(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 27/08 20060101AFI20221220BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C13/18 Z
(21)【出願番号】P 2019024285
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/064767(WO,A1)
【文献】特開2008-290704(JP,A)
【文献】特開平05-170191(JP,A)
【文献】特開2016-135660(JP,A)
【文献】特開2016-135659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226892(US,A1)
【文献】特開2007-245925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 13/18
B64C 29/00
B64C 27/26
B64F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中を飛行して着陸地点の着陸面に着陸する飛行体であって、
本体と、
前記本体に設けられており、前記本体の位置を調整するための推力及び前記本体の姿勢を調整するための推力を発生する推力発生部と、
前記本体に設けられており、前記着陸面への着陸時に前記本体を支持する着陸脚と、
前記本体の現在の姿勢を示す本体姿勢情報を取得する第1情報取得部と、
前記着陸面の状態を示す着陸地点情報を取得する第2情報取得部と、
前記本体姿勢情報及び前記着陸地点情報に基づいて前記着陸面への着陸のための前記本体の目標姿勢を算出し、前記本体の姿勢が前記目標姿勢となるように前記推力発生部を制御する制御装置と、
を備
え、
前記制御装置は、
前記着陸地点へ近づくように前記推力発生部を制御する着陸動作と、
前記本体の姿勢が前記目標姿勢となるように前記推力発生部を制御する姿勢制御動作とを、行い、
前記姿勢制御動作は、
前記本体姿勢情報及び前記着陸地点情報を取得する第1動作と、
前記本体姿勢情報及び前記着陸地点情報を利用して、前記本体の姿勢が前記目標姿勢となるように前記推力発生部を制御する第2動作と、を含み、
前記制御装置は、前記着陸動作の実行中に、前記第1動作と前記第2動作とを交互に2回以上繰り返し実行する、飛行体。
【請求項2】
前記着陸脚は、着陸時に前記着陸面に接地する接地部を含み、
前記制御装置は、前記接地部により規定される仮想平面が前記着陸面に沿うように、前記本体の前記目標姿勢を算出する、請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記本体に設けられており、前記着陸地点情報を検出する検出部を更に備え、
前記第2情報取得部は、前記検出部から前記着陸地点情報を取得する、請求項1
又は2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記第2情報取得部は、前記着陸面に設けられると共に前記着陸地点情報を検出する外部検出部から、前記着陸地点情報を取得する、請求項1
又は2に記載の飛行体。
【請求項5】
前記推力発生部は、前記本体を通る鉛直線の周囲に配置された6個のロータを含み、
前記制御装置は、前記6個のロータの回転数をそれぞれ独立して制御可能であり、
前記6個のロータは、前記鉛直線に対して鋭角に傾斜する回転軸線をそれぞれ有しており、
前記6個のロータの回転面は、同一平面上には配置されていない、請求項1~
4のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項6】
前記推力発生部は、複数のロータを含み、
前記複数のロータの回転軸線である第1軸線、第2軸線及び第3軸線は、前記本体に対して定まった位置に配置されており、
前記複数のロータは、
前記第1軸線上に回転中心が配置されて逆のピッチを有し、前記第1軸線に直交する回転面をそれぞれ有する第1の一対のロータと、
前記第2軸線上に回転中心が配置されて逆のピッチを有し、前記第2軸線に直交する回転面をそれぞれ有する第2の一対のロータと、
前記第3軸線上に回転中心が配置されて逆のピッチを有し、前記第3軸線に直交する回転面をそれぞれ有する第3の一対のロータと、を含み、
前記制御装置は、前記第1の一対のロータ、前記第2の一対のロータ及び前記第3の一対のロータの回転数をそれぞれ独立して制御可能であり、
前記第1軸線、前記第2軸線及び前記第3軸線は、同一平面上に存在せず、互いに非平行である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプタ等の回転翼機は、例えば傾斜面等の水平面以外の着陸面に着陸する場合がある。このような着陸面に回転翼機を着陸させる技術として、特許文献1又は特許文献2に記載の技術が考えられる。特許文献1は、機体の下方に延びる複数の着陸機構を備える垂直着陸装置を開示する。これらの着陸機構は、着陸時に着陸面から衝撃を受けると、上下方向に弾性変形し、この弾性変形によって当該衝撃を吸収する。特許文献2は、着陸時に機体を支持する複数の着陸支持体を備える航空機を開示する。これらの着陸支持体は、その長さを不整地の地形特性に応じて変えることにより、不整地への着陸時に機体の姿勢を略水平にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-245925号公報
【文献】特表2015-530318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような着陸面への回転翼機(飛行体)の着陸を安定させるために、飛行体の姿勢を着陸面に沿って傾斜させた状態で着陸させることが考えられる。しかしながら、飛行体の姿勢を水平姿勢から傾けると、揚力の水平方向成分が飛行体に働くことによって、着陸時に飛行体が意図しない方向に移動する虞がある。更に、この揚力の水平方向成分は、飛行体が着陸面に衝突した際に、着陸面から飛行体に作用する反力を生じさせる。この反力によって、飛行体のロールオーバーが生じる虞がある。したがって、上述したような着陸面への飛行体の着陸の安定性に改善の余地がある。
【0005】
