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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019036149
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141286
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 克哉
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211447(JP,A)
【文献】特開2010-004476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 - 1/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が挿入される原稿挿入口と、
前記原稿挿入口に挿入された原稿を、当該原稿挿入口へ引き込みながら所定の搬送方向に搬送するように構成された搬送部と、
前記搬送部により搬送される原稿の画像を読み取るように構成された読取部と、
前記原稿挿入口に原稿が存在することを検出するように構成された検出部と、
前記搬送部による単一原稿の搬送量を計数するように構成された計数部と、
を備え、
前記原稿挿入口は、複数の原稿を主走査方向に並べて挿入可能に構成され、
前記計数部は、前記検出部が原稿の存在を継続的に検出している間の前記搬送部による原稿の搬送量を計数し、前記読取部が読み取った画像の中に、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合が存在する場合、当該画像の集合における副走査方向の長さに応じた値を前記計数された搬送量から減算して当該搬送量を補正する画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記計数部は、前記搬送部による原稿の搬送量が所定搬送量に達する毎に、当該所定搬送量だけ原稿が搬送される際に前記読取部が読み取った画像を読み込み、当該読み込んだ画像の中に単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合が存在するか否かを判断する画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記計数部は、前記読み込んだ画像の中に、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合としての第1集合が存在し、かつ、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合における前記搬送方向に対する上流側の一部とみなすことのできる画像の集合としての第2集合が存在しない場合、前記所定搬送量を、前記計数された搬送量から減算して当該搬送量を補正する画像読取装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記計数部は、前記読み込んだ画像の中に、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合としての第1集合と、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合における前記搬送方向に対する上流側の一部とみなすことのできる画像の集合としての第2集合と、が存在する場合、前記第1集合における前記搬送方向に対する上流側端部としての第1端部よりも前記第2集合における前記搬送方向に対する上流側端部としての第2端部の方が下流側にあるときは、前記第1端部から前記第2端部までの副走査方向の距離を、前記計数された搬送量から減算して当該搬送量を補正する画像読取装置。
【請求項5】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記計数部は、前記読み込んだ画像の中に、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合としての第1集合と、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合における前記搬送方向に対する上流側の一部とみなすことのできる画像の集合としての第2集合と、が存在する場合、前記第1集合における前記搬送方向に対する上流側端部としての第1端部よりも前記第2集合における前記搬送方向に対する上流側端部としての第2端部の方が上流側にあるときは、前記計数された搬送量を減算せずにそのまま原稿の搬送量とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿が挿入される原稿挿入口を備え、その原稿挿入口に挿入された原稿を搬送部によって搬送しながら、前記原稿の画像を読取部を介して読み取る画像読取装置が提案されている。