(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車載電源システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20221220BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20221220BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20221220BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221220BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20221220BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221220BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20221220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60L3/00 H ZHV
B60K6/485
B60W20/50
B60W10/08 900
B60L9/18 J
B60L15/20 J
B60L58/18
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/00 Y
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2019053964
(22)【出願日】2019-03-21
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲生
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129917(JP,A)
【文献】特開2018-078701(JP,A)
【文献】特開2020-002780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-20/50
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機(11)と、
前記回転電機に対して並列接続された第1蓄電池(20)及び第2蓄電池(30)と、
前記回転電機と前記第1蓄電池との間の電気的な接続を切り換える第1スイッチ(SW1)と、
前記回転電機と前記第2蓄電池との間の電気的な接続を切り換える第2スイッチ(SW2)と、
を備える車載電源システム(100)に適用され、
前記回転電機の力行及び発電のいずれかの駆動に際し、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの少なくともいずれかをオン状態に操作する制御装置(13,31)であって、
前記第1スイッチ又は前記第2スイッチのいずれかをオン状態に操作し、かつ前記回転電機を駆動させている場合に、それら各スイッチのうちオン状態のスイッチについて固着異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、
前記固着異常が生じていると判定された場合に、その際の前記回転電機の駆動要求期間内で、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのうちオフ状態のスイッチをオン状態に操作するとともに、前記回転電機の駆動を制限しつつ継続するフェイルセーフ制御部と、
を備える車載電源システムの制御装置。
【請求項2】
前記フェイルセーフ制御部は、前記異常判定部により前記固着異常が生じていると判定された駆動要求期間内での前記回転電機の駆動を終了した後に、それ以降の前記回転電機の駆動を禁止する請求項1に記載の車載電源システムの制御装置。
【請求項3】
前記第2蓄電池はリチウムイオン蓄電池であり、前記第1蓄電池は鉛蓄電池であり、
前記フェイルセーフ制御部は、前記第2スイッチに固着異常が生じたと判定されることにより前記第1スイッチをオン状態に操作する場合に、前記第2蓄電池の端子間電圧が所定の出力電圧範囲に収まるように制限しつつ、前記回転電機の駆動を継続する請求項1又は2に記載の車載電源システムの制御装置。
【請求項4】
前記車載電源システムは、前記第1スイッチを介することなく前記回転電機と前記第1蓄電池とを接続するバイパス経路(L3)に設けられた第3スイッチ(SW5)を備え、
前記バイパス経路には、所定の溶断電流よりも大きな電流が流れることにより溶断される溶断部(50)が設けられており、
前記フェイルセーフ制御部は、前記第2スイッチに固着異常が生じていると判定された場合に、前記第1スイッチをオン状態に操作する一方、前記第1スイッチに固着異常が生じていると判定された場合に、前記第3スイッチをオン状態に操作し、かつ前記バイパス経路に流れる電流が前記溶断電流よりも小さくなるように制限しつつ、前記回転電機の駆動を継続する請求項1~3のいずれか一項に記載の車載電源システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両に搭載される車載電源システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載電源システムとして、特許文献1に記載されたものがある。この車載電源システムは、第1蓄電池と、第2蓄電池と、回転電機と、第2蓄電池と回転電機との間の電気的な接続を切り換えるスイッチとを備えている。車載電源システムでは、スイッチの固着異常が検出された場合に、回転電機の力行に伴う第2蓄電池の端子間電圧の低下を防止するために、回転電機の力行が禁止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載電源システムにおいて、回転電機の駆動中に、オン状態に操作中のスイッチに固着異常が生じる場合があり、このような場合、特許文献1に開示された発明では、回転電機の駆動中であってもその駆動が強制的に停止される。