(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/01 20060101AFI20221220BHJP
E03D 1/34 20060101ALI20221220BHJP
E03D 1/24 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E03D1/01 Z
E03D1/34
E03D1/24
(21)【出願番号】P 2019021255
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川 雄基
(72)【発明者】
【氏名】穴見 義和
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120009(JP,A)
【文献】特開2011-208457(JP,A)
【文献】実開昭63-182657(JP,U)
【文献】米国特許第5519899(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
A47K 13/10
B66D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯留するタンク部と、
前記タンク部の内部に配置され、前記タンク部の底部に形成された排水口を閉塞する排水弁と、
前記排水弁を引き上げる回動装置と
を備え、
前記回動装置は、
回転力を発生させる駆動部と、
前記駆動部の回転力によって回動する軸部と、
前記軸部と前記排水弁とを接続する接続部材と
を備え、
前記タンク部は、
洗浄水の貯留空間の上方に設けられた設置面と、
前記設置面に設けられ、前記駆動部を固定するための固定部と、
前記設置面に設けられ、前記軸部の軸方向を中心とする前記駆動部の回転を規制するように前記駆動部を係止する係止部と
を備える、洗浄水タンク装置。
【請求項2】
前記係止部と前記軸部との距離は、前記固定部と前記軸部との距離よりも小さい、請求項1に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
前記設置面に立設され、前記軸部が挿入される挿入口を有する壁面
を備え、
前記係止部は、
前記軸部の前記挿入口への挿入方向に沿って延在し、前記駆動部の前記挿入方向への移動をガイドする、請求項1または2に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
前記駆動部は、
前記固定部に当接する被固定部を有し、
前記固定部は、
前記駆動部の回転力によって前記軸部が回動して前記排水弁を引き上げた際に前記駆動部が回転しようとする方向において前記被固定部よりも奥側に設けられる、請求項1~3のいずれか一つに記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
前記固定部は、
前記駆動部の固定に用いられるネジ穴を有し、
前記ネジ穴は、前記係止部よりも高い位置に設けられる、請求項1~4のいずれか一つに記載の洗浄水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水を貯留するタンクを備え、タンクに貯留された洗浄水を大便器に供給する洗浄水タンク装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、タンクの排水口を閉じる排水弁と、排水弁を引き上げることにより排水口を開放する回動装置とを備えた洗浄水タンク装置が開示されている。
【0004】
回動装置は、DCモータ等の駆動部と、駆動部から水平に延びる軸部と、軸部と排水弁とを接続する玉鎖とを備えており、タンクに対して駆動部がネジ止めされることによってタンクに強固に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、タンクに対して駆動部を強固に固定すると、たとえば、排水弁を引き上げた際に、固定箇所に負荷がかかることで、固定状態に影響が生じることがある。回動装置の固定状態に影響が生じると、たとえば排水動作に支障を来すおそれがある。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、駆動部の固定箇所にかかる負荷を低減することができる洗浄水タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る洗浄水タンク装置は、洗浄水を貯留するタンク部と、前記タンク部の内部に配置され、前記タンク部の底部に形成された排水口を閉塞する排水弁と、前記排水弁を引き上げる回動装置とを備え、前記回動装置は、回転力を発生させる駆動部と、前記駆動部の回転力によって回動する軸部と、前記軸部と前記排水弁とを接続する接続部材とを備え、前記タンク部は、洗浄水の貯留空間の上方に設けられた設置面と、前記設置面に設けられ、前記駆動部を固定するための固定部と、前記設置面に設けられ、前記軸部の軸方向を中心とする前記駆動部の回転を規制するように前記駆動部を係止する係止部とを備える。
