(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】移動車両
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221220BHJP
【FI】
G05D1/02 J
(21)【出願番号】P 2019055227
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】塚原 拓矢
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003479(JP,A)
【文献】特開2002-027480(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180454(WO,A1)
【文献】特開2009-052940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲に存在する物体の形状に関する情報を周囲物体として取得する周辺検知装置と、
前記周辺検知装置により取得した情報に基づいて先行する追尾対象を追尾すべく前記車両の走行を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記周辺検知装置により取得した周囲物体に関する情報において前記追尾対象
が検知できなくなることで前記追尾対象を見失った際に、
見失う直前の前記追尾対象の位置まで前記車両を移動させるとともに、前記見失う直前の前記追尾対象の位置にて、前記周辺検知装置によって時間の経過とともに取得された複数の取得結果を比較し、当該比較をした結果から、前記周囲物体のうち動きがあった物体である移動物体を追尾対象として認識
し直す認識制御を実施することを特徴とする移動車両。
【請求項2】
前記周辺検知装置は、レーザレンジファインダであり、
前記認識制御は、前記レーザレンジファインダで検知した前記周囲物体を示す点群のうち規定量以上移動した当該点群を前記移動物体として認識するとともに、前記移動物体を追尾対象として認識することを特徴とする請求項1に記載の移動車両。
【請求項3】
前記認識制御は、前記追尾対象を見失った後に認識した前記移動物体の位置が、前記追尾対象を見失う直前の前記追尾対象の位置から規定範囲内にあるか否かを判定し、前記規定範囲内にある前記移動物体を追尾対象とすることを特徴とする請求項1または2に記載の移動車両。
【請求項4】
前記認識制御は、認識した前記移動物体の大きさを、元々認識していた前記追尾対象の大きさと比較して規定範囲内であるか否かを判定し、大きさが規定範囲内である前記移動物体を追尾対象とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の移動車両。
【請求項5】
前記認識制御は、前記追尾対象を見失う直前に前記追尾対象が動いていた方向に動く前記移動物体を追尾対象とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の移動車両。
【請求項6】
前記周辺検知装置は、レーザレンジファインダであり、
前記認識制御は、車両が動いている場合における移動物体の判定を、前記車両の移動した距離及び移動方向の少なくとも一方を前記レーザレンジファインダで検知した点群の検知結果に反映させることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の移動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行する人や車両を追尾対象として追尾する移動車両において、物体の形状から追尾対象を認識する技術がある。追尾対象を検知するセンサで追尾対象を観測できなくなった場合は、その直前に検知していた最後の追尾対象の位置(ロスト位置)へ移動し、追尾対象を探索する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、支柱を有する棚などの物体がある場所で、人等の追尾対象を追尾する場合を考える。この場合、ロスト位置の周辺に追尾対象の人と似た形状の別物体である、支柱を有する棚が存在すると、移動車両は追尾対象の人と別物体である支柱を有する棚との見分けが付けにくく、追尾対象を誤認識してしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、容易に追尾対象を認識することができる移動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する移動車両は、車両の周囲に存在する物体の形状に関する情報を周囲物体として取得する周辺検知装置と、前記周辺検知装置により取得した情報に基づいて先行する追尾対象を追尾すべく前記車両の走行を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記追尾対象を見失った際に、前記周辺検知装置によって時間の経過とともに取得された複数の取得結果を比較し、当該比較をした結果から、前記周囲物体のうち動きがあった物体である移動物体を追尾対象として認識する認識制御を実施することを要旨とする。