例えば、回転電機がその駆動によりエンジンの出力をアシストしている場合に、オン状態に操作中のスイッチに固着異常が生じることで、回転電機によるエンジンの出力に対するアシストが停止される。そのため、固着異常に伴う回転電機の駆動停止により、運転者に違和感を生じさせることが懸念される。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、回転電機と蓄電池との電気的な接続を切り換えるスイッチに固着異常が生じた場合において、運転者の違和感を生じさせることなく適正な処置を実施することができる車載電源システムの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために第1の本発明は、回転電機と、前記回転電機に対して並列接続された第1蓄電池及び第2蓄電池と、前記回転電機と前記第1蓄電池との間の電気的な接続を切り換える第1スイッチと、前記回転電機と前記第2蓄電池との間の電気的な接続を切り換える第2スイッチと、を備える車載電源システムに適用され、前記回転電機の力行及び発電のいずれかの駆動に際し、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの少なくともいずれかをオン状態に操作する制御装置に関する。制御装置は、前記第1スイッチ又は前記第2スイッチのいずれかをオン状態に操作し、かつ前記回転電機を駆動させている場合に、それら各スイッチのうちオン状態のスイッチについて固着異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、前記固着異常が生じていると判定された場合に、その際の前記回転電機の駆動要求期間内で、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのうちオフ状態のスイッチをオン状態に操作するとともに、前記回転電機の駆動を制限しつつ継続するフェイルセーフ制御部と、を備える。
【0007】
回転電機の駆動中において、オン操作されているスイッチに固着異常が生じたと判定された場合、その時点で回転電機の駆動を停止すると、それに伴い運転者に違和感を生じさせることが懸念される。また、回転電機の駆動を継続させても、固着異常が生じたと判定されたスイッチは、状態が不安定になっており、一時的にオン状態からオフ状態に切り替わることがあると考えられ、回転電機と各蓄電池との間の電気的な接続が遮断されることが懸念される。この場合、例えば、第1,第2蓄電池から回転電機へ電力供給が行われる場面では、回転電機の駆動に不都合が生じ、運転者に違和感を生じさせることが懸念される。上記構成では、回転電機の駆動中において、第1スイッチ又は第2スイッチのうちオン操作中のスイッチに固着異常が生じているか否かが判定される。オン操作中のスイッチに固着異常が生じていると判定された場合に、その際の回転電機の駆動要求期間において、第1スイッチ及び第2スイッチのうち、オフ状態のスイッチがオン状態に操作されるとともに、回転電機の駆動が制限された状態で継続される。これにより、オン状態に操作中のスイッチに固着異常が生じた場合でも、このスイッチ以外のスイッチにより、回転電機と蓄電池とを電気的に接続させることができるため、車載電源システムに対して運転者の違和感を生じさせることなく適正な処置を実施させることができる。
【0008】
第2の発明では、前記フェイルセーフ制御部は、前記異常判定部により前記固着異常が生じていると判定された駆動要求期間内での前記回転電機の駆動を終了した後に、それ以降の前記回転電機の駆動を禁止する。
【0009】
上記構成では、オン状態に操作中のスイッチの固着異常に伴い、回転電機の駆動を制限しつつ継続した後は、回転電機の駆動が禁止される。これにより、オン操作中のスイッチに固着異常が生じている状態で回転電機の駆動が再度実施されるのを防止することができ、回転電機に対して適正な処置を実施できる。
【0010】
第3の発明では、前記第2蓄電池はリチウムイオン蓄電池であり、前記第1蓄電池は鉛蓄電池であり、前記フェイルセーフ制御部は、前記第2スイッチに固着異常が生じたと判定されることにより前記第1スイッチをオン状態に操作する場合に、前記第2蓄電池の端子間電圧が所定の出力電圧範囲に収まるように、前記回転電機の駆動を制限しつつ継続する。
【0011】
リチウムイオン蓄電池は鉛蓄電池に比べて、充放電における電力損失が少なく、高効率で充放電を行わせることができる。しかし、リチウムイオン蓄電池では、鉛蓄電池よりも、過充電及び過放電により劣化が促進され易いという問題がある。上記構成では、オン状態に操作中の第2スイッチに固着異常が生じた状態で回転電機の力行又は回生発電を継続する場合に、第2蓄電池であるリチウムイオン蓄電池の端子間電圧が所定の出力電圧範囲から外れることが防止される。これにより、第2蓄電池の劣化を抑制しつつ回転電機の駆動を継続させることができる。
【0012】
第4の発明では、前記車載電源システムは、前記第1スイッチを介することなく前記回転電機と前記第1蓄電池とを接続するバイパス経路に設けられた第3スイッチを備え、前記バイパス経路には、所定の溶断電流よりも大きな電流が流れることにより溶断される溶断部が設けられており、前記フェイルセーフ制御部は、前記第2スイッチに固着異常が生じていると判定された場合に、前記第1スイッチをオン状態に操作する一方、前記第1スイッチに固着異常が生じていると判定された場合に、前記第3スイッチをオン状態に操作し、かつ前記バイパス経路に流れる電流が前記溶断電流よりも小さくなるよう制御しつつ、前記回転電機の駆動を継続する。
【0013】
