(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ソフトウェア書き込みシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 8/60 20180101AFI20221220BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G06F8/60
B60R16/02 660U
(21)【出願番号】P 2019028646
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 忍
(72)【発明者】
【氏名】安原 幸生
(72)【発明者】
【氏名】奥村 泰治
(72)【発明者】
【氏名】澤野 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 勲
(72)【発明者】
【氏名】河村 淳
(72)【発明者】
【氏名】西岡 隆信
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-216220(JP,A)
【文献】特開2015-041798(JP,A)
【文献】特開2006-279926(JP,A)
【文献】特開2012-015803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/60-8/658
B60R 16/02
H04W 4/00
H04W 48/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御のためのソフトウェアを車載電子制御装置に書き込むためのソフトウェア書き込みシステムにおいて、
前記車載電子制御装置に接続され、搭載された車両の車両識別情報を取得して車外に無線送信し、車外より書き込みソフトウェアを無線受信し、該書き込みソフトウェアを前記車載電子制御装置に書き込む車載無線端末と、
前記車載無線端末から無線受信した前記車両識別情報により車両を個別に認識して、当該車両における前記車載電子制御装置に書き込むべき書き込みソフトウェアを前記車載無線端末に無線送信する情報処理装置とを備え、
前記車載無線端末は、無線通信方式として、第1無線方式と第2無線方式とが切り替え可能であり、前記第1無線方式は通信情報量が少ない場合における通信速度が前記第2無線方式に比べて高いものであり、前記第2無線方式は通信情報量が多い場合における通信速度が前記第1無線方式に比べて高いものであって、
前記車載無線端末は、
前記通信情報量と前記無線通信方式との関係が予め規定されており、前記車両識別情報の車外への無線送信を含む通信情報量が少ない無線通信を行う場合に
おける前記情報処理装置との間での無線通信方式は前記第1無線方式
に予め規定されており、前記書き込みソフトウェアの無線受信を含む通信情報量が多い無線通信を行う場合に
おける前記情報処理装置との間での無線通信方式は前記第2無線方式
に予め規定されていることを特徴とするソフトウェア書き込みシステム。
【請求項2】
請求項1記載のソフトウェア書き込みシステムにおいて、
前記第1無線方式は前記車載無線端末における通信対象が前記情報処理装置のみとして規定されたオリジナル無線方式であり、前記第2無線方式は不特定の機器同士の通信が可能なWifi通信であることを特徴とするソフトウェア書き込みシステム。
【請求項3】
請求項1または2記載のソフトウェア書き込みシステムにおいて、
前記車両識別情報が書き込まれた生産指示装置が前記車両に搭載されており、
前記車両識別情報が前記生産指示装置から前記情報処理装置に取り込まれ、この車両識別情報が前記情報処理装置から前記車載無線端末に前記第1無線方式によって無線送信され、
前記車載無線端末が、受信した前記車両識別情報と、予め記憶されている該車載無線端末の個体識別情報とを紐付けした情報を前記第1無線方式によって前記情報処理装置に無線送信し、
前記情報処理装置は、受信した前記紐付けした情報に含まれている前記車両識別情報に合致する前記書き込みソフトウェアを選択し、該書き込みソフトウェアを、前記紐付けした情報に含まれている前記個体識別情報に該当する前記車載無線端末に向けて前記第2無線方式によって無線送信することを特徴とするソフトウェア書き込みシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御のためのソフトウェアを車載電子制御装置に書き込むためのソフトウェア書き込みシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載電子制御装置(以下、ECUという)のコスト削減等を目的として、複数種類の車両に対して共通のハードウェアで成るECU(Electronic Control Unit)をそれぞれ搭載しておき、その後に、各車両の種類に適合したソフトウェアを、各ECUに個別に書き込んでいくことが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この特許文献1には、車両の組立工程において、データ書き込み装置により受信した車両情報によって車両を個別に認識し、ECUに書き込むべきソフトウェアを無線通信によって指示することにより、ECUへのソフトウェアの書き込みを行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているシステムにあっては、車両を個別に認識するための通信およびECUにソフトウェアを書き込むための通信は共通の通信プロトコル(無線通信方式)によって行うものとなっている。
