(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】炭化水素製造装置、および、炭化水素製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20221220BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20221220BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019063605
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】佐山 勝悟
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124217(JP,A)
【文献】特開2018-135283(JP,A)
【文献】特表2013-515684(JP,A)
【文献】特開2013-136538(JP,A)
【文献】特開2015-107942(JP,A)
【文献】特開昭51-29402(JP,A)
【文献】特開昭53-12802(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076041(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/12
C07C 9/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素製造装置であって、
二酸化炭素と水素を用いて、炭化水素化合物を生成する主反応部と、
前記主反応部に供給される二酸化炭素と水素を含む混合ガスが流通する供給流路と、
前記供給流路上に設けられ、前記主反応部に供給される前の前記混合ガスを貯蔵する貯蔵部と、
前記供給流路のうち、前記貯蔵部の上流側に設けられ、前記貯蔵部に貯蔵される前の前記混合ガスを用いて、炭化水素化合物を生成するプレ反応部と、を備え、
前記貯蔵部には、前記プレ反応部で生成された炭化水素化合物を含む前記混合ガスが貯蔵される、
炭化水素製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記供給流路のうち、前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記プレ反応部から取り出され前記貯蔵部に貯蔵される前の前記混合ガスに含まれる高沸点成分を前記混合ガスから分離する分離部を備える、
炭化水素製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記供給流路のうち、前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記貯蔵部に貯蔵される前の前記混合ガスを昇圧する下流側昇圧部を備える、
炭化水素製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記混合ガスの濃度に関連する情報を取得する第1濃度情報取得部と、
前記第1濃度情報取得部が取得した前記情報を用いて前記下流側昇圧部を制御することによって、前記貯蔵部に貯蔵される前記混合ガスの圧力を調整する下流側圧力制御部と、を備える、
炭化水素製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記供給流路上のうち前記プレ反応部の上流側に設けられ、前記プレ反応部に供給される前記混合ガスを昇圧する上流側昇圧部を備える、
炭化水素製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記混合ガスの濃度に関連する情報を取得する第2濃度情報取得部と、
前記第2濃度情報取得部が取得した前記情報を用いて前記上流側昇圧部を制御することによって、前記プレ反応部に供給される前記混合ガスの圧力を調整する上流側圧力制御部と、を備える、
炭化水素製造装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の炭化水素製造装置であって、
前記プレ反応部には、前記プレ反応部での炭化水素化合物の生成反応熱を回収する熱媒体が流れる熱媒体流路が形成されており、
前記炭化水素製造装置は、さらに、
前記プレ反応部に供給される前記混合ガスの濃度または流量に関連する情報を取得するガス情報取得部と、
前記熱媒体流路を流れる熱媒体の流量を調整する流量調整部と、
前記ガス情報取得部が取得した前記情報を用いて前記流量調整部を制御する流量制御部と、を備える、
炭化水素製造装置。
【請求項8】
炭化水素製造方法であって、
二酸化炭素と水素を含む混合ガスを用いて、炭化水素化合物を生成するプレ反応工程と、
前記プレ反応工程で生成された炭化水素化合物を含む前記混合ガスを貯蔵する貯蔵工程と、
前記貯蔵工程で貯蔵された前記混合ガスを用いて、炭化水素化合物を生成する反応工程と、を備える、
