憶手段42へのデータ等の書き込み、タッチモニタ31への出力とタッチモニタ31からの入力を行う。また制御手段41は、モータユニット35MU1、35MU2、35MU3、35MU4のそれぞれへの制御信号の入出力、バッテリ状態検出手段38M1、38M2、38M3、38M4のそれぞれからの入出力等を行う。
【0044】
位置検出手段41aは、物体検出手段11からの検出情報が入力される。物体検出手段11は、全方向移動台車1の前上端に配置されている。物体検出手段11は、例えばレーザ光を走査させる2次元平面状の物体検出平面領域を有する物体検出センサであり、物体検出平面領域内の物体の位置である物体位置と、物体の輝度である物体輝度と、を含む検出情報を制御装置40(制御手段41)に出力する。位置検出手段41aは、物体検出手段11からの検出された物体の情報と記憶手段42に記憶されている使用場所UPの地図情報42Vを照合し(図11参照)、使用場所UP内における全方向移動台車1の位置を検出することができる。
【0045】
●[同時に使用するモータユニットを制限しない場合の全方向移動台車(4輪)(図4図5)]
図4図5を用いて、同時に使用するモータユニットを制限しない場合(4輪同時駆動)の全方向移動台車1(4輪)(図1参照)の走行の例を説明する。図4図5において、黒矢印は、全方向移動車輪(左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR)において回転により生じる全方向移動車輪を移動させる移動方向を示し、白抜き矢印は、ボディ2の移動方向つまり全方向移動台車1の走行方向を示している。なお、説明を簡単にするため、図4図5ではボディ2、全方向移動車輪である左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR、以外を省略している。また、左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BRのそれぞれにおいて回転により生じる全方向移動車輪を移動させる力の大きさ(黒矢印の長さに相当)は同じとする。図4図5に示す全方向移動車輪(左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR)は、回転している状態が黒で表され、回転を停止している状態が白で表されている。
【0046】
図4は、全方向移動台車1が直進方向に走行する例である。図4において、左前駆動輪4FL、右後駆動輪4BRのそれぞれにはボディ2を前方向と右方向に移動させる力が生じており、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BLのそれぞれにはボディ2を前方向と左方向に移動させる力が生じている。したがって、全方向移動台車1は、直進方向に走行する。
【0047】
図5は、全方向移動台車1がその場で右旋回する例である。図5において、左前駆動輪4FLにはボディ2を前方向と右方向に移動させる力が生じ、右後駆動輪4BRにはボディ2を後方向と左方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRにはボディ2を後方向と右方向に移動させる力が生じており、左後駆動輪4BLにはボディ2を前方向と左方向に移動させる力が生じている。したがって、全方向移動台車1は、その場で右旋回する。
【0048】
●[同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(4輪)(図6図8)]
図6図8を用いて、同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合(2輪同時駆動)の全方向移動台車1(4輪)(図1参照)の走行の例を説明する。図6図8において、黒矢印、白抜き矢印、全方向移動車輪(前駆動輪4FL、右前駆動輪4FR、左後駆動輪4BL、右後駆動輪4BR)の黒及び白で表されている状態は、図4図5における状態と同じである。
【0049】
図6は、全方向移動台車1が直進方向に走行する例である。図6において、左前駆動輪4FLにはボディ2を前方向と右方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRにはボディ2を前方向と左方向に移動させる力が生じており、右後駆動輪4BRと左後駆動輪4BLのそれぞれは停止され移動させる力を生じていない。したがって、全方向移動台車1は、直進方向に走行する。