本開示は、着陸面に安定して着陸できる飛行体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の飛行体は、空中を飛行して着陸地点の着陸面に着陸する飛行体であって、本体と、本体に設けられており、本体の位置を調整するための推力及び本体の姿勢を調整するための推力を発生する推力発生部と、本体に設けられており、着陸面への着陸時に本体を支持する着陸脚と、本体の現在の姿勢を示す本体姿勢情報を取得する第1情報取得部と、着陸面の状態を示す着陸地点情報を取得する第2情報取得部と、本体姿勢情報及び着陸地点情報に基づいて着陸面への着陸のための本体の目標姿勢を算出し、本体の姿勢が目標姿勢となるように推力発生部を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
この飛行体では、空中における本体の位置及び姿勢は、推力発生部が発生する推力を調整することによって調整される。この推力発生部は、本体の位置を調整するための推力のみならず、本体の姿勢を調整するための推力を発生する。このため、これらの推力を調整することによって本体の位置及び姿勢をそれぞれ独立して調整することができる。これにより、本体の位置を維持した状態で本体の姿勢を調整することができ、逆に、本体の姿勢を維持した状態で本体の位置を調整することもできる。その結果、着陸の際に着陸面に応じた目標姿勢となるように本体の姿勢を調整した(例えば水平姿勢から傾けた)場合であっても、本体の位置が意図せずに変動するような事態を抑制できる。すなわち、上述した構成によれば、飛行体を安定して着陸面に着陸させることができる。
【0008】
いくつかの態様において、着陸脚は、着陸時に着陸面に接地する接地部を含み、制御装置は、接地部により規定される仮想平面が着陸面に沿うように、本体の目標姿勢を算出してもよい。この場合、着陸脚の接地部を規定する仮想平面と着陸面との相対傾斜角度を小さくすることができるので、飛行体をより安定して着陸面に着陸させることができる。
【0009】
いくつかの態様において、制御装置は、着陸地点へ近づくように推力発生部を制御する着陸動作と、本体の姿勢が目標姿勢となるように推力発生部を制御する姿勢制御動作とを、行い、姿勢制御動作は、本体姿勢情報及び着陸地点情報を取得する第1動作と、本体姿勢情報及び着陸地点情報を利用して、本体の姿勢が目標姿勢となるように推力発生部を制御する第2動作と、を含み、制御装置は、着陸動作の実行中に、第1動作及び第2動作を繰り返し実行してもよい。例えば、着陸地点が船上である場合、着陸面の状態が時間的に変動することが想定される。上述した動作によれば、着陸動作によって着陸地点に近づきながら、時間的に変動する着陸面の状態と本体の姿勢との関係を姿勢制御動作によってリアルタイムに調整することが可能となる。その結果、本体の姿勢を着陸面の状態に追従させることができる。つまり、このように着陸面の状態が時間的に変動する場合であっても、飛行体を安定して着陸面に着陸させることができる。
【0010】
いくつかの態様において、本体に設けられており、着陸地点情報を検出する検出部を更に備え、第2情報取得部は、検出部から着陸地点情報を取得してもよい。この場合、検出部は、例えば、本体の姿勢に対する着陸面の相対傾斜角度を算出することによって、本体の現在の姿勢に基づいて着陸面の着陸地点情報を間接的に検出できる。このように着陸地点情報を検出する検出部を飛行体が備えることによって、予め着陸地点情報が検出されている特定の着陸面に限らず、任意の着陸面の着陸地点情報が得られる。その結果、任意の着陸面に飛行体を安定して着陸させることができるので、利便性を高めることができる。
【0011】
いくつかの態様において、第2情報取得部は、着陸面に設けられると共に着陸地点情報を検出する外部検出部から、着陸地点情報を取得してもよい。この場合、着陸地点情報が間接的に検出される場合と比べて、より正確な着陸地点情報が得られる。より正確な着陸地点情報に基づいて本体の姿勢を調整することで、飛行体をより安定して着陸面に着陸させることができる。
【0012】
いくつかの態様において、推力発生部は、本体を通る鉛直線の周囲に配置された6個のロータを含み、制御装置は、6個のロータの回転数をそれぞれ独立して制御可能であり、6個のロータは、鉛直線に対して鋭角に傾斜する回転軸線をそれぞれ有しており、6個のロータの回転面は、同一平面上には配置されていなくてもよい。この場合、6個のロータは制御装置によって制御されて、それぞれ任意の回転数で回転する。これらのロータの回転軸線が鉛直線に対して鋭角に傾斜し、ロータの回転面が同一平面上には配置されない。このため、各ロータは、本体の位置を調整するための推力のみならず、本体の姿勢を調整するための推力を発生することが可能となる。よって、上述した構成によれば、上述した飛行体の推力発生部を好適に実現できる。
【0013】
いくつかの態様において、推力発生部は、複数のロータを含み、複数のロータの回転軸線である第1軸線、第2軸線及び第3軸線は、本体に対して定まった位置に配置されており、複数のロータは、第1軸線上に回転中心が配置されて逆のピッチを有し、第1軸線に直交する回転面をそれぞれ有する第1の一対のロータと、第2軸線上に回転中心が配置されて逆のピッチを有し、第2軸線に直交する回転面をそれぞれ有する第2の一対のロータと、第3軸線上に回転中心が配置されて逆のピッチを有し、第3軸線に直交する回転面をそれぞれ有する第3の一対のロータと、を含み、制御装置は、第1の一対のロータ、第2の一対のロータ及び第3の一対のロータの回転数をそれぞれ独立して制御可能であり、第1軸線、第2軸線及び第3軸線は、同一平面上に存在せず、互いに非平行であってもよい。この場合、各ロータは、同一平面上に存在しない3本の回転軸線上で放射状に配置される。各回転軸線が上述した位置に配置されることで、各ロータは、本体の位置を調整するための推力のみならず、本体の姿勢を調整するための推力を発生することが可能となる。