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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221220BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 403
B41J2/14 611
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019033847
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020138353
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】新川 修
(72)【発明者】
【氏名】上柳 雅史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊行
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198894(JP,A)
【文献】特開2011-240560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号を生成する生成部と、
前記駆動信号が供給される第1配線と、
前記駆動信号により駆動されて液体を吐出する第1吐出部と、
前記第1配線に供給される前記駆動信号を前記第1吐出部に供給するか否かを切り替える供給部と、
前記第1吐出部に生じている振動を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記第1吐出部における液体の吐出状態を検査する検査部と、
を備え、
前記第1吐出部から媒体に対して液体を吐出する印刷処理が実行される印刷期間を除く印刷外期間のうち、
第1期間において、
前記供給部が、前記駆動信号を前記第1吐出部に供給し、
前記生成部が、前記駆動信号の電位を、第1基準電位から他の電位に変化させた後に前記第1基準電位に戻すことで、
前記第1吐出部を駆動する第1駆動処理が実行され、
前記印刷外期間のうち、
前記第1期間の終了後の第2期間において、
前記供給部が、前記駆動信号の前記第1吐出部への供給を停止し、
前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第1基準電位から第2基準電位に変化させ、
前記印刷外期間のうち、
前記第2期間の終了後の第3期間において、
前記供給部が、前記駆動信号を前記第1吐出部に供給し、
前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第2基準電位に維持し、
前記検出部が、前記第1吐出部に生じている振動を検出し、
前記検査部が、前記第1吐出部における液体の吐出状態を検査し、
前記印刷外期間のうち、
前記第3期間の終了後の第4期間において、
前記供給部が、前記駆動信号を前記第1吐出部に供給し、
前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第2基準電位から他の電位に変化させた後に前記第2基準電位に戻すことで、
前記第1吐出部を駆動する第2駆動処理が実行される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記第1駆動処理及び前記第2駆動処理において、
前記第1吐出部から液体が吐出されないように前記第1吐出部を駆動する波形を有する駆動信号を生成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記第1駆動処理及び前記第2駆動処理において、
前記第1吐出部内部の液体が排出されるように前記第1吐出部を駆動する波形を有する駆動信号を生成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1吐出部は、
第1電極を含む1対の電極を有する第1圧電素子を具備し、
前記供給部は、
前記第1電極及び前記第1配線を電気的に接続するか否かを切り替える第1スイッチと、
前記第1電極及び第2配線を電気的に接続するか否かを切り替える第2スイッチと、
前記第1配線及び前記第2配線を電気的に接続するか否かを切り替える第3スイッチと、
前記第1配線及び前記第2配線の間において前記第3スイッチと直列に設けられた第1抵抗と、
を備え、
前記検出部は、
前記第2配線の電位を検出する、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記供給部は、
前記第1期間において、
前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをオフし、
前記第1スイッチをオンすることで、前記駆動信号を前記第1電極に供給し、
前記第3期間において、
前記第1スイッチをオフし、
前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをオンすることで、前記駆動信号を前記第1電極に供給する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動信号により駆動されて液体を吐出する第2吐出部を備え、
前記供給部は、
前記第1配線に供給される前記駆動信号を前記第2吐出部に供給するか否かを切り替え、
前記検出部は、
前記第2吐出部に生じている振動を検出し、
前記検査部は、
前記検出部の検出結果に基づいて前記第2吐出部における液体の吐出状態を検査し、
前記印刷外期間のうち、前記第4期間において、
前記供給部が、前記駆動信号を前記第2吐出部に供給し、
前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第2基準電位から他の電位に変化させた後に前記第2基準電位に戻すことで、
前記第2吐出部を駆動し、
前記印刷外期間のうち、前記第4期間の終了後の第5期間において、
前記供給部が、前記駆動信号の前記第2吐出部への供給を停止し、
前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第2基準電位から第1基準電位に変化させ、
前記印刷外期間のうち、前記第5期間の終了後の第6期間において、
前記供給部が、前記駆動信号を前記第2吐出部に供給し、
前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第1基準電位に維持し、
前記検出部が、前記第2吐出部に生じている振動を検出し、
前記検査部が、前記第2吐出部における液体の吐出状態を検査する、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、ヘッドユニットに設けられた吐出部を駆動信号により駆動することにより、吐出部に充填されているインク等の液体を吐出させ、記録用紙等の媒体に画像を形成する印刷処理を実行する。このような液体吐出装置において、吐出部に充填されている液体の増粘や、吐出部への異物の付着等により、吐出部から液体を正常に吐出できなくなる吐出異常が生じる場合がある。そして、吐出異常が生じると、吐出部から吐出される液体により媒体に形成される予定のドットを正確に形成できなくなり、印刷処理において媒体に形成される画像の画質が低下する。このため、従来から、駆動信号が圧電素子に供給されているタイミングにおいて、駆動信号の電位を変化させることで、吐出部に振動を生じさせ、当該吐出部に生じている振動の検出結果に基づいて、吐出部における液体の吐出状態を検査することで、吐出異常に伴う画質の低下を未然に防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-105219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、吐出部の検査は、印刷処理が実行される印刷期間を除く印刷外期間において実行される。しかし、印刷外期間には、例えば、吐出部の検査の他に、吐出部に微振動を与えて吐出部内部の液体を攪拌する微振動処理や、吐出部内部の液体を排出するフラッシング処理等の、各種処理を実行することが必要な場合があり、吐出部の検査のための時間を十分に確保できない、という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、駆動信号を生成する生成部と、前記駆動信号が供給される第1配線と、前記駆動信号により駆動されて液体を吐出する第1吐出部と、前記第1配線に供給される前記駆動信号を前記第1吐出部に供給するか否かを切り替える供給部と、前記第1吐出部に生じている振動を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて前記第1吐出部における液体の吐出状態を検査する検査部と、を備え、前記第1吐出部から媒体に対して液体を吐出する印刷処理が実行される印刷期間を除く印刷外期間のうち、第1期間において、前記供給部が、前記駆動信号を前記第1吐出部に供給し、前記生成部が、前記駆動信号の電位を、第1基準電位から他の電位に変化させた後に前記第1基準電位に戻すことで、前記第1吐出部を駆動する第1駆動処理が実行され、前記印刷外期間のうち、前記第1期間の終了後の第2期間において、前記供給部が、前記駆動信号の前記第1吐出部への供給を停止し、前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第1基準電位から第2基準電位に変化させ、前記印刷外期間のうち、前記第2期間の終了後の第3期間において、前記供給部が、前記駆動信号を前記第1吐出部に供給し、前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第2基準電位に維持し、前記検出部が、前記第1吐出部に生じている振動を検出し、前記検査部が、前記第1吐出部における液体の吐出状態を検査し、前記印刷外期間のうち、前記第3期間の終了後の第4期間において、前記供給部が、前記駆動信号を前記第1吐出部に供給し、前記生成部が、前記駆動信号の電位を、前記第2基準電位から他の電位に変化させた後に前記第2基準電位に戻すことで、前記第1吐出部を駆動する第2駆動処理が実行される、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示すブロック図である。
図2】インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
図3】吐出部Dの構造の一例を説明するための説明図である。
図4】ヘッドユニット3におけるノズルNの配置の一例を示す平面図である。
図5】ヘッドユニット3の構成の一例を示すブロック図である。
図6】インクジェットプリンター1の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図7】個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
図8】インクジェットプリンター1の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図9】個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
図10】インクジェットプリンター1の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図11】個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
