(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B60C13/00 C
(21)【出願番号】P 2019027582
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】阪口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石崖 雄一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101754(JP,A)
【文献】特開2009-143488(JP,A)
【文献】特表2013-505872(JP,A)
【文献】特表2009-512584(JP,A)
【文献】特開2020-029209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
前記タイヤの視認可能な外表面の少なくとも一部に装飾部を有し、
前記装飾部は、複数の微小突起が配置されており、
少なくとも一つの前記微小突起は、凹部と、前記凹部の周囲を囲んで突起頂部を形成する外壁部とを含み、
前記外壁部は、突起高さ方向において突起高さが大きい山部分を少なくとも2箇所含む、タイヤ。
【請求項2】
前記外壁部は、前記山部分と、突起高さが小さい谷部分とが周方向に交互に配される、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外壁部の上端面は、前記山部分と谷部分とが滑らかな曲面で連なる湾曲面をなす、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記外壁部の上端面は、前記山部分と谷部分とが傾斜面で連なる屈曲面をなす、請求項2記載のタイヤ。
【請求項5】
前記装飾部は、1mm
2当り2~10個の密度で微小突起が配置される、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記微小突起は、突起高さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭は、円形状又は楕円形状である、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記微小突起は、突起高さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭は、下端部側よりも上端部側が小さい、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記微小突起の前記横断面輪郭は、上端部側に向かって漸減する部分を含む、請求項7記載のタイヤ。
【請求項9】
前記微小突起の前記横断面輪郭は、上端部側に向かって段階的に小さくなる部分を含む、請求項7記載のタイヤ。
【請求項10】
前記横断面輪郭が段階的に小さくなる部分において、一方の横断面輪郭と他方の横断面輪郭とは、少なくとも一部が接する、請求項9記載のタイヤ。
【請求項11】
前記凹部は、その深さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭が円形状又は楕円形状である、請求項1ないし10のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記凹部は、その深さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭は、下端部側よりも上端部側が大きい、請求項1ないし11のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項13】
前記凹部の前記横断面輪郭は、上端部側に向かって漸増する部分を含む、請求項12記載のタイヤ。
【請求項14】
前記凹部の前記横断面輪郭は、上端部側に向かって段階的に大きくなる部分を含む、請求項12記載のタイヤ。
【請求項15】
前記横断面輪郭が段階的に大きくなる部分において、一方の横断面輪郭と他方の横断面輪郭とは、少なくとも一部が接する、請求項14記載のタイヤ。
【請求項16】
前記装飾部の前記微小突起間は、十点平均粗さ(Rz)が、0.01~0.05mmの凹凸部を含んでいる、請求項1ないし15のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾部を設けたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、側壁に、多数の略円錐形の繊維状物を設けたタイヤが記載されている。この種のタイヤは、繊維状物が一種のテクスチャを形成し、側壁の黒色を高める。そのため、例えば、タイヤの記名等のマークとのコントラストを高め、マークの視認性が向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、コントラストをより高めて、視認性をさらに向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、視認性を向上させたタイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤであって、前記タイヤの視認可能な外表面の少なくとも一部に装飾部を有し、前記装飾部は、複数の微小突起が配置されており、少なくとも一つの前記微小突起は、凹部と、前記凹部の周囲を囲んで突起頂部を形成する外壁部とを含み、前記外壁部は、突起高さ方向において突起高さが大きい山部分を少なくとも2箇所含む。
