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特許7196680光通信システムおよび光通信システムの波長切替方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】光通信システムおよび光通信システムの波長切替方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20221220BHJP
   H04B 10/272 20130101ALI20221220BHJP
   H04B 10/572 20130101ALI20221220BHJP
   H04B 10/67 20130101ALI20221220BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04L12/44 B
H04B10/272
H04B10/572
H04B10/67
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019030118
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020136986
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古沢 聡
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065679(JP,A)
【文献】特開2015-154399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04B 10/272
H04B 10/572
H04B 10/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局側装置と複数の加入者側装置とが接続され、前記加入者側装置から前記局側装置に対する上り信号と、前記局側装置から前記加入者側装置に対する下り信号とを送受信する光通信システムであって、
前記上り信号および前記下り信号の送受信の際に用いられる前記加入者側装置の上下波長を切り替える波長切替指示が発生すると、前記波長切替指示に基づき前記上下波長を切り替えるための波長切替要求信号を生成する波長切替要求信号生成部と、
それぞれの前記加入者側装置に対して固有の送信帯域を設定する専用帯域制御信号、および、すべての前記加入者側装置に対して共通する送信帯域を設定する共用帯域制御信号を生成する帯域制御信号生成部と、
前記波長切替指示が発生すると、前記波長切替要求信号、前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を含む前記下り信号を前記加入者側装置へ送信する送信部と
をそれぞれ有する複数の終端装置を備える局側装置と、
前記局側装置から送信される前記下り信号から前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を抽出し、前記下り信号に前記波長切替要求信号が含まれているならば、前記波長切替要求信号をさらに抽出する下り信号受信部と、
前記専用帯域制御信号を保存する専用帯域制御信号保存部と、
前記共用帯域制御信号を保存する共用帯域制御信号保存部と、
自装置の波長の切替および波長状態を管理する切替制御部と、
前記専用帯域制御信号保存部および前記共用帯域制御信号保存部にそれぞれ保存された前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号のいずれか一方に基づき、前記上り信号を生成して送信する送信制御部と
をそれぞれ備える複数の加入者側装置と
で構成され、
前記切替制御部は、
前記下り信号から前記波長切替要求信号が抽出されたならば、
前記波長切替要求信号に基づき前記上下波長を切り替えるとともに、前記波長状態を通常状態から波長切替状態に変更し、
前記専用帯域制御信号保存部に保存された前記専用帯域制御信号をクリアし、
前記送信制御部は、
前記波長状態が前記波長切替状態であるときに、前記上り信号を送信するならば、
前記共用帯域制御信号保存部に保存された前記共用帯域制御信号に基づき、前記上り信号を生成して送信する
光通信システム。
【請求項2】
前記加入者側装置から前記上り信号を送信するときに、前記波長状態が前記通常状態であるならば、
前記送信制御部は、
前記専用帯域制御信号保存部に保存された前記専用帯域制御信号に基づき、前記上り信号を生成して送信する
請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記波長状態が前記波長切替状態であるときに、前記加入者側装置で前記下り信号を受信したならば、
抽出された前記共用帯域制御信号は、破棄される
請求項1または2に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記切替制御部は、
前記波長状態が前記波長切替状態であるときに、前記送信制御部が前記専用帯域制御信号に基づいて前記上り信号を生成して送信したならば、
前記波長状態を前記波長切替状態から前記通常状態に変更する
請求項1~3のいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号は、
前記加入者側装置が前記上り信号を送信する際の送信開始時刻を示す情報を含み、
前記送信制御部は、
前記送信開始時刻が示す時刻に、前記上り信号を生成して送信する
請求項1~4のいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記波長切替要求信号は、
前記上下波長の切替先の波長情報を示す切替先波長情報と、前記上下波長を切り替えるタイミングを示す切替タイミング情報とが含まれ、
前記切替制御部は、
前記切替タイミング情報が示すタイミングで、前記上下波長を前記切替先波長情報が示す波長に切り替える
請求項1~5のいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項7】
局側装置と複数の加入者側装置とが接続され、前記加入者側装置から前記局側装置に対する上り信号と、前記局側装置から前記加入者側装置に対する下り信号とを送受信する光通信システムの波長切替方法であって、
前記上り信号および前記下り信号の送受信の際に用いられる前記加入者側装置の上下波長を切り替える波長切替指示が発生すると、前記波長切替指示に基づき前記上下波長を切り替えるための波長切替要求信号を生成する波長切替要求信号生成ステップと、
それぞれの前記加入者側装置に対して固有の送信帯域を設定する専用帯域制御信号、および、すべての前記加入者側装置に対して共通する送信帯域を設定する共用帯域制御信号を生成する帯域制御信号生成ステップと、
前記波長切替指示が発生すると、前記波長切替要求信号、前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を含む前記下り信号を前記局側装置から前記加入者側装置へ送信する制御信号送信ステップと、
前記局側装置から送信される前記下り信号から前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を抽出し、前記下り信号に前記波長切替要求信号が含まれているならば、前記波長切替要求信号をさらに抽出する制御信号受信ステップと、
前記専用帯域制御信号を専用帯域制御信号保存部に保存する専用帯域制御信号保存ステップと、