炭化水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素製造装置、および、炭化水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃焼炉などが排出する排ガスから二酸化炭素を回収し、水素と反応させてメタンなどの炭化水素化合物を製造する炭化水素化合物製造装置が知られている。例えば、特許文献1には、排ガス中の二酸化炭素と、水電解装置から供給される水素からメタンを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、メタンを安定して製造するため、反応部に供給される二酸化炭素と水素の混合ガスを一時的に貯蔵する貯蔵部が知られている。貯蔵部は、昇圧動力を用いて混合ガスを加圧することによって体格を小さくすることが可能である。しかしながら、昇圧動力が大きくなると、システム効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、炭化水素製造装置において、システム効率の低下を抑制しつつ、装置の体格を小さくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、炭化水素製造装置が提供される。この炭化水素製造装置は、二酸化炭素と水素を用いて、炭化水素化合物を生成する主反応部と、前記主反応部に供給される二酸化炭素と水素を含む混合ガスが流通する供給流路と、前記供給流路上に設けられ、前記主反応部に供給される前の前記混合ガスを貯蔵する貯蔵部と、前記供給流路のうち、前記貯蔵部の上流側に設けられ、前記貯蔵部に貯蔵される前の前記混合ガスを用いて、炭化水素化合物を生成するプレ反応部と、を備え、前記貯蔵部には、前記プレ反応部で生成された炭化水素化合物を含む前記混合ガスが貯蔵される。
【0008】
この構成によれば、貯蔵部には、プレ反応部において生成された炭化水素化合物と、プレ反応部において未反応の二酸化炭素と水素とを含む混合ガスが貯蔵される。二酸化炭素と水素の混合ガスから炭化水素化合物を生成すると、反応後の炭化水素化合物を含む混合ガスの体積は、反応前の炭化水素化合物を含まない混合ガスの体積より減少する。このことから、プレ反応部において貯蔵部に貯蔵される前の混合ガスを用いて炭化水素化合物を生成すると、貯蔵部に貯蔵される混合ガスの体積は、プレ反応部を備えていない場合より小さくなる。これにより、貯蔵部を小さくすることができる。また、貯蔵部に貯蔵される混合ガスの体積が小さくなるため、昇圧に必要な動力を少なくすることができる。したがって、システム効率の低下を抑制しつつ、装置の体格を小さくすることができる。
【0009】
(2)上記形態の炭化水素製造装置において、前記供給流路のうち、前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記プレ反応部から取り出され前記貯蔵部に貯蔵される前の前記混合ガスに含まれる高沸点成分を前記混合ガスから分離する分離部を備えてもよい。この構成によれば、プレ反応部での炭化水素化合物の生成反応によって発生する高沸点成分、例えば、メタンを生成した時に発生する水分を、貯蔵部に貯蔵する前に、混合ガスから分離する。これにより、貯蔵部に貯蔵される混合ガスの体積をさらに小さくすることができるため、貯蔵部をさらに小さくすることができる。したがって、装置の体格をさらに小さくすることができる。
【0010】
(3)上記形態の炭化水素製造装置において、前記供給流路のうち、前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記貯蔵部に貯蔵される前の前記混合ガスを昇圧する下流側昇圧部を備えてもよい。この構成によれば、貯蔵部に貯蔵される混合ガスを、貯蔵部に貯蔵される前に圧縮することができるため、貯蔵部に貯蔵される混合ガスの体積をさらに小さくすることができる。したがって、貯蔵部をさらに小さくすることができるため、装置の体格をさらに小さくすることができる。
【0011】
(4)上記形態の炭化水素製造装置において、前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記混合ガスの濃度に関連する情報を取得する第1濃度情報取得部と、前記第1濃度情報取得部が取得した前記情報を用いて前記下流側昇圧部を制御することによって、前記貯蔵部に貯蔵される前記混合ガスの圧力を調整する下流側圧力制御部と、を備えてもよい。この構成によれば、例えば、下流側圧力制御部は、混合ガスの濃度に関連する情報を用いてプレ反応部における炭化水素化合物の反応率を推定する。下流側圧力制御部は、プレ反応部における炭化水素化合物の推定反応率が目標反応率より低い場合、貯蔵部に貯蔵される前の混合ガスを、推定反応率と目標反応率との差分に応じて圧縮されるように、下側昇圧部を制御する。これにより、目標反応率に応じて事前に設定されている大きさの貯蔵部は、主反応部に供給される混合ガスを貯蔵することができる。また、下流側圧力制御部は、プレ反応部における炭化水素化合物の推定反応率を用いて、貯蔵部から主反応部に供給される混合ガスの圧力を、主反応部で想定される変動の範囲内となるように、混合ガスの圧力を修正することができる。
【0012】
(5)上記形態の炭化水素製造装置において、前記供給流路上のうち前記プレ反応部の上流側に設けられ、前記プレ反応部に供給される前記混合ガスを昇圧する上流側昇圧部を備えてもよい。この構成によれば、プレ反応部に供給される混合ガスの圧力を高めることができるため、プレ反応部での炭化水素化合物の反応率を向上することができる。これにより、貯蔵部に貯蔵される混合ガスの体積をさらに小さくすることができるため、貯蔵部をさらに小さくすることができる。したがって、装置の体格をさらに小さくすることができる。
【0013】