【0009】
係止部が軸部の軸方向を中心とする駆動部の回転を規制するように駆動部を係止することで、排水弁の引き上げ時に発生する駆動部を回転させる力を係止部において吸収することができる。このため、固定部に生じる負荷を低減することができる。
【0010】
また、前記係止部と前記軸部との距離は、前記固定部と前記軸部との距離よりも小さい。このように、回転の中心となる軸部に近い場所に係止部を設けることで、係止部を軸部から遠い場所に設けた場合と比較して、同じ大きさの隙間でより大きな位置ずれ(回転)を許容することができる。言い換えれば、より小さな隙間で所望の位置ずれ許容量を達成することができるため、係止部をより小型に形成することができる。また、回転の中心となる軸部から遠い場所に固定部を設けることで、駆動部が回転した場合に固定部にかかる負荷を可及的に小さくすることができる。
【0011】
また、実施形態の一態様に係る洗浄水タンク装置は、前記設置面に立設され、前記軸部が挿入される挿入口を有する壁面を備え、前記係止部は、前記軸部の前記挿入口への挿入方向に沿って延在し、前記駆動部の前記挿入方向への移動をガイドする。
【0012】
このように、係止部は、軸部の挿入方向に沿って延在しているため、駆動部を移動させて軸部を挿入口へ挿入する動作に伴って、駆動部を係止部に係止させることができる。また、駆動部の挿入方向への移動を係止部によってガイドすることができる。したがって、施工性、メンテナンス性を向上させることができる。
【0013】
また、前記駆動部は、前記固定部に当接する被固定部を有し、前記固定部は、前記駆動部の回転力によって前記軸部が回動して前記排水弁を引き上げた際に前記駆動部が回転しようとする方向において前記被固定部よりも奥側に設けられる。これにより、通常洗浄動作時における駆動部の回転を固定部により受け止めることができる。
【0014】
また、前記固定部は、前記駆動部の固定に用いられるネジ穴を有し、前記ネジ穴は、前記係止部よりも高い位置に設けられる。
【0015】
このように、固定部のネジ穴を係止部よりも高い位置に設けることで、ネジ穴に対して上方からアクセスする作業者の施工性、メンテナンス性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
実施形態の一態様によれば、駆動部の固定箇所にかかる負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る水洗大便器の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る洗浄水タンク装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る洗浄水タンク装置の平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るタンク本体および蓋の斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る回動装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、蓋に回動装置が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する洗浄水タンク装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
<水洗大便器の構成>
まず、実施形態に係る洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る水洗大便器の構成を示す図である。
【0020】
図1においては、説明の便宜上、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。また、以下では、X軸正方向側の面を「左側面」、X軸負方向側の面を「右側面」と規定し、Y軸正方向側の面を「正面」、Y軸負方向側の面を「背面」と規定する。したがって、以下では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0021】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、外装カバー3と、洗浄水タンク装置4とを備える。便器本体2は、トイレ室の床面に設置され、外装カバー3は、便器本体2の上部に設置される。また、洗浄水タンク装置4は、外装カバー3の内部に配置される。なお、便器本体2は、床置き式に限らず、壁掛け式であってもよい。また、洗浄水タンク装置4は、便器本体2から離れた場所に設置されてもよい。