図12】個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
図13】ヘッドユニット3の動作の一例を示す説明図である。
図14】ヘッドユニット3の動作の一例を示す説明図である。
図15】振動波形信号Vd[m]の一例を説明するための説明図である。
図16】吐出状態情報NVTの一例を説明するための説明図である。
図17】インクジェットプリンター1の動作の一例を示すフローチャートである。
図18】インクジェットプリンター1の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図19】参考例に係るインクジェットプリンターの動作の一例を示すタイミングチャートである。
図20】参考例に係る個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
<<A.実施形態>>
本実施形態では、インクを吐出して記録用紙Pに画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。なお、本実施形態において、インクとは「液体」の一例であり、記録用紙Pとは「媒体」の一例である。
【0009】
<<1.インクジェットプリンターの概要>>
以下、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成について説明する。
【0010】
図1は、インクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図である。インクジェットプリンター1には、パーソナルコンピューターまたはデジタルカメラ等のホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgが供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgの示す画像を記録用紙Pに形成する印刷処理を実行する。
【0011】
図1に例示するように、インクジェットプリンター1は、インクジェットプリンター1の各部を制御する制御ユニット2と、インクを吐出する吐出部Dが設けられたヘッドユニット3と、吐出部Dを駆動するための駆動信号Comを生成する駆動信号生成ユニット4と、各種情報を記憶する記憶ユニット5と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を検査する検査ユニット6と、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送ユニット7と、を備える。
【0012】
なお、本実施形態ではインクジェットプリンター1が、1または複数のヘッドユニット3と、1または複数のヘッドユニット3と1対1に対応する1または複数の検査ユニット6と、1または複数のヘッドユニット3と1対1に対応する1または複数の駆動信号生成ユニット4と、を備える場合を想定する。但し、以下では、説明の便宜上、図1に示すように、1または複数のヘッドユニット3のうち一のヘッドユニット3と、一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の検査ユニット6と、一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の駆動信号生成ユニット4と、に着目して説明する。
【0013】
制御ユニット2は、CPUを含んで構成される。但し、制御ユニット2は、CPUの代わりに、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを備えるものでよい。ここで、CPUとは、Central Processing Unitの略称であり、FPGAとは、field-programmable gate arrayの略称である。制御ユニット2は、CPUが、記憶ユニット5に記憶されている制御プログラムに従って動作することで、印刷信号SI、及び、波形指定信号dCom等の、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御するための信号を生成する。
【0014】
ここで、波形指定信号dComとは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号Comとは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成ユニット4は、DA変換回路を含み、波形指定信号dComにより規定される波形を有する駆動信号Comを生成する。また、印刷信号SIとは、吐出部Dの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、吐出部Dの動作の種類を指定する信号である。
【0015】
図1に例示するように、ヘッドユニット3は、供給回路31と、記録ヘッド32と、検出回路33と、を備える。
記録ヘッド32は、M個の吐出部Dを備える。ここで、値Mは、「M≧2」を満たす自然数である。なお、以下では、記録ヘッド32に設けられたM個の吐出部Dのうち、m番目の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある。ここで、変数mは、「1≦m≦M」を満たす自然数である。また、以下では、インクジェットプリンター1の構成要素または信号等が、M個の吐出部Dのうち、吐出部D[m]に対応する場合は、当該構成要素または信号等を表わすための符号に、添え字[m]を付すことがある。
供給回路31は、印刷信号SIに基づいて、駆動信号Comを吐出部D[m]に供給するか否かを切り替える。なお、以下では、駆動信号Comのうち、吐出部D[m]に供給される駆動信号Comを、供給駆動信号Vin[m]と称する場合がある。また、供給回路31は、印刷信号SIに基づいて、吐出部D[m]が具備する圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]の電位を示す検出電位信号Vout[m]を、検出回路33に供給するか否かを切り替える。なお、圧電素子PZ[m]及び上部電極Zu[m]については、図3において後述する。
検出回路33は、検出電位信号Vout[m]に基づいて、振動波形信号Vd[m]を生成する。振動波形信号Vd[m]は、吐出部D[m]が供給駆動信号Vin[m]により駆動されることで生じる吐出部D[m]の振動の波形を示す。
【0016】
また、上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、図1に例示するように、振動波形信号Vd[m]に基づいて吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を検査する検査ユニット6を備える。検査ユニット6は、振動波形信号Vd[m]に基づいて、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を検査し、当該検査の結果を示す吐出状態情報NVTを生成する。
なお、以下では、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態の検査に関連する処理を、吐出状態検査処理と称する場合がある。また、以下では、吐出状態検査処理において検査の対象とされる吐出部D[m]を、検査対象吐出部DKと称する場合がある。
【0017】
図2は、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を想定する。具体的には、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する場合、副走査方向に記録用紙Pを搬送しつつ、副走査方向に交差する主走査方向にヘッドユニット3を往復動させながら、吐出部Dからインクを吐出させることで、記録用紙P上に、印刷データImgに応じたドットを形成する。
以下では、+X方向とその逆方向である-X方向とを「X軸方向」と総称し、X軸方向に交差する+Y方向とその逆方向である-Y方向とを「Y軸方向」と総称し、X軸方向及びY軸方向に交差する+Z方向とその逆方向である-Z方向とを「Z軸方向」と総称する。そして、本実施形態では、図2に例示するように、上流側である-X側から下流側である+X側に向かう方向を副走査方向とし、+Y方向及び-Y方向を主走査方向とする。
【0018】
図2に例示するように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、筐体100と、筐体100内をY軸方向に往復動可能であり、1または複数のヘッドユニット3を搭載するキャリッジ300と、を備える。
また、上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、搬送ユニット7を備える。搬送ユニット7は、印刷処理が実行される場合に、キャリッジ300をY軸方向に往復動させるとともに、記録用紙Pを+X方向に搬送することで、記録用紙Pのヘッドユニット3に対する相対位置を変化させ、記録用紙Pの全体に対するインクの着弾を可能とする。搬送ユニット7は、図1に例示するように、キャリッジ300を往復動させるためのキャリッジ搬送機構71と、記録用紙Pを搬送するための媒体搬送機構72と、を具備する。また、搬送ユニット7は、図2に例示するように、キャリッジ300をY軸方向に往復自在に支持するキャリッジガイド軸760と、キャリッジ300に固定されキャリッジ搬送機構71により駆動されるタイミングベルト710と、を具備する。このため、搬送ユニット7は、ヘッドユニット3をキャリッジ300と共に、キャリッジガイド軸760に沿ってY軸方向に往復動させることができる。また、搬送ユニット7は、キャリッジ300の-Z側に設けられたプラテン750と、媒体搬送機構72の駆動に応じて回転しプラテン750上の記録用紙Pを+X方向に搬送する搬送ローラ730と、を備える。
【0019】
本実施形態では、図2に例示するように、キャリッジ300が、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの、4色のインクと1対1に対応する4個のインクカートリッジ310を格納している場合を想定する。また、本実施形態では、一例として、インクジェットプリンター1が、4個のインクカートリッジ310と1対1に対応する4個のヘッドユニット3を備える場合を想定する。各吐出部Dは、当該吐出部Dが設けられたヘッドユニット3に対応するインクカートリッジ310からインクの供給を受ける。これにより、各吐出部Dは、供給されたインクを内部に充填し、充填したインクをノズルNから吐出することができる。なお、インクカートリッジ310は、キャリッジ300の外部に設けられてもよい。
【0020】
ここで、印刷処理が実行される場合の制御ユニット2の動作の概要を説明する。
印刷処理が実行される場合、制御ユニット2は、まず、ホストコンピューターから供給される印刷データImgを、記憶ユニット5に記憶させる。次に、制御ユニット2は、記憶ユニット5に記憶されている印刷データImg等の各種データに基づいて、印刷信号SI等のヘッドユニット3を制御するための信号と、波形指定信号dCom等の駆動信号生成ユニット4を制御するための信号と、搬送ユニット7を制御するための信号と、を生成する。そして、制御ユニット2は、印刷信号SI等の各種信号や、記憶ユニット5に記憶されている各種データに基づいて、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるように搬送ユニット7を制御しつつ、吐出部Dが駆動されるように駆動信号生成ユニット4及び供給回路31を制御する。これにより、制御ユニット2は、吐出部Dからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像が記録用紙Pに形成されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する。