(6)上記形態の炭化水素製造装置において、前記プレ反応部と前記貯蔵部との間に設けられ、前記混合ガスの濃度に関連する情報を取得する第2濃度情報取得部と、前記第2濃度情報取得部が取得した前記情報を用いて前記上流側昇圧部を制御することによって、前記プレ反応部に供給される前記混合ガスの圧力を調整する上流側圧力制御部と、を備えてもよい。この構成によれば、例えば、上流側圧力制御部は、混合ガスの濃度に関連する情報を用いてプレ反応部における炭化水素化合物の反応率を推定する。上流側圧力制御部は、プレ反応部における炭化水素化合物の推定反応率が目標反応率より低い場合、プレ反応部に供給される混合ガスをさらに圧縮するように、上流側昇圧部を制御する。これにより、プレ反応部における反応率を向上させ、反応率を目標反応率とすることができる。したがって、目標反応率に応じて事前に設定されている大きさの貯蔵部は、主反応部に供給される混合ガスを貯蔵することができる。
【0014】
(7)上記形態の炭化水素製造装置において、前記プレ反応部には、前記プレ反応部での炭化水素化合物の生成反応熱を回収する熱媒体が流れる熱媒体流路が形成されており、前記炭化水素製造装置は、さらに、前記プレ反応部に供給される前記混合ガスの濃度または流量に関連する情報を取得するガス情報取得部と、前記熱媒体流路を流れる熱媒体の流量を調整する流量調整部と、前記ガス情報取得部が取得した前記情報を用いて前記流量調整部を制御する流量制御部と、を備えてもよい。この構成によれば、プレ反応部に供給される混合ガスの濃度または流量に関連する情報を用いて、プレ反応部での反応率が所望の反応率となるように、プレ反応部の温度を熱媒体の流量で調整する。これにより、プレ反応部の温度を熱媒体の流量で調整することでプレ反応部での反応率を高め、貯蔵部に貯蔵される混合ガスの体積をさらに小さくすることができる。したがって、装置の体格をさらに小さくすることができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、炭化水素製造装置の制御方法、この制御方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、炭化水素製造方法、炭化水素製造装置の製造方法、二酸化炭素回収装置、二酸化炭素循環システム、炭化水素を燃料とする燃料製造装置などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の炭化水素製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図2】吸着部出口での混合ガスの流量および濃度の時間変化を示す説明図である。
【
図3】メタネーション反応による体積の減少率を説明する説明図である。
【
図4】比較例での反応部ガス濃度と貯蔵部体積の関係を示す説明図である。
【
図5】第1実施形態での反応部ガス濃度と貯蔵部体積の関係を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態での反応部ガス濃度と貯蔵部体積の関係を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態の炭化水素製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図8】第3実施形態の炭化水素製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図9】プレ反応部に供給されるガス濃度と熱媒体流量の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態におけるメタン製造装置1の概略構成を示した説明図である。メタン製造装置1は、二酸化炭素(CO
2)と水素(H
2)からメタン(CH
4)を製造する装置であり、本実施形態では、排ガスから回収したCO
2を用いてCH
4を製造する。メタン製造装置1は、第1吸着部11と、第2吸着部12と、水素供給源13と、供給流路15と、プレ反応部20と、凝縮器25と、昇圧器30と、貯蔵部35と、主反応部40と、第1CO
2濃度計46と、第2CO
2濃度計47と、制御部50を備える。なお、本実施形態は、CH
4以外の炭化水素化合物を製造する炭化水素製造装置にも適用可能であり、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や主に炭素と水素とから構成される化合物を「炭化水素化合物」として製造する「炭化水素製造装置」にも適用可能である。
【0018】
第1吸着部11と第2吸着部12は、排ガスに含まれるCO2を排ガスから回収する。第1吸着部11と第2吸着部12には、それぞれの内部に、CO2吸蔵性能を有する材料、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲルなどの吸着材11a、12aが収容されている。第1吸着部11と第2吸着部12は、CO2を含む排ガスを排出する、例えば、燃焼炉や高炉などの、排気ガス供給源5に接続している。排気ガス供給源5が排出する排ガスは、排ガスから水分を分離する脱水部6を通って、第1吸着部11と第2吸着部12に流入する。
【0019】
