(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 513
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
H01G4/30 311E
(21)【出願番号】P 2019064996
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】神崎 泰介
(72)【発明者】
【氏名】村松 諭
(72)【発明者】
【氏名】大西 浩介
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-009813(JP,A)
【文献】特開2014-207254(JP,A)
【文献】特開2017-022365(JP,A)
【文献】特開2013-214714(JP,A)
【文献】特開2017-027987(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007677(WO,A1)
【文献】特開2000-100647(JP,A)
【文献】特開2006-161127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のセラミック層と複数の内部電極と
を有し、高さ方向において相互に対向する1対の主面と、前記高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する1対の端面と、前記高さ方向および前記長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する1対の側面とを有する容量素子と、
前記容量素子の外表面に形成された少なくとも2つの外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサであって、
前記内部電極は、前記端面および/または前記側面において前記容量素子の外表面に引出されて、前記外部電極に接続され、
前記外部電極は、
前記容量素子の外表面に形成されたNiを主成分とするNi下地電極層と、
前記Ni下地電極層の外表面に形成されたCuめっき電極層と、
前記Cuめっき電極層の外表面に形成されたNiめっき電極層と、を有し、
前記Cuめっき電極層が、前記Ni下地電極層側に形成されたNiが拡散したNi拡散Cuめっき電極層と、
前記Niめっき電極層側に形成されたNiが拡散していないNi非拡散Cuめっき電極層とで構成され、
前記Cuめっき電極層の厚さが、3μm以上、12μm以下であり、
前記Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが、0.5μm以上であり、
前記Ni拡散Cuめっき電極層の厚さは、0μmより大きく、かつ、前記Cuめっき電極層の厚さから前記Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さを減じた厚さであり、
前記Cuめっき電極層と前記Niめっき電極層との間には、前記Cuめっき電極層のCuと前記Niめっき電極層のNiとが相互に拡散した層が存在しないか、または、存在しても厚さが前記Ni拡散Cuめっき電極層の厚さよりも小さい、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記Niめっき電極層の外表面にSnめっき電極層が形成された、請求項1に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが、1μm以上である、請求項1または2に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが、2μm以上である、請求項3に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記Ni拡散Cuめっき電極層に、CuとNiとの合金が存在する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記Ni下地電極層が、前記容量素子側に形成されたCuが拡散していないCu非拡散Ni下地電極層と、前記Cuめっき電極層側に形成されたCuが拡散したCu拡散Ni下地電極層とで構成された、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記内部電極が第1内部電極と第2内部電極とを有し、
前記第1内部電極が、両方の前記端面から前記容量素子の外表面に引出されて、前記外部電極に接続され、
前記第2内部電極が、少なくとも一方の前記側面から前記容量素子の外表面に引出されて、前記外部電極に接続され、
3端子型コンデンサが構成された、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
セラミックグリーンシートを作製する工程と、
前記セラミックグリーンシートの主面に、必要に応じて、内部電極を形成するための導電性ペーストを所望の形状に塗布する工程と、
複数の前記セラミックグリーンシートを積層し、一体化させて、未焼成容量素子を作製する工程と、
前記未焼成容量素子の外表面に、Ni下地電極層を形成するための導電性ペーストを所望の形状に塗布する工程と、
前記未焼成容量素子を焼成し、複数のセラミック層と複数の内部電極とが積層され、かつ、外表面にNi下地電極層が形成された容量素子を作製する工程と、
前記Ni下地電極層の外表面に、Cuめっき電極層を形成する工程と、
前記容量素子を熱処理し、前記Ni下地電極層に含まれるNiを前記Cuめっき電極層に拡散させ、前記Cuめっき電極層に、前記Ni下地電極層側に形成されたNiが拡散したNi拡散Cuめっき電極層と、
前記Ni下地電極層と反対の側に形成されたNiが拡散していないNi非拡散Cuめっき電極層とを形成する工程と、
前記Cuめっき電極層の外表面に、Niめっき電極層を形成する工程と、を備え、