【0007】
本発明に係るタイヤでは、前記外壁部は、前記山部分と、突起高さが小さい谷部分とが周方向に交互に配されるのが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤでは、前記外壁部の上端面は、前記山部分と谷部分とが滑らかな曲面で連なる湾曲面をなす、或いは前記山部分と谷部分とが傾斜面で連なる屈曲面をなすのが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤでは、前記装飾部は、1mm2当り2~10個の密度で微小突起が配置されるのが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤでは、前記微小突起は、突起高さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭は、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤでは、前記微小突起は、突起高さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭は、下端部側よりも上端部側が小さいのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤでは、前記微小突起の前記横断面輪郭は、上端部側に向かって漸減する部分を含む、或いは上端部側に向かって段階的に小さくなる部分を含むのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤでは、前記横断面輪郭が段階的に小さくなる部分において、一方の横断面輪郭と他方の横断面輪郭とは、少なくとも一部が接するのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤでは、前記凹部は、その深さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭が円形状又は楕円形状であるのが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤでは、前記凹部は、その深さ方向と直交する横断面輪郭を有し、前記横断面輪郭は、下端部側よりも上端部側が大きいのが望ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤでは、 前記凹部の前記横断面輪郭は、上端部側に向かって漸増する部分を含む、或いは上端部側に向かって段階的に大きくなる部分を含むのが望ましい。
【0017】
本発明に係るタイヤでは、前記横断面輪郭が段階的に大きくなる部分において、一方の横断面輪郭と他方の横断面輪郭とは、少なくとも一部が接するのが望ましい。
【0018】
本発明に係るタイヤでは、前記装飾部の前記微小突起間は、十点平均粗さ(Rz)が、0.01~0.05mmの凹凸部を含んでいるのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイヤの装飾部は、複数の微小突起が配置されており、少なくとも一つの前記微小突起は、凹部と、この凹部の周囲を囲んで突起頂部を形成する外壁部とを含む。
【0020】
そのため、微小突起の突起頂部に照射された光は、主に前記外壁部の上端面で反射され、前記凹部では光が吸収される。しかも外壁部の上端面が、山部分を少なくとも2箇所含む面で形成される。そのため、この上端面では光の拡散が起こる。
【0021】
そして、これらの相乗効果により、上端に凹部が無い例えば円錐台状の微小突起に比して、装飾部を一層暗く(黒く)見せることができる。その結果、装飾部に隣接した例えばマークなどの非装飾部とのコントラストが高められ、マークの視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のタイヤの一実施例を示す部分側面図である。
【
図3】(a)、(b)は微小突起の斜視図、及びの側面図である。
【
図5】(a)~(c)は、さらに他の実施形態の微小突起の側面図、及びそのA-A線の位置における微小突起の横断面輪郭を示す平面図である。
【
図6】(a)、(b)は、さらに他の実施形態の微小突起の側面図、及びそのB-B線の位置における凹部の横断面輪郭を示す平面図である。
【
図7】(a)、(b)は、さらに他の実施形態の微小突起の斜視図、及びの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1の斜視図である。本実施形態では、好ましい態様として、乗用車用の空気入りタイヤ1が示される。但し、本発明は、例えば、自動二輪者用や重荷重用の空気入りタイヤ1や他のカテゴリーのタイヤ1として採用されても良い。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、視認可能な外表面1aを具える。視認可能な外表面1aとは、タイヤ1がリム(図示省略)に組みこまれたときに、外部から目視できる面である。外表面1aには、例えば、トレッド部2の外表面2a、サイドウォール部3の外表面3a及びビード部4の外表面4aが含まれる。
【0025】