【0022】
便器本体2は、汚物を受けるボウル部21と、洗浄水タンク装置4から供給される洗浄水をボウル部21へ導く導水路22と、ボウル部21の下部に入口が接続され、ボウル部21内の汚物を排水管(図示せず)へ排出する排水トラップ管路23とを備える。排水トラップ管路23は、トラップ部を構成する。
【0023】
ボウル部21には、導水路22から供給される洗浄水を吐出する第1吐水口24および第2吐水口25が形成される。第1吐水口24は、ボウル部21の上部に形成されており、第1吐水口24から吐出された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部21を洗浄する。第2吐水口25は、ボウル部21の下部に形成されており、ボウル部21の下部に貯留された洗浄水(貯留面W0を一点鎖線で示す)は、上下方向に旋回させる旋回流を生じさせる。
【0024】
排水トラップ管路23は、貯留面W0よりも下方に入口を有し、入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて排水管に接続される下降路部分とを有する。
【0025】
洗浄水タンク装置4は、外部の給水源から供給される洗浄水を貯留するタンク部を有し、タンク部に貯留された洗浄水を排水口51を介して便器本体2の導水路22に供給する。洗浄水タンク装置4は、外装カバー3に覆われており、使用者から洗浄水タンク装置4が視認されないようになっている。
【0026】
<洗浄水タンク装置の構成>
次に、洗浄水タンク装置4の構成について
図2~
図4を参照して説明する。
図2は、実施形態に係る洗浄水タンク装置4の斜視図である。
図3は、実施形態に係る洗浄水タンク装置4の平面図である。
図4は、
図3に示すIV-IV線断面図である。
【0027】
図2~
図4に示すように、洗浄水タンク装置4は、タンク本体5と、蓋6と、給水装置7と、排水装置8と、回動装置9とを備える。
【0028】
タンク本体5は、後述する給水装置7から供給される洗浄水を貯留する。タンク本体5の底部には、排水口51が設けられる。蓋6は、タンク本体5の上部に設けられ、タンク本体5の上方開口を覆う。蓋6には、タンク本体5の内部と連通する開口61が設けられる。
【0029】
給水装置7は、外部の給水源(図示せず)に給水管Lを介して接続され、給水源から供給される洗浄水をタンク本体5の上方から蓋6の開口61を介してタンク本体5の内部に吐出する。
【0030】
給水装置7は、一次側給水流路部71(
図4参照)と、二次側給水流路部72と、中間流路部73と、吐水口部74とを備える。一次側給水流路部71は、上下方向に延在し、下端部において給水管L(
図2参照)に接続される。二次側給水流路部72は、先端(下流端)が塞がれた円筒形状を有し、蓋6に設けられた開口61に向かって水平方向(ここでは、左右方向)に延在する。中間流路部73は、一次側給水流路部71と二次側給水流路部72との間に設けられ、一次側給水流路部71と二次側給水流路部72とを接続する。中間流路部73には、たとえば、二次側給水流路部72への吐水と止水とを切り替える電磁弁装置75(
図3参照)や、タンク本体5内の水位に連動して上下動するフロートによって二次側給水流路部72への吐水と止水とを切り替える機械式開閉弁装置76などが設けられる。
【0031】
排水装置8は、タンク本体5の内部に配置される。排水装置8は、排水口51を開放することにより、タンク本体5に貯留された洗浄水を導水路22(
図1参照)に流出させる。
【0032】
排水装置8は、オーバーフロー管81と、排水弁82と、ガイド83とを備える。オーバーフロー管81は、上下方向に延びる円筒状の管部材である。オーバーフロー管81は、排水口51に連通しており、タンク本体5内の洗浄水の水位がオーバーフロー管81の上端の高さ位置を上回った場合に、オーバーフロー管81の上端からオーバーフロー管81の内部に流入した洗浄水を排水口51を介して導水路22に流出させる。
【0033】
排水弁82は、オーバーフロー管81の下端部に設けられており、排水口51を閉塞する。ガイド83は、オーバーフロー管81を取り囲むように設けられており、後述する回動装置9によるオーバーフロー管81の上下動をガイドする。
【0034】
