(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】通信品質劣化箇所推定装置、システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/08 20220101AFI20221220BHJP
【FI】
H04L43/08
(21)【出願番号】P 2019023519
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 亮
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-238052(JP,A)
【文献】特開2013-106304(JP,A)
【文献】国際公開第2005/013567(WO,A1)
【文献】米国特許第07525952(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する差算出部と、
音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する基準算出部と、
所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する推定結果出力部と
を備えることを特徴とする通信品質劣化箇所推定装置。
【請求項2】
前記通信フローの前記音声品質を評価する、あるいは、受信する品質評価部
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【請求項3】
前記通信装置で取得された前記フローデータを記憶する記憶部
を備え、
前記差算出部は、記憶された前記フローデータの各々に対して、前記遅延ゆらぎ差の前記算出を行う
ことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【請求項4】
前記フローデータは、前記通信パケットの送信元の端末の識別情報、前記送信時刻、前記取得時刻の情報を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【請求項5】
前記基準算出部は、前記遅延ゆらぎ差の95%信頼区間を前記基準範囲として前記算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【請求項6】
前記推定結果出力部は、前記音声品質が劣化している前記通信フローについて、前記劣化箇所の前記推定結果の前記出力を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置と、
前記通信装置と
を備えることを特徴とする通信品質劣化箇所推定システム。
【請求項8】
観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出し、
音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出し、
所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する
ことを特徴とする通信品質劣化箇所推定方法。
【請求項9】
前記通信フローの前記音声品質を評価する、あるいは、受信する
ことを特徴とする請求項8に記載の通信品質劣化箇所推定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する差算出機能と、
音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する基準算出機能と、
所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する推定結果出力機能と
を実現させることを特徴とする通信品質劣化箇所推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質劣化箇所推定装置、システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
音声通信サービスの維持や改善のためには、サービス提供者は、サービスの品質を把握した上で、品質劣化の原因となっている箇所を特定することが必要である。
【0003】
音声品質を評価する方法には、MOS(Mean Opinion Score)のような主観評価法や、品質評価モデルを利用して主観品質を推定する客観評価法がある。しかし、これらの方法は、音声通信における音声品質の評価は可能だが、品質劣化の原因となっている箇所を特定することはできない。
【0004】
一方、通信品質の劣化を検出する方法には、たとえば、特許文献1に記載の方法がある。特許文献1に記載の方法では、送信元から宛先までの一地点をパケット観測点とし、その地点におけるパケット損失率、音声パケットの遅延、ゆらぎ等を測定する。これにより、通信品質の劣化を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、エンドツーエンドでの品質劣化の検出は可能だが、品質劣化の原因となっている箇所を特定することはできない。
【0007】