よって、上述した構成によれば、上述した飛行体の推力発生部を好適に実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示のいくつかの態様によれば、着陸面に安定して着陸できる飛行体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る飛行体の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、飛行体の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、飛行体の着陸制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、飛行体の着陸制御方法を説明するための概略図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、飛行体の着陸制御方法を説明するための概略図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係る飛行体を示す概略図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係る飛行体の概略構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第3変形例に係る飛行体の概略構成を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第4変形例に係る飛行体の概略構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、比較例に係る飛行体の課題を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。以下の説明では、本発明に係る飛行体が、無人航空機(以下、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)という)である場合について説明する。また、以下の説明において、Z軸を鉛直軸とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標(3次元座標)を定める。そして、鉛直軸に沿った鉛直方向をZ方向といい、第1水平方向をX方向といい、第1水平方向に垂直な第2水平方向をY方向ということがある。また、ある構成の「位置」とは、3次元座標を基準とした当該構成の座標位置を意味する。ある構成の「姿勢」とは、3次元座標の各軸を基準とした当該構成の傾きを意味する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る飛行体1の概略構成を示す斜視図である。飛行体1は、例えばマルチロータ機(回転翼機)である。飛行体1は、空中を飛行して着陸地点の着陸面LP(例えば
図5(a)参照)に着陸する。本実施形態では、着陸面LPが傾斜面である場合を例示する。しかし、着陸面LPは、傾斜面に限られず、水平面であってもよいし、起伏の大きな面であってもよい。また、本実施形態では、着陸面LPが船等の輸送機器(移動物体)にある場合を想定し、着陸面LPの位置及び傾斜は、時間的に変動するものとする。
【0018】
図1に示すように、飛行体1は、本体2と、本体2に取り付けられるフレーム3と、本体2に付与する推力を発生する推力発生部5と、着陸時に本体2を支持する着陸脚15とを備えている。本体2は、例えば、飛行体1の制御機器等を内部に収容している。本体2は、例えば、XY方向に延びる直方体状を呈しており、飛行体1の中央に配置されている。また、本実施形態では、本体2に空洞部が設けられており、この空洞部は、本体2の4枚の側面のそれぞれにおいて開口2aを形成している。4枚の側面とは、本体2の直方体の各面のうち、X方向において互いに対向する2枚の側面、及びY方向において互いに対向する2枚の側面である。
【0019】
フレーム3は、本体2の外方向、すなわち本体2から離れる方向に延びる棒状の部材である。各フレーム3には、推力発生部5の各ロータ11が配置される。各フレーム3は、本体2を中心に放射状に延びるように本体2に取り付けられている。
図1に示す例では、6本のフレーム3が本体2に取り付けられているが、フレーム3の本数は適宜変更可能である。また、フレーム3は、本体2と共通する部材により、本体2と一体に構成されていてもよい。
【0020】
推力発生部5は、本体2に設けられる複数のロータ10と、複数のフレーム3にそれぞれ設けられる複数のロータ11とを有している。各ロータ10は、例えば、本体2に形成された4個の開口2a内にそれぞれ配置されている。各ロータ10は、例えば、本体2の空洞部内に設けられるモータ34(
図2参照)の回転軸に取り付けられており、モータ34の回転駆動によって回転する。各ロータ10の回転軸線は、水平方向であるX方向又はY方向に沿っている。具体的には、X方向において互いに対向する一対のロータ10の回転軸線は共に、X方向に沿っており、Y方向において互いに対向する一対のロータ10の回転軸線は共に、Y方向に沿っている。
【0021】
このように水平方向に沿った回転軸線を有する各ロータ10を回転させることによって、各ロータ10は、水平方向への推力を発生する。なお、ロータ10の回転軸線は、X方向又はY方向からZ方向側に傾斜した方向に沿っていてもよい。このような場合であっても、ロータ10が発生する推力のX方向成分又はY方向成分によって、水平方向への推力が得られる。また、
図1に示す例では、ロータ10は、2枚の羽根を有しているが、これに限られない。ロータ10は、例えば3枚以上の羽根を有してもよい。
【0022】
複数のロータ11は、複数のフレーム3の先端部にそれぞれ取り付けられており、本体2を通る鉛直線Nの周囲にそれぞれ配置されている。
図1に示す例では、6個のロータ11が、鉛直線Nの周囲に等間隔で配置されており、飛行体1は、ヘキサコプタ型の飛行体1となっている。6個のロータ11の回転中心11aは、例えば、同一平面上に位置しており、Z方向から見た場合に、正六角形の頂点(すなわち角位置)上にそれぞれ配置されている。
【0023】
6個のロータ11は、必ずしも正六角形の頂点上に配置される必要性はなく、互いに対向する一対の辺が他の辺よりも長い六角形の頂点上に配置されてもよい。また、6個のロータ11は、必ずしも同一平面上に配置されなくてもよく、Z方向において互いにずれた位置に配置されてもよい。6個のロータ11が所定の水平方向線に関して対称性を有するように配置されると、飛行体1の制御系を簡易化でき、飛行体1の設計及び実装が容易となる。
【0024】
ロータ11は、例えば、フレーム3の先端部に設けられるモータ34(
図2参照)の回転軸に取り付けられており、モータ34の回転駆動によって回転する。各ロータ11の回転軸線は、例えばZ方向に沿っている。このようにZ方向に沿った回転軸線を有する各ロータ11を回転させると、各ロータ11は、Z方向への推力(揚力)を発生する。なお、ロータ11の回転軸線は、Z方向からXY平面側に傾斜した方向に沿ってもよい。また、
図1に示す例では、ロータ11は、3枚の羽根を有しているが、これに限られない。ロータ11は、例えば2枚又は3枚以上の羽根を有してもよい。また、