【0021】
また、上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、吐出状態検査処理を実行する。
吐出状態検査処理とは、制御ユニット2が、吐出状態検査処理の対象となる検査対象吐出部DKを選択する処理と、駆動信号生成ユニット4が、制御ユニット2の出力する波形指定信号dComに基づいて駆動信号Comを生成する処理と、供給回路31が、制御ユニット2による制御の下で、駆動信号生成ユニット4の出力する駆動信号Comを供給駆動信号Vin[m]として検査対象吐出部DKに供給することで、検査対象吐出部DKを駆動する処理と、検出回路33が、検査対象吐出部DKに生じている振動を示す検出電位信号Vout[m]に応じて振動波形信号Vd[m]を生成する処理と、検査ユニット6が、振動波形信号Vd[m]に基づいて、検査対象吐出部DKにおけるインクの吐出状態を検査し、当該検査結果を示す吐出状態情報NVTを生成する処理と、を含む、インクジェットプリンター1により実行される一連の処理である。
ここで、検査ユニット6が実行する、吐出部Dに対するインクの吐出状態の検査とは、吐出部Dからのインクの吐出状態が正常であるか否か、すなわち、吐出部Dにおいて吐出異常が生じていないか否か、を判定する処理である。また、吐出異常とは、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常となること、つまり、吐出部Dが具備するノズルNからインクを正確に吐出することのできない状態の総称である。例えば、吐出異常とは、吐出部Dからインクを吐出できない状態、吐出部Dが駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量とは異なる量のインクを吐出する状態、及び、吐出部Dが駆動信号Comにより規定されるインクの吐出速度とは異なる速度でインクを吐出する状態、等を含む。
【0022】
また、詳細は後述するが、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、吐出部Dからインクが吐出しない程度に吐出部Dを駆動することで、吐出部Dの内部のインクを攪拌し、吐出部Dの内部のインクが増粘することを防止する、微振動処理を実行する。
【0023】
<<2.記録ヘッド及び吐出部の概要>>
図3及び図4を参照しつつ、記録ヘッド32と、記録ヘッド32に設けられる吐出部Dと、について説明する。
【0024】
図3は、吐出部Dを含むように記録ヘッド32を切断した、記録ヘッド32の概略的な一部断面図である。
図3に示すように、吐出部Dは、圧電素子PZと、内部にインクが充填されたキャビティ322と、キャビティ322に連通するノズルNと、振動板321と、を備える。吐出部Dは、圧電素子PZが供給駆動信号Vinにより駆動されることにより、キャビティ322内のインクをノズルNから吐出させる。キャビティ322は、キャビティプレート324と、ノズルNが形成されたノズルプレート323と、振動板321と、により区画される空間である。キャビティ322は、インク供給口326を介してリザーバ325と連通している。リザーバ325は、インク取入口327を介して、当該吐出部Dに対応するインクカートリッジ310と連通している。圧電素子PZは、上部電極Zuと、下部電極Zdと、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に設けられた圧電体Zmと、を有する。下部電極Zdは、電位VBSに設定された給電線Lvと電気的に接続される。そして、上部電極Zuに供給駆動信号Vinが供給されて、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子PZが+Z方向または-Z方向に変位し、その結果、圧電素子PZが振動する。振動板321には、下部電極Zdが接合されている。このため、圧電素子PZが供給駆動信号Vinにより駆動されて振動すると、振動板321も振動する。そして、振動板321の振動によりキャビティ322の容積及びキャビティ322内の圧力が変化し、キャビティ322内に充填されたインクがノズルNより吐出される。
【0025】
図4は、-Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、キャリッジ300に搭載された4個のヘッドユニット3と、当該4個のヘッドユニット3に設けられた合計4M個のノズルNの配置の一例を説明するための説明図である。図4に示すように、キャリッジ300に設けられた各ヘッドユニット3には、ノズル列NLが設けられる。ここで、ノズル列NLとは、所定方向に列状に延在するように設けられた複数のノズルNである。本実施形態では、各ノズル列NLが、X軸方向に延在するように配置されたM個のノズルNから構成される場合を、一例として想定する。
【0026】
<<3.ヘッドユニットの構成>>
以下、図5を参照しつつ、ヘッドユニット3の構成について説明する。
【0027】
図5は、ヘッドユニット3の構成の一例を示すブロック図である。上述のとおり、ヘッドユニット3は、供給回路31と、記録ヘッド32と、検出回路33と、を備える。また、ヘッドユニット3は、駆動信号生成ユニット4から駆動信号Comが供給される配線Lcと、検出電位信号Vout[m]を検出回路33に供給するための配線Lsと、電位VBSが供給される給電線Lvと、を備える。
【0028】
図5に示すように、供給回路31は、M個のスイッチWc[1]~Wc[M]と、M個のスイッチWs[1]~Ws[M]と、スイッチWrと、抵抗Rcsと、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路34と、を備える。
接続状態指定回路34は、制御ユニット2から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHの、少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチWc[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qc[m]と、スイッチWs[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qs[m]と、スイッチWrのオンオフを指定する接続状態指定信号Qrと、を生成する。
ここで、スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Qc[m]に基づいて、配線Lcと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Qc[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。また、スイッチWs[m]は、接続状態指定信号Qs[m]に基づいて、配線Lsと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWs[m]は、接続状態指定信号Qs[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。また、スイッチWrは、接続状態指定信号Qrに基づいて、配線Lcと、配線Lsとの、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWrは、接続状態指定信号Qrがハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
抵抗Rcsは、配線Lcと配線Lsとの間において、スイッチWrと直列に接続される。
【0029】
検出回路33には、検査対象吐出部DKとして駆動された吐出部D[m]の圧電素子PZ[m]の電位を示す検出電位信号Vout[m]が、配線Lsを介して供給される。検出回路33は、検出電位信号Vout[m]に基づいて振動波形信号Vd[m]を生成する。
【0030】
<<4.ヘッドユニットの動作>>
以下、図6乃至図13を参照しつつ、ヘッドユニット3の動作について説明する。
【0031】
本実施形態において、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合、インクジェットプリンター1の動作期間として、1または複数の単位印刷期間TPが設定される。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各単位印刷期間TPにおいて、印刷処理のために各吐出部Dを駆動することができる。
【0032】
図6は、単位印刷期間TPにおけるインクジェットプリンター1の動作を示すためのタイミングチャートである。
図6に示すように、制御ユニット2は、パルスPlsLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御ユニット2は、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として、単位印刷期間TPを規定する。また、制御ユニット2は、単位印刷期間TPにおいて、パルスPlsCを有するチェンジ信号CHを出力する。そして、制御ユニット2は、単位印刷期間TPを、パルスPlsLの立ち上がりからパルスPlsCの立ち上がりまでの制御期間TP1と、パルスPlsCの立ち上がりからパルスPlsLの立ち上がりまでの制御期間TP2と、に区分する。
【0033】
本実施形態に係る印刷信号SIは、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個の個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。個別指定信号Sd[m]は、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合、各単位印刷期間TPにおける吐出部D[m]の駆動の態様を指定する。
制御ユニット2は、図6に示すように、印刷処理が実行される単位印刷期間TPに先立って、個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路34に供給する。そして、接続状態指定回路34は、当該単位印刷期間TPにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて、接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]を生成する。
なお、本実施形態では、吐出部D[m]が、大ドットと、大ドットよりも小さい中ドットと、中ドットよりも小さい小ドットとを、形成可能である場合を想定する。そして、本実施形態では、個別指定信号Sd[m]が、単位印刷期間TPにおいて、吐出部D[m]を、大ドットに相当する量のインクを吐出する大ドット形成吐出部DP1として指定する値「1」と、吐出部D[m]を、中ドットに相当する量のインクを吐出する中ドット形成吐出部DP2として指定する値「2」と、吐出部D[m]を、小ドットに相当する量のインクを吐出する小ドット形成吐出部DP3として指定する値「3」と、吐出部D[m]を、インクを吐出しないドット非形成吐出部DP0として指定する値「4」と、の4つの値のうち、何れか1つの値をとることができる場合を想定する。
【0034】