タイヤ1は、本実施形態では、外表面1aの一部に、装飾部10と装飾部10に隣接する非装飾部9とを有する。本実施形態では、非装飾部9及び装飾部10は、サイドウォール部3の外表面3aに設けられている。しかし、これに限定されるものではなく、非装飾部9及び装飾部10が、例えば、トレッド部2の外表面2a、又はビード部4の外表面4aに設けられても良い。
【0026】
非装飾部9は、本実施形態では、外表面3aから隆起した隆起部9Aとして形成される。隆起部9Aは、外表面3aから外方に延びる側面9bと、側面9bに連なって平滑な面で形成される頂面9cとで構成される。このような頂面9cは、照射される光を反射して、非装飾部9を明るく見せるのに役立つ。非装飾部9は、例えば、タイヤ1のメーカ名、商品名、サイズ等を表す文字、記号などであるマーク(例えば標章)として形成されている。
【0027】
図2は、
図1の装飾部10を拡大した斜視図である。
図2に示されるように、装飾部10には、本実施形態では、1mm
2当り2~10個の密度で複数の微小突起11が配置されている。
【0028】
微小突起11は、例えば、外表面3aから外方に突出している。少なくとも一つの微小突起11には、凹部14と、この凹部14の周囲を囲んで突起頂部11Eを形成する例えば管状の外壁部15とが設けられる。本実施形態では、全ての微小突起11に、凹部14と外壁部15とが設けられる場合が示される。
【0029】
このような微小突起11に光が照射されると、微小突起11の外側面11Sに照射された光は拡散し、装飾部10がしっとりとした色調で黒く見える。又突起頂部11Eに照射された光は、主に外壁部15の上端面15Sのみで反射され、凹部14では光が吸収される。そのため、突起頂部11Eも黒く見え、非装飾部9とのコントラストが高められ、視認性が向上する。この効果は、微小突起11が1mm2当り2~10個の密度で配置されることにより、より有効に発揮される。
【0030】
図3(a)は、微小突起11の斜視図である。
図3(a)に示されるように、微小突起11の外壁部15には、突起高さ方向において、突起高さが大きい山部分16を少なくとも2箇所含む。本実施形態では、外壁部15が管状をなし、山部分16と、突起高さが小さい谷部分17とが周方向に交互に配される場合が示される。
【0031】
特に本実施形態では、外壁部15の上端面15Sは、山部分16と谷部分17とが滑らかな曲面で波状に連なる湾曲面18をなす。しかし、
図4に示されるように、外壁部15の上端面15Sが、山部分16と谷部分17とが傾斜面で連なる屈曲面19をなしても良い。
【0032】
このように、外壁部15の上端面15Sは、山部分16を2箇所以上含む面で形成されるため、上端面15Sでも光の拡散が起こり、突起頂部11Eを一層黒く見せることができる。このように、本発明では、微小突起11の外側面11Sによる光の拡散と、凹部14による光の吸収と、外壁部15の上端面15Sによる光の拡散との相乗効果により、上端に凹部14が無い例えば円錐台状の微小突起に比して、装飾部10を一層暗く(黒く)見せることができる。その結果、非装飾部9とのコントラストが高められ、視認性を向上させることができる。
【0033】
山部分16の形成数は、3~6の範囲が、光の拡散の効果を高める上で好ましい。
【0034】
微小突起11は、突起高さ方向と直交する横断面輪郭11aを有する。横断面輪郭11aは、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。円形状の場合、いずれの方向から照射された光に対しても、同じように光を拡散しうる。そのため、方向性を有することなく、安定してコントラストを高めることができる。これに対して、楕円形状の場合、楕円の長軸側から照射される光の拡散と、短軸側から照射される光の拡散とに差を持たせることができる。そのため、コントラストに方向性を持たせることができ、外観に意外性を与えうる。
【0035】
微小突起11では、その横断面輪郭11aが下端側(突起の根元側)よりも上端側(突起頂部11Eの側)が小さいのが好ましい。このような微小突起11は、下端側に高い剛性を有する。そのため、変形し難く、欠けやクラックが抑制され、視認性が長期で確保される。本実施形態では、微小突起11の横断面輪郭11aが、下端側から上端側に向かって漸減している場合が示される。より具体的には、本実施形態の微小突起11は、その外側面11Sが、全長に亘って、下端側から上端側に向かってテーパ状に形成されている。しかし横断面輪郭11aは、このような態様に限定されるものではない。
【0036】
図3(b)に示されるように、微小突起11の最大幅L1は、0.30~1.00mmであるのが望ましい。微小突起11は、その下端において最大幅L1を有する。このような微小突起11は、照射された光による影の暗い部分を大きく確保できる。微小突起11の最大幅L1が0.30mm未満の場合、微小突起11の剛性が小さくなり、クラックや欠けが生じ易くなるおそれがある。微小突起11の最大幅L1が1.00mmを超える場合、微小突起11の外側面11Sに照射される光が増加し明るくなり、非装飾部9とのコントラストが小さくなる恐れがある。
【0037】
上述の作用を効果的に発揮させるために、微小突起11の最小幅L2は、0.25~0.95mmであるのが望ましい。微小突起11は、その上端において最小幅L2を有する。これにより、剛性を確保しながら暗くなる部分を作ることができる。
【0038】