オン状態に操作中の第1スイッチに固着異常が生じた場合に、第3スイッチをオン状態に操作することにより、第1スイッチを介することなく、バイパス経路を介して第1蓄電池と回転電機との間の電気的な接続を継続することができる。ここで、バイパス経路を介して回転電機と第1蓄電池とを電気的に接続する場合、このバイパス経路に設けられた溶断部が溶断することで、回転電機の駆動が継続できなくなることが懸念される。上記構成では、第3スイッチがオン状態に操作されることにより、バイパス経路を介して回転電機と第1蓄電池とが電気的に接続される場合に、このバイパス経路に流れる電流が溶断電流よりも小さくなるように回転電機の駆動が制限される。これにより、オン状態に操作中の第1スイッチに固着異常が生じた場合において、第1蓄電池と回転電機との間の電気的な接続を継続しつつ、回転電機の駆動を安定的に継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】スイッチSW2の固着異常に対するフェイルセーフ制御を説明する図。
【
図3】スイッチSW1の固着異常に対するフェイルセーフ制御を説明する図。
【
図4】電池制御部によるフェイルセーフ制御を説明するフローチャート。
【
図5】駆動制御部によるフェイルセーフ制御を説明するフローチャート。
【
図6】フェイルセーフ制御を説明するタイミングチャート。
【
図7】フェイルセーフ制御を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の車載電源システムを具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。車載電源システムは、車両に搭載された負荷に対して電力を供給するシステムである。
【0016】
図1に示すように、車載電源システム100は、回転電機ユニット10と、第1蓄電池である鉛蓄電池20と、第2蓄電池であるリチウムイオン蓄電池30(以下、Li蓄電池と記載)とを備えており、負荷42,43に対して電力を供給する。車載電源システム100では、Li蓄電池30は電池ユニット40内に設けられている。鉛蓄電池20とLi蓄電池30とは、回転電機ユニット10に対して並列に接続されている。
【0017】
電気負荷43には、車載電源システム100から供給される電圧が一定または少なくとも所定範囲内で変動することが要求される定電圧要求負荷が含まれる。これに対し、電気負荷42は、定電圧要求負荷以外の一般的な電気負荷である。また、電気負荷43は電源失陥が許容されない負荷であり、電気負荷42は、電気負荷43に比べて電源失陥が許容される負荷であるとも言える。
【0018】
定電圧要求負荷である電気負荷43の具体例としては、ナビゲーション装置やオーディオ装置、メータ装置、上位ECUの各種ECUである。この場合、供給電力の電圧変動が抑えられることで、上記各装置において不要なリセット等が生じることが抑制され、安定動作が実現可能となっている。電気負荷43として、電動ステアリング装置やブレーキ装置等の走行系アクチュエータが含まれていてもよい。また、電気負荷42の具体例としては、シートヒータやリヤウインドウのデフロスタ用ヒータ、ヘッドライト、フロントウインドウのワイパ、空調装置の送風ファン等が挙げられる。
【0019】
鉛蓄電池20は周知の汎用蓄電池である。これに対し、Li蓄電池30は鉛蓄電池20に比べて、充放電における電力損失が少なく、出力密度及びエネルギ密度の高い高密度蓄電池である。Li蓄電池30は、鉛蓄電池20に比べて充放電時のエネルギ効率が高い蓄電池であるとよい。また、Li蓄電池30は、それぞれ複数の単電池を有してなる組電池として構成されている。これら各蓄電池20,30の定格電圧はいずれも同じであり、例えば12Vである。
【0020】
回転電機ユニット10は、3相交流モータである回転電機11と、回転電機11の各相巻線に接続されるインバータ12と、インバータ12の通電制御により回転電機11の駆動を制御する回転電機制御部13とを備えている。回転電機ユニット10は、モータ機能付き発電機であり、機電一体型のISG(Integrated Starter Generator)として構成されている。回転電機11は、その回転軸がベルト及びプーリからなる連結部材により不図示のエンジンの出力軸(クランク軸)に駆動連結されており、回転電機11とエンジンとの間で回転が伝達される。回転電機ユニット10は、エンジン出力軸や車軸の回転により発電を行う発電機能と、エンジン出力軸に回転力を付与する力行機能とを備えている。
【0021】
回転電機11は、多相巻線型の交流電動機であり、本実施形態では、3相交流電動機である。インバータ12は、複数の半導体スイッチング素子を有する電力変換部として構成されている。インバータ12は、力行時において直流電流を3相交流電流に変換し、その3相交流電流により回転電機11を力行駆動させる。また、インバータ12は、発電時において回転電機11から出力される3相交流電流を直流電流に変換し、その直流電流を各蓄電池20,30に供給する。これにより、各蓄電池20,30の充電が実施される。
【0022】
回転電機制御部13は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイコンにより構成されている。回転電機制御部13は、通電位相に応じてインバータ12の各相のスイッチング素子のオンオフを制御するとともに、各相コイルの通電時にオンオフ比率(例えばデューティ比)を調整することで通電電流を制御する。具体的には、回転電機制御部13は、力行時においては、回転電機11の力行トルクT1rを、力行トルク目標値T1*に制御すべく、インバータ12をオンオフ操作する。回転電機制御部13は、回生発電時においては、回転電機11の回生トルクT2rを、回生トルク目標値T2*に制御すべく、インバータ12をオンオフ操作する。
【0023】
電池ユニット40は、端子P1,P2,P3を有しており、このうち端子P1に鉛蓄電池20と電気負荷42とが並列接続され、端子P2に回転電機ユニット10が接続され、端子P3に電気負荷43が接続されている。
【0024】
電池ユニット40には、ユニット内電気経路として、端子P1と、Li蓄電池30とを接続する第1電気経路L1が設けられている。この第1電気経路L1は、中間点である接続点N1で端子P2に接続されている。
【0025】
第1電気経路L1のうち、接続点N1と端子P1との間には、第1電気経路L1を通じた回転電機11と鉛蓄電池20との電気的な接続を切り換え可能なスイッチSW1が設けられている。また、第1電気経路L1のうち、接続点N1とLi蓄電池30との間には、第1電気経路L1を通じた回転電機11とLi蓄電池30との間の電気的な接続を切り換え可能なスイッチSW2が設けられている。本実施形態では、各スイッチSW1,SW2は常開式のスイッチである。