図6に示すように、本実施形態において、制御ユニット2は、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合、駆動信号Comを、制御期間TP1に設けられた波形PP1と、制御期間TP2に設けられた波形PP2と、を有する信号として設定するための波形指定信号dComを出力する。本実施形態では、波形PP1の最高電位VH1と最低電位VL1との電位差が、波形PP2の最高電位VH2と最低電位VL2との電位差よりも大きくなるように、波形PP1及び波形PP2が定められている。具体的には、波形PP1を有する駆動信号Comが吐出部D[m]に供給される場合、吐出部D[m]が、中ドットに相当する量のインクを吐出する態様で駆動されるように、波形PP1が定められる。また、波形PP2を有する駆動信号Comが吐出部D[m]に供給される場合、吐出部D[m]が、小ドットに相当する量のインクを吐出する態様で駆動されるように、波形PP2が定められる。また、本実施形態において、波形PP1及び波形PP2は、単位印刷期間TPの開始時及び終了時の電位が基準電位V1に設定されている。
【0035】
図7は、単位印刷期間TPにおける、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]との関係を説明するための説明図である。
図7に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位印刷期間TPにおいて、吐出部D[m]を大ドット形成吐出部DP1として指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、単位印刷期間TPに亘りハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が単位印刷期間TPに亘りオンする。このため、吐出部D[m]は、単位印刷期間TPにおいて、波形PP1及び波形PP2を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動され、大ドットに相当する量のインクを吐出する。
図7に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位印刷期間TPにおいて、吐出部D[m]を中ドット形成吐出部DP2として指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、制御期間TP1に限りハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が制御期間TP1に限りオンする。このため、吐出部D[m]は、単位印刷期間TPにおいて、波形PP1を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動され、中ドットに相当する量のインクを吐出する。
図7に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位印刷期間TPにおいて、吐出部D[m]を小ドット形成吐出部DP3として指定する値「3」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、制御期間TP2に限りハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が制御期間TP2に限りオンする。このため、吐出部D[m]は、単位印刷期間TPにおいて、波形PP2を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動され、小ドットに相当する量のインクを吐出する。
図7に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位印刷期間TPにおいて、吐出部D[m]をドット非形成吐出部DP0として指定する値「4」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、単位印刷期間TPに亘りローレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が単位印刷期間TPに亘りオフする。このため、吐出部D[m]は、単位印刷期間TPにおいて、駆動信号Comにより駆動されず、インクを吐出しない。
【0036】
本実施形態において、インクジェットプリンター1が微振動処理を実行する場合、インクジェットプリンター1の動作期間として、1または複数の単位微振動期間TBが設定される。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各単位微振動期間TBにおいて、微振動処理のために各吐出部Dを駆動することができる。
【0037】
図8は、単位微振動期間TBにおけるインクジェットプリンター1の動作を示すためのタイミングチャートである。
図8に示すように、本実施形態において、制御ユニット2は、インクジェットプリンター1が微振動処理を実行する場合、ラッチ信号LATの有するパルスPlsLにより単位微振動期間TBを規定する。なお、単位微振動期間TBと、単位印刷期間TPとは、同一の時間長を有していてもよいし、異なる時間長を有していてもよい。
また、本実施形態において、制御ユニット2は、インクジェットプリンター1が微振動処理を実行する場合、駆動信号Comを、単位微振動期間TBに設けられた波形PBを有する信号として設定するための、波形指定信号dComを出力する。本実施形態では、波形PBを有する駆動信号Comが吐出部D[m]に供給される場合に、吐出部D[m]が、インクが吐出されない程度に駆動されるような波形として、波形PBが定められる。具体的には、本実施形態において、波形PBは、単位微振動期間TBの開始時及び終了時の電位が基準電位VCに設定されている。そして、本実施形態では、一例として、波形PBが、単位微振動期間TBにおいて、基準電位VCから、基準電位VCとは異なる電位Vbbに変化した後に、電位Vbbから基準電位VCに変化する波形を有する場合を想定する。
【0038】
なお、詳細は後述するが、基準電位VCは、基準電位V1と、基準電位V1よりも高電位の基準電位V2との、総称である。すなわち、本実施形態では、単位微振動期間TBの開始時及び終了時において、駆動信号Comの電位が基準電位V1である場合と、駆動信号Comの電位が基準電位V2である場合と、の2つの態様が存在する場合を想定する。以下では、基準電位V1及び基準電位V2のうち、一方の電位を基準電位VC1と称し、基準電位V1及び基準電位V2のうち、他方の電位を基準電位VC2と称する場合がある。なお、電位Vbbは、例えば、基準電位VCが基準電位V1である場合には、基準電位V1よりも所定の電位だけ低い電位であり、また、基準電位VCが基準電位V2である場合には、基準電位V1よりも所定の電位だけ低い電位であってもよい。
【0039】
図9は、単位微振動期間TBにおける、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]との関係を説明するための説明図である。
本実施形態では、個別指定信号Sd[m]が、単位微振動期間TBにおいて、吐出部D[m]を、微振動処理の対象である微振動吐出部DB1として指定する値「1」と、吐出部D[m]を、微振動処理の対象外である微振動対象外吐出部DB0として指定する値「2」と、の2つの値のうち、何れか1つの値をとることができる場合を想定する。
【0040】
図9に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位微振動期間TBにおいて、吐出部D[m]を微振動吐出部DB1として指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、単位微振動期間TBに亘りハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が単位微振動期間TBに亘りオンする。このため、吐出部D[m]は、単位微振動期間TBにおいて、波形PBを有する供給駆動信号Vin[m]により駆動され、ノズルNからインクが吐出しない程度に微振動する。
図9に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位微振動期間TBにおいて、吐出部D[m]を微振動対象外吐出部DB0として指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、単位微振動期間TBに亘りローレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が単位微振動期間TBに亘りオフする。このため、吐出部D[m]は、単位微振動期間TBにおいて、駆動信号Comにより駆動されず、振動しない。
【0041】
本実施形態において、インクジェットプリンター1が吐出状態検査処理を実行する場合、インクジェットプリンター1の動作期間として、単位準備期間TM1と、単位準備期間TM1に後続する単位準備期間TM2と、を含む検査準備期間TTMが設定され、更に、検査準備期間TTMに後続し、J個の単位検査期間TKを含む検査期間TTKが設定される。ここで、Jは、1以上の自然数である。
なお、以下では、単位準備期間TM1及び単位準備期間TM2を、単位準備期間TMと総称する場合がある。また、以下では、検査期間TTKに含まれるJ個の単位検査期間TKのうち、j番目の単位検査期間TKを、単位検査期間TK[j]と称する場合がある。ここで、jは、1≦j≦Jを満たす自然数である。
【0042】
図10は、検査準備期間TTM及び検査期間TTKにおけるインクジェットプリンター1の動作を示すタイミングチャートである。
図10に示すように、本実施形態において、制御ユニット2は、インクジェットプリンター1が吐出状態検査処理を実行する場合、ラッチ信号LATの有するパルスPlsL、または、チェンジ信号CHの有するパルスPlsCにより、単位準備期間TMと単位検査期間TK[j]とを規定する。また、制御ユニット2は、チェンジ信号CHにより、単位検査期間TK[j]を、制御期間TK1[j]と制御期間TK2[j]とに区分する。なお、単位準備期間TMと、単位印刷期間TPとは、同一の時間長を有していてもよいし、異なる時間長を有していてもよい。また、単位検査期間TK[j]と、単位印刷期間TPとは、同一の時間長を有していてもよいし、異なる時間長を有していてもよい。
【0043】
また、本実施形態において、制御ユニット2は、インクジェットプリンター1が吐出状態検査処理を実行する場合、駆動信号Comの電位が、単位準備期間TM1において基準電位VC1に維持され、単位準備期間TM2において基準電位VC1から基準電位VC2に変化し、検査期間TTKにおいて基準電位VC2を維持されることを指定する、波形指定信号dComを出力する。なお、図10では、基準電位VC2が、基準電位VC1よりも高電位である場合を例示している。すなわち、図10では、基準電位VC1が基準電位V1であり、基準電位VC2が基準電位V2である場合を例示している。但し、図10は一例に過ぎず、基準電位VC1が基準電位V2であり、基準電位VC2が基準電位V1であってもよい。
【0044】
なお、図10に示すように、制御ユニット2は、接続状態指定信号Qrが、制御期間TK1[j]においてハイレベルとなり、検査準備期間TTM及び制御期間TK2[j]においてローレベルとなるように、接続状態指定回路34を制御する。このため、スイッチWrは、制御期間TK1[j]においてオンし、検査準備期間TTM及び制御期間TK2[j]においてオフする。
【0045】
