(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】媒体切断装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B26D 1/38 20060101AFI20221220BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B26D1/38 J
B41J11/70
B26D1/38 N
B26D1/38 U
B26D1/38 T
(21)【出願番号】P 2019033127
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】神沢 直樹
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03834963(US,A)
【文献】特開昭60-049350(JP,A)
【文献】特開昭58-207250(JP,A)
【文献】実開昭61-105355(JP,U)
【文献】特開平09-085682(JP,A)
【文献】特開2003-089247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/38
B41J 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が搬送される搬送路に対し前記媒体の紙面に直交する厚さ方向の一方向側に設けられた固定刃と、
前記搬送路に対し前記一方向側とは逆方向側に設けられ、回転方向へ回転することにより前記固定刃と刃先を交差させて、搬送される前記媒体を切断箇所において切断する回転刃と
、
前記切断箇所よりも前記媒体が搬送される搬送方向の上流側に設けられ、前記媒体を前記回転刃側へ付勢する案内部材と
を有
し、
前記案内部材は、前記厚さ方向と前記搬送方向とに直交する搬送幅方向における前記媒体の切断が開始される切断開始位置側に設けられると共に、前記搬送幅方向における長さが前記固定刃の前記搬送幅方向における長さの半分未満である
媒体切断装置。
【請求項2】
前記案内部材は、前記固定刃における前記搬送路側の先端よりも前記回転刃側へ突出する
請求項1に記載の媒体切断装置。
【請求項3】
前記案内部材は、前記固定刃と連動するよう設けられている
請求項1に記載の媒体切断装置。
【請求項4】
前記案内部材は、前記固定刃
が設けられた固定刃ユニットに固定されている
請求項3に記載の媒体切断装置。
【請求項5】
前記案内部材は、前記搬送路を搬送される、互いに異なる前記搬送幅方向の幅を有する複数種類の前記媒体における前記切断開始位置側の端部を含む範囲に亘って設けられる
請求項
1に記載の媒体切断装置。
【請求項6】
前記案内部材は、前記搬送幅方向に沿って連続的に形成される
請求項
5に記載の媒体切断装置。
【請求項7】
前記案内部材は、可撓性を有する弾性部材である
請求項1に記載の媒体切断装置。
【請求項8】
前記案内部材は、前記媒体の剛性に応じて変形する
請求項
7に記載の媒体切断装置。
【請求項9】
前記固定刃は、前記回転刃に向かって所定の付勢力で付勢されており、
前記案内部材は、前記付勢力よりも強い力で前記固定刃が前記回転刃から離れる厚さの前記媒体に当接すると、前記固定刃側へ変形する
請求項
8に記載の媒体切断装置。
【請求項10】
前記案内部材は、フィルムである
請求項
9に記載の媒体切断装置。
【請求項11】
前記固定刃は、前記搬送路に対し上側に設けられ、
前記回転刃は、前記搬送路に対し下側に設けられる
請求項1に記載の媒体切断装置。
【請求項12】
前記固定刃は、前記回転刃に対して前記搬送方向に傾斜して設けられ、
前記切断開始位置は、前記搬送幅方向における前記固定刃の端部のうち、前記搬送方向の上流側に位置づけられる
請求項1に記載の媒体切断装置。
【請求項13】
前記案内部材は、前記搬送幅方向における前記切断開始位置側を含む領域に設けられ、前記搬送幅方向における前記切断開始位置側とは反対側の切断終了位置側を含む領域には設けられない
請求項1に記載の媒体切断装置。
【請求項14】
前記固定刃は、前記搬送幅方向に延在する固定刃部フレームによって支持されており、
前記案内部材の前記搬送幅方向における長さは、前記固定刃部フレームの前記搬送幅方向における長さの半分未満である
請求項1に記載の媒体切断装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項1
4の何れかに記載の媒体切断装置
