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特許7196663連続鋳造プロセスの制御装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】連続鋳造プロセスの制御装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B22D11/16 D
B22D11/16 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019023201
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020131197
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】石谷 紗知
(72)【発明者】
【氏名】枚田 優人
(72)【発明者】
【氏名】石川 幸男
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-179506(JP,A)
【文献】特開2003-001384(JP,A)
【文献】特開2010-120054(JP,A)
【文献】特開平11-138246(JP,A)
【文献】特開2000-176634(JP,A)
【文献】特開平09-314299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を鋳型で冷却凝固させ、連続的に引抜いて切断することにより鋳造片を得る連続鋳造プロセスを制御する制御装置であって、
将来の所定の期間の注文個数を予測することにより得られた余材情報を記憶する記憶手段と、
注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュールに従って制御される連続鋳造プロセスの実行中に、余材が発生すると判定された場合、前記記憶手段に記憶する前記余材情報に合う余材を採片するように前記連続鋳造プロセスを調整する余材採片用調整手段とを備え
前記余材採片用調整手段は、前記注文に含まれる切断長さの許容値を含む範囲で切断することにより、前記余材を採片することを特徴とする連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項2】
前記鋳型から連続的に引抜かれる金属の長手方向の領域毎に特性値を付与する特性値付与手段と、
前記連続鋳造プロセスの実行中に、前記特性値付与手段で付与する前記特性値と、注文が要求する要求特性値とに基づいて、前記連続鋳造プロセスを調整する機内調整手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項3】
前記機内調整手段は、前記連続鋳造スケジュールに含まれる切断長さを調整する、前記連続鋳造スケジュールに含まれる切断順を入れ替える、及び前記連続鋳造スケジュールに組み込まれていない注文を充当することのうち少なくともいずれか一つを行うことにより、前記連続鋳造プロセスを調整することを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項4】
前記余材採片用調整手段は、前記機内調整手段による前記連続鋳造プロセスの調整によっても前記特性値が前記要求特性値を満たさないとき、余材が発生すると判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項5】
前記特性値は、前記連続鋳造プロセスにおける事象の情報と、操業実績の情報とに基づいて定められることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項6】
前記記憶手段に記憶する前記余材情報は、少なくとも前記特性値により層別されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記余材情報として余材の重量を記憶することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項8】
前記余材採片用調整手段は、湯余り又は湯不足のとき、余材が発生すると判定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項9】
前記記憶手段に記憶する前記余材情報は、予測手段により、注文実績の注文個数の周期性を考慮するように構築された機械学習の予測モデルを用いて、前記将来の所定の期間の注文個数を予測することにより求められたものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
【請求項10】
溶融金属を鋳型で冷却凝固させ、連続的に引抜いて切断することにより鋳造片を得る連続鋳造プロセスを制御する制御方法であって、
注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュールに従って制御される連続鋳造プロセスの実行中に、余材が発生すると判定された場合、記憶手段に記憶する余材情報に合う余材を採片するように前記連続鋳造プロセスを調整する余材採片用調整工程とを有し、