【0026】
電池ユニット40には、ユニット内電気経路として、端子P1とスイッチSW1との間の接続点N3と、スイッチSW2とLi蓄電池30の間の接続点N4とを接続する第2電気経路L2が設けられている。第2電気経路L2の中間点である接続点N2には、端子P3が接続されている。第2電気経路L2において、接続点N2と接続点N3との間にスイッチSW3が設けられ、接続点N2と接続点N4との間にスイッチSW4が設けられている。
【0027】
第2電気経路L2は、第1電気経路L1側と比べて小電流を流すことを想定した小電流経路(すなわち、第1電気経路L1に比べて許容電流が小さい小電流経路)であり、この経路を介して、各蓄電池20、30から電気負荷43への通電が行われる。
【0028】
また、電池ユニット40には、スイッチSW1を介することなく、鉛蓄電池20と回転電機11とを接続するバイパス経路L3が設けられている。具体的には、バイパス経路L3の第1端は、第1電気経路L1において端子P2とスイッチSW1と間の接続点N1に接続されており、第2端は、電池ユニット40の外部において、鉛蓄電池20の正極端子に接続された電機経路に接続されている。このバイパス経路L3には、常閉式のスイッチSW5と、溶断部としてのヒューズ50が設けられている。なお、本実施形態では、ヒューズ50は、バイパス経路L3において、電池ユニット40の外部に設けられている。
【0029】
電池ユニット40は、各スイッチSW1~SW5をオンオフ操作する電池制御部31を備えている。電池制御部31は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイコンにより構成されている。電池制御部31は、各蓄電池20、30の充電率であるSOCや、車載電源システム100に対する駆動要求に基づいて、各スイッチSW1~SW5のオンオフを操作する。具体的には、電池制御部31は、Li蓄電池30のSОCを算出し、このSOCが所定の使用範囲内に保持されるようにLi蓄電池30の充電及び放電を制御する。
【0030】
電池ユニット40には、スイッチSW1に流れる電流を検出する第1電流センサ32と、スイッチSW2に流れる電流を検出する第2電流センサ33とが設けられている。第1,第2電流センサ32,33により検出された電流値は、電池制御部31に入力される。
【0031】
回転電機制御部13と電池制御部31とは、CANバス81を介して通信可能に接続されている。また、CANバス81には、上位ECU80が接続されており、回転電機制御部13と電池制御部31とは、CANバス81を介して上位ECU80と通信可能となっている。上位ECU80は、回転電機11の駆動として力行を要求する場合、CANバス81を介して力行要求信号を電池制御部31及び回転電機制御部13に出力する。また、上位ECU80は、回転電機11の駆動として回生発電を要求する場合、CANバス81を介して回生発電要求信号を電池制御部31及び回転電機制御部13に出力する。
【0032】
上記構成の車載電源システム100では、エンジンの始動前において、スイッチSW1~SW4は開状態となっており、スイッチSW5が閉状態となっている。そのため、鉛蓄電池20と端子P2とは、バイパス経路L3を介して電気的に接続されており、鉛蓄電池20からの電力により回転電機11に暗電流が流れる。
【0033】
エンジンの始動後においては、上位ECU80からの駆動要求に応じて、回転電機11の力行と回生発電とが実施される。力行時には、Li蓄電池30又は鉛蓄電池20のいずれかから回転電機11に電力が供給される。Li蓄電池30により回転電機11を給電する場合、スイッチSW2がオン操作され、スイッチSW1がオフ操作される。鉛蓄電池20により回転電機11を給電する場合、スイッチSW1がオン操作され、かつスイッチSW2がオフ操作される。なお、本実施形態では、力行時においては、各スイッチSW3,SW4のオンオフ状態が操作されることにより、Li蓄電池30又は鉛蓄電池20により電気負荷43が給電される。
【0034】
回生発電時には、Li蓄電池30及び鉛蓄電池20の少なくともいずれかに対して、回転電機11からの発電電力が供給される。回転電機11の発電電力によりLi蓄電池30を充電する場合、スイッチSW2がオン操作されるとともに、スイッチSW1がオフ操作される。回転電機11の発電電力により鉛蓄電池20を充電する場合、スイッチSW1がオン操作されるとともに、スイッチSW2がオフ操作される。また、鉛蓄電池20及びLi蓄電池30の両者を充電する場合、各スイッチSW1,SW2が共にオン操作される。
【0035】
上記構成の車載電源システム100において、回転電機11の駆動中に、オン状態に操作されたスイッチSW1,SW2に固着異常が生じる場合がある。ここで、固着異常とはスイッチSW1,SW2がオン状態のままになってしまう異常である。この場合、回転電機11と各蓄電池20,30との間の電気的な接続が遮断されることによる不都合を考慮して、回転電機11の力行及び回生発電を禁止することが考えられる。しかし、例えば、回転電機11がエンジンの出力をアシストしている最中に、オン操作中のスイッチSW2の固着異常が検出された場合に、回転電機11によるアシストの停止に伴い運転者に違和感を生じさせることが懸念される。これに対して、オン操作中のスイッチSW1,SW2に固着異常が生じた場合に、回転電機11の駆動を継続させる場合、固着異常が生じているスイッチSW1,SW2は、その状態が不安定であるため、一時的にオン状態からオフ状態に切り替わることにより、回転電機11と各蓄電池20,30との間の電気的な接続が遮断されるおそれがある。
【0036】
回転電機11の駆動中において、各スイッチSW1,SW2のうちオン状態に操作されているスイッチに固着異常が生じている場合に、電池制御部31と回転電機制御部13とは、回転電機11の駆動を安定的に継続させるべく、協同してフェイルセーフ制御を実施する。本実施形態では、電池制御部31と回転電機制御部13とがフェイルセーフ制御部に相当する。
