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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019019484
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020124876
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】逸見 祐輔
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-330497(JP,A)
【文献】特開平08-137034(JP,A)
【文献】特開2006-150627(JP,A)
【文献】特開2014-028463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主走査方向に移動自在に配設されたキャリッジと、
(b)該キャリッジに搭載された記録ヘッドと、
(c)キャリッジ移動用の駆動部を駆動してキャリッジを移動させるキャリッジ駆動処理部と、
(d)キャリッジの移動に伴って、記録媒体に光を照射し、反射光を受けてセンサ出力を発生させる光学検出部と、
(e)該光学検出部のセンサ出力に基づいて記録媒体の記録面の反射特性を取得し、記録面の反射特性に基づいて、記録媒体にテストパターンの画像を形成するためのパターン画像形成位置を設定する媒体情報取得処理部と、
(f)前記各記録ヘッドを駆動し、記録媒体に設定された前記パターン画像形成位置にテストパターンの画像を形成するパターン画像形成処理部と、
(g)前記光学検出部によって、パターン画像形成位置に形成されたテストパターンの画像を検出するパターン画像検出処理部と、
(h)該パターン画像検出処理部によるテストパターンの画像の検出結果に基づいて、画像形成条件を設定する画像形成条件設定部とを有するとともに、
(i)前記記録媒体に、互いに反射特性が異なり、帯状の形状を有する第1、第2の領域が交互に形成され、
(j)前記媒体情報取得処理部は、前記第1、第2の領域のうちの一方の領域に前記パターン画像形成位置を設定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
(a)テストパターンの画像は、主走査方向に並べて形成された複数のテストパッチから成り、
(b)該各テストパッチは、記録媒体に設定されたパターン画像形成位置に形成される請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記パターン画像形成処理部は、キャリッジの往路において記録ヘッドがインクを吐出する第1のタイミングと、キャリッジの復路において記録ヘッドがインクを吐出する第2のタイミングとを異ならせることによってテストパターンの画像を形成する請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記画像形成条件設定部は、光学検出部がテストパターンの画像を検出したときのセンサ出力に基づいて、記録ヘッドからインクが吐出されるタイミングを調整するための補正値を算出し、画像形成条件として設定する請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ
【請求項5】
記媒体情報取得処理部は、光学検出部が第1の領域に光を照射したときの反射光によるセンサ出力の検出電圧が、光学検出部が第2の領域に光を照射したときの反射光によるセンサ出力の検出電圧より高い場合に、第2の領域にパターン画像形成位置を設定する請求項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置、例えば、インクジェットプリンタにおいては、キャリッジがレールに沿って往復移動させられ、記録媒体が搬送され、キャリッジに搭載された記録ヘッドからインクが吐出され、記録媒体に付着させられることによって文字、イメージ等の画像が形成され、印刷が行われるようになっている。
【0003】
この種のインクジェットプリンタでは、画像を形成するために、キャリッジの往路と復路とで同じ位置にドットを形成する必要がある。そのために、記録媒体にテストパターンの画像、すなわち、パターン画像が形成され、光学センサによってパターン画像が検出され、パターン画像の検出結果である光学センサのセンサ出力に基づいて、記録ヘッドからインクが吐出されるタイミングが調整されるようになっている。
【0004】
この場合、光学センサの発光部からパターン画像に向けて照射された光の反射光が、光学センサの受光部において受光され、受光部によって発生させられたセンサ出力としての検出電圧に基づいて、インクが吐出されるタイミングを調整するための補正値が算出される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2 0 1 4 - 1 1 1 3 2 6 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のインクジェットプリンタにおいては、記録媒体の記録面の反射特性が位置によって異なる場合に、互いに異なる反射特性の境界上にパターン画像が形成されていると、光学センサのセンサ出力が反射特性の境界で変化するので、パターン画像を精度良く検出することができない。
【0007】
したがって、記録ヘッドからインクが吐出されるタイミングを精度良く調整することができず、画像品位が低くなってしまう。
【0008】