前記共用帯域制御信号を共用帯域制御信号保存部に保存する共用帯域制御信号保存ステップと、
自装置の波長の切替および波長状態を管理する切替制御信号受信ステップと、
前記専用帯域制御信号保存部および前記共用帯域制御信号保存部にそれぞれ保存された前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号のいずれか一方に基づき、前記上り信号を生成して送信する送信制御ステップと
を備え、
前記切替制御信号受信ステップは、
前記下り信号から前記波長切替要求信号が抽出されたならば、
前記波長切替要求信号に基づき前記上下波長を切り替えるとともに、前記波長状態を通常状態から波長切替状態に変更し、
前記専用帯域制御信号保存部に保存された前記専用帯域制御信号をクリアし、
前記送信制御ステップは、
前記波長状態が前記波長切替状態であるときに、前記上り信号を送信するならば、
前記共用帯域制御信号保存部に保存された前記共用帯域制御信号に基づき、前記上り信号を生成して送信する
光通信システムの波長切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局側と加入者側との間で光通信を行う光通信システムおよび光通信システムの波長切替方法関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般個人宅へ高速かつ広帯域なブロードバンドサービスを提供する目的で、伝送路に光ファイバを用いたFTTH(Fiber To The Home)と称するサービスが普及してきている。FTTHによるブロードバンドサービスの提供には、受動型光加入者ネットワーク(PON:Passive Optical Network)と称する光アクセスネットワークが多く利用されている。
【0003】
PONは、1つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)とが、光スプリッタあるいは光カプラと呼ばれる光受動素子を用いて1本の光ケーブルを分岐させることにより、1対多に接続されて構成される。PONでは、光ファイバおよびOLTなどを複数の加入者で共有することにより、経済的にFTTHサービスを提供することができる。
【0004】
PONには、10G-EPON(10 Gigabit Ethernet(登録商標) PON)と称されるものがある(例えば、非特許文献1参照)。この非特許文献1に記載のPONは、ONUからOLTへ向かう上り通信にTDMA(Time Division Multiple Access)技術を用い、各ONUからの信号の衝突を回避している。TDMA技術を用いるPONは、TDM-PONとも称される。
【0005】
さらに、将来の光アクセスネットワークにおける通信需要の増大に応えるため、伝送レートが10Gbpsを超える次世代のPONとして、複数のTDM-PONをWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術で1つのPONインフラ上に構築する、WDM/TDM-PON(TWDM-PON)に関する研究開発が進展している(例えば、特許文献1参照)。TWDM-PONを用いることにより、PONインフラにおける伝送容量を増大させることができる。
【0006】
特許文献1に記載のTWDM-PONにおいて、OLTは、複数の光送受信器と、TWDM-PONを制御する制御装置とを含んで構成される。各光送受信器は、光スプリッタを介して複数のONUと接続される。複数のONUにも、それぞれ光送受信器が設けられている。
【0007】
このようなTWDM-PONにおいて、一般に、OLTにおける複数の光送受信器のそれぞれには、固有の送信波長および受信波長が固定的に割り付けられている。また、それぞれのONUには、送信波長および受信波長が動的に変更可能な光送受信器が設けられている。そして、OLTとONUとの接続を動的に切り替える際には、ONUの送受信波長の切り替えが行われる。
【0008】
具体的には、TWDM-PONにおける上り通信に関しては、OLTの各光送受信器の受信波長が重ならないように、OLTの各光送受信器の受信波長が固定的に割り付けられている。この場合には、ONUの光送受信器の送信波長を変更することで、OLTの各光送受信器とONUとの接続を動的に切り替えることができる。一方、OLTからONUに向かう下り通信に関しても、上り通信と同様に、OLTの各光送受信器の送信波長が固定的に割り付けられている。したがって、ONUの光送受信器の受信波長を変更することで、OLTの各光送受信器とONUとの接続を動的に切り替えることができる。そのため、TWDM-PONには、トラフィック変動に応じた負荷分散、障害時の経路切替による高信頼化、低負荷時に光送受信器やデバイス回路のスリープによる省電力化などの利点がある。
【0009】
また、TWDM-PONでは、例えば、波長単位で通信サービス品質を管理可能なネットワークを構築することができる。そのため、新規サービスの追加およびダイナミックなサービス要件の変更を行う際には、波長を切り替えることによって柔軟に通信サービス品質を切り替えることができる。
【0010】
例えば、非特許文献2には、一般的な波長切替手順が開示されている。図9および図10は、従来のTWDM-PONにおける波長切替手順について説明するためのタイミングチャートである。図9は、帯域割当周期T1から帯域割当周期T5までの信号の送受信の様子を示し、図10は、帯域割当周期T6から帯域割当周期T9までの信号の送受信の様子を示している。
【0011】
ここで、OLTは、複数の終端装置(OSU:Optical Subscriber Unit)を波長単位で備えている。また、この例は、ONU#1の接続が、下り波長λd1および上り波長λu1で動作しているOSU#1から、下り波長λd2および上り波長λu2で動作しているOSU#2に切り替えられる場合を示す。また、以下では、上り波長および下り波長を「上下波長」と総称するものとする。
【0012】
図9および図10に示すように、帯域割当周期T1において、OSU#1は、各ONU宛ての図示しない帯域制御信号を含む帯域制御信号群B11を送信する。ONU#1は、送信された帯域制御信号群B11の中から、ONU#1宛ての図示しない帯域制御信号P11を選択受信する。そして、ONU#1は、帯域制御信号P11で指定された送信開始時刻に上り信号を出力する。この例では、OSU#1は、p11のタイミングでONU#1からの上り信号を受信する。
【0013】
帯域割当周期T2において、OSU#1は、帯域制御信号群B12を送信する。ONU#1は、送信された帯域制御信号群B12の中から、ONU#1宛ての図示しない帯域制御信号P12を選択受信する。
【0014】
ここで、帯域割当周期T2において、OSU#1からOSU#2への波長切替指示が発生した場合、OSU#1は、帯域割当周期T3において、帯域制御信号群B13を送信するとともに、ONU#1宛ての波長切替要求信号S1を送信する。波長切替要求信号S1には、切替後のONU#1の上下波長を示す情報が含まれている。
【0015】
ONU#1は、送信された帯域制御信号群B13の中から、ONU#1宛ての図示しない帯域制御信号P13を選択受信する。また、ONU#1は、波長切替要求信号S1を受信すると、下り波長をλd1からλd2に切り替えるとともに、上り信号の送信を禁止状態とする。その後、ONU#1は、上り信号送信禁止状態のため、帯域制御信号P12およびP13で指定された送信開始時刻に上り信号を出力せず、帯域制御信号P13で指定された送信開始時刻に、波長切替要求応答S2を出力する。
