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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】デパレタイズ装置及びデパレタイズ方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20221220BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J15/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019063510
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020163480
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】砂川 拓哉
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-180573(JP,A)
【文献】特開平09-141588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットと、前記産業用ロボットを制御する制御装置とを備えるデパレタイズ装置であって、
前記制御装置は、前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物の移載領域の上方にて前記ハンドの加速度を変更させ、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定し、
前記制御装置は、前記脱落データと前記維持データとに基づいて前記最大加速度を算出し、算出した最大加速度以下の加速度での前記維持データが複数存在する場合に、算出した最大加速度を前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度とする
ことを特徴とするデパレタイズ装置。
【請求項2】
搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットと、前記産業用ロボットを制御する制御装置とを備えるデパレタイズ装置であって、
前記制御装置は、前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物の移載領域の上方にて前記ハンドの加速度を変更させ、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定し、
前記制御装置は、外部から入力された前記搬送対象物の物性データに基づいて、移載領域の上方における前記ハンドの加速度の初期値を求める
ことを特徴とするデパレタイズ装置。
【請求項3】
搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットと、前記産業用ロボットを制御する制御装置とを備えるデパレタイズ装置であって、
前記制御装置は、前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物の移載領域の上方にて前記ハンドの加速度を変更させ、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定し、
前記制御装置は、
前記最大加速度が設定されるまでの期間、前記最大加速度が設定されている場合と比較して前記産業用ロボットに前記搬送対象物の吸着力を低減させ、
前記脱落データと前記維持データとに基づいて算出された前記最大加速度を前記吸着力の低減率に応じて補正する
ことを特徴とするデパレタイズ装置。
【請求項4】
搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットと、前記産業用ロボットを制御する制御装置とを備えるデパレタイズ装置であって、
前記制御装置は、前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物の移載領域の上方にて前記ハンドの加速度を変更させ、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定し、
前記制御装置は、再設定条件を満たしている場合には、前記搬送対象物に対して設定された前記最大加速度を再設定する
ことを特徴とするデパレタイズ装置。
【請求項5】
搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットと、前記産業用ロボットを制御する制御装置とを備えるデパレタイズ装置であって、
前記制御装置は、前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物の移載領域の上方にて前記ハンドの加速度を変更させ、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定し、
前記移載領域が前記搬送対象物を搬送するコンベヤに設けられており、
前記制御装置は、前記コンベヤにおける前記搬送対象物の搬送方向の下流側に向けて前記ハンドが増速するように、前記産業用ロボットに対して前記ハンドの加速度を変更させる
ことを特徴とするデパレタイズ装置。
【請求項6】
搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットと、前記産業用ロボットを制御する制御装置とを備えるデパレタイズ装置であって、