図11は、検査準備期間TTMにおける、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]との関係を説明するための説明図である。
本実施形態では、個別指定信号Sd[m]が、単位準備期間TMにおいて、吐出部D[m]を、吐出状態検査処理の対象である検査対象吐出部DKとして指定する値「1」と、吐出部D[m]を、吐出状態検査処理の対象ではない検査対象外吐出部DK0として指定する値「2」と、の2つの値のうち、何れか1つの値をとることができる場合を想定する。
【0046】
図11に示すように、個別指定信号Sd[m]が、検査準備期間TTMにおいて、吐出部D[m]を検査対象吐出部DKとして指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、単位準備期間TM1に限りハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が単位準備期間TM1に限りオンし、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]には、基準電位VC1の供給駆動信号Vin[m]が供給される。そして、上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、単位準備期間TM1及び単位準備期間TM2に亘り、基準電位VC1に維持される。
また、個別指定信号Sd[m]が、検査準備期間TTMにおいて、吐出部D[m]を検査対象外吐出部DK0として指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、検査準備期間TTMに亘りハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が検査準備期間TTMに亘りオンし、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]には、基準電位VC1から基準電位VC2へと変化する供給駆動信号Vin[m]が供給される。そして、上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、駆動信号Comの電位変化に追従して変化し、単位準備期間TM2において、基準電位VC2に設定される。
【0047】
図12は、単位検査期間TK[j]における、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]との関係を説明するための説明図である。
本実施形態では、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TK[j]において、吐出部D[m]を、検査予定吐出部DK1として指定する値「1」と、吐出部D[m]を、検査中吐出部DK2として指定する値「2」と、吐出部D[m]を、検査済吐出部DK3として指定する値「3」と、吐出部D[m]を、検査対象外吐出部DK0として指定する値「4」と、の4つの値のうち、何れか1つの値をとることができる場合を想定する。
ここで、検査予定吐出部DK1とは、検査対象吐出部DKのうち、単位検査期間TK[j]よりも後の単位検査期間TKにおいて、吐出状態の検査が予定されている吐出部Dである。また、検査中吐出部DK2とは、検査対象吐出部DKのうち、単位検査期間TK[j]において、吐出状態の検査が実行されてる吐出部Dである。また、検査済吐出部DK3とは、検査対象吐出部DKのうち、単位検査期間TK[j]よりも前の単位検査期間TKにおいて、吐出状態の検査が実行された吐出部Dである。また、検査対象外吐出部DK0とは、上述のとおり、吐出状態の検査の対象ではない吐出部Dである。なお、吐出部D[m]が、検査期間TTKにおいて吐出状態の検査の対象となる検査対象吐出部DKである場合、吐出部D[m]は、検査期間TTKにおいて、「検査予定吐出部DK1」→「検査中吐出部DK2」→「検査済吐出部DK3」と変化することになる。
【0048】
図12に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TK[j]において、吐出部D[m]を検査予定吐出部DK1として指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]を、単位検査期間TK[j]に亘りローレベルに設定する。この場合、接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]は、単位検査期間TK[1]~TK[j-1]においてもローレベルを維持する。すなわち、この場合、スイッチWc[m]及びWs[m]が、単位検査期間TK[1]~TK[j]に亘りオフしていることになる。よって、この場合、検査予定吐出部DK1として指定された吐出部D[m]の有する上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、単位準備期間TM2の終了時の電位である基準電位VC1を維持していることになる。
【0049】
図12に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TK[j]において、吐出部D[m]を検査中吐出部DK2として指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qs[m]を制御期間TK1[j]においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWs[m]が制御期間TK1[j]においてオンする。また、上述のとおり、スイッチWrは、制御期間TK1[j]においてオンする。このため、制御期間TK1[j]において、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]には、配線Lcから、スイッチWr、配線Ls、及び、スイッチWs[m]を介して、駆動信号Comが供給される。
なお、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、制御期間TK1[j]の開始時においては基準電位VC1であるが、制御期間TK1[j]において、基準電位VC2に設定された駆動信号Comが供給されるため、制御期間TK1[j]の終了時においては基準電位VC2に設定される。すなわち、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、制御期間TK1[j]において、基準電位VC1から基準電位VC2に変化する。このため、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]の圧電素子PZ[m]は、制御期間TK1[j]において、上部電極Zu[m]の電位の変動に伴う振動が生じる。そして、検出回路33は、制御期間TK1[j]において、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]が有する圧電素子PZ[m]の振動に伴う電位VZ[m]の変化を、配線Lsを介して、検出電位信号Vout[m]として検出する。
また、図12に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TK[j]において、吐出部D[m]を検査中吐出部DK2として指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を制御期間TK2[j]においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が制御期間TK2[j]においてオンする。このため、制御期間TK2[j]において、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]には、配線Lcから、スイッチWc[m]を介して、駆動信号Comが供給される。なお、制御期間TK2[j]の開始時において、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は基準電位VC2であり、また、駆動信号Comの電位も基準電位VC2である。このため、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、制御期間TK2[j]において、基準電位VC2を維持する。
【0050】
図12に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TK[j]において、吐出部D[m]を検査済吐出部DK3として指定する値「3」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を単位検査期間TK[j]においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が単位検査期間TK[j]においてオンする。よって、この場合、単位検査期間TK[j]において、検査済吐出部DK3として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]には、配線Lcから、スイッチWc[m]を介して、駆動信号Comが供給される。このため、この場合、検査済吐出部DK3として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、制御期間TK2[j]において、基準電位VC2を維持する。
【0051】
図12に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TK[j]において、吐出部D[m]を検査対象外吐出部DK0として指定する値「4」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を単位検査期間TK[j]においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が単位検査期間TK[j]においてオンする。よって、この場合、単位検査期間TK[j]において、検査対象外吐出部DK0として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]には、配線Lcから、スイッチWc[m]を介して、駆動信号Comが供給される。このため、この場合、検査対象外吐出部DK0として指定された吐出部D[m]の上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、制御期間TK2[j]において、基準電位VC2を維持する。
【0052】
なお、図10では、吐出部D[1]が、単位検査期間TK[1]において検査中吐出部DK2として指定され、吐出部D[2]が、単位検査期間TK[2]において検査中吐出部DK2として指定され、また、吐出部D[3]が、検査準備期間TTM及び検査期間TTKにおいて検査対象外吐出部DK0として指定される場合を、例示している。
すなわち、図10では、吐出部D[1]が、検査準備期間TTMにおいて、検査対象吐出部DKとして指定され、単位検査期間TK[1]において、検査中吐出部DK2として指定され、単位検査期間TK[2]~TK[J]において、検査済吐出部DK3として指定される場合を想定する。また、図10では、吐出部D[2]が、検査準備期間TTMにおいて、検査対象吐出部DKとして指定され、単位検査期間TK[1]において、検査予定吐出部DK1として指定され、単位検査期間TK[2]において、検査中吐出部DK2として指定され、単位検査期間TK[3]~TK[J]において、検査済吐出部DK3として指定される場合を想定する。なお、図10では、Jが、3以上の自然数である場合を想定する。
【0053】