【0050】
図7は、全方向移動台車1が直進方向に走行する例である。図7において、左前駆動輪4FLと右後駆動輪4BRのそれぞれは停止され移動させる力を生じておらず、右前駆動輪4FRと左後駆動輪4BLのそれぞれにはボディ2を前方向と左方向に移動させる力が生じている。したがって、全方向移動台車1は、直進方向に走行する。
【0051】
図8は、全方向移動台車1がその場で右旋回する例である。図8において、左前駆動輪4FL、右後駆動輪4BRのそれぞれは停止され移動させる力を生じておらず、右前駆動輪4FRにはボディ2を後方向と右方向に移動させる力が生じており、左後駆動輪4BLにはボディ2を前方向と左方向に移動させる力が生じている。したがって、全方向移動台車1は、その場で右旋回する。
【0052】
●[全方向移動台車の制御手段の処理手順(図9図10図11)]
図9は、第1の実施形態における全方向移動台車1(図1参照)の制御手段41(図2参照)の全体の処理手順の例を説明するフローチャートである。図10は、制御手段41における全方向移動台車1の制御モードの設定の処理手順の例を説明するフローチャートである。図11は、バッテリ節約モードにおいて、使用場所における最適な走行ルートの選定を説明する図である。
【0053】
全方向移動台車1の制御装置40の制御手段41における処理手順について、図9のフローチャートを用いて説明する(図2参照)。なお、制御手段41は、メインスイッチ13A(図2参照)がONされて起動された状態になると、所定時間間隔(例えば100[ms]間隔)にて、処理を実行する。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0054】
ステップS010に処理を進めた場合、制御手段41は、走行開始スイッチ13B(図2参照)がONであると判定した場合(Yes)は、ステップS020に処理を進め、走行開始スイッチ13BがONでないと判定した場合(No)は、ステップS015に処理を進める。
【0055】
ステップS015に処理を進めた場合、制御手段41は、走行開始フラグFrがONであると判定した場合(Yes)は、ステップS035に処理を進め、走行開始フラグFrがONでないと判定した場合(No)は、全体の処理を終了する。なお、走行開始フラグFrは、全方向移動台車1の走行状態を示すフラグであり、ONの状態が自律走行中であること、OFFの状態が指定場所WPに到達したこと又はバッテリ節約モードにおいて充電場所CPに到達したこと、を示している(図11参照)。
【0056】
ステップS020に処理を進めた場合、制御手段41は、記憶手段42(図2参照)に指定場所WPが登録されていると判定した場合(Yes)は、ステップS030に処理を進め、記憶手段42に指定場所WPが登録されていないと判定した場合(No)は、ステップS025に処理を進める。なお、指定場所WPは、使用場所UPにおける全方向移動台車1の目的地であり、自律走行により移動する移動先である。
【0057】
ステップS025に処理を進めた場合、制御手段41は、作業者に指定場所WPの登録を督促して、全体の処理を終了する。なお、指定場所WPの登録の督促は、タッチモニタ31において督促メッセージの表示、音声出力手段33において督促メッセージの出力、により行う(図2参照)。
【0058】
ステップS030に処理を進めた場合、制御手段41は、走行開始フラグFrをONに設定し、ステップS035に処理を進める。
【0059】
ステップS035に処理を進めた場合、制御手段41は、位置検出手段41a(図2参照)と記憶手段42に記憶された地図情報42V(図11参照)とを用いて、地図情報42V内における全方向移動台車1の現在位置P01(図11参照)を取得し、ステップS045(サブルーチンSUB100)に処理を進める。
【0060】
ステップS050に処理を進めた場合、制御手段41は、制御モードが“バッテリ節約モード”であると判定した場合(Yes)は、ステップS085に処理を進め、制御モードが“バッテリ節約モード”でないと判定した場合(No)は、ステップS055に処理を進める。なお、制御手段41における“バッテリ節約モード”は、供給可能電流(A)が予測した全消費電流(A)以下である場合、同時に使用するモータユニットの数を制限する制御(バッテリ節約制御)を行うモードである。
【0061】