【0007】
これによれば、周辺検知装置によって時間の経過とともに取得された複数の取得結果が比較され、当該比較をした結果から、周囲物体のうち動きがあった物体である移動物体が追尾対象として認識される。これにより、容易に追尾対象を認識することができる。
【0008】
また、移動車両において、前記周辺検知装置は、レーザレンジファインダであり、前記認識制御は、前記レーザレンジファインダで検知した前記周囲物体を示す点群のうち規定量以上移動した当該点群を前記移動物体として認識するとともに、前記移動物体を追尾対象として認識するとよい。
【0009】
また、移動車両において、前記認識制御は、前記追尾対象を見失った後に認識した前記移動物体の位置が、前記追尾対象を見失う直前の前記追尾対象の位置から規定範囲内にあるか否かを判定し、前記規定範囲内にある前記移動物体を追尾対象とするとよい。
【0010】
また、移動車両において、前記認識制御は、認識した前記移動物体の大きさを、元々認識していた前記追尾対象の大きさと比較して規定範囲内であるか否かを判定し、大きさが規定範囲内である前記移動物体を追尾対象とするとよい。
【0011】
また、移動車両において、前記認識制御は、前記追尾対象を見失う直前に前記追尾対象が動いていた方向に動く前記移動物体を追尾対象とするとよい。
また、移動車両において、前記制御装置は、前記追尾対象を見失った場合に、見失う直前の前記追尾対象の位置まで前記車両を移動させるとともに、前記見失う直前の前記追尾対象の位置にて前記認識制御を行なうとよい。
【0012】
また、移動車両において、前記周辺検知装置は、レーザレンジファインダであり、前記認識制御は、車両が動いている場合における移動物体の判定を、前記車両の移動した距離及び移動方向の少なくとも一方を前記レーザレンジファインダで検知した点群の検知結果に反映させるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容易に追尾対象を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は実施形態における移動車両の概略平面図、(b)は移動車両の概略側面図。
【
図11】(a)は物体を確認しない場合における実際の物体配置を説明するための平面図、(b)は物体を確認しない場合におけるレーザレンジファインダでの観測結果を示す図。
【
図12】(a)は物体を確認する場合における実際の物体配置を説明するための平面図、(b)は物体を確認する場合におけるレーザレンジファインダでの観測結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、移動車両10は、全方向移動車両である。移動車両10は、円柱状の機台20と4つの車輪30,31,32,33を備えている。4つの車輪30,31,32,33は、機台20に設けられている。詳しくは、平面視において機台20の中心に対し90°毎に車輪30,31,32,33が配置されている。各車輪30,31,32,33は、それぞれ全方向車輪であって、具体的にはオムニホイールであり、各車輪30,31,32,33は、全方向に駆動可能に構成された車輪である。即ち、各車輪において、車輪の円周方向において自由回転するローラ(樽型を有する小輪)が複数設けられ、前後・左右に自由に動くことができる。このように構成された車輪を4つ用いて車軸を変動させないで機台を全方向に可動できるようになっている。
【0016】
機台20には周辺検知装置としてのレーザレンジファインダ(LRF:光波測距儀)65が装着されており、移動車両10の周囲に存在する物体の形状に関する情報を周囲物体として取得することができるようになっている。レーザレンジファインダ65は機台20に固定されており、水平方向においてレーザをスキャンして、物体に対し方向と距離を点群として検知することができる。
【0017】