本発明の目的は、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することを可能にする、通信品質劣化箇所推定装置、システム、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を解決するために、本発明の一実施形態において、通信品質劣化箇所推定装置は、観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する差算出部と、音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する基準算出部と、所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する推定結果出力部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の実施形態において、通信品質劣化箇所推定方法は、観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出し、音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出し、所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の実施形態において、通信品質劣化箇所推定プログラムは、コンピュータに、観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する差算出機能と、音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する基準算出機能と、所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する推定結果出力機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の通信品質劣化箇所推定装置、システム、方法およびプログラムにより、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一の実施形態の通信品質劣化箇所推定装置の構成例を示す図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態の通信品質劣化箇所推定装置の動作例を示す図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態の通信品質劣化箇所推定システムの構成例を示す図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態の通信品質劣化箇所推定装置の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態のフローデータの例を示す図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態の通信品質劣化箇所推定装置が記憶するフローデータの例を示す図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態の遅延時間と遅延ゆらぎの例を示す図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態のフローデータの例を示す図である。
【
図9】本発明の第二の実施形態の遅延ゆらぎ差の例を示す図である。
【
図10】本発明の第二の実施形態の基準範囲の例を示す図である。
【
図11】本発明の第二の実施形態の遅延ゆらぎ差の例を示す図である。
【
図12】本発明の第二の実施形態の通信品質劣化箇所推定装置の動作例を示す図である。
【
図13】本発明の各実施形態のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施の形態について説明する。
【0014】
図1に本実施形態の通信品質劣化箇所推定装置10の構成例を示す。本実施形態の通信品質劣化箇所推定装置10は、差算出部12、基準算出部13および推定結果出力部14により構成される。
【0015】
差算出部12は、観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する観測点の間の遅延ゆらぎ差を算出する。なお、遅延時間は、通信パケットが送信された送信時刻から観測点で取得された取得時刻までの時間である。また、遅延ゆらぎ差は、遅延時間のゆらぎ度合いの差である。
【0016】
基準算出部13は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。推定結果出力部14は、所定の通信フローの通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する。
【0017】
このように通信品質劣化箇所推定装置10を構成することによって、通信品質劣化箇所推定装置10は、通信フローの通信パケットの各々について、隣接する観測点の間の遅延時間のゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する。また、通信品質劣化箇所推定装置10は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。そして、通信品質劣化箇所推定装置10は、所定の通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する。これにより、通信品質劣化箇所推定装置10は、区間の各々について、音声品質が良い場合の遅延ゆらぎ差の基準範囲を算出することが可能になる。そして、所定の通信パケットについて、遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間の情報を劣化箇所の推定結果として出力することが可能になる。そのため、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することが可能になる。
【0018】
次に、
図2に本実施形態の通信品質劣化箇所推定装置10の動作の例を示す。
