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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G08G1/09 V
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019027736
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020135386
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英男
(72)【発明者】
【氏名】柏井 忠大
(72)【発明者】
【氏名】金子 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】上野山 直貴
(72)【発明者】
【氏名】志賀 孝広
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6387545(JP,B1)
【文献】特開2001-187180(JP,A)
【文献】特表2015-518599(JP,A)
【文献】特開平07-307932(JP,A)
【文献】特開2006-222681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
興行チケットを所持するユーザを、興行が行われる場所である興行拠点へ送迎する移動体を制御する情報処理装置であって、
前記ユーザが所持する興行チケットを電子的に読み取ることと、
前記興行チケットに関連付いた前記興行拠点、および、前記興行拠点に関連付いたサーバ装置を識別することと、
前記ユーザを前記識別した前記興行拠点へ送迎するために前記移動体を移動させる指令を生成することと、
前記識別した興行拠点に関連付いた前記サーバ装置から送信された映像データを受信することと、
前記映像データを復号して得られた映像を、前記移動体に乗車中である前記ユーザに提供することと、
を実行する制御部を有し、
前記制御部は、前記ユーザが前記興行拠点からの帰路にある場合に、前記ユーザが所持する端末から、前記ユーザが前記興行拠点を離れたタイミングに関する情報を取得し、前記ユーザが前記興行拠点を離れてから前記移動体に乗車するまでの時間だけ前記映像を遅延させて前記ユーザに提供する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記映像データは、前記興行拠点内の異なるエリアに設置されたカメラによってそれぞれ撮像された複数チャネルの映像を含み、
前記制御部は、前記興行チケットによって指定された、前記興行拠点内におけるエリアを識別し、前記映像データから、前記識別したエリアに対応するチャネルの映像を抽出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記映像データを配信する複数の前記サーバ装置のアドレスを記憶する記憶手段をさらに有し、
前記制御部は、前記識別した興行拠点に対応する前記サーバ装置に接続する、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
興行チケットを所持するユーザを、興行が行われる場所である興行拠点へ送迎する移動体を制御する情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記ユーザが所持する興行チケットを電子的に読み取ることと、
前記興行チケットに関連付いた前記興行拠点、および、前記興行拠点に関連付いたサーバ装置を識別することと、
前記ユーザを前記識別した前記興行拠点へ送迎するために前記移動体を移動させる指令を生成することと、
前記識別した興行拠点に関連付いた前記サーバ装置から送信された映像データを受信することと、
前記映像データを復号して得られた映像を、前記移動体に乗車中である前記ユーザに提供することと、
を含み、
前記ユーザが前記興行拠点からの帰路にある場合に、前記ユーザが所持する端末から、前記ユーザが前記興行拠点を離れたタイミングに関する情報を取得し、前記ユーザが前記興行拠点を離れてから前記移動体に乗車するまでの時間だけ前記映像を遅延させて前記ユーザに提供する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動を提供するサービスに関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行を行う移動体を用いてサービスを提供する研究が行われている。例えば、特許文献1には、利用者の要望に応じて自動運転車の配車を行い、貨客の輸送を行う交通システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-092320号公報
【文献】特開2018-165091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自律走行する移動体によって、ユーザをイベント会場(例えば、スポーツや演劇といった興行が開かれる会場)まで送迎する形態が考えられる。しかし、イベントに訪問する全てのユーザが、イベントの開演時刻までに到着できるとは限らない。