【0006】
本発明の発明者らは、この種の無線通信として、通信情報量(通信データ量)が少ない場合と、通信情報量が多い場合とがあり、これらを同一の通信プロトコルで行うと、通信速度にバラツキが生じることがあるため、この種の無線通信を効率良く行うためには改良の余地があることに着目した。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両制御のためのソフトウェアを車載電子制御装置に書き込むに当たり、無線通信を効率良く行うことができるソフトウェア書き込みシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車両制御のためのソフトウェアを車載電子制御装置に書き込むためのソフトウェア書き込みシステムを前提とする。そして、このソフトウェア書き込みシステムは、車載無線端末と情報処理装置とを備えている。車載無線端末は、前記車載電子制御装置に接続され、搭載された車両の車両識別情報を取得して車外に無線送信し、車外より書き込みソフトウェアを無線受信し、該書き込みソフトウェアを前記車載電子制御装置に書き込む。情報処理装置は、前記車載無線端末から無線受信した前記車両識別情報により車両を個別に認識して、当該車両における前記車載電子制御装置に書き込むべき書き込みソフトウェアを前記車載無線端末に無線送信する。また、前記車載無線端末は、無線通信方式として、第1無線方式と第2無線方式とが切り替え可能であり、前記第1無線方式は通信情報量が少ない場合における通信速度が前記第2無線方式に比べて高いものであり、前記第2無線方式は通信情報量が多い場合における通信速度が前記第1無線方式に比べて高いものである。そして、前記車載無線端末は、前記通信情報量と前記無線通信方式との関係が予め規定されており、前記車両識別情報の車外への無線送信を含む通信情報量が少ない無線通信を行う場合における前記情報処理装置との間での無線通信方式は前記第1無線方式に予め規定されており、前記書き込みソフトウェアの無線受信を含む通信情報量が多い無線通信を行う場合における前記情報処理装置との間での無線通信方式は前記第2無線方式に予め規定されていることを特徴とする。
【0009】
この特定事項により、車両制御のためのソフトウェアを車載電子制御装置に書き込む動作としては、車載無線端末が、搭載された車両の車両識別情報を取得して車外に無線送信する。そして、この車両識別情報を情報処理装置が無線受信し、該情報処理装置は、車両識別情報により車両を個別に認識して、当該車両における車載電子制御装置に書き込むべき書き込みソフトウェアを車載無線端末に無線送信する。車載無線端末は、この書き込みソフトウェアを無線受信し、該書き込みソフトウェアを車載電子制御装置に書き込むことになる。
【0010】
この場合に、車載無線端末は、車両識別情報の車外への無線送信を含む通信情報量が少ない無線通信を行う場合には第1無線方式によって情報処理装置と無線通信を行う。また、車載無線端末は、書き込みソフトウェアの無線受信を含む通信情報量が多い無線通信を行う場合には第2無線方式によって情報処理装置と無線通信を行う。第1無線方式は通信情報量が少ない場合における通信速度が第2無線方式に比べて高いものである。このため、車両識別情報の車外への無線送信を含む通信情報量が少ない無線通信を行う場合には第1無線方式によって情報処理装置と無線通信を行うことで、第2無線方式によって情報処理装置と無線通信を行う場合よりも高い通信速度で無線通信を行うことができる。また、書き込みソフトウェアの無線受信を含む通信情報量が多い無線通信を行う場合には第2無線方式によって情報処理装置と無線通信を行うことで、第1無線方式によって情報処理装置と無線通信を行う場合よりも高い通信速度で無線通信を行うことができる。このように、通信情報量が少ない場合と多い場合とで無線通信方式を切り替えることで無線通信を効率良く行うことができ、車載電子制御装置へのソフトウェアの書き込みに要する時間の短縮化を図ることができる。
また、無線方式として具体的に、前記第1無線方式は前記車載無線端末における通信対象が前記情報処理装置のみとして規定されたオリジナル無線方式であり、前記第2無線方式は不特定の機器同士の通信が可能なWifi通信である。