【0019】
差算出部12は、観測点が設定された通信装置で取得されたフローデータの各々について、遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する観測点の間の遅延ゆらぎ差を算出する(ステップS101)。基準算出部13は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する(ステップS102)。推定結果出力部14は、所定の通信フローの通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する(ステップS103)。
【0020】
このように動作することによって、通信品質劣化箇所推定装置10は、通信フローの通信パケットの各々について、隣接する観測点の間の遅延時間のゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する。また、通信品質劣化箇所推定装置10は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。そして、通信品質劣化箇所推定装置10は、所定の通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する。これにより、通信品質劣化箇所推定装置10は、区間の各々について、音声品質が良い場合の遅延ゆらぎ差の基準範囲を算出することが可能になる。そして、所定の通信パケットについて、遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間の情報を劣化箇所の推定結果として出力することが可能になる。そのため、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することが可能になる。
【0021】
以上で説明したように、本発明の第一の実施形態では、通信品質劣化箇所推定装置10は、通信フローの通信パケットの各々について、隣接する観測点の間の遅延時間のゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する。また、通信品質劣化箇所推定装置10は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。そして、通信品質劣化箇所推定装置10は、所定の通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する。これにより、通信品質劣化箇所推定装置10は、区間の各々について、音声品質が良い場合の遅延ゆらぎ差の基準範囲を算出することが可能になる。そして、所定の通信パケットについて、遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間の情報を劣化箇所の推定結果として出力することが可能になる。そのため、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することが可能になる。
【0022】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。本実施形態では、通信品質劣化箇所推定装置20についてより具体的に説明する。
【0023】
まず、
図3に本実施形態の通信品質劣化箇所推定システムの構成例を示す。本実施形態の通信品質劣化箇所推定システムは、端末50(50A~50C)、通信装置60(60A~60E)および通信品質劣化箇所推定装置20により構成される。なお、端末50の数は3台に限られず、任意の数が可能である。また、通信装置60の数は、5台に限られず、任意の数が可能である。
【0024】
通信装置60は、たとえば、スイッチ、ルータ、計算機など、ネットワーク上のパケットを受信および送信可能な装置により実現される。また、本実施形態の通信装置60は、パケットサンプリング機能を有する。
【0025】
通信装置60の接続点には、観測点が設定されているものとする。
図3に示す例では、通信装置60Aに観測点IF1およびIF2が、通信装置60Cに観測点IF3およびIF4が、通信装置60Dに観測点IF5、IF6およびIF7が、通信装置60Eに観測点IF8およびIF9が設定されている。
【0026】
また、本実施形態では、音声通信が流れるネットワーク経路上の通信装置60が通信パケットの情報(フローデータ)を収集し、通信装置60が収集したフローデータを通信品質劣化箇所推定装置20が記憶する。フローデータの収集方法には、sFlowやNetFlowなどのサンプリングプロトコルを利用することが可能である。
【0027】
通信品質劣化箇所推定装置20は、通信装置60Bに接続されており、各通信装置60が収集したフローデータを収集できるものとする。また、本実施形態では、音声通信は端末50間で行われるものとする。
【0028】
なお、
図3に例示する通信品質劣化箇所推定装置20は、通信装置60Bに接続されているが、通信品質劣化箇所推定装置20が接続される装置は、各通信装置60が収集したフローデータを収集可能であれば、特定の通信装置に限られない。
【0029】
次に、
図4を用いて、本実施形態の通信品質劣化箇所推定装置20の構成例について説明する。本実施形態の通信品質劣化箇所推定装置20は、受信部25、記憶部26、品質評価部21、差算出部12、基準算出部13および推定結果出力部14により構成される。
【0030】
受信部25は、通信装置60の各々から通信パケットの情報(フローデータ)を受信し、記憶部26に記憶させる。具体的には、受信部25は、通信装置60に設定された各観測点で収集されたフローデータを受信する。フローデータには少なくとも通信パケットの送信元の端末50の識別情報、送信時刻情報および観測点における観測時刻情報が含まれる。