【0005】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、シームレスな娯楽を提供できる移動体システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報処理装置は、
興行チケットを所持するユーザを、興行が行われる場所である興行拠点へ送迎する移動体を制御する情報処理装置であって、前記ユーザが所持する興行チケットを電子的に読み取ることと、前記興行チケットに関連付いた前記興行拠点を識別することと、前記ユーザを前記識別した前記興行拠点へ送迎するために前記移動体を移動させる指令を生成することと、前記識別した興行拠点から送信された映像データを受信することと、前記映像データを復号して得られた映像を、前記移動体に乗車中である前記ユーザに提供することと、を実行する制御部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る情報処理方法は、
興行チケットを所持するユーザを、興行が行われる場所である興行拠点へ送迎する移動体を制御する情報処理方法であって、前記ユーザが所持する興行チケットを電子的に読み取ることと、前記興行チケットに関連付いた前記興行拠点を識別することと、前記ユーザを前記識別した前記興行拠点へ送迎するために前記移動体を移動させる指令を生成することと、前記識別した興行拠点から送信された映像データを受信することと、前記映像データを復号して得られた映像を、前記移動体に乗車中である前記ユーザに提供することと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シームレスな娯楽を提供できる移動体システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る移動体システムの概要図である。
図2】実施形態に係る移動体システムの概要図である。
図3】システムが有する構成要素の一例を概略的に示したブロック図である。
図4】自律走行車両100の外観を示した図である。
図5】移動体システムが利用するデータを例示する図である。
図6】システムの構成要素間におけるデータの流れを示したフロー図である。
図7】第一の実施形態における処理のフローチャートである。
図8】第二の実施形態における処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、興行とは、スポーツ、演劇、芝居、コンサート、ライブ、映画といった、特定の会場で開催される催事を指す。また、これらの催事が開催される拠点を、興行拠点と称する。また、以降の説明では、公演や開演といった語を用いるが、これらをスポーツの試合等に置き換えることも可能である。この場合、公演は試合、開演は試合開始と言い換えることができる。
【0011】
実施形態に係る移動体システムは、移動体によって、スポーツ、演劇、映画といったイベント(興行)が開かれる会場(興行拠点)までユーザを輸送するためのシステムである。
具体的には、情報処理装置が、ユーザが所持する興行チケットを電子的に読み取り、当該興行チケットに関連付いた興行拠点を識別したうえで、識別した興行拠点への送迎を行うために移動体を移動させる指令を生成する。
しかし、興行拠点を訪れる全てのユーザが、開演時刻までに会場に到着できるとは限らない。
【0012】
これに対応するため、本実施形態では、移動体が、興行チケットによって識別された興行拠点から送信された映像データを受信し、乗車中のユーザにリアルタイムで提供する。
【0013】
映像データは、興行の内容を中継する映像信号を含んだデータである。例えば、対象がスポーツの試合である場合、フィールドや客席に設置されたカメラによって取得された映像を、移動体に乗車しているユーザに提供する。また、対象が演劇や映画、コンサート等である場合、会場や客席に設置されたカメラによって取得された映像を、移動体に乗車しているユーザに提供する。
かかる形態によると、興行拠点へ向けて移動中のユーザに対して、当該興行拠点において開催されている興行の内容をリアルタイムで視聴させることができるため、興行拠点と車両内とでシームレスな鑑賞体験を提供することができる。
【0014】
また、前記映像データは、前記興行拠点内の異なるエリアに設置されたカメラによってそれぞれ撮像された複数チャネルの映像を含み、前記制御部は、前記興行チケットによって指定された、前記興行拠点内におけるエリアを識別し、前記映像データから、前記識別したエリアに対応するチャネルの映像を抽出することを特徴とする。
【0015】
興行の種類によっては、チケットごとに座席やエリアが指定されている場合がある。指定されたエリアに設置されたカメラから送信された映像を選択することで、指定された席についた場合と同等の視点をユーザに提供することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記ユーザが前記興行拠点からの帰路にある場合に、前記ユーザが離席してから前記移動体に乗車するまでの時間を取得し、当該時間だけ前記映像を遅延させて前記ユーザに提供することを特徴としてもよい。