【0016】
下り波長の切替要求後の帯域割当周期T4において、OSU#2は、帯域制御信号群B24を送信する。ONU#1は、送信された帯域制御信号群B24の中から、ONU#1宛ての図示しない帯域制御信号P24を選択受信する。以下、帯域割当周期T5およびT6における動作についても、同様である。
【0017】
次に、ONU#1は、波長切替要求応答S2送信後、上り波長をλu1からλu2に切り替え、帯域制御信号P24で指定された送信開始時刻に、波長切替完了信号S3を送信する。
【0018】
OSU#2によって波長切替完了信号S3が受信された後の帯域割当周期T7において、OSU#2は、帯域制御信号群B27を送信する。また、OSU#2は、波長切替完了信号S3に対する応答を示す波長切替完了応答S4を、ONU#1に対して送信する。ONU#1は、波長切替完了応答S4を受信して波長の切替完了を認識し、上り信号送信禁止状態を解除する。
【0019】
ONU#1は、帯域制御信号P25で指定された送信開始時刻では、上り信号送信禁止状態のため、上り信号を出力しない。一方、ONU#1は、帯域制御信号P26で指定された送信開始時刻では、上り信号送信禁止状態が解除されたため、上り信号を出力する。そして、OSU#2は、p26のタイミングでONU#1からの上り信号を受信する。以降、ONU#1は、OSU#2への上り信号導通が継続される。
【0020】
このように、従来の波長切替手順では、波長切替指示を受けた場合に、OLTとONUとの間では、「波長切替要求」、「波長切替要求応答」、「波長切替完了」および「波長切替完了応答」のやりとりが行われる。これにより、ONUでは、OLTとの間で送受信する際の波長が切り替えられる。
【0021】
また、この例では、帯域割当周期T2の間に波長切替指示が発生し、帯域割当周期T8で導通が再開されている。すなわち、この場合、波長切替指示が発生してから、ONUにおいて波長の切り替えが完了して導通が再開されるまでの波長切替時間は、帯域割当周期のおよそ6周期分の時間となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】特開2011-55407号公報
【非特許文献】
【0023】
【文献】IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)std 802.3av-2009
【文献】ITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)勧告G.989.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ところで、トラフィック変動の大きい多様なサービスに対しては、迅速かつダイナミックに通信リソースの割当制御を行うために、サブミリ秒オーダーといった短時間での波長の切り替えが要求される。しかしながら、非特許文献2に記載の波長切替手順では、ONUの波長を切り替える際に、帯域割当周期のおよそ6周期分の時間を要する。そのため、迅速な通信リソースの割当制御を実施する場合、この波長切替手順では、波長切替指示が発生してからONUで波長の切り替えが完了するまでに時間を要してしまう。
【0025】
そこで、上記の課題を解決するために、波長切替指示が発生してから切替先での導通再開までの波長切替時間を低減することができる光通信システムおよび光通信システムの波長切替方法望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係る光通信システムは、局側装置と複数の加入者側装置とが接続され、前記加入者側装置から前記局側装置に対する上り信号と、前記局側装置から前記加入者側装置に対する下り信号とを送受信する光通信システムであって、前記上り信号および前記下り信号の送受信の際に用いられる前記加入者側装置の上下波長を切り替える波長切替指示が発生すると、前記波長切替指示に基づき前記上下波長を切り替えるための波長切替要求信号を生成する波長切替要求信号生成部と、それぞれの前記加入者側装置に対して固有の送信帯域を設定する専用帯域制御信号、および、すべての前記加入者側装置に対して共通する送信帯域を設定する共用帯域制御信号を生成する帯域制御信号生成部と、前記波長切替指示が発生すると、前記波長切替要求信号、前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を含む前記下り信号を前記加入者側装置へ送信する送信部とをそれぞれ有する複数の終端装置を備える局側装置と、前記局側装置から送信される前記下り信号から前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を抽出し、前記下り信号に前記波長切替要求信号が含まれているならば、前記波長切替要求信号をさらに抽出する下り信号受信部と、前記専用帯域制御信号を保存する専用帯域制御信号保存部と、前記共用帯域制御信号を保存する共用帯域制御信号保存部と、自装置の波長の切替および波長状態を管理する切替制御部と、前記専用帯域制御信号保存部および前記共用帯域制御信号保存部にそれぞれ保存された前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号のいずれか一方に基づき、前記上り信号を生成して送信する送信制御部とをそれぞれ備える複数の加入者側装置とで構成され、前記切替制御部は、前記下り信号から前記波長切替要求信号が抽出されたならば、前記波長切替要求信号に基づき前記上下波長を切り替えるとともに、前記波長状態を通常状態から波長切替状態に変更し、前記専用帯域制御信号保存部に保存された前記専用帯域制御信号をクリアし、前記送信制御部は、前記波長状態が前記波長切替状態であるときに、前記上り信号を送信するならば、前記共用帯域制御信号保存部に保存された前記共用帯域制御信号に基づき、前記上り信号を生成して送信するものである。
【0029】
本発明に係る光通信システムの波長切替方法は、局側装置と複数の加入者側装置とが接続され、前記加入者側装置から前記局側装置に対する上り信号と、前記局側装置から前記加入者側装置に対する下り信号とを送受信する光通信システムの波長切替方法であって、前記上り信号および前記下り信号の送受信の際に用いられる前記加入者側装置の上下波長を切り替える波長切替指示が発生すると、前記波長切替指示に基づき前記上下波長を切り替えるための波長切替要求信号を生成する波長切替要求信号生成ステップと、それぞれの前記加入者側装置に対して固有の送信帯域を設定する専用帯域制御信号、および、すべての前記加入者側装置に対して共通する送信帯域を設定する共用帯域制御信号を生成する帯域制御信号生成ステップと、前記波長切替指示が発生すると、前記波長切替要求信号、前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を含む前記下り信号を前記局側装置から前記加入者側装置へ送信する制御信号送信ステップと、前記局側装置から送信される前記下り信号から前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号を抽出し、前記制御信号に前記波長切替要求信号が含まれているならば、前記波長切替要求信号をさらに抽出する制御信号受信ステップと、前記専用帯域制御信号を専用帯域制御信号保存部に保存する専用帯域制御信号保存ステップと、前記共用帯域制御信号を共用帯域制御信号保存部に保存する共用帯域制御信号保存ステップと、自装置の波長の切替および波長状態を管理する切替制御信号受信ステップと、前記専用帯域制御信号保存部および前記共用帯域制御信号保存部にそれぞれ保存された前記専用帯域制御信号および前記共用帯域制御信号のいずれか一方に基づき、前記上り信号を生成して送信する送信制御ステップとを備え、前記切替制御信号受信ステップは、前記下り信号から前記波長切替要求信号が抽出されたならば、前記波長切替要求信号に基づき前記上下波長を切り替えるとともに、前記波長状態を通常状態から波長切替状態に変更し、前記専用帯域制御信号保存部に保存された前記専用帯域制御信号をクリアし、前記送信制御ステップは、前記波長状態が前記波長切替状態であるときに、前記上り信号を送信するならば、前記共用帯域制御信号保存部に保存された前記共用帯域制御信号に基づき、前記上り信号を生成して送信するものである。