ステップS055に処理を進めた場合、制御手段41は、同時に使用するモータユニット数を4個に設定し、ステップS060に処理を進める。なお、ステップS055~ステップS080までにおいて、制御手段41は、同時に使用するモータユニット数を4個に設定し、同時に使用するモータユニット数を制限せずモータユニットを制御する(通常モード)。
【0062】
ステップS060に処理を進めた場合、制御手段41は、記憶手段42から指定場所WPを読み出し最終目的地を指定場所WPに設定し、ステップS065に処理を進める。なお、制御手段41は、地図情報42Vに基づいて、現在位置P01から最終目的地までの走行ルートを決定する。
【0063】
ステップS065に処理を進めた場合、制御手段41は、位置検出手段41aの情報に基づいて最終目的地に到達したと判定した場合(Yes)は、ステップS075に処理を進め、位置検出手段41aの情報に基づいて最終目的地に到達していないと判定した場合(No)は、ステップS070に処理を進める。
【0064】
ステップS070に処理を進めた場合、制御手段41は、同時に使用する選定されたモータユニット(35MU1、35MU2、35MU3、35MU4)を制御し、全体の処理を終了する。なお、制御手段41は、モータユニット(35MU1、35MU2、35MU3、35MU4)のそれぞれの制御量を求め、求めた制御量と走行ルートに基づいてそれぞれのモータユニットを適切に制御する。これにより、4輪の全方向移動車輪を備えた全方向移動台車は、図4図5に示す走行の例のように走行できる。また、3輪の全方向移動車輪を備えた全方向移動台車は、図12及び図13、あるいは図16及び図17に示す走行の例のように走行できる。なお、モータユニット(電動モータ、ドライバ回路)に対応する制御量は、例えばドライバ回路から電動モータに供給される電流、印加される電圧である。
【0065】
ステップS075に処理を進めた場合、制御手段41は、同時に使用する選定されたモータユニット(35MU1、35MU2、35MU3、35MU4)の制御を停止し、ステップS080に処理を進める。
【0066】
ステップS080に処理を進めた場合、制御手段41は、走行開始フラグFrをOFFに設定し、全体の処理を終了する。
【0067】
●[制御手段におけるバッテリ節約制御の処理手順]
ステップS085に処理を進めた場合、制御手段41(図2参照)は、同時に使用するモータユニット数を2個に制限し、ステップS090に処理を進める。なお、制御手段41は、現在位置P01(図11参照)と設定されている最終目的地に基づいて進行方向を決定して、その進行方向に最適な組み合わせである2個のモータユニットをモータユニット(35MU1、35MU2、35MU3、35MU4)(図2参照)の中から選定する。制御手段41は、例えば右方向に走行したい場合、先ずモータユニット35MU2、35MU4を選定し全方向移動台車1(図1参照)の進行方向正面が所望の進行方向になるまで全方向移動台車1をその場で右旋回(図8参照)させて、次にモータユニット35MU1、35MU2を選定し前方向に全方向移動台車1を走行させる。
【0068】
ステップS090に処理を進めた場合、制御手段41は、バッテリ状態検出手段38M1、38M2、38M3、38M4のそれぞれにより、バッテリ38B1、38B2、38B3、38B4から供給可能な電流量であるバッテリ残量(Ah)を取得し、ステップS095に処理を進める(図2参照)。
【0069】
ステップS095に処理を進めた場合、制御手段41は、地図情報42V内において、現在位置P01から目的地である指定場所WPまでの距離である目的地移動距離LW1と、目的地である指定場所WPから充電場所CPまでの距離である充電移動距離LW2と、を求め、ステップS100に処理を進める(図11参照)。
【0070】
ステップS100に処理を進めた場合、制御手段41は、目的地移動距離LW1と充電移動距離LW2と全消費電流(A)とに基づいて、全方向移動台車1を、現在位置P01から目的地である指定場所WPへ移動させた後、さらに充電場所CPまで移動させるように、同時に使用する数を2個に制限したモータユニットを制御した場合の電流の消費量である全電流消費量(2個のモータユニットの電流の消費量)(A)を予測し、ステップS105に処理を進める。
【0071】
ステップS105に処理を進めた場合、制御手段41は、バッテリ残量(Ah)(ステップS090)が予測した全電流消費量(Ah)(ステップS100)よりも大きいと判定した場合(Yes)は、ステップS110に処理を進め、バッテリ残量(Ah)が予測した全電流消費量(Ah)よりも大きくないと判定した場合(No)は、ステップS140に処理を進める。