を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体切断装置及び画像形成装置に関し、例えば、電子写真方式のプリンタや複写機等の画像形成装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺のシート材が搬送される搬送路の上側に位置する固定刃と、該搬送路の下側に位置し回転する回転刃との刃先を交差させて、該シート材を搬送しつつ切断する媒体切断装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような媒体切断装置においては、
図12に示す用紙切断部106がある。用紙切断部106は、搬送路3Yの上側に位置する固定刃32bと、搬送路3Yの下側に位置する回転刃46bとを有し、搬送ローラ対5bにより用紙Pを搬送しつつ回転刃46bを回転刃回転方向Drへ回転させて、用紙Pを切断する。用紙切断部106においては、特に、厚さが薄い薄紙用紙Pnを搬送しつつ切断する際に、用紙切断中に切断箇所CPよりも薄紙用紙Pnの搬送方向上流側の部分における搬送方向下流側端部が下方向を向くように上側へ撓んだ場合、用紙切断終了時に薄紙用紙Pnの撓みが解放されると、
図13に示すように、回転刃46bよりも下側へ薄紙用紙Pnの先端が潜り込み、用紙が詰まるジャムが発生する可能性があった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、切断後に意図しない方向へ媒体が進行してしまうことを抑止し媒体を安定して搬送し得る媒体切断装置及び画像形成装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明の媒体切断装置においては、媒体が搬送される搬送路に対し媒体の紙面に直交する厚さ方向の一方向側に設けられた固定刃と、搬送路に対し一方向側とは逆方向側に設けられ、回転方向へ回転することにより固定刃と刃先を交差させて、搬送される媒体を切断箇所において切断する回転刃と、切断箇所よりも媒体が搬送される搬送方向の上流側に設けられ、媒体を回転刃側へ付勢する案内部材とを設け、案内部材は、厚さ方向と搬送方向とに直交する搬送幅方向における媒体の切断が開始される切断開始位置側に設けられると共に、搬送幅方向における長さが固定刃の搬送幅方向における長さの半分未満であるようにした。
【0007】
また本発明の画像形成装置においては、上述した媒体切断装置を設けるようにした。
【0008】
本発明は、媒体の切断後に、回転刃側への撓みを解消しようとする媒体の復元力により、切断箇所よりも搬送方向の上流側に位置する媒体における搬送方向の下流側の端部を固定刃側へ進行させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、媒体の切断後に、回転刃側への撓みを解消しようとする媒体の復元力により、切断箇所よりも搬送方向の上流側に位置する媒体における搬送方向の下流側の端部を固定刃側へ進行させることができる。かくして本発明は、切断後の媒体の撓みを抑止し媒体を安定して搬送し得る媒体切断装置及び画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】画像形成装置の外部構成を示す斜視図である。
【
図2】画像形成装置の内部構成を示す右側面図である。
【
図3】カバークローズ状態の固定刃ユニット及び回転刃ユニットの構成を示す平面図である。
【
図4】カバーオープン状態の固定刃ユニット及び回転刃ユニットの構成(1)を示す斜視図である。
【
図5】カバーオープン状態の固定刃ユニット及び回転刃ユニットの構成(2)を示す斜視図である。
【
図7】用紙切断部の構成を示す
図3におけるA-A矢視断面図である。
【
図8】薄紙用紙が搬送される様子(1)を示す
図3におけるA-A矢視断面図である。
【
図9】薄紙用紙が搬送される様子(2)を示す
図3におけるA-A矢視断面図である。
【
図10】薄紙用紙が搬送される様子(3)を示す
図3におけるA-A矢視断面図である。
【
図11】厚紙用紙が搬送される様子を示す
図3におけるA-A矢視断面図である。
【
図12】従来の用紙切断部において薄紙用紙が搬送される様子(1)を示す横断面図である。
【
図13】従来の用紙切断部において薄紙用紙が搬送される様子(2)を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0012】
[1.画像形成装置の構成]
図1及び