前記制御装置は、前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物の移載領域の上方にて前記ハンドの加速度を変更させ、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定し、
前記制御装置は、前記産業用ロボットに対して前記ハンドの加速度を変更させた結果、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しない場合に、前記搬送対象物が前記移載領域を超えない範囲で吸着解除により前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物を脱離させる
ことを特徴とするデパレタイズ装置。
【請求項7】
搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットにて前記搬送対象物を搬送するデパレタイズ方法であって、
前記産業用ロボットに対して前記搬送対象物の移載領域の上方にて前記ハンドの加速度を変更させ、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、前記搬送対象物が前記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定し、
前記脱落データと前記維持データとに基づいて前記最大加速度を算出し、算出した最大加速度以下の加速度での前記維持データが複数存在する場合に、算出した最大加速度を前記搬送対象物と同種の前記搬送対象物の搬送時における最大加速度とする
ことを特徴とするデパレタイズ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デパレタイズ装置及びデパレタイズ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から物流設備においては、パレット上に複数積み上げられた荷物をコンベヤ等へ移載するデパレタイズ作業が行われている。近年においては、このようなデパレタイズ作業は、例えば特許文献1に示されているように、搬送対象物である荷物を吸着支持する産業用ロボットによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-141588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、より効率的な荷物の搬送を実現するためには、デパレタイズ作業におけるサイクルタイムを短縮する必要がある。このためには、産業用ロボットにおける荷物の搬送速度を向上させる必要があるが、加速度の増加に起因した慣性力の増加によって吸着支持された荷物がハンドから脱落する恐れがある。
【0005】
そこで、搬送対象物の重量や形状等に基づいて同種の搬送対象物に対する最大加速度を予め算出しておき、この最大加速度の範囲でより高速な搬送を行うことが考えられる。しかしながら、物流設備で扱う搬送対象物は多種多様であり、全ての種類の搬送対象物の最大加速度を予め正確に求めることは困難である。この結果、搬送対象物が意図せずに脱落することを確実に防止するために、最大加速度を低く設定せざるを得なくなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、デパレタイズ装置及びデパレタイズ方法において、搬送対象物をより高速に搬送可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットと、上記産業用ロボットを制御する制御装置とを備えるデパレタイズ装置であって、上記制御装置が、上記産業用ロボットに対して上記搬送対象物の移載領域の上方にて上記ハンドの加速度を変更させ、上記搬送対象物が上記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、上記搬送対象物が上記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、上記搬送対象物と同種の上記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記制御装置が、上記脱落データと上記維持データとに基づいて上記最大加速度を算出し、算出した最大加速度以下の加速度での上記維持データが複数存在する場合に、算出した最大加速度を上記搬送対象物と同種の上記搬送対象物の搬送時における最大加速度とするという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記制御装置が、外部から入力された上記搬送対象物の物性データに基づいて、移載領域の上方における上記ハンドの加速度の初期値を求めるという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記制御装置が、上記最大加速度が設定されるまでの期間、上記最大加速度が設定されている場合と比較して上記産業用ロボットに上記搬送対象物の吸着力を低減させ、上記脱落データと上記維持データとに基づいて算出された上記最大加速度を上記吸着力の低減率に応じて補正するという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記制御装置が、再設定条件を満たしている場合には、上記搬送対象物に対して設定された上記最大加速度を再設定するという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記移載領域が上記搬送対象物を搬送するコンベヤに設けられており、上記制御装置が、上記コンベヤにおける上記搬送対象物の搬送方向の下流側に向けて上記ハンドが増速するように、上記産業用ロボットに対して上記ハンドの加速度を変更させるという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、上記第1~第6いずれかの発明において、上記制御装置が、上記産業用ロボットに対して上記ハンドの加速度を変更させた結果、上記搬送対象物が上記ハンドから脱落しない場合に、上記搬送対象物が上記移載領域を超えない範囲で吸着解除により上記産業用ロボットに対して上記搬送対象物を脱離させるという構成を採用する。