微小突起11は、山部分16において最大高さH1maxを有し、谷部分17において最小高さH1minを有する。最大高さH1maxは、0.20~0.60mmが望ましい。最大高さH1maxが、0.20mm未満の場合、微小突起11が低すぎて、光の拡散の効果が減じ、充分なコントラストが得られなくなる。又最大高さH1maxが、0.60mmを越える場合、微小突起11に損傷を招く傾向となる。
【0039】
又最小高さH1minは、0.10~0.50mmが望ましく、特には、最大高さH1maxと最小高さH1minとの差ΔH=(H1max-H1min)が、0.10~0.40mmであるのが好ましい。差ΔHが0.10mm未満の場合、外壁部15の上端面15Sにおける光の拡散の効果を有効に得るのが難しい。逆に0.40mmを越えると、山部分16で損傷を招く傾向となる。
【0040】
又外壁部15の上端における厚さW2は0.20mm以下であるのが望ましい。厚さW2が0.20mmを超える場合、凹部14が小さくなり、微小突起11を黒く見せる効果が小さくなる傾向がある。なお、厚さW2の下限は0.05mm以上であるのが好ましい。これを下回ると、微小突起11の剛性が小さくなり、微小突起11に損傷を招く傾向となる。
【0041】
図3(a)に示されるように、凹部14は、その深さ方向と直交する横断面輪郭14aを有する。この横断面輪郭14aは、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。このような凹部14は、微小突起11の剛性を高く維持するとともに、多方向からの光を吸収でき、微小突起11を黒く見せるのに役立つ。本実施形態では、凹部14の横断面輪郭14aが円形状の場合が示される。なお楕円形状の場合、コントラストに方向性を持たせることができ、外観に意外性を与えうる。
【0042】
凹部14の横断面輪郭14aは、下端部側よりも上端部側が大きいのが好ましい。このような微小突起11は、下端側に高い剛性を有するため、変形し難く、欠けやクラックが抑制される。本実施形態では、横断面輪郭14aが、下端側から上端側に向かって漸増している場合が示される。より具体的には、本実施形態の微小突起11は、凹部14の内側面14Sが、全長に亘って、下端側から上端側に向かって逆テーパ状に形成されている。しかし横断面輪郭14aは、このような態様に限定されるものではない。
【0043】
図3(a)に示されるように、凹部14の山部分16からの深さHcは、微小突起11の前記最大高さH1maxの15%~100%の範囲が好ましい。15%を下回ると、凹部14の底面で光が反射する傾向となり、微小突起11を黒く見せる効果が減じる。又100%を越えると、微小突起11の剛性が減じ、微小突起11に損傷を招く傾向となる。そのため、深さHcは、最大高さH1maxの90%以下が好ましい。なお深さHcは、0.15~0.60mmの範囲であるのも好ましい。
【0044】
凹部14の最大幅L3は、0.10~0.90mmであるのが望ましい。凹部14は、その上端において最大幅L3を有する。最大幅L3が0.10mm未満の場合、凹部14による光の吸収効果が小さくなる傾向を招く。最大幅L3が0.90mmを超える場合、微小突起11の剛性が減じ、微小突起11に損傷を招く傾向となる。
【0045】
特に限定されないが、凹部14の最小幅L4は、最大幅L3以下であり、好ましくは、最大幅L3の70%以下が望ましい。凹部14は、その下端において最小幅L4を有する。
【0046】
図2に示されるように、装飾部10の微小突起11間は、十点平均粗さ(Rz)が、0.01~0.05mmの凹凸部25を含んでいるのが望ましい。このような凹凸部25は、装飾部10に影をもたらし、さらに暗く見せるのに役立つ。また、このような凹凸部25は、装飾部10の剛性を高め、微小突起11の欠けを抑制する。十点平均粗さ(Rz)は、JISB0601(1994)に準拠して測定される。
【0047】
微小突起11の配設ピッチは、0.6~1.0mmであるのが望ましい。配設ピッチは、微小突起11の中心間距離で定義される。本実施形態では、微小突起11が千鳥状に配列する場合が示されるが、格子状に配列しても良い。又の配設ピッチが前記範囲を満たすならばランダムに配列することもできる。
【0048】
微小突起11は、装飾部10の面積の50%以上に設けられているのが望ましく、装飾部10の面積の75%以上に設けられているのがさらに望ましく、装飾部10の面積の100%以上に設けられているのが一層望ましい。
【0049】
このような装飾部10は、微小突起11を均一な大きさで密に配設した場合、より暗く見えるので、コントラストが明瞭になる。他方、微小突起11の大きさや配置をランダムとすると、上記密に配設した場合に比して、クラックや欠け等の損傷箇所が目立たなくなるという利点がある。
【0050】
装飾部10は、例えば、外表面3aを形成するタイヤ1のゴム部材と同じゴムで形成されている。このような装飾部10の成形方法としては、例えば、タイヤ成形用の加硫金型の内面に微小突起11の反転模様を設けて、タイヤ1の加硫成形とともに形成しても良い。また、このような装飾部10の成形方法としては、例えば、周知の機械加工又はレーザ加工によって、加硫成形後のタイヤ1に装飾部10を設けても良い。前記機械加工又はレーザ加工には、例えば、周知のコンピュータプログラムを用いるのが望ましい。
【0051】
図4は、微小突起11の他の実施形態の斜視図である。この実施形態の微小突起11と、本実施形態の微小突起11とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