前記Cuめっき電極層の厚さが、3μm以上、12μm以下であり、
前記Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが、0.5μm以上であり、
前記Ni拡散Cuめっき電極層の厚さは、0μmより大きく、かつ、前記Cuめっき電極層の厚さから前記Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さを減じた厚さであり、
前記Cuめっき電極層と前記Niめっき電極層との間には、前記Cuめっき電極層のCuと前記Niめっき電極層のNiとが相互に拡散した層が存在しないか、または、存在しても厚さが前記Ni拡散Cuめっき電極層の厚さよりも小さい積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記Niめっき電極層の外表面にSnめっき電極層を形成する工程を備えた、請求項8に記載された積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関し、更に詳しくは、耐湿性の向上と、外部電極の強度の向上とをはかった積層セラミックコンデンサに関する。
【0002】
また、本発明は、本発明の積層セラミックコンデンサを製造するのに適した積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的な積層セラミックコンデンサは、複数のセラミック層と複数の内部電極とが積層された容量素子を備え、容量素子の外表面に外部電極が形成されている。内部電極は、容量素子の端面や側面に引出されて、外部電極と接続されている。
【0004】
外部電極は、たとえば、導電性ペーストを塗布し、焼成して形成された下地電極層と、下地電極層の外表面に形成されためっき電極層とで構成される。めっき電極層は、必要に応じて、複数の層で構成される場合がある。
【0005】
たとえば、特許文献1(特開2017-168488号公報)には、導電性ペーストを焼付けて形成したNiを主成分とする下地電極層と、下地電極層の外表面に形成されたCuめっき電極層と、Cuめっき電極層の外表面に形成されたNiめっき電極層と、Niめっき電極層の外表面に形成されたSnめっき電極層とで構成された外部電極を備えた積層セラミックコンデンサが開示されている。
【0006】
特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサにおいて、Cuめっき電極層は、主に耐湿性を向上させるために設けられているものと考えられる。
【0007】
しかしながら、Niを主成分とする下地電極層とCuめっき電極層とは、材質および形成方法が異なるため、密着性(接合力)が高くない。そのため、特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサでは、Niを主成分とする下地電極層とCuめっき電極層の間に剥離が発生し、外部電極が破損する場合があった。また、Niを主成分とする下地電極層とCuめっき電極層との剥離によって形成された隙間を経由して水分が内部電極に到達するなどして、積層セラミックコンデンサの特性が耐湿性不良によって劣化する場合があった。
【0008】
この問題に対する対応策が、特許文献2(特開2012-9813号公報)に開示されている。
【0009】
特許文献2には、下地電極層の上にCuめっき電極層を形成した後に、熱処理をおこない、下地電極層に含まれる金属(たとえばNi)をCuめっき電極層に拡散させた積層セラミックコンデンサ(以下において「特許文献2の第1の積層セラミックコンデンサ」という場合がある)が開示されている。特許文献2の第1の積層セラミックコンデンサにおいては、Cuめっき電極層の下地電極層側の表層に金属(たとえばNi)が拡散しているため、下地電極層とCuめっき電極層との密着性が向上していると記載されている。なお、上記の熱処理においては、Cuめっき電極層に含まれるCuも、下地電極層に拡散しているものと考えられる。
【0010】
また、特許文献2には、下地電極層の上に第1のCuめっき電極層を形成した後に、熱処理をおこない、下地電極層に含まれる金属(たとえばNi)を第1のCuめっき電極層に拡散させ、続いて、第1のCuめっき電極層の上に第2のCuめっき電極層を形成した積層セラミックコンデンサ(以下において「特許文献2の第2の積層セラミックコンデンサ」という場合がある)が開示されている。特許文献2の第2の積層セラミックコンデンサにおいては、第1のCuめっき電極層の下地電極層側の表層に金属(たとえばNi)が拡散しているため、下地電極層と第1のCuめっき電極層との密着性が向上していると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2017-168488号公報
【文献】特開2012-9813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2の第1の積層セラミックコンデンサは、Cuめっき電極層の下地電極層側の表層に下地電極層に含まれる金属(たとえばNi)を拡散させたため、下地電極層とCuめっき電極層との密着性が向上している。しかしながら、特許文献2には、下地電極層に含まれる金属をCuめっき電極層にどの程度、拡散させれば良いかが開示されていない。
【0013】
下地電極層に含まれる金属をCuめっき電極層に拡散させる熱処理においては、下地電極層に含まれる金属がCuめっき電極層に拡散するだけではなく、Cuめっき電極層に含まれるCuが下地電極層に拡散する。そして、Cuが抜けたCuめっき電極層には、小孔が形成される。
【0014】
そのため、特許文献2の第1の積層セラミックコンデンサには、下地電極層に含まれる金属をCuめっき電極層に拡散させる熱処理を過度におこなうと、Cuめっき電極層の表裏間が小孔によって繋がってしまい、外部電極(Cuめっき電極層)の耐湿性が低下してしまう虞があった。