また、この種の画像読取装置では、複数の原稿を主走査方向に並べて(すなわち、当該原稿同士の副走査方向の位置が少なくとも部分的に一致するように配置して)挿入可能なように、前記原稿挿入口を構成することが考えられる。その場合、例えば特許文献1に示されたように、主走査方向及び副走査方向に複数の原稿が並べられた画像を一連の画像として読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-170968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されたような画像読取装置において、原稿挿入口に原稿が存在していることをセンサ等の検出部が継続的に検出している間の、搬送部による原稿の搬送量を、原稿の長さとすることが考えられる。しかしながら、複数の原稿が、当該原稿同士の副走査方向の位置が部分的に一致するように配置して原稿挿入口に挿入され、それらの原稿が主走査方向及び副走査方向に複数並べられた一連の画像として読み取られると、前記方法で計数される原稿の長さは極めて長くなる。
【0005】
一方、画像読取装置において、原稿の長さの計数値が所定の閾値を超えると、原稿の空送等の異常が発生しているとみなして、ジャム処理等のエラー処理を実行することが考えられる。その場合、前記方法で原稿の長さを計数すると、異常が発生していないにも拘わらずエラー処理が実行される。
【0006】
そこで、本開示の1つの局面は、複数の原稿が主走査方向に並べて原稿挿入口に挿入されても、単一原稿の搬送量(すなわち、原稿の長さ)を適切に計数可能な画像読取装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様による画像読取装置は、原稿挿入口と、搬送部と、読取部と、検出部と、計数部と、を備える。原稿挿入口は、原稿が挿入される。搬送部は、前記原稿挿入口に挿入された原稿を、当該原稿挿入口へ引き込みながら所定の搬送方向に搬送するように構成されている。読取部は、前記搬送部により搬送される原稿の画像を読み取るように構成されている。検出部は、前記原稿挿入口に原稿が存在することを検出するように構成されている。計数部は、前記搬送部による単一原稿の搬送量を計数するように構成されている。
【0008】
また、前記原稿挿入口は、複数の原稿を主走査方向に並べて挿入可能に構成されている。前記計数部は、前記検出部が原稿の存在を継続的に検出している間の前記搬送部による原稿の搬送量を計数し、前記読取部が読み取った画像の中に、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合が存在する場合、当該画像の集合における副走査方向の長さに応じた値を前記計数された搬送量から減算して当該搬送量を補正する。なお、継続的に検出しているとは、振動等の影響で一瞬非検出となった状態も含んでもよい。
【0009】
このような構成によれば、原稿挿入口に複数の原稿が挿入された場合でも、読取部が読み取った画像の中に、単一の原稿に係る画像として切り取ることのできる画像の集合が存在する場合、当該画像の集合における副走査方向の長さに応じた値を前記計数された搬送量から減算して当該搬送量が補正される。このため、原稿挿入口に複数の原稿が挿入されても、原稿の長さが異常に長いものとして計数されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の画像読取装置の構成を表す模式図である。
図2】実施形態の画像読取装置の制御系の構成を表すブロック図である。
図3】その制御系で実行される計数処理のフローチャートである。
図4】前記制御系で実行される計数値補正処理のフローチャートである。
図5】実施形態の画像形成装置において、複数の原稿が主走査方向に並べて挿入された場合の、各原稿とCISとの位置関係を表す説明図である。
図6】前記計数値補正処理の対象範囲にクロップ可能なオブジェクトのみが存在する場合の、各原稿とCISとの位置関係を表す説明図である。
図7】前記対象範囲にクロップ可能なオブジェクトが存在しない場合の、各原稿とCISとの位置関係を表す説明図である。
図8】前記対象範囲にクロップ可能なオブジェクトとオブジェクト候補が存在する場合の、各原稿とCISとの位置関係を表す説明図である。
図9】前記対象範囲にクロップ可能なオブジェクトとオブジェクト候補が存在する場合の、他の例における各原稿とCISとの位置関係を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