【0072】
ステップS110に処理を進めた場合、制御手段41は、到達フラグFTがONであると判定した場合(Yes)は、ステップS140に処理を進め、到達フラグFTがONでないと判定した場合(No)は、ステップS115に処理を進める。なお、到達フラグFTは、指定場所WPに全方向移動台車1が到達したか否かを示すフラグであり、到達するとONに設定され、走行開始フラグFrがOFFの場合はOFFに設定されている。
【0073】
ステップS115に処理を進めた場合、制御手段41は、記憶手段42から指定場所WPを読み出し最終目的地を指定場所WPに設定し、ステップS120に処理を進める。なお、制御手段41は、地図情報42Vに基づいて、現在位置P01から最終目的地までの走行ルートを決定する。
【0074】
ステップS120に処理を進めた場合、制御手段41は、位置検出手段41aの情報に基づいて最終目的地に到達したと判定した場合(Yes)は、ステップS130に処理を進め、位置検出手段41aの情報に基づいて最終目的地に到達していないと判定した場合(No)は、ステップS125に処理を進める。
【0075】
ステップS125に処理を進めた場合、制御手段41は、同時に使用する選定された2個のモータユニット(ステップS085)を制御し、全体の処理を終了する。なお、制御手段41は、選定された2個のモータユニットのそれぞれの制御量を求め、求めた制御量と走行ルートに基づいてそれぞれのモータユニットを適切に制御する。
【0076】
[最適な全方向移動車輪(モータユニット)の選定]
ステップS125において、全方向移動台車(4輪)の進行方向に対して最適な全方向移動車輪として、制御手段41は、図6においては右前駆動輪4FRと左前駆動輪4FLを選定し、図7図8においては右前駆動輪4FRと左後駆動輪4BLを選定する。また、後述する第2の実施形態における全方向移動台車(3輪)の進行方向に対して最適な全方向移動車輪として、制御手段41は、図14においては左前駆動輪4FLaと後駆動輪4BCを選定し、図15においては右前駆動輪4FRaと左前駆動輪4FLaを選定し、図18及び図19においては右前駆動輪4FRbと左前駆動輪4FLbを選定する。
【0077】
[最適な全方向移動車輪(モータユニット)の選定による効果]
例えば、掃除用アタッチメントが正面に取り付けられた全方向移動台車(4輪)のように、全方向移動台車の進行方向の正面が決められており、かつ、図6に示すように当該正面の方向に進行させるための2個の駆動輪(全方向移動車輪)の駆動軸線4JLが互いに交差する場合において、制限するモータユニットの位置を予め決めること(左前駆動輪4FL、右前駆動輪4FRを選定)で、全方向移動台車1の前面に対して最適な駆動輪の選定である。また、右前駆動輪4FRと左後駆動輪4BLの選択は、図7に示すように全方向移動台車の進行方向と右前駆動輪4FRと左後駆動輪4BLのそれぞれによるボディ2を移動させる力の方向が同じであるため、全方向移動台車の進行方向に対してより最適な駆動輪の選定である。上記の最適な駆動輪の選定により、バッテリをより節約でき、全方向移動台車の稼働可能な時間をより延長させることができる。また、図8に示すように右前駆動輪4FRと左後駆動輪4BLの選定は、全方向移動台車1をその場で右旋回(旋回)させるための適した駆動輪の選定である。また、後述する第2の実施形態における全方向移動台車(3輪)において、図14に示す左前駆動輪4FLaと後駆動輪4BCを選定は、全方向移動台車を直進方向へ走行させるための適した駆動輪の選定である。図15に示す右前駆動輪4FRaと左前駆動輪4FLaを選定は、全方向移動台車を右旋回(旋回)させるための適した駆動輪の選定である。図18図19における右前駆動輪4FRbと左前駆動輪4FLbのそれぞれの選定は、全方向移動台車を直進方向へ走行させるためとその場で右旋回(旋回)のさせるためのそれぞれに適した駆動輪の選定である。
【0078】
ステップS130に処理を進めた場合、制御手段41は、同時に使用する選定された2個のモータユニットの制御を停止し、ステップS135に処理を進める。
【0079】
ステップS135に処理を進めた場合、制御手段41は、到達フラグFTをONに設定し、全体の処理を終了する。
【0080】