本発明は、前記従来のインクジェットプリンタの問題点を解決して、テストパターンの画像を精度良く検出することができ、記録ヘッドからインクが吐出されるタイミングを精度良く調整することができ、画像品位を向上させることができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明のインクジェットプリンタにおいては、主走査方向に移動自在に配設されたキャリッジと、該キャリッジに搭載された記録ヘッドと、キャリッジ移動用の駆動部を駆動してキャリッジを移動させるキャリッジ駆動処理部と、キャリッジの移動に伴って、記録媒体に光を照射し、反射光を受けてセンサ出力を発生させる光学検出部と、該光学検出部のセンサ出力に基づいて記録媒体の記録面の反射特性を取得し、記録面の反射特性に基づいて、記録媒体にテストパターンの画像を形成するためのパターン画像形成位置を設定する媒体情報取得処理部と、前記各記録ヘッドを駆動し、記録媒体に設定された前記パターン画像形成位置にテストパターンの画像を形成するパターン画像形成処理部と、前記光学検出部によって、パターン画像形成位置に形成されたテストパターンの画像を検出するパターン画像検出処理部と、該パターン画像検出処理部によるテストパターンの画像の検出結果に基づいて、画像形成条件を設定する画像形成条件設定部とを有する。
そして、前記記録媒体に、互いに反射特性が異なり、帯状の形状を有する第1、第2の領域が交互に形成される。
また、前記媒体情報取得処理部は、前記第1、第2の領域のうちの一方の領域に前記パターン画像形成位置を設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクジェットプリンタにおいては、主走査方向に移動自在に配設されたキャリッジと、該キャリッジに搭載された記録ヘッドと、キャリッジ移動用の駆動部を駆動してキャリッジを移動させるキャリッジ駆動処理部と、キャリッジの移動に伴って、記録媒体に光を照射し、反射光を受けてセンサ出力を発生させる光学検出部と、該光学検出部のセンサ出力に基づいて記録媒体の記録面の反射特性を取得し、記録面の反射特性に基づいて、記録媒体にテストパターンの画像を形成するためのパターン画像形成位置を設定する媒体情報取得処理部と、前記各記録ヘッドを駆動し、記録媒体に設定された前記パターン画像形成位置にテストパターンの画像を形成するパターン画像形成処理部と、前記光学検出部によって、パターン画像形成位置に形成されたテストパターンの画像を検出するパターン画像検出処理部と、該パターン画像検出処理部によるテストパターンの画像の検出結果に基づいて、画像形成条件を設定する画像形成条件設定部とを有する。
そして、前記記録媒体に、互いに反射特性が異なり、帯状の形状を有する第1、第2の領域が交互に形成される。
また、前記媒体情報取得処理部は、前記第1、第2の領域のうちの一方の領域に前記パターン画像形成位置を設定する。
【0011】
この場合、光学検出部のセンサ出力に基づいて記録媒体の記録面の反射特性が取得され、取得された反射特性に基づいてパターン画像形成位置が設定され、設定されたパターン画像形成位置にテストパターンの画像が形成されるので、反射特性の境界上にテストパターンの画像が形成されることがない。
【0012】
したがって、光学検出部のセンサ出力が反射特性の境界で変化することがないので、テストパターンの画像を精度良く検出することができる。
【0013】
その結果、記録ヘッドからインクが吐出されるタイミングを精度良く調整することができるので、画像品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態におけるインクジェットプリンタの制御ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態におけるインクジェットプリンタの要部を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態における記録媒体として再帰性反射メディアを使用した場合の光学センサのセンサ出力の例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における基本パターン画像の例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における基準パターン画像の例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における比較パターン画像の例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態におけるインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態におけるパターン画像形成位置及びパターン画像検出位置を説明するための第1の図である。
図9】本発明の実施の形態における再帰性反射メディアから成る記録媒体の断面図である。
図10】本発明の実施の形態におけるパターン画像形成位置及びパターン画像検出位置を説明するための第2の図である。
図11】本発明の実施の形態におけるパターン画像形成位置及びパターン画像検出位置を説明するための第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのインクジェットプリンタについて説明する。
【0016】
図2は本発明の実施の形態におけるインクジェットプリンタの要部を示す斜視図である。
【0017】
図において、10はインクジェットプリンタ、Frは該インクジェットプリンタ10のフレームである。
【0018】
該フレームFrは、インクジェットプリンタ10の本体、すなわち、装置本体を前側(図において手前側)から見たときの左端から右端にかけて延在させて配設された受け板RB、該受け板RBの左端から立ち上げて形成された第1の主フレームとしてのサイドプレートPL1、受け板RBの右端から立ち上げて形成された第2の主フレームとしてのサイドプレートPR1、前記サイドプレートPL1より所定の距離だけ右方において受け板RBから立ち上げて形成された第1の副フレームとしての枠体PL2、前記サイドプレートPR1より所定の距離だけ左方において受け板RBから立ち上げて形成された第2の副フレームとしての枠体PR2、各サイドプレートPL1、PR1及び枠体PL2、PR2をインクジェットプリンタ10の背面において連結する背壁Wr、各サイドプレートPL1、PR1及び枠体PL2、PR2の各上端を連結する上板PT等を備える。