本実施形態の画像読取装置1は、装置を直線状に貫通する(すなわち、薄い直方体状の)原稿搬送路3を備えている。原稿搬送路3には、上流側に一対の搬送ローラ5が、下流側に一対の搬送ローラ7が、それぞれ設けられている。また、搬送ローラ5と搬送ローラ7との間の原稿搬送路3には、CIS(Contact Image Sensor:密着イメージセンサ)9が設けられている。なお、CIS9は、搬送ローラ5,7による原稿Gの搬送方向(すなわち、副走査方向)とは直交する方向(すなわち、主走査方向)に配列された複数の読取素子を備える一次元イメージセンサである。
【0012】
また、原稿搬送路3の上流部には、当該原稿搬送路3の上流側端部としての原稿挿入口3Aから挿入された原稿G(図5参照)を検知する原稿検知センサ11が設けられている。なお、原稿挿入口3Aは、例えば名刺等の複数の原稿Gを主走査方向に並べて(すなわち、当該原稿G同士の副走査方向の位置が少なくとも部分的に一致するように配置して)挿入可能な幅(すなわち、主走査方向の長さ)を有している。
【0013】
更に、図2に示すように、画像読取装置1は、搬送ローラ5,7を駆動する搬送モータ13と、CIS9が読み取ったスキャンデータをLAN等の通信回線又はUSB等の記録媒体に送信するインタフェース(I/F)15と、それらを制御する制御部20(計数部の一例)とを備えている。制御部20は、CPU21,ROM23,RAM25,NVRAM27等を備えたマイクロコンピュータとして構成されている。制御部20のCPU21は、図示省略したスキャンボタンが押下されると、ROM23に記憶されたプログラムに基づき、図3に示す計数処理と、図4に示す計数値補正処理とを、並行して実行する。
【0014】
[1-2.計数処理]
次に、計数処理について説明する。この処理では、先ず、S1にて(Sはステップを表す:以下同様)、CPU21は、原稿検知センサ11からの信号が、原稿Gを検出していない状態(すなわち、OFF)から、原稿Gを検出している状態(すなわち、ON)に変化したか否かを判断する。原稿検知センサ11からの信号がOFFからONに変化していない場合は(S1:N)、CPU21はS1の処理を繰り返して待機し、原稿検知センサ11からの信号がOFFからONに変化すると(S1:Y)、CPU21はS2の処理を実行する。
【0015】
S2では、RAM25におけるスキャンデータ保存用の領域が初期化される。続くS3では、ライン数を計数するカウンタCが0に初期化される。続くS4では、カウンタCに1が加算され、S5にて、1ライン分のスキャンデータがCIS9から取得されてRAM25における前記領域に書き込まれる。なお、このS5の処理では、CIS9の読み取り速度に応じて搬送モータ13を駆動することによって、原稿Gを搬送ローラ5,7を介して1ライン分搬送する処理も実行される。すなわち、本実施形態では、原稿挿入口3Aに原稿Gが挿入されて原稿検知センサ11に検知されると(S1:Y)、当該原稿Gを原稿挿入口3Aに引き込みながら図1に示す搬送方向へ搬送する動作が自動的に開始されて、当該原稿Gに対するスキャンが実行される(S5)。そして、このスキャンがスタートしたら、名刺等の原稿Gを原稿挿入口3Aに複数続けて挿入することが可能となる。
【0016】
続くS6では、カウンタCの値がエラー判定用の閾値T以上となったか否かが判断され、カウンタCの値が閾値T未満であれば(S6:N)、処理は前述のS4へ移行する。こうして、原稿Gの画像を1ラインずつ読み取ってRAM25に書き込みながら(S5)、カウンタCによって読み取ったライン数(すなわち、原稿Gの搬送量)を計数する処理が繰り返される。通常は、カウンタCの値が閾値Tに達する前に、1枚の原稿Gに対するスキャンが終了して(すなわち、原稿検知センサ11からの信号がOFFになって)、この計数処理も終了される。
【0017】
ところが、搬送ローラ5又は7による原稿Gの搬送状態が空送状態となったり、ジャムが発生したりした場合には、搬送ローラ5,7がいくら駆動されても原稿検知センサ11からの信号がOFFにならず、カウンタCの値が閾値T以上となることがある。その場合(S6:Y)、搬送モータ13を停止するなどのジャム処理(JAM処理)がS7にて実行された後、この計数処理は終了する。
【0018】
[1-3.計数値補正処理]
ここで、原稿挿入口3Aは、例えば名刺等の原稿Gを主走査方向に複数並べて挿入可能な幅を有しているので、例えば図5に示すように複数の原稿Gが原稿挿入口3Aに挿入された場合、原稿検知センサ11からの信号がOFFにならない状態が継続することがある。そのような場合に、カウンタCの値が加算され続けると、カウンタCの値が閾値Tを超えてしまう。そこで、CPU21は、図4に示す計数値補正処理を実行することにより、カウンタCの値を次のように補正する。なお、以下では、図5に示すように、原稿Gの画像の読取方向(すなわち、搬送方向とは逆方向)へ行くに従って増加するY座標と、主走査方向に沿って(例えば左端から右端へ行くに従って)増加するX座標とを備えた座標系を想定して説明する。