第1吸着部11と第2吸着部12は、排ガスが交互に流入することで、排ガスからCO2を回収する。具体的には、第1吸着部11に排ガスを流入させ吸着材11aの吸着によってCO2を排ガスから分離しているとき、第2吸着部12に、後述する水素供給源13が供給するH2を流入させる。第2吸着部12では、H2の流入によって、吸着材12aにすでに吸着しているCO2が吸着材12aから脱離する。吸着材12aから脱離したCO2は、H2と混合される。また、第2吸着部12に排ガスを流入させ吸着材12aの吸着によってCO2を排ガスから分離しているとき、第1吸着部11に、水素供給源13が供給するH2を流入させる。第1吸着部11では、H2の流入によって吸着材12aから脱離したCO2とH2とが混合される。このように、第1吸着部11と第2吸着部12は、交互に吸着と脱離とを繰り返すことで、排ガスからCO2を回収するとともに、CO2とH2を混合させた混合ガスを生成する。
【0020】
水素供給源13は、例えば、水電解装置や水素タンクによって構成される。水素供給源13は、水素流路13aを介して、第1吸着部11と第2吸着部12に接続している。水素流路13aを介して供給されるH2は、第1吸着部11内および第2吸着部12内をパージするとともに、CO2とプレ反応部20に供給される混合ガスを構成する。水素供給源13は、水素流路13bを介して、後述する貯蔵部35と主反応部40との間の供給流路15に接続している。水素流路13bには、水素供給源13が供給流路15に供給するH2を昇圧するための昇圧器13cが配置されている。水素流路13bを介して供給されるH2は、主反応部40に供給される直前の混合ガスに合流し、主反応部40でのメタネーション反応に利用される。
【0021】
供給流路15は、第1吸着部11および第2吸着部12と、主反応部40とを接続する流路であり、第1吸着部11および第2吸着部12において混合されたCO2とH2を含む混合ガスを、主反応部40に供給する。本実施形態では、供給流路15上には、プレ反応部20と、凝縮器25と、昇圧器30と、貯蔵部35とが、この順番で設けられている。
【0022】
プレ反応部20は、内部においてメタネーション反応によりCH4を生成するための略筒形状の容器であり、二重管によって構成されている。プレ反応部20の内側の管内には、メタン化触媒性能を有する金属を含んでいる触媒21が配置されている。メタン化触媒性能を有する金属としては、例えば、RuやNiを例示することができる。プレ反応部20の外側の管内には、メタネーション反応によって発生する熱を回収可能な熱媒体が流れる熱媒体流路22が形成されている。
【0023】
プレ反応部20の上流側には、第1吸着部11および第2吸着部12が設けられ、下流側には凝縮器25が設けられている。プレ反応部20にCO2とH2を含む混合ガスが供給されると、混合ガスの一部にメタネーション反応が進行し、CH4が生成される。生成されたCH4と「高沸点成分」としてのH2O、および、未反応のCO2とH2を含む混合ガスは、供給流路15を通って、凝縮器25に供給される。
【0024】
凝縮器25は、流体を冷却可能な熱交換器であり、プレ反応部20で生成されたCH4とH2O、および、未反応のCO2とH2を含む混合ガスを冷却する。凝縮器25での冷却によって、混合ガスに含まれるH2Oが凝縮し、水となって混合ガスから分離される。水が分離された混合ガスは、供給流路15を通って、昇圧器30に供給される。
【0025】
昇圧器30は、流体を加圧可能なポンプであり、凝縮器25において水が分離された混合ガスを昇圧する。本実施形態では、昇圧器30での昇圧の程度は、後述する制御部50によって設定される。昇圧器30で昇圧された混合ガスは、供給流路15を通って、貯蔵部35に供給される。
【0026】
貯蔵部35は、流体を貯蔵するタンクであり、昇圧器30によって昇圧された混合ガスを貯蔵する。貯蔵部35に貯蔵された混合ガスは、供給流路15において、水素供給源13が供給するH2と合流し、主反応部40に供給される。
【0027】
主反応部40は、プレ反応部20と同様の形状をなしている容器であり、内側の管内には、触媒41が配置されている。触媒41は、触媒21と同様に、メタン化触媒性能を有する金属を含んでいる。主反応部40の外側の管内には、メタネーション反応によって発生する熱を回収可能な熱媒体が流れる熱媒体流路42が形成されている。
【0028】
主反応部40には、貯蔵部35において一時的に貯蔵されたCH4やプレ反応部20では未反応だったCO2とH2を含む混合ガスが供給流路15から供給される。主反応部40の内部では、未反応のCO2とH2を用いたメタネーション反応によって、CH4が生成される。主反応部40で生成されたCH4とH2Oを含む生成ガスは、主反応部40の下流側に接続する生成ガス流路16を経由して、メタン製造装置1の外部の装置に供給される。
【0029】
第1CO2濃度計46は、凝縮器25と昇圧器30との間の供給流路15を流れる混合ガスのCO2濃度を検出する。第1CO2濃度計46は、検出した混合ガスのCO2濃度を、制御部50に出力する。
【0030】
第2CO2濃度計47は、貯蔵部35と主反応部40との間の供給流路15を流れる混合ガスであって、水素供給源13が供給するH2が合流する前の混合ガスのCO2濃度を検出する。第2CO2濃度計47は、検出した混合ガスのCO2濃度を、制御部50に出力する。
【0031】
制御部50は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータであり、排気ガス供給源5から送られる排ガスに対する第1吸着部11と第2吸着部12との切り替えなど、メタン製造装置1の全体の制御をおこなう。制御部50は、圧力制御部50aと、流量制御部50bなどを有している。
【0032】