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、波長状態が波長切替状態であるときで、上り信号を送信する場合に、上り信号は、共用帯域制御信号に基づいて局側装置の切替先の終端装置に送信される。そのため、波長切替指示が発生してから切替先での導通再開までの波長切替時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施の形態1に係る光通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1のOLTの構成の一例を示すブロック図である。
図3図1のONUの構成の一例を示すブロック図である。
図4図2のOLTによる下り信号の送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図3のONUによる下り信号の受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図3のONUによる上り信号の送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係る光通信システムにおける波長切替手順について説明するためのタイミングチャートである。
図8】実施の形態1に係る光通信システムにおける波長切替手順について説明するためのタイミングチャートである。
図9】従来のTWDM-PONにおける波長切替手順について説明するためのタイミングチャートである。
図10】従来のTWDM-PONにおける波長切替手順について説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る光通信システムについて説明する。本実施の形態1に係る光通信システムは、例えばTWDM-PONであり、局側に設置された局側装置と、複数の加入者側それぞれに設置された複数の加入者側装置との間で光通信を行うものである。
【0035】
[光通信システム100の構成]
図1は、本実施の形態1に係る光通信システム100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、光通信システム100は、局側装置であるOLT1と、加入者側装置である複数のONU2、2、・・・、2(mは2以上の整数)と、光スプリッタ3とで構成されている。OLT1と複数のONU2、2、・・・、2とは、光スプリッタ3を介して光ファイバを用いて接続されている。
【0036】
また、OLT1は、SNI(Service Node Interface)を介して図示しない上位ネットワークに接続されている。ONU2、2、・・・、2は、UNI(User Network Interface)を介して図示しないPC(Personal Computer)等のユーザ端末に接続されている。なお、以下では、ONU2、2、・・・、2からOLT1に向かう信号を「上り信号」と称し、OLT1からONU2、2、・・・、2に向かう信号を「下り信号」と称して説明する。
【0037】
光通信システム100では、OLT1とONU2、2、・・・、2との間で上り信号と下り信号とが送受信される。上り信号および下り信号には、それぞれデータ信号と制御信号とが含まれている。データ信号は、OLT1に接続された上位ネットワークと、ONU2、2、・・・、2に接続されたユーザ端末との間で送受信される信号である。制御信号は、PONリンクを確立させるために用いられる信号である。なお、以下の説明において、ONU2、2、・・・、2を区別する必要がない場合には、単に「ONU2」と称する。
【0038】
(OLT1)
OLT1は、通信事業者等の局側に設置される局側装置であり、ONU2、2、・・・、2から伝送された上り信号を、SNIを介して上位ネットワークへ転送する。また、OLT1は、上位ネットワークから伝送された下り信号をONU2、2、・・・、2へ転送する。さらに、OLT1は、ONU2、2、・・・、2に対する帯域割当および各ONU2、2、・・・、2の波長切替等の通信制御を行う。
【0039】
図2は、図1のOLT1の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、OLT1は、複数のOSU10、10、・・・、10(nは2以上の整数)と、複数の光送受信器11、11、・・・、11と、OLT制御部12とを備えている。複数のOSU10、10、・・・、10と複数の光送受信器11、11、・・・、11とは、それぞれが1対1で接続されている。なお、以下の説明において、OSU10、10、・・・、10を特に区別する必要がない場合には、単に「OSU10」と称する。また、光送受信器11、11、・・・、11についても同様に、特に区別する必要がない場合には、単に「光送受信器11」と称する。
【0040】
複数の光送受信器11、11、・・・、11のそれぞれは、光スプリッタ3を介して複数のONU2、2、・・・、2と接続されている。複数の光送受信器11、11、・・・、11のそれぞれは、ONU2、2、・・・、2から受信した上り信号を光信号から電気信号に変換し、上り信号受信部110に供給する。また、複数の光送受信器11、11、・・・、11は、制御信号送信部113から受け取った下り信号を電気信号から光信号に変換し、ONU2、2、・・・、2に対して送信する。
【0041】
複数の光送受信器11、11、・・・、11のそれぞれには、互いに異なる固有の波長λ、λ、・・・、λが固定的に割り当てられている。なお、以下では、光送受信器11、11、・・・、11のそれぞれに割り当てられた波長のうち、上り信号の波長を上り波長λu1、λu2、・・・、λunとし、下り信号の波長を下り波長λd1、λd2、・・・、λdnとして説明する。
【0042】
複数のOSU10、10、・・・、10は終端装置であり、それぞれ、上り信号受信部110、波長切替要求信号生成部111、帯域制御信号生成部112および制御信号送信部113を有している。
【0043】
上り信号受信部110は、光送受信器11から出力される上り信号を受け取り、受け取った上り信号に含まれる切替制御信号を選択して波長切替要求信号生成部111に出力する。また、上り信号受信部110は、光送受信器11から受け取った上り信号に含まれるデータ信号をSNIへ出力する。
【0044】
波長切替要求信号生成部111は、OLT制御部12からの指示に基づき、ONU2、2、・・・、2の上下波長の切り替えを制御する。具体的には、波長切替要求信号生成部111は、OLT制御部12からの指示によって波長の切り替えが発生した場合に、波長切替要求信号を生成し、切り替え対象となるONU2に対して送信する。波長切替要求信号は、ONU2に対して上下波長の切り替えを要求するための信号である。波長切替要求信号には、波長切替を行う際の波長を示す切替先波長情報と、波長を切り替えるタイミングを示す切替タイミング情報とが含まれている。