図1に示す例では、6個のロータ11を備えた飛行体1を示しているが、ロータ11の設置数は6個未満であってもよく、6個よりも多くてもよい。
【0025】
このように、推力発生部5は、鉛直方向に推力を発生するロータ11のみならず、水平方向に推力を発生するロータ10を有している。このため、本体2の姿勢を傾けた場合に生じる各ロータ11の推力の水平方向成分を、各ロータ10の推力の水平方向成分によって打ち消すことができる。これにより、本体2の水平位置を維持した状態で本体2の姿勢のみを調整することができる。逆に、本体2の姿勢を維持した状態で本体2の水平位置を調整することもできる。よって、推力発生部5がロータ10を有することによって、X軸、Y軸及びZ軸の各軸に関して並進運動を独立に調整できるだけでなく、各軸に関して回転運動を独立に調整することができる。つまり、各軸に関して並進運動及び回転運動が独立に制御可能であり、飛行体1は、6自由度で飛行可能になる。
【0026】
着陸脚15は、本体2の下面(すなわち、Z方向における着陸面LP側の面)に取り付けられている。着陸脚15は、X方向において本体2の中央部を挟んで略対称に設けられると共にY方向に延びる一対のスキッド16と、各スキッド16と本体2とをZ方向に接続する複数の接続部材17と、を含んでいる。スキッド16は、Y方向に延びる棒状の部材であり、接続部材17は、Z方向に延びる棒状の部材である。スキッド16は、着陸時に着陸面LPに接地する接地部16aを含んでいる。
【0027】
各スキッド16の接地部16aは、一枚の仮想平面VP(例えば
図5(a)参照)を規定する。仮想平面VPは、例えば、一対のスキッド16の接地部16aを全て含む平面である。仮想平面VPは、例えば、本体2の姿勢に沿っている。仮想平面VPは、例えば、本体2の姿勢が水平面に沿った水平姿勢であるときに水平面に沿い、本体2の姿勢が水平姿勢から傾斜すると、その傾斜に応じて仮想平面VPは水平面から傾斜する。なお、着陸脚15の構成は、
図1に示す例に限られない。着陸脚15は、着陸時に本体2を着陸面LPにて支持できれば、どのような構成でもよい。また、仮想平面VPは、本体2の姿勢が水平姿勢であるときに水平面から傾斜してもよい。
【0028】
図2は、飛行体1の電気的構成を示すブロック図である。
図2において、実線は電源系統を示し、破線は通信系統(制御系統)を示している。
図2に示すように、本体2は、飛行体1の各部を制御する制御装置20と、飛行体1の各部を駆動する電源であるバッテリ23と、飛行体1の各部に電力を供給する電源基板24とを有する。また、本体2は、その現在の位置及び姿勢を検出する第1情報取得部25と、着陸地点の着陸面LPの位置及び傾斜を検出する検出部30と、複数のモータ34をそれぞれ駆動する複数のモータアンプ33と、を有している。
【0029】
第1情報取得部25は、例えば、ジャイロセンサ26と、GPS(Global Positioning System)センサ27と、気圧センサ28と、加速度センサ29とを含んでいる。ジャイロセンサ26は、飛行体1の角加速度を検出し、加速度センサ29は、飛行体1のZ方向の加速度とXY方向の加速度とを検出する。ジャイロセンサ26及び加速度センサ29は、それぞれの機能を備えて一体化されてもよい。また、第1情報取得部25は、飛行体1に加わる外力を直接検出するセンサ(例えば力覚センサ又は圧力センサ)を含んでもよい。
【0030】
第1情報取得部25は、これらのセンサから出力されるセンサデータを所定の周期で取得し、そのセンサデータに基づいて例えば適当な推定アルゴリズム等を用いることで、本体2の現在の位置及び姿勢を示す本体姿勢情報D1を推定する。このようにして、第1情報取得部25は、センサデータを取得する度に、本体姿勢情報D1を検出すると共に本体姿勢情報D1を制御装置20に出力する。
【0031】
本体2の「位置」は、例えば、本体2の中心位置としてもよく、本体2の重心位置としてもよい。或いは、本体2の「位置」は、本体2の中心位置及び重心位置以外の位置としてもよい。また、本体姿勢情報D1は、本体2の現在の位置及び姿勢を直接的に示す情報であってもよく、本体2の現在の位置及び姿勢を間接的に示す情報であってもよい。本体姿勢情報D1が飛行体1の他の部分の現在の位置及び姿勢を示す情報であっても、当該部分と本体2との位置関係から、本体2の現在の位置及び姿勢を導出できる。したがって、本体姿勢情報D1は、本体2以外の他の部分(例えばフレーム3等)の現在の位置及び姿勢を示す情報であってもよい。
【0032】
検出部30は、例えば、着陸面LPとの距離を測定する距離センサ31を含んでいる。距離センサ31は、例えば光(又は電波)を着陸面LPに向けて出射し、着陸面LPから反射する光(又は電波)を検出することによって、着陸面LPとの距離を測定する。距離センサ31は、測定結果を所定の周期(リアルタイム)で出力する。
【0033】
検出部30は、距離センサ31から測定結果を受ける。検出部30は、距離センサ31による測定結果が出力される度に、当該測定結果に基づいて、本体2の位置と着陸面LPの位置との相対位置、及び本体2の姿勢と着陸面LPの傾斜との相対傾斜角度を算出する。そして、検出部30は、算出した相対位置及び相対傾斜角度と、本体2の現在の位置及び姿勢とに基づいて、着陸面LPの位置及び傾斜を示す着陸地点情報D2を算出する。つまり、着陸面LPの状態を示す情報である着陸地点情報D2とは、着陸面LPの位置及び傾斜角度を含むものとしてよい。検出部30は、算出した着陸地点情報D2を第2情報取得部32に出力する。
【0034】
第2情報取得部32は、検出部30から着陸地点情報D2を取得し、取得した着陸地点情報D2を制御装置20に出力する。第2情報取得部32の出力周期は、例えば、第1情報取得部25の出力周期と同期している。なお、検出部30は、飛行体1の外部に設けられてもよい。この場合、第2情報取得部32は、外部の検出部30から着陸地点情報D2を受信する機能を有していればよい。
【0035】
着陸地点情報D2は、着陸面LPの位置及び傾斜を直接的に示す情報であってもよく、着陸面LPの位置及び傾斜を間接的に示す情報であってもよい。例えば、着陸地点情報D2が着陸面LP以外の部分の位置及び傾斜を示す情報であっても、その情報から着陸面LPの位置及び傾斜を導ける場合には、着陸地点情報D2は、当該部分の位置及び傾斜を示す情報であってもよい。
【0036】