【0019】
前記サイドプレートPL1、PR1間にレール15が配設(架設)され、該レール15に沿ってキャリッジ17が左右方向、すなわち、主走査方向に移動自在に配設される。そのために、前記サイドプレートPL1に駆動側のプーリ18が、サイドプレートPR1に従動側のプーリ19が回転自在に配設され、駆動側のプーリ18と従動側のプーリ19とによって無端ベルト21が走行自在に張設され、該無端ベルト21の所定の箇所に前記キャリッジ17が取り付けられる。
【0020】
該キャリッジ17内には、一つ又は複数の、本実施の形態においては、カラーの画像を形成することができるように、後述される複数の、本実施の形態においては、4個の記録ヘッドHdi(i=1、2、…、4)(図3)がノズル面を下方に向けて配設される。また、駆動側のプーリ18に近接させてキャリッジ移動用の駆動部としてのキャリッジモータ22が配設される。また、キャリッジ17のハウジングHsのサイドプレートPL1側の側面に、光学検出部としての光学センサ24が配設される。
【0021】
本実施の形態において、各記録ヘッドHdiは、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色のインクを吐出する。
【0022】
各記録ヘッドHdiは、2〔inch〕の幅を有し、副走査方向に1024〔個〕のノズルから成るノズル列を備えるので、約49.6〔μm〕のピッチで最大で1024〔個〕のドットを形成することができる。
【0023】
前記キャリッジモータ22を駆動することによって前記駆動側のプーリ18を回転させ、無端ベルト21を走行させると、キャリッジ17が主走査方向に移動させられ、各記録ヘッドHdiが主走査方向に移動させられる。
【0024】
前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させてリニアスケール23が配設され、キャリッジ17に配設された後述されるエンコーダ35が、リニアスケール23の目盛りを読み取ることによってキャリッジ17の位置を検出する。エンコーダ35のセンサ出力は、A/D変換されて位置信号になり、後述される制御部80(図1)のキャリッジ駆動処理部Pr3が、位置信号を読み込み、キャリッジ17の位置及び移動速度を算出し、キャリッジ17を移動させる。
【0025】
このとき、キャリッジ17の位置に対応させて、各記録ヘッドHdiから各色のインクが記録媒体Pに向けて吐出され、記録媒体Pに付着させられることによって、記録媒体Pに文字、イメージ等の画像が形成される。
【0026】
このようにして、記録ヘッドHdiによる記録、すなわち、印刷が行われる。
【0027】
なお、記録媒体Pとしては、用紙のほかに、塩化ビニル、PET等の樹脂製のフィルム等を使用することができる。
【0028】
また、前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に、すなわち、主走査方向に延在させて、プレート状の形状を有するプラテン25が配設される。該プラテン25は、前記受け板RB上における枠体PL2、PR2間に延在させられ、プラテン25上を搬送される記録媒体Pを支持する。
【0029】
そして、前記プラテン25の下方に、記録媒体Pを負圧によってプラテン25に引き寄せるための図示されない空気吸引装置が配設される。該空気吸引装置は、プラテン25の下方の全域に形成され、吸引室、吸引用のファン等から成り、該吸引用のファンによって、プラテン25に形成された複数の孔を介してプラテン25上の空気が吸引されることにより、記録媒体Pがプラテン25によって平坦に支持される。
【0030】
また、プラテン25より後方に、第1の媒体案内部としての図示されないリヤペーパガイドが配設され、該リヤペーパガイドは、図示されない繰出ロールから繰り出された記録媒体Pをプラテン25に向けて案内する。そのために、前記リヤペーパガイドとプラテン25との間に、搬送部材としての搬送ローラ対30が回転自在に配設される。
【0031】
該搬送ローラ対30は、プラテン25に隣接させて、インクジェットプリンタ10の走査方向に延在させて回転自在に配設された第1のローラとしての搬送ローラ31、及び該搬送ローラ31より上方において所定のピッチで複数箇所に回転自在に配設され、記録媒体Pを搬送ローラ31に押し付ける第2のローラとしてのピンチローラ32から成る。後述される搬送用の駆動部としての搬送モータ34を駆動し、搬送ローラ31を回転させると、ピンチローラ32が連れ回りで回転させられる。
【0032】
これにより、記録媒体Pは、搬送ローラ31とピンチローラ32とによって挟まれた状態で前記繰出ロールから繰り出され、前記リヤペーパガイド上をプラテン25に向けて送られる。そして、プラテン25上を搬送されている間に、記録媒体Pと記録ヘッドHdiのノズル面とが対向させられ、記録ヘッドHdiからインクが吐出され、記録媒体Pに付着させられる。
【0033】
この場合、マルチパス方式によって印刷が行われ、搬送モータ34を駆動して記録媒体Pを所定の距離搬送した後、搬送モータ34を停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインクを吐出することによって、1走査が行われ、この動作が複数回繰り返され、複数の走査が行われることによって、1ライン分の画像が形成される。
【0034】
なお、シングルパス方式によって印刷を行う場合は、前記記録媒体Pを搬送する距離が記録ヘッドHdiのノズル列の長さと等しくされ、1回の走査を行うことによって1ライン分の画像が形成される。
【0035】