図13は、駆動信号Comが、スイッチWc[m]を介して、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]に供給される様子を説明するための説明図である。図13に示す場合、吐出部D[m]に設けられた上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は、駆動信号Comの電位変化に追従して変化する。なお、図13では、mが「1」の場合を例示している。
上述のとおり、スイッチWc[m]を介して駆動信号Comが供給されるのは、単位準備期間TM1における各吐出部D、単位準備期間TM2における検査対象外吐出部DK0、制御期間TK1[j]における検査済吐出部DK3及び検査対象外吐出部DK0、並びに、制御期間TK2[j]における検査中吐出部DK2と検査済吐出部DK3と検査対象外吐出部DK0である。これらの場合においては、スイッチWc[m]がオフからオンに切り替わるタイミングにおいて、吐出部D[m]に設けられた上部電極Zu[m]の電位VZ[m]と、駆動信号Comの電位とは等しい。このため、これらの場合においては、圧電素子PZ[m]に対する駆動信号Comの供給が開始されても、上部電極Zu[m]の電位VZ[m]の急激な変動は生じない。
【0054】
図14は、駆動信号Comが、スイッチWr及びスイッチWs[m]を介して、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]に供給される様子を説明するための説明図である。なお、図14では、mが「1」の場合を例示している。
上述のとおり、スイッチWr及びスイッチWs[m]を介して駆動信号Comが供給されるのは、制御期間TK1[j]における検査中吐出部DK2である。制御期間TK1[j]において、吐出部D[m]が検査中吐出部DK2に指定される場合、制御期間TK1[j]の開始時における上部電極Zu[m]の電位VZ[m]は基準電位VC1であるのに対して、制御期間TK1[j]の開始時における駆動信号Comの電位は基準電位VC2である。このため、制御期間TK1[j]の開始時において、仮に、スイッチWc[m]を介して、圧電素子PZ[m]に対する駆動信号Comの供給を開始すると、上部電極Zu[m]の電位VZ[m]が急激に変化するため、圧電素子PZ[m]に不具合が生じる可能性が生じる。
これに対して、本実施形態では、図14に示すように、制御期間TK1[j]において、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]に対して、駆動信号Comを、スイッチWr及びスイッチWs[m]並びに抵抗Rcsを介して供給する。このため、本実施形態によれば、圧電素子PZ[m]に対して、駆動信号Comを、スイッチWc[m]を介して供給する態様と比較して、駆動信号Comの上部電極Zu[m]への供給開始に伴う、上部電極Zu[m]の電位VZ[m]の変動を緩やかにすることができる。このため、本実施形態によれば、圧電素子PZ[m]に対して、駆動信号Comを、スイッチWc[m]を介して供給する態様と比較して、圧電素子PZ[m]に不具合が生じる可能性を低減可能となる。
【0055】
上述のとおり、検出回路33は、検出電位信号Vout[m]に基づいて、振動波形信号Vd[m]を生成する。具体的には、検出回路33は、検出電位信号Vout[m]を増幅し、ノイズ成分及び直流成分を除去することで、検査ユニット6における処理に適した波形に整形された振動波形信号Vd[m]を生成する。すなわち、本実施形態において、振動波形信号Vd[m]は、制御期間TK1[j]において、検査中吐出部DK2として指定された吐出部D[m]に生じる振動の波形を示す。
【0056】
<<5.検査ユニット>>
次に、吐出部Dに生じる振動について説明した上で、検査ユニット6について説明する。
【0057】
一般的に、吐出部Dに生じる振動は、ノズルN及びキャビティ322の形状及び大きさ、並びに、キャビティ322に充填されたインクの重量、等により決定される固有振動周期を有する。例えば、一般的に、吐出部Dのキャビティ322に気泡が混入しているために吐出異常が生じている場合には、吐出状態が正常な場合と比較して、当該吐出部Dに生じる振動の周期が短くなる。また、一般的に、吐出部DのノズルN付近に紙粉等の異物が付着しているために吐出異常が生じている場合には、吐出状態が正常な場合と比較して、当該吐出部Dに生じる振動の周期が長くなる。このように、吐出部Dにおけるインクの吐出状態に応じて、当該吐出部Dに生じる振動の周期NTcが変動する。このため、吐出部Dに生じる振動の周期NTcに基づいて、当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態を検査することができる。
上述のとおり、振動波形信号Vd[m]は、検査対象吐出部DKとして駆動された吐出部D[m]に生じる振動の波形を示す。すなわち、振動波形信号Vd[m]は、周期NTcを有する。このため、振動波形信号Vd[m]の周期NTcに基づいて、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を検査することができる。
【0058】
検査ユニット6は、図15に示すように、振動波形信号Vd[m]と、振動波形信号Vd[m]の振幅中心レベルの電位Vth-cとを比較する。そして、検査ユニット6は、当該比較の結果に基づいて、振動波形信号Vd[m]の周期NTcを特定する。
また、検査ユニット6は、図16に示すように、周期NTcと、閾値Tth1及び閾値Tth2のうち少なくとも一方と、を比較することで、検査対象吐出部DKとして駆動された吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を判定し、当該判定の結果を示す吐出状態情報NVTを生成する。ここで、閾値Tth1は、吐出部Dの吐出状態が正常である場合における当該吐出部Dに生じる振動の周期NTcと、吐出部Dのキャビティ322に気泡が混入した場合における当該吐出部Dに生じる振動の周期NTcとの、境界を示す値である。また、閾値Tth2は、閾値Tth1よりも大きい値であって、吐出部Dの吐出状態が正常である場合における当該吐出部Dに生じる振動の周期NTcと、吐出部DのノズルN付近に異物が付着した場合において当該吐出部Dに生じる振動の周期NTcとの、境界を示す値である。そして、検査ユニット6は、周期NTcが、「Tth1≦NTc≦Tth2」を満たす場合には、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常であると判定する。そして、この場合、検査ユニット6は、吐出状態情報NVTに対して、検査対象吐出部DKにおけるインクの吐出状態が正常であることを示す値「1」を設定する。また、検査ユニット6は、周期NTcが、「NTc<Tth1」を満たす場合には、検査対象吐出部DKにおいて気泡による吐出異常が生じていると判定する。そして、この場合、検査ユニット6は、吐出状態情報NVTに対して、検査対象吐出部DKにおいて気泡による吐出異常が生じていることを示す値「2」を設定する。また、検査ユニット6は、周期NTcが、「NTc>Tth2」を満たす場合には、検査対象吐出部DKにおいて異物付着による吐出異常が生じていると判定する。そして、この場合、検査ユニット6は、吐出状態情報NVTに対して、検査対象吐出部DKにおいて異物付着による吐出異常が生じていることを示す値「3」を設定する。
【0059】
<<6.吐出状態検査処理と微振動処理との関係>>
次に、図17及び図18を参照しつつ、印刷処理、吐出状態検査処理、及び、微振動処理の関係について説明する。ここで、図17は、インクジェットプリンター1が起動された後における、インクジェットプリンター1の動作を説明するためのフローチャートである。また、図18は、インクジェットプリンター1が起動された後における、インクジェットプリンター1の動作期間を説明するための説明図である。
【0060】
図17に示すように、インクジェットプリンター1が、ホストコンピューターから印刷データImgを受信すると、制御ユニット2は、当該印刷データImgに基づいて、印刷データImgに基づく印刷処理を実行するための印刷期間TTPを決定する(S100)。なお、本実施形態では、印刷データImgが、記録用紙Pに対して複数の画像を形成することを示す場合を想定する。このため、制御ユニット2は、ステップS100において、印刷データImgの示す複数の画像と1対1に対応する複数の印刷期間TTPを設定する。なお、図18では、制御ユニット2が、印刷期間TTP-1及び印刷期間TTP-2を含む、複数の印刷期間TTPを設定した場合を例示している。
【0061】
次に、制御ユニット2は、インクジェットプリンター1の動作期間のうち、印刷期間TTPを除く期間を、印刷外期間TTNとして特定する(S110)。なお、図18では、制御ユニット2が、印刷期間TTP-1と印刷期間TTP-2との間の期間を、印刷外期間TTNとして特定した場合を例示している。
次に、制御ユニット2は、印刷外期間TTNにおいて、1または複数の微振動期間TTBを設定する(S120)。なお、図18では、制御ユニット2が、印刷外期間TTNにおいて、微振動期間TTB-1、TTB-2、及び、TTB-3の3つの微振動期間TTBを設定した場合を例示している。
次に、制御ユニット2は、印刷外期間TTNのうち微振動期間TTBを除く期間において、検査準備期間TTM及び検査期間TTKを設定する(S130)。なお、図18では、制御ユニット2が、微振動期間TTB-1と微振動期間TTB-2との間に、検査準備期間TTM-1及び検査期間TTK-1を設定し、また、微振動期間TTB-2と微振動期間TTB-3との間に、検査準備期間TTM-2及び検査期間TTK-2を設定した場合を、例示している。
【0062】
次に、制御ユニット2は、図17に示すように、検査期間TTKにおいて吐出状態の検査の対象とする検査対象吐出部DKを決定する(S140)。
具体的には、制御ユニット2は、ステップS140において、まず、ステップS130で決定した検査期間TTKの時間長に基づいて、当該検査期間TTKにおいて検査が可能な吐出部Dの個数を特定する。具体的には、例えば、制御ユニット2は、当該検査期間TTKの中に設けることが可能な単位検査期間TKの個数を特定してもよい。
次に、制御ユニット2は、ステップS140において、吐出部D[1]~D[M]に対する過去の吐出状態の検査の履歴、及び、吐出部D[1]~D[M]における過去のインクの吐出の履歴の一方または両方に基づいて、ステップS130で決定した検査期間TTKにおいて吐出状態の検査の対象とする検査対象吐出部DKを決定する。具体的には、例えば、制御ユニット2は、吐出部D[1]~D[M]のうち、相対的に、過去の吐出状態の検査からの経過時間が長い吐出部D[m]を、検査対象吐出部DKとして選択してもよい。また、例えば、制御ユニット2は、吐出部D[1]~D[M]のうち、相対的に、過去のインクの吐出からの経過時間が長い吐出部D[m]を、検査対象吐出部DKとして選択してもよい。また、例えば、制御ユニット2は、吐出部D[1]~D[M]のうち、相対的に、特定の期間におけるインクの吐出回数の多い吐出部D[m]を、検査対象吐出部DKとして選択してもよい。
【0063】
その後、制御ユニット2は、図17に示すように、現時刻が印刷期間TTPであるか否か、または、現時刻から所定時間内に印刷期間TTPが到来するか否かを判定する(S150)。そして、制御ユニット2は、ステップS150における判定の結果が肯定の場合、印刷処理を実行する(S160)。また、制御ユニット2は、ステップS150における判定の結果が否定の場合、処理をステップS170に進める。