【0031】
図5に、観測点IF1で収集されたフローデータの例を示す。この例では、フローデータは、各通信パケットが端末50から送信された送信時刻(送信タイムスタンプ)と各観測点で通信パケットが取得された時刻(取得時刻)とを含む。各フローデータは、
図5に例示するように、シーケンス番号で区別されていてもよい。
【0032】
記憶部26は、収集されたフローデータを記憶する。
図6に、記憶部26が記憶するフローデータの例を示す。この例では、各通信装置60における観測点(インタフェース名)ごとに、送信元IP(Internet Protocol)アドレス、宛先IPアドレスおよび宛先ポートを対応付けてフローが管理されている。この例では、宛先ポートが5004の通信フローが、音声通信に関する通信フローであるものとする。
【0033】
また、記憶部26は、ネットワークトポロジ情報を記憶する。ネットワークトポロジ情報は、あらかじめネットワーク管理者等により登録される。
【0034】
品質評価部21は、音声通信に関する通信フローの各々に対して音声品質を評価する。品質評価部21は、たとえば、記憶部26に記憶されたフローデータおよびトポロジ情報から、音声通信の通信フローの経路上にある観測点を特定し、各観測点を経由する音声データを通信装置60経由で取得する。そして、取得した音声データの各々に対して音声品質を評価する。あるいは、品質評価部21は、端末50やその他の装置から音声品質の評価結果を受信しても良い。
【0035】
なお、音声品質評価の手法としては、MOSのような主観評価法や、品質評価モデルを利用して主観品質を推定する客観評価法など、任意の方法を利用することが可能である。
【0036】
差算出部12は、記憶部26に記憶されたフローデータに基づいて、通信パケットの各々について、当該通信パケットの送信時刻から観測点での取得時刻までの遅延時間を算出し、また、遅延時間に基づいて遅延時間のゆらぎ度合いを算出する。そして、遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する観測点の間のゆらぎ度合いの差を算出する。なお、以降、「遅延時間のゆらぎ度合い」を「遅延ゆらぎ」、「遅延時間のゆらぎ度合いの差」を「遅延ゆらぎ差」と呼ぶ。また、隣接する観測点とは、ある観測点を通過した通信パケットが次に通過する観測点を意味する。
【0037】
具体的には、まず、差算出部12は、フローデータに含まれる送信元情報、宛先情報および送信時刻、および、記憶部26に記憶されているネットワークトポロジ情報に基づいて、各々の通信パケットの通信経路を特定する。差算出部12は、経路上に存在する各観測点において収集された音声通信のフローデータから送信時刻(送信タイムスタンプ)とサンプリングされた時刻(取得時刻)を特定し、遅延時間を算出する。また、差算出部12は、遅延時間に基づき、各観測点における平均遅延時間を計算する。具体的には、差算出部12は、各観測点で通信パケットが取得された時刻(取得時刻)と、対応する各通信パケットが送信された時刻(送信時刻)との差分を遅延時間として算出し、その平均を算出する。
【0038】
また、差算出部12は、各フローデータについて、各観測点における平均遅延時間と各フローデータの遅延時間との差を算出し、これを各観測点における遅延ゆらぎとする。
【0039】
図7は、遅延時間および遅延ゆらぎの例を示す図である。この例では、観測点ごと、また、フローデータごとに、遅延時間、および、平均遅延時間と遅延時間との差分が算出されている。たとえば、観測点IF1において、差算出部12は、シーケンス番号0で特定されるフローデータの遅延時間を、取得時刻と送信時刻の差分を算出することで、20msと算出する。また、観測点IF1における平均遅延時間が20msと算出されている場合、差算出部12は、たとえば、シーケンス番号6で特定されるフローデータの遅延ゆらぎを、遅延時間から平均遅延時間を減算することにより、10msと算出する。
【0040】
また、差算出部12は、隣接する観測点の間の遅延ゆらぎ差を算出する。
【0041】
差算出部12は、各観測点で収集したフローデータの各々を、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、送信時刻が同じものをまとめた組に分類する。この組は、同じ通信パケットに関するフローデータである。たとえば、
図8において、太線で囲まれたものは、同じ通信パケットのフローデータである。
【0042】
そして、差算出部12は、組としたフローデータについて、隣接する観測点の間の遅延ゆらぎ差を算出する。たとえば、
図3のシステム構成の場合、
図8の一番上のフローデータの組(通信パケット)において、隣接する観測点の組は、観測点IF1と観測点IF2、観測点IF2と観測点IF3、観測点IF3と観測点IF4の3通りである。差算出部12は、この3通りの観測点の組の各々について、通信パケットごとに、遅延ゆらぎ差を算出する。なお、どの観測点が隣接しているかについては、差算出部12は、記憶部26が記憶しているトポロジ情報から把握することができる。
【0043】
基準算出部13は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローのフローデータの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。
【0044】