また、前記プラテン25より前方に、印刷が行われた後の記録媒体Pを案内し、排出するための第2の媒体案内部としてのフロントペーパガイド33が配設される。該フロントペーパガイド33は、前記プラテン25から水平方向に排出された記録媒体Pを下方に向けて案内するために、湾曲した形状を有する。
【0036】
したがって、記録媒体Pは、前記リヤペーパガイドによって案内されてプラテン25に送られ、プラテン25上において、記録ヘッドHdiから吐出されたインクが付着させられて印刷が行われ、印刷が行われた後、フロントペーパガイド33によって案内され、フレームFrに配設された図示されない巻取装置に送られて、巻き取られる。
【0037】
なお、前記リヤペーパガイド、プラテン25及びフロントペーパガイド33には加熱部材としての図示されないヒータが埋設され、記録媒体Pが、リヤペーパガイドにおいて予熱され、プラテン25及びフロントペーパガイド33において加熱されることによって、記録媒体Pに付着したインクが乾燥するのが促進される。
【0038】
前記サイドプレートPL1と前記枠体PL2との間にホームポジションが、前記枠体PR2とサイドプレート前記PR1との間に退避ポジションが設定され、キャリッジ17は、ホームポジション及び退避ポジションにおいて折り返し、往復移動する。
【0039】
そして、前記ホームポジションに、記録ヘッドHdiのノズル面を覆い、インクの乾燥を防止するキャップ、ノズル内で粘度が高くなったインクを受けるインク受け等から成る第1のメンテナンス装置としてのキャップユニット41が配設される。また、前記退避ポジションに、記録ヘッドHdiのノズルを良好な状態に保持するために、各記録ヘッドHdiのノズル面を擦り、ノズル面に付着した汚れ、インク等を除去する図示されないワイパを備えた第2のメンテナンス装置としてのワイプユニット42が配設される。
【0040】
本実施の形態におけるインクジェットプリンタ10のように、キャリッジ17を往復移動させながら記録媒体Pに画像を形成する場合、キャリッジ17をホームポジション側から退避ポジション側に移動させる経路である往路と、キャリッジ17を退避ポジション側からホームポジション側に移動させる経路である復路とで、同一の画素についてドットが重なるようにインクが吐出される必要がある。
【0041】
そこで、本実施の形態においては、記録媒体Pにテストパターンの画像、すなわち、パターン画像が形成され、前記光学センサ24によってパターン画像が検出され、パターン画像の検出結果である光学センサ24のセンサ出力に基づいて、キャリッジ17の往路及び復路において記録ヘッドHdiからインクが吐出されるタイミングが調整される。
【0042】
ところが、形成される材料、構造等により、記録面の反射特性が位置によって異なる記録媒体Pが使用される場合、互いに異なる反射特性の境界上にパターン画像が形成されると、光学センサ24のセンサ出力が反射特性の境界で変化するので、パターン画像を精度良く検出することができない。
【0043】
次に、記録媒体Pとして再帰性反射メディアを使用した場合の、光学センサ24のセンサ出力について説明する。
【0044】
図3は本発明の実施の形態における記録媒体として再帰性反射メディアを使用した場合の光学センサのセンサ出力の例を示す図である。
【0045】
図において、Pは再帰性反射メディアから成る記録媒体、Eg1は該記録媒体Pにおけるホームポジション側の縁部、Eg2は記録媒体Pにおける退避ポジション側の縁部、17はキャリッジ、Hdiは記録ヘッド、18、19はプーリ、21は無端ベルト、22はキャリッジモータ、23はリニアスケール、24は光学センサ、25はプラテン、32はピンチローラ、35はエンコーダである。
【0046】
前記記録媒体Pには、後述される第1、第2のプリズム層Sp1、Sp2(図9)の反射特性の差によって、第1の領域としての、副走査方向に延びる帯状の明るい部分、すなわち、明部Ar1と、第2の領域としての、副走査方向に延びる帯状の暗い部分、すなわち、暗部Ar2とが、主走査方向において交互に形成される。
【0047】
また、前記光学センサ24は、後述される発光部27(図1)及び受光部28を備え、発光部27はプラテン25側に光を放射し、受光部28は反射光を受光して検出電圧を発生させる。
【0048】
反射光がプラテン25で反射されたものである場合、受光部28の検出電圧はほぼ一様な値gpになる。これに対して、反射光が記録媒体Pで反射されたものである場合、受光部28の検出電圧はわずかに変動し、明部Ar1においてほぼ値g1になり、暗部Ar2においてほぼ値g2になり、各値gp、g1、g2は、
g1>g2>gp
になる。
【0049】
再帰性反射メディアから成る記録媒体Pに、明部Ar1及び暗部Ar2にわたってパターン画像が形成され、光学センサ24によってパターン画像が検出されると、明部Ar1と暗部Ar2とで反射特性が異なるので、光学センサ24のセンサ出力が、互いに異なる反射特性の境界、すなわち、明部Ar1と暗部Ar2との境界で変化し、パターン画像を精度良く検出することができない。
【0050】
そこで、本実施の形態においては、エンコーダ35によってキャリッジ17の位置を検出し、光学センサ24のセンサ出力をキャリッジ17の位置ごとに取得し、記録媒体Pの記録面の反射特性に応じた位置にパターン画像を形成し、パターン画像を検出するようにしている。
【0051】
次に、インクジェットプリンタ10の制御装置について説明する。
【0052】
図1は本発明の実施の形態におけるインクジェットプリンタの制御ブロック図である。
【0053】
図において、10はインクジェットプリンタ、24は光学センサ、51は操作パネル、80は、前記インクジェットプリンタ10の全体のシーケンスを制御し、印刷制御を行う制御部、81は不揮発性メモリから成る第1の記憶部としてのROM、82は揮発性メモリから成る第2の記憶部としてのRAM、83は、上位装置としての、かつ、情報処理装置としての図示されないホストコンピュータから印刷データを受信し、前記RAM82に記録するインタフェース制御部である。本実施の形態においては、印刷データがUSBケーブルを介して受信されるようになっているが、無線LANを介して受信されるようにすることもできる。