図2に示すように画像形成装置1は、電子写真方式のプリンタとして構成されており、例えば長尺の用紙に対し、所望のカラー画像を印刷する。画像形成装置1は、大きく分けて、印刷処理を行う本体部2と、本体部2の後側に設けられ用紙の搬送及び切断を行う搬送切断部3と、搬送切断部3の後側に設けられ用紙を供給する図示しないロールフィーダユニットとにより構成されている。説明の都合上、以下では、本体部2側を前側、搬送切断部3側を後側とし、
図2における紙面の手前側を右側、奥側を左側とし、さらに上側及び下側を定義した上で、説明する。用紙は、左右方向に沿った芯材(図示せず)の周側面を周回するように巻き付けられてロール状となっており、印刷時にその最外周から一端が引き剥がされ、後述する搬送路に沿って走行する。
【0013】
搬送切断部3には、前後方向に沿った搬送路3Yが形成されており、この搬送路3Yに沿って、後ろから前に向かって順に用紙ガイド4、搬送ローラ対5a及び用紙切断部6が設けられている。用紙ガイド4は、搬送路3Yを搬送される用紙の上面をガイドするガイド面が形成された上側用紙ガイド4uと、用紙の下面をガイドするガイド面が形成された下側用紙ガイド4dとにより構成されている。搬送ローラ対5a及び搬送ローラ対5bは、搬送路3Yを上下から挟むように配置された2本の搬送ローラにより構成されており、各搬送ローラを適宜回転させることにより、前方向を搬送方向として用紙を進行させる。以下では、用紙の紙面に対し直交する厚さ方向と、搬送方向とに直交する左右方向を、搬送幅方向とも呼ぶ。
【0014】
用紙切断部6は、固定された固定刃と回転する回転刃とにより構成され用紙を搬送しながら切断するロータリー式カッターユニットである。この用紙切断部6は、内部に用紙を切断する固定刃及び回転刃や用紙を搬送する搬送ローラ対等が組み込まれている。この用紙切断部6は、搬送方向に沿った所定の用紙長毎に用紙を裁断し、搬送ローラ対5bにより用紙を搬送路3Yに沿って搬送し、前方の本体部2内へ進行させ、搬送ローラ対5cに引き渡す。
【0015】
本体部2には、前後方向に沿った搬送路2Yが形成されている。搬送ローラ対5cは、搬送路2Yを上下から挟むように配置された2本の搬送ローラにより構成されており、各搬送ローラを適宜回転させることにより、搬送路2Yに沿って用紙を前方へ搬送する。本体部2は、直方体状に形成された本体部筐体7の内部における上寄りに、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、3つのプロセスユニット9が前後方向に沿って整列するように配置されている。各プロセスユニット9は、図示しない制御部の制御に基づいて所定の色のトナー画像を形成し、これらを転写ベルト10により搬送された用紙にそれぞれ転写する。転写ベルト10は、複数のベルトローラの間に張架されて走行し、搬送路2Yに沿って用紙を前方へ搬送し、定着器11に到達させる。
【0016】
定着器11は、搬送路2Yの下側及び上側にそれぞれ配置された各定着ローラをそれぞれ加熱すると共に回転させ、用紙に熱及び圧力を加えてトナー画像を定着させて、これを前方の搬送ローラ対5dに引き渡す。搬送ローラ対5dは、搬送路2Yを上下から挟むように配置された2本の搬送ローラにより構成されており、各搬送ローラを適宜回転させることにより、搬送路2Yに沿って用紙を前方へ搬送し、排出口から外部へ排出する。
【0017】
[2.用紙切断部の構成]
図4及び
図5に示すように用紙切断部6は、大きく分けて、主に搬送路3Y(
図2)の上側に配置された固定刃ユニット28と、主に搬送路3Y(
図2)の下側に配置された回転刃ユニット42とにより構成されている。固定刃ユニット28は、回転刃ユニット42に対し、
図3に示す開閉軸23を支点として
図4及び
図5に示すカバーオープン状態と
図3に示すカバークローズ状態との間を遷移するように回動可能となっている。
【0018】
用紙切断部6は、該用紙切断部6により切断動作が行われると共に本体部2により印刷動作が行われる場合には、搬送路3Yが外部に露出しないように開閉軸23(
図3)を支点として固定刃ユニット28が押し下げられ搬送路3Yが外部から閉鎖されることにより、用紙切断部6の内部を保護するカバークローズ状態となる。一方用紙切断部6は、用紙切断部6の内部に詰まったジャム用紙がユーザにより取り除かれる等の保守作業が行われる保守作業時の場合には、搬送路3Yが外部に露出するように開閉軸23(
図3)を支点として固定刃ユニット28が持ち上げられ搬送路3Yが外部に開放されることにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得るカバーオープン状態となる。