【0017】
かかる構成によると、興行の途中でユーザが退席した場合であっても、当該ユーザに対
して現地の映像をシームレスに提供することができる。すなわち、ユーザがより柔軟な行動予定を立てることが可能になる。
【0018】
また、前記映像データを配信する複数のサーバのアドレスを記憶する記憶手段をさらに有し、前記制御部は、前記識別した興行拠点に対応するサーバに接続することを特徴としてもよい。
【0019】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る移動体システムの概要について、図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る移動体システムは、自律走行車両によって、興行を鑑賞するユーザを興行拠点まで輸送するシステムである。
具体的には、自律走行を行う複数の自律走行車両100A…100nと、当該自律走行車両に対して指令を発行するサーバ装置200と、を含んで構成される。自律走行車両100は、所定のサービスを提供する自動運転車両であり、サーバ装置200は、複数の自律走行車両100を管理する装置である。
以下、複数の自律走行車両を個々に区別しないで総称する場合には、単に自律走行車両100という。
【0020】
本実施形態におけるユーザは、興行を鑑賞するための電子チケット(以下、興行チケット)を有しており、当該電子チケットを用いて自律走行車両100に乗車する。
自律走行車両100は、個体ごとに異なる機能を持つことができる多目的移動体であり、道路上を自動運転および無人運転可能な車両である。自律走行車両100は、例えば、所定のルートを走行する送迎車、利用者の要請に応じて運行されるオンデマンドタクシー、任意の移動先で営業を行うことができる移動店舗などとすることができるが、本実施形態では、複数のユーザを乗車させて移動することができる乗り合い車両であるものとする。自律走行車両100は、Electric Vehicle(EV)パレットとも呼ばれる。
なお、自律走行車両100は、必ずしも無人車両である必要はない。例えば、営業要員や保安要員などが乗車していてもよい。また、自律走行車両100は、必ずしも完全なる自律走行が可能な車両でなくてもよい。例えば、状況に応じて人が運転ないし運転の補助を行う車両であってもよい。
【0021】
サーバ装置200は、自律走行車両100に対して運行を指令する装置である。本実施形態では、興行拠点への移動を希望するユーザが、サーバ装置200に乗車リクエストを送信すると、サーバ装置200は、当該乗車リクエストに基づいて、当該ユーザをピックアップ可能な自律走行車両100を選択し、当該自律走行車両100に対して輸送指令を送信する。輸送指令は、自律走行車両100に対して、ユーザを乗車させ、当該ユーザを所定の興行拠点まで輸送させる指令である。輸送指令は、例えば、ユーザが乗車する地点に関する情報、乗車希望時刻に関する情報、ユーザの識別子、ユーザが所持する電子チケットに関する情報等を含んでもよい。
【0022】
本実施形態では、サーバ装置200は、自律走行車両100の走行位置や走行経路を管理し、リアルタイムで寄せられる乗車リクエストを処理する。サーバ装置200は、ユーザから乗車リクエストを受信すると、当該乗車リクエストに基づいて輸送指令を生成し、当該輸送指令を自律走行車両100に送信する。これにより、ユーザが指定した地点に自律走行車両100を向かわせ、当該ユーザを乗車させることができる。
【0023】
次に、ユーザが自律走行車両100に乗車して移動する形態について、図2を参照して説明する。
乗車リクエストを発行したユーザは、自律走行車両100に対して、所持している電子チケットを提示して当該自律走行車両100に乗車する。電子チケットは、例えば、光学
的に読み取ってもよいし、近距離無線通信によって送信してもよい。また、自律走行車両100は、輸送指令に含まれる情報と、電子チケットから読み取った情報が一致した場合に、ユーザを乗車させてもよい。ユーザを乗車させた自律走行車両100は、電子チケットから読み取った情報に基づいて、ユーザが向かうべき興行拠点を特定し、走行経路を生成して移動を開始する。
【0024】
興行拠点サーバ300は、興行の内容を映像によって自律走行車両100に配信する装置である。例えば、興行が演劇である場合、客席に設置されたカメラによって撮像された映像を配信する。また、興行がスポーツである場合、客席やフィールドに設置されたカメラによって撮像された映像を配信する。なお、配信する映像は、必ずしもカメラによって撮像されたものである必要はない。例えば、興行が映画である場合、上映対象である映像ソースを直接配信してもよい。
【0025】
自律走行車両100は、ユーザが向かうべき興行拠点に対応するサーバ装置(興行拠点サーバ300)を特定し、特定した興行拠点サーバ300から配信された映像を受信し、乗車中のユーザに提供する。これによりユーザは、興行拠点への到着が開演(試合開始)時刻を過ぎる場合であっても、興行を鑑賞することが可能になる。
【0026】