【0054】
前記光学センサ24は、前記キャリッジ17(図2)のハウジングHsのサイドプレートPL1側の側面に配設され、キャリッジ17の移動に伴って主走査方向に移動させられる。光学センサ24は、LED等から成る発光部27、ホトトランジスタ等から成る受光部28及び図示されないセンサドライバを備え、発光部27が、センサドライバによる駆動信号に基づいて所定のサンプリング周期で、前記プラテン25上で停止させられた記録媒体Pに光を照射し、受光部28が反射光を受光し、このとき生成されるアナログの検出信号が前記センサドライバによってA/D変換されて、検出電圧になる。
【0055】
前記操作パネル51は、インクジェットプリンタ10の状態を表示するためのLED画面等から成る表示部54、及び操作者がインクジェットプリンタ10への指示を入力するためのスイッチ、キー等から成る操作部55を備える。なお、操作パネル51がタッチパネルによって形成されている場合、操作パネル51は表示部として機能するとともに、操作部としても機能する。
【0056】
そして、前記制御部80は、図示されない演算装置としてのCPU、入出力ポート、タイマ等を備え、ROM81に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。
【0057】
ROM81には、前記プログラムのほかに、各種の初期設定値、パターン画像の画像データ等が記録される。また、RAM82には、前記印刷データに基づいて生成され、通常の印刷を行うための画像データのほかに、各種の制御用のデータが一時的に記録される。なお、RAM82は、前記CPUが演算を行う際にワークエリアとして機能する。
【0058】
また、前記制御部80は、パターン画像形成処理部としてのヘッド駆動処理部Pr1、搬送処理部Pr2、キャリッジ駆動処理部Pr3、媒体情報取得処理部Pr4、パターン画像検出処理部Pr5、画像形成条件設定部Pr6等を備える。
【0059】
前記ヘッド駆動処理部Pr1は、印刷が開始される前に、前記ROM81からパターン画像の画像データを読み出し、記録ヘッドHdiに送り、該記録ヘッドHdiを駆動して記録媒体Pにパターン画像を形成する。また、前記ヘッド駆動処理部Pr1は、印刷が開始されると、前記RAM82から印刷データを読み出し、印刷データに対してデータ変換を行い、画像データを生成し、生成した画像データを記録ヘッドHdiに送り、該記録ヘッドHdiを駆動して記録媒体Pに画像を形成する。
【0060】
なお、前記記録ヘッドHdiには、ノズルごとに駆動素子としてのピエゾ素子26が配設される。該ピエゾ素子26の両端に配設された図示されない電極間に所定の電圧が印加されると、電圧に応じてピエゾ素子26が駆動され、伸縮させられ、これにより、記録ヘッドHdiにおいてノズルにインクを送る流路の側壁が変形させられる。そして、インクの流路の断面積がピエゾ素子26の伸縮に応じて変化することによって、インクの流路の断面積の変化分の量のインクがインク滴となってノズルから吐出される。
【0061】
前記搬送処理部Pr2は、搬送モータ34に駆動信号を送り、該搬送モータ34を駆動し、前記搬送ローラ対30(図2)を回転させ、記録媒体Pを副走査方向に搬送する。
【0062】
前記キャリッジ駆動処理部Pr3は、PWM制御によってキャリッジモータ22を駆動し、前記無端ベルト21を走行させ、キャリッジ17を主走査方向に往復移動させる。
【0063】
そのために、キャリッジ駆動処理部Pr3は、ROM81からキャリッジ17の目標位置及び目標速度を読み出し、前記エンコーダ35のセンサ出力を読み込み、該センサ出力をA/D変換してキャリッジ17の位置を算出し、制御値としてのPWM制御信号を発生させてキャリッジモータ22に送る。該キャリッジモータ22は、PWM制御信号を受けて、PWM制御信号のデューティに比例させて回転速度を変化させ、キャリッジ17を、加速したり減速したりして目標速度で目標位置に移動させる。
【0064】
また、キャリッジ駆動処理部Pr3は、キャリッジ17の位置をヘッド駆動処理部Pr1に送り、該ヘッド駆動処理部Pr1は、キャリッジ17の位置に合わせて、記録ヘッドHdiから、画像データに基づいて算出されたタイミングでインクを吐出する。
【0065】
前記媒体情報取得処理部Pr4は、記録媒体Pにパターン画像を形成するに当たり、プラテン25上の記録媒体Pの位置を検出するとともに、記録媒体Pの記録面の特性を取得する。
【0066】
前記パターン画像検出処理部Pr5は、記録媒体Pに形成されたパターン画像を検出する。
【0067】
前記画像形成条件設定部Pr6は、パターン画像の検出結果に基づいて、記録ヘッドHdiからインクを吐出するタイミングを調整する。
【0068】
次に、前記パターン画像について説明する。なお、各記録ヘッドHdiについてインクを吐出するタイミングを調整する必要があるので、本実施の形態においては、各記録ヘッドHdiごとに各色のパターン画像が形成される。
【0069】
図4は本発明の実施の形態における基本パターン画像の例を示す図、図5は本発明の実施の形態における基準パターン画像の例を示す図、図6は本発明の実施の形態における比較パターン画像の例を示す図である。
【0070】
図において、Ptはストライプ状のパターンから成る基本パターン画像、PAは基本パターン画像Ptに基づいて作成された第1のパターン画像としての基準パターン画像、PBは基準パターン画像PAに基づいて作成された第2のパターン画像としての比較パターン画像である。
【0071】
前記基本パターン画像Ptは、帯状の形状を有し、記録ヘッドHdi(図3)の所定のノズルからインクを吐出することによって形成される複数の、図においては、3個の画像領域Dr1、及び帯状の形状を有し、インクを吐出しないことによって形成される複数の、図においては、3個の非画像領域Dr2から成る。各画像領域Dr1及び非画像領域Dr2は、10〔mm〕~20〔mm〕の幅を有し、互いに隣接させて交互に配列される。