圧力制御部50aは、第1CO2濃度計46と昇圧器30とに電気的に接続している。圧力制御部50aは、第1CO2濃度計46が検出した混合ガスのCO2濃度を用いて、プレ反応部20におけるCH4の反応率を推定する。圧力制御部50aは、推定されたCH4の反応率を用いて昇圧器30を制御し、貯蔵部35に供給される混合ガスの圧力を調整する。
【0033】
流量制御部50bは、第2CO2濃度計47と、供給流路15に配置されている流量調整器48と、水素流路13bに配置されている流量調整器13dとに電気的に接続している。流量調整器48は、貯蔵部35と主反応部40との間の供給流路15を流れる混合ガスであって、水素供給源13が供給するH2が合流する前の混合ガスの流量を検出する。流量制御部50bは、第2CO2濃度計47が検出した混合ガスのCO2濃度と、流量調整器48が検出した混合ガスの流量とを用いて、主反応部40に供給される混合ガスに必要なH2の量を推定する。流量制御部50bは、流量調整器13dを制御し、推定した量のH2が、貯蔵部35から主反応部40に供給される混合ガスに加えられるように、水素供給源13が供給するH2の流量を調整する。
【0034】
本実施形態では、CH4を製造するとき、上述したように、第1吸着部11と第2吸着部12の2つの吸着部を切り替えて、排ガスからCO2を回収している。この2つの吸着部を用いたCO2の回収では、第1吸着部11と第2吸着部12のいずれか一方の吸着部でCO2を吸着する吸着工程を実施しているとき、第1吸着部11と第2吸着部12のいずれか他方の吸着部では、吸着材に吸着されているCO2を脱離させる脱離工程を実施している。
【0035】
図2は、脱璃工程における吸着部出口での混合ガスの流量および濃度の時間変化を示す説明図である。
図2には、脱離工程における吸着部出口(
図1の点P1)での流量およびH
2/CO
2濃度の時間変化の一例を示している。なお、
図2での脱離工程では、第1吸着部11と第2吸着部12とのそれぞれに供給されるH
2流量は、一定としている。
図2には、排ガスに対する第1吸着部11と第2吸着部12との切り替えタイミングを、時刻t0で示す。
【0036】
図2に示すように、吸着部を切り替えた直後は、吸着材に吸着されているCO
2の排出が容易であるため、流量は増加する一方、H
2/CO
2濃度は低下する(
図2の時刻t0以降)。その後、吸着材でのCO
2の脱離が進行すると吸着量が減少するため、脱離するCO
2の量も減少するため、H
2/CO
2濃度は上昇する(
図2の時刻t1以降)。H
2/CO
2濃度が上昇したのち、脱離工程中に図示しない減圧ポンプによる吸着部内の減圧やヒータによる吸着材の加熱などによって、CO
2の排出を促進させると、再びH
2/CO
2濃度は低下する(
図2の時刻t2以降)。しかしながら、時間が経過すると、H
2/CO
2濃度は、再び上昇するため、吸着部の切り替えを行い、別の吸着部で脱離工程を実施する。
【0037】
このように、吸着材によって回収したCO2を用いてCH4を製造する場合、CO2の供給量および流量の変動が比較的大きくなる。そこで、本実施形態では、第1吸着部11および第2吸着部12において混合されたCO2とH2との混合ガスを、貯蔵部35に一時的に貯蔵することによって、主反応部40での反応率の変動を抑制する。
【0038】
さらに、本実施形態では、貯蔵部35に貯蔵される前のCO2とH2との混合ガスを用いて、貯蔵部35の上流側に設けられるプレ反応部20においてCH4を生成するとともに、プレ反応部20でのメタネーション反応によって生成される水分を凝縮器25によって混合ガスから分離し回収する。これにより、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積を小さくする。
【0039】
図3は、メタネーション反応による体積の減少率を説明する説明図である。
図3(a)は、
図3(b)に示す反応部10aと、反応部10aが排出する生成ガスから水分を分離する凝縮器10bとから構成されるメタン製造装置4における物質収支を示している。
図3(b)の反応部10aは、本実施形態でのプレ反応部20とみなすことができ、凝縮器10bは、本実施形態で凝縮器25とみなすことができる。
【0040】
図3(a)は、横軸に示すH
2/CO
2濃度に対する、メタン製造装置4に流入する混合ガスの体積Viと流出する生成ガスの体積Voとの比を示している。
図3(a)には、複数のCH
4の反応率(CO
2のCH
4への変換率)のそれぞれにおけるH
2/CO
2濃度に対する体積比Vo/Viの関係を示している。生成ガスの体積Voは、
図3(b)に示すように、反応部10aから排出されたガスから、凝縮器10bによって水分を除去した値を示している。
【0041】
二酸化炭素と水素とのメタネーション反応の反応式は、以下の式(1)となる。
CO2+4H2 → CH4+2H2O ・・・(1)
式(1)に示すように、1molのCO2と4molのH2とが反応すると、1molのCH4と2molのH2Oが生成される。メタン製造装置4では、凝縮器10bによって、2molのH2Oが分離されるため、体積Viに対応するガスは、1molのCH4となる。したがって、メタン製造装置4では、5molの混合ガスが投入されると、最も少ない値で、1molのガスが排出されることとなる。
【0042】
図3(a)に示すように、メタネーション反応が進行することによって、反応率が10%程度であっても、体積比Vo/Viは、1より小さい値となる。例えば、H
2/CO