【0037】
本実施形態では、電池制御部31は、各スイッチSW1,SW2のうち、オン操作中のスイッチに固着異常が生じていることを以下のように判定する。スイッチSW1,SW2に対する操作指令をオン指令からオフ指令に切り換え、切り換え後に流れる電流の変化に応じて、各スイッチSW1,SW2に固着異常が生じているか否かを判定する。具体的には、スイッチSW1に対する操作指令をオン指令からオフ指令に切り換えた際に、その後に第1電流センサ32により検出された検出電流が所定値よりも低下する場合は、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていないと判定し、検出された検出電流が所定値よりも低下しない場合は、スイッチSW1に固着異常が生じていると判定する。同様に、スイッチSW2に対する操作指令をオン指令からオフ指令に切り換えた際に、その後に第2電流センサ33により検出された検出電流が所定値よりも低下する場合は、オン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じていないと判定し、検出された検出電流が所定値よりも低下しない場合は、スイッチSW2に固着異常が生じていると判定する。本実施形態では、電池制御部31が異常判定部に相当する。
【0038】
本実施形態では、電池制御部31により実施される固着異常の判定の際、オン操作中のスイッチSW1,SW2を一時的にオフ操作するため、力行時には回転電機11に供給される電力が遮断されることが懸念される。そこで、力行時での固着異常の判定において、オン操作中のスイッチSW1,SW2をオフ操作する期間では、オフ状態のスイッチSW1,SW2をオン操作することにより、回転電機11に供給される電力が遮断されないようにしている。具体的には、オン操作中のスイッチSW2に対する固着異常の有無を判定する場合、スイッチSW2をオフ操作する期間では、スイッチSW1をオン操作することにより、鉛蓄電池20と回転電機11とを電気的に接続する。オン操作中のスイッチSW1に対する固着異常の有無を判定する場合、スイッチSW1をオフ操作する期間では、スイッチSW2をオン操作することにより、回転電機11とLi蓄電池30とを電気的に接続する。
【0039】
電池制御部31は、各スイッチSW1,SW2のうち、オン操作中のスイッチに固着異常が生じていると判定した場合に、このスイッチ以外のオフ操作されているスイッチをオン操作する。まずは、回転電機11の力行中及び回生発電中に、オン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じた場合の処理を説明する。
【0040】
図2(a)では、上位ECU80からの力行要求時において、スイッチSW2がオン操作されており、Li蓄電池30により回転電機11が給電されている。この状態において、スイッチSW2に固着異常が生じていると判定された場合、スイッチSW2が一時的にオン状態からオフ状態に切り替わることにより、Li蓄電池30による回転電機11の給電が遮断されることが懸念される。
【0041】
図2(b)に示すように、電池制御部31は、オフ状態のスイッチSW1をオン操作することにより、端子P1,P2間においてスイッチSW1を含む電気経路を導通する。これにより、スイッチSW2が一時的にオン状態からオフ状態に切り替わった場合でも、鉛蓄電池20により回転電機11を安定的に給電することができる。
【0042】
回生発電中において、オン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じていると判定された場合のフェイルセーフ制御を説明する。この場合においても、スイッチSW2がオン状態に操作されており、回転電機11の発電電力がLi蓄電池30に供給されている。この状態において、スイッチSW2に固着異常が生じていると判定された場合、スイッチSW2が一時的にオン状態からオフ状態に切り替わることにより、回転電機11の発電電力の供給先がなくなる場合が想定される。
【0043】
電池制御部31は、オフ状態のスイッチSW1をオン操作することにより、端子P1,P2間においてスイッチSW1を含む電気経路を導通する。これにより、スイッチSW2が一時的にオン状態からオフ状態に切り替わった場合でも、回転電機11の発電電力が鉛蓄電池20に供給される。
【0044】
Li蓄電池30は鉛蓄電池20に比べて、充放電における電力損失が少なく、高効率での充放電が可能である。しかし、Li蓄電池30は、鉛蓄電池20よりも過充電及び過放電により劣化が促進され易い。そこで、回転電機制御部13は、スイッチSW2に固着異常が生じていると判定された場合に、Li蓄電池30の過放電又は過充電を防止するために、各トルクT1r,T2rを制限した状態で、回転電機11の駆動を継続する。具体的には、回転電機制御部13は、力行中では、Li蓄電池30の端子間電圧が、過放電により所定の出力電圧範囲の下限値を下回らないように、力行トルクT1rの上限値を制限する。また、回転電機制御部13は、回生発電中は、Li蓄電池30の端子間電圧が過充電により出力電圧範囲の上限値を上回らないように、回生トルクT2rの上限値を制限する。出力電圧範囲は、Li蓄電池30において、過放電及び過充電により劣化を促進しないために推奨される端子間電圧の範囲である。
【0045】
本実施形態では、回転電機制御部13は、オン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じていると判定された場合は、オープン制御により、各トルク目標値T1*,T2*を低下側に変更することにより回転電機11のトルクを制限する。具体的には、力行中は、力行トルク目標値T1*を、スイッチSW2に固着異常が生じていないと判定された場合の力行トルク目標値T1*よりも低い値に変更する。また、回生発電中は、回生トルク目標値T2*を、スイッチSW2に固着異常が生じていないと判定された場合の回生トルク目標値T2*よりも低い値に変更する。
【0046】