【0015】
第8の発明は、搬送対象物を吸着支持するハンドを有する産業用ロボットにて上記搬送対象物を搬送するデパレタイズ方法であって、上記産業用ロボットに対して上記搬送対象物の移載領域の上方にて上記ハンドの加速度を変更させ、上記搬送対象物が上記ハンドから脱落したことを示す脱落データと、上記搬送対象物が上記ハンドから脱落しなかったことを示す維持データとに基づいて、上記搬送対象物と同種の上記搬送対象物の搬送時における最大加速度を設定するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送対象物がハンドから脱落しても影響のない移載領域上においてハンドの加速度を変更し、搬送対象物がハンドから脱落するか否かのデータを取得し、脱落データと維持データとに基づいて搬送対象物の最大加速度を設定する。このような本発明によれば、実際にハンドから搬送対象物が脱落する加速度を把握したうえで最大加速度を設定することができ、搬送対象物が落下しない範囲における最大加速度をより正確に設定することが可能となる。この結果、移載領域上以外の領域でもハンドの加速度を向上させることが可能となり、搬送対象物をより高速に搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態におけるデパレタイズ装置の概略構成を示す模式図であり、(a)が側面図であり、(b)が平面図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるデパレタイズ装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるデパレタイズ装置における最大加速度を設定する場合のフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態におけるデパレタイズ装置における最大加速度を設定する場合のフローチャートである。
図5】本発明の第3実施形態におけるデパレタイズ装置における最大加速度を設定する場合のフローチャートである。
図6】本発明の第4実施形態におけるデパレタイズ装置における最大加速度を設定する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るデパレタイズ装置及びデパレタイズ方法の一実施形態について説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるデパレタイズ装置1の概略構成を示す模式図であり、(a)が側面図であり、(b)が平面図である。また、図2は、本実施形態におけるデパレタイズ装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態のデパレタイズ装置1は、荷物X(搬送対象物)が複数積層されたパレットP上から、1つずつ荷物XをコンベヤCに移載するデパレタイズ作業を行う。図1及び図2に示すように、本実施形態のデパレタイズ装置1は、産業用ロボット2と、真空発生器3と、制御装置4とを備えている。
【0020】
産業用ロボット2は、基台2aと、多関節アーム2bと、アーム駆動部2cと、ハンド2dと、ハンド駆動部2eとを備えている。図1に示すように、基台2aは、多関節アーム2bを支持する台部である。多関節アーム2bは、互いに傾動可能に関節部で接続された複数のアームを備えている。このような多関節アーム2bは、根本部が基台2aに対して傾動かつ回転可能に接続されており、先端部がハンド2dに接続されている。
【0021】
アーム駆動部2cは、多関節アーム2bの姿勢を変更するための機構であり、多関節アーム2bを基台2aの略中心を通過する旋回軸心La周りに旋回させる旋回モータや、関節部等に設けられてアームを傾動させる駆動モータ等を含んでいる。なお、これらのアーム駆動部2cに含まれる旋回モータや駆動モータは、例えば多関節アーム2bのケース内に収容されており、図1においては図示が省略されている。
【0022】
ハンド2dは、多関節アーム2bの先端部に固定されている。なお、ハンド2dの姿勢は、多関節アーム2bの形状等によって任意に変位可能であるが、後述の吸着パッド2d4の吸着面が下方を向いた姿勢を基準姿勢とする。以下の説明においては、この基準姿勢に基づいて、ハンド2dの上下方向の説明を行っている。ハンド2dは、吸着ユニット2d1を備えている。
【0023】
吸着ユニット2d1は、可撓性を有する複数の吸着パッド2d2と、これらの吸着パッド2d2が複数下面に取り付けられるベース2d3とを備えている。吸着パッド2d4は、真空発生器3と接続されており、真空発生器3で生成された負圧がベース2d3を介して供給可能とされている。これらの吸着パッド2d2は、荷物Xの表面に吸着可能とされている。ベース2d3は、各々の吸着パッド2d2への負圧の供給状態を切り替えるバルブ等が内蔵された略板状の部材であり、下面に対して複数の吸着パッド2d2が密に配列された状態で固定されている。なお、吸着ユニット2d1に対して真空発生器を搭載することも可能である。このような場合には、本実施形態における真空発生器3を省略することが可能である。