【0045】
帯域制御信号生成部112は、当該OSU10に接続されるONU2に関する上り信号の送信帯域を管理し、帯域制御信号群を生成する。帯域制御信号群は、複数の帯域制御信号をまとめた信号であり、帯域制御信号は、ONU2の上り信号の送信帯域を制御するための信号である。帯域制御信号には、ONU2が上り信号を送信する際の送信開始時刻と、上り信号の送信許可量とを示す情報が含まれている。
【0046】
本実施の形態1では、帯域制御信号として、専用帯域制御信号および共用帯域制御信号が設定される。専用帯域制御信号は、それぞれのONU2、2、・・・、2に固有であり、他のOSU10には依存しない専用帯域を設定するための信号である。共用帯域制御信号は、帯域割当周期毎に、すべてのOSU10、10、・・・、10に共通してタイミングを合わせて割り当てられる共用帯域を設定するための信号である。帯域制御信号生成部112は、これらの専用帯域制御信号と共用帯域制御信号とをまとめた帯域制御信号群を生成する。帯域制御信号群は、予め設定された帯域割当周期毎にONU2、2、・・・、2に対して通知される。
【0047】
制御信号送信部113は、波長切替要求信号生成部111で生成された波長切替要求信号と、帯域制御信号生成部112で生成された帯域制御信号群とを多重して制御信号を生成する。そして、制御信号送信部113は、生成した制御信号と、SNIから供給されるデータ信号とからなる下り信号を、光送受信器11を介してONU2、2、・・・、2に送信する。
【0048】
なお、OSU10は、図示しない記憶部に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)、プロセッサまたはマイクロコンピュータで構成される。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリなどの不揮発性または揮発性のメモリである。
【0049】
OSU10の上り信号受信部110、波長切替要求信号生成部111、帯域制御信号生成部112および制御信号送信部113は、OSU10が波長切替アルゴリズムなどのプログラムを実行することによって実現される機能部である。なお、OSU10は、これに限られず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などを用いた専用のハードウェアで構成し、各機能部を個別のハードウェアまたは一つのハードウェアで実現してもよい。
【0050】
OLT制御部12は、OLT1全体と、OLT1に搭載されたOSU10、10、・・・、10を制御する。例えば、OLT制御部12は、ONU2の波長切替時に、切替元のOSU2と切替先のOSU2とに対して、切替対象となるONU2、切替元波長および切替先波長の情報を通知し、波長切替処理を実行する。
【0051】
なお、OSU10は、光送受信器11と1対1で接続されているので、上下波長は、宛先のONU2が登録されたOSU10で定まる。したがって、以下の説明では、「あるOSU10に接続されている光送受信器11に割り当てられた波長」のことを、「OSU10に割り当てられた波長」と表現する場合がある。
【0052】
(ONU2)
図1のONU2、2、・・・、2は、加入者の宅内に設置される加入者側装置であり、ONU2、2、・・・、2は、OLT1から伝送された下り信号を、UNIを介してユーザ端末へ転送する。また、ONU2、2、・・・、2は、ユーザ端末から伝送された上り信号をOLT1へ転送する。
【0053】
図3は、図1のONU2、2、・・・、2の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、ONU2、2、・・・、2は、光送受信器21、下り信号受信部22、専用帯域制御信号保存部23、共用帯域制御信号保存部24、切替制御部25、バッファ部26および送信制御部27を有している。
【0054】
光送受信器21は、OLT1から受信した下り信号を光信号から電気信号に変換し、下り信号受信部22に供給する。また、光送受信器21は、送信制御部27から受け取った上り信号を電気信号から光信号に変換し、OLT1に対して送信する。光送受信器21の送信波長および受信波長は可変であり、登録されたOSU2に割り当てられた波長の信号を送受信できるように設定される。
【0055】
下り信号受信部22は、光送受信器21から供給された下り信号から自装置に対応する制御信号を受け取る。そして、下り信号受信部22は、受信した制御信号に含まれる帯域制御信号群から専用帯域制御信号および共用帯域制御信号を抽出する。また、下り信号受信部22は、受信した制御信号に波長切替要求信号が含まれている場合に、この波長切替要求信号を抽出する。
【0056】
下り信号受信部22は、抽出した専用帯域制御信号を専用帯域制御信号保存部23へ出力し、共用帯域制御信号を共用帯域制御信号保存部24へ出力する。また、下り信号受信部22は、抽出した波長切替要求信号を切替制御部25へ出力する。
【0057】
専用帯域制御信号保存部23は、FIFO(First In First Out)の記憶装置であり、下り信号受信部22から受け取った専用帯域制御信号を順番に記憶する。また、専用帯域制御信号保存部23は、送信制御部27の要求に基づき、下り信号受信部22から受け取って記憶された専用帯域制御信号を順番に出力する。
【0058】
共用帯域制御信号保存部24は、FIFOの記憶装置であり、下り信号受信部22から受け取った共用帯域制御信号を順番に記憶する。また、共用帯域制御信号保存部24は、送信制御部27の要求に基づき、下り信号受信部22から受け取って記憶された共用帯域制御信号を順番に出力する。
【0059】
上述した専用帯域制御信号保存部23および共用帯域制御信号保存部24は、それぞれがフラッシュメモリ等の個別の記憶装置で構成されてもよいし、1つの記憶装置の記憶領域をそれぞれに分割して構成されてもよい。
【0060】
切替制御部25は、下り信号受信部22で受け取った制御信号に含まれる、OSU10から送信された波長切替要求信号を受け取り、受け取った波長切替要求信号に基づき、光送受信器21の波長切替およびONU2の波長状態といった波長管理を行う。具体的には、切替制御部25は、OSU10から受信した波長切替要求信号に含まれる切替タイミング情報が示すタイミングで、光送受信器21の波長を切替先波長情報が示す波長に設定する。また、切替制御部25は、ONU2の波長状態(以下、「ONU状態」と称する)を「通常状態」または「波長切替状態」に設定する。
【0061】
バッファ部26は、UNIから入力されるデータ信号を蓄積する。蓄積されたデータ信号は、送信制御部27の指示に基づいて読み出される。
【0062】
送信制御部27は、OLT1に対して送信する上り信号を生成する。具体的には、送信制御部27は、専用帯域制御信号保存部23および共用帯域制御信号保存部24から順番に帯域制御信号を読み出す。そして、送信制御部27は、専用帯域制御信号または共用帯域制御信号に含まれる送信許可量に従って、バッファ部26からデータ信号を取り出し、制御信号およびデータ信号を含む上り信号を生成する。また、送信制御部27は、専用帯域制御信号または共用帯域制御信号に含まれる送信開始時刻に、生成した上り信号を出力する。
【0063】
なお、ONU2は、図示しない記憶部に格納されるプログラムを実行するCPU、プロセッサまたはマイクロコンピュータで構成される。記憶部は、RAM、ROMまたはフラッシュメモリなどの不揮発性または揮発性のメモリである。