次に、力行中において、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じた場合の処理を説明する。
図3(a)では、スイッチSW1がオン状態となっており、鉛蓄電池20により回転電機11が給電されている。この状態において、スイッチSW1に固着異常が生じている場合、スイッチSW1が一時的にオン状態からオフ状態に切り替わることにより、鉛蓄電池20による回転電機11の給電が遮断されることが懸念される。
【0047】
図3(b)に示すように、電池制御部31は、スイッチSW5をオン操作し、かつスイッチSW2をオフ操作することにより、鉛蓄電池20と回転電機11とをバイパス経路L3を通じて電気的に接続する。これにより、スイッチSW1が一時的にオン状態からオフ状態に切り替わった場合でも、鉛蓄電池20の電力がバイパス経路L3を通じて回転電機11に供給される。
【0048】
回生発電中において、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じた場合のフェイルセーフ制御を説明する。この場合、スイッチSW1がオン状態となっており、回転電機11により発電された電力が、スイッチSW1を含む電気経路を通じて鉛蓄電池20に供給されている。この状態において、電池制御部31は、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていると判定した場合、スイッチSW5をオン操作し、スイッチSW2をオフ操作し、鉛蓄電池20と回転電機11とをバイパス経路L3を通じて電気的に接続する。これにより、スイッチSW1が一時的にオン状態からオフ状態に切り替わった場合でも、回転電機11の発電電力が、バイパス経路L3を通じて鉛蓄電池20に供給される。
【0049】
回転電機制御部13は、スイッチSW1に固着異常が生じていると判定された場合に、バイパス経路L3に設けられたヒューズ50を保護するために、回転電機11の各トルクT1r,T2rを制限した状態で、回転電機11の駆動を継続する。具体的には、回転電機制御部13は、回転電機11の各トルクT1r,T2rを、スイッチSW1に固着異常が生じていると判定されない場合よりも低下させることにより、バイパス経路L3にヒューズ50を溶断させる溶断電流値よりも低い電流を流す。
【0050】
本実施形態では、回転電機制御部13は、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていると判定した場合は、オープン制御により、各トルク目標値T1*,T2*を低下側に変更することにより、回転電機11のトルクT1r,T2rを制限する。具体的には、力行中は、力行トルク目標値T1*をスイッチSW1に固着異常が生じていると判定されない場合の力行トルク目標値T1*よりも低い値に変更する。また、回生発電時は、回生トルク目標値T2*をスイッチSW2に固着異常が生じていると判定されない場合の力行トルク目標値T1*よりも低い値に変更する。
【0051】
次に、電池制御部31により実施されるフェイルセーフ制御の手順を、
図4を用いて説明する。本処理は、電池制御部31により所定周期で繰り返し実施される。
【0052】
ステップS11では、オン操作中のスイッチの固着異常の有無を判定する。ステップS12では、力行又は回生発電中であるか否かを判定する。例えば、上位ECU80からの駆動要求の種別により、回転電機11が力行又は回生発電中であると判定する。
【0053】
回転電機11が力行又は回生発電中である場合、ステップS13に進む。ステップS13では、ステップS11において、オン操作中のスイッチSW2の固着異常を検出しているか否かを判定する。オン操作中のスイッチSW2の固着異常を検出している場合、ステップS14に進み、オフ状態のスイッチSW1をオン操作する。
【0054】
ステップS15において、現在、回転電機11が力行中である場合、ステップS16に進む。ステップS16では、スイッチSW2の異常状態を示す異常信号を、CANバス81を通じて回転電機制御部13に送信する。ステップS16に進む場合、異常信号は、力行中であり、かつオン操作中のSW2に固着異常が生じていること示すものとなる。
【0055】
ステップS15において、現在、回転電機11が回生発電中である場合、ステップS17に進む。ステップS17で送信される異常信号は、回生発電中であり、かつオン操作中のSW2に固着異常が生じていることを示すものとなる。
【0056】
ステップS13に戻り、オン操作中のスイッチSW2の固着異常を検出していないと判定すると、ステップS18に進む。ステップS18では、ステップS11において、オン操作中のスイッチSW1の固着異常を検出しているか否かを判定する。オン操作中のスイッチSW1の固着異常を検出している判定すると、ステップS19に進む。
【0057】
ステップS19では、スイッチSW5をオン操作し、スイッチSW2をオフ操作する。ステップS20において、現在、回転電機11が力行中であれば、ステップS21に進み、スイッチSW1の異常状態を示す異常信号を、CANバス81を通じて回転電機制御部13に送信する。ステップS21で送信される異常信号は、力行中であり、かつオン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていること示すものとなる。
【0058】
ステップS20において、現在、回転電機11が回生発電中であれば、ステップS22に進む。ステップS22で送信される異常信号は、回生発電中であり、かつオン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていることを示すものとなる。
【0059】
ステップS18に戻り、スイッチSW1に固着異常が生じていないと判定すると、
図4の処理を一旦終了する。
【0060】
ステップS12に戻り、現在、回転電機11が力行中及び回生発電中のいずれの駆動状態でもないと判定すると、ステップS23に進む。ステップS23では、ステップS11において、オフ操作中のいずれかのスイッチSW1,SW2の固着異常を検出しているか否かを判定する。ステップS23において、オフ操作中のスイッチSW1,SW2の固着異常を検出していると判定すると、ステップS24に進む。ステップS24では、オフ操作中のスイッチSW1,SW2のいずれかに固着異常が生じていることを、CANバス81を通じて回転電機制御部13に送信する。