また、前記車両識別情報が書き込まれた生産指示装置が前記車両に搭載されており、前記車両識別情報が前記生産指示装置から前記情報処理装置に取り込まれ、この車両識別情報が前記情報処理装置から前記車載無線端末に前記第1無線方式によって無線送信され、前記車載無線端末が、受信した前記車両識別情報と、予め記憶されている該車載無線端末の個体識別情報とを紐付けした情報を前記第1無線方式によって前記情報処理装置に無線送信し、前記情報処理装置は、受信した前記紐付けした情報に含まれている前記車両識別情報に合致する前記書き込みソフトウェアを選択し、該書き込みソフトウェアを、前記紐付けした情報に含まれている前記個体識別情報に該当する前記車載無線端末に向けて前記第2無線方式によって無線送信するようになっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、車両制御のためのソフトウェアを車載電子制御装置に書き込む際における車載無線端末と情報処理装置との間での無線通信において、通信情報量が少ない場合における通信速度が高い第1無線方式と、通信情報量が多い場合における通信速度が高い第2無線方式とを切り替え可能とし、通信情報量が少ない無線通信を行う場合には第1無線方式によって車載無線端末と情報処理装置との間での無線通信を行い、通信情報量が多い無線通信を行う場合には第2無線方式によって車載無線端末と情報処理装置との間での無線通信を行うようにしている。このように、通信情報量が少ない場合と多い場合とで無線通信方式を切り替えることで無線通信を効率良く行うことができ、車載電子制御装置へのソフトウェアの書き込みに要する時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るソフトウェア書き込みシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】車載無線端末および情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】生産指示装置、車載無線端末、情報処理装置の相互間における通信動作の概略を説明するための図である。
【
図4】Wifi通信およびオリジナル無線通信それぞれの特性を説明するための図である。
【
図5】生産指示装置、車両ダイアグ通信装置、信号変換ステーション、アンテナ、車載無線端末、ソフトウェア書き込み管理装置、Wifiアンテナ、ECUの相互間における情報の送受信を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車の生産ラインにおいて車両制御のためのソフトウェアをECU(車載電子制御装置)に書き込むソフトウェア書き込みシステムに本発明を適用した場合について説明する。
【0014】
-ソフトウェア書き込みシステムの概略構成-
図1は、本実施形態に係るソフトウェア書き込みシステム1の概略構成を示す図である。また、
図2は、ソフトウェア書き込みシステム1を構成する車載無線端末2および情報処理装置3の概略構成を示すブロック図である。また、
図3は、生産指示装置4、車載無線端末2、情報処理装置3の相互間における通信動作の概略を説明するための図である。
【0015】
本実施形態に係るソフトウェア書き込みシステム1によるECU5へのソフトウェアの書き込み動作の概略としては、生産指示装置4から読み取られた車両の個体識別情報であるシリアル情報(車両No)が情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6から車載無線端末2に無線送信され、この車載無線端末2が、このシリアル情報と、該車載無線端末2の個体識別情報であるIP情報とを紐付けした情報(以下、紐付け情報という)を情報処理装置3に向けて無線送信する。そして、この紐付け情報が情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6からソフトウェア書き込み管理装置7に出力され、該ソフトウェア書き込み管理装置7が、この紐付け情報により車両を個別に認識して、当該車両におけるECU5に書き込むべきソフトウェア(書き込みソフトウェア)を車載無線端末2に無線送信する。そして、車載無線端末2は、このソフトウェアを無線受信し、該ソフトウェアをECU5に書き込むことになる。
【0016】
図1における車両V1は車載無線端末2と情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6との間で無線通信を行っている状態を示している。また、車両V2は車載無線端末2と情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7との間で無線通信を行っている状態であって、車載無線端末2にソフトウェアを無線送信している状態を示している。また、車両V3は車載無線端末2と情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7との間で無線通信を行っている状態であって、ソフトウェア書き込み管理装置7にソフトウェア書き込み状況の情報を無線送信している状態を示している。
【0017】
以下、生産指示装置4、車載無線端末2および情報処理装置3の概略構成について説明する。
【0018】
(生産指示装置)
図2および