【0015】
一方、特許文献2の第2の積層セラミックコンデンサは、第1のCuめっき電極層の下地電極層側の表層に下地電極層に含まれる金属を拡散させたため、下地電極層と第1のCuめっき電極層との密着性が向上している。また、特許文献2の第2の積層セラミックコンデンサは、下地電極層に含まれる金属を第1のCuめっき電極層に拡散させる熱処理を過度におこなっても、第2のCuめっき電極層が存在しているため十分な耐湿性が維持される。
【0016】
しかしながら、特許文献2の第2の積層セラミックコンデンサは、製造するにあたり、第1のCuめっき電極層を形成する工程と、第2のCuめっき電極層を形成する工程とが必要であり、製造が煩雑で生産性が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、その手段として、本発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサは、積層された複数のセラミック層と複数の内部電極とを有し、高さ方向において相互に対向する1対の主面と、高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する1対の端面と、高さ方向および長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する1対の側面とを有する容量素子と、容量素子の外表面に形成された少なくとも2つの外部電極と、を備え、内部電極は、端面および/または側面において容量素子の外表面に引出されて、外部電極に接続され、外部電極は、容量素子の外表面に形成されたNiを主成分とするNi下地電極層と、Ni下地電極層の外表面に形成されたCuめっき電極層と、Cuめっき電極層の外表面に形成されたNiめっき電極層と、を有し、Cuめっき電極層が、Ni下地電極層側に形成されたNiが拡散したNi拡散Cuめっき電極層と、Niめっき電極層側に形成されたNiが拡散していないNi非拡散Cuめっき電極層とで構成され、Cuめっき電極層の厚さが、3μm以上、12μm以下であり、Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが、0.5μm以上であり、Ni拡散Cuめっき電極層の厚さは、0μmより大きく、かつ、Cuめっき電極層の厚さからNi非拡散Cuめっき電極層の厚さを減じた厚さであり、Cuめっき電極層とNiめっき電極層との間には、Cuめっき電極層のCuとNiめっき電極層のNiとが相互に拡散した層が存在しないか、または、存在しても厚さがNi拡散Cuめっき電極層の厚さよりも小さいものとする。
【0018】
また、本発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサの製造方法は、セラミックグリーンシートを作製する工程と、セラミックグリーンシートの主面に、必要に応じて、内部電極を形成するための導電性ペーストを所望の形状に塗布する工程と、複数のセラミックグリーンシートを積層し、一体化させて、未焼成容量素子を作製する工程と、未焼成容量素子の外表面に、Ni下地電極層を形成するための導電性ペーストを所望の形状に塗布する工程と、未焼成容量素子を焼成し、複数のセラミック層と複数の内部電極とが積層され、かつ、外表面にNi下地電極層が形成された容量素子を作製する工程と、Ni下地電極層の外表面に、Cuめっき電極層を形成する工程と、容量素子を熱処理し、Ni下地電極層に含まれるNiをCuめっき電極層に拡散させ、Cuめっき電極層に、Ni下地電極層側に形成されたNiが拡散したNi拡散Cuめっき電極層と、Ni下地電極層と反対の側に形成されたNiが拡散していないNi非拡散Cuめっき電極層とを形成する工程と、Cuめっき電極層の外表面に、Niめっき電極層を形成する工程と、を備え、Cuめっき電極層の厚さが、3μm以上、12μm以下であり、Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが、0.5μm以上であり、Ni拡散Cuめっき電極層の厚さは、0μmより大きく、かつ、Cuめっき電極層の厚さからNi非拡散Cuめっき電極層の厚さを減じた厚さであり、Cuめっき電極層とNiめっき電極層との間には、Cuめっき電極層のCuとNiめっき電極層のNiとが相互に拡散した層が存在しないか、または、存在しても厚さがNi拡散Cuめっき電極層の厚さよりも小さいものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の積層セラミックコンデンサは、高い耐湿性を備えるとともに、外部電極が高い強度を備えている。
【0020】
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法によれば、本発明の積層セラミックコンデンサを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。
【
図2】積層セラミックコンデンサ100の断面図である。
【
図3】積層セラミックコンデンサ100の要部断面図である。
【
図4】積層セラミックコンデンサ100の分解斜視図である。
【
図5】第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200の斜視図である。
【
図6】積層セラミックコンデンサ200の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0024】
[第1実施形態]
図1~
図4に、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100を示す。ただし、
図1は、積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ100の断面図であり、
図1に一点鎖線矢印で示したX-X部分を示している。