【0019】
図4に示すように、この処理では、先ず、S11にて、CPU21は、原稿検知センサ11からの信号がOFFからONに変化したか否かを判断する。原稿検知センサ11からの信号がOFFからONに変化していない場合は(S11:N)、CPU21はS11の処理を繰り返して待機し、原稿検知センサ11からの信号がOFFからONに変化すると(S11:Y)、CPU21はS12の処理を実行する。
【0020】
S12では、エッジ検出終了位置を表す変数pが0に初期化される。エッジとは、原稿Gの端縁(すなわち、原稿Gの外周を構成する各辺)であり、例えば周知の各種方法で検出することができる。続くS13では、カウンタCの値がp+Kよりも大きいか否かが判断される。なお、Kは、スキャンデータの取得単位(ライン数)であり、Kライン毎にエッジの検出等の画像解析がなされることを意味する。すなわち、変数pは、Kラインずつ順次増加する所定搬送量に対応する。
【0021】
センサがOFFからONに変化して(S11:Y)最初にこのステップへ処理が移行したときは、S3の処理の直後であるため、カウンタCの値は少なくともK未満の値に設定されており、S13では否定判断されて処理はS14へ移行する。S14では、前述のS7によるジャム処理が実施されたか否かが判断され、ジャム処理が実施されていない場合は(S14:N)、処理は前述のS13へ移行する。こうして、S13,S14の処理が繰り返される間に、図3の処理によってカウンタCの値がK(ライン)増加すると、処理はS15へ移行する。
【0022】
S15では、変数pにKが加算され、続くS16では、pライン(line)分のスキャンデータからエッジの検出がなされる。更に続くS17では、S16によるエッジの検出結果に基づき、クロップ可能なオブジェクト(すなわち、単一の原稿Gに係る画像として切り取ることのできる画像の集合で、第1集合の一例)が、直近のpライン分のスキャンデータの中にあるか否かが判断される。クロップ可能なオブジェクトは、種々に定義可能である。本実施形態では、原稿Gが四角形であることを想定し、4つの頂点(すなわち、エッジの交点)と4本の線分(すなわち、エッジ)とで構成される閉じた(すなわち、エッジが閉曲線を構成する)オブジェクトをクロップ可能なオブジェクトとする。
【0023】
例えば、図6の例では、Y=0のラインから最初のKラインを読み取った時点ではクロップ可能なオブジェクトは存在しないが、Y=0のラインから2Kラインを読み取った時点では、原稿G1,G2のいずれもがクロップ可能となる。そこで、S17にてクロップ可能なオブジェクトがないと判断された場合は(S17:N)処理は前述のS14へ移行する。図6の例では、最初にS17へ移行したときにはクロップ可能なオブジェクトがないので否定判断がなされる。しかしながら、処理が再びS15を経ることによりp=2KとなってからS17へ処理が移行すると、原稿G1,G2がいずれもクロップ可能となるので、当該S17では肯定判断がなされる。
【0024】
S17にてクロップ可能なオブジェクトがあると判断された場合は(S17:Y)、CPU21は、S21にて、クロップ可能なオブジェクトを全てクロップする。すなわち、クロップ可能なオブジェクトをそれぞれ単一の原稿に係る画像として切り取る。クロップされた画像は、インタフェース15を介して記録媒体等に出力されてもよい。図6の例では、スキャンデータにおける原稿G1,G2の画像が、それぞれ単一の原稿に係る画像として切り取られる。これに対して、図7のような例では、p=2Kとなっても、クロップ可能なオブジェクトが、直近のpライン分のスキャンデータの中に1つもないので(S17:N)、処理はS17からS14へ移行する。
【0025】
S21にてクロップ可能なオブジェクトがクロップされると、続くS22では、他にオブジェクト候補が、直近のpライン分のスキャンデータの中にあるか否かが判断される。オブジェクト候補とは、単一の原稿Gに係る画像として切り取ることのできる画像の集合における前記搬送方向に対する上流側の一部とみなすことのできる画像の集合(すなわち、第2集合の一例)である。オブジェクト候補は、種々に定義可能であるが、本実施形態では、1つの頂点と2本の線分とで構成される連続した線をオブジェクト候補とする。
【0026】
図6の例のように、クロップ可能なオブジェクト以外にオブジェクト候補がない場合は、S22では否定判断がなされて処理はS23へ移行する。S23では、カウンタCの値が変数pの値だけ減算され(すなわち、カウンタCの値が表す搬送量が変数pの値だけ減算補正され)、処理はS24へ移行する。S24では、その時点でRAM25に記憶されているスキャンデータの先頭からpライン分のデータに係るRAM25の領域が解放される。