【0019】
[3.回転刃ユニットの構成]
図3、
図4及び
図5に示すように回転刃ユニット42は、回転刃ブラケット44及び回転刃部46により構成されている。回転刃ブラケット44は、板金により形成され、正面視で上方が開口する英大文字の「U」のような形状であり、回転刃軸支持部44R、回転刃軸支持部44L及び左右延在部44Cにより構成されている。回転刃軸支持部44Rは、固定刃32b(後述する)よりも右方向の外側において前後上下方向に延びる板状部材であり、
図6に示す回転刃部46の回転刃軸46aが回転可能に嵌め込まれる回転刃軸支持孔44hが穿設されている。回転刃軸支持部44Lは、固定刃32b(後述する)よりも左方向の外側において回転刃軸支持部44Rと左右方向に対向して前後上下方向に延びる板状部材であり、回転刃部46の回転刃軸46aが回転可能に嵌め込まれる回転刃軸支持孔44hが穿設されている。左右延在部44Cは、左右方向に延在し、回転刃軸支持部44Rと回転刃軸支持部44Lとに接続されている。
【0020】
回転刃部46(
図6及び
図7)は、回転刃軸46a及び回転刃46bにより構成されている。回転刃軸46aは、左右方向に沿って延在する略円柱形状であり、回転刃軸支持部44R及び回転刃軸支持部44Lの回転刃軸支持孔44hに
図8中反時計回りである回転刃回転方向Drへ回転可能に嵌め込まれている。回転刃46bは、回転刃軸46aにおける回転刃軸支持部44Rと回転刃軸支持部44Lとの間に設けられ、搬送幅方向に沿って刃先が螺旋状に形成されており、カッタ駆動ギヤ48から駆動力が伝達され回転することにより用紙を裁断する。
【0021】
回転刃軸支持部44R及び回転刃軸支持部44Lには、固定刃軸32a(後述する)が嵌まり込むよう側面視で上方が開口した嵌合溝50R及び嵌合溝50Lがそれぞれ形成されている。
【0022】
回転刃46b(
図7)の前側、下側及び後側には、搬送される用紙の下面側をガイドする上向きガイド56が、回転刃46bの回転軌跡としないように設けられている。
【0023】
[4.固定刃ユニットの構成]
図4及び
図5に示すように固定刃ユニット28は、固定刃板金30及び固定刃部32により構成されている。固定刃板金30は、主に固定刃板金本体部30m及び固定刃軸支持部30sにより構成されている。固定刃板金本体部30mは、左右方向に延設された板状の板金である。固定刃軸支持部30sは、固定刃板金本体部30mの左右方向の両端部から立設している。固定刃軸支持部30sには、固定刃部32の固定刃軸32aが嵌め込まれる固定刃軸支持孔30shが穿設されている。
【0024】
固定刃部32は、固定刃部フレーム32f、固定刃32b及び固定刃軸32aにより構成されている。固定刃部フレーム32fは、左右方向に延設された板金であり、左右両端部において、固定刃軸32aが挿入される固定刃軸孔32hが穿設されている。また固定刃部フレーム32fは、
図7に示すように下端部の横断面が英大文字の「L」のような形状であり、前端部がフレーム前端部32fb、下端部がフレーム下端部32fdとなっている。固定刃32bは、金属製であり、搬送幅方向に沿って延びており、固定刃部フレーム32fのフレーム前端部32fbに固定されている。この固定刃32bは、回転刃46bと当接する下端部である切断箇所CPを搬送路3Y上に位置させている。固定刃軸32aは、
図3に示すように、左右方向に対し、右端部が左端部よりも後方(すなわち搬送方向上流側)に位置するように傾斜して延在する円柱形状であり、固定刃部フレーム32f(
図4、
図5及び
図7)の固定刃軸孔32hに挿入されている。このため固定刃軸32aは、開閉軸23(
図3)に対し傾斜している。固定刃部32は、固定刃軸32aが固定刃板金30の固定刃軸支持孔30shに回転可能に嵌め込まれることにより、固定刃板金30に回転可能に支持される。このように固定刃32bが固定刃部フレーム32fに固定されると共に固定刃部フレーム32fが固定刃軸32aを支持するため、固定刃32bは固定刃軸32aと共に可動する。また固定刃軸32aにはばね34(
図3、
図5及び
図7)が巻き付けられており、該ばね34は、固定刃部32の固定刃32bを回転刃部46の回転刃46bに押し付けるように、固定刃32bを回転刃46bに向けて所定の付勢力で付勢している。このように固定刃32bは、固定刃板金30に対し揺動可能に支持されると共に回転刃46bへ向けて付勢されることにより、用紙切断時の荷重を一定にし、長寿命化している。
【0025】