図2に示すように、移動車両10は、モータ40,41,42,43と、コントローラ60と、駆動回路61,62,63,64とを備える。モータ40,41,42,43、コントローラ60、駆動回路61,62,63,64は機台20に搭載されている。モータ40の出力軸が車輪30と駆動連結されており、モータ40により車輪30を駆動することができる。同様に、モータ41の出力軸が車輪31と駆動連結されており、モータ41により車輪31を駆動することができる。モータ42の出力軸が車輪32と駆動連結されており、モータ42により車輪32を駆動することができる。モータ43の出力軸が車輪33と駆動連結されており、モータ43により車輪33を駆動することができる。
【0018】
駆動回路61によりモータ40が駆動され、このモータ40の駆動により車輪30が駆動される。駆動回路62によりモータ41が駆動され、このモータ41の駆動により車輪31が駆動される。駆動回路63によりモータ42が駆動され、このモータ42の駆動により車輪32が駆動される。駆動回路64によりモータ43が駆動され、このモータ43の駆動により車輪33が駆動される。
【0019】
コントローラ60は駆動回路61,62,63,64を介してモータ40,41,42,43を制御して各車輪30,31,32,33を駆動させる。これにより、機台20を前後方向、左右方向及び回転方向に移動させることができる。
【0020】
コントローラ60はレーザレンジファインダ65から、検知した物体の情報を入力する。
制御装置としてのコントローラ60は、レーザレンジファインダ65により取得した情報に基づいて先行する追尾対象を追尾すべく車両の走行を制御する。このとき、レーザレンジファインダ65による物体についての方向と距離の情報を利用して追尾対象を認識し、認識した追尾対象の位置(追尾対象までの距離)が変化することを基に駆動回路61~64に駆動指示を出すことで、検知した追尾対象を追尾する。追尾対象は、人(追尾対象者)でも車両等の物(追尾対象物)でもよい。
【0021】
次に、作用について説明する。
コントローラ60は、
図3に示す処理を示す実行する。
図3に示す処理は一定時間ごとに行われる。
【0022】
図3において、コントローラ60はステップS100で追尾対象を見失ったか否か(ロスト中か否か)判定する。コントローラ60は追尾対象を見失わないと(ロスト中でないと)、ステップS101で追尾対象を追尾する。
【0023】
コントローラ60はステップS100において追尾対象を見失うと(ロスト中であると)、ステップS102に移行して移動車両10の位置がロスト位置か否かを判定する。ロスト位置とは、移動車両10が追尾対象を見失う直前に検知していた、最後の追尾対象の位置であることが好ましいが、コントローラ60が後述する認識制御を実施するのに影響しない範囲で適宜設定してもよく、例えば追尾対象をロストした時間から数秒前の、追尾対象の位置をロスト位置としてもよい。コントローラ60はステップS102において移動車両10の位置がロスト位置でないと、ステップS103に移行してロスト位置に向けて走行する。コントローラ60はステップS102において移動車両10の位置がロスト位置であると、ステップS104に移行して動体か否か判定する。
【0024】
追尾対象を見失った際に、コントローラ60はステップS104において
図9及び
図10に示すように、レーザレンジファインダ65からの情報により物体の特徴的な形状を認識して、その形状の物体に対し、レーザレンジファインダ65によって時間の経過とともに取得された複数の取得結果を比較する。特徴的な形状とは、レーザレンジファインダ65が取得した点群のうち、物体の形状を表現する点群の集まりのことである。レーザレンジファインダ65の情報について、例えば人70の足を取得したときの一例を、
図11(a)、
図11(b)、
図12(a)、
図12(b)に示す。
【0025】
図11(a)、
図12(a)は実際の物体配置を説明するための平面図であり、
図11(a)は物体を確認しない場合を、
図12(a)は物体を確認する場合を示している。
図11(b)、
図12(b)はレーザレンジファインダでの観測結果を示しており、
図11(b)、
図12(b)において、横軸をレーザレンジファインダ65によるレーザの照射角度θ、縦軸にその照射角度θにおける距離の測定結果を表している。
図11(b)は物体を確認しない場合、
図12(b)は物体を確認する場合を示している。
図12(b)に示すように物体の特徴的な形状を観測することができる。
【0026】