【0024】
このようなハンド2dでは、吸着パッド2d2の下縁が荷物Xの上面に当接された状態で真空発生器3から吸着パッド2d2に負圧が供給されることで吸着パッド2d2の内部が負圧となり、吸着パッド2d2に当接された荷物Xを吸着支持する。
【0025】
ハンド駆動部2eは、多関節アーム2bの先端部に対して接続されたハンド2dを多関節アーム2bの先端部に対して回動させる。このようなハンド駆動部2eは、多関節アーム2bの先端部に設けられた回動モータ等によって構成されている。
【0026】
このような産業用ロボット2は、制御装置4の制御の下に、荷物Xの搬送動作を行う。例えば、産業用ロボット2は、制御装置4からアーム駆動部2cに指示を受けると、アーム駆動部2cによって多関節アーム2bの形状を変更してハンド2dの姿勢を変更する。また、産業用ロボット2は、制御装置4からハンド駆動部2eに指示を受けると、ハンド駆動部2eによって多関節アーム2bに対するハンド2dの回動角度の変更を行う。
【0027】
真空発生器3は、制御装置4の制御の下に、負圧を生成すると共に、吸着ユニット2d1に対して負圧を供給する。なお、上述のように、吸着ユニット2d1に対して真空発生器が内蔵されている場合には、真空発生器3を省略することも可能である。このような真空発生器3は、例えば外部から給電や圧縮空気の供給によって負圧を生成する。
【0028】
制御装置4は、本実施形態のデパレタイズ装置1が接続された上位システムからの指示に基づいて、デパレタイズ装置1の全体的な制御を行う。本実施形態において制御装置4は、荷物Xを搬送する場合に、荷物Xを吸着ユニット2d1によって吸着させるように産業用ロボット2を制御する。また、本実施形態のデパレタイズ装置1において制御装置4は、搬送する荷物Xの種類が初めてである場合には、荷物Xを産業用ロボット2によって搬送する場合の最大加速度を設定する。また、制御装置4は、荷物Xの最大加速度が設定されている場合には、最大加速度を加速度の上限として産業用ロボット2に荷物Xを搬送させる。
【0029】
ここで、上記の最大加速度を設定する場合における本実施形態のデパレタイズ装置1の動作(デパレタイズ方法)について、図3のフローチャートを参照して説明する。なお、本動作の説明において、動作の主体は制御装置4である。
【0030】
まず制御装置4は、これからパレットP上からコンベヤCに対して移送する荷物Xが、登録済みの荷物Xであるか否かの判定を行う(ステップS1)。ここで荷物Xが登録済みであるとは、荷物Xに対する最大加速度が設定されている状態を示す。制御装置4は、上位のシステムあるいは自らに搭載された記憶部に、荷物Xの最大加速度が登録されているか否かを確認し、登録されている場合には登録済みの荷物Xであると判定し、最大加速度の設定処理を終了する。
【0031】
ステップS1で荷物Xが登録済みでないと判定した場合、制御装置4は、最大加速度を設定するための確認用搬送加速度を設定する(ステップS2)。確認用搬送加速度は、コンベヤC上に設けられた荷物Xの移載領域(荷物Xを載置可能な領域)上において、荷物Xがハンド2dから脱落するか否かを確認するための加速度であり、通常時にパレットPからコンベヤCまで荷物Xを搬送する際の最大の加速度よりも大きく設定されている。
【0032】
続いて、制御装置4は、荷物XがコンベヤC上に設定された移載領域の上方まで到達すると、ハンド2dの加速度をステップS1で設定した確認用搬送加速度に変更する。つまり、制御装置4は、荷物XがコンベヤC上に設定された移載領域の上方に到達すると、確認用搬送加速度によって荷物Xを搬送する(ステップS3)。ここで、確認用搬送加速度でハンド2dの速度を変更し、荷物Xに作用する慣性力がハンド2dの荷物Xに対する吸着力を上回った場合には、荷物Xはハンド2dから脱落する。制御装置4は、荷物Xがハンド2dから脱落した場合には、脱落データとして確認用搬送加速度に関連付けて記憶する。荷物Xがハンド2dから脱落したか否かは、例えばハンド2dやコンベヤCにセンサを設置し、当該センサからの出力に基づいて検出することが可能である。なお、荷物Xがハンド2dから脱離した場合であっても、確認用搬送加速度でハンド2dの速度を変更する箇所はコンベヤCの移載領域上であることから、脱離した荷物XはコンベヤCによって支持される。
【0033】
なお、確認用搬送加速度は、ハンド2dを増速させる加速度であっても、ハンド2dを減速させる加速度であっても良い。
減速させる加速度であれば、荷物脱離後のハンド2dのオーバーランを小さくすることが可能である。そのため、周囲の構造物と衝突の恐れがあるなど、増速する加速度での確認が困難な場合は減速させる加速度で脱離の確認をすることが可能である。
他方で、例えば搬送対象が重量物の場合、脱離確認の前は慎重な搬送が想定され、脱離の確認前の搬送対象が低速となる可能性がある。その場合、減速させる加速度で確認をしようとしても、十分な慣性力が生じず脱離の確認をできない可能性がある。このような場合は、増速させる加速度での脱離の確認をすることで直前の速度を考慮せず確認をすることが可能となる。
【0034】