【0072】
前記画像領域Dr1は、0.5〔mm〕~1.5〔mm〕の幅を有し、副走査方向に延びるドット列を、主走査方向において複数、例えば、10〔本〕~20〔本〕形成することによって形成される。また、非画像領域Dr2は、主走査方向において画像領域Dr1の幅と同じ幅になるように、ドット列を形成することなく形成される。
【0073】
なお、前記基本パターン画像Ptはインクジェットプリンタ10の状況、例えば、使用される記録媒体Pの種類に応じて各種作成され、ROM81に記録される。
【0074】
また、基準パターン画像PAは、主走査方向における複数箇所、本実施の形態においては、9箇所に形成されたテストパッチPaj(j=1、2、…、9)から成り、該各テストパッチPajは、キャリッジ17の往路において、基本パターン画像Ptを繰り返し形成することによって形成される。
【0075】
そして、比較パターン画像PBは、主走査方向における複数箇所、本実施の形態においては、9箇所に形成されたテストパッチPbj(j=1、2、…、9)から成り、該各テストパッチPbjは、キャリッジ17の往路において基準パターン画像PAを形成し、キャリッジ17の復路において、基準パターン画像PAの各テストパッチPajに、わずかずつ印字タイミングをずらして基本パターン画像Ptを重ねて形成することによって形成される。
【0076】
例えば、キャリッジ17の往路において、初期値として設定された第1のタイミングでインクが吐出されて基本パターン画像Ptが形成され、テストパッチPa1が形成され、キャリッジ17の復路において、第1のタイミングより時間4τ遅くした第2のタイミングでインクが吐出され、テストパッチPa1に基本パターン画像Ptが重ねて形成され、これにより、テストパッチPb1が形成される。
【0077】
本実施の形態において、時間τはキャリッジ17を主走査方向に移動させて1ドットを形成する時間に設定される。したがって、第1のタイミングで形成される基本パターン画像Ptと、第2のタイミングで形成される基本パターン画像Ptとが4ドット分ずらされてテストパッチPb1が形成される。
【0078】
同様に、キャリッジ17の復路において、第1のタイミングより時間3τ遅い第2のタイミングでインクが吐出されて、3ドット分ずらされた基本パターン画像PtによってテストパッチPb2が形成され、第1のタイミングより時間2τ遅い第2のタイミングでインクが吐出され、2ドット分ずらされた基本パターン画像PtによってテストパッチPb3が形成され、第1のタイミングより時間1τ遅い第2のタイミングでインクが吐出され、1ドット分ずらされた基本パターン画像PtによってテストパッチPb4が形成され、第1のタイミングと同じ第2のタイミングでインクが吐出され、同じ基本パターン画像PtによってテストパッチPb5が形成される。
【0079】
また、第1のタイミングより時間1τ早い第2のタイミングでインクが吐出され、1ドット分ずらされた基本パターン画像PtによってテストパッチPb6が形成され、第1のタイミングより時間2τ早い第2のタイミングでインクが吐出され、2ドット分ずらされた基本パターン画像PtによってテストパッチPb7が形成され、第1のタイミングより時間3τ早い第2のタイミングでインクが吐出され、3ドット分ずらされた基本パターン画像PtによってテストパッチPb8が形成され、第1のタイミングより時間4τ早い第2のタイミングでインクが吐出され、4ドット分ずらされた基本パターン画像PtによってテストパッチPb9が形成される。
【0080】
このようにして、比較パターン画像PBにおいて、各テストパッチPbjのうちの最も幅が狭い画像領域Dr1から成るテストパッチPb6が形成されるときの第1、第2のタイミングでインクを吐出することによって、キャリッジ17の往路と復路とで同じ位置にドットが形成される。
【0081】
次に、インクジェットプリンタ10の動作について説明する。
【0082】
図7は本発明の実施の形態におけるインクジェットプリンタの動作を示すフローチャート、図8は本発明の実施の形態におけるパターン画像形成位置及びパターン画像検出位置を説明するための第1の図である。
【0083】
まず、搬送処理部Pr2(図1)は搬送モータ34を駆動し、記録媒体P(図2)を繰出ロールから繰り出し、プラテン25に送り、プラテン25上で停止させる。
【0084】
次に、媒体情報取得処理部Pr4は、キャリッジ駆動処理部Pr3に指示を送り、キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ17をホームポジション側から退避ポジション側に往路を移動させ、光学センサ24の発光部27によってプラテン25側に光を放射し、光学センサ24のセンサ出力を読み込み、受光部28の検出電圧が値gpから値g1又はg2に変化するキャリッジ17の位置で記録媒体Pのホームポジション側の縁部Eg1(図3)を検出し、検出電圧が値g1又はg2から値gpに変化するキャリッジ17の位置で記録媒体Pの退避ポジション側の縁部Eg2を検出し、縁部Eg1、Eg2の位置に基づいて、記録媒体Pの幅、プラテン25上の位置等を算出し、RAM82に記録する。
【0085】
次に、媒体情報取得処理部Pr4は、キャリッジ駆動処理部Pr3に指示を送り、キャリッジ17を退避ポジション側からホームポジション側に復路を移動させ、記録媒体Pの記録面上の各位置、例えば、主走査方向におけるドットピッチごとの反射特性を検出する。
【0086】
そのために、媒体情報取得処理部Pr4は、キャリッジ17を移動させている間、光学センサ24の発光部27によってプラテン25側に光を放射し、記録面上の各位置の光学センサ24のセンサ出力を読み込み、検出電圧が値g1である部分を明部Ar1とし、検出電圧が値g2である部分を暗部Ar2とし、明部Ar1及び暗部Ar2の位置を算出し、RAM82に記録する。