レーザレンジファインダ65により取得した情報は、物体を認識していない無限遠のなかに、略U字状の点群を含んでいる。コントローラ60は、この略U字状の点群を特徴的な形状として認識することで、物体を認識する。特徴的な形状として認識するにあたり、この一例におけるU字点群の1つずつを物体として認識してもよいし、2つを1つの物体して認識してもよい。そして、コントローラ60は当該比較した結果から、周囲物体のうち動きがあった物体である移動物体を追尾対象として認識する認識制御を実施する。
【0027】
詳しくは、認識制御は、レーザレンジファインダ65で検知した周囲物体を示す点群のうち規定量以上移動した当該点群を移動物体として認識するとともに、移動物体を追尾対象として認識する。
【0028】
一例として
図9において、ある時点におけるレーザレンジファインダ65から人70の脚部71までの距離がd1であり、レーザレンジファインダ65から人70の脚部72までの距離がd2であり、レーザレンジファインダ65から棚80の支柱81までの距離がd3であり、レーザレンジファインダ65から棚80の支柱82までの距離がd4であるとする。次に、ある時点から所定時間後の
図10においてレーザレンジファインダ65から人70の脚部71までの距離がd11であり、レーザレンジファインダ65から人70の脚部72までの距離がd12であり、レーザレンジファインダ65から棚80の支柱81までの距離がd13であり、レーザレンジファインダ65から棚80の支柱82までの距離がd14であるとする。
【0029】
コントローラ60はある時点において、レーザレンジファインダ65から
図9に示す追尾対象の人70の脚部71,72までの距離d1,d2を計測するとともにレーザレンジファインダ65から棚80の2本の支柱81,82での距離d3,d4を計測する。そして、コントローラ60は、各距離d1,d2,d3,d4を記憶する。
【0030】
ある時点から所定時間が経過した時にコントローラ60は、レーザレンジファインダ65から
図10に示す追尾対象の人70の脚部71,72までの距離d11,d12を計測するとともにレーザレンジファインダ65から棚80の2本の支柱81,82までの距離d13,d14を計測する。そして、コントローラ60は、各距離d11,d12,d13,d14を記憶する。
【0031】
コントローラ60は、d11-d1=Δ1、d12-d2=Δ2、d13-d3=Δ3、d14-d4=Δ4を求め、各距離の差Δ1,Δ2,Δ3,Δ4が規定量として設定された閾値よりも大きいと動体と判定し、閾値よりも小さいと動体とは判定しない。
図10のように、追尾対象の人70は継続して歩いているので人70を動体と判定して、人70を追尾する。閾値は、レーザレンジファインダの分解能や感度等によって、適宜設定される。
【0032】
このように、追尾対象は棚等の静止体と異なり、動くことに着目して追尾対象を再認識する。このとき、追尾対象を検知するレーザレンジファインダ65の情報を用いて、物体を静止体と動体に区別する。
【0033】
図3において、コントローラ60はステップS104において動体であると、ステップS105で追尾対象を見失った後に認識した移動物体の位置が、追尾対象を見失う直前の追尾対象の位置から規定範囲内にあるか否かを判定する(規定範囲内にある移動物体を追尾対象とする)。コントローラ60は移動物体の位置が追尾対象を見失う直前の追尾対象の位置から規定範囲内であるとステップS106で物体の大きさが規定範囲内か判定する。つまり、ステップS106の処理により、認識制御は、認識した移動物体の大きさを、元々認識していた追尾対象の大きさと比較して規定範囲内であるか否かを判定する(大きさが規定範囲内である移動物体を追尾対象とする)。
【0034】
コントローラ60はステップS106において物体の大きさが規定範囲内であると、ステップS107において追尾対象を認識し、追尾する。
一方、コントローラ60はステップS104において動体でない時、あるいは、ステップS105において物体位置がロスト位置から規定範囲内でない時、あるいは、ステップS106において物体の大きさが規定範囲内でない時には、ステップS108に移行してロスト位置で待機する。この際、追尾対象を検知できないことを後述する作業者等へ知らせるために、コントローラ60は音声や光などによって警報を発してもよい。
【0035】
具体的に、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8を用いて説明する。
図4、