図3に示すように生産指示装置4は、車両に貼り付けられた(本実施形態ではルーフパネル上に貼り付けられた)RFIDタグによって構成されている。この生産指示装置4には、前記シリアル情報が書き込まれている。そして、この生産指示装置4を、前記情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6に接続されたタグリーダ31によって読み取ることで、前記シリアル情報が情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6に取り込まれるようになっている。この情報処理装置3に取り込まれたシリアル情報は車載無線端末2に無線送信されることになる。情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6には、信号変換ステーション32およびアンテナ33が接続されている。つまり、シリアル情報が信号変換ステーション32によって無線送信可能な形態に変換された後、アンテナ33によって車載無線端末2に無線送信されることになる。
【0019】
(車載無線端末)
車載無線端末2は、生産ライン上を搬送されている車両に搭載されるものであって、例えば、車両の組立工程が終了し、ECU5の搭載が終了した後に車室内の床面に載置される装置である。つまり、車室内の床面に載置可能な大きさの筐体の内部に後述する各機能部分を構成する電子機器が収容された構成となっている。この車載無線端末2を車室内の床面に載置する作業は、作業者が行ってもよいし、ロボットによって自動的に車室内の床面に載置されるようになっていてもよい。
【0020】
図2に示すように、車載無線端末2は、シリアル情報受信部21、シリアル情報登録部22、IP情報記憶部23、紐付け情報送信部24、ソフトウェア受信部25、進捗状況出力部26を備えている。
【0021】
シリアル情報受信部21は、前記アンテナ33によって無線送信されたシリアル情報を受信する機能部分である。シリアル情報登録部22は、前記シリアル情報受信部21が受信したシリアル情報が登録される部分である。
【0022】
IP情報記憶部23は、車載無線端末2の個体識別情報であるIP情報が記憶されている。このため、自動車の生産ライン上を搬送されている複数台の車両それぞれに搭載されている各車載無線端末2それぞれのIP情報記憶部23には個別のIP情報が記憶されている。
【0023】
紐付け情報送信部24は、IP情報記憶部23に記憶されている前記IP情報と、前記情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6から無線受信したシリアル情報(車両の個体識別情報)とを紐付けて、その紐付け情報を無線送信する機能部分である。
【0024】
ソフトウェア受信部25は、情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7から無線送信されるソフトウェアを無線受信する機能部分である。
【0025】
進捗状況出力部26は、後述するECU5へのソフトウェアの書き込み動作中に所定時間間隔で、当該ソフトウェア書き込み状況(ECU5へのソフトウェア書き込み量等の情報)を情報処理装置3に向けて無線送信する機能部分である。
【0026】
この車載無線端末2の特徴としては、情報処理装置3との間で行われる無線送信の方式(無線通信方式)が、第1無線方式と第2無線方式との間で切り替え可能となっている点にある。
【0027】
第1無線方式は通信情報量が少ない場合における通信速度が第2無線方式に比べて高いものである。一方、第2無線方式は通信情報量が多い場合における通信速度が第1無線方式に比べて高いものである。具体的に、第1無線方式はオリジナル無線方式であり、第2無線方式はWifi(Wireless Fidelity)通信方式(以下、単にWifi通信という)である。ここでいうオリジナル無線方式とは、本ソフトウェア書き込みシステム1に特化した無線方式であり、車載無線端末2における通信対象(通信相手)が情報処理装置3のみとして規定され、情報処理装置3における通信対象が車載無線端末2のみとして規定されたものである。
【0028】
そして、前記シリアル情報受信部21および紐付け情報送信部24は、第1無線方式(オリジナル無線方式)により情報処理装置3との間で無線通信を行う部分であり、これらがオリジナル無線モジュールを構成している。また、ソフトウェア受信部25および進捗状況出力部26は、第2無線方式(Wifi通信)により情報処理装置3との間で無線通信を行う部分であり、これらがWifi無線モジュールを構成している。
【0029】
(車両ダイアグ通信装置)
車両ダイアグ通信装置6は、シリアル情報取得部61、シリアル情報出力部62、紐付け情報受信部63、紐付け情報出力部64を備えている。
【0030】
シリアル情報取得部61は、前述したようにタグリーダ31によって読み取られたシリアル情報を取得する機能部分である。シリアル情報出力部62は、シリアル情報取得部61が取得したシリアル情報を受け取り、このシリアル情報を信号変換ステーション32に出力する機能部分である。
【0031】
紐付け情報受信部63は、前記車載無線端末2の紐付け情報送信部24から無線送信された紐付け情報を、アンテナ33および信号変換ステーション32を経て受信する機能部分である。この際、信号変換ステーション32では、アンテナ33が受信した紐付け情報を紐付け情報受信部63が取得可能な形式に変換される。
【0032】