回動装置9は、オーバーフロー管81を上下動させることにより排水弁82を開閉する。回動装置9は、回転力を発生させる駆動部91と、駆動部91の回転力によって回動する軸部92と、一端が軸部92の先端に取り付けられ、他端がオーバーフロー管81に取り付けられた玉鎖等の接続部材93とを備える。駆動部91は、たとえばDCモータ等のロータリモータと、ロータリモータを収容するケーシングとを含んで構成される。軸部92は、駆動部91のロータリモータに接続されるとともに、駆動部91のケーシングを介して駆動部91の外部に水平に突き出ている。軸部92の先端には軸部92の軸方向と直交する方向に延在する取付部921が設けられており、接続部材93は、かかる取付部921に取り付けられる。実施形態において、軸部92は、X軸方向に沿って延在しており、取付部921は、軸部92よりもY軸負方向側に延在する。
【0035】
駆動部91が接続部材93を上方に引き上げるように軸部92を回動させると、オーバーフロー管81およびオーバーフロー管81に設けられた排水弁82が接続部材93とともに上昇して、排水口51が開放される。これにより、タンク本体5に貯留された洗浄水が排水口51から導水路22に供給される。また、駆動部91が接続部材93を下方に引き下げるように軸部92を回動させると、オーバーフロー管81および排水弁82が接続部材93とともに下降する。これにより、排水口51が排水弁82によって閉塞されることで、タンク本体5からに導水路22への給水が停止する。
【0036】
また、回動装置9は、軸部92を手動で回動させるためのレバー94を備える。レバー94は、駆動部91の軸部92が設けられる側(X軸正方向側)とは反対側(X軸負方向側)に設けられる。レバー94は、軸部92の回転軸と同一軸線上に設けられており、使用者は、レバー94を回動させることにより、レバー94と連動して軸部92を回動させることができる。このように、回動装置9によれば、たとえば停電時において、排水弁82の開閉を手動にて行うことができる。
【0037】
<回動装置の取り付け構造について>
次に、回動装置9の取り付け構造について
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、実施形態に係るタンク本体5および蓋6の斜視図である。
図6は、実施形態に係る回動装置9の斜視図である。
【0038】
図5に示すように、蓋6は、設置面62と、壁面63と、固定部64と、係止部65とをさらに備える。
【0039】
壁面63は、開口61を取り囲む壁部の一部であり、設置面62における開口61の縁部に立設される。壁面63には、軸部92が挿入される挿入口631が形成される。挿入口631は、軸部92の軸方向(ここでは、X軸方向)に沿って開口しており、軸部92は、軸方向に沿って挿入口631に挿入される。設置面62は、壁面63を挟んで開口61に隣接する平坦面であり、タンク本体5の貯留空間を上方から閉塞する。
【0040】
固定部64および係止部65は、設置面62に設けられる。固定部64は、設置面62から上方に向かって突出する突出部641と、突出部641の上端に形成された当接面642と、当接面642に形成されたネジ穴643とを備える。
【0041】
係止部65は、軸部92の挿入口631への挿入方向に沿って延在するレール状の部材であり、I字状の断面形状を有する。具体的には、係止部65は、設置面62に設けられるベース部651と、ベース部651の中央から上方に延在する括れ部652と、括れ部652の上端から挿入方向と直交する方向(ここでは、Y軸方向)に沿って延在する一対の幅広部653a,653bとを備える。幅広部653aは、Y軸正方向に突出し、幅広部653bは、Y軸負方向に突出する。
【0042】
図6に示すように、回動装置9の駆動部91は、被固定部95と、被係止部96とをさらに備える。
【0043】
被固定部95は、駆動部91の周面から軸部92の挿入方向と直交する方向(Y軸方向)に沿って水平に突出する板状の部材であり、駆動部91(ケーシング)と一体的に形成される。被固定部95には、ネジ穴951が形成される。
【0044】
被係止部96は、軸部92の挿入口631への挿入方向に沿って延在する部材であり、一対の垂直部961a,961bと、一対の水平部962a,962bとを備える。一対の垂直部961a,961bは、上記挿入方向と直交する方向(Y軸方向)に間隔をあけて配置され、下方に延在する。一対の水平部962a,962bは、一対の垂直部961a,961bの下端部に設けられ、互いに接近する方向に延在する。具体的には、水平部962aは、Y軸負方向に突出し、水平部962bは、Y軸正方向に突出する。
【0045】
一対の垂直部961a,961b間の距離は、係止部65における幅広部653aの先端から幅広部653bの先端までの距離(一対の幅広部653a,653bの全幅)よりも大きい。また、一対の水平部962a,962b間の距離は、一対の幅広部653a,653bの全幅よりも小さく且つ括れ部652の幅よりも大きい。
【0046】