2濃度が4であって、反応率が100%である場合、体積比Vo/Viは、最小の0.2となる。このように、メタン製造装置では、メタネーション反応によってガスの体積は小さくなる。
【0043】
図4は、比較例のメタン製造装置における、反応部入口のH
2/CO
2濃度と貯蔵部の体積との関係を説明する説明図である。比較例のメタン製造装置では、CO
2とH
2を含む混合ガスを反応部に供給する供給流路には、混合ガスを一時的に貯蔵する貯蔵部が設けられているものの、本実施形態のプレ反応部のような、貯蔵前の混合ガスでCH
4を生成する装置は設けられていない。
図4に示すように、貯蔵部の体積が大きいほど、反応部入口のH
2/CO
2濃度の変動が緩和されることが分かる。なお、貯蔵部内の最大圧力を高くするほど、貯蔵部の体積を小さくすることはできるが、より大きな昇圧動力が必要となるため、システム効率の低下につながる。
【0044】
図5は、メタン製造装置1において、主反応部40の入口(
図1の点P2)のH
2/CO
2濃度と貯蔵部35の体積との関係を説明する説明図である。
図5は、プレ反応部20での反応率が40%のときのH
2/CO
2濃度の時間変化を示している。
図5に示す「貯蔵部体積」の値は、
図4で示した比較例のメタン製造装置が備える貯蔵部の体積に対する比率を示している。
図5に示すように、貯蔵部の体積を、比較例の貯蔵部の0.67倍や0.83倍にしても、主反応部40の入口でのH
2/CO
2濃度の変動は、比較例の貯蔵部体積が1.0と同程度に緩和されていることがわかる。
【0045】
図6は、メタン製造装置1において、主反応部40の入口のH
2/CO
2濃度と貯蔵部35の体積との関係を説明する説明図である。
図6は、プレ反応部20での反応率が70%のときのH
2/CO
2濃度の時間変化を示している。
図6に示すように、貯蔵部の体積を、比較例の貯蔵部の0.5倍にしても、主反応部40の入口でのH
2/CO
2濃度の変動は、比較例の貯蔵部体積が1.0と同程度に緩和されていることがわかる。
【0046】
また、本実施形態のメタン製造装置1では、圧力制御部50aは、第1CO2濃度計46が検出した混合ガスのCO2濃度を用いて、プレ反応部20におけるCH4の反応率を推定する。圧力制御部50aは、プレ反応部20におけるCH4の目標反応率と推定反応率との差分を算出し、この差分をカバーするのに必要な昇圧器30の制御圧力を、図示しない記憶部に事前に記憶されている制御マップや推定式などから決定する。圧力制御部50aは、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの圧力が、決定した制御圧力となるように、昇圧器30を制御し、貯蔵部35に貯蔵される前の混合ガスを適度に圧縮する。
【0047】
以上説明した、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、主反応部40に供給される混合ガスを貯蔵する貯蔵部35の上流側に、貯蔵部35に貯蔵される前の混合ガスを用いてCH4を生成するプレ反応部20が設けられている。貯蔵部35には、プレ反応部20において生成されたCH4と、プレ反応部20において未反応のCO2とH2を含む混合ガスが貯蔵される。CO2とH2の混合ガスからCH4を生成すると、反応後のCH4を含む混合ガスの体積は、反応前のCH4含まない混合ガスの体積より減少する。このことから、プレ反応部20において貯蔵部35に貯蔵される前の混合ガスを用いてCH4を生成すると、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積は、プレ反応部20を備えていない場合より小さくなる。これにより、貯蔵部35を小さくすることができる。また、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積が小さくなるため、昇圧に必要な動力を少なくすることができる。したがって、システム効率の低下を抑制しつつ、装置の体格を小さくすることができる。なお、第1実施形態のメタン製造装置1は、CH4を製造するとしているが、「炭化水素製造装置」が製造する炭化水素化合物は、CH4だけでなく、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や、主に炭素と水素とを含む化合物を含んでもよい。
【0048】
従来、炭化水素化合物の生成に用いられる混合ガスを一時的に貯蔵する貯蔵部を設ける場合、貯蔵部に貯蔵されている混合ガスの圧力を、少なくとも反応部内の圧力よりも高くすることで、反応部への混合ガスの供給量を制御することが可能となる。貯蔵部は、貯蔵部内の圧力を高くするほど、貯蔵される混合ガスの体積が小さくなるため、貯蔵部を小さくすることができる。しかしながら、混合ガスを高圧にするための昇圧動力が大きくなるため、システム効率が低下する。一方、貯蔵部の体格を大きくするとシステム効率は高くなるが、メタン製造装置の体格が大きくなる。第1実施形態のメタン製造装置1では、貯蔵部35に貯蔵される前の混合ガスを用いてメタンを生成することによって混合ガスの体積を小さくする。これにより、主反応部40で用いられる混合ガスを余分に昇圧することなく、比較的小さい貯蔵部35に貯蔵することができる。
【0049】
また、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、貯蔵部35に貯蔵される前の混合ガスに含まれる水分を混合ガスから分離する凝縮器25を備える。これにより、プレ反応部20でのCH4の生成反応によって発生する水分を、貯蔵部35に貯蔵する前に、混合ガスから分離することができる。したがって、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積を小さくすることができるため、貯蔵部35をさらに小さくすることができる。