図4に示されるように、微小突起11では、凹部14を囲む外壁部15の上端面15Sは、山部分16と谷部分17とが平らな傾斜面で連なる屈曲面19として形成される。この場合にも、上端面15Sが前記湾曲面18(
図3に示す)の場合と同様の効果を奏することができる。
【0052】
図5(a)~(c)に、それぞれ、微小突起11のさらに他の実施形態における側面図、及びそのA-A線の位置における微小突起11の横断面輪郭11aが示される。この実施形態の微小突起11と、本実施形態の微小突起11とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
【0053】
図5(a)の微小突起11は、例えば、横断面輪郭11aが下端側から上端側まで同じ大きさで形成される。即ち、微小突起11が円柱状をなす。このような微小突起11は、剛性には不利を招くものの、テーパ状の微小突起11(
図3に示す)と同様に、微小突起11を黒く見せる効果を発揮し、非装飾部9とのコントラストを強調することができる。また、この実施形態では、凹部14の横断面輪郭14aが下端側から上端側まで同じ大きさで形成される。このような凹部14は、剛性には不利を招くものの、逆テーパ状の凹部14(
図3に示す)と同様に、光の吸収効果を発揮し、非装飾部9とのコントラストを強調することができる。
【0054】
図5(b)の微小突起11は、その横断面輪郭11aが、下端側から上端側に向かって段階的に小さくなる部分P1、即ち、段差部分P1を含む。この実施形態では、段差が一段の場合が示されるが、複数段であっても良い。このような微小突起11は、テーパ状の微小突起11(
図3に示す)と同様に、剛性を高く確保しながら、微小突起11を黒く見せる効果を発揮し、非装飾部9とのコントラストを強調することができる。この実施形態の微小突起11では、段差部分P1の上方側の部分Y1及び下方側の部分Y2が、それぞれ円柱状で形成されている。しかし各部分Y1、Y2を、
図3に示すようにテーパ状に構成することもできる。
【0055】
図5(c)の微小突起11では、横断面輪郭11aが段階的に小さくなる部分(段差部分)P1において、一方の横断面輪郭11aと他方の横断面輪郭11aとは、位置Jにおいて一部Kが接している。このような、微小突起11は、コントラストに方向性を持たせることができ、外観に意外性を与えうる。
【0056】
図6(a)、(b)に、それぞれ、微小突起11のさらに他の実施形態における側面図、及びそのB-B線の位置における凹部14の横断面輪郭14aが示される。この実施形態の微小突起11と、本実施形態の微小突起11とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
【0057】
図6(a)において、凹部14は、その横断面輪郭14aが、下端側から上端側に向かって段階的に大きくなる部分P2、即ち、段差部分P2を含む。この実施形態では、段差が一段の場合が示されるが、複数段であっても良い。このような凹部14は、逆テーパ状の凹部14(
図3に示す)と同様に、剛性を高く確保しながら、光の吸収効果を発揮し、非装飾部9とのコントラストを強調することができる。
【0058】
図6(b)の微小突起11では、横断面輪郭14aが段階的に小さくなる部分(段差部分)P2において、一方の横断面輪郭14aと他方の横断面輪郭14aとは、位置Jにおいて一部Kが接している。
【0059】
図7(a)、(b)に、微小突起11のさらに他の実施形態における斜視図及び平面図が示される。この実施形態の微小突起11と、本実施形態の微小突起11とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
【0060】
図7(a)、(b)において、微小突起11は、外壁部15が2つの山部分16と1つの谷部分17とを具える。具体的には、凹部14の周囲を囲む外壁部15が、管状ではなく、スリット20により周方向に途切れるC字状に形成される。そして外壁部15の上端面15Sでは、2つの山部分16と1つの谷部分17とが段差状に形成される。この実施形態では、山部分16が平面をなす。
【0061】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0062】
本発明の効果を確認するため、サイドウォール部の外表面に、
図1及び
図2に示すような非装飾部及び装飾部を具える空気入りタイヤが試作された。そして、各試作タイヤの視認性についてテストされた。表1に記載された以外の仕様は、比較例及び実施例ともに実質的に同じである。
微小突起の配設ピッチ:0.63mm
【0063】
<視認性>
検査員が、試作タイヤを1m離れた側方から目視し、装飾部のコントラストに基づく視認性を官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点で示されている。数値が大きいほうが、コントラストが明瞭であり、視認性が優れている。
テストの結果が表1に示される。
【0064】
【0065】
実施例のタイヤは、比較例1のタイヤに比して、視認性が優れていることが理解される。また、微小突起及び凹部の各寸法を好ましい範囲で変化させてテストを行ったが、同様の結果であった。
【符号の説明】
【0066】
1 タイヤ
1a 外表面
10 装飾部
11 微小突起
11a 横断面輪郭
11E 突起頂部
14 凹部
14a 横断面輪郭
15 外壁部
15S 上端面
16 山部分
17 谷部分
18 湾曲面
18a 曲面
19 屈曲面
19a 傾斜面
25 凹凸部