(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】水晶ウエハ
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20221220BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20221220BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H03H3/02 C
H03H9/02 A
H03H9/19 D
(21)【出願番号】P 2019062123
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏樹
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118307(JP,A)
【文献】特開2016-006946(JP,A)
【文献】特開2018-019200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/007-3/06
H03H 9/00- 9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動片を気密封止する水晶振動デバイスの少なくとも1つのパッケージが、平面視で前記パッケージの第1辺側に設けられた支持部に、連結部を介して連結された水晶ウエハであって、
前記連結部は、前記パッケージの前記第1辺に沿った方向に所定の間隔を隔てて設けられた第1、第2連結部を含み、
前記パッケージは平面視略矩形に形成され、前記パッケージの第2辺および第3辺が、前記第1辺の両端から前記第1辺に対して垂直方向にそれぞれ延び、
前記第2辺は、第1隙間を隔てて、隣り合うパッケージまたは当該水晶ウエハのフレーム部に対向して設けられ、前記第1隙間の前記第1連結部側の端縁が、前記パッケージの前記第1辺の延長線上に設けられており、
前記第3辺は、第2隙間を隔てて、隣り合うパッケージまたは当該水晶ウエハのフレーム部に対向して設けられ、前記第2隙間の前記第2連結部側の端縁が、前記パッケージの前記第1辺の延長線上に設けられ
、
前記第1、第2連結部が、前記支持部側に設けられており、
前記第1、第2連結部のそれぞれの前記パッケージの第1辺側の端部には、溝部が当該パッケージの第1辺に沿って形成され、
前記パッケージの前記第1辺は、当該水晶ウエハのX軸に垂直に設けられており、
前記パッケージの前記第2辺および第3辺は、当該水晶ウエハのX軸に平行に設けられていることを特徴とする水晶ウエハ。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶ウエハにおいて、
前記第1、第2連結部は、前記パッケージの一方の長辺側に設けられていることを特徴とする水晶ウエハ。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の水晶ウエハにおいて、
前記パッケージは、前記水晶振動片を構成する水晶振動板と、前記水晶振動片を上下から覆う第1封止部材および第2封止部材とが、積層された構成となっており、
当該水晶ウエハは、第1封止部材用ウエハと、水晶振動板用ウエハと、第2封止部材用ウエハとが、積層された構成となっており、
前記第1連結部は、前記第1封止部材用ウエハに形成された第1封止部材用第1連結部と、前記水晶振動板用ウエハに形成された水晶振動板用第1連結部と、前記第2封止部材用ウエハに形成された第2封止部材用第1連結部とが、積層された構成になっており、
前記第2連結部は、前記第1封止部材用ウエハに形成された第1封止部材用第2連結部と、前記水晶振動板用ウエハに形成された水晶振動板用第2連結部と、前記第2封止部材用ウエハに形成された第2封止部材用第2連結部とが、積層された構成になっていることを特徴とする水晶ウエハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶ウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化や、パッケージの小型化(特に低背化)が進んでいる。そのような高周波化やパッケージの小型化にともなって、水晶振動デバイス(例えば水晶振動子や水晶発振器等)も高周波化やパッケージの小型化への対応が求められている。
【0003】
この種の水晶振動デバイスでは、その筐体が略直方体状のパッケージで構成されている。パッケージは、水晶からなる第1封止部材および第2封止部材と、水晶からなり両主面に励振電極が形成された水晶振動板とによって構成される。第1封止部材と第2封止部材とが水晶振動板を介して積層して接合され、パッケージの内部(内部空間)に配された水晶振動板の励振電極が気密封止される(例えば、特許文献1参照)。以下、このような水晶振動デバイスの積層形態をサンドイッチ構造という。
【0004】
ところで、この種の水晶振動デバイスは、製造過程において、パッケージが複数、集合されたウエハが作製され、ダイシング等により切断することによって、各パッケージに個片化される。また、従来では、水晶振動片が複数、集合されたウエハから、各水晶振動片を折り取ることによって個片化することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-252051号公報
【文献】特開2008-092505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような水晶振動デバイスのパッケージが複数、集合されたウエハから、各パッケージを折り取って個片化する場合、割れ、チッピング等の折り取り痕(折り取り残り)がパッケージ側で発生することが懸念される。