制御装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとより構成されたコンピュータである。制御装置20は、第1情報取得部25から出力された本体姿勢情報D1と、検出部30から出力された着陸地点情報D2とに基づいて、各モータアンプ33を介して各モータ34を回転駆動させ、各ロータ10及び11の回転を制御する。
【0037】
図3は、制御装置20の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置20は、例えば、着陸面LPへの着陸のための本体2の目標位置及び目標姿勢を算出する算出部21と、各ロータ10及び11の回転速度を制御するロータ制御部22とを含んでいる。算出部21には、第1情報取得部25から出力された本体姿勢情報D1と、第2情報取得部32から出力された着陸地点情報D2とが周期的に入力される。算出部21は、入力された本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2に基づいて、本体2の目標位置及び目標姿勢を算出する。
【0038】
この「目標位置及び目標姿勢」とは、着陸時又は着陸前において着陸面LPに飛行体1を着陸させるための目標となる本体2の位置及び姿勢である。「目標位置」は、例えば、着陸面LPの位置の上空としてよい。具体的には、「目標位置」は、着陸面LPの位置からZ方向に所定距離離れた(すなわち、オフセットされた)位置としてよい。しかし、「目標位置」は、着陸面LPの位置からZ方向に所定距離離れた位置に限られず、その所定距離離れた位置から更に水平方向にずれた位置であってもよい。また、「目標位置」は、例えば、着陸面LPの位置としてもよい。
【0039】
「目標姿勢」は、例えば、着陸面LPに沿った姿勢としてよい。具体的には、「目標姿勢」は、着陸脚15の接地部16aによって規定される仮想平面VPが着陸面LPに沿うときの本体2の姿勢としてよい。仮想平面VPが着陸面LPに沿うとは、飛行体1が着陸面LPに安定して着陸可能な姿勢である状態を意味する。具体的には、仮想平面VPが着陸面LPに沿うとは、仮想平面VPと着陸面LPとが互いに平行である状態のほか、仮想平面VPが着陸面LPに対して僅かに傾いた状態も含む。
【0040】
算出部21は、本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2が入力される度に、目標位置及び目標姿勢を算出する。したがって、算出部21は、新たな本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2が入力されると、それらに基づいて算出した新たな目標位置及び目標姿勢を示す情報D3をロータ制御部22に出力し、これを繰り返す。「新たな目標位置及び目標姿勢」とは、リアルタイムで入力された最新の本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2に基づいて算出された目標位置及び目標姿勢を意味する。「新たな目標位置」は、例えば、その前に算出された目標位置よりも低い位置としてよい。すなわち、「新たな目標位置」は、その前に算出された目標位置に対してZ方向における着陸面LP側にずれた位置としてよい。「新たな目標姿勢」は、現在の着陸面LPの傾斜に応じた本体2の姿勢としてよい。すなわち、「新たな目標姿勢」は、仮想平面VPが現在の着陸面LPの傾斜に沿うときの本体2の姿勢としてよい。
【0041】
ロータ制御部22は、目標位置及び目標姿勢を示す情報D3が入力されると、その目標位置及び目標姿勢を実現するための目標推力及び目標トルクを算出し、算出した目標推力及び目標トルクを生じさせるよう各ロータ10,11の回転速度を算出する。すなわち、ロータ制御部22は、本体2の位置及び姿勢が目標位置及び目標姿勢となるように、各ロータ10,11の回転速度を算出する。ロータ制御部22は、この回転速度を示す情報D4を各モータアンプ33に出力する(
図2参照)。
【0042】
ロータ制御部22には、算出部21から目標位置及び目標姿勢を示す情報D3が周期的に入力されるので、ロータ制御部22は、この情報が入力される度に回転速度を示す情報D4を各モータアンプ33に出力する。したがって、ロータ制御部22は、算出部21から新たな目標位置及び目標姿勢を示す情報D3が入力されると、情報D3に基づいて新たな回転速度を示す情報D4を各モータアンプ33に出力し、これを繰り返す。各モータアンプ33は、回転速度を示す情報D4を受けて各モータ34に電流を供給し、各モータ34は、情報D4に応じた回転数及び回転方向で各ロータ10,11を回転させる。
【0043】
以上の動作をまとめると、本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2が制御装置20に入力されると、算出部21によって目標位置及び目標姿勢が算出され、ロータ制御部22によって、本体2の位置及び姿勢が目標位置及び目標姿勢となるように、各ロータ10,11の回転速度が制御される。その後、新たな本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2が制御装置20に入力されると、算出部21によって新たな目標位置及び目標姿勢が算出され、ロータ制御部22によって、本体2の位置及び姿勢が新たな目標位置及び目標姿勢となるように、各ロータ10,11の回転速度が再度制御される。これらの動作を繰り返しながら、飛行体1は着陸面LPに着陸する。本体2の位置及び姿勢が目標位置及び目標姿勢となっているか否かの判定方法については、次の着陸制御方法の説明にて説明する。
【0044】
以上の構成を備える飛行体1の着陸制御方法について説明する。
図4は、飛行体1の着陸制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)、及び
図6(b)は、飛行体1の着陸制御方法を説明するための概略図である。
【0045】
まず、制御装置20は、本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2が入力されると、本体2の現在の位置が目標位置となるように、各ロータ10,11の回転を制御する(
図5(a)参照)。目標位置は、例えば、着陸面LPの上空としてよい。その後、
図4に示すように、制御装置20は、現在の位置が目標位置に一致したか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、制御装置20は、現在の位置と目標位置との差が許容範囲内であるか否かを判定する。