【0064】
ONU2の光送受信器21、下り信号受信部22、専用帯域制御信号保存部23、共用帯域制御信号保存部24、切替制御部25、バッファ部26および送信制御部27は、ONU2が波長切替アルゴリズムなどのプログラムを実行することによって実現される機能部である。なお、ONU2は、これに限られず、ASICまたはFPGAなどを用いた専用のハードウェアで構成し、各機能部を個別のハードウェアまたは一つのハードウェアで実現してもよい。
【0065】
図1の光スプリッタ3は、光受動素子であり、OLT1から伝送された下り信号を各ONU2、2、・・・、2に分配する。また、光スプリッタ3は、各ONU2、2、・・・、2から伝送された上り信号を合成して、OLT1に伝送する。
【0066】
[光通信システム100の動作]
上記構成を有する光通信システム100の動作について説明する。ここでは、TWDM-PONである光通信システム100におけるOLT1の下り信号送信処理と、ONU2の下り信号受信処理および上り信号送信処理のそれぞれについて、フローチャートを参照して説明する。
【0067】
(OLT1の下り信号送信処理)
図4は、図2のOLT1による下り信号の送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS1において、OLT1におけるOSU10の波長切替要求信号生成部111は、OLT制御部12による波長切替指示が発生したか否かを判断する。波長切替指示が発生したと判断された場合(ステップS1;Yes)、ステップS2において、波長切替要求信号生成部111は、波長切替要求信号を生成する。
【0068】
また、波長切替指示が発生していないと判断された場合(ステップS1;No)には、処理がステップS3に移行する。ステップS3において、帯域制御信号生成部112は、専用帯域制御信号および共用帯域制御信号からなる帯域制御信号群を生成する。
【0069】
ステップS4において、制御信号送信部113は、ステップS3で生成された帯域制御信号群と、ステップS2で波長切替要求信号が生成された場合にはこの波長切替要求信号とを多重して制御信号を生成する。そして、制御信号送信部113は、生成した制御信号と、SNIから供給されるデータ信号とからなる下り信号を生成する。光送受信器11は、自装置に固定的に割り当てられた下り波長を用いて、生成された下り信号を、光スプリッタ3を介して宛先のONU2に送信する。
【0070】
このように、OLT1による下り信号の送信処理では、ONU2に対する波長切替が指示された場合に、制御信号に波長切替要求信号が含められて下り信号がONU2に送信される。
【0071】
(ONU2の下り信号受信処理)
図5は、図3のONU2による下り信号の受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS11において、OLT1から送信された下り信号がONU2によって受信されると、ONU2の光送受信器21は、受信した下り信号を光信号から電気信号に変換し、下り信号受信部22に供給する。
【0072】
ステップS12において、下り信号受信部22は、受け取った下り信号から帯域制御信号群を抽出する。また、下り信号受信部22は、抽出した帯域制御信号群の中から、専用帯域制御信号および共用帯域制御信号を抽出する。
【0073】
ステップS13において、切替制御部25は、ONU状態が「通常状態」であるか否かを判断する。ONU状態が「通常状態」であると判断された場合(ステップS13;Yes)、ステップS14において、下り信号受信部22は、ステップS12で抽出した専用帯域制御信号を専用帯域制御信号保存部23に保存する。また、下り信号受信部22は、抽出した共用帯域制御信号を共用帯域制御信号保存部24に保存する。
【0074】
ステップS15において、下り信号受信部22は、下り信号の制御信号に含まれる波長切替要求信号を受信したか否かを判断する。波長切替要求信号を受信したと判断された場合(ステップS15;Yes)には、処理がステップS16に移行する。また、波長切替要求信号を受信していないと判断された場合(ステップS15;No)には、一連の処理が終了する。
【0075】
ステップS16において、切替制御部25は、受信した波長切替要求信号に含まれる切替タイミング情報が示すタイミングで、光送受信器21の上下波長を、波長切替要求信号に含まれる切替先波長情報が示す上下波長に変更する。ステップS17において、切替制御部25は、専用帯域制御信号保存部23に保存されている専用帯域制御信号をすべてクリアする。また、ステップS18において、切替制御部25は、ONU状態を「通常状態」から「波長切替状態」に変更する。
【0076】
一方、ステップS13において、ONU状態が「通常状態」でない、すなわち「波長切替状態」であると判断された場合(ステップS13;No)には、処理がステップS19に移行する。ステップS19において、下り信号受信部22は、帯域制御信号群の中から抽出した専用帯域制御信号を専用帯域制御信号保存部23に保存する。一方で、下り信号受信部22は、抽出した共用帯域制御信号を共用帯域制御信号保存部24に保存せずに破棄する。
【0077】
(ONU2の上り信号送信処理)
図6は、図3のONU2による上り信号の送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS21において、送信制御部27は、専用帯域制御信号保存部23に保存された専用帯域制御信号、あるいは、共用帯域制御信号保存部24に保存された共用帯域制御信号に基づき、上り信号の送信開始時刻であるか否かを判断する。
【0078】
上り信号の送信開始時刻であると判断された場合(ステップS21;Yes)には、処理がステップS22に移行する。また、上り信号の送信開始時刻でないと判断された場合(ステップS21;No)には、一連の処理が終了する。
【0079】
ステップS22において、切替制御部25は、ONU状態が「通常状態」であるか否かを判断する。ONU状態が「通常状態」であると判断された場合(ステップS22;Yes)、送信制御部27は、ステップS23において、専用帯域制御信号保存部23から専用帯域制御信号を読み出す。そして、送信制御部27は、読み出した専用帯域制御信号に含まれる送信許可量が示す量のデータ信号をバッファ部26から取り出し、制御信号とともに上り信号を生成して出力する。
【0080】
ステップS24において、送信制御部27は、専用帯域制御信号および共用帯域制御信号を破棄する。そして、処理がステップS31に移行する。
【0081】
一方、ステップS22において、ONU状態が「通常状態」でない、すなわち「波長切替状態」であると判断された場合(ステップS22;No)には、処理がステップS25に移行する。ステップS25において、送信制御部27は、ステップS21で判断された送信開始時刻が共用帯域制御信号によるものであるか否かを判断する。
【0082】
送信開始時刻が共用帯域制御信号によるものであると判断された場合(ステップS25;Yes)、送信制御部27は、ステップS26において、共用帯域制御信号保存部24から共用帯域制御信号を読み出す。そして、送信制御部27は、読み出した共用帯域制御信号に含まれる送信許可量が示す量のデータ信号をバッファ部26から取り出し、制御信号とともに上り信号を生成して出力する。
【0083】
ステップS27において、送信制御部27は、読み出した共用帯域制御信号を破棄する。そして、処理がステップS31に移行する。