基準算出部13は、まず、記憶部26に記憶されたフローデータから、音声品質が所定のレベル以上の通信フローに関するフローデータを抽出する。たとえば、品質評価をMOSによって行う場合には、一般的に品質が良いとされる4~5のMOS値を持つ通信フローに対応するフローデータを抽出する。なお、基準算出部13は、MOS値が3以上であるフローデータを抽出しても良い。
【0045】
次に、基準算出部13は、差算出部12が算出した遅延ゆらぎ差から、抽出されたフローデータ(音声品質が所定のレベル以上の通信フローのフローデータ)の遅延ゆらぎ差を抽出する。
【0046】
図9に、基準算出部13が特定した遅延ゆらぎ差の例を示す。たとえば、観測点IF1と観測点IF2の間の遅延ゆらぎ差には、
図8の一番上の通信パケットについての値が抽出されている。また、さらに、観測点IF1と観測点IF2を通過する通信パケット、すなわち、
図8の上から三番目(送信時刻がC)の通信パケットや、一番下(送信時刻がD)の通信パケットも抽出されている。
【0047】
そして、基準算出部13は、抽出した遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間ごとに、基準範囲を算出する。より具体的には、基準算出部13は、遅延ゆらぎ差の95%信頼区間を基準範囲として算出する。なお、このとき、基準算出部13は、遅延ゆらぎ差が正規分布に従うと仮定して、基準範囲を算出する。また、基準算出部13は、遅延ゆらぎ差が正規分布以外の分布に従うと仮定しても良いし、95%信頼区間以外の方法で基準範囲を算出しても良い。
図10に、算出された基準範囲の例を示す。ここで算出した基準範囲は、推定結果出力部14において、通信品質劣化箇所推定の基準範囲として使用される。
【0048】
このようにすることで、基準算出部13は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローに基づいて、区間ごとに、ほとんどの遅延ゆらぎ差が取り得る値の範囲を基準範囲として算出することが可能になる。そして、推定結果出力部14は、遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合に、その区間が品質劣化の原因となっている箇所であると推定することが可能になる。
【0049】
推定結果出力部14は、所定の通信フローの通信パケット(フローデータ)について、当該フローデータの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該フローデータにおける劣化箇所の推定結果として出力する。
【0050】
所定の通信フローは、たとえば、音声品質劣化の疑いがある通信フローである。たとえば、推定結果出力部14は、品質評価部21における音声品質の評価の結果、音声品質が低い通信フローについて、通信品質の劣化箇所を推定しても良い。あるいは、推定結果出力部14は、管理者等によって指定された通信フローに対して、通信品質の劣化箇所を推定しても良い。
【0051】
推定結果出力部14は、所定の通信フローに関するフローデータについて、隣接する観測点の間の遅延ゆらぎ差を算出する。あるいは、推定結果出力部14は、差算出部12が算出した遅延ゆらぎ差を利用しても良い。
【0052】
図11に、遅延ゆらぎ差の算出結果の例を示す。この例の場合、音声通信1、音声通信2、音声通信3は、同じ経路を経由する音声通信であるが、異なる通信パケットであるとする。
【0053】
そして、推定結果出力部14は、所定の通信フローに関するフローデータにおける遅延ゆらぎ差が、基準算出部13で算出した基準範囲に含まれているか確認する。
【0054】
たとえば、
図11において、音声通信1の観測点IF1と観測点IF2の間の区間の遅延ゆらぎ差は499であるため、
図10における観測点IF1と観測点IF2の間の区間の基準範囲に含まれる。そのため、推定結果出力部14は、観測点IF1と観測点IF2の間の区間は、音声通信1における品質劣化箇所ではないと推定する。
【0055】
また、たとえば、
図11において、音声通信1の観測点IF3と観測点IF4の間の区間の遅延ゆらぎ差は120であるため、
図10における観測点IF3と観測点IF4の間の区間の基準範囲から外れている。そのため、推定結果出力部14は、観測点IF3と観測点IF4の間の区間が、音声通信1における品質劣化箇所であると推定する。
【0056】
また、音声通信2、音声通信3の遅延ゆらぎ差についても同様に基準範囲との比較を行うと、推定結果出力部14は、音声通信2については、観測点IF1と観測点IF2の間の区間と、観測点IF2と観測点IF3の間の区間を、劣化箇所として推定する。また、推定結果出力部14は、音声通信3については、いずれの区間についても遅延ゆらぎ差が基準範囲内のため、劣化箇所はないと推定する。
【0057】
そして、推定結果出力部14は、推定した劣化箇所の情報を出力する。なお、上記の説明では、推定結果出力部14は、所定の通信フローの各通信パケット(フローデータ)について、劣化箇所を推定している。しかし、推定結果出力部14は、劣化箇所の推定を、通信パケット単位で行っても良いし、通信フロー単位で行っても良い。たとえば、推定結果出力部14は、所定の通信フローに関するフローデータの遅延ゆらぎ差の平均値、最大値、最小値等を基準範囲とを比較して、当該通信フローについての劣化箇所を推定しても良い。
【0058】