ステップS140に処理を進めた場合、制御手段41は、記憶手段42から指定場所WPを読み出し最終目的地を充電場所CPに設定し、ステップS145に処理を進める。なお、制御手段41は、地図情報42Vに基づいて、現在位置P01から最終目的地までの走行ルートを決定する。
【0081】
ステップS145に処理を進めた場合、制御手段41は、位置検出手段41aの情報に基づいて最終目的地に到達したと判定した場合(Yes)は、ステップS155に処理を進め、位置検出手段41aの情報に基づいて最終目的地に到達していないと判定した場合(No)は、ステップS150に処理を進める。
【0082】
ステップS150に処理を進めた場合、制御手段41は、同時に使用する選定された2個のモータユニット(ステップS085)を制御し、全体の処理を終了する。なお、この場合、全方向移動台車の進行方向に対して最適な全方向移動車輪として、制御手段41は、ステップS125における[最適な全方向移動車輪(モータユニット)の選定]と同様の処理を行う。
【0083】
ステップS155に処理を進めた場合、制御手段41は、同時に使用する選定された2個のモータユニットの制御を停止し、ステップS160に処理を進める。
【0084】
ステップS160に処理を進めた場合、制御手段41は、走行開始フラグFrをOFFに設定し、全体の処理を終了する。
【0085】
バッテリ節約制御を行うことで、制御手段41は、バッテリ残量(Ah)を適切に把握し、指定場所WP(目的地)を経由して充電場所CPに移動できるか適切に判断するため、移動中にバッテリ残量(Ah)がなくなることなく指定場所WP(目的地)及び充電場所CP、あるいは充電場所CPに、全方向移動台車1(図1参照)を確実に移動させることができる。
【0086】
●[制御手段における全方向移動台車の制御モードの設定:サブルーチンSUB100(図10)]
以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0087】
ステップSUB105に処理を進めた場合、制御手段41は、バッテリ状態検出手段38M1、38M2、38M3、38M4のそれぞれにより、バッテリ38B1、38B2、38B3、38B4から供給可能な電流である供給可能電流(A)を取得し、ステップSUB110に処理を進める。
【0088】
ステップSUB110に処理を進めた場合、制御手段41は、それぞれのモータユニット(35MU1、35MU2、35MU3、35MU4)に対応する制御量に基づいて、それぞれのモータユニット(35MU1、35MU2、35MU3、35MU4)にて消費される電流であるそれぞれのユニット消費電流(A)を予測し、ステップSUB115に処理を進める。
【0089】
ステップSUB115に処理を進めた場合、制御手段41は、予測したそれぞれのユニット消費電流(A)の和である全消費電流(A)を予測し、ステップSUB120に処理を進める。
【0090】
ステップSUB120に処理を進めた場合、制御手段41は、制御モードが“バッテリ節約モード”であると判定した場合(Yes)は、ステップSUB140に処理を進め、制御モードが“バッテリ節約モード”でないと判定した場合(No)は、ステップSUB125に処理を進める。
【0091】
ステップSUB125に処理を進めた場合、制御手段41は、供給可能電流(A)が全消費電流(A)以下であると判定した場合(Yes)は、ステップSUB135に処理を進め、供給可能電流(A)が全消費電流(A)以下でないと判定した場合(No)は、ステップSUB130に処理を進める。
【0092】
ステップSUB130に処理を進めた場合、制御手段41は、制御モードを“通常モード”に設定し、サブルーチンSUB100を終了し全体の処理に戻る。なお、制御手段41における“通常モード”は、供給可能電流(A)が予測した全消費電流(A)以下でない場合、同時に使用するモータユニットの数を制限しない制御を行うモードである。
【0093】
ステップSUB135に処理を進めた場合、制御手段41は、制御モードを“バッテリ節約モード”に設定し、サブルーチンSUB100を終了し全体の処理に戻る。
【0094】
ステップSUB140に処理を進めた場合、制御手段41は、供給可能電流(A)が全消費電流(A)以下であると判定した場合(Yes)は、ステップSUB145に処理を進め、供給可能電流(A)が全消費電流(A)以下でないと判定した場合(No)は、サブルーチンSUB100を終了し全体の処理に戻る。
【0095】