【0007】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、パッケージ側での折り取り痕の発生を抑制することが可能な水晶ウエハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、水晶振動片を気密封止する水晶振動デバイスの少なくとも1つのパッケージが、平面視で前記パッケージの第1辺側に設けられた支持部に、連結部を介して連結された水晶ウエハであって、前記連結部は、前記パッケージの前記第1辺に沿った方向に所定の間隔を隔てて設けられた第1、第2連結部を含み、前記パッケージは平面視略矩形に形成され、前記パッケージの第2辺および第3辺が、前記第1辺の両端から前記第1辺に対して垂直方向にそれぞれ延び、前記第2辺は、第1隙間を隔てて、隣り合うパッケージまたは当該水晶ウエハのフレーム部に対向して設けられ、前記第1隙間の前記第1連結部側の端縁が、前記パッケージの前記第1辺の延長線上に設けられており、前記第3辺は、第2隙間を隔てて、隣り合うパッケージまたは当該水晶ウエハのフレーム部に対向して設けられ、前記第2隙間の前記第2連結部側の端縁が、前記パッケージの前記第1辺の延長線上に設けられ、前記第1、第2連結部が、前記支持部側に設けられており、前記第1、第2連結部のそれぞれの前記パッケージの第1辺側の端部には、溝部が当該パッケージの第1辺に沿って形成され、前記パッケージの前記第1辺は、当該水晶ウエハのX軸に垂直に設けられており、前記パッケージの前記第2辺および第3辺は、当該水晶ウエハのX軸に平行に設けられていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記パッケージは、前記水晶振動片を構成する水晶振動板と、前記水晶振動片を上下から覆う第1封止部材および第2封止部材とが、積層された構成となっており、当該水晶ウエハは、第1封止部材用ウエハと、水晶振動板用ウエハと、第2封止部材用ウエハとが、積層された構成となっており、前記第1連結部は、前記第1封止部材用ウエハに形成された第1封止部材用第1連結部と、前記水晶振動板用ウエハに形成された水晶振動板用第1連結部と、前記第2封止部材用ウエハに形成された第2封止部材用第1連結部とが、積層された構成になっており、前記第2連結部は、前記第1封止部材用ウエハに形成された第1封止部材用第2連結部と、前記水晶振動板用ウエハに形成された水晶振動板用第2連結部と、前記第2封止部材用ウエハに形成された第2封止部材用第2連結部とが、積層された構成になっていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、水晶振動子のパッケージが複数、集合された水晶ウエハから、各パッケージを折り取りによって容易に個片化することができ、パッケージ側での折り取り残りの発生を抑制することができる。具体的には、各パッケージの折り取りの際に発生する応力が、第1、第2連結部の内側端縁(第1、第2連結部のパッケージの第1辺の中央位置から近い側の端縁)とパッケージの第1辺との接続部に集中しやすくなり、水晶ウエハにその接続部を起点とした破断が発生しやすくなっている。上記構成によれば、第1隙間の第1連結部側の端縁および第2隙間の第2連結部側の端縁が、パッケージの第1辺の延長線上に設けられているので、パッケージの折り取りの際、上記接続部を起点として発生した破断をパッケージの第1辺に沿って略直線的で蛇行しないように進行させることができ、パッケージを水晶ウエハから容易に分離させることができる。これにより、割れ、チッピング等の折り取り痕がパッケージ側で発生することを抑制でき、パッケージの外観不良の発生を抑制することができる。この場合、溝部が水晶ウエハのX軸に垂直に形成されるので、ウェットエッチングによって溝部の斜面の形状を水晶ウエハの表裏で対称になるように形成することができる。また、溝部を水晶ウエハのX軸に垂直に形成し溝部の幅を調整すれば、そのエッチングレートが小さくなるので、他の隙間(第1隙間、第2隙間等)を形成する工程と同時にエッチング加工したとしても、溝部が水晶ウエハを貫通しないように設計することができる。これにより、エッチング加工の途中でパッケージが水晶ウエハから離脱することを回避できる。
【0011】
上記構成において、前記第1、第2連結部は、前記パッケージの一方の長辺側に設けられていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、溝部によって、パッケージの折り取りに必要な力を小さくすることができ、折り取りの際にパッケージに加えられるダメージを小さくすることができる。この際、第1、第2連結部をパッケージ側ではなく支持部側に設けることによって、パッケージが破断による影響を受けにくくなり、パッケージの外縁を略直線的に形成することができる。また、パッケージの第1辺に沿って形成された溝部によって破断の進行方向をコントロールすることができ、上記接続部を起点として発生した破断をパッケージの第1辺に沿って確実に進行させることができる。さらに、第1、第2連結部が、パッケージの一方の長辺側に設けられているので、パッケージの短辺側に設けられている場合に比べて、第1、第2連結部のそれぞれの幅(第1、第2連結部が並ぶ方向の幅)を大きくすることができ、折り取りまでにパッケージを支持部に連結しておくのに必要な第1、第2連結部の連結力(保持力)を確保することができる。また、第1、第2連結部をパッケージの+X方向側の長辺に設けることによって、ウェットエッチングを行う際、水晶ウエハの異方性によって水晶振動板の振動部の+X方向側の角部に欠損(面取り)が発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水晶振動子のパッケージが複数、集合された水晶ウエハから、各パッケージを折り取りによって容易に個片化することができ、パッケージ側での折り取り痕の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる水晶ウエハを示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の水晶ウエハの一部を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の水晶ウエハを構成する第1封止部材用ウエハ、水晶振動板用ウエハ、および第2封止部材用ウエハを示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態にかかる水晶ウエハから個片化された水晶振動デバイスを示す概略構成図である。