【0046】
制御装置20は、現在の位置と目標位置との差が許容範囲内であると判定した場合には(ステップS1においてYes)、現在の位置が目標位置に一致したと判定する。一方、制御装置20は、現在の位置と目標位置との差が許容範囲内でないと判定した場合には(ステップS1においてNo)、現在の位置が目標位置に一致していないと判定する。この場合、制御装置20は、現在の位置と目標位置との差に基づくフィードバック制御を実行し、本体2の現在の位置が目標位置に一致するように各ロータ10,11を再度回転制御する。そして、再度ステップS1が実行される。
【0047】
制御装置20は、現在の位置が目標位置に一致したと判定した場合(ステップS1においてYes)、着陸面LPに向けて降下を開始する(ステップS2:着陸動作)。この着陸動作は、後述するステップS6の着陸判定において、着陸が確認されるまで継続する。着陸動作(ステップS2)を開始したのちに、本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2を取得する(ステップS3)。これらの情報を利用して、現在の姿勢が目標姿勢となるように、各ロータ10,11の回転を制御する(
図5(b)参照)。まず、制御装置20は、現在の姿勢が目標姿勢に一致したか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、制御装置20は、現在の姿勢と目標姿勢との差が許容範囲内であるか否かを判定する。すなわち、制御装置20は、着陸面LPに対する仮想平面VPの最大の相対傾斜角度が許容範囲内であるか否かを判定する。
【0048】
制御装置20は、現在の姿勢と目標姿勢との差が許容範囲内であると判定した場合には(ステップS4においてYes)、現在の姿勢が目標姿勢に一致したと判定する。一方、制御装置20は、現在の姿勢と目標姿勢との差が許容範囲内でないと判定した場合には(ステップS4においてNo)、本体2の姿勢が目標姿勢に一致していないと判定する。この場合、制御装置20は、現在の姿勢と目標姿勢との差に基づくフィードバック制御を実行して、現在の姿勢が目標姿勢に一致するように各ロータ10,11の回転を再度制御する(ステップS5)。そして、再度ステップS3が実行される。
【0049】
制御装置20は、現在の姿勢が目標姿勢に一致したと判定した場合(ステップS4においてYes)、着陸面LPに着陸したか否かを判定する(ステップS6)。着陸が確認された場合(ステップS6においてYes)には、一連の制御を終了する。着陸が確認されない場合(ステップS6においてNo)には、再びステップS3に戻る。
【0050】
なお、本体2の位置及び姿勢が目標位置及び目標姿勢となるように調整される際、
図4に示すように位置が調整された後に姿勢が調整されてもよいし、逆に、姿勢が調整された後に位置が調整されてもよい。或いは、位置及び姿勢が同時に調整されてもよい。また、ステップS4の結果がNoであった場合に、姿勢を変更する動作(ステップS5)の前後において、ステップS6のように、着陸を検知する動作を行ってもよい。
【0051】
以上に説明した、本実施形態に係る飛行体1によって得られる作用・効果を、比較例が有する課題と共に説明する。
図11は、比較例に係る飛行体100の課題を説明するための概略図である。比較例に係る飛行体100は、本実施形態に係る飛行体1とは異なり、推力発生部5のロータ10及び検出部30を有していない。したがって、飛行体100は、水平方向への推力を発生するロータ10を有しておらず、鉛直方向への推力を発生するロータ11のみを有している。このため、飛行体100の運動の自由度は4自由度(すなわち、鉛直方向の加速度と、ロール、ピッチ及びヨー方向の角加速度)と少なく、位置と姿勢とを独立に制御することが困難である。
【0052】
したがって、飛行体100では、位置を調整する際に姿勢が変動し、逆に、姿勢を調整する際に位置が変動するといった事態が生じやすい。このため、
図11(a)に示すように、飛行体100を傾斜面等の着陸面LPに着陸させる際に、着陸面LPに沿うように飛行体100の姿勢を傾けると、その姿勢の変化に伴って意図しない水平移動が生じる虞がある。更に、このような意図しない移動によって飛行体100が着陸面LPと衝突すると、
図11(b)に示すように、着陸面LPから受ける反力によって、飛行体100がひっくり返る現象(ロールオーバー)が生じる虞がある。したがって、傾斜面等の着陸面LPへの飛行体100の着陸の安定性に改善の余地がある。
【0053】
このような着陸面LPへの着陸を安定させるために、着陸する着陸面LPに接地する着陸脚を変形させることが考えられる(例えば特許文献1又は特許文献2)。しかし、着陸脚は、飛行体の機体本体の重量の支持に耐え得る強度を有する必要があり、このような強度を有する着陸脚を変形可能な構成とするためには、着陸脚の重量が或る程度増大する可能性がある。その結果、飛行体の重量が増大し、飛行体が積載可能な物品の重量の減少、及び飛行体の飛行時間の減少といった種々の問題が生じ得る。
【0054】
また、特許文献1のように着陸脚を弾性変形させた場合、飛行体が着陸面から受ける衝撃の大きさは、着陸時の飛行体の降下速度、及び着陸面の硬度等の影響によって左右されるので、着陸脚が着陸面から受ける反力を十分に吸収できないことが想定される。よって、着陸脚が着陸面からの反力を十分に吸収できない場合には、上述したロールオーバー等の問題が生じる可能性があるため、飛行体の着陸が不安定となり得る。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る飛行体1では、空中における本体2の位置及び姿勢は、推力発生部5が発生する推力を調整することによって調整される。推力発生部5は、XY方向への推力を発生するロータ11のみならず、Z方向への推力を発生するロータ10を有している。このため、これらの推力を調整することによって本体2の位置及び姿勢をそれぞれ独立して調整することができる。これにより、本体2の位置を維持した状態で本体2の姿勢を調整することができ、逆に、本体2の姿勢を維持した状態で本体2の位置を調整することもできる。よって、着陸地点の着陸面LPへの着陸の際に、本体2の位置及び姿勢を目標位置及び目標姿勢にそれぞれ維持できる。その結果、着陸の際に着陸面LPに応じた目標姿勢となるように本体2の姿勢を調整した(例えば水平姿勢から傾けた)場合であっても、本体2の位置が意図せずに変動するような事態を抑制できる。すなわち、上述した構成によれば、飛行体1を安定して着陸面LPに着陸させることができる。更に、飛行体1を安定して着陸面LPに着陸させるために、着陸脚15を変形させる必要がないので、飛行体1の重量の増大を抑制できる。