作業者は、回動装置9を軸部92の軸線に沿って水平に移動させることにより、蓋6の壁面63に形成された挿入口631に回動装置9の軸部92を挿入する。そうすると、被係止部96が回動装置9の移動に伴って係止部65にスライド挿入され、被係止部96が備える一対の水平部962a,962bが、係止部65が備えるベース部651と一対の幅広部653a,653bとの間(括れ部652の側方)に入り込む。これにより、回動装置9の駆動部91が係止部65に係止された状態となる。
【0047】
このように、係止部65は、軸部92の挿入方向すなわち軸部92の軸方向に延在しているため、駆動部91を軸方向へ移動させて挿入口631へ挿入する動作に伴って、駆動部91を係止部65に係止させることができる。また、駆動部91の軸方向への移動を係止部65によってガイドすることもできる。したがって、施工性、メンテナンス性を向上させることができる。
【0048】
なお、回動装置9が蓋6に取り付けられた状態において、係止部65は、軸部92の軸方向を中心とする駆動部91の回転を規制するように駆動部91を係止するが、この点については後述する。
【0049】
また、挿入口631に回動装置9の軸部92が挿入されることで、回動装置9の被固定部95が固定部64の当接面642に上方から当接し、被固定部95のネジ穴951の位置と固定部64のネジ穴643の位置とが一致した状態となる。作業者は、被固定部95の上方から被固定部95のネジ穴951および固定部64の当接面642のネジ穴643にネジSを挿通する。これにより、回動装置9は、蓋6にネジ固定される。
図7に示すように、固定部64に設けられるネジ穴643は、係止部65よりも高い位置に設けられる。このため、ネジ穴643に対して上方からアクセスする作業者の施工性、メンテナンス性を向上させることができる。
【0050】
図8は、蓋6および回動装置9の側面図である。また、
図9は、
図8に示すH部の模式拡大図である。
【0051】
上述したように、軸部92の取付部921は、軸部92の軸負方向側に延在しており(
図2参照)、回動装置9は、
図8の方向から見て反時計回りに軸部92を回動させることにより、排水弁82を引き上げることができる。以下、この動作を「通常洗浄動作」と記載する。通常洗浄動作時において、回動装置9には、タンク本体5に貯留された洗浄水の抵抗等により、
図8の方向から見て軸部92を中心とする時計回りの力(
図8中、実線の矢印で示す)が作用する。
【0052】
これに対し、
図9に示すように、係止部65の幅広部653bと被係止部96の水平部962bとの間には隙間G1が形成される。係止部65の幅広部653aと被係止部96の水平部962aとの間も同様である。このように、係止部65と被係止部96との間に隙間G1が設けられているため、通常洗浄動作時に生じる軸部92を中心に回動装置9を回転させる時計回りの力をかかる隙間G1において吸収することができる。
【0053】
また、上述したように、たとえば停電時において、使用者等は、
図8の方向から見て反時計回りにレバー94を回動させることにより、軸部92を回動させて排水弁82を引き上げることができる。この動作を「停電洗浄動作」と記載する。停電洗浄動作時において、回動装置9には、軸部92を中心とする反時計回りの力(
図8中、破線の矢印で示す)が作用する。
【0054】
これに対し、
図9に示すように、係止部65の幅広部653aと被係止部96の垂直部961aとの間には隙間G2が形成される。係止部65の幅広部653bと被係止部96の垂直部961bとの間も同様である。このように、係止部65と被係止部96との間に隙間G2が設けられているため、停電洗浄動作時に生じる軸部92を中心に回動装置9を回転させる反時計回りの力をかかる隙間G2において吸収することができる。
【0055】
このように、実施形態に係る水洗大便器1は、軸部92を中心に回動装置9を回転させる力を係止部65によって吸収することができるため、回動装置9の固定箇所である固定部64、被固定部95に生じる負荷を低減することができる。
【0056】
なお、
図7や
図8等に示すように、係止部65および被係止部96は、軸部92よりも前方(Y軸正方向側)に配置され、固定部64および被固定部95は、軸部92よりも後方(Y軸負方向側)に配置される。
【0057】
また、
図8の方向から見た場合に、係止部65と軸部92との距離は、固定部64と軸部92との距離よりも小さい。すなわち、係止部65は、固定部64よりも軸部92に近い位置に設けられている。
【0058】
このように、回転の中心となる軸部92に近い場所に係止部65を設けることで、係止部65を軸部92から遠い場所に設けた場合と比較して、同じ大きさの隙間でより大きな位置ずれ(回転)を許容することができる。言い換えれば、より小さな隙間で所望の位置ずれ許容量を達成することができる。したがって、係止部65をより小型に形成することができる。また、回転の中心となる軸部92から遠い場所に固定部64を設けることで、駆動部91が回転した場合に固定部64にかかる負荷を可及的に小さくすることができる。