一方、確認用搬送加速度でハンド2dの速度を変更しても荷物Xに作用する慣性力がハンド2dの荷物Xに対する吸着力を上回らない場合には、荷物Xはハンド2dに吸着されたままとなる。制御装置4は、荷物Xがハンド2dから脱落せずに吸着状態が維持されている場合には、維持データとして確認用搬送加速度に関連付けて記憶する。なお、確認用搬送加速度でハンド2dの速度を変更して荷物Xがハンド2dから脱落しない場合には、制御装置4は、荷物XがコンベヤCの移載領域を超えない範囲で吸着解除(真空破壊)を行うことで産業用ロボット2に荷物Xをハンド2dから脱離させる。このため、確認用搬送加速度による慣性力で荷物Xがハンド2dから脱離しない場合であっても、荷物XはコンベヤCに移載される。
【0035】
このようにして脱落データあるいは維持データが取得されると、制御装置4は、最大加速度を算出するための必要データ数が取得済みであるか否かの判定を行う(ステップS4)。ここでの必要データ数は、最大加速度の算出方法に応じて任意に設定可能である。例えば、制御装置4は、脱落データと維持データとのいずれもが複数(例えば5つ程度)揃った場合に必要データ数が取得済みであると判定する。なお、ステップS4にて必要データ数が取得済みでないと判断した場合には、制御装置4は、確認用搬送加速度を変更し(ステップS5)、その後再びステップS2に戻り、必要データ数が揃うまでステップS2~ステップS5を繰り返す。
【0036】
ステップS4にて必要データ数が取得済みであると判断した場合には、制御装置4は、最大加速度の算出を行う(ステップS6)。例えば、制御装置4は、取得された脱落データと維持データとを用いた二分探索法によって最大加速度の算出を行う。このようにして最大加速度が算出されると、制御装置4は、算出した最大加速度を今後において荷物Xを搬送する際の最大加速度として設定する(ステップS7)。なお、算出した最大加速度そのもので荷物Xを搬送した場合には、振動等の何らかの原因によって荷物Xがハンド2dから脱離する可能性がある。このため、ステップS7で最大加速度を設定する場合には、ステップS6で算出した最大加速度に対して一定の余裕分を差し引いて設定することが好ましい。
【0037】
このようにして荷物Xに対する最大加速度が設定されると、以降は、コンベヤC上に限らずに、設定された最大加速度の範囲で荷物Xと同種の荷物を搬送することにより、荷物Xを高速かつ脱落を抑制しての搬送が可能となる。
【0038】
以上のような本実施形態のデパレタイズ装置1及びデパレタイズ方法によれば、荷物Xがハンド2dから脱落しても影響のない移載領域上においてハンド2dの加速度を変更し、荷物Xがハンド2dから脱落するか否かのデータを取得し、脱落データと維持データとに基づいて荷物Xの搬送時における最大加速度を設定する。このような本実施形態のデパレタイズ装置1によれば、実際にハンド2dから荷物Xが脱落する加速度を把握したうえで最大加速度を設定することができ、荷物Xが落下しない範囲における最大加速度をより高い値に設定することが可能となる。この結果、移載領域上以外の領域でもハンド2dの加速度を向上させることが可能となり、荷物Xをより高速に搬送することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態のデパレタイズ装置1においては、制御装置4は、移載領域上において産業用ロボット2に対してハンド2dの加速度を変更させた結果、荷物Xがハンド2dから脱落しない場合に、荷物Xが移載領域を超えない範囲で産業用ロボット2に対して荷物Xを脱離させる。このため、本実施形態のデパレタイズ装置1においては、荷物Xを移載領域に載置することが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0041】
図4は、最大加速度を設定する場合における本実施形態のデパレタイズ装置の動作を説明するためのフローチャートである。この図4に示すように、ステップS6にて最大加速度の算出を行った後、制御装置4は、算出した最大加速度を超えない加速における維持データが3つ以上(複数)存在するか否かの判定を行う(ステップS10)。ここでは、制御装置4は、例えば、ステップS6で算出した最大加速度と、維持データに関連付けられた加速度とを比較し、最大加速度以下の加速度に関連付けられた維持データが3つ以上存するか否かの判定を行う。
【0042】
そして、ステップS10にて、算出した最大加速度を超えない加速での維持データが3つ以上存在する場合には、制御装置4は、ステップS7の最大加速度の設定を行う。一方で、ステップS10にて、算出した最大加速度を超えない加速での維持データが3つ以上存しない場合には、制御装置4は、ステップS5に戻って確認用搬送加速度の変更を行う。
【0043】
このような本実施形態のデパレタイズ装置においては、最大加速度を算出しても、最大加速度以下の維持データが3つ以上なければ、さらにデータ数を取得するためにステップS5に戻る。このため、最大加速度の設定の精度を向上することが可能となる。なお、本実施形態では、最大加速度以下の維持データが3つ以上存在するか否かの判定をおこなったが、3つでなくても良い。つまり、最大加速度以下の維持データが複数以上存在するか否かの判定に基づいて、さらにデータ数を取得するためにステップS5に戻るか否かの判定を行えば良い。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図5のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0045】