【0027】
S24に続くS25では、変数pが0に初期化され、処理は前述のS14へ移行する。すると、RAM25の領域の解放がS24にてなされたラインから新たにKライン分のスキャンデータが取得される毎に(S13:Y)、前述のようにクロップ可能なオブジェクトの有無等の判断(すなわち、画像解析)が実行される。
【0028】
S22にて他にオブジェクト候補があると判断された場合は(S22:Y)、処理はS31へ移行し、S21にてクロップされた全てのオブジェクトにおける最小のY座標が取得され、そのY座標がYominとされる。続くS32では、全てのオブジェクト候補における最小のY座標が取得され、そのY座標がYkminとされる。なお、クロップ可能なオブジェクトにおけるY座標がYominとなる頂点が第1端部に対応し、オブジェクト候補におけるY座標がYkminとなる頂点が第2端部に対応する。更に続くS33では、YominがYkminより小さいか否かが判断される。Yomin<Ykminの場合は(S3:Y)、S34にてカウンタCの値が(Ykmin-Yomin)だけ減算され(すなわち、カウンタCの値が表す搬送量がYkmin-Yominだけ減算補正され)、処理はS35へ移行する。S35では、その時点でRAM25に記憶されているスキャンデータの先頭からYkminまでのデータに対応するRAM25の領域が解放される。
【0029】
例えば、図8に示す例では、原稿G1がクロップ可能で、原稿G2がオブジェクト候補である。また、原稿G1における搬送方向最上流の頂点のY座標Yominは、原稿G2における搬送方向最上流の頂点のY座標Ykminよりも小さい(すなわち、搬送方向上流側にある)。この場合(S33:Y)、原稿G1の画像がS31にてクロップされると、先頭からYkminまでのスキャンデータは、RAM25に記憶しておく必要がなくなる。そこで、その場合、S35において当該データを記憶したRAM25の領域が解放される。また、その場合、原稿の搬送量をライン数で表すカウンタCの値も、S34にて(Ykmin-Yomin)だけ減算され、原稿G2における搬送方向最上流の頂点のY座標Ykminから原稿の搬送量が計数されることになる。
【0030】
S34,S35に続くS36では、変数pが0に初期化され、処理は前述のS14へ移行する。すると、RAM25の領域の解放がS35にてなされたラインから新たにKライン分のスキャンデータが取得される毎に(S13:Y)、前述のようにクロップ可能なオブジェクトの有無等が判断される。
【0031】
また、図9に示す例では、原稿G1がクロップ可能で、長尺原稿G3がオブジェクト候補である。また、原稿G1における搬送方向最上流の頂点のY座標Yominは、原稿G2における搬送方向最上流の頂点のY座標Ykminよりも大きい。すなわち、オブジェクト候補が先行して搬送されている。この場合(S33:N)、RAM25の領域に解放可能な領域はない。そこで、その場合、処理は前述のS14を介してS13へ移行し、新たにKライン分のスキャンデータが取得される毎に(S13:Y)、前述のようにクロップ可能なオブジェクトの有無等が判断される。この処理により、例えば図9の例では、オブジェクト候補であった長尺原稿G3もクロップされる可能性が生じる。
【0032】
[1-4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1A)前記実施形態では、原稿挿入口3Aに複数の原稿Gが挿入された場合でも、読み取られた画像の中にクロップ可能なオブジェクトが存在するとき、当該オブジェクトにおける副走査方向の長さに応じた値が、搬送量の計数値としてのカウンタCの値から減算される。このため、原稿挿入口3Aに複数の原稿Gが挿入されても、1枚の原稿の長さ(すなわち、カウンタCの値)が閾値T以上の異常に長いものと判断されてジャム処理がなされるのを抑制することができる。なお、前記実施形態では、クロップ可能なオブジェクトにおける副走査方向の長さに応じた値とは、p又は(Ykmin-Yomin)である。
【0033】
(1B)前記実施形態では、原稿の搬送量としてのカウンタCの値が、Kラインずつ増加する所定搬送量としての変数pに達する毎に、当該pラインだけ原稿が搬送される際にCIS9が読み取った画像が読み込まれ(すなわち解析され)、クロップ可能なオブジェクトの有無等が判断される。すなわち、原稿GがKライン搬送される毎に前記判断がなされる。このため、クロップ可能なオブジェクトが存在するか否かの判断を適切な頻度で実行することができる。
【0034】