【
図5】
図5は、
図4の水晶振動子の第1封止部材を示す概略平面図である。
【
図6】
図6は、
図4の水晶振動子の第1封止部材を示す概略裏面図である。
【
図7】
図7は、
図4の水晶振動子の水晶振動板を示す概略平面図である。
【
図8】
図8は、
図4の水晶振動子の水晶振動板を示す概略裏面図である。
【
図9】
図9は、
図4の水晶振動子の第2封止部材を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施の形態にかかる水晶ウエハは、水晶振動片を気密封止する略直方体状の水晶振動デバイスの少なくとも1つのパッケージが、平面視でパッケージの一辺側に設けられた支持部に、連結部を介して連結された構成になっている。つまり、
図1に例示するように、水晶ウエハ1は、水晶振動デバイスのパッケージ120が複数、集合された構成になっている。水晶ウエハ1について説明する前に、まず、水晶振動デバイスについて説明する。以下では、水晶振動デバイスの一例として、
図4~
図10に示すような水晶振動子100について説明する。
【0019】
-水晶振動子-
図4に示すように、水晶振動子100は、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、および第2封止部材30を備えて構成されている。この水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージ120が構成される。すなわち、水晶振動子100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージ120の内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(
図7,8参照)が気密封止される。
【0020】
水晶振動子100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージ120では、キャスタレーションを形成せずに、後述するスルーホールを用いて電極の導通を図っている。また、水晶振動子100は、外部に設けられる外部回路基板(図示省略)に半田を介して電気的に接続されるようになっている。
【0021】
次に、水晶振動子100における水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30の各部材について、
図4~10を用いて説明する。なお、ここでは、接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。
図5~10は、水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30のそれぞれの一構成例を示しているにすぎず、これらは本発明を限定するものではない。
【0022】
水晶振動板10は、
図7,8に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101,第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。本実施の形態では、水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。
図7,8に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、および光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸およびZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸およびZ軸からそれぞれ概ね35°15′傾いた(この切断角度はATカット水晶振動板の周波数温度特性を調整する範囲で多少変更してもよい)軸に一致する。Y´軸方向およびZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0023】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111,第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。そして、振動部11と外枠部12との間には、水晶振動板10を切り抜いて形成された切り抜き部10aが設けられている。本実施の形態では、水晶振動板10には、振動部11と外枠部12とを連結する保持部13が1つのみ設けられており、切り抜き部10aが振動部11の外周囲を囲うように連続して形成されている。
【0024】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111,第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線113,第2引出配線114)が接続されている。第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0025】
水晶振動板10の両主面(第1主面101,第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動側封止部としては振動側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動側封止部としては振動側第2接合パターン122が形成されている。振動側第1接合パターン121および振動側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0026】
また、水晶振動板10には、