【0087】
続いて、媒体情報取得処理部Pr4は、記録媒体P上におけるパターン画像が形成される位置、すなわち、パターン画像形成位置、及び記録媒体Pに形成されたパターン画像が検出される位置、すなわち、パターン画像検出位置を設定する。
【0088】
ところで、記録媒体Pの明部Ar1と暗部Ar2とでは反射特性が異なり、光学センサ24のセンサ出力は明部Ar1と暗部Ar2との境界で変化するので、各テストパッチPbjが明部Ar1及び暗部Ar2にわたって形成されると、パターン画像を精度良く検出することができない。
【0089】
そこで、媒体情報取得処理部Pr4は、RAM82から明部Ar1及び暗部Ar2の位置を読み出し、各暗部Ar2のうちの9個の暗部Ar2を、パターン画像を表す比較パターン画像PBの各テストパッチPbjを形成するためのパターン画像形成位置として設定するとともに、比較パターン画像PBの各テストパッチPbjが形成された暗部Ar2のうちの、例えば、図8において○で示される領域Qをパターン画像を検出するためのパターン画像検出位置として設定し、パターン画像形成位置及びパターン画像検出位置をRAM82に記録する。
【0090】
次に、ヘッド駆動処理部Pr1は記録媒体Pにパターン画像を形成する。そのために、ヘッド駆動処理部Pr1はキャリッジ駆動処理部Pr3に指示を送り、キャリッジ駆動処理部Pr3は、キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ17をホームポジション側から退避ポジション側に移動させる。そして、ヘッド駆動処理部Pr1は、キャリッジ17の往路において前記各パターン画像形成位置、すなわち、暗部Ar2に基本パターン画像Ptを形成することによって、基準パターン画像PAの各テストパッチPajを形成する。
【0091】
また、ヘッド駆動処理部Pr1はキャリッジ駆動処理部Pr3に指示を送り、キャリッジ駆動処理部Pr3は、キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ17を退避ポジション側からホームポジション側に移動させる。そして、ヘッド駆動処理部Pr1は、キャリッジ17の復路において、前記各暗部Ar2に形成されたテストパッチPajに重ねて基本パターン画像Ptを形成することによって、比較パターン画像PBの各テストパッチPbjを形成する。このようにして、各暗部Ar2にパターン画像が形成される。
【0092】
続いて、パターン画像検出処理部Pr5は、各パターン画像検出位置において、記録媒体Pに形成されたパターン画像を検出する。そのために、パターン画像検出処理部Pr5は、キャリッジ駆動処理部Pr3に指示を送り、キャリッジモータ22を駆動させ、キャリッジ17をホームポジション側から退避ポジション側に移動させ、光学センサ24の発光部27によって光をテストパッチPbjに照射し、受光部28が発生する検出電圧を読み込み、RAM82に記録する。この場合、各パターン画像検出位置において発光部27が各テストパッチPbjに照射する光は5〔本〕~10〔本〕の光線から成り、受光部28は各光線ごとに検出電圧を発生させる。
【0093】
この場合、図6に示されるように、キャリッジ17の往路においてインクを吐出する第1のタイミングと、復路においてインクを吐出する第2のタイミングとを異ならるせことによって、画像濃度が互いに異なるテストパッチPbjが形成される。そして、テストパッチPbjごとに受光部28が発生させる検出電圧は、画像濃度が低い場合に高く、画像濃度が高い場合に低くなる。
【0094】
そこで、画像形成条件設定部Pr6は、RAM82から検出電圧を読み出し、各テストパッチPbjごとに検出電圧の平均値を算出し、該平均値が最も高いテストパッチPbjが形成されるときの第1、第2のタイミングに基づいて、インクを吐出するタイミングを調整するための補正値εを算出する。
【0095】
図6に示される各テストパッチPbjのうちのテストパッチPb6の画像濃度が最も低く、検出電圧の平均値が最も高くなるので、前記補正値εは、
ε=+1τ
になる。
【0096】
続いて、画像形成条件設定部Pr6は、補正値εをRAM82に記録する。
【0097】
したがって、その後、印刷が行われる際に、画像形成条件設定部Pr6は、RAM82から補正値εを読み出し、補正値εを画像形成条件として設定する。
【0098】
ヘッド駆動処理部Pr1は、補正値εに従ってインクを吐出するタイミングを調整し、時間1τ早くする。
【0099】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 媒体情報取得処理部Pr4は記録媒体Pの縁部Eg1、Eg2を検出する。
ステップS2 媒体情報取得処理部Pr4は記録媒体Pの各位置ごとの反射特性を検出する。
ステップS3 媒体情報取得処理部Pr4はパターン画像形成位置及びパターン画像検出位置を設定する。
ステップS4 ヘッド駆動処理部Pr1は記録媒体Pにパターン画像を形成する。
ステップS5 パターン画像検出処理部Pr5はパターン画像を検出する。
ステップS6 画像形成条件設定部Pr6は補正値εを算出する。
ステップS7 ヘッド駆動処理部Pr1はインクを吐出するタイミングを調整し、処理を終了する。
【0100】
次に、記録媒体Pとして使用される再帰性反射メディアの記録面の反射特性について説明する。
【0101】
図9は本発明の実施の形態における再帰性反射メディアから成る記録媒体の断面図である。
【0102】
図において、Pは再帰性反射メディアから成る記録媒体、Bsは支持体、Saは基層、Sbは中間層、Scはフィルム層(表面層)である。
【0103】
そして、前記中間層Sbは、屈折層としての第1、第2のプリズム層Sp1、Sp2、及び空気層Srによって形成された反射層Sd、並びに前記空気層Srの厚さを維持するとともに空気層Srを区切る支持層(結合剤層)Seを備える。
【0104】