紐付け情報出力部64は、前記紐付け情報受信部63が受信した紐付け情報をソフトウェア書き込み管理装置7に出力する機能部分である。つまり、車両ダイアグ通信装置6とソフトウェア書き込み管理装置7とは信号線によって接続されており、この信号線によって紐付け情報が紐付け情報出力部64からソフトウェア書き込み管理装置7に出力されるようになっている。
【0033】
(ソフトウェア書き込み管理装置)
ソフトウェア書き込み管理装置7は、紐付け情報受信部71、ソフトウェア選択部72、ソフトウェア出力部73、データベースDB、進捗状況判断部74を備えている。
【0034】
紐付け情報受信部71は、前述したように紐付け情報出力部64から出力された紐付け情報を受信する機能部分である。
【0035】
データベースDBには、複数種類の車両それぞれに適合したソフトウェア(車両制御のためのソフトウェア)が格納されている。ソフトウェア選択部72は、紐付け情報受信部71から紐付け情報を受け取り、その紐付け情報に含まれているシリアル情報に合致するソフトウェアを、データベースDBに格納されている各種ソフトウェアの中から選択して抽出する。
【0036】
ソフトウェア出力部73は、ソフトウェア選択部72が選択したソフトウェアを該ソフトウェア選択部72から受け取り、該ソフトウェアに対応するシリアル情報を有する車両に搭載されている車載無線端末2に向けて無線送信する。具体的には、ソフトウェア書き込み管理装置7には、Wifiアンテナ34が接続されており、ソフトウェア出力部73から出力されたソフトウェアは、Wifiアンテナ34に出力され、このWifiアンテナ34から車載無線端末2に向けて無線送信される。
【0037】
進捗状況判断部74は、前記車載無線端末2の進捗状況出力部26から所定時間間隔で送信されるソフトウェア書き込み状況(進捗状況)の情報を受信し、ソフトウェアの書き込みが適正に行われているか否かの判断を行う機能部分である。
【0038】
-無線通信方式-
次に、本実施形態の特徴である無線通信方式について説明する。
【0039】
車載無線端末2と情報処理装置3との間で行われる無線送信としては、前述したように、情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6から車載無線端末2へのシリアル情報の無線送信、車載無線端末2から情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6への紐付け情報の無線送信、情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7から車載無線端末2へのソフトウェアの無線送信、車載無線端末2から情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7へのソフトウェア書き込み状況の情報の無線送信がある。
【0040】
そして、車載無線端末2と情報処理装置3との間で行われる無線送信の方式(無線通信方式)としては、前述したように第1無線方式(オリジナル無線方式)と第2無線方式(Wifi通信)とが切り替え可能となっている。第1無線方式は通信情報量が少ない場合における通信速度が第2無線方式に比べて高いものである。一方、第2無線方式は通信情報量が多い場合における通信速度が第1無線方式に比べて高いものである。
【0041】
図4は、Wifi通信およびオリジナル無線通信それぞれの特性を説明するための図である。この
図4からも明らかなように、Wifi通信は、通信情報量が多い場合における通信速度がオリジナル無線通信に比べて高いものとなっている。また、オリジナル無線通信は、通信情報量が少ない場合における通信速度がWifi通信に比べて高いものとなっている。
【0042】
また、オリジナル無線方式は、本ソフトウェア書き込みシステム1に特化した無線方式であることから、車載無線端末2と情報処理装置3との間でのペアリングに要する時間は、Wifi通信(不特定の機器同士のペアリングを可能にする通信)に比べて短いものとなっている。なお、このペアリングおよび該ペアリングのための情報の送受信については周知であるため、ここでの説明は省略する。
【0043】
前述した4種類の通信、つまり、情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6から車載無線端末2へのシリアル情報の無線送信、車載無線端末2から情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6への紐付け情報の無線送信、情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7から車載無線端末2へのソフトウェアの無線送信、車載無線端末2から情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7へのソフトウェア書き込み状況の情報の無線送信のうち、情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6から車載無線端末2へのシリアル情報の無線送信、および、車載無線端末2から情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6への紐付け情報の無線送信は、通信情報量が比較的少ない。これに対し、情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7から車載無線端末2へのソフトウェアの無線送信、および、車載無線端末2から情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7へのソフトウェア書き込み状況の情報の無線送信は、通信情報量が比較的多い。