かかる構成において用紙切断部6は、カバークローズ状態において搬送ローラ対5bにより用紙を搬送しつつ、回転刃46bを回転させることにより、該用紙の右端部側である切断開始位置Pcs側から該用紙の切断を開始し、用紙の左端部側である切断終了位置Pce側で該用紙の切断を終了する。このように用紙切断部6は、用紙の右端部側である切断開始位置Pcsから左端部側である切断終了位置Pceに向かって用紙を搬送幅方向へ沿って切断する。以下では、切断箇所CPにおいて切断された用紙における、切断箇所CPよりも搬送方向の上流側に位置する部分を、次用紙Ps(
図9)とも呼び、該次用紙Psにおける搬送方向の下流側の端部を次用紙先端Pse(
図9)とも呼ぶ。
【0026】
[5.案内部材の構成]
図3、
図4、
図5及び
図7に示すように、固定刃部フレーム32fのフレーム下端部32fdの下側面における切断開始位置Pcs側には、案内部材52が接着部材54により固定されている。
【0027】
接着部材54は、両面テープであり、フレーム下端部32fdの下側面において、切断開始位置Pcs側の端部における搬送方向上流側の端部に接着されている。この接着部材54は、前後方向の長さが、フレーム下端部32fdの前後方向の長さのほぼ半分程度であり、左右方向の長さが、フレーム下端部32fdの左右方向の長さの半分弱である、40~45[%]%程度となっている。
【0028】
案内部材52は、可撓性を有する弾性変形可能な薄いフィルムであり、フレーム下端部32fdの下側面において、切断開始位置Pcs側の端部における搬送方向上流側の端部に接着されている。この案内部材52は、前後方向の長さが、フレーム下端部32fdの前後方向の長さよりも長く、左右方向の長さが、接着部材54と同等であり、フレーム下端部32fdの左右方向の長さの半分弱である、40~45[%]程度となっている。この案内部材52は、下端部が固定刃32bの下端部よりも下方向へ突出している。すなわち案内部材52は、下端部が搬送路3Yよりも回転刃46b側へ突出している。また案内部材52は、画像形成装置1において取り扱われる、互いに異なる搬送幅方向の幅を有する複数種類の全ての用紙における、切断開始位置Pcs側の端部を含む範囲に亘って搬送幅方向に沿って連続的に設けられている。
【0029】
このように案内部材52は、固定刃部フレーム32fに固定されているため、固定刃部32と連動して移動することとなる。
【0030】
[6.用紙切断動作]
かかる構成において、厚さが薄い用紙である薄紙用紙Pnを切断する場合、用紙切断部6は、
図8に示すように搬送ローラ対5bにより用紙を搬送する。このとき用紙切断部6は、案内部材52の下端部を薄紙用紙Pnに当接させ、搬送路3Yから下側である回転刃46b側へ向けて付勢することにより、薄紙用紙Pnにおける、切断箇所CPよりも搬送方向の上流側(後側)を、下カーブを形成するように下側である回転刃46b側へ撓ませる。
【0031】
続いて用紙切断部6は、
図9に示すように回転刃46bを回転させて回転刃46bの先端と固定刃32bの先端とを切断箇所CPにおいて交差させ、薄紙用紙Pnを切断する。薄紙用紙Pnの切断中において用紙切断部6は、次用紙Psの次用紙先端Pseを回転刃46bの先端と固定刃32bの先端とにより挟持して、回転刃46bの先端の厚みの分だけ、次用紙Psの移動を一時的に堰き止めることとなる。このとき薄紙用紙Pnは、移動が一時的に停止された状態で搬送ローラ対5bにより搬送方向へ繰り出されるため、切断箇所CPよりも搬送方向の上流側が回転刃46b側へ大きく撓むこととなる。
【0032】
薄紙用紙Pnの切断が完了すると、用紙切断部6は、回転刃46bの先端を固定刃32bの先端から離隔させることにより、次用紙Psの次用紙先端Pseを解放する。
図10に示すように次用紙Psは、切断箇所CPよりも搬送方向の上流側の下方向への撓みが解放された瞬間に、撓んでいない通常の形状へ復元力により戻ろうとし、次用紙先端Pseが搬送路3Yに対し上側である固定刃32b側へ向かって進行する。これにより用紙切断部6は、次用紙Psの次用紙先端Pseが回転刃46bよりも下側へ潜り込んでしまうことを防止できる。
【0033】
このように用紙切断部6は、切断箇所CPよりも搬送方向の上流側において薄紙用紙Pnを搬送路3Yよりも回転刃46b側へ撓ませるように、撓み方向を規制するようにした。これにより用紙切断部6は、搬送路3Yよりも回転刃46b側へ付勢された次用紙Psが撓んでいない状態へ戻ろうとする復元力により、次用紙先端Pseの進行方向を搬送路3Yよりも固定刃32b側へ向かわせることができ、回転刃46b側へ進行させないようにできる。
【0034】
また、