【0061】
次に、回転電機制御部13により実施されるフェイルセーフ制御の手順を、
図5を用いて説明する。本処理は、回転電機制御部13により所定周期で繰り返し実施される。
【0062】
ステップS30では、電池制御部31からCANバス81を通じて送信された異常信号を解析する。ステップS31では、ステップS30での異常信号の解析結果により、力行中であり、かつオン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じていると判定すると、ステップS32に進む。ステップS32では、力行トルク目標値T1*を低下側に変更する。これにより、Li蓄電池30の端子間電圧が出力電圧範囲の下限値を下回らないように、力行トルクT1rが制限される。
【0063】
ステップS31を否定判定すると、ステップS33に進む。ステップS33では、ステップS30での異常信号の解析結果により、力行中であり、かつオン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じているか否かを判定する。ステップS33を肯定判定すると、ステップS34に進み、力行トルク目標値T1*を低下側に変更する。これにより、バイパス経路L3に流れる電流が溶断電流を上回らないように、力行トルクT1rが制限される。
【0064】
ステップS33を否定判定すると、ステップS35に進む。ステップS35では、ステップS30での異常信号の解析結果により、回生発電中であり、かつオン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じているか否かを判定する。ステップS35を肯定判定すると、ステップS36に進み、回生トルク目標値T2*を低下側に変更する。これにより、Li蓄電池30の端子間電圧が、出力電圧範囲の上限値を上回らないように、回生トルクT2rが制限される。
【0065】
ステップS35を否定判定すると、ステップS37に進む。ステップS37では、ステップS30での異常信号の解析結果により、回生発電中であり、かつオン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じているか否かを判定する。ステップS37を肯定判定すると、ステップS38に進み、回生トルク目標値T2*を低下側に変更する。これにより、バイパス経路L3に流れる電流が溶断電流を上回らないように、回生トルクT2rが制限される。
【0066】
ステップS40では、上位ECU80による力行又は回生発電の要求期間が終了したか否かを判定する。要求期間が終了してないと判定すると、
図5の処理を一旦終了する。本実施形態では、力行又は回生発電の要求期間が駆動要求期間に相当する。ステップS40を肯定判定すると、ステップS41では、回転電機11の力行及び回生発電を禁止するための禁止要求を、CANバス81を通じて上位ECU80に送信する。これにより、上位ECU80は、禁止フラグをハイ状態に変化させることにより、回転電機11の力行及び回生発電を禁止する。
【0067】
一方、ステップS37を否定判定すると、ステップS39に進む。ステップS39では、ステップS30での異常信号の解析結果により、オフ操作中のスイッチSW1,SW2に固着異常が生じているか否かを判定する。ステップS39を肯定判定すると、ステップS41に進み、上位ECU80に、禁止命令をCANバス81を通じて送信する。
【0068】
次に、フェール制御中の、電池制御部31及び回転電機制御部13の動作を、タイミングチャートを用いて説明する。
図6は、力行中に、オン操作中のスイッチSW2に対して固着異常が生じていると判定される場合のタイミングチャートである。
図6(a)は上位ECU80からの力行要求の有無の推移を示し、
図6(b)は力行トルクT1rの推移を示す。
図6(c)はスイッチSW1のオンオフ状態を示し、
図6(d)はスイッチSW2のオンオフ状態を示す。
図6(e)はスイッチSW5のオンオフ状態を示し、
図6(f)は回転電機11の力行及び回生発電の禁止の有無を示す禁止フラグの変化を示す。
【0069】
時刻t1よりも前では、上位ECU80による力行要求がされておらず、回転電機11の力行トルクT1rは、0付近の値となっている。なお、
図6に示す例では、時刻t1よりも前において、スイッチSW2はオン状態となっているものとする。時刻t1において、上位ECU80による力行要求により、回転電機ユニット10の力行が実施される。
図6(b)において、時刻t1から時刻t4までの期間が、回転電機11に対して力行要求が行われる駆動要求期間である。
【0070】
回転電機制御部13により、回転電機11の力行トルクT1rが、力行トルク目標値T1*に近づくように制御されることにより、時刻t1から時刻t2の期間において、力行トルクT1rが力行トルク目標値T1*に近づくように上昇する。時刻t2以後は、回転電機制御部13により、力行トルクT1rが力行トルク目標値T1*に維持されている。
【0071】
時刻t3において、電池制御部31は、オン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じていることを判定すると、オフ状態のスイッチSW1をオン操作する。回転電機制御部13は、電池制御部31からの異常信号により、力行トルク目標値T1*を現在の値よりも低い値に変更する。これにより、回転電機11の力行トルクT1rが、オン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じていると判定される前の力行トルクT1rよりも低下する。
【0072】
時刻t4において、上位ECU80からの力行要求が終了することにより、回転電機制御部13は、力行トルク目標値T1*を低下させる。そのため、回転電機11の力行トルクT1rが0付近まで低下する。また、回転電機制御部13は、上位ECU80に禁止要求を送信することにより、回転電機11の力行及び回生発電を禁止する禁止フラグがハイ状態となり、上位ECU80による力行要求及び回生発電要求が禁止される。