図5に示すように、移動車両10は、追尾対象として2本の脚部71,72を有する人70を追尾する。人70は、作業エリアに保管させている荷を移動車両10へ積載する作業者である。さらに、移動車両11が追尾対象としての移動車両10を追尾する。移動車両11は移動車両10と同一構成となっている。移動車両11は、先行する円柱状の移動車両10を追尾する。例えば、人70は移動車両10に全ての荷を積載できない場合には、移動車両11にも荷を積載する。移動車両11は円柱状の移動車両10と棚80に置かれている円柱状の荷86(
図4参照)を誤認しやすい。
【0036】
今、棚80の横を追尾対象としての人70が歩行している。棚80は、4本の円形の支柱81,82,83,84を有し、4本の円形の支柱81,82,83,84に板85が架設されている。棚80の板85には荷物を配置することができる。
【0037】
図6に示すように、人70が棚80の角を曲がった場合、棚80の存在により移動車両10は人70を見失う。すると、移動車両10のコントローラ60は
図3のステップS100でロスト中と判定した後、ステップS102で移動車両10の位置がロスト位置でないと判定し、ステップS103でロスト位置に走行する。この場合のロスト位置は、
図6における人70の位置であり、コントローラ60が直前まで検知していた人70の位置と移動方向から推定可能な位置である。
【0038】
そして、
図7に示すように、移動車両10がロスト位置まで移動すると、コントローラ60は、
図3のステップS104において動体か否か、ステップS105において物体位置がロスト位置から規定範囲内か、ステップS106において物体の大きさが規定範囲内か否か判定する。
【0039】
コントローラ60は、
図3のステップS104において動体であり、かつ、ステップS105において物体位置がロスト位置から規定範囲であり、かつ、ステップS106において物体の大きさが規定範囲内であると、ステップS107に移行して追尾対象を認識し、追尾する。
【0040】
このように、追尾対象と形状が似た形状の静止体がある場合においても、静止体を追尾対象と誤認識することを防ぐことができる。
同様に、
図7に示すように後方の移動車両11が先行する移動車両10を棚80の存在により見失う。移動車両10を見失った後において、
図8に示すように、後方の移動車両11がロスト位置まで来ると、コントローラ60は、
図3のステップS104において動体であり、ステップS105において物体位置がロスト位置から規定範囲内であり、ステップS106において物体の大きさが規定範囲内である場合には、ステップS107に移行して追尾対象を認識し、追尾する。
【0041】
このように、移動車両11が移動車両10を追尾する場合にも、レーザレンジファインダ65で円柱状の物体を探すだけでは、例えば、棚80において円柱状の荷86が置かれている場合には誤認識しやすいが、動体か否かで判定することにより誤認識を防止することができる。
【0042】
このようにして、移動車両10,11において、追尾対象の誤認識を低減することで、作業者による追尾対象の再認識のための時間と手間を軽減することができる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
(1)移動車両の構成として、移動車両の周囲に存在する物体の形状に関する情報を周囲物体として取得する周辺検知装置としてのレーザレンジファインダ65と、レーザレンジファインダ65により取得した情報に基づいて先行する追尾対象を追尾すべく車両の走行を制御する制御装置としてのコントローラ60と、を備え、コントローラ60は、追尾対象を見失った際に、周辺検知装置としてのレーザレンジファインダ65によって時間の経過とともに取得された複数の取得結果を比較し、当該比較をした結果から、周囲物体のうち動きがあった物体である移動物体を追尾対象として認識する認識制御を実施する。よって、コントローラ60は容易に追尾対象を認識することができる。また、コントローラ60は追尾対象の認識を正確に行うことができる。
【0044】
(2)詳しくは、周辺検知装置は、レーザレンジファインダ65であり、認識制御は、レーザレンジファインダ65で検知した周囲物体を示す点群のうち規定量以上移動した当該点群を移動物体として認識するとともに、移動物体を追尾対象として認識する。これにより、追尾対象の認識の精度が向上するとともに、過敏な反応による無駄な移動を抑制される。
【0045】
(3)
図3のステップS105において認識制御は、追尾対象を見失った後に認識した移動物体の位置が、追尾対象を見失う直前の追尾対象の位置から規定範囲内にあるか否かを判定し、規定範囲内にある移動物体を追尾対象とする。これにより、追尾対象の認識の精度が向上する。
【0046】
(4)