ステップSUB145に処理を進めた場合、制御手段41は、タッチモニタ31により警報内容に応じた文字等を表示し、音声出力手段33により警報内容に応じた音声又は音を出力し、サブルーチンSUB100を終了し全体の処理に戻る。これにより、作業者(使用者)に対して、異常の発生を容易に知らせることができ作業者(使用者)に対し対処を促すことができる。なお、警報内容としては、バッテリ(38B1、38B2、38B3、38B4)やバッテリ状態検出手段(38M1、38M2、38M3、38M4)等の故障、供給可能電流(A)の異常低下等の内容である。
【0096】
●[バッテリ節約制御の効果(図21)]
図21は、従来の全方向移動台車と本願の全方向移動台車における供給可能電流(A)と動作させることができるモータユニットの数の関係を示す図である。図21において、縦軸は、モータユニット(電動モータ、ドライバ回路)に対してバッテリが供給可能な電流(供給可能電流)(A)の大きさを示している。
【0097】
従来の全方向移動台車において、例えばn個のモータユニットが備えられている場合、n個全てのモータユニットが動作できるためには、全消費電流(A)としてn×回転最低電流LMC(A)(図20参照)より大きな電流が必要である。したがって、従来の全方向移動台車において、バッテリの供給可能電流(A)がn×回転最低電流LMC(A)以下になると、モータユニット1個当たりの電流が回転最低電流LMC(A)以下となり、どのモータユニットも動作できず、従来の全方向移動台車は稼働を停止する。
【0098】
一方、本願の全方向移動台車は、例えばバッテリの供給可能電流(A)がn×回転最低電流LMC(A)以下になっても、同時に使用するモータユニットを(n-1)個以下に制限することで、モータユニット1個当たりの電流が回転最低電流LMC(A)以下とならないため、制限された(n-1)個以下のどのモータユニットも動作することができ、全方向移動台車は稼働を維持できる。また、バッテリの供給可能電流(A)が(n-1)×回転最低電流LMC(A)以下になった場合でも、さらに同時に使用するモータユニットを(n-2)個以下に制限すれば、全方向移動台車は稼働を維持できる。このように、バッテリの供給可能電流(A)に対して、同時に使用するモータユニットの個数を減らすことで、全方向移動台車は稼働を維持でき稼働可能な時間(稼働時間)をより延長させることができる。
【0099】
●[第2の実施形態の全方向移動台車(3輪)における制御(図12図19)]
第2の実施形態の全方向移動台車は、第1の実施形態の全方向移動台車1(図1参照)の全方向移動台車が4輪であるのに対して、全方向移動台車が3輪である点のみ相違する。図12図19を用いて、同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(3輪)の走行の例を説明する。
【0100】
図12図15を用いて、同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(3輪)の走行の例を説明する。図12図13は同時に使用するモータユニットを制限しない場合(3輪同時駆動)の全方向移動台車(3輪)の走行方向を説明する模式図である。図14図15は、同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合(2輪同時駆動)の全方向移動台車(3輪)の走行方向を説明する模式図である。なお、図12図15において、黒矢印、白抜き矢印、全方向移動車輪(左前駆動輪4FLa、右前駆動輪4FRa、後駆動輪4BC)の黒及び白で表されている状態は、図4図5における状態と同じである。
【0101】
図12図15の全方向移動車輪である左前の駆動輪である左前駆動輪4FLa、右前の駆動輪である右前駆動輪4FRa、後の駆動輪である後駆動輪4BCは、例えば隣接する一対の駆動輪(全方向移動車輪)の駆動軸線4JL(図3参照)が互いに交差(角度120度)するように全方向移動台車に対して配置されている。
【0102】
図12は、全方向移動台車が直進方向に走行する例である。図12において、左前駆動輪4FLaにはボディ2Aを後方向と左方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRaにはボディ2Aを前方向と左方向に移動させる力が生じており、後駆動輪4BCはボディ2Aを左方向に移動させる力を生じている。したがって、全方向移動台車は、直進方向に走行する。
【0103】