【0073】
図7は、力行中に、オン操作中のスイッチSW1に対して固着異常が生じていると判定される場合のタイミングチャートである。
図7(a)~
図7(f)は、
図6(a)~
図6(f)にそれぞれ対応している。
【0074】
時刻t11から時刻t12までの各動作は、
図6に示した時刻t1から時刻t2と同じ動作と同じであるため説明を省略する。
図7(b)において、時刻t11から時刻t14までの期間が、回転電機11の力行が要求される駆動要求期間である。
【0075】
時刻t13において、電池制御部31は、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていることを判定すると、オフ操作中のスイッチSW5をオン操作する。なお、スイッチSW2はオフ操作されている。また、回転電機制御部13は、電池制御部31からの異常信号により、力行トルク目標値T1*を現在の値よりも低下側に変更する。これにより、回転電機11の力行トルクT1rが低下されることにより、バイパス経路L3に流れる電流が、ヒューズ50の溶断電流よりも低い値に制限される。
【0076】
時刻t14において、上位ECU80が力行要求を停止することにより、回転電機制御部13は、力行トルク目標値T1*を低下させる。そのため、回転電機11の力行トルクT1rが0付近まで低下する。また、回転電機制御部13が上位ECU80に禁止要求を送信することにより、禁止フラグがハイ状態となり、上位ECU80による力行要求及び回生発電要求が禁止される。
【0077】
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏することができる。
【0078】
・電池制御部31は、回転電機11の力行又は回生発電中において、スイッチSW1又はスイッチSW2のうちオン操作中のスイッチに固着異常が生じているか否かを判定する。オン操作中のスイッチに固着異常が生じていると判定した場合に、各スイッチSW1,SW2のうち、オフ状態のスイッチをオン状態に操作する。そして、回転電機制御部13は、回転電機11の駆動を、トルクを制限した状態で継続する。これにより、オン操作中のスイッチに固着異常が生じている場合でも、このスイッチ以外のスイッチにより、回転電機11と各蓄電池20,30とを電気的に接続させることができるため、運転者の違和感を生じさせることなく回転電機11に対して適正な処置を実施することができる。
【0079】
・回転電機制御部13は、オン操作中のスイッチの固着異常に伴い、回転電機11の駆動を制限しつつ継続した後は、回転電機11の駆動を禁止する。これにより、オン操作中のスイッチに固着異常が生じている状態で回転電機11の駆動が再度実施されるのを防止することができる。
【0080】
・回転電機制御部13は、オン操作中のスイッチSW2に固着異常が生じた状態で回転電機11の駆動を継続する場合において、Li蓄電池30の端子間電圧が所定の出力電圧範囲から外れないように、回転電機11のトルクT1r,T2rを制限する。これにより、Li蓄電池30の劣化を抑制しつつ回転電機11の駆動を継続させることができる。
【0081】
・電池制御部31は、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じたと判定した場合に、スイッチSW5をオン操作することにより、スイッチSW1を介することなく、バイパス経路L3を介して鉛蓄電池20と回転電機11との間の電気的な接続を継続する。また、回転電機制御部13は、バイパス経路L3に流れる電流がヒューズ50を溶断する溶断電流よりも小さくなるように回転電機11のトルクT1r,T2rを制限する。これにより、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じた場合において、鉛蓄電池20と回転電機11との間の電気的な接続を継続しつつ、回転電機11の駆動を安定的に継続させることができる。
【0082】
(その他の実施形態)
・電池制御部31は、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていると判定した場合に、スイッチSW2をオン操作するものであってもよい。この場合、
図4のステップS19において、スイッチSW2をオン操作すればよい。これにより、回転電機11とLi蓄電池30とがスイッチSW2を介して電気的に接続されることにより、力行時において、スイッチSW1が一時的にオン状態からオフ状態へ変化した場合でも、Li蓄電池30からの電力が回転電機11に供給される。また、回生発電時には、スイッチSW1が一時的にオン状態からオフ状態へ変化した場合でも、回転電機11の発電電力がLi蓄電池30に供給される。
【0083】
・バイパス経路L3に設けられる溶断部は、所定の溶断電流よりも大きな電流より溶断されるものであればよく、ヒューズ以外のものであってもよい。例えば、バイパス経路L3において、一部の経路幅がそれ以外の経路幅よりも狭められた部位であって、過電流に伴う発熱により溶断する部位を溶断部としてもよい。
【0084】
・車載電源システム100は、バイパス経路L3上にスイッチSW5を備える構成に代えて、バイパス経路L3上に抵抗部を備える構成であってもよい。この場合において、電池制御部31は、オン操作中のスイッチSW1に固着異常が生じていると判定した場合に、スイッチSW2をオン操作すればよい。
【0085】
・回転電機制御部13は、電池制御部31からの異常信号を受信した後に、受信した異常信号の解析結果に応じて、電池制御部31に各スイッチSW1~SW3のオンオフ操作を命令してもよい。
【0086】
・電池制御部31と回転電機制御部13とにより制御装置を構成することに代えて、1つの制御装置に、電池制御部31と回転電機制御部13との両者の機能を備えさせてもよい。
【符号の説明】
【0087】
11…回転電機、20…鉛蓄電池、30…Li蓄電池、31…電池制御部、13…回転電機制御部、100…車載電源システム。