【0044】
この点に鑑み、本実施形態では、情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6から車載無線端末2へのシリアル情報の無線送信、および、車載無線端末2から情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6への紐付け情報の無線送信は、第1無線方式(オリジナル無線方式)により車載無線端末2と情報処理装置3との間での無線通信を行うようにしている。これに対し、情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7から車載無線端末2へのソフトウェアの無線送信、および、車載無線端末2から情報処理装置3のソフトウェア書き込み管理装置7へのソフトウェア書き込み状況の情報の無線送信は、第2無線方式(Wifi通信)により車載無線端末2と情報処理装置3との間での無線通信を行うようにしている。
【0045】
-ソフトウェアの書き込み動作-
次に、ECU5へのソフトウェアの書き込み動作について説明する。
【0046】
図5は、生産指示装置4、車両ダイアグ通信装置6、信号変換ステーション32、アンテナ33、車載無線端末2、ソフトウェア書き込み管理装置7、Wifiアンテナ34、ECU5の相互間における情報の送受信を説明するためのシーケンス図である。
【0047】
先ず、生産指示装置4に書き込まれているシリアル情報を情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6によって読み取る(
図5における送信動作A)。
【0048】
そして、この読み取られたシリアル情報は、車両ダイアグ通信装置6から、信号変換ステーション32を経てアンテナ33に出力され(
図5における送信動作B)、このアンテナ33から車載無線端末2に無線送信される(
図5における送信動作C)。この際の無線送信の方式は、送信される情報はシリアル情報であって通信情報量が少ないため、第1無線方式(オリジナル無線方式)である。
【0049】
その後、車載無線端末2から、紐付け情報が無線送信され(
図5における送信動作D)、この紐付け情報がアンテナ33および信号変換ステーション32を経て車両ダイアグ通信装置6に送信される(
図5における送信動作E)。この際の無線送信(送信動作D)の方式は、送信される情報は紐付け情報であって通信情報量が少ないため、第1無線方式(オリジナル無線方式)である。
【0050】
そして、この紐付け情報は、車両ダイアグ通信装置6からソフトウェア書き込み管理装置7へ出力される(
図5における送信動作F)。この紐付け情報と共にソフトウェア書き込み管理装置7にはソフトウェア書き込み指示の信号も送信される。
【0051】
これら信号を受信したソフトウェア書き込み管理装置7は、紐付け情報に含まれているシリアル情報に合致するソフトウェアを、データベースDBに格納されている各種ソフトウェアの中から選択し、そのソフトウェアをWifiアンテナ34に出力する。Wifiアンテナ34は、この受信したソフトウェアを車載無線端末2に無線送信する(
図5における送信動作G)。この際の無線送信の方式は、送信される情報はソフトウェアであって通信情報量が多いため、第2無線方式(Wifi通信)である。
【0052】
車載無線端末2では、無線受信しているソフトウェアを順次、ECU5に書き込んでいく(
図5における送信動作H)。この際、車載無線端末2からWifiアンテナ34に向けてソフトウェア書き込みの進捗状況の情報が所定時間間隔で送信される(
図5における送信動作I)。この進捗状況の情報を送信する無線送信の方式は第2無線方式(Wifi通信)である。
【0053】
そして、ソフトウェア書き込み管理装置7からのソフトウェアの出力が完了し、車載無線端末2からECU5へのソフトウェアの書き込みが完了すると、本動作を終了する。
【0054】
このような動作が、生産ライン上を搬送されてくる車両それぞれに対して行われることにより、各車両の種類に適合したソフトウェアが個別に各ECU(各車両に搭載されているECU)5に書き込まれていくことになる。
【0055】