図11に示すように、薄紙用紙Pnよりも厚さが厚い厚紙用紙Pcを切断する場合、厚紙用紙Pcが案内部材52の下端部に当接すると、案内部材52は可撓性を有する弾性変形可能な薄いフィルムであるため、該厚紙用紙Pcに当接した該案内部材52の先端が、搬送路3Yに対し該厚紙用紙Pcの搬送経路から退避するように上側である固定刃32b側へ撓むこととなる。また厚紙用紙Pcは、薄紙用紙Pnよりも変形しにくく次用紙先端Pseが垂れにくいため、案内部材52によって下方向へ撓まなかったとしても、次用紙Psの次用紙先端Pseが回転刃46bの下側へ潜り込んでしまう可能性は低い。
【0035】
[7.効果等]
以上の構成において用紙切断部6は、切断箇所CPよりも搬送方向上流側である固定刃部フレーム32fのフレーム下端部32fdに、下端部が固定刃32bの下端部よりも下方へ突出するように案内部材52を固定するようにした。このため用紙切断部6は、薄紙用紙Pnを切断する場合に、該薄紙用紙Pnにおける切断箇所CPよりも搬送方向上流側を回転刃46b側へ撓ませるように付勢して案内できる。これにより用紙切断部6は、薄紙用紙Pnの切断後に、回転刃46b側への撓みを解消しようとする薄紙用紙Pnの復元力により、次用紙Psにおける次用紙先端Pseを固定刃32b側へ進行するように誘導できる。かくして用紙切断部6は、薄紙用紙Pnの切断時に次用紙Psにおける次用紙先端Pseが回転刃46b側へ向かって進行し回転刃46b側の下側に潜り込んでジャムが発生してしまうことを防止できる。
【0036】
また用紙切断部6は、案内部材52を固定刃部フレーム32fに固定するようにした。このため用紙切断部6は、案内部材52を固定刃部32と連動して移動させることができる。これにより用紙切断部6は、案内部材52を固定刃部32に固定しない場合と比較して、構成が複雑化してしまうことを防止できると共に、切断箇所CPと案内部材52の先端との相対的な位置の位置精度を保つことができ、用紙の進行方向への案内性能を安定化させることができる。
【0037】
ここで、画像形成装置1において取り扱われる用紙が複数種類である場合、これら複数種類の用紙は、互いに異なる搬送幅方向の幅であることがある。そのような場合において、用紙の搬送幅方向の中央部を、搬送路3Yにおける搬送幅方向の中央部や右端部に合わせるように搬送すると、互いに異なる搬送幅方向の幅を有する複数種類の用紙は、切断箇所CPにおいて切断され始める搬送幅方向の位置が互いに異なることとなる。
【0038】
これに対し用紙切断部6は、画像形成装置1において取り扱われる、互いに異なる搬送幅方向の幅を有する複数種類の全ての用紙における、切断開始位置Pcs側の端部を含む範囲に亘って案内部材52を設けるようにした。これにより用紙切断部6は、互いに異なる搬送幅方向の幅を有する様々な種類の用紙に対し、次用紙先端Pseが搬送路3Yから回転刃46b側へ垂れてしまうことを防止できる。
【0039】
さらに用紙切断部6は、フレーム下端部32fdにおける切断開始位置Pcs側の端部から切断終了位置Pce側の端部までに亘って案内部材52を設けるのではなく、搬送幅方向に関し切断開始位置Pcs側の半分程度の範囲のみに案内部材52を設けるようにした。ここで、切断された用紙は、切断終了位置Pce側からではなく切断開始位置Pcs側から、回転刃46b側へ垂れ始めることとなる。このため用紙切断部6は、切断終了位置Pce側には案内部材52を設けなくても、回転刃46b側へ垂れ始める、次用紙Psの切断開始位置Pcs側の端部を固定刃32b側へ進行させることができる。これにより用紙切断部6は、切断開始位置Pcs側の端部から切断終了位置Pce側の端部までに亘って接着部材54及び案内部材52を設ける場合と比較して、使用する部材を少なくしつつ、次用紙Psが搬送路3Yから回転刃46b側へ垂れてしまうことを十分に防止できる。
【0040】
さらに用紙切断部6は、搬送幅方向に沿って連続的に案内部材52を設けるようにした。このため用紙切断部6は、搬送幅方向に沿って離散的に案内部材52を設ける場合と比較して、次用紙Psの次用紙先端Pseが離散的な案内部材52に引っかかって正常に固定刃32b側へ進行しないことを防止できる。
【0041】
ここで仮に、案内部材52をフィルムよりも剛性が高く厚紙用紙Pcに当接しても変形しない部材で形成した場合、厚紙用紙Pcの剛性が、ばね34による付勢力を上回って固定刃32bを持ち上げるような剛性であると、厚紙用紙Pcの反力によって固定刃32bが回転刃46bから離隔するように上側へ移動して固定刃32bと回転刃46bとの圧接力が低減してしまい切断不良が発生してしまう可能性がある。
【0042】