【0084】
また、ステップS25において、送信開始時刻が専用帯域制御信号によるものであると判断された場合(ステップS25;No)、送信制御部27は、ステップS28において、専用帯域制御信号保存部23から専用帯域制御信号を読み出す。そして、送信制御部27は、読み出した専用帯域制御信号に含まれる送信許可量が示す量のデータ信号をバッファ部26から取り出し、制御信号とともに上り信号を生成して出力する。ステップS29において、送信制御部27は、読み出した専用帯域制御信号を破棄する。
【0085】
ステップS30において、切替制御部25は、ONU状態を「波長切替状態」から「通常状態」に変更する。そして、処理がステップS31に移行する。
【0086】
ステップS31において、光送受信器21は、送信制御部27で生成された上り信号を電気信号から光信号に変換し、当該光送受信器21に割り当てられた上り波長を用いて、光スプリッタ3を介してOLT1に対して送信する。なお、ONU2から光スプリッタ3を介して送信された上り信号がOLT1によって受信されると、OLT1では、当該上り信号の波長が設定されたOSU10に上り信号が供給される。
【0087】
(信号の送受信例)
次に、OLT1とONU2との間で行われる信号のやりとりについて、具体例を用いて説明する。図7および図8は、本実施の形態1に係る光通信システム100における波長切替手順について説明するためのタイミングチャートである。図7は、帯域割当周期T1から帯域割当周期T4までの信号の送受信の様子を示し、図8は、帯域割当周期T5から帯域割当周期T8までの信号の送受信の様子を示している。
【0088】
なお、図7および図8に示す例は、あるONU2であるONU#1の接続が、下り波長λd1および上り波長λu1で動作しているOSU#1から、下り波長λd2および上り波長λu2で動作しているOSU#2に切り替えられる場合を示す。また、図7および図8には、ONU状態が「通常状態」から「波長切替状態」に遷移し、また、「波長切替状態」から「通常状態」に遷移する際のタイミングが示されている。さらに、この例では、信号の送受信を行った際の専用帯域制御信号保存部23および共用帯域制御信号保存部24の状態が示されている。
【0089】
図7および図8に示すように、帯域割当周期T1において、ONU#1がOSU#1に接続されている。このとき、OSU#1は、図示しない専用帯域制御信号P11および共用帯域制御信号C11を含む帯域制御信号群B11を送信する。ONU#1は、OSU#1から送信された帯域制御信号群B11を受信する。
【0090】
ONU#1は、受信した帯域制御信号群B11の中から、専用帯域制御信号P11および共用帯域制御信号C11を抽出する。そして、ONU#1は、専用帯域制御信号P11を専用帯域制御信号保存部23に記憶し、共用帯域制御信号C11を共用帯域制御信号保存部24に記憶する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS01に示す状態となる。
【0091】
帯域割当周期T2において、OSU#1は、図示しない専用帯域制御信号P12および共用帯域制御信号C12を含む帯域制御信号群B12を送信する。ONU#1は、受信した帯域制御信号群B12の中から、専用帯域制御信号P12および共用帯域制御信号C12を抽出する。そして、ONU#1は、専用帯域制御信号P12を専用帯域制御信号保存部23に記憶し、共用帯域制御信号C12を共用帯域制御信号保存部24に記憶する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS02に示す状態となる。
【0092】
送信制御部27は、専用帯域制御信号保存部23の先頭にある専用帯域制御信号P11で指定された送信開始時刻になると、上り信号を出力するとともに、専用帯域制御信号P11を破棄する。一方、このときのONU状態が「通常状態」であるため、送信制御部27は、共用帯域制御信号保存部24の先頭にある共用帯域制御信号C11で指定された送信開始時刻には上り出力を行わず、共用帯域制御信号C11を破棄する。この例では、OSU#1は、p11のタイミングでONU#1からの上り信号を受信する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS03に示す状態となる。
【0093】
帯域割当周期T3において、OSU#1は、図示しない専用帯域制御信号P13および共用帯域制御信号C13を含む帯域制御信号群B13を送信する。ONU#1は、受信した帯域制御信号群B13の中から、専用帯域制御信号P13および共用帯域制御信号C13を抽出する。そして、ONU#1は、専用帯域制御信号P13を専用帯域制御信号保存部23に記憶し、共用帯域制御信号C13を共用帯域制御信号保存部24に記憶する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS04に示す状態となる。
【0094】
送信制御部27は、専用帯域制御信号保存部23の先頭にある専用帯域制御信号P12で指定された送信開始時刻になると、上り信号を出力するとともに、専用帯域制御信号P12を破棄する。一方、このときのONU状態が「通常状態」であるため、送信制御部27は、共用帯域制御信号保存部24の先頭にある共用帯域制御信号C12で指定された送信開始時刻には上り出力を行わず、共用帯域制御信号C12を破棄する。この例では、OSU#1は、p12のタイミングでONU#1からの上り信号を受信する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS05に示す状態となる。
【0095】
ここで、帯域割当周期T3において、OSU#1からOSU#2への波長切替指示が発生した場合、OSU#1は、帯域割当周期T4において、図示しない専用帯域制御信号P14および共用帯域制御信号C14を含む帯域制御信号群B14を送信する。また、OSU#1は、ONU#1宛てに切替先波長情報を含む波長切替要求信号S1を送信する。
【0096】
ONU#1は、受信した帯域制御信号群B14の中から、専用帯域制御信号P14および共用帯域制御信号C14を抽出する。そして、ONU#1は、専用帯域制御信号P14を専用帯域制御信号保存部23に記憶し、共用帯域制御信号C14を共用帯域制御信号保存部24に記憶する。また、ONU#1は、受信した波長切替要求信号S1に含まれる切替先波長情報に基づき、上下波長をλからλに切り替えるとともに、専用帯域制御信号保存部23に保存されている信号をすべてクリアする。これは、上下波長を切り替えた際に専用帯域制御信号保存部23に保存されている専用帯域制御信号を使用して上り信号を送信すると、切替先のOSU#2にて、他のONUの上り信号と衝突が発生する虞があるためである。そして、切替制御部25は、この時点でのONU状態を「波長切替状態」に変更する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS06に示す状態となる。
【0097】
送信制御部27は、共用帯域制御信号保存部24の先頭にある共用帯域制御信号C13で指定された送信開始時刻になると、上り信号を出力するとともに、共用帯域制御信号C13を破棄する。この例では、OSU#2は、c23のタイミングでONU#1からの上り信号を受信する。なお、この場合には、OSU#1から受信した共用帯域制御信号C13を使用してOSU#2に上り信号が送信されることになるが、共用帯域の割当は、OSU#1とOSU#2とで同一のタイミングとなるように行われている。そのため、OSU#2に接続される他OSU2の上り信号との競合は発生しない。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS07に示す状態となる。