次に、各装置のモジュール構成について、図3を参照して説明する。
自律走行車両100は、サーバ装置200から取得した輸送指令、および、電子チケットに含まれる情報(以下、チケット情報)に基づいて自律走行を行う車両である。具体的には、輸送指令およびチケット情報に基づいて走行経路を生成し、車両の周辺をセンシングしながら適切な方法で道路上を走行する。また、自律走行車両100は、興行拠点サーバ300から受信した映像を、乗車中のユーザに提供する機能を有する。
【0027】
自律走行車両100は、センサ101、位置情報取得部102、制御部103、駆動部104、通信部105、画像出力部106、入出力部107を含んで構成される。自律走行車両100は、不図示のバッテリから供給される電力で動作する。
【0028】
センサ101は、車両周辺のセンシングを行う手段であり、典型的にはレーザスキャナ、LIDAR、レーダなどを含んで構成される。センサ101が取得した情報は、制御部103に送信される。
また、センサ101は、自律走行車両100の車体に設けられたカメラを含んでもよい。例えば、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを
用いることができる。なお、カメラは、車体の複数の箇所に複数個設けられていてもよい。例えば、前方、後方、左右側方にそれぞれカメラが設置されていてもよい。
【0029】
位置情報取得部102は、車両の現在位置を取得する手段であり、典型的にはGPS受信器などを含んで構成される。位置情報取得部102が取得した情報は、制御部103に送信される。
【0030】
制御部103は、センサ101から取得した情報に基づいて、自律走行車両100の制御を行うコンピュータである。制御部103は、例えば、マイクロコンピュータによって構成される。
【0031】
制御部103は、機能モジュールとして、運行計画生成部1031、環境検出部1032、走行制御部1033、映像提供部1034を有している。各機能モジュールは、ROM(Read Only Memory)等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)(いずれも不図示)によって実行することで実現してもよい。
【0032】
運行計画生成部1031は、サーバ装置200から取得した輸送指令、または、読み取ったチケット情報に基づいて自車両の運行計画を生成する。本実施形態において、運行計画とは、車両の運行を計画するデータであり、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0033】
(1)自車両の走行経路を表すデータ
自車両が走行する経路は、例えば、不図示の記憶手段に記憶された地図データを参照し、与えられた出発地と目的地に基づいて自動的に生成してもよい。出発地と目的地は、例えば、取得した輸送指令やチケット情報に基づいて生成することができる。なお、走行経路は、外部のサービスを利用して生成してもよい。
【0034】
(2)経路上の地点において自車両が行うべき処理を表すデータ
自車両が行うべき処理には、例えば、「人を乗降させる」「乗車中のユーザに案内を行う」「データの収集を行う」といったものがあるが、これらに限られない。
運行計画生成部1031が生成した運行計画は、後述する走行制御部1033へ送信される。
【0035】
環境検出部1032は、センサ101が取得したデータに基づいて、車両周辺の環境を検出する。検出の対象は、例えば、車線の数や位置、自車両の周辺に存在する車両の数や位置、自車両の周辺に存在する障害物(例えば歩行者、自転車、構造物、建築物など)の数や位置、道路の構造、道路標識などであるが、これらに限られない。自律的な走行を行うために必要なものであれば、検出の対象はどのようなものであってもよい。
また、環境検出部1032は、検出した物体をトラッキングしてもよい。例えば、1ステップ前に検出した物体の座標と、現在の物体の座標との差分から、当該物体の相対速度を求めてもよい。
環境検出部1032が検出した、環境に関するデータ(以下、環境データ)は、後述する走行制御部1033へ送信される。
【0036】
走行制御部1033は、運行計画生成部1031が生成した運行計画と、環境検出部1032が生成した環境データ、ならびに、位置情報取得部102が取得した自車両の位置情報に基づいて、自車両の走行を制御する。例えば、所定の経路に沿って走行し、かつ、自車両を中心とする所定の安全領域内に障害物が進入しないように自車両を走行させる。車両を自律走行させる方法については、公知の方法を採用することができる。
【0037】
映像提供部1034は、読み取ったチケット情報に基づいて興行拠点を識別し、対応する興行拠点サーバ300から送信された映像データを受信および復号し、ユーザに提供する。映像提供部1034は、後述する画像出力部106を介して、興行拠点サーバ300から送信された映像をユーザに提供する。
【0038】
駆動部104は、走行制御部1033が生成した指令に基づいて、自律走行車両100を走行させる手段である。駆動部104は、例えば、車輪を駆動するためのモータやインバータ、ブレーキ、ステアリング機構、二次電池等を含んで構成される。