これに対し用紙切断部6は、可撓性を有する弾性変形可能な薄いフィルムで案内部材52を構成するようにした。このため用紙切断部6は、剛性の高い厚紙用紙Pcを搬送しつつ切断する場合、該厚紙用紙Pcに当接した案内部材52の先端を、搬送路3Yに対し該厚紙用紙Pcの搬送経路から退避するように上側である固定刃32b側へ撓ませることができる。これにより用紙切断部6は、剛性の高い厚紙用紙Pcを搬送しつつ切断する場合であっても、固定刃32bが回転刃46bから離隔するように上側へ移動して固定刃32bと回転刃46bとの圧接力が低減してしまうことを防止し切断不良を防止できる。かくして用紙切断部6は、固定刃32bに案内部材52を固定し固定刃32bと案内部材52とが連動する構成であっても、厚紙用紙Pcの反力を案内部材52の撓みで吸収し、様々な厚さの用紙に対して切断性能を安定化させることができる。
【0043】
さらに用紙切断部6は、案内部材52を薄いフィルムにより形成するようにした。このため用紙切断部6は、案内部材52と当接してこすれた際に用紙が受ける抵抗を最小限にすることができ、用紙が案内部材52と当接したことで正常に搬送されなくなってしまうことを防止できる。
【0044】
以上の構成によれば用紙切断部6は、媒体としての用紙Pが搬送される搬送路3Yに対し用紙Pの紙面に直交する厚さ方向の一方向側である上側に設けられた固定刃ユニット28と、搬送路3Yに対し一方向側とは逆方向側である下側に設けられ、回転刃回転方向Dr1へ回転することにより固定刃ユニット28の固定刃32bと刃先を交差させて、搬送される用紙Pを切断箇所CPにおいて切断する回転刃ユニット42と、切断箇所CPよりも搬送方向の上流側に設けられ、用紙を回転刃ユニット42側へ付勢する案内部材52とを設けるようにした。
【0045】
これにより用紙切断部6は、用紙の切断後に、回転刃46b側への撓みを解消しようとする用紙の復元力により、切断箇所CPよりも搬送方向の上流側に位置する次用紙Psにおける次用紙先端Pseを固定刃32b側へ進行させることができる。
【0046】
[8.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、案内部材52を固定刃部32に固定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、構成が複雑化すると共に切断箇所CPとの位置精度を保ちにくくはなるものの、案内部材52を固定刃部32に固定しなくても良い。また、案内部材52を固定刃部32に固定しないものの該固定刃部32に連動するようにしても良い。
【0047】
また上述した実施の形態においては、フレーム下端部32fdの下側面における、切断開始位置Pcs側の端部から搬送幅方向のほぼ中央部までに亘って案内部材52を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、フレーム下端部32fdの下側面における、切断開始位置Pcs側の端部から搬送幅方向のほぼ中央部よりもさらに切断終了位置Pce側までに亘って案内部材52を設けても良く、切断開始位置Pcs側の端部から例えば切断終了位置Pce側の端部までに亘って案内部材52を設けても良い。また、画像形成装置1において取り扱われる用紙が単一のサイズの用紙であれば、その用紙の切断開始位置Pcs側の端部のみを含むように、案内部材52の搬送幅方向の長さを短くしても良い。
【0048】
さらに上述した実施の形態においては、搬送幅方向に沿って連続的に案内部材52を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、搬送幅方向に沿って離散的に案内部材52を設けても良い。
【0049】
さらに上述した実施の形態においては、案内部材52をフィルムにより形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、用紙の厚さが厚く且つ剛性が高い場合に該用紙の搬送経路から退避するように変形できれば、フィルム以外の他の種々の部材により案内部材52を形成しても良い。また、用紙切断部6が薄紙用紙Pnのみを切断し厚紙用紙Pcを切断しない場合や、厚紙用紙Pcであっても剛性が低く、ばね34の付勢力に勝って固定刃32bを持ち上げない場合や、案内部材52が固定刃32bと連動しない場合は、フィルムよりも剛性が高く厚紙用紙Pcに当接しても変形しない部材により案内部材52を形成しても良い。
【0050】