図7,8に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(
図7,8では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、それぞれ接続用接合パターン123が形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0027】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0028】
第1封止部材20は、
図5,6に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶振動子100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0029】
第1封止部材20の第1主面201(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、
図5に示すように、配線用の第1、第2金属膜22,23と、シールド用の第3金属膜28とが形成されている。配線用の第1、第2金属膜22,23は、水晶振動板10の第1、第2励振電極111,112と、第2封止部材30の外部電極端子32とを電気的に接続するための配線として設けられている。第1、第2金属膜22,23は、Z´軸方向の両端部に設けられており、第1金属膜22が、+Z´方向側に設けられ、第2金属膜23が、-Z´方向側に設けられている。第1、第2金属膜22,23は、X軸方向に延びるように形成されている。第1金属膜22は、略矩形状に形成されているが、第1金属膜22の+X方向側の部分には、-Z´方向側に突出する突出部22aが設けられている。第2金属膜23は、略矩形状に形成されているが、第2金属膜23の-X方向側の部分には、+Z´方向側に突出する突出部23aが設けられている。
【0030】
第3金属膜28は、第1、第2金属膜22,23の間に設けられており、第1、第2金属膜22,23とは所定の間隔を隔てて配置されている。第3金属膜28は、第1封止部材20の第1主面201の第1、第2金属膜22,23が形成されていない領域のうち、ほとんど全ての領域に設けられている。
【0031】
第1封止部材20には、
図5,6に示すように、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4,第5スルーホール212,213は、
図5,6の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0032】
第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。そして、第1封止部材20の第1主面201の対角に位置する2つの第3スルーホール211,211(
図5,6の+X方向かつ+Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211と、-X方向かつ-Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211)の貫通電極同士が、第3金属膜28によって電気的に接続されている。また、-X方向かつ+Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211の貫通電極と、第4スルーホール212の貫通電極とが、第1金属膜22によって電気的に接続されている。+X方向かつ-Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211の貫通電極と、第5スルーホール213の貫通電極とが、第2金属膜23によって電気的に接続されている。
【0033】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止側第1封止部としての封止側第1接合パターン24が形成されている。封止側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。また、第1封止部材20の第2主面202では、第3スルーホール211の周囲に接続用接合パターン25がそれぞれ形成されている。第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。
【0034】
第2封止部材30は、
図9,10に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0035】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止側第2封止部としての封止側第2接合パターン31が形成されている。封止側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。
【0036】
第2封止部材30の第2主面302(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、水晶振動子100の外部に設けられる外部回路基板に電気的に接続する4つの外部電極端子32が設けられている。外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(隅部)にそれぞれ位置する。
【0037】
第2封止部材30には、
図9,10に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する4つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第6スルーホール33それぞれの内壁面に沿って形成されている。このように第6スルーホール33の内壁面に形成された貫通電極によって、第1主面301に形成された電極と、第2主面302に形成された外部電極端子32とが導通されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となっている。また、第2封止部材30の第1主面301では、第6スルーホール33の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。