また、制御ユニット2は、現時刻が微振動期間TTBであるか否か、または、現時刻から所定時間内に微振動期間TTBが到来するか否かを判定する(S170)。そして、制御ユニット2は、ステップS170における判定の結果が肯定の場合、微振動処理を実行する(S180)。また、制御ユニット2は、ステップS170における判定の結果が否定の場合、処理をステップS190に進める。
また、制御ユニット2は、現時刻が検査準備期間TTM若しくは検査期間TTKであるか否か、または、現時刻から所定時間内に検査準備期間TTMが到来するか否かを判定する(S190)。そして、制御ユニット2は、ステップS190における判定の結果が肯定の場合、吐出状態検査処理を実行する(S200)。また、制御ユニット2は、ステップS190における判定の結果が否定の場合、処理をステップS210に進める。
その後、制御ユニット2は、所定の終了条件が充足されたか否かを判定する(S210)。そして、制御ユニット2は、ステップS210における判定の結果が肯定の場合、図17に示す一連の処理を終了させる。また、制御ユニット2は、ステップS210における判定の結果が否定の場合、処理をステップS150に進める。ここで、所定の終了条件とは、例えば、ステップS100~S130で設定した各種期間が全て終了したことであってもよいし、または、インクジェットプリンター1の電源がオフに設定されたことであってもよい。
【0064】
なお、本実施形態では、印刷外期間TTNにおいて、複数の微振動期間TTBが設定された場合、当該複数の微振動期間TTBのうち、一の微振動期間TTBの開始時及び終了時における駆動信号Comの電位と、当該複数の微振動期間TTBのうち、一の微振動期間TTBに後続する他の微振動期間TTBの開始時及び終了時の駆動信号Comの電位とは、異なる。例えば、図18に示す例では、微振動期間TTB-1の開始時及び終了時における駆動信号Comの電位は、基準電位V1であり、微振動期間TTB-2の開始時及び終了時における駆動信号Comの電位は、基準電位V2であり、微振動期間TTB-3の開始時及び終了時における駆動信号Comの電位は、基準電位V1である。
また、一の微振動期間TTBと他の微振動期間TTBの間に設けられる検査準備期間TTMにおける駆動信号Comは、一の微振動期間TTBの終了時における駆動信号Comの電位である基準電位VC1から、他の微振動期間TTBの開始時における駆動信号Comの電位である基準電位VC2に変化する波形となる。そして、一の微振動期間TTBと他の微振動期間TTBの間に設けられる検査期間TTKにおける駆動信号Comは、他の微振動期間TTBの開始時における駆動信号Comの電位である基準電位VC2を維持する。例えば、図18に示す例では、検査準備期間TTM-1における駆動信号Comは、基準電位V1から基準電位V2へと変化する波形となり、検査期間TTK-1における駆動信号Comは、基準電位V2を維持する波形となり、検査準備期間TTM-2における駆動信号Comは、基準電位V2から基準電位V1へと変化する波形となり、検査期間TTK-2における駆動信号Comは、基準電位V1を維持する波形となる。
そして、本実施形態では、検査準備期間TTMの開始時及び終了時の駆動信号Comの電位差を利用して、検査対象吐出部DKに振動を生じさせることで、当該検査対象吐出部DKに対する吐出状態検査処理が実行される。換言すれば、本実施形態では、一の微振動期間TTBと他の微振動期間TTBの間に設けられる検査期間TTKにおける吐出状態検査処理は、一の微振動期間TTBの終了時における駆動信号Comの電位である基準電位VC1と、他の微振動期間TTBの開始時における駆動信号Comの電位である基準電位VC2との、電位差を利用して実行される。
【0065】
なお、本実施形態では、検査期間TTK-1において吐出状態の検査の対象とする検査対象吐出部DKと、検査期間TTK-2において吐出状態の検査の対象とする検査対象吐出部DKとは、異なっていてもよい。例えば、検査期間TTK-1において、吐出部D[1]及び吐出部D[2]を吐出状態の検査の対象とする場合、検査期間TTK-2において、吐出部D[3]を吐出状態の検査の対象としてもよい。
【0066】
<<7.参考例>>
以下、本実施形態の効果をより明確化するために、図19及び図20を参照しつつ、参考例に係る吐出状態検査処理について説明する。ここで、図19は、参考例に係る吐出状態検査処理が実行される際に、駆動信号生成ユニット4が出力する駆動信号Comの波形を示すタイミングチャートである。また、図20は、参考例に係る吐出状態検査処理が実行される際に、制御ユニット2が出力する個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定回路34が出力する接続状態指定信号Qc[m]及びQs[m]と、の関係を説明するための説明図である。
なお、参考例に係るインクジェットプリンターは、図1乃至図5に示すインクジェットプリンター1と同様の構成を有することとする。また、参考例に係るインクジェットプリンターにおいて、接続状態指定信号Qrは常にローレベルに設定され、スイッチWrは常にオフしていることとする。
【0067】
図19に示すように、参考例に係る吐出状態検査処理が実行される場合、1または複数の単位検査期間TKzが設定される。そして、参考例において、駆動信号Comには、単位検査期間TKzのうち、制御期間TSS1において、基準電位V1から、基準電位V1よりも低電位の電位VLsへと変化し、その後、基準電位V1よりも高電位の電位VHsへと変化する、波形PSが設けられる。また、参考例において、駆動信号Comは、単位検査期間TKzのうち、制御期間TSS1に後続する制御期間TSS2において、電位VHsを維持し、制御期間TSS2に後続する制御期間TSS3において、電位VHsから基準電位V1へと変化する。
【0068】
図20に示すように、参考例では、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TKzにおいて、吐出部D[m]を、吐出状態検査処理の対象である検査対象吐出部DKとして指定する値「1」と、吐出部D[m]を、吐出状態検査処理の対象外である検査対象外吐出部DK0として指定する値「2」と、の2つの値のうち、何れか1つの値をとることができる場合を想定する。
図20に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位検査期間TKzにおいて、吐出部D[m]を検査対象吐出部DKとして指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Qc[m]を、制御期間TSS1及び制御期間TSS3においてハイレベルに設定し、また、接続状態指定信号Qs[m]を、制御期間TSS2においてハイレベルに設定する。この場合、制御期間TSS1においてスイッチWc[m]がオンし、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に、波形PSを有する駆動信号Comが供給されることで、吐出部D[m]が駆動され、吐出部D[m]に振動が生じる。次に、制御期間TSS2においてスイッチWs[m]がオンし、検出回路33が、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に残留している振動を、検出電位信号Vout[m]として検出する。そして、制御期間TSS3においてスイッチWc[m]がオンし、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に、電位VHsから基準電位V1に変化する駆動信号Comが供給されることで、上部電極Zu[m]の電位VZ[m]が、電位VHsから基準電位V1に戻される。
【0069】
以上のように、参考例によれば、検査対象吐出部DKを駆動するために、各単位検査期間TKzにおいて、駆動信号Comを、例えば、「基準電位V1→電位VLs→電位VHs→基準電位V1」と変化させることが必要になる。
これに対して、本実施形態によれば、単位検査期間TKにおいて、駆動信号Comの電位を、基準電位VC2に維持しつつ、当該駆動信号Comを、基準電位VC1に設定された検査対象吐出部DKの上部電極Zu[m]に供給することで、検査対象吐出部DKに振動を生じさせる。
このため、本実施形態によれば、参考例と比較して、駆動信号Comの生成に係る制御が容易となる。また、本実施形態によれば、参考例と比較して、駆動信号Comの生成に係る電力量を低減させることができる。また、本実施形態によれば、参考例と比較して、駆動信号Comにより検査対象吐出部DKを振動させるための時間を短くすることができる。
【0070】
<<8.実施形態のまとめ>>
以下、本実施形態についてのまとめと、本実施形態の効果について説明する。
【0071】
本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、駆動信号Comを生成する駆動信号生成ユニット4と、駆動信号Comが供給される配線Lcと、駆動信号Comにより駆動されてインクを吐出する吐出部D[1]と、配線Lcに供給される駆動信号Comを吐出部D[1]に供給するか否かを切り替える供給回路31と、吐出部D[1]に生じている振動を検出する検出回路33と、検出回路33の検出結果に基づいて吐出部D[1]におけるインクの吐出状態を検査する検査ユニット6と、を備え、吐出部D[1]から記録用紙Pに対してインクを吐出する印刷処理が実行される印刷期間TTPを除く印刷外期間TTNのうち、微振動期間TTB-1において、供給回路31が、駆動信号Comを吐出部D[1]に供給し、駆動信号生成ユニット4が、駆動信号Comの電位を、基準電位V1から他の電位に変化させた後に基準電位V1に戻すことで、吐出部D[1]を駆動する1回目の微振動処理が実行され、印刷外期間TTNのうち、微振動期間TTB-1の終了後の検査準備期間TTM-1において、供給回路31が、駆動信号Comの吐出部D[1]への供給を停止し、駆動信号生成ユニット4が、駆動信号Comの電位を、基準電位V1から基準電位V2に変化させ、印刷外期間TTNのうち、検査準備期間TTM-1の終了後の検査期間TTK-1において、供給回路31が、駆動信号Comを吐出部D[1]に供給し、駆動信号生成ユニット4が、駆動信号Comの電位を、基準電位V2に維持し、検出回路33が、吐出部D[1]に生じている振動を検出し、検査ユニット6が、吐出部D[1]におけるインクの吐出状態を検査し、印刷外期間TTNのうち、検査準備期間TTM-1の終了後の微振動期間TTB-2において、供給回路31が、駆動信号Comを吐出部D[1]に供給し、駆動信号生成ユニット4が、駆動信号Comの電位を、基準電位V2から他の電位に変化させた後に基準電位V2に戻すことで、吐出部D[1]を駆動する2回目の微振動処理が実行される、ことを特徴とする。
なお、本実施形態において、駆動信号生成ユニット4は、「生成部」の一例であり、検査ユニット6は、「検査部」の一例であり、供給回路31は、「供給部」の一例であり、検出回路33は、「検出部」の一例であり、吐出部D[1]は、「第1吐出部」の一例であり、配線Lcは、「第1配線」の一例であり、微振動期間TTB-1は、「第1期間」の一例であり、検査準備期間TTM-1は、「第2期間」の一例であり、検査期間TTK-1は、「第3期間」の一例であり、微振動期間TTB-2は、「第4期間」の一例であり、基準電位V1は、「第1基準電位」の一例であり、基準電位V2は、「第2基準電位」の一例であり、1回目の微振動処理は、「第1駆動処理」の一例であり、2回目の微振動処理は、「第2駆動処理」の一例である。
【0072】