図3のステップS106において認識制御は、認識した移動物体の大きさを、元々認識していた追尾対象の大きさと比較して規定範囲内であるか否かを判定し、大きさが規定範囲内である移動物体を追尾対象とする。これにより、追尾対象の認識の精度が向上する。
【0047】
(5)
図3のステップS100において、コントローラ60は、追尾対象を見失った場合に、ステップS102,S103で見失う直前の追尾対象の位置まで車両を移動させるとともに、見失う直前の追尾対象の位置にて認識制御を行なう。これにより、追尾対象の認識の精度が向上する。
【0048】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○
図3等で説明したように追尾対象の認識条件は、以下の条件をすべて満たした物体を追尾対象と認識した。その1として、動体であること(動体の判定方法は、レーザレンジファインダで検知した点群が規定量以上、移動した場合に動体と判断する)。その2として、物体の位置がロスト位置から規定範囲内であること。その3として、物体の大きさが規定範囲内であること。つまり、
図3において追尾対象を確定する際にステップS104において動体か否か、ステップS105において物体位置がロスト位置から規定範囲内であるか否か、ステップS106において物体の大きさが規定範囲内であるか否か判定した。
【0049】
これに限るものではない。例えば、動体か否かと、物体位置がロスト位置から規定範囲内であるか否かを判定してもよい。他にも、動体か否かと物体の大きさが規定範囲内であるか否かを判定してもよく、動体か否かだけを判定してもよい。
【0050】
○ 制御装置としてのコントローラ60は、認識制御は、追尾対象を見失う直前に追尾対象が動いていた方向に動く移動物体を追尾対象とすることを更に行なうようにしてもよい。
図5、
図6を用いて説明すると、人70が棚80の角を左に曲がった場合において、コントローラ60はロストする前のセンサ情報から左方に移動していることが分かるので、ロストした位置に走行した時に人70は左方向に移動していると予想でき、左方向に動く物体を追尾対象と認識する。よって、例えば、ロスト位置から左方向以外の方向に移動している物体は追尾対象でないと判定することができる。特に、人が複数人いる場合にそのうちの一人を追尾対象として認識する場合に有用である。そうすることで、追尾対象と異なる動体への誤認識を低減することができる。
【0051】
○ 追尾対象として認識する点群は、移動車両に対して相対的に移動したことを検知すればよく、認識した物体の位置に関する角度(方向)の変化を観測してもよい。
○ 移動車両が動いている場合の動体の判定は、オドメトリ情報を利用して移動車両の移動量分だけレーザレンジファインダ65からの情報の点群の移動量を考慮して判定するようにしてもよい。オドメトリ情報は、例えば、車軸に設けたエンコーダにより求められる移動車両の走行量を挙げることができる。そして、この情報とレーザレンジファインダ65からの情報を用いて、移動物体として検知した点群が動体か静止体かを判別する。具体的には、制御装置は動体の判定の際に、所定時間における点群の移動量(距離や方向)から当該所定時間における移動車両の移動量(距離や方向)を差し引きする。これにより、当該所定時間における移動物体として検知した点群の絶対的な移動量を算出することができる。よって、オドメトリ情報を使用することにより追尾対象の絶対的な座標位置の推定を行うことができる。
【0052】
このように、周辺検知装置は、レーザレンジファインダであり、認識制御は、車両が動いている場合における移動物体の判定を、車両の移動した距離及び移動方向の少なくとも一方をレーザレンジファインダで検知した点群の検知結果に反映させるようにしてもよい。
【0053】
○ 周辺検知装置はレーザレンジファインダに限らず、他の距離測定の機器、例えばステレオカメラ等でもよく、ステレオカメラ等を用いて物体のエッジを検知し、そのエッジに基づいて物体までの距離が分かるものでもよい。
【0054】
○ ロスト後の認識以外にも追尾開始時に追尾対象と形状が似た物体を追尾対象の候補から除く目的でも適用可能である。つまり、ロストした後の再認識の場合について説明したが、追尾開始時の状況で行ってもよい。
【0055】
○ 移動車両は全方向移動車両の例を示したが、これに限るものではなく、4輪オムニホイール車両以外の4輪車両等の他の車両であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…移動車両、11…移動車両、60…コントローラ、65…レーザレンジファインダ、70…人。