【0050】
また、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、貯蔵部35に貯蔵される前の混合ガスを昇圧する昇圧器30を備える。これにより、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスを、貯蔵部35に貯蔵される前に圧縮することができるため、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積をさらに小さくすることができる。したがって、貯蔵部35をさらに小さくすることができるため、装置の体格をさらに小さくすることができる。
【0051】
また、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、圧力制御部50aは、第1CO2濃度計46が検出した混合ガスのCO2濃度を用いて、プレ反応部20におけるCH4の反応率を推定する。圧力制御部50aは、プレ反応部20におけるCH4の推定反応率が目標反応率より低い場合、貯蔵部35に貯蔵される前の混合ガスを、推定反応率と目標反応率との差分に応じて圧縮されるように、昇圧器30を制御する。これにより、目標反応率に応じて事前に設定されている大きさの貯蔵部35は、主反応部40に供給される混合ガスを貯蔵することができる。
【0052】
また、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、圧力制御部50aは、プレ反応部20におけるCH4の推定反応率を用いて、貯蔵部35から主反応部40に供給される混合ガスの圧力を、主反応部40で想定される変動の範囲内となるように、混合ガスの圧力を修正することができる。
【0053】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態におけるメタン製造装置2の概略構成を示した説明図である。第2実施形態のメタン製造装置2は、第1実施形態のメタン製造装置1(
図1)と比較すると、貯蔵部35の上流側に配置されている昇圧器60が、プレ反応部20の上流側に設けられている点が異なる。
【0054】
メタン製造装置2は、第1吸着部11と、第2吸着部12と、水素供給源13と、供給流路15と、昇圧器60と、プレ反応部20と、凝縮器25と、貯蔵部35と、主反応部40と、第1CO2濃度計46と、第2CO2濃度計47と、制御部50を備える。
【0055】
昇圧器60は、
図7に示すように、供給流路15上のうち、プレ反応部20の上流側に設けられている。昇圧器60は、圧力制御部50aに電気的に接続している。昇圧器60は、プレ反応部20に供給される混合ガスを、第1CO
2濃度計46が検出した混合ガスのCO
2濃度に基づく圧力制御部50aの指令に応じて適度に昇圧する。
【0056】
以上説明した、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、供給流路15上のうちプレ反応部20の上流側に設けられる昇圧器60は、プレ反応部20に供給される混合ガスを昇圧する。これにより、プレ反応部20でのCH4の反応率を向上することができる。したがって、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積をさらに小さくすることができるため、貯蔵部の体積をさらに小さくすることができる。
【0057】
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、圧力制御部50aは、第1CO2濃度計46が検出した混合ガスのCO2濃度を用いてプレ反応部20におけるCH4の反応率を推定する。圧力制御部50aは、プレ反応部20での目標反応率と推定反応率との差分に応じて昇圧器60を制御する。圧力制御部50aは、プレ反応部20におけるCH4の推定反応率が目標反応率より低い場合、プレ反応部20に供給される混合ガスをさらに圧縮するように、昇圧器60を制御する。これにより、プレ反応部20における反応率を向上させ、反応率を目標反応率とすることができる。したがって、目標反応率に応じて事前に設定されている大きさの貯蔵部35は、主反応部40に供給される混合ガスを貯蔵することができる。
【0058】
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、圧力制御部50aによる昇圧器60の制御によってプレ反応部20でより高圧でのメタネーション反応が可能となるため、プレ反応部20の体格を小さくすることができる。これにより、装置の体格を小さくすることができる。
【0059】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態におけるメタン製造装置3の概略構成を示した説明図である。第3実施形態のメタン製造装置3は、第1実施形態のメタン製造装置1(
図1)と比較すると、プレ反応部20の熱媒体流路22を流れる熱媒体流量を制御する点が異なる。
【0060】
メタン製造装置3は、第1吸着部11と、第2吸着部12と、水素供給源13と、供給流路15と、プレ反応部20と、凝縮器25と、昇圧器30と、貯蔵部35と、主反応部40と、第1CO2濃度計46と、第2CO2濃度計47と、ガス情報取得部65と、制御部50を備える。