(1C)クロップ可能なオブジェクト、すなわち、単一の原稿Gに係る画像として切り取ることのできる画像のみを含んだ読取範囲は、当該クロップ可能なオブジェクトがクロップされた後は、カウンタCによる原稿の長さの計数に当たって無視してもよい範囲である。そこで、前記実施形態では、クロップ可能なオブジェクトが存在し、かつ、オブジェクト候補が存在しない場合(S22:N)、前記所定搬送量としての変数pを、前記計数された搬送量としてのカウンタCの値から減算している(S23)。よって、カウンタCによって計数される単一原稿の搬送量(すなわち、原稿の長さ)を、一層適切に計数することができる。
【0035】
(1D)Yomin<Ykminの場合(S33:Y)、Y座標がYominとYkminとの間にある読取範囲(例えば、図8に太い波線で示す範囲)は、クロップ可能なオブジェクトのみを含んでいる。従って、その読取範囲は、当該クロップ可能なオブジェクトがクロップされた後は、カウンタCによる原稿の長さの計数に当たって無視してもよい範囲である。そこで、本実施形態では、Yomin<Ykminの場合(S33:Y)、(Ykmin-Yomin)、すなわち、第1端部から第2端部までの副走査方向の距離を、前記計数された搬送量としてのカウンタCの値から減算している。よって、カウンタCによって計数される単一原稿の搬送量(すなわち、原稿の長さ)を、一層適切に計数することができる。
【0036】
(1E)Yomin≧Ykminの場合(S33:N)、Y座標がYominとYkminとの間にある読取範囲には、オブジェクト候補が存在している。このため、その読取範囲は、原稿の長さの計数に当たって無視することのできない範囲である。そこで、本実施形態では、Yomin≧Ykminの場合(S33:N)、カウンタCの値を減算補正しない。よって、カウンタCによって計数される単一原稿の搬送量(すなわち、原稿の長さ)を一層適切に計数することができる。
【0037】
(1F)本実施形態では、読取を実行しながらカウンタCの値を加算する図3の計数処理と、画像解析によりクロップ可能なオブジェクトの有無等を判断してカウンタCの値を補正する図4の計数値補正処理とを、並列処理として実行している。このため、Kライン読んでから画像解析をする処理を繰り返す場合に比べて、全体としての処理を迅速化することができる。しかも、カウンタCの値を計数値補正処理に直接に利用するのではなく変数pを利用したことにより、計数処理と計数値補正処理とが同期していなくても、S16における解析対象範囲をKライン分ずつ増やすことができる。
【0038】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0039】
(2A)前記実施形態では、S23及びS34の処理を備えたことにより、図6に例示された場合と図8に例示された場合とでそれぞれカウンタCの値を補正しているが、カウンタCの値を補正する態様はこれに限定されるものではない。例えば、S23又はS34の処理のいずれか一方を備え、図6に例示された場合か図8に例示された場合かのいずれか一方でカウンタCの値を補正してもよい。
【0040】
(2B)前記実施形態では、取得したスキャンデータを記録媒体等に出力するいわゆるモバイルスキャナに本開示を適用したが、スキャンデータに応じた印刷を実行するコピー機や、スキャンデータを通信回線を介して送信するファクシミリ装置にも、本開示は適用可能である。
【0041】
(2C)前記実施形態では、原稿Gが四角形であることを前提としたが、原稿Gが星形,円盤状等の種々の形状である場合にも、本開示は適用可能である。その場合、クロップ可能なオブジェクトの定義及びオブジェクト候補の定義を変更した方が望ましい場合がある。
【0042】
(2D)前記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、前記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、前記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の前記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0043】
(2E)上述した画像読取装置の他、当該画像読取装置を構成要素とするシステム、当該画像読取装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、画像読取方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1…画像読取装置 3…原稿搬送路 3A…原稿挿入口
5,7…搬送ローラ 9…CIS 11…原稿検知センサ
13…搬送モータ 15…インタフェース 20…制御部
21…CPU 23…ROM 25…RAM
図1
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図9