図5は、最大加速度を設定する場合における本実施形態のデパレタイズ装置の動作を説明するためのフローチャートである。この図5に示すように、ステップS1にて登録済みの荷物Xでないと判断すると、制御装置4は、上位のシステムから荷物Xの物性データ(重量、大きさ、材質)等の情報を取得する(ステップS11)。
【0046】
さらに、制御装置4は、ステップS11で取得した荷物情報に基づいて確認用搬送加速度の算出を行う(ステップS12)。ここで、制御装置4は、例えば、登録済みの他の種類の荷物の最大加速度と、ステップS11で取得した荷物情報とを比較し、現在の荷物Xに近い荷物の最大加速度を確認用搬送加速度とする。また、制御装置4は、例えば、荷物情報と確認用加速度とが関連付けられたテーブルデータを予め記憶しており、このテーブルデータを用いて確認用搬送加速度とする。このようにして確認用搬送加速度を算出すると、制御装置4は、ステップS2に移行して、ステップS12で算出した確認用搬送加速度を今回の確認用搬送加速度に設定する。
【0047】
つまり、本実施形態のデパレタイズ装置1によれば、外部から入力された荷物Xの物性データに基づいて、確認用搬送加速度の初期値を求めている。このような本実施形態のデパレタイズ装置1によれば、最初の確認用搬送加速度が荷物Xの物性データに基づいて算出されるため、少ないデータ数によって正確に最大加速度を算出することが可能となる。
【0048】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図6のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0049】
図6は、最大加速度を設定する場合における本実施形態のデパレタイズ装置の動作を説明するためのフローチャートである。この図6に示すように、ステップS1にて登録済みの荷物Xでないと判断すると、制御装置4は、ハンド2dの吸着力の低減設定を行う(ステップS13)。ここでは、ハンド2dの吸着力を低減するとは、例えばハンド2dに供給する負圧を低減させる(すなわち圧力を増大させる)ことによって、ハンド2dの荷物Xに対する吸着力を低減することを意味する。このように、ハンド2dの吸着力を低減することによって、移載領域上において荷物Xをハンド2dから脱落しやすくする。そして、制御装置4は、ステップS2に移行する。
【0050】
一方で、制御装置4は、ステップS6で最大加速度を算出した後、算出した最大加速度を、ステップS13で低減した吸着力の低減率に応じて補正する(ステップS14)。つまり、ステップS13で吸着力を低減させることによって脱落データが増加するため、算出した最大加速度をより増加する方向に補正する。その後、制御装置4は、ステップS7に移行する。
【0051】
このような本実施形態のデパレタイズ装置1においては、最大加速度が設定されるまでの期間、最大加速度が設定されている場合と比較して産業用ロボット2に荷物Xの吸着力を低減させ、算出された最大加速度を吸着力の低減率に応じて補正する。このような本実施形態のデパレタイズ装置1によれば、脱落に要する荷物Xに作用する慣性力を小さくすることができ、脱落による荷物Xへの影響をさらに低減させることが可能となる。例えば、荷物Xが強度の低い段ボールや重い段ボールであった場合には、このように荷物Xに作用する慣性力を小さくすることによって、荷物Xの変形等が抑制される。
【0052】
なお、最大加速度が設定されるまでの期間において、荷物Xを搬送する間、常時吸着力を低減させる必要はない。つまり、少なくとも荷物Xを吸着中で、移動領域の上方に荷物Xが存在する場合にのみ、吸着力を低減させるようにすれば良い。例えば、荷物Xを吸着中で、移動領域の上方に荷物Xが存在する場合にのみ、吸着力を低減させることで、荷物Xが移動領域の上方に存在しない場合における搬送速度を増加させることができる。したがって、本実施形態のデパレタイズ装置1において、荷物Xの搬送時間を短縮することが可能となる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態においては、最大加速度が設定されている荷物Xに対して、再設定条件を満たしている場合には、最大加速度を再設定するようにしても良い。例えば、脱落が予見される場合(吸着パッド2d2のうち数個が搬送中に荷物Xの表面から剥がれることによってハンド2dにおける真空度が変化した場合等)には、最大加速度が大きすぎることが想定されるため、このような条件が満たされた場合には、最大加速度を再設定することが好ましい。また、最大加速度の設定から一定時間が経過することを条件として、最大加速度を再設定するようにしても良い。このような場合には、例えば、一部の吸着パッド2d2の剥離や一部の吸着パッド2d2の動圧変動のいずれかあるいは両方を再設定条件として用いることが考えられる。
【0055】
また、吸着ユニット2d1が備える吸着パッド2d4の数についても変更可能である。例えば、ハンド2dに対して、単一の吸着パッドが備えられた構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 デパレタイズ装置
2 産業用ロボット
2a 基台
2b 多関節アーム
2c アーム駆動部
2d ハンド
2d1 吸着ユニット
2d2 吸着パッド
2d3 ベース
2d4 吸着パッド
2e ハンド駆動部
3 真空発生器
4 制御装置
C コンベヤ
La 旋回軸心
P パレット
X 荷物(搬送対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6