通信部105は、自律走行車両100をネットワークに接続するための通信手段である。本実施形態では、3GやLTE等の移動体通信サービスを利用して、ネットワーク経由で他の装置(例えばサーバ装置200)と通信を行うことができる。
なお、通信部105は、他の自律走行車両100と車々間通信を行うための通信手段をさらに有していてもよい。
【0039】
画像出力部106は、乗車中のユーザに映像を提供する手段である。本実施形態では、自律走行車両100は、車室内に、図4に示したようなディスプレイ装置を有しており、
任意の画像を出力することができる。ディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ装置であってもよいし、ヘッドマウントディスプレイ装置等であってもよい。
【0040】
入出力部107は、ユーザに対してインタラクションを行う手段である。具体的には、ユーザが所持する電子チケットを読み取る手段と、当該ユーザに対して情報提供を行う手段から構成される。なお、電子チケットの読み取りは、無線通信を介して行ってもよいし、二次元バーコードなどを用いて光学的に行ってもよい。物理的に電子チケットを読み取る場合、読み取り手段を、例えば、車両の乗降口付近や座席付近に設置してもよい。
【0041】
次に、サーバ装置200について説明する。
サーバ装置200は、複数の自律走行車両100の走行位置および走行経路を管理し、自律走行車両100に対する輸送指令を生成する装置である。サーバ装置200は、例えば、ユーザから乗車リクエストを受信した場合に、乗車地点を特定したうえで、付近を走行中の(送迎車両としてとして機能可能な)自律走行車両100を選択し、当該車両に対して輸送指令を送信する。
【0042】
サーバ装置200は、通信部201、制御部202、記憶部203を有して構成される。
通信部201は、通信部105と同様の、ネットワーク経由で自律走行車両100と通信を行うための通信インタフェースである。
【0043】
制御部202は、サーバ装置200の制御を司る手段である。制御部202は、例えば、CPUによって構成される。
制御部202は、機能モジュールとして車両情報管理部2021および輸送指令生成部2022を有している。各機能モジュールは、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPU(いずれも不図示)によって実行することで実現してもよい。
【0044】
車両情報管理部2021は、管理下にある複数の自律走行車両100を管理する。具体的には、所定の周期ごとに、複数の自律走行車両100から、位置情報、経路情報、イベント情報を受信し、日時と関連付けて後述の記憶部203に記憶させる。
位置情報は、自律走行車両100の現在位置を表す情報であり、経路情報は、自律走行車両100が走行を予定している経路に関する情報である。また、イベント情報は、運行中の自律走行車両100において発生したイベント(例えば、ユーザの乗降、目的地への到着等)に関する情報である。
【0045】
また、車両情報管理部2021は、必要に応じて、自律走行車両100の特性に関するデータ(以下、車両情報)を保持および更新する。車両情報は、例えば、自律走行車両100の識別子、用途・種別、扉タイプ、車体サイズ、積載量、搭乗可能人数、満充電時における走行可能距離、現時点における走行可能距離、現在のステータス(待機中、空車、実車、走行中、営業中等)などであるが、これ以外であってもよい。
【0046】
本実施形態では、乗車リクエストとは、乗車希望地点、乗車希望時刻を含んだ情報である。乗車リクエストは、例えば、ネットワーク等を介してユーザから取得する。なお、乗車リクエストの送信元は、必ずしも一般の利用者である必要はなく、例えば、自律走行車両100を運行する事業者などであってもよい。
【0047】
輸送指令生成部2022は、乗車リクエストを外部から受信した場合に、ユーザを乗車させる自律走行車両100を決定し、当該自律走行車両100に送信する輸送指令を生成する。
【0048】
記憶部203は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。
【0049】
次に、興行拠点サーバ300について説明する。
興行拠点サーバ300は、興行拠点ごとに設置されたサーバ装置であり、試合、演劇、コンサートといった、興行拠点において行われる興行を撮影し、映像を配信する装置である。興行拠点サーバ300は、自律走行車両100からリクエストがあった場合に、当該自律走行車両100に対して指定された映像の配信を行う。
【0050】
興行拠点サーバ300は、通信部301、制御部302、映像取得部303を有して構成される。
通信部301は、通信部201と同様の、ネットワーク経由で自律走行車両100と通信を行うための通信インタフェースである。
【0051】
制御部302は、興行拠点サーバ300の制御を司る手段である。制御部302は、例えば、CPUによって構成される。
制御部302は、後述する映像取得部303によって取得された映像をネットワーク配信する機能を実行する。当該機能は、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0052】