【0038】
上記の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、
図4に示すサンドイッチ構造のパッケージ120が製造される。これにより、パッケージ120の内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0039】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶振動子100では、第1励振電極111、第2励振電極112、外部電極端子32の電気的導通が得られるようになっている。具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212、第1金属膜22、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213、第2金属膜23、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。また、第3金属膜28は、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、アース接続(グランド接続、外部電極端子32の一部を利用)されている。
【0040】
水晶振動子100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着形成されているものとすることが好ましい。また、水晶振動子100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0041】
上述のように構成された水晶振動子100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24の拡散接合によって形成され、シールパス115の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。同様に、シールパス116は、上述した振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31の拡散接合によって形成され、シールパス116の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。
【0042】
このように拡散接合によってシールパス115,116が形成された水晶振動子100において、第1封止部材20と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材30と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材20と水晶振動板10との間のシールパス115の厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材30と水晶振動板10との間のシールパス116の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施の形態のAu-Au接合では0.15μm~1.00μm)である。なお、比較例として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm~20μmとなる。
【0043】
-水晶ウエハ-
次に、本実施の形態にかかる水晶ウエハ1について、
図1~3を参照して説明する。
【0044】
図1に示すように、水晶ウエハ1は、水晶振動子100のパッケージ120が複数、集合された構成になっている。
図1の例では、水晶ウエハ1において、平面視略矩形に形成された複数のパッケージ120がマトリックス状に配列されており、縦方向(
図1のX軸方向)および横方向(
図1のZ´軸方向)にそれぞれ8つのパッケージ120が配列され、合計64のパッケージ120が備えられている。なお、パッケージ120の数は一例であって、上記の数に限定されるものではない。
【0045】
水晶ウエハ1は、複数のパッケージ120を支持するための支持部(桟部)2を備えている。支持部2は、水晶ウエハ1のZ´軸方向に沿って延びている。支持部2の両端部は、水晶ウエハ1のフレーム部(外枠部)3に一体的に連結されている。支持部2は、水晶ウエハ1のX軸方向に所定の間隔を隔てて複数(
図1では8つ)設けられている。フレーム部3は、平面視で一辺が開放された略矩形の枠体であって、略「コ」字状に形成されている。フレーム部3の開放された一辺に対応する箇所に支持部2が設けられており、この支持部2とフレーム部3とによって環状の枠体が一体的に形成されるようになっている。
【0046】
支持部2には、複数(
図1では8つ)のパッケージ120が支持されている。パッケージ120は、水晶ウエハ1のZ´軸方向に所定の間隔を隔てて配列されている。支持部2は、平面視でパッケージ120の第1辺120a側に設けられている。本実施の形態では、支持部2は、パッケージ120の一方の長辺である第1辺120a側(
図1の+X方向側)に設けられており、パッケージ120の他方の長辺120b側(
図1の-X方向側)には、設けられていない。パッケージ120の第1辺120aは、Z´軸方向に沿って延びている。パッケージ120の第1辺120aの両端から、パッケージ120の第2辺120cおよび第3辺120dが、第1辺120aに対して垂直方向(
図1のX軸方向)にそれぞれ延びている。
【0047】
パッケージ120は、連結部(折り取り部)を介して支持部2に連結されている。連結部は、水晶ウエハ1のZ´軸方向に所定の間隔(空間)を隔てて設けられた第1、第2連結部4,5を含む構成となっている。第1、第2連結部4,5は、平面視でパッケージ120の第1辺120aから支持部2まで延びている。つまり、第1、第2連結部4,5の一端側(
図1の-X方向側)がパッケージ120の第1辺120aに連結され、第1、第2連結部4,5の他端側(