【0098】
帯域割当周期T5において、OSU#2は、図示しない専用帯域制御信号P25および共用帯域制御信号C25を含む帯域制御信号群B25を送信する。ONU#1は、受信した帯域制御信号群B25の中から専用帯域制御信号P25を抽出し、専用帯域制御信号保存部23に記憶する。一方、このときのONU状態が「波長切替状態」であるため、ONU#1は、帯域制御信号群B25に含まれている共用帯域制御信号C25を破棄する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS08に示す状態となる。
【0099】
送信制御部27は、共用帯域制御信号保存部24の先頭にある共用帯域制御信号C14で指定された送信開始時刻になると、上り信号を出力するとともに、共用帯域制御信号C14を破棄する。この例では、OSU#2は、c24のタイミングでONU#1からの上り信号を受信する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS09に示す状態となる。
【0100】
帯域割当周期T6において、OSU#2は、図示しない専用帯域制御信号P26および共用帯域制御信号C26を含む帯域制御信号群B26を送信する。ONU#1は、受信した帯域制御信号群B26の中から専用帯域制御信号P26を抽出し、専用帯域制御信号保存部23に記憶する。一方、このときのONU状態が「波長切替状態」であるため、ONU#1は、帯域制御信号群に含まれている共用帯域制御信号C26は破棄する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS10に示す状態となる。
【0101】
送信制御部27は、専用帯域制御信号保存部23の先頭にある専用帯域制御信号P25で指定された送信開始時刻になると、上り信号を出力するとともに、専用帯域制御信号P25を破棄する。また、切替制御部25は、この時点でのONU状態を「通常状態」に変更する。この例では、OSU#2は、p25のタイミングにてONU#1からの上り信号を受信する。このときのONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS11に示す状態となる。
【0102】
帯域割当周期T7において、OSU#2は、図示しない専用帯域制御信号P27および共用帯域制御信号C27を含む帯域制御信号群B27を送信する。ONU#1は、受信した帯域制御信号群B27の中から、専用帯域制御信号P27および共用帯域制御信号C27を抽出する。そして、ONU#1は、専用帯域制御信号P27を専用帯域制御信号保存部23に記憶し、共用帯域制御信号C27を共用帯域制御信号保存部24に記憶する。このときONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS12に示す状態となる。
【0103】
送信制御部27は、専用帯域制御信号保存部23の先頭にある専用帯域制御信号P26で指定された送信開始時刻になると、上り信号を出力するとともに、専用帯域制御信号P26を破棄する。この例では、OSU#2は、p26のタイミングでONU#1からの上り信号を受信する。このときONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS13に示す状態となる。
【0104】
帯域割当周期T8において、OSU#2は、図示しない専用帯域制御信号P28および共用帯域制御信号C28を含む帯域制御信号群B28を送信する。ONU#1は、受信した帯域制御信号群B28の中から、専用帯域制御信号P28および共用帯域制御信号C28を抽出する。そして、ONU#1は、専用帯域制御信号P28を専用帯域制御信号保存部23に記憶し、共用帯域制御信号C28を共用帯域制御信号保存部24に記憶する。このときONU#1の帯域制御信号保持状態は、SS14に示す状態となる。
【0105】
このように、本実施の形態1に係る光通信システム100では、波長切替指示を受けた場合に、OLT1とONU2との間では、波長の切り替えに際して、OLT1からの「波長切替要求」のみで、ONU2の波長が切り替えられる。そのため、本実施の形態1では、波長を切り替える際のシーケンスを従来よりも簡略化することができる。
【0106】
また、この例では、帯域割当周期T2の間に波長切替指示が発生し、帯域割当周期T5で導通が再開されている。すなわち、この場合、波長切替指示が発生してから、ONU2において波長の切り替えが完了して導通が再開されるまでの波長切替時間は、帯域割当周期のおよそ2周期分の時間となる。したがって、本実施の形態1に係る光通信システム100では、従来の光通信システムと比較して、波長切替指示が発生してから切替先での導通再開までの波長切替時間を低減することができる。
【0107】
以上のように、本実施の形態1では、制御信号から波長切替要求信号が抽出された場合に、切替制御部25は、波長切替要求信号に基づき上下波長を切り替えるとともに、波長状態を通常状態から波長切替状態に変更する。また、切替制御部25は、専用帯域制御信号保存部23に保存された専用帯域制御信号をクリアする。
一方、波長状態が波長切替状態であるときで、上り信号を送信する場合に、送信制御部27は、共用帯域制御信号保存部24に保存された共用帯域制御信号に基づき、上り信号を生成して送信する。
【0108】
これにより、波長状態が波長切替状態に変更された場合でも、共用帯域制御信号を使用して上り信号が波長切替先のOSU10に送信される。したがって、波長状態が波長切替状態に変更された後の上り信号送信タイミングの際には、切替先の波長に対応するOSU10に上り信号を送信することができるため、切替指示が発生してから切替先での導通再開までの波長切替時間を低減することができる。
【0109】
また、本実施の形態1に係る光通信システム100において、ONU2から上り信号を送信する場合で、波長状態が通常状態であるとき、送信制御部27は、専用帯域制御信号保存部23に保存された専用帯域制御信号に基づき、上り信号を生成して送信する。これにより、ONU2に固有の帯域を使用して上り信号をOSU10に送信することができる。
【0110】
また、本実施の形態1に係る光通信システム100において、切替制御部25は、波長状態が波長切替状態であるときで、送信制御部27が専用帯域制御信号に基づいて上り信号を生成して送信した場合に、波長状態を波長切替状態から通常状態に変更する。これにより、ONU2に対応する波長を切替先の波長に変更することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 OLT、2、2、2、・・・、2 ONU、3 光スプリッタ、10、10、10、・・・、10 OSU、11、11、11、・・・、11 光送受信器、12 OLT制御部、21 光送受信器、22 下り信号受信部、23 専用帯域制御信号保存部、24 共用帯域制御信号保存部、25 切替制御部、26 バッファ部、27 送信制御部、100 光通信システム、110 上り信号受信部、111 波長切替要求信号生成部、112 帯域制御信号生成部、113 制御信号送信部。
図1
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図10