本実施形態によれば、印刷外期間TTNのうち、1回目の微振動処理が実行される微振動期間TTB-1と、2回目の微振動処理が実行される微振動期間TTB-2との、間の期間を利用して、吐出部D[1]に生じている振動を検出し、当該検出結果に基づいて吐出部D[1]の検査を実行することができる。
また、本実施形態によれば、微振動期間TTB-1において、基準電位V1に設定された駆動信号Comを吐出部D[1]に供給し、検査期間TTK-1において、基準電位V2に設定された駆動信号Comを吐出部D[1]に供給することで、吐出部D[1]に振動を生じさせる。このため、本実施形態は、例えば、吐出部D[1]に対して駆動信号Comを供給しているタイミングにおいて駆動信号Comの電位を変化させることで吐出部D[1]に振動を生じさせる従来の態様と比較して、吐出部D[1]に振動を与えるために吐出部D[1]に駆動信号Comを供給する時間を短縮することができる。
【0073】
また、本実施形態において、駆動信号生成ユニット4は、1回目の微振動処理及び2回目の微振動処理において、吐出部D[1]から液体が吐出されないように吐出部D[1]を駆動する波形を有する駆動信号Comを生成する、ことを特徴とする。
【0074】
本実施形態によれば、印刷外期間TTNにおいて、吐出部D[1]内部のインクを攪拌する微振動処理が実行されるため、吐出部D[1]内部のインクが増粘することに起因して、吐出部D[1]におけるインクの吐出状態が異常となることを防止することが可能となる。
【0075】
また、本実施形態において、吐出部D[1]は、上部電極Zu[1]を含む1対の電極を有する圧電素子PZ[1]を具備し、供給回路31は、上部電極Zu[1]及び配線Lcを電気的に接続するか否かを切り替えるスイッチWc[1]と、上部電極Zu[1]及び配線Lsを電気的に接続するか否かを切り替えるスイッチWs[1]と、配線Lc及び配線Lsを電気的に接続するか否かを切り替えるスイッチWrと、配線Lc及び配線Lsの間においてスイッチWrと直列に設けられた抵抗Rcsと、を備え、検出回路33は、配線Lsの電位を検出する、ことを特徴とする。
なお、本実施形態において、上部電極Zu[1]は、「第1電極」の一例であり、圧電素子PZ[1]は、「第1圧電素子」の一例であり、スイッチWc[1]は、「第1スイッチ」の一例であり、スイッチWs[1]は、「第2スイッチ」の一例であり、スイッチWrは、「第3スイッチ」の一例であり、抵抗Rcsは、「第1抵抗」の一例であり、配線Lsは、「第2配線」の一例である。
【0076】
本実施形態によれば、スイッチWc[1]をオンすることにより、駆動信号Comを上部電極Zu[1]に供給することができる。このため、本実施形態によれば、駆動信号Comにより吐出部D[1]を駆動して、吐出部D[1]からインクを吐出させることができる。
また、本実施形態によれば、スイッチWc[1]及びスイッチWrをオフした状態で、駆動信号Comの電位を上部電極Zu[1]の電位とは異なる電位に設定し、その後、スイッチWs[1]及びスイッチWrをオンすることで、駆動信号ComがスイッチWr及び抵抗Rcs並びにスイッチWs[1]を介して、配線Lcから上部電極Zu[1]に供給される。この場合、上部電極Zu[1]の電位は、駆動信号Comの電位とは異なる電位から、駆動信号Comの電位へと変化し、その結果として圧電素子PZ[1]が振動する。そして、検出回路33が、圧電素子PZ[1]の振動に応じた上部電極Zu[1]の電位変化を、スイッチWs[1]及び配線Lsを介して検出することで、検出回路33における検出結果に基づいて吐出部D[1]におけるインクの吐出状態を検査することができる。すなわち、本実施形態によれば、吐出部D[1]におけるインクの吐出状態の検査のために、駆動信号Comの電位を、上部電極Zu[1]の電位とは異なる電位に設定するだけでよい。このため、本実施形態によれば、スイッチWc[1]をオンした状態で駆動信号Comの電位を変化させて圧電素子PZ[1]を振動させることで吐出部D[1]におけるインクの吐出状態を検査するといった従来の態様と比較して、吐出状態の検査を行う場合に配線Lcに供給される駆動信号Comの波形を簡素化することが可能となる。これにより、本実施形態によれば、従来の態様と比較して、吐出状態の検査に係る駆動信号Comの波形生成に係る制御を簡素化することができ、また、吐出状態の検査のために駆動信号Comにより圧電素子PZ[1]に振動を生じさせるための時間を短縮することができる。
また、本実施形態によれば、配線Lc及び配線Lsの間に、抵抗Rcsが設けられている。このため、本実施形態によれば、例えば、駆動信号Comが配線LcからスイッチWr及び抵抗Rcs並びにスイッチWs[1]を介して上部電極Zu[1]に供給される場合に、駆動信号Comが配線LcからスイッチWc[1]を介して上部電極Zu[1]に供給される態様と比較して、上部電極Zu[1]の電位変動を緩やかにすることができる。これにより、本実施形態によれば、圧電素子PZ[1]に対して、上部電極Zu[1]とは異なる電位の駆動信号Comを供給する場合において、駆動信号Comが配線LcからスイッチWc[1]を介して上部電極Zu[1]に供給される態様と比較して、駆動信号Comの供給に伴う上部電極Zu[1]の電位変化に起因する圧電素子PZ[1]の不具合を抑制することができる。つまり、本実施形態によれば、上部電極Zu[1]の電位とは異なる電位の駆動信号Comを上部電極Zu[1]に安全に供給することが可能となる。換言すれば、本実施形態によれば、駆動信号Comの波形の簡素化による駆動信号Comの生成に係る制御負荷の軽減と、圧電素子PZ[1]に不具合が生じる可能性の低減との、両立を図ることが可能となる。
【0077】
また、本実施形態において、供給回路31は、微振動期間TTB-1において、スイッチWs[1]及びスイッチWrをオフし、スイッチWc[1]をオンすることで、駆動信号Comを上部電極Zu[1]に供給し、検査期間TTK-1において、スイッチWc[1]をオフし、スイッチWs[1]及びスイッチWrをオンすることで、駆動信号Comを上部電極Zu[1]に供給する、ことを特徴とする。
【0078】
本実施形態によれば、微振動期間TTB-1において、上部電極Zu[1]の電位が基準電位V1に設定され、検査期間TTK-1において、上部電極Zu[1]の電位が基準電位V1から基準電位V2へと変化する。このため、本実施形態では、検査期間TTK-1において、圧電素子PZ[1]が振動する。これにより、本実施形態によれば、検出回路33が検査期間TTK-1において配線Ls及びスイッチWs[1]を介して検出した上部電極Zu[1]の電位に基づいて、吐出部D[1]におけるインクの吐出状態を検査することができる。
【0079】
また、本実施形態において、インクジェットプリンター1は、駆動信号Comにより駆動されてインクを吐出する吐出部D[3]を備え、供給回路31は、配線Lcに供給される駆動信号Comを吐出部D[3]に供給するか否かを切り替え、検出回路33は、吐出部D[3]に生じている振動を検出し、検査ユニット6は、検出回路33の検出結果に基づいて吐出部D[3]におけるインクの吐出状態を検査し、印刷外期間TTNのうち、微振動期間TTB-2において、供給回路31が、駆動信号Comを吐出部D[3]に供給し、駆動信号生成ユニット4が、駆動信号Comの電位を、基準電位V2から他の電位に変化させた後に基準電位V2に戻すことで、吐出部D[3]を駆動し、印刷外期間TTNのうち、微振動期間TTB-2の終了後の検査準備期間TTM-2において、供給回路31が、駆動信号Comの吐出部D[3]への供給を停止し、駆動信号生成ユニット4が、駆動信号Comの電位を、基準電位V2から基準電位V1に変化させ、印刷外期間TTNのうち、検査準備期間TTM-2の終了後の検査期間TTK-2において、供給回路31が、駆動信号Comを吐出部D[3]に供給し、駆動信号生成ユニット4が、駆動信号Comの電位を、基準電位V1に維持し、検出回路33が、吐出部D[3]に生じている振動を検出し、検査ユニット6が、吐出部D[3]におけるインクの吐出状態を検査する、ことを特徴とする。
なお、本実施形態において、吐出部D[3]は、「第2吐出部」の一例であり、検査準備期間TTM-2は、「第5期間」の一例であり、検査期間TTK-2は、「第6期間」の一例である。
【0080】
本実施形態によれば、微振動期間TTB-2において、基準電位V2に設定された駆動信号Comを吐出部D[3]に供給し、検査期間TTK-2において、基準電位V1に設定された駆動信号Comを吐出部D[3]に供給することで、吐出部D[3]に振動を生じさせる。このため、本実施形態は、例えば、吐出部D[3]に対して駆動信号Comを供給しているタイミングにおいて駆動信号Comの電位を変化させることで吐出部D[3]に振動を生じさせる従来の態様と比較して、吐出部D[3]に振動を与えるために吐出部D[3]に駆動信号Comを供給する時間を短縮することができる。
【0081】
<<B.変形例>>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0082】
<<変形例1>>
上述した実施形態において、インクジェットプリンター1は、単位微振動期間TBにおいて、吐出部Dからインクが吐出しない程度に吐出部Dを駆動する微振動処理を実行したが、本発明なこのような態様に限定されるものではない。例えば、インクジェットプリンター1は、単位微振動期間TBにおいて、吐出部D内部のインクを排出するフラッシング処理を実行してもよい。この場合、単位微振動期間TBにおいて、駆動信号Comは、波形PBの代わりに、例えば波形PP1のような、吐出部D内部のインクを吐出するための波形を有していてもよい。
【0083】
<<変形例2>>
上述した実施形態及び変形例1において、検査ユニット6は、制御ユニット2とは別個の回路として設けられるが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。検査ユニット6のうちの一部または全部は、制御ユニット2のCPU等が制御プログラムに従って動作することにより実現される機能ブロックとして実装されてもよい。
【0084】
<<変形例3>>
上述した実施形態並びに変形例1及び2において、インクジェットプリンター1は、1または複数のヘッドユニット3と、1または複数の検査ユニット6とが、1対1に対応するように設けられるが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インクジェットプリンター1には、複数のヘッドユニット3に対して1個の検査ユニット6が設けられてもよく、1個のヘッドユニット3に対して複数の検査ユニット6が設けられてもよい。
【0085】
<<変形例4>>
上述した実施形態並びに変形例1乃至3では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット3において、複数のノズルNが、記録用紙Pの幅よりも広く延在するように設けられた、所謂ラインプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…インクジェットプリンター、2…制御ユニット、3…ヘッドユニット、4…駆動信号生成ユニット、5…記憶ユニット、6…検査ユニット、7…搬送ユニット、31…供給回路、32…記録ヘッド、33…検出回路、34…接続状態指定回路、D[m]…吐出部、Lc…配線、Ls…配線、PZ[m]…圧電素子、Rcs…抵抗、Wc[m]…スイッチ、Ws[m]…スイッチ、Wr…スイッチ、Zu[m]…上部電極。
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