前記記憶手段に記憶する前記余材情報は、将来の所定の期間の注文個数を予測することにより得られたものであり、
前記余材採片用調整工程では、前記注文に含まれる切断長さの許容値を含む範囲で切断することにより、前記余材を採片することを特徴とする連続鋳造プロセスの制御方法。
【請求項11】
溶融金属を鋳型で冷却凝固させ、連続的に引抜いて切断することにより鋳造片を得る連続鋳造プロセスを制御するためのプログラムであって、
将来の所定の期間の注文個数を予測することにより得られた余材情報を記憶する記憶手段と、
注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュールに従って制御される連続鋳造プロセスの実行中に、余材が発生すると判定された場合、前記記憶手段に記憶する前記余材情報に合う余材を採片するように前記連続鋳造プロセスを調整する余材採片用調整手段としてコンピュータを機能させ
前記余材採片用調整手段は、前記注文に含まれる切断長さの許容値を含む範囲で切断することにより、前記余材を採片することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造プロセスの制御装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造プロセスでは、顧客からの注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュールに従って鋳造片を製造するが、その際に、注文に紐付かない余材が発生することがある。余材が発生したとき、それに見合う注文があるまで余材を積み上げておくことも考えられるが、通常は置場能力の制約等から、余材の発生から一定の期間内にある注文に当該余材を充当するのが一般的である。このとき、余材が注文よりも大きい場合は屑切断後に充当し、余材が注文よりも小さい場合は級品を落として充当することになり、収益ロスが発生する。
例えば特許文献1には、連続鋳造鋳片の切断方法に関して、1チャージ内の各切断鋳片に汎用度合に応じた優先順位を付し、その優先順位の最も高い鋳片の長さで余材を切断することが開示されている。
また、特許文献2には、余材スラブの設計方法に関して、予測によって求められたオーダー量の予測値に基づいて、生産する余材スラブの巾、長さを鋳造計画段階で事前に設計することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-249504号公報
【文献】特開平11-138246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、顧客が最も要求する長さ、すなわち汎用的な標準品となる長さに切断し、余材の活用を図るものであるが、1チャージ内のいずれかの鋳片の長さをコピーするものに過ぎず、これにより採片される余材に見合う注文が近い将来にあるとは限らない。
また、特許文献2は、連続鋳造プロセスを実行する前段のスケジュール作成時における余材スラブの設計方法に関するものであり、連続鋳造プロセスの実行中に、実際に発生する変動を加味して余材を採片できるようにするものではない。
【0005】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、連続鋳造プロセスの実行中に、実際に発生する変動を加味して、予測される将来の注文に合わせた余材を採片できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 溶融金属を鋳型で冷却凝固させ、連続的に引抜いて切断することにより鋳造片を得る連続鋳造プロセスを制御する制御装置であって、
将来の所定の期間の注文個数を予測することにより得られた余材情報を記憶する記憶手段と、
注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュールに従って制御される連続鋳造プロセスの実行中に、余材が発生すると判定された場合、前記記憶手段に記憶する前記余材情報に合う余材を採片するように前記連続鋳造プロセスを調整する余材採片用調整手段とを備え
前記余材採片用調整手段は、前記注文に含まれる切断長さの許容値を含む範囲で切断することにより、前記余材を採片することを特徴とする連続鋳造プロセスの制御装置。
[2] 前記鋳型から連続的に引抜かれる金属の長手方向の領域毎に特性値を付与する特性値付与手段と、
前記連続鋳造プロセスの実行中に、前記特性値付与手段で付与する前記特性値と、注文が要求する要求特性値とに基づいて、前記連続鋳造プロセスを調整する機内調整手段とを備えたことを特徴とする[1]に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[3] 前記機内調整手段は、前記連続鋳造スケジュールに含まれる切断長さを調整する、前記連続鋳造スケジュールに含まれる切断順を入れ替える、及び前記連続鋳造スケジュールに組み込まれていない注文を充当することのうち少なくともいずれか一つを行うことにより、前記連続鋳造プロセスを調整することを特徴とする[2]に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[4] 