【0059】
また、
図8に示すように、固定部64は、回動装置9が備える被固定部95の下方に設けられる。言い換えれば、固定部64は、通常洗浄動作時に駆動部91が回転しようとする方向(
図8の方向から見て時計回りの方向)において被固定部95よりも奥側に設けられる。これにより、通常洗浄動作時における駆動部91の回転を固定部64により受け止めることができる。なお、固定部64は、通常洗浄時以外の洗浄動作(例えば停電時等における洗浄動作)においても、駆動部91の回転を受け止めるように構成されることも好ましい。
【0060】
上述してきたように、実施形態に係る洗浄水タンク装置4は、タンク部(一例として、タンク本体5および蓋6)と、排水弁82と、回動装置9とを備える。タンク部は、洗浄水を貯留する。排水弁82は、タンク部の内部に配置され、タンク部の底部に形成された排水口51を閉塞する。回動装置9は、排水弁82を引き上げる。また、回動装置9は、駆動部91と、軸部92と、接続部材93とを備える。駆動部91は、回転力を発生させる。軸部92は、駆動部91の回転力によって回動する。接続部材93は、軸部92と排水弁82とを接続する。また、タンク部は、設置面62と、固定部64と、係止部65とを備える。設置面62は、洗浄水の貯留空間の上方に設けられる。固定部64は、設置面62に設けられ、駆動部91を固定する。係止部65は、設置面62に設けられ、軸部92の軸方向を中心とする駆動部91の回転を規制するように駆動部91を係止する。
【0061】
係止部65が軸部92の軸方向を中心とする駆動部91の回転を規制するように駆動部91を係止することで、排水弁82の引き上げ時に発生する駆動部91を回転させる力を係止部65において吸収することができる。このため、固定部64に生じる負荷を低減することができる。
【0062】
また、係止部65と軸部92との距離は、固定部64と軸部との距離よりも小さい。このように、回転の中心となる軸部92に近い場所に係止部65を設けることで、係止部65を軸部92から遠い場所に設けた場合と比較して、同じ大きさの隙間でより大きな位置ずれ(回転)を許容することができる。言い換えれば、より小さな隙間で所望の位置ずれ許容量を達成することができる。したがって、係止部65をより小型に形成することができる。また、回転の中心となる軸部92から遠い場所に固定部64を設けることで、駆動部91が回転した場合に固定部64にかかる負荷を可及的に小さくすることができる。
【0063】
また、実施形態に係る洗浄水タンク装置4は、設置面62に立設され、軸部92が軸方向に沿って挿入される挿入口631を有する壁面63を備える。また、係止部65は、軸部92の挿入口631への挿入方向に沿って延在し、駆動部91の挿入方向への移動をガイドする。
【0064】
このように、係止部65は、軸部92の挿入方向すなわち軸部92の軸方向に沿って延在しているため、駆動部91を移動させて軸部92を挿入口631へ挿入する動作に伴って、駆動部91を係止部65に係止させることができる。また、駆動部91の挿入方向への移動を係止部65によってガイドすることもできる。したがって、施工性、メンテナンス性を向上させることができる。
【0065】
また、駆動部91は、固定部64に当接する被固定部95を有する。また、固定部64は、駆動部91の回転力によって軸部92が回動して排水弁82を引き上げた際に駆動部91が回転しようとする方向において被固定部95よりも奥側に設けられる。これにより、通常洗浄動作時における駆動部91の回転を固定部64により受け止めることができる。
【0066】
また、固定部64は、駆動部91の固定に用いられるネジ穴643を有し、ネジ穴643は、係止部65よりも高い位置に設けられる。このように、固定部64のネジ穴643を係止部65よりも高い位置に設けることで、ネジ穴643に対して上方からアクセスする作業者の施工性、メンテナンス性を向上させることができる。
【0067】
上述した実施形態では、タンク部が、タンク本体5と蓋6とに分離可能に構成される場合の例について説明したが、タンク部は、タンク本体5と蓋6とが一体的に構成されたものであっても良い。
【0068】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 水洗大便器
2 便器本体
3 外装カバー
4 洗浄水タンク装置
5 タンク本体
6 蓋
7 給水装置
71 一次側給水流路部
72 二次側給水流路部
73 中間流路部
74 吐水口部
8 排水装置
81 オーバーフロー管
82 排水弁
83 ガイド
9 回動装置
91 駆動部
92 軸部
93 接続部材