図1の+X方向側)が支持部2に連結されている。パッケージ120は、第1、第2連結部4,5のみによって、水晶ウエハ1の支持部2に支持されている。つまり、平面視で、パッケージ120の外周縁は、第1、第2連結部4,5が連結された箇所を除いて、空間(隙間)に面している。
【0048】
第1、第2連結部4,5は、同様の構成になっており、平面視で、パッケージ120の中心を通りパッケージ120の第1辺120aに垂直な直線L1に対して略線対称な形状になっている。以下では、第1連結部4について代表して説明することとし、第2連結部5についての説明を省略する。
【0049】
図2に示すように、第1連結部4は、支持部2側の端部4aの幅(Z´軸方向の幅)が、パッケージ120の第1辺120a側の端部4bの幅(Z´軸方向の幅)よりも大きくなっている。第1連結部4の内側端縁4c、つまり、パッケージ120の第1辺120aの中央位置120eから近い側(
図2の+Z´方向側)の端縁は、支持部2側の端縁が、パッケージ120の第1辺120a側の端縁よりも、平面視で内側(
図2の+Z´方向側)へ向けて突出されている。言い換えれば、支持部2側の端縁が、パッケージ120の第1辺120a側の端縁よりも、平面視で上記直線L1に近い位置に設けられている。支持部2側の端縁と上記直線L1との距離が、第1辺120a側の端縁と上記直線L1との距離よりも小さくなっている。このため、第1連結部4と第2連結部5との間には、略台形状の空間が形成されている。
【0050】
また、第1連結部4の内側端縁4cは、曲線状に形成されている。具体的には、内側端縁4cにおいて、支持部2側の端縁と、第1辺120a側の端縁との間の部分、言い換えれば、両端部以外の部分は、角が設けられていない形状(角のない形状)になっている。この場合、内側端縁4cは、上記直線L1上に中心を有する円弧の一部になっている。内側端縁4cとパッケージ120の第1辺120aとの接続部120gにおいて、内側端縁4cの接線とパッケージ120の第1辺120aとのなす角が、90度未満であることが好ましい。なお、内側端縁4cは、直線状であってもよく、あるいは、複数の円弧が組み合わされた波形の形状であってもよい。
【0051】
また、第1連結部4のパッケージ120側の端部4bには、溝部(凹部)6が形成されている。溝部6は、パッケージ120の第1辺120aに沿って設けられている。つまり、溝部6は、水晶ウエハ1のZ´軸方向に沿って延びている。溝部6は、内側端縁4cとパッケージ120の第1辺120aとの接続部120gからパッケージ120の角部120hに向けて(
図2の-Z´方向側に向けて)延びている。溝部6は、パッケージ120の角部120hまで到達しておらず、溝部6は、パッケージ120の角部120hと間隔を隔てて設けられている。つまり、溝部6は、パッケージ120の角部120hまで到達しておらず、パッケージ120の角部120hの近傍は、溝部が形成されない部分になっている。なお、溝部6がパッケージ120の角部120hまで到達していてもよい。
【0052】
図2に示すように、パッケージ120の第2辺120cは、第1隙間7aを隔てて、-Z´方向側に隣り合うパッケージ120´に対向して設けられ、第1隙間7aの第1連結部4側の端縁7cが、パッケージ120の第1辺120aの延長線上に設けられている。また、図示しないが、パッケージ120の第3辺120dは、第2隙間7bを隔てて、+Z´方向側に隣り合うパッケージ120に対向して設けられ、第2隙間7bの第2連結部5側の端縁7dが、パッケージ120の第1辺120aの延長線上に設けられている。なお、パッケージ120の-Z´方向側に設けられた第1隙間7aと、隣り合うパッケージ120´の+Z´方向側に設けられた第2隙間7bとは同じ隙間(空間)になっている。
【0053】
パッケージ120の第2辺120cと、-Z´方向側に隣り合うパッケージ120´の第3辺120dとの間には、平面視で略矩形状の第1隙間7aが設けられている。第1隙間7aの第1連結部4側の端縁7cは、Z´軸方向に平行(X軸方向に垂直)に設けられており、且つパッケージ120の第1辺120aの延長線上に位置している。同様に、パッケージ120の第3辺120dと、+Z´方向側に隣り合うパッケージの第2辺120cとの間には、平面視で略矩形状の第2隙間7bが設けられている。第2隙間7bの第2連結部5側の端縁7dは、Z´軸方向に平行(X軸方向に垂直)に設けられており、且つパッケージ120の第1辺120aの延長線上に位置している。
【0054】
このように、第1隙間7aおよび第2隙間7bは、パッケージ120の第1辺120aの延長線上までしか形成されておらず、例えば
図2に2点鎖線で示すような凹部8のない形状になっている。このため、パッケージ120の第1連結部4と-Z´方向側に隣り合うパッケージ120´の第2連結部5とが同じ幅(X軸方向の幅)で連続して設けられている。同様に、パッケージ120の第2連結部5と+Z´方向側に隣り合うパッケージ120の第1連結部4とが同じ幅(X軸方向の幅)で連続して設けられている。
【0055】
なお、横方向(Z´軸方向)に並んだ複数のパッケージ120のうち、-Z´方向側の端に位置するパッケージ120の場合、パッケージ120の第2辺120cが、第1隙間7aを隔てて、水晶ウエハ1のフレーム部3に対向して設けられ、第1隙間7aの第1連結部4側の端縁7cが、パッケージ120の第1辺120aの延長線上に設けられる。同様に、横方向に並んだ複数のパッケージ120のうち、+Z´方向側の端に位置するパッケージ120の場合、パッケージ120の第3辺120dが、第2隙間7bを隔てて、水晶ウエハ1のフレーム部3に対向して設けられ、第2隙間7bの第2連結部5側の端縁7dが、パッケージ120の第1辺120aの延長線上に設けられる。
【0056】
本実施の形態では、水晶ウエハ1は、
図3に示すように、第1封止部材用ウエハ1Bと、水晶振動板用ウエハ1Aと、第2封止部材用ウエハ1Cとが積層された構成となっている。水晶振動板用ウエハ1A、第1封止部材用ウエハ1B、および第2封止部材用ウエハ1Cは、平面視では、上述した水晶ウエハ1(