図13は、全方向移動台車がその場で右旋回する例である。図13において、左前駆動輪4FLaにはボディ2Aを前方向と右方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRaにはボディ2Aを後方向と右方向に移動させる力が生じており、後駆動輪4BCはボディ2Aを左方向に移動させる力を生じている。したがって、全方向移動台車は、その場で右旋回する。
【0104】
図14は、駆動軸線4JLが互いに交差する2つの全方向移動車輪(左前駆動輪4FLa、後駆動輪4BC)を選定した場合である。図14は、全方向移動台車が直進方向に走行する例である。図14において、左前駆動輪4FLaにはボディ2Aを後方向と左方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRaは停止され移動させる力を生じておらず、後駆動輪4BCにはボディ2Aを左方向に移動させる力が生じている。したがって、全方向移動台車は、直進方向に走行する。
【0105】
図15は、駆動軸線4JLが互いに交差する2つの全方向移動車輪(左前駆動輪4FLa、右前駆動輪4FRa)を選定した場合である。図15は、全方向移動台車がその場で右旋回する例である。図15において、左前駆動輪4FLaにはボディ2Aを前方向と右方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRaにはボディ2Aを右旋回させる力が生じており、後駆動輪4BCは停止され移動させる力を生じていない。したがって、全方向移動台車は、その場で右旋回する。
【0106】
図16図19を用いて、全方向移動車輪の配置が図12図15とは異なる全方向移動台車における、同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合の全方向移動台車(3輪)の走行の例を説明する。図16図17は同時に使用するモータユニットを制限しない場合(3輪同時駆動)の全方向移動台車(3輪)の走行方向を説明する模式図である。図18図19は、同時に使用するモータユニットを2個に制限した場合(2輪同時駆動)の全方向移動台車(3輪)の走行方向を説明する模式図である。なお、図16図19において、黒矢印、白抜き矢印、全方向移動車輪(左前駆動輪4FLb、右前駆動輪4FRb、後駆動輪4BC)の黒及び白で表されている状態は、図4図5における状態と同じである。
【0107】
図16図19の対向する一対の全方向移動車輪である左前駆動輪4FLbと右前駆動輪4FRbは、それぞれの駆動軸線4JL(図3参照)が互いに一致するように全方向移動台車に対して配置されている。
【0108】
図16は、全方向移動台車が直進方向に走行する例である。図16において、左前駆動輪4FLbにはボディ2Bを前方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRbにはボディ2Bを前方向に移動させる力が生じており、後駆動輪4BCはボディ2Bを左方向に移動させる力を生じている。したがって、全方向移動台車は、直進方向に走行する。
【0109】
図17は、全方向移動台車がその場で右旋回する例である。図17において、左前駆動輪4FLbにはボディ2Bを前方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRbにはボディ2Bを後方向に移動させる力が生じており、後駆動輪4BCはボディ2Bを左方向に移動させる力を生じている。したがって、全方向移動台車は、その場で右旋回する。
【0110】
図18は、対向する一対の全方向移動車輪である左前駆動輪4FLbと右前駆動輪4FRbを選定した場合である。図18は、全方向移動台車が直進方向に走行する例である。図18において、左前駆動輪4FLbにはボディ2Bを前方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRbにはボディ2Bを前方向に移動させる力が生じており、後駆動輪4BCは移動させる力を生じていない。したがって、全方向移動台車は、直進方向に走行する。
【0111】
図19は、対向する一対の全方向移動車輪である左前駆動輪4FLbと右前駆動輪4FRbを選定した場合である。図19は、全方向移動台車がその場で右旋回する例である。図19において、左前駆動輪4FLbにはボディ2Bを前方向に移動させる力が生じ、右前駆動輪4FRbにはボディ2Bを後方向に移動させる力が生じており、後駆動輪4BCは停止され移動させる力を生じていない。したがって、全方向移動台車は、その場で右旋回する。