このように通信品質劣化箇所推定装置20を構成することによって、通信品質劣化箇所推定装置20は、通信フローの通信パケットの各々について、隣接する観測点の間の遅延時間のゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する。また、通信品質劣化箇所推定装置10は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。そして、通信品質劣化箇所推定装置10は、所定の通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する。これにより、通信品質劣化箇所推定装置10は、区間の各々について、音声品質が良い場合の遅延ゆらぎ差の基準範囲を算出することが可能になる。そして、所定の通信パケットについて、遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間の情報を劣化箇所の推定結果として出力することが可能になる。そのため、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することが可能になる。
【0059】
次に、
図12に、本実施形態の通信品質劣化箇所推定装置20の動作例を示す。ここでは、通信品質劣化箇所推定システムが
図3の場合を例に、通信品質劣化箇所推定装置20の動作例について説明する。
【0060】
まず、通信品質劣化箇所推定装置20の受信部25は、通信装置60の各々から、各観測点において収集された通信パケットの情報(フローデータ)を受信し、記憶部26に記憶させる(ステップS201)。
【0061】
また、品質評価部21は、音声通信に関する通信フローの各々に対して音声品質を評価する、あるいは、音声品質の評価結果を受信する(ステップS202)。なお、ステップS202とステップS201は同時に行われても良いし、逆の順であっても良い。また、ステップS201では、受信部25は、ステップS202での音声品質の評価(あるいは受信)後に、音声品質が所定のレベル以上の通信フローに関するフローデータを記憶部26に記憶させても良い。
【0062】
次に、差算出部12は、記憶部26に記憶されたフローデータに基づいて、通信パケットの各々について、遅延時間を算出し、また、遅延時間と平均遅延時間との差に基づいて遅延ゆらぎを算出する。そして、差算出部12は、通信パケットの各々について、隣接する観測点の間の遅延ゆらぎ差を算出する(ステップS203)。なお、差算出部12は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローに関する通信パケットについて、隣接する観測点の間の遅延ゆらぎ差を算出しても良い。
【0063】
次に、基準算出部13は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローのフローデータの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する(ステップS204)。基準算出部13は、たとえば、遅延ゆらぎ差の95%信頼区間を基準範囲として算出する。
【0064】
そして、推定結果出力部14は、基準算出部13が算出した基準範囲に基づいて、所定の通信フローの通信パケットについて、劣化箇所の推定結果を出力する(ステップS205)。推定結果出力部14は、所定の通信フローの通信パケット(フローデータ)について、当該フローデータの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該フローデータにおける劣化箇所の推定結果として出力する。
【0065】
なお、推定結果出力部14は、差算出部12が算出した遅延ゆらぎ差を当該フローデータの遅延ゆらぎ差として使用することができる。あるいは、推定結果出力部14は、所定の通信フローの通信パケットのフローデータを、記憶部26から取得して、あるいは、通信装置60から取得して、取得したフローデータに基づいて遅延ゆらぎ差を算出しても良い。
【0066】
このように動作することによって、通信品質劣化箇所推定装置20は、通信フローの通信パケットの各々について、隣接する観測点の間の遅延時間のゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する。また、通信品質劣化箇所推定装置10は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。そして、通信品質劣化箇所推定装置10は、所定の通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する。これにより、通信品質劣化箇所推定装置10は、区間の各々について、音声品質が良い場合の遅延ゆらぎ差の基準範囲を算出することが可能になる。そして、所定の通信パケットについて、遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間の情報を劣化箇所の推定結果として出力することが可能になる。そのため、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することが可能になる。
【0067】
以上で説明したように、本発明の第二の実施形態では、通信品質劣化箇所推定装置20は、通信フローの通信パケットの各々について、隣接する観測点の間の遅延時間のゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する。また、通信品質劣化箇所推定装置10は、音声品質が所定のレベル以上の通信フローの遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する観測点の間の区間の各々について、遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する。そして、通信品質劣化箇所推定装置10は、所定の通信パケットについて、当該通信パケットの遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する。これにより、通信品質劣化箇所推定装置10は、区間の各々について、音声品質が良い場合の遅延ゆらぎ差の基準範囲を算出することが可能になる。そして、所定の通信パケットについて、遅延ゆらぎ差が基準範囲を外れている区間の情報を劣化箇所の推定結果として出力することが可能になる。そのため、通信品質の劣化の原因となっている箇所を推定することが可能になる。