反射層Sdに対応する部分に光が入射されると、光は、第1、第2のプリズム層Sp1、Sp2内で屈折させられて、入射した方向と逆の方向に放射される。
【0105】
前記反射層Sdにおける、第1のプリズム層Sp1に対応する部分と第2のプリズム層Sp2に対応する部分とでは、反射特性、すなわち、反射角度が数〔°〕~15〔°〕程度異なり、これにより、明部Ar1(図3)及び暗部Ar2が交互に形成される。
【0106】
したがって、図に示される再帰性反射メディアから成る記録媒体Pに、比較パターン画像PB(図6)を主走査方向に延在させて形成する場合、記録媒体Pは、明部Ar1及び暗部Ar2が副走査方向に延在するようにプラテン25上に載置される。
【0107】
これに対して、記録媒体Pが、明部Ar1及び暗部Ar2が主走査方向に延在するようにプラテン25上に載置される場合には、比較パターン画像PB(図6)を副走査方向に延在させて形成する必要がある。
【0108】
なお、反射層Sdに対応する部分に入射された光が、入射した方向と逆の方向に放射されるのに対して、前記支持層Seに対応する部分に入射された光は、再帰性反射メディアではない通常の記録媒体と同じように鏡面反射又は乱反射し、反射光が各方向に放射される。したがって、図3に示されるように、検出電圧が値g1、g2を採るときの光学センサ24のセンサ出力がわずかに変動するが、明部Ar1と暗部Ar2とが交互に形成されることほどの影響はない。
【0109】
このように、本実施の形態においては、光学センサ24のセンサ出力に基づいて記録媒体Pの記録面の反射特性が取得され、反射特性に基づいてパターン画像形成位置が設定され、パターン画像が形成されるので、反射特性の境界上にパターン画像が形成されることがない。
【0110】
したがって、光学センサ24のセンサ出力が反射特性の境界で変化することがないので、パターン画像を精度良く検出することができる。
【0111】
その結果、記録ヘッドHdiからインクを吐出するタイミングを精度良く調整することができるので、画像品位を向上させることができる。
【0112】
記録媒体Pとして再帰性反射メディアが使用される場合、受光部28が受ける光には、記録媒体Pに形成されたパターン画像で反射された光と、パターン画像を透過し、記録媒体P内の反射層Sdで反射され、更にパターン画像を透過する光とがあり、光学センサ24のセンサ出力は、反射層Sdで反射される光の影響も受けるが、パターン画像が暗部Ar2にだけ形成されるので、パターン画像を精度良く検出することができる。
【0113】
また、インクを吐出するタイミングを調整することができるだけでなく、記録媒体Pを一定の距離だけ搬送する場合の搬送量を調整することができる。
【0114】
搬送量を調整する場合、記録媒体Pに基準パターン画像PAを形成し、続いて、記録媒体Pを搬送し、比較パターン画像PBを形成するが、このとき、搬送量をわずかずつ異ならせて各テストパッチPbjが形成される。その後、光学センサ24によって比較パターン画像PBを検出し、各テストパッチPbjのうちの画像濃度が最も低いテストパッチを形成したときの搬送量に基づいて、副走査方向における記録媒体Pの搬送量が調整される。
【0115】
本実施の形態においては、記録媒体Pの暗部Ar2にパターン画像が形成されるようになっているが、明部Ar1にパターン画像が形成されるようにすることもできる。
【0116】
図10は本発明の実施の形態におけるパターン画像形成位置及びパターン画像検出位置を説明するための第2の図である。
【0117】
図において、Pは記録媒体、Ar1は明部、Ar2は暗部、PBは比較パターン画像、Pb1~Pb4はテストパッチ、Qはパターン画像検出位置が設定された領域である。
【0118】
この場合、媒体情報取得処理部Pr4(図1)は、明部Ar1にパターン画像形成位置を設定し、明部Ar1に比較パターン画像PBのテストパッチPbjを形成し、各テストパッチPbjに領域Qを設定し、光学センサ24の発光部27によって領域Qに光を照射し、光学センサ24のセンサ出力を取得する。
【0119】
なお、明部Ar1にパターン画像形成位置を設定し、暗部Ar2にパターン画像形成位置パターン画像形成位置を設定する場合より、光学センサ24のセンサ出力にノイズが発生しやすくなる。
【0120】
次に、記録媒体Pの明部Ar1及び暗部Ar2にわたってパターン画像が形成される場合について説明する。
【0121】
図11は本発明の実施の形態におけるパターン画像形成位置及びパターン画像検出位置を説明するための第3の図である。
【0122】
図において、Pは記録媒体、Ar1は明部、Ar2は暗部、PBは比較パターン画像、Pb1~Pb4はテストパッチ、Qはパターン画像検出位置が設定された領域である。
【0123】
この場合、媒体情報取得処理部Pr4(図1)は、明部Ar1及び暗部Ar2にパターン画像形成位置を設定し、明部Ar1及び暗部Ar2にわたって比較パターン画像PBのテストパッチPbjを形成し、各テストパッチPbjにおける暗部Ar2の部分に領域Qを設定し、光学センサ24の発光部27によって領域Qに光を照射し、光学センサ24のセンサ出力を取得する。
【0124】
この場合、各テストパッチPbjにおける暗部Ar2の部分に領域Qが設定されるが、各テストパッチPbjにおける明部Ar1部分に領域Qが設定されるようにすることもできる。
【0125】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0126】
10 インクジェットプリンタ
17 キャリッジ
22 キャリッジモータ
24 光学センサ
34 搬送モータ
Hdi 記録ヘッド
P 記録媒体
PB 比較パターン画像
Pr1 ヘッド駆動処理部
Pr3 キャリッジ駆動処理部
Pr4 媒体情報取得処理部
Pr5 パターン画像検出処理部
Pr6 画像形成条件設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11