映像取得部303は、フィールドや客席に設置された一台以上のカメラによって撮影された映像信号を取得する手段である。興行拠点に複数のカメラが設置されている場合、映像取得部303は、複数の映像信号を取得してもよい。映像取得部303によって取得された映像信号は、制御部302によって映像データに変換され、ネットワーク配信される。なお、映像取得部303が複数の映像信号を取得可能である場合、複数チャネルの映像を一つのデータストリームに含ませてもよい。
【0053】
次に、ユーザを乗車させた自律走行車両100が行う処理について具体的に説明する。
図5(A)は、ユーザが所持する電子チケットから読み取り可能なチケット情報の例である。チケット情報には、ユーザを一意に識別するID、興行拠点を一意に識別するID、ユーザに対して指定された座席に関する情報、当該座席が存在するエリアに関する情報(例えば、一塁側,三塁側,S席,A席等)、開演時刻などが含まれる。チケット情報は、乗車しようとするユーザを認証する情報を含んでもよい。
【0054】
ユーザが自律走行車両100に乗車し、電子チケットを読み取らせると、運行計画生成部1031が、チケット情報に含まれる興行拠点IDと、予め記憶された興行拠点情報に基づいて目的地を特定し、当該目的地に至るまでの走行経路を生成する。
図5(B)は、自律走行車両100が記憶している興行拠点情報の例である。当該情報には、興行拠点を一意に識別するID、当該興行拠点の名称、住所、施設ないし車寄せの位置情報等が含まれる。運行計画生成部1031は、興行拠点情報と、別途取得した地図データに基づいて走行経路を生成する。
【0055】
ユーザが乗車中に開演時刻を過ぎた場合、映像提供部1034が、識別した興行拠点IDと、予め記憶された映像ソース情報に基づいて興行拠点サーバ300を特定し、当該興行拠点サーバ300から配信された映像データを受信する。
図5(C)は、自律走行車両100が記憶している映像ソース情報の例である。当該情報には、興行拠点を一意に識別するID、エリア、サーバ装置のアドレス、カメラ番号等が含まれる。
【0056】
映像提供部1034は、チケット情報に含まれる興行拠点IDとエリアに基づいて、対
応する映像ソース(サーバ)を選択し、映像データの受信を行う。なお、興行拠点が複数のカメラを設置している場合、対応するカメラ番号を指定することで、受信した映像データから対応する映像を抽出することができる。抽出された映像は映像信号に変換され、画像出力部106を介してユーザに提供される。
【0057】
次に、システムを構成する各要素が行う処理について説明する。図6は、ユーザから送信された乗車リクエストに基づいてサーバ装置200が輸送指令を生成し、自律走行車両100が運行を開始するまでのデータフローを説明する図である。
【0058】
自律走行車両100は、サーバ装置200に対して周期的に位置情報、経路情報、イベント情報を送信する。なお、位置情報および経路情報は、時間の経過に伴って都度送信される。また、イベント情報は、イベントの発生(例えば、ユーザの乗降等)をトリガとして送信される。
これらの情報を受信したサーバ装置200(車両情報管理部2021)は、受信した情報を、自律走行車両100の識別子と関連付けて記憶部203に記憶させる。なお、位置情報は、必ずしもノード自体の位置情報でなくてもよい。例えば、ノードやリンクを特定するための情報であってもよい。また、リンクを複数の区間に分割してもよい。また、道路ネットワークは必ずしもノードとリンクによって表されたものでなくてもよい。
【0059】
ユーザが、サーバ装置200に対して乗車リクエストを送信すると(ステップS11)、サーバ装置200(輸送指令生成部2022)が、乗車リクエストに基づいて、前述した方法によって自律走行車両100を選択する(ステップS12)。そして、選択した自律走行車両100に対して輸送指令を生成する(ステップS13)。輸送指令は、例えば、ユーザに関する情報、当該ユーザが希望する乗車地点、乗車希望時刻などを含む。
ステップS14では、輸送指令生成部2022が、対象の自律走行車両100へ輸送指令を送信する。また、ユーザに対して、乗車の可否、乗車地点、到着予定時刻などを含む応答を送信する。
【0060】
ステップS15では、自律走行車両100(運行計画生成部1031)が、受信した輸送指令に基づいて運行計画を生成する。例えば、当該自律走行車両100が運行中でない場合、ユーザを所定の乗車地点で乗車させ、読み取ったチケット情報に基づいて、所定の興行拠点へ向かうる旨の運行計画を生成する。また、当該自律走行車両100が運行中である場合、乗車希望ユーザを新たに乗車させるよう、既に決定された運行計画を修正する。生成ないし修正された運行計画は走行制御部1033へ送信される。これにより、自律走行車両100が移動を開始する。
【0061】
自律走行車両100が、ユーザが指定した地点に到着すると、走行制御部1033が、当該ユーザを乗車させ、電子チケットを読み取る処理を行う。これにより、所定の興行拠点までユーザを輸送するための新たな運行計画が生成される。
【0062】