図1参照)と同様の形状になっている。
【0057】
水晶振動板用ウエハ1Aは、
図3に示すように、上述した水晶振動板10(
図7,8参照)が複数、集合された構成になっている。
図3の例では、水晶振動板用ウエハ1Aにおいて、複数の水晶振動板10がマトリックス状に配列されており、縦方向(
図3のX軸方向)および横方向(
図3のZ´軸方向)にそれぞれ8つの水晶振動板10が配列され、合計64の水晶振動板10が備えられている。そして、水晶振動板用ウエハ1Aにおいては、上述した水晶ウエハ1の場合と同様に、水晶振動板10が、第1、第2連結部4A,5Aによって支持部2Aに支持されている。第1、第2連結部4A,5Aの水晶振動板10側の端部には、溝部(スリット)6A,6Aが形成されている。溝部6A,6Aは、水晶振動板用ウエハ1Aの両面に形成されていることが好ましいが、少なくとも片面に形成されていればよい。このような第1、第2連結部4A,5A、および溝部6A,6Aを有する水晶振動板用ウエハ1Aは、例えばウェットエッチングによって形成することが可能である。なお、水晶振動板用ウエハ1Aの各水晶振動板10には、上述した振動部11や外枠部12、第1励振電極111、第2励振電極112や、振動側第1接合パターン121、振動側第2接合パターン122、第1スルーホール161、第2スルーホール162等が形成されているが、
図3では図示を省略している。
【0058】
第1封止部材用ウエハ1Bは、
図3に示すように、上述した第1封止部材20(
図5,6参照)が複数、集合された構成になっている。
図3の例では、第1封止部材用ウエハ1Bにおいて、複数の第1封止部材20がマトリックス状に配列されており、縦方向(
図3のX軸方向)および横方向(
図3のZ´軸方向)にそれぞれ8つの第1封止部材20が配列され、合計64の第1封止部材20が備えられている。そして、第1封止部材用ウエハ1Bにおいては、上述した水晶ウエハ1の場合と同様に、第1封止部材20が、第1、第2連結部4B,5Bによって支持部2Bに支持されている。第1、第2連結部4B,5Bの第1封止部材20側の端部には、溝部6B,6Bが形成されている。溝部6B,6Bは、第1封止部材用ウエハ1Bの両面に形成されていることが好ましいが、少なくとも片面に形成されていればよい。このような第1、第2連結部4B,5B、および溝部6B,6Bを有する第1封止部材用ウエハ1Bは、例えばウェットエッチングによって形成することが可能である。なお、第1封止部材用ウエハ1Bの各第1封止部材20には、上述した第1金属膜22、第2金属膜23、第3金属膜28、封止側第1接合パターン24、配線パターン27、第3スルーホール211、第4スルーホール212、第5スルーホール213等が形成されているが、
図3では図示を省略している。
【0059】
第2封止部材用ウエハ1Cは、
図3に示すように、上述した第2封止部材30(
図9,10参照)が複数、集合された構成になっている。
図3の例では、第2封止部材用ウエハ1Cにおいて、複数の第2封止部材30がマトリックス状に配列されており、縦方向(
図3のX軸方向)および横方向(
図3のZ´軸方向)にそれぞれ8つの第2封止部材30が配列され、合計64の第2封止部材30が備えられている。そして、第2封止部材用ウエハ1Cにおいては、上述した水晶ウエハ1の場合と同様に、第2封止部材30が、第1、第2連結部4C,5Cによって支持部2Cに支持されている。第1、第2連結部4C,5Cの第2封止部材30側の端部には、溝部6C,6Cが形成されている。溝部6C,6Cは、第2封止部材用ウエハ1Cの両面に形成されていることが好ましいが、少なくとも片面に形成されていればよい。このような第1、第2連結部4C,5C、および溝部6C,6Cを有する第2封止部材用ウエハ1Cは、例えばウェットエッチングによって形成することが可能である。なお、第2封止部材用ウエハ1Cの各第2封止部材30には、上述した封止側第2接合パターン31、外部電極端子32、第6スルーホール33等が形成されているが、
図3では図示を省略している。
【0060】
第1封止部材用ウエハ1Bと第2封止部材用ウエハ1Cとが水晶振動板用ウエハ1Aを介して積層して接合されることによって、
図1に示すように、サンドイッチ構造の水晶振動子100のパッケージ120が複数、集合された水晶ウエハ1が構成される。この場合、水晶ウエハ1の第1、第2連結部4,5は、第1封止部材用ウエハ1Bの第1、第2連結部4B,5Bと、水晶振動板用ウエハ1Aの第1、第2連結部4A,5Aと、第2封止部材用ウエハ1Cの第1、第2連結部4C,5Cとが積層された構成になっている。第1封止部材用ウエハ1Bの第1、第2連結部4B,5B、水晶振動板用ウエハ1Aの第1、第2連結部4A,5A、および第2封止部材用ウエハ1Cの第1、第2連結部4C,5Cは、上述した水晶ウエハ1の第1、第2連結部4,5と同様の構成になっている。
【0061】
また、水晶ウエハ1の溝部6,6は、第1封止部材用ウエハ1Bの少なくとも片面に形成された溝部6B,6B、水晶振動板用ウエハ1Aの少なくとも片面に形成された溝部6A,6A、および第2封止部材用ウエハ1Cの少なくとも片面に形成された溝部6C,6Cを含む構成になっている。第1封止部材用ウエハ1Bの溝部6B,6B、水晶振動板用ウエハ1Aの溝部6A,6A、および第2封止部材用ウエハ1Cの溝部6C,6Cは、上述した水晶ウエハ1の溝部6,6と同様の構成になっている。
【0062】
本実施の形態によれば、水晶振動子100のパッケージ120が複数、集合された水晶ウエハ1から、各パッケージ120を折り取りによって容易に個片化することができ、パッケージ120側での折り取り残りの発生を抑制することができる。以下、この点について説明する。
【0063】
水晶ウエハ1においては、上述したパッケージ120の他方の長辺120bの中央位置120f(