【0061】
ガス情報取得部65は、プレ反応部20の上流側での混合ガスのH2/CO2濃度および混合ガスの流量を検出する。ガス情報取得部65が検出した混合ガスに関連する情報は、制御部50が有する流量制御部50cに出力される。流量制御部50cは、ガス情報取得部65が検出した混合ガスのH2/CO2濃度および混合ガスの流量を用いて、プレ反応部20の熱媒体流路22を流れる熱媒体の流量を、熱媒体流量調整器66を制御することによって調整する。
【0062】
図9は、プレ反応部20に供給される混合ガスのH
2/CO
2濃度と熱媒体の流量との関係を示す説明図である。
図9では、横軸に、プレ反応部20に供給される混合ガスのH
2/CO
2濃度を示し、縦軸に、プレ反応部20に供給される熱媒体の相対流量を示している。縦軸に示す熱媒体の相対流量では、混合ガスのH
2/CO
2濃度が4.0のときの定格負荷での熱媒体の相対流量を1.0としている。
図9に示すように、H
2/CO
2濃度の増加に伴って熱媒体の流量を増加させることで、CH
4の反応率を高めることができることが分かる。これは、プレ反応部20の触媒21の温度をメタネーション反応に適正な温度とすることができるためである。
【0063】
以上説明した、第3実施形態のメタン製造装置3によれば、プレ反応部20に供給される混合ガスのH2/CO2濃度および流量を用いて、プレ反応部20の熱媒体流路22を流れる熱媒体の流量を調節する。プレ反応部20でのメタネーション反応は発熱反応であるため、反応平衡上、高温ほど反応率が低下する。そのため、触媒21を冷却して熱を除去する必要がある一方、過度に冷却するとメタネーション反応が失活する。そこで、本実施形態では、プレ反応部20に供給される混合ガスのH2/CO2濃度および流量に対応した熱媒体の流量制御によってプレ反応部20の温度をメタネーション反応に最適な温度とし、プレ反応部20での反応率を高める。このように、プレ反応部20の温度を熱媒体の流量で調整することでプレ反応部20での反応率を高め、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積をさらに小さくすることができる。したがって、装置の体格をさらに小さくすることができる。
【0064】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
[変形例1]
上述の実施形態では、「炭化水素製造装置」としてのメタン製造装置は、「炭化水素化合物」としてのCH4を製造するとした。しかしながら、炭化水素製造装置が製造する炭化水素化合物は、CH4だけでなく、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や、主に炭素と水素とから構成される化合物を含んでもよい。
【0066】
[変形例2]
上述の実施形態では、メタン製造装置は、混合ガスに含まれる水分を混合ガスから分離する凝縮器や、混合ガスを昇圧する昇圧器を備えるとした。しかしながら、凝縮器や昇圧器を備えていなくてもよい。
【0067】
[変形例3]
上述の実施形態では、2つの吸着部を用いて排ガスから回収したCO2と、H2とからCH4を製造するとした。しかしながら、CO2を供給する方法は、これに限定されない。また、吸着部を用いて排ガスからCO2を回収する方法も、上述の実施形態には限定されない。
【0068】
[変形例4]
第1実施形態および第2実施形態では、混合ガスのCO2濃度の情報を取得し、CO2濃度から推定されたプレ反応部20の反応率を用いて、昇圧器を制御した。しかしながら、昇圧器を制御するための情報は、これに限定されない。混合ガスのH2濃度やCH4濃度であってもよい。
【0069】
[変形例5]
第1実施形態のメタン製造装置1に、第2実施形態でのプレ反応部20の上流側に設けられる昇圧器60を設けてもよい。この場合、昇圧器60は、プレ反応部20での反応率の向上を促進することに用いられる一方、昇圧器30は、貯蔵部35に貯蔵される混合ガスの体積を小さくすることに用いられる。
【0070】
[変形例6]
第3実施形態のガス情報取得部65が取得する情報に基づいてプレ反応部20の反応率を向上させる方法は、第2実施形態に適用されてもよい。
【0071】
[変形例7]
第3実施形態では、ガス情報取得部65は、プレ反応部20の上流側での混合ガスのH2/CO2濃度および混合ガスの流量を検出するとした。しかしながら、ガス情報取得部65が取得する情報はこれに限定されない。混合ガスのH2/CO2濃度または混合ガスの流量だけでもよく、プレ反応部20におけるCH4の反応率を推定可能な情報であればよい。
【0072】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、2、3、4…メタン製造装置
5…排気ガス供給源
6…脱水部
10a…反応部
10b、25…凝縮器
11…第1吸着部
11a、12a…吸着材
12…第2吸着部
13…水素供給源
13a、13b…水素流路
13c、30、60…昇圧器
13d…流量調整器
15…供給流路
16…生成ガス流路
20…プレ反応部
21、41…触媒
22、42…熱媒体流路
35…貯蔵部
40…主反応部
46…第1CO2濃度計
47…第2CO2濃度計
48…流量調整器
50…制御部
50a…圧力制御部
50b、50c…流量制御部
65…ガス情報取得部
66…熱媒体流量調整器