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態にあっては、車載無線端末2は、通信情報量が少ない無線通信を行う場合には第1無線方式(オリジナル無線方式)によって情報処理装置3と無線通信を行う。また、車載無線端末2は、通信情報量が多い無線通信を行う場合には第2無線方式(Wifi通信)によって情報処理装置3と無線通信を行う。そして、第1無線方式は通信情報量が少ない場合における通信速度が第2無線方式に比べて高いものである。このため、通信情報量が少ない無線通信を行う場合には第1無線方式によって情報処理装置3と無線通信を行うことで、第2無線方式によって情報処理装置3と無線通信を行う場合よりも高い通信速度で無線通信を行うことができる。また、通信情報量が多い無線通信を行う場合には第2無線方式によって情報処理装置3と無線通信を行うことで、第1無線方式によって情報処理装置3と無線通信を行う場合よりも高い通信速度で無線通信を行うことができる。このように、通信情報量が少ない場合と多い場合とで無線通信方式を切り替えることで無線通信を効率良く行うことができ、ECU5へのソフトウェアの書き込みに要する時間の短縮化を図ることができる。
【0056】
また、車両識別情報(シリアル情報)の取得、車載無線端末2へのソフトウェアの無線送信、ECU5へのソフトウェアの書き込み、ソフトウェア書き込み管理装置7への進捗状況の情報の送信といった一連の無線通信が自動的に行われるため、ECU5へのソフトウェア書き込みのための作業工数の削減を図ることができる。
【0057】
また、車載無線端末2と情報処理装置3との間での情報の送受信は全て無線通信によって行われるため、ソフトウェア書き込みシステム1に必要な信号線の量の大幅な削減が可能であり、信号線が作業者の作業の邪魔になるといったこともない。
【0058】
-検査工程-
なお、前記実施形態における情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6は、ECU5へのソフトウェアの書き込みが完了した後の検査工程にも使用することができる。以下、具体的に説明する。
【0059】
図6は検査工程の概略を説明するための図である。この
図6に示すように、検査工程では、車載無線端末2と情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6との間で無線通信を行い、ECU5に対してソフトウェアが正常に書き込まれたか否かの検査や、車両におけるその他の機能システムの検査が行われることになる。例えば、ECU5に記憶されている制御プログラム等を車載無線端末2が読み出して情報処理装置3に無線送信することによって検査が行われる。この際の無線送信の方式は、第1無線方式(オリジナル無線方式)である。
【0060】
このように、組立工程の終了後に車両に搭載した車載無線端末2をそのまま有効利用して検査工程を行うことができる。また、前記情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6を検査工程に使用する装置として流用することができるため、自動車の生産ライン全体における設備のコストの低廉化を図ることが可能である。
【0061】
-他の実施形態-
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0062】
例えば、前記実施形態では、車載無線端末2からWifiアンテナ34に向けてソフトウェア書き込みの進捗状況の情報を送信する無線送信の方式を第2無線方式(Wifi通信)としていたが、この進捗状況の情報の通信情報量が比較的少ない場合には、この無線送信の方式としては第1無線方式(オリジナル無線方式)としてもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、車両の個体識別情報であるシリアル情報を車載無線端末2が取得する手段としては、情報処理装置3の車両ダイアグ通信装置6から無線送信されたシリアル情報をシリアル情報受信部21が受信するものとしていた。本発明はこれに限らず、車載無線端末2にタグリーダを接続しておき、このタグリーダによって生産指示装置4を読み取ることで、シリアル情報を取得するようにしてもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、ECU5へのソフトウェアの書き込み動作中に所定時間間隔で、当該ソフトウェア書き込み状況の情報を情報処理装置3に向けて無線送信するようにしていた。本発明はこれに限らず、ECU5へのソフトウェアの書き込み動作が完了した後に、その旨の情報を情報処理装置3に向けて無線送信するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、車両制御のためのソフトウェアを車両に搭載されたECUに書き込むためのソフトウェア書き込みシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 ソフトウェア書き込みシステム
2 車載無線端末
21 シリアル情報受信部
22 シリアル情報登録部
24 紐付け情報送信部
25 ソフトウェア受信部
3 情報処理装置
31 タグリーダ
33 アンテナ
34 Wifiアンテナ
4 生産指示装置
5 ECU(車載電子制御装置)
6 車両ダイアグ通信装置
61 シリアル情報取得部
62 シリアル情報出力部
63 紐付け情報受信部
64 紐付け情報出力部
7 ソフトウェア書き込み管理装置
71 紐付け情報受信部
72 ソフトウェア選択部
73 ソフトウェア出力部