【0056】
本実施形態に係る飛行体1では、着陸脚15は、着陸時に着陸面LPに接地する接地部16aを含み、算出部21は、接地部16aによって規定される仮想平面VPが着陸面LPに沿うように、目標姿勢を算出している。この構成によれば、仮想平面VPと着陸面LPとの相対傾斜角度を小さくすることができるので、飛行体1をより安定して着陸面LPに着陸させることができる。
【0057】
本実施形態に係る飛行体1では、制御装置20は、着陸地点へ近づくように推力発生部5を制御する着陸動作と、本体2の姿勢が目標姿勢となるように推力発生部5を制御する姿勢制御動作とを、行い、姿勢制御動作は、本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2を取得する第1動作と、本体姿勢情報D1及び着陸地点情報D2を利用して、本体2の姿勢が目標姿勢となるように推力発生部5を制御する第2動作と、を含み、制御装置20は、着陸動作の実行中に、第1動作及び第2動作を繰り返し実行している。本実施形態のように、着陸地点が船上である場合、着陸面LPの位置及び傾斜が時間的に変動することが想定される。上述した動作によれば、着陸動作によって着陸地点に近づきながら、時間的に変動する着陸面LPの位置及び傾斜と本体2の位置及び姿勢との関係を姿勢制御動作によってリアルタイムに調整することが可能となる。その結果、本体2の位置及び姿勢を着陸面LPの位置及び傾斜に追従させることができる。つまり、このように着陸面LPの状態が時間的に変動する場合であっても、飛行体1を安定して着陸面LPに着陸させることができる。
【0058】
本実施形態に係る飛行体1は、本体2に設けられており、着陸地点情報D2を検出する検出部30を備え、第2情報取得部32は、検出部30から着陸地点情報D2を取得している。検出部30は、上述したように、本体2の現在の位置に対する着陸面LPの位置の相対位置、及び本体2の現在の姿勢に対する着陸面LPの相対傾斜角度をそれぞれ算出することによって、本体2の現在の位置及び姿勢に基づいて着陸地点情報D2を間接的に検出できる。このように着陸地点情報D2を検出する検出部30を飛行体1が備えることによって、予め着陸地点情報D2が検出されている特定の着陸面に限らず、任意の着陸面LPの着陸地点情報D2が得られる。その結果、任意の着陸面LPに飛行体1を安定して着陸させることができるので、利便性を高めることができる。
【0059】
本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、
図7、
図8、
図9、及び
図10に示す各種の変形態様を採ってもよい。
【0060】
図7は、第1変形例に係る飛行体1Aを示す概略図である。本変形例では、本体2は検出部30を有しておらず、外部検出部30Aが着陸面LP上に設けられている。外部検出部30Aは、着陸面LPの位置及び傾斜を示す着陸地点情報D2を検出し、検出した着陸地点情報D2を本体2の第2情報取得部32に提供する。第2情報取得部32は、例えば外部検出部30Aと無線通信可能に構成されており、外部検出部30Aから着陸地点情報D2を受信(取得)する。第2情報取得部32は、受信した着陸地点情報D2を制御装置20に出力する。本変形例によれば、上記実施形態のように着陸地点情報D2が間接的に検出される場合と比べて、より正確な着陸地点情報D2が得られる。より正確な着陸地点情報D2に基づいて位置及び姿勢を調整することで、飛行体1Aをより安定して着陸面LPに着陸させることができる。
【0061】
図8は、第2変形例に係る飛行体1Bの概略構成を示す斜視図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、推力発生部のロータの構成である。すなわち、本変形例に係る推力発生部5Aは、複数のロータ10に代えて1個のロータ13を有している。また、本変形例に係る本体2Aは、上記実施形態の開口2aを有していない。ロータ13は、本体2Aの上面(すなわち、Z方向における着陸面LPとは反対側の面)に設けられている。ロータ13の回転軸線は、水平方向であるX方向に沿っている。このようにX方向に沿った回転軸線を有するロータ13を回転させることによって、ロータ13は、X方向への推力を発生する。
【0062】
ここで、本変形例では、上記実施形態とは異なり、推力発生部5Aは、水平方向の一方向のみへの推力を発生するロータ13を有している。このため、ロータ制御部22は、当該一方向及び当該一方向と直交する水平方向の両方向において本体2Aの姿勢を同時に調整することはできない。そこで、本変形例では、ロータ制御部22は、本体2Aの姿勢を各方向について別々に調整する。例えば、ロータ制御部22は、ロータ13の回転軸線をX方向に沿わせた状態で、X方向において本体2Aの姿勢を調整した後、本体2AをZ軸周りに回転させてロータ13の回転軸線をY方向に沿わせた状態で、Y方向において本体2Aの姿勢を調整する。
【0063】
このように、推力発生部5Aが水平方向の一方向のみへの推力を発生するロータ13を有する場合であっても、本体2Aの位置及び姿勢をそれぞれ独立して調整できるので、上記実施形態と同様の効果を奏する。なお、ロータ13の回転軸線は、X方向からZ方向側に傾斜した方向に沿っていてもよい。このような場合であっても、ロータ13が発生する推力のX方向成分によって、X方向への推力が得られる。また、
図8に示す例では、ロータ13は、本体2Aの上面に設けられているが、本体2Aの他の面に設けられていてもよく、本体2A以外の部分(例えばフレーム3等)に設けられていてもよい。
【0064】
図9は、第3変形例に係る飛行体1Cの概略構成を示す斜視図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、推力発生部の構成である。本変形例では、推力発生部5Bは、ロータ10を有しておらず、鉛直線Nに関してそれぞれ対称な位置に配置された、一対のロータ11A、一対のロータ11B、及び一対のロータ11Cをロータ11に代えて有している。また、本変形例では、飛行体1Cは、
図8に示す本体2Aを備える。上記実施形態では、ロータ11の回転軸線はZ方向に沿っていたが、本変形例では、各ロータ11A,11B,11Cの回転軸線Aは、Z方向に対して鋭角に傾斜している。一方のロータ11A(