前記余材採片用調整手段は、前記機内調整手段による前記連続鋳造プロセスの調整によっても前記特性値が前記要求特性値を満たさないとき、余材が発生すると判定することを特徴とする[2]又は[3]に記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[5] 前記特性値は、前記連続鋳造プロセスにおける事象の情報と、操業実績の情報とに基づいて定められることを特徴とする[2]乃至[4]のいずれか一つに記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[6] 前記記憶手段に記憶する前記余材情報は、少なくとも前記特性値により層別されていることを特徴とする[2]乃至[5]のいずれか一つに記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[7] 前記記憶手段は、前記余材情報として余材の重量を記憶することを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[8] 前記余材採片用調整手段は、湯余り又は湯不足のとき、余材が発生すると判定することを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[9] 前記記憶手段に記憶する前記余材情報は、予測手段により、注文実績の注文個数の周期性を考慮するように構築された機械学習の予測モデルを用いて、前記将来の所定の期間の注文個数を予測することにより求められたものであることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の連続鋳造プロセスの制御装置。
[10] 溶融金属を鋳型で冷却凝固させ、連続的に引抜いて切断することにより鋳造片を得る連続鋳造プロセスを制御する制御方法であって、
注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュールに従って制御される連続鋳造プロセスの実行中に、余材が発生すると判定された場合、記憶手段に記憶する余材情報に合う余材を採片するように前記連続鋳造プロセスを調整する余材採片用調整工程とを有し、
前記記憶手段に記憶する前記余材情報は、将来の所定の期間の注文個数を予測することにより得られたものであり、
前記余材採片用調整工程では、前記注文に含まれる切断長さの許容値を含む範囲で切断することにより、前記余材を採片することを特徴とする連続鋳造プロセスの制御方法。
[11] 溶融金属を鋳型で冷却凝固させ、連続的に引抜いて切断することにより鋳造片を得る連続鋳造プロセスを制御するためのプログラムであって、
将来の所定の期間の注文個数を予測することにより得られた余材情報を記憶する記憶手段と、
注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュールに従って制御される連続鋳造プロセスの実行中に、余材が発生すると判定された場合、前記記憶手段に記憶する前記余材情報に合う余材を採片するように前記連続鋳造プロセスを調整する余材採片用調整手段としてコンピュータを機能させ
前記余材採片用調整手段は、前記注文に含まれる切断長さの許容値を含む範囲で切断することにより、前記余材を採片することを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連続鋳造プロセスの実行中に、実際に発生する変動を加味して、予測される将来の注文に合わせた余材を採片することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る連続鋳造プロセスの制御装置の機能構成を示す図である。
図2】連続鋳造設備の概略構成及び連続鋳造プロセスを説明するための図である。
図3】スラブの単重と、予測注文個数との関係の一例を示す図である。
図4】最適なスラブの単重に合う余材を採片するように切断位置を調整する例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、図2(A)乃至(E)を参照して、連続鋳造設備の概略構成及び連続鋳造プロセスを説明する。取鍋1内の溶鋼2は、タンディッシュ3及び浸漬ノズル4を経由して、上下に開口を有する鋳型5に注入される。この鋳型5で溶鋼2の外側が冷却凝固されて、連続的に引抜かれる。連続鋳造プロセスは、取鍋1一杯分の溶鋼を1チャージとし、複数チャージを1キャストとして行われる。鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6は切断機7により切断されて、本実施形態では鋳造片として熱間薄板圧延向けのスラブが得られる。
以下では、スラブを圧延して得られる薄板を巻き取ったコイルを、製品コイルと呼ぶ。製品コイルの注文に基づいて、それに必要なスラブの材質や単重(一つ一つのスラブの重量)が決定される。
【0010】
図1に、連続鋳造プロセスの制御装置100を含むシステムの機能構成を示す。