図2参照)を棒状の部材等により押圧(加圧)することによって、第1、第2連結部4,5においてパッケージ120が水晶ウエハ1から折り取られ(分離され)、パッケージ120が個片化されるようになっている。この際、押圧による応力が、第1連結部4(第2連結部5についても同様)の内側端縁4cとパッケージ120の第1辺120aとの接続部120gに最も集中しやすくなり、水晶ウエハ1に接続部120gを起点とした破断が発生しやすくなっている。
【0064】
ここで、第1隙間7aおよび第2隙間7bに上述したような凹部8(
図2参照)がある場合、パッケージ120の折り取りの際、
図2の矢印で示すように、接続部120gを起点として発生した破断が、凹部8の角部8aに向けて破断が進行する。このような場合、割れ、チッピング等の折り取り痕がパッケージ120側で発生し、パッケージ120の外観不良が発生することが懸念される。
【0065】
しかし、本実施の形態によれば、そのような凹部8がなく、第1隙間7aの第1連結部4側の端縁7cおよび第2隙間7bの第2連結部5側の端縁7dが、パッケージ120の第1辺120aの延長線上に設けられているので、パッケージ120の折り取りの際、接続部120gを起点として発生した破断をパッケージ120の第1辺120aに沿って、略直線的で蛇行しないように進行させることができ、パッケージ120を水晶ウエハ1から容易に分離させることができる。これにより、割れ、チッピング等の折り取り痕がパッケージ120側で発生することを抑制でき、パッケージ120の外観不良の発生を抑制することができる。しかも、凹部8がある場合に比べて、支持部2の幅(X軸方向の幅)を小さくすることができるので、同じ大きさの水晶ウエハ1から、より多くのパッケージ120を得ることができる。言い換えれば、凹部8がある場合に比べて、同じ数のパッケージ120を得るのに必要な水晶ウエハ1のサイズを小さくすることができる。
【0066】
また、溝部6によって、パッケージ120の折り取りに必要な押圧力(加圧力)を小さくすることができ、また、折り取りのために必要な箇所に限って破断を発生させることができ、折り取りの際にパッケージ120に加えられるダメージを小さくすることができる。この場合、第1封止部材用ウエハ1Bの両面に溝部6Bを形成し、水晶振動板用ウエハ1Aの両面に溝部6Aを形成し、さらに、第2封止部材用ウエハ1Cの両面に溝部6Cを形成することによって、折り取りの際のパッケージ120のダメージをより小さくすることができる。また、第1、第2連結部4,5が、支持部2側に設けられており、第1、第2連結部4,5のそれぞれのパッケージ120の第1辺120a側の端部に溝部6が設けられているので、折り取りの際のパッケージ120のダメージをさらに小さくすることができる。この際、第1、第2連結部4,5をパッケージ120側ではなく支持部2側に設けることによって、パッケージ120が破断による影響を受けにくくなり、パッケージ120の外縁を略直線的に形成することができる。また、パッケージ120の第1辺120aに沿って形成された溝部6によって破断の進行方向をコントロールすることができ、接続部120gを起点として発生した破断をパッケージ120の第1辺120aに沿って確実に進行させることができる。さらに、第1、第2連結部4,5が、パッケージ120の一方の長辺側に設けられているので、パッケージ120の短辺側に設けられている場合に比べて、第1、第2連結部4,5のそれぞれの幅(第1、第2連結部4,5が並ぶ方向の幅で、ここでは、Z´軸方向の幅)を大きくすることができ、折り取りまでにパッケージ120を支持部2に連結しておくのに必要な第1、第2連結部4,5の連結力(保持力)を確保することができる。
【0067】
また、溝部6が水晶ウエハ1のX軸方向に垂直な方向(この場合、Z´軸方向)に沿って形成されており、溝部6がパッケージ120の角部120hと間隔を隔てて設けられているので、ウェットエッチングによって溝部6を形成する場合、ATカット水晶板である水晶ウエハ1の異方性によるパッケージ120の角部120hの欠損(面取り)を抑制することができる。この場合、溝部6が水晶ウエハ1のX軸方向に垂直に形成されるので、ウェットエッチングによって溝部6の斜面の形状を水晶ウエハ1の表裏で対称になるように形成することができる。また、溝部6を水晶ウエハ1のX軸方向に垂直に形成し溝部6の幅を調整すれば、そのエッチングレートが小さくなるので、他の隙間(第1隙間7a、第2隙間7b等)を形成する工程と同時にエッチング加工したとしても、溝部6が水晶ウエハ1を貫通しないように設計することができる。これにより、エッチング加工の途中でパッケージ120が水晶ウエハ1から離脱することを回避できる。
【0068】
また、第1、第2連結部4,5が、パッケージ120の+X方向側の長辺である第1辺120aに設けられているので、ウェットエッチングを行う際、ATカット水晶板である水晶ウエハ1の異方性によって水晶振動板10の振動部11(
図7参照)の+X方向側の角部に欠損(面取り)が発生することを抑制できる。つまり、第1、第2連結部4,5がパッケージ120の-X方向側の長辺120bに設けられる場合に比べて、振動部11をより矩形に近い形状に形成することができる。
【0069】
上記実施の形態では、水晶振動デバイスを水晶振動子としたが、水晶振動子以外の水晶振動デバイス(例えば水晶発振器)にも本発明を適用することが可能である。
【0070】
また、上記実施の形態では、第1、第2連結部4,5をパッケージ120の長辺である第1辺120a側に設けたが、パッケージ120の短辺である第2辺120c側または第3辺120d側に第1、第2連結部を設ける構成としてもよい。
【0071】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、水晶振動デバイスのパッケージが複数、集合された水晶ウエハに利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 水晶ウエハ
2 支持部
4 第1連結部
5 第2連結部
7a 第1隙間
7b 第2隙間
10 水晶振動板
11 振動部
20 第1封止部材
30 第2封止部材
100 水晶振動子
120 パッケージ
120a 第1辺
120c 第2辺
120d 第3辺