図9において左側)の回転軸線Aは、本体2Aとは反対側に傾斜角θだけ傾斜している。他方のロータ11A(
図9において右側)の回転軸線Aは、本体2A側に傾斜角θだけ傾斜している。傾斜角θは、例えば0°より大きく且つ90°よりも小さい範囲内である。各ロータ11Aの回転軸線Aは互いに平行であり、各ロータ11Aの回転面は、互いに平行な2平面上に配置されている。
【0065】
一方のロータ11Bの回転軸線Aは、本体2A側に傾斜角θだけ傾斜しており、他方のロータ11Bの回転軸線Aは、本体2Aとは反対側に傾斜角θだけ傾斜している。各ロータ11Bの回転軸線Aは互いに平行であり、各ロータ11Bの回転面は、互いに平行な2平面上に配置されている。同様に、一方のロータ11Cの回転軸線Aは、本体2A側に傾斜角θだけ傾斜しており、他方のロータ11Cの回転軸線Aは、本体2Aとは反対側に傾斜角θだけ傾斜している。各ロータ11Cの回転軸線Aは互いに平行であり、各ロータ11Cの回転面は、互いに平行な2平面上に配置されている。
【0066】
鉛直線Nを中間に配置して対向する一対のロータにおいて、傾斜角θは等しくなっているが、傾斜する方向は、鉛直線Nに関して反対になっている。一対のロータにおいて傾斜する方向が異なっていることにより、各ロータの回転面は、同一平面上には配置されていない。このように、各ロータの回転軸線が鉛直線に対して鋭角に傾斜し、各ロータの回転面が同一平面上に配置されないことによって、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸に関して並進運動及び回転運動が独立に制御可能となり、飛行体1Cは、6自由度で飛行可能となる。よって、本変形例によれば、上記実施形態と同様、着陸時に本体2Aの位置及び姿勢が意図せずに変動するような事態を抑制できるので、飛行体1Cを着陸面LPに安定して着陸させることができる。
【0067】
図10は、第4変形例に係る飛行体1Dの概略構成を示す斜視図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、推力発生部の構成である。本変形例では、推力発生部5Cは、ロータ10を有しておらず、第1の一対のロータ11D、第2の一対のロータ11E、及び第3の一対のロータ11Fをロータ11に代えて有している。また、本変形例では、飛行体1Dは、
図8に示す本体2Aを備える。各ロータ11Dは、回転軸線A1(第1軸線)を共有しており、回転軸線A1は、X方向に沿って延びている。各ロータ11Dの回転中心11aは、回転軸線A1上に配置されている。回転軸線A1を構成する2本のフレーム3Aは、本体2Aに対して位置が定まるように固定されている。各ロータ11Dの回転面は、回転軸線A1に直交している。各ロータ11は、互いに逆のピッチを有している。
【0068】
第2の一対のロータ11Eは、回転軸線A2(第2軸線)を共有しており、回転軸線A2は、Y方向に沿って延びている。各ロータ11Eの回転中心11aは、回転軸線A2上に配置されている。回転軸線A2を構成する2本のフレーム3Aは、本体2Aに対して位置が定まるように固定されている。各ロータ11Eの回転面は、回転軸線A2に直交している。各ロータ11Eは、互いに逆のピッチを有している。第3の一対のロータ11Fは、回転軸線A3(第3軸線)を共有しており、回転軸線A3は、Z方向に沿って延びている。各ロータ11Fの回転中心11aは、回転軸線A3上に配置されている。回転軸線A3を構成する2本のフレーム3Aは、本体2Aに対して位置が定まるように固定されている。各ロータ11Fの回転面は、回転軸線A3に直交している。各ロータ11Fは、互いに逆のピッチを有している。
【0069】
このように、回転軸線A1,A2,A3は、同一平面上には存在しておらず、互いに非平行である。また、回転軸線A1,A2,A3は、本体2Aの中心点で交差している。本変形例では、各ロータ11D,11E,11Fは、同一平面上に存在しない3本の回転軸線A1,A2,A3上で放射状に配置される。一対のロータは、互いに逆のピッチを有しており、それぞれ任意の回転数で回転軸線を中心に回転する。このため、回転軸線A1,A2,A3のそれぞれに関して、並進運動及び回転運動が独立に制御可能となり、飛行体1Dは、6自由度で飛行可能となる。よって、本変形例によれば、上記実施形態と同様、着陸時に本体2Aの位置及び姿勢が意図せずに変動するような事態を抑制できるので、飛行体1Dを着陸面LPに安定して着陸させることができる。
【0070】
本開示は、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び各変形例を必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、本体、フレーム、推力発生部、及び着陸脚の構成は、適宜変更され得る。例えば、本体は、例えばカメラ又はロボットアーム等の作業機器を更に有してもよい。本体に搭載される機器は、飛行体1に求められる作業等に応じて、適宜変更され得る。また、推力発生部のロータの数、配置、及び形状は、上述した実施形態及び各変形例に限られない。また、推力発生部は、本体の位置及び姿勢をそれぞれ調整するための推力を発生できれば、ロータ以外の構成を有していてもよい。
【0071】
また、制御装置の構成は、適宜変更され得る。例えば、第2情報取得部は、着陸地点情報を周期的に取得しなくてもよい。例えば着陸面が地表である場合のように、着陸面の位置及び傾斜が時間的に変動しない場合、第2情報取得部は、着陸地点情報を一度取得すればよい。この場合、算出部は、新たな目標位置及び目標姿勢を算出する必要がなく、ロータ制御部は、新たな目標位置及び目標姿勢となるように本体の位置及び姿勢を調整する必要がないので、飛行体の制御系を簡易化できる。
【符号の説明】
【0072】
1,1A~1D 飛行体
2,2A 本体
3,3A フレーム
5,5A~5C 推力発生部
10,11,11A~11C,13 ロータ
11D 第1の一対のロータ
11E 第2の一対のロータ
11F 第3の一対のロータ
11a 回転中心
15 着陸脚
16a 接地部
20 制御装置
21 算出部
22 ロータ制御部
25 第1情報取得部
30 検出部
30A 外部検出部
32 第2情報取得部
33 モータアンプ
34 モータ
A 回転軸線
A1 回転軸線(第1軸線)
A2 回転軸線(第2軸線)
A3 回転軸線(第3軸線)
D1 本体姿勢情報
D2 着陸地点情報
N 鉛直線
LP 着陸面
VP 仮想平面