連続鋳造プロセスの制御装置100は、特性値付与部101と、制御部102とを備える。制御部102は、機内調整部102aと、余材採片用調整部102bとしても機能する。また、連続鋳造プロセスの制御装置100は、記憶装置103にアクセス可能である。記憶装置103には、予測装置104により、将来の所定の期間の注文個数を予測することにより得られた余材情報、本実施形態ではスラブの単重が記憶されている。
【0011】
まず、連続鋳造プロセスの基本的な流れを説明する。
特性値付与部101は、鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6の長手方向の領域毎に特性値を付与する。例えば図2(C)に示すように、鋳型5の直下において、鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6に一定の間隔で特性値を付与する。特性値は、連続鋳造プロセスにおける事象の情報と、操業実績の情報とに基づいて定められる。例えば事象の情報は、鍋スタート、チャージ注入、タンディッシュ交換等の連続鋳造プロセスにおける事象を表す。鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6には、キャストボトムやキャストトップと呼ばれる部位や、チャージ間で形成される異鋼種継目のように品質が不安定となる部位があることから、事象の情報に基づいて特性値を定める。また、操業実績は、例えばタンディッシュ3における溶鋼量、溶鋼温度、酸素濃度、浸漬ノズル4における浸漬深さ、開度変動量、鋳型5におけるエア流量、メニスカス流量等が挙げられる。操業実績は鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6の品質に影響を与えるので、操業実績の情報に基づいて特性値を定める。本実施形態では、事象の情報と操業実績の情報とに基づいて、特性値をA(高品質),B(中品質),C(低品質)のように付与するものとするが、特性値の詳細は限定されるものではない。
【0012】
制御部102は、注文に基づいて作成された連続鋳造スケジュール8に従って連続鋳造プロセスを制御する。連続鋳造スケジュール8は、製品コイルの注文に応じた切断長さ及び切断順を含み、本例では注文1、注文2、・・・の順で、各注文に紐付けられた切断長さで切断する連続鋳造スケジュールとなっている。制御部102は、図2(B)、(C)に示すように、鋳造を開始すると、鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6に注文を割り付けていく。
【0013】
また、制御部102の機内調整部102aは、特性値付与部101で付与する特性値と、注文が要求する要求特性値とに基づいて、連続鋳造プロセスを調整する。例えば特性値が要求特性値を満たさない場合に、要求特性値に満たすようにする方向に連続鋳造プロセスを調整する。連続鋳造プロセスの調整の仕方として、具体的には次のようなものがある。例えば連続鋳造スケジュール8に含まれる注文の切断長さを調整する。製品コイルの長さには許容値があり、それに応じて切断長さにも許容値(MIN値-MAX値)が設定されており、その範囲で切断長さが可変である。また、図2(D)に示すように、連続鋳造スケジュール8に含まれる切断順を入れ替える、すなわち注文を入れ替える。また、図2(D)に示すように、連続鋳造スケジュール8に組み込まれていない注文(スケジュール外の注文9)を充当する。また、連続鋳造スケジュール8に含まれる注文を飛ばして欠番化する。
なお、機内調整部102aによる連続鋳造プロセスの調整は、特性値に基づいて行われるだけでなく、例えば操業異常が発生したとき等にも行われる。
【0014】
次に、連続鋳造プロセスの実行中に、余材が発生すると判定された場合の流れを説明する。
制御部102の余材採片用調整部102bは、余材が発生するか否かを判定し、余材が発生すると判定した場合、記憶装置103に記憶するスラブの単重に合う余材を採片するように連続鋳造プロセスを調整する。
【0015】
記憶装置103に記憶するスラブの単重について詳述すると、予測装置104は、例えば一ヶ月を単位として、注文実績に基づいて、翌月の製品コイルの注文個数を予測することにより、翌月に注文がある可能性の高いスラブの単重を求めて、最適なスラブの単重とする。
例えば材質コード、製品コイルの幅、及び特性値で層別して、次のようにして最適なスラブの単重を求める。図3は、スラブの単重と、予測注文個数との関係の一例を示す。翌月を対象として、図3に示すように、層別に、1トン刻みの重量に対する製品コイルの注文個数を予測し、注文個数が最も多いスラブの単重(図示例では30トン)を最適なスラブの単重、すなわち翌月に注文がある可能性の高いスラブの単重とする。
【0016】
ここで、製品コイルの注文個数を予測する予測モデルとして、例えば過去数ヶ月の製品コイルの注文個数の平均値を、翌月の製品コイルの注文個数の予測値とする単純モデルを用いることが考えられる。