【0068】
[ハードウェア構成例]
上述した本発明の各実施形態における通信品質劣化箇所推定装置(10、20)を、一つの情報処理装置(コンピュータ)を用いて実現するハードウェア資源の構成例について説明する。なお、通信品質劣化箇所推定装置は、物理的または機能的に少なくとも二つの情報処理装置を用いて実現してもよい。また、通信品質劣化箇所推定装置は、専用の装置として実現してもよい。また、通信品質劣化箇所推定装置の一部の機能のみを情報処理装置を用いて実現しても良い。
【0069】
図13は、本発明の各実施形態の通信品質劣化箇所推定装置を実現可能な情報処理装置のハードウェア構成例を概略的に示す図である。情報処理装置90は、通信インタフェース91、入出力インタフェース92、演算装置93、記憶装置94、不揮発性記憶装置95およびドライブ装置96を備える。
【0070】
通信インタフェース91は、各実施形態の通信品質劣化箇所推定装置が、有線あるいは/および無線で外部装置と通信するための通信手段である。なお、通信品質劣化箇所推定装置を、少なくとも二つの情報処理装置を用いて実現する場合、それらの装置の間を通信インタフェース91経由で相互に通信可能なように接続しても良い。
【0071】
入出力インタフェース92は、入力デバイスの一例であるキーボードや、出力デバイスとしてのディスプレイ等のマンマシンインタフェースである。
【0072】
演算装置93は、汎用のCPU(Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ等の演算処理装置である。演算装置93は、たとえば、不揮発性記憶装置95に記憶された各種プログラムを記憶装置94に読み出し、読み出したプログラムに従って処理を実行することが可能である。
【0073】
記憶装置94は、演算装置93から参照可能な、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置であり、プログラムや各種データ等を記憶する。記憶装置94は、揮発性のメモリ装置であっても良い。
【0074】
不揮発性記憶装置95は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、等の、不揮発性の記憶装置であり、各種プログラムやデータ等を記憶することが可能である。
【0075】
ドライブ装置96は、たとえば、後述する記録媒体97に対するデータの読み込みや書き込みを処理する装置である。
【0076】
記録媒体97は、たとえば、光ディスク、光磁気ディスク、半導体フラッシュメモリ等、データを記録可能な任意の記録媒体である。
【0077】
本発明の各実施形態は、たとえば、
図13に例示した情報処理装置90により通信品質劣化箇所推定装置を構成し、この通信品質劣化箇所推定装置に対して、上記各実施形態において説明した機能を実現可能なプログラムを供給することにより実現してもよい。
【0078】
この場合、通信品質劣化箇所推定装置に対して供給したプログラムを、演算装置93が実行することによって、実施形態を実現することが可能である。また、通信品質劣化箇所推定装置のすべてではなく、一部の機能を情報処理装置90で構成することも可能である。
【0079】
さらに、上記プログラムを記録媒体97に記録しておき、通信品質劣化箇所推定装置の出荷段階、あるいは運用段階等において、適宜上記プログラムが不揮発性記憶装置95に格納されるよう構成してもよい。なお、この場合、上記プログラムの供給方法は、出荷前の製造段階、あるいは運用段階等において、適当な治具を利用して通信品質劣化箇所推定装置内にインストールする方法を採用してもよい。また、上記プログラムの供給方法は、インターネット等の通信回線を介して外部からダウンロードする方法等の一般的な手順を採用してもよい。
【0080】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。
【0081】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0082】
(付記1)
観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する差算出部と、
音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する基準算出部と、
所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する推定結果出力部と
を備えることを特徴とする通信品質劣化箇所推定装置。
【0083】
(付記2)
前記通信フローの前記音声品質を評価する、あるいは、受信する品質評価部
を備えることを特徴とする付記1に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【0084】
(付記3)
前記通信装置で取得された前記フローデータを記憶する記憶部
を備え、
前記差算出部は、記憶された前記フローデータの各々に対して、前記遅延ゆらぎ差の前記算出を行う
ことを特徴とする付記1あるいは付記2に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【0085】
(付記4)