図3は、積層セラミックコンデンサ100の要部断面図である。
図4は、積層セラミックコンデンサ100の分解斜視図である。なお、図中に積層セラミックコンデンサ100の高さ方向T、長さ方向L、幅方向Wを示しており、以下の説明において、これらの方向に言及する場合がある。なお、本実施形態においては、後述するセラミック層1aの積層方向を、積層セラミックコンデンサ100の高さ方向Tと定義している。
【0025】
積層セラミックコンデンサ100は、直方体形状からなる容量素子1を備えている。容量素子1は、高さ方向Tにおいて相互に対向する1対の主面1A、1Bと、高さ方向Tに直行する長さ方向Lにおいて相互に対向する1対の端面1C、1Dと、高さ方向Tおよび長さ方向Lの両方に直行する幅方向Wにおいて相互に対向する1対の側面1E、1Fを有している。
【0026】
積層セラミックコンデンサ100の寸法は任意である。ただし、高さ方向Tの寸法は、たとえば、0.1mm~2.5mm程度とすることができる。長さ方向Lの寸法は、たとえば、0.1mm~3.2mm程度とすることができる。幅方向Wの寸法は、たとえば、0.1mm~2.5mm程度とすることができる。
【0027】
容量素子1は、複数のセラミック層1aと複数の内部電極2、3が積層されたものからなる。なお、内部電極2が第1内部電極、内部電極3が第2内部電極に該当する。
【0028】
容量素子1(セラミック層1a)の材質は任意であるが、たとえば、BaTiO3を主成分とする誘電体セラミックスを使用することができる。ただし、BaTiO3に代えて、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3など、他の材質を主成分とする誘電体セラミックスを使用してもよい。
【0029】
セラミック層1aの厚さは任意であるが、たとえば、内部電極2、3が形成された容量形成の実効領域において、0.3μm~2.0μm程度とすることができる。
【0030】
セラミック層1aの層数は任意であるが、たとえば、内部電極2、3が形成された容量形成の実効領域において、1層~6000層とすることができる。
【0031】
容量素子1の上下両側に、内部電極2、3が形成されず、セラミック層1aのみで構成された外層(保護層)が設けられている。外層の厚さは任意であるが、たとえば、15μm~150μmとすることができる。なお、外層領域のセラミック層1aの厚さは、内部電極2、3が形成されている容量形成の実効領域のセラミック層1aの厚さよりも大きくしてもよい(ただし、
図2、
図3においては、外層領域と実効領域とにおいてセラミック層1aの厚さを同じ厚さに示している)。また、外層領域のセラミック層1aの材質は、実効領域のセラミック層1aの材質と異なっていてもよい。
【0032】
図4の分解斜視図は、容量素子1の高さ方向Tにおける中央付近を、セラミック層1aごとに分解して示したものである。
図4から分かるように、内部電極2は、積層セラミックコンデンサ100の長さ方向Lに伸び、容量素子1の両方の端面1C、1Dに引出されている。内部電極3は、積層セラミックコンデンサ100の長さ方向Lに伸び、容量素子1の両方の側面1E、1Fに引出されている。なお、内部電極2と内部電極3は、原則として交互に積層されている。
【0033】
内部電極2、3の主成分の材質は任意であるが、本実施形態においては、Niを使用した。ただし、Niに代えて、Cu、Ag、Pd、Auなど、他の金属を使用してもよい。また、NiやCu、Ag、Pd、Auなどは、他の金属との合金であってもよい。
【0034】
内部電極2、3の厚さは任意であるが、たとえば、0.3μm~1.5μm程度とすることができる。
【0035】
内部電極2、3と、容量素子1の側面1E、1Fとの間のギャップ寸法は任意であるが、たとえば、10μm~200μm程度とすることができる。また、内部電極3と、容量素子1の端面1C、1Dとの間のギャップ寸法は任意であるが、たとえば、0.5μm~300μm程度とすることができる。
【0036】
容量素子1の外表面に、外部電極4、5、6、7が形成されている。
【0037】
外部電極4は、容量素子1の端面1Cに形成されている。外部電極4は、キャップ形状に形成されており、縁の部分が、容量素子1の端面1Cから、主面1A、1B、側面1E、1Fに延出して形成されている。
【0038】
外部電極5は、容量素子1の端面1Dに形成されている。外部電極5は、キャップ形状に形成されており、縁の部分が、容量素子1の端面1Dから、主面1A、1B、側面1E、1Fに延出して形成されている。
【0039】
外部電極6は、容量素子1の側面1Eに形成されている。外部電極6は、C字形状に形成されており、縁の部分が、容量素子1の側面1Eから、主面1A、1Bに延出して形成されている。
【0040】
外部電極7は、容量素子1の側面1Fに形成されている。外部電極7は、C字形状に形成されており、縁の部分が、容量素子1の側面1Fから、主面1A、1Bに延出して形成されている。
【0041】
積層セラミックコンデンサ100においては、容量素子1の端面1Cに引出された内部電極2が、外部電極4に接続されている。容量素子1の端面1Dに引出された内部電極2が、外部電極5に接続されている。容量素子1の側面1Eに引出された内部電極3が、外部電極6に接続されている。容量素子1の側面1Fに引出された内部電極3が、外部電極7に接続されている。
【0042】
内部電極2が外部電極4、5に接続され、内部電極3が外部電極6、7に接続された積層セラミックコンデンサ100は、3端子型コンデンサとして使用することができる。すなわち、積層セラミックコンデンサ100は、回路において電源ラインまたは信号ラインを途中で分断し、分断した一方に外部電極4を接続し、分断した他方に外部電極5を接続し、かつ、外部電極6、7をグランドに接続することによって、3端子型コンデンサとして使用することができる。この場合、内部電極2がスルー電極になり、内部電極3がグランド電極