また、製品コイルの注文個数を予測する予測モデルとして、例えばランダムフォレストといった機械学習の予測モデルを用いることが考えられる。機械学習の予測モデルを用いることにより、注文のパターンを考慮して、翌月の製品コイルの注文個数を予測することができる。例えばある層の製品コイルの過去4ヶ月の注文個数を考えるとして、一月目から順に0個、69個、0個、69個の注文があったとする。この場合、単純モデルでは、翌月(五月目)の製品コイルの注文個数を(69+69)/4≒34個と予測することになり、必ずしも実情と一致しないことがある。それに対して、機械学習の予測モデルでは、その精度にも依るが、翌月(五月目)の製品コイルの注文を0と予測することができ、スポット注文を見抜くことも可能になる。
【0017】
記憶装置103は、予測装置104で求めた層別の最適なスラブの単重を記憶する。この場合に、最適なスラブの単重に許容値(MIN値-MAX値)を持たせるようにしてもよい。
【0018】
余材採片用調整部102bは、余材が発生するか否かを判定する。例えば機内調整部102aによる連続鋳造プロセスの調整によっても特性値が要求特性値を満たさないとき、余材が発生すると判定する。また、注文が要求する溶鋼よりも実際の溶鋼の量が多い、所謂湯余りのとき、余材が発生すると判定する。また、注文が要求する溶鋼よりも実際の溶鋼量が少ない、所謂湯不足のときも、注文の切断長さの許容値を下回り予定の採片ができなくなり、その部分がやはり余材となるため、余材が発生すると判定する。
そして、余材採片用調整部102bは、余材が発生すると判定した場合、記憶装置103に記憶する最適なスラブの単重に合う余材を採片するように連続鋳造プロセスを調整する。具体的には、切断機7による鋼6の切断位置を調整する。
【0019】
図4を参照して、最適なスラブの単重に合う余材を採片するように切断位置を調整する例を説明する。
例えば余材となる部分400のうち、特性値が異なる領域間の位置401を切断位置とすることが考えられる。この場合、特性値Cの余材がxトン、特性値Bの余材がyトン得られるが、それに見合う注文が近い将来にあるとは限らない。
それに対して、本実施形態では、翌月に注文がある可能性の高いスラブの単重をめがけて切断位置を決定する。記憶装置103に、余材となる部分400に対応する材質コード及び幅、特性値Cの層で、最適なスラブの単重zトンを記憶しているとする。図4に示すように、余材となる部分400のうちボトム側(下流側)からトップ側(上流側)をみて位置402で切断すれば、当該層のzトンの余材が得られる場合、位置402を切断位置とする。なお、低品質の部位(図4の例では特性値Cの部位)にそれよりも品質の高い部位(図4の例では特性値Bの部位)が混在するとき、特性値Bとして取り扱うことはできないが、特性値Cとして取り扱うことはできる。
【0020】
ここで述べた例では、ボトム側からトップ側をみて切断位置を探す例を述べたが、トップ側からボトム側をみて切断位置を探すようにしてもよい。例えば異鋼種継目があるためにそれよりもトップ側をみて切断位置を探すのが好ましくないような場合、ボトム側をみて切断位置を探すようにする。
【0021】
また、余材となる部分400内で切断位置を探すことに限られない。既述したように、各注文の切断長さには許容値が設定されており、余材となる部分400に隣接する注文部分で、許容値内で切断することにより最適なスラブの単重に合う余材を採片することができるようであれば、注文部分を切断位置としてもよい。
【0022】
以上のように、連続鋳造プロセスの実行中に、実際に発生する変動を加味して、予測される将来の注文に合わせた余材を採片することができる。
なお、機内調整部102aによる連続鋳造プロセスの調整、及び余材採片用調整部102bによる連続鋳造プロセスの調整は、図2(A)~(D)に示すように、鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6が切断機7に到達するまでの間は、適宜な間隔で、機内全体(鋳型5の直下から鋼6の先端位置まで)で再構築されるようにすればよい。そして、図2(E)に示すように、鋳型5から連続的に引抜かれる鋼6が切断機7に到達した後は、切断毎に(すなわち、切断をトリガーとして)、機内全体で再構築されるようにすればよい。
【0023】
以上のようにした連続鋳造プロセスの制御装置100や予測装置104は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により構成され、CPUが所定のプログラムを実行することにより、その機能が実現される。例えばプロコンと呼ばれるプロセスコンピュータが連続鋳造プロセスの制御装置100として機能するようにしてもよい。なお、本実施形態では、予測装置104を連続鋳造プロセスの制御装置100と別の装置として説明したが、一台の装置として構成されるようにしてもよい。
【0024】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
例えば上記実施形態では、記憶装置103に記憶する余材情報として、余材の重量であるスラブの単重を説明したが、例えば余材のサイズ(スラブの長さ、幅、厚さ等)としてもよい。
本発明は、本発明の画像生成機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0025】
100:連続鋳造プロセスの制御装置
101:特性値付与部
102:制御部
102a:機内調整部
102b:余材採片用調整部
103:記憶装置
104:予測装置
図1
図2
図3
図4