前記フローデータは、前記通信パケットの送信元の端末の識別情報、前記送信時刻、前記取得時刻の情報を含む
ことを特徴とする付記1から付記3のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【0086】
(付記5)
前記基準算出部は、前記遅延ゆらぎ差の95%信頼区間を前記基準範囲として前記算出する
ことを特徴とする付記1から付記4のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【0087】
(付記6)
前記推定結果出力部は、前記音声品質が劣化している前記通信フローについて、前記劣化箇所の前記推定結果の前記出力を行う
ことを特徴とする付記1から付記5のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置。
【0088】
(付記7)
付記1から付記6のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定装置と、
前記通信装置と
を備えることを特徴とする通信品質劣化箇所推定システム。
【0089】
(付記8)
観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出し、
音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出し、
所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する
ことを特徴とする通信品質劣化箇所推定方法。
【0090】
(付記9)
前記通信フローの前記音声品質を評価する、あるいは、受信する
ことを特徴とする付記8に記載の通信品質劣化箇所推定方法。
【0091】
(付記10)
前記通信装置で取得された前記フローデータを記憶する記憶部に記憶された前記フローデータの各々に対して、前記遅延ゆらぎ差の前記算出を行う
ことを特徴とする付記8あるいは付記9に記載の通信品質劣化箇所推定方法。
【0092】
(付記11)
前記フローデータは、前記通信パケットの送信元の端末の識別情報、前記送信時刻、前記取得時刻の情報を含む
ことを特徴とする付記8から付記10のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定方法。
【0093】
(付記12)
前記遅延ゆらぎ差の95%信頼区間を前記基準範囲として前記算出する
ことを特徴とする付記8から付記11のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定方法。
【0094】
(付記13)
前記音声品質が劣化している前記通信フローについて、前記劣化箇所の前記推定結果の前記出力を行う
ことを特徴とする付記8から付記12のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定方法。
【0095】
(付記14)
コンピュータに、
観測点が設定された通信装置で取得された、音声通信に関する通信フローの通信パケットに関する情報であるフローデータの各々について、前記通信パケットが送信された送信時刻から前記観測点で取得された取得時刻までの遅延時間のゆらぎ度合いに基づいて、隣接する前記観測点の間の前記遅延時間の前記ゆらぎ度合いの差である遅延ゆらぎ差を算出する差算出機能と、
音声品質が所定のレベル以上の前記通信フローの前記遅延ゆらぎ差に基づいて、隣接する前記観測点の間の区間の各々について、前記遅延ゆらぎ差に関する基準範囲を算出する基準算出機能と、
所定の前記通信フローの前記通信パケットについて、当該通信パケットの前記遅延ゆらぎ差が前記基準範囲を外れている前記区間がある場合、当該区間の情報を当該通信パケットにおける劣化箇所の推定結果として出力する推定結果出力機能と
を実現させることを特徴とする通信品質劣化箇所推定プログラム。
【0096】
(付記15)
前記通信フローの前記音声品質を評価する、あるいは、受信する品質評価機能
をコンピュータに実現させることを特徴とする付記14に記載の通信品質劣化箇所推定プログラム。
【0097】
(付記16)
前記通信装置で取得された前記フローデータを記憶する記憶部に記憶された前記フローデータの各々に対して、前記遅延ゆらぎ差の前記算出を行う
ことを特徴とする付記14あるいは付記15に記載の通信品質劣化箇所推定プログラム。
【0098】
(付記17)
前記フローデータは、前記通信パケットの送信元の端末の識別情報、前記送信時刻、前記取得時刻の情報を含む
ことを特徴とする付記14から付記16のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定プログラム。
【0099】
(付記18)
前記基準算出機能は、前記遅延ゆらぎ差の95%信頼区間を前記基準範囲として前記算出する
ことを特徴とする付記14から付記17のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定プログラム。
【0100】
(付記19)
前記推定結果出力機能は、前記音声品質が劣化している前記通信フローについて、前記劣化箇所の前記推定結果の前記出力を行う
ことを特徴とする付記14から付記18のいずれか一項に記載の通信品質劣化箇所推定プログラム。
【符号の説明】
【0101】
10、20 通信品質劣化箇所推定装置
12 差算出部
13 基準算出部
14 推定結果出力部
21 品質評価部
25 受信部
26 記憶部
50 端末
60 通信装置
90 情報処理装置
91 通信インタフェース
92 入出力インタフェース
93 演算装置
94 記憶装置
95 不揮発性記憶装置
96 ドライブ装置
97 記録媒体