次に、乗車したユーザに対して映像を提供する処理について説明する。
図7は、ユーザが自律走行車両100に乗車した際に、当該自律走行車両100(映像提供部1034)によって実行される処理のフローチャートである。当該フローチャートは、チケット情報を取得し、車両が移動を開始したタイミングで開始される。
【0063】
まず、ステップS21で、チケット情報に含まれる開演時刻と現在時刻を比較し、開演時刻を経過しているか否かを判定する。ここで、否定判定であった場合、処理は後述するステップS24へ遷移する。肯定判定であった場合、ステップS22で、対応する映像ソースを選択する。具体的には、チケット情報に含まれる興行拠点IDとエリアに基づいて、図5(C)に示した映像ソース情報から、対象の映像ソースを選択する。そして、ステ
ップS23で、興行拠点サーバ300に接続し、映像の受信を開始する。受信した映像は、画像出力部106を介してユーザに提供される。
【0064】
ステップS24では、自律走行車両100が興行拠点に到着したか否かを判定する。ここで否定判定であった場合、処理はステップS21へ遷移する。肯定判定であった場合、乗車中のユーザに対して、チケット情報に基づいた情報提供を行う。例えば、会場の入り口に対する案内、エリアへの案内、指定された座席への案内等を生成し、画像出力部106ないし入出力部107を介してユーザに提供する。なお、案内を行うための情報(会場の見取り図等)は、チケット情報に含まれていてもよいし、外部から取得してもよい。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態に係る移動体システムは、興行拠点へ向かうユーザが所持する電子チケットから取得した情報に基づいて、当該ユーザを興行拠点へ輸送することができる。また、車内において、興行の中継映像をリアルタイムでユーザに提供することができるため、ユーザが、開演時刻に縛られない柔軟な行動予定を立てることが可能になる。
【0066】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、興行拠点へ向かうユーザを輸送する形態を例示した。これに対し、第二の実施形態は、公演の途中で興行拠点を後にするユーザを輸送する実施形態である。
【0067】
第二の実施形態では、チケット情報に、帰路にあるユーザが自律走行車両100から降車する地点を指定する情報が含まれている。また、自律走行車両100は、チケット情報に含まれている興行拠点において電子チケットを読み取った場合に、ユーザを送り届けるための移動を開始する。すなわち、興行拠点を出発地、指定された降車地点を目的地とする走行経路を生成し、当該走行経路によってユーザを輸送するという運行計画を生成する。
【0068】
図8は、第二の実施形態において、自律走行車両100(映像提供部1034)が実行する処理のフローチャートである。当該フローチャートは、興行拠点を後にするユーザからチケット情報を取得し、車両の運行が開始されたタイミングで開始される。
【0069】
まず、ステップS31で、ユーザが退席してから自律走行車両100に乗車するまでのタイムラグを取得する。ユーザが退席したタイミングは、例えば、ユーザが所持する端末(以下、ユーザ端末)から取得することができる。例えば、電子チケットの発行を受けるためのアプリケーションプログラムがユーザ端末上で動作している場合、当該アプリケーションプログラムを介して、退席したタイミングを自律走行車両100に通知することができる。ステップS32の処理は、ステップS22と同様であるため説明は省略する。
【0070】
公演の途中でユーザが退席した場合、退席した時刻から、自律走行車両100に乗車した時刻までの間は、公演を観ることができない。そこで、第二の実施形態では、映像提供部1034が映像を所定の期間だけ蓄積し、ステップS33で映像をユーザに提供する際に、ステップS31で判定したタイムラグを付加してユーザに提供する。例えば、退席から乗車まで10分かかった場合、10分だけ遅延させた映像をユーザに提供する。
【0071】
第二の実施形態によると、公演途中でユーザが退席した場合であっても、当該ユーザに対して現地の映像をシームレスに提供することができる。すなわち、ユーザがより柔軟な行動予定を立てることが可能になる。
【0072】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0073】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0074】
本発明は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0075】
100・・・自律走行車両
101・・・センサ
102・・・位置情報取得部
103,202,302・・・制御部
104・・・駆動部
105,201,301・・・通信部
106・・・画像出力部
107・・・入出力部
200・・・サーバ装置
203・・・記憶部
300・・・興行拠点サーバ
303・・・映像取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8