さらに上述した実施の形態においては、案内部材52を両面テープである接着部材54で固定刃部32に固定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、案内部材52を接着剤等、他の種々の部材である接着部材54で固定刃部32に固定しても良い。
【0051】
さらに上述した実施の形態においては、搬送路3Yの上側及び下側にそれぞれ固定刃ユニット28及び回転刃ユニット42が配置された用紙切断部6に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、搬送路3Yの上側及び下側にそれぞれ回転刃ユニット及び固定刃ユニットが設けられた用紙切断部や、例えば鉛直方向に沿って延びる搬送路の前側及び後側にそれぞれ回転刃ユニット及び固定刃ユニットが設けられた用紙切断部に本発明を適用しても良い。
【0052】
さらに上述した実施の形態においては、ロール状の用紙を切断する用紙切断部6に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、カット済のカット紙等を切断する用紙切断部に本発明を適用しても良い。
【0053】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成部8よりも搬送方向上流側に用紙切断部6を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、画像形成部8よりも搬送方向下流側に用紙切断部6を設けても良い。
【0054】
さらに上述した実施の形態においては、直接転写方式の画像形成装置1に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、中間転写ベルト上に1次転写されたトナー画像を用紙に2次転写する中間転写方式等、種々の方式のプリンタに本発明を適用しても良い。
【0055】
さらに上述した実施の形態においては、3つのプロセスユニット9を用いる画像形成装置1に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、1つのプロセスユニットを用いる単色画像形成装置や、2つ又は4つ以上の任意の個数のプロセスユニットを用いる画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0056】
さらに上述した実施の形態においては、電子写真方式のプリンタである画像形成装置1に設けられた用紙切断部6に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、MFP(MultiFunction Printer:複合機)、複写機、自動原稿読み取り装置等に含まれる画像形成装置に設けられた用紙切断部にも本発明を適用して良い。
【0057】
さらに上述した実施の形態においては、固定刃としての固定刃ユニット28と、回転刃としての回転刃ユニット42と、案内部材としての案内部材52とによって、媒体切断装置としての用紙切断部6を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる固定刃と、回転刃と、案内部材とによって、媒体切断装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、用紙を切断する種々の機器でも利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1……画像形成装置、2……本体部、2Y……搬送路、3……搬送切断部、3Y……搬送路、4……用紙ガイド、4u……上側用紙ガイド、4d……下側用紙ガイド、5a、5b、5c、5d……搬送ローラ対、6、106……用紙切断部、7……本体部筐体、8……画像形成部、9……プロセスユニット、10……転写ベルト、11……定着器、23……開閉軸、28……固定刃ユニット、30……固定刃板金、30m……固定刃板金本体部、30s……固定刃軸支持部、32……固定刃部、32f……固定刃部フレーム、32fb……フレーム前端部、32fd……フレーム下端部、32a……固定刃軸、32h……固定刃軸孔、34……ばね、42……回転刃ユニット、44……回転刃ブラケット、44R、44L……回転刃軸支持部、44C……左右延在部、44h……回転刃軸支持孔、46……回転刃部、46a……回転刃軸、46b……回転刃、48……カッタ駆動ギヤ、50R、50L……嵌合溝、52……案内部材、54……接着部材、56……上向きガイド、Pcs……切断開始位置、Pce……切断終了位置、Dr……回転刃回転方向、CP……切断箇所、Pn……薄紙用紙、Pc……厚紙用紙、Ps……次用紙、Pse……次用紙先端。