●[本願の効果]
【0112】
以上に説明したように、本願の発明に係る全方向移動台車は、モータユニット(電動モータ、ドライバ回路)を備えた全方向移動台車において、バッテリの供給可能な電流に応じて駆動させるモータユニットの数を制限し、モータユニットで消費される全消費電流を減らし、稼働可能な時間をより延長させることができる。また、バッテリ等に何らかの異常が生じ、供給可能電流が低下した場合でも、稼働を維持できる。
【0113】
本発明の全方向移動台車は、本実施の形態で説明した構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。特に、全方向移動車輪の個数及び配置は本願の実施形態の説明における個数(3個、4個)及び配置に限定されない。また、全ての全方向移動車輪が同一である例で示したが、それぞれが異なるものでも良い。
【0114】
モータユニットは、電動モータとドライバ回路がそれぞれ別々に設けられて構成されても、電動モータにドライバ回路が組み込まれて一体として設けられ構成されても良い。また、モータユニットは、それぞれの電動モータに対するそれぞれのドライバ回路が1つの回路として構成されても、それぞれの電動モータに対するそれぞれのドライバ回路が1つの回路基板上に設けられて構成されても良い。
【0115】
バッテリ状態検出手段(38M1、38M2、38M3、38M4)(図2参照)は、本実施の形態に限定されず、少なくとも1つあれば良い。バッテリ(38B1、38B2、38B3、38B4)(図2参照)は、本実施の形態に限定されず、少なくとも1つあれば良い。バッテリ状態検出手段(38M1、38M2、38M3、38M4)は、例えばバッテリマネージメントシステム(BMS)のようなバッテリを監視するシステムでも良い。
【0116】
モータユニットの全消費電流(A)の予測は、ドライバ回路による計測による予測に限定されず、バッテリ(38B1、38B2、38B3、38B4)からモータユニットへ電流を供給するそれぞれの経路において別途電流計測手段を設けて計測して行っても良い。全消費電流(A)の予測は、冗長性を持たせるためドライバ回路(モータユニット)だけでなくバッテリ状態検出手段、上記電流計測手段を組み合わせて行っても良い。
【0117】
図4図8図12図19における全方向移動台車の走行の説明は、例であるため、実際の走行におけるモータユニットの選定及び制御量については、使用場所、取り付けされているアタッチメントの種類、全方向移動台車の用途、走行ルート等に依存する。
【符号の説明】
【0118】
1 全方向移動台車
2 ボディ(台車部)
3 荷台
4FL 左前駆動輪(全方向移動車輪)
4FR 右前駆動輪(全方向移動車輪)
4BL 左後駆動輪(全方向移動車輪)
4BR 右後駆動輪(全方向移動車輪)
4FLa 左前駆動輪(全方向移動車輪)
4FRa 右前駆動輪(全方向移動車輪)
4FLb 左前駆動輪(全方向移動車輪)
4FRb 右前駆動輪(全方向移動車輪)
4BC 後駆動輪(全方向移動車輪)
4JK 駆動軸
4JL 駆動軸線
4W 車輪
4R 回転ローラ
11 物体検出手段
12L 左床面検出手段
12R 右床面検出手段
13A メインスイッチ
13B 走行開始スイッチ
31 タッチモニタ
32 アンテナ
33 音声出力手段
34 通信用コネクタ
35D1 ドライバ回路
35D2 ドライバ回路
35D3 ドライバ回路
35D4 ドライバ回路
35DU ドライバユニット
35FL 電動モータ
35FR 電動モータ
35BL 電動モータ
35BR 電動モータ
35MU1 モータユニット
35MU2 モータユニット
35MU3 モータユニット
35MU4 モータユニット
38 バッテリ
38B1 バッテリ
38B2 バッテリ
38B3 バッテリ
38B4 バッテリ
38M1 バッテリ状態検出手段
38M2 バッテリ状態検出手段
38M3 バッテリ状態検出手段
38M4 バッテリ状態検出手段
38U バッテリユニット
40 制御装置
41 制御手段
41a 位置検出手段
42 記憶手段
42V 地図情報
UP 使用場所
WP 指定場所
CP 充電場所
P01 現在位置
LW1 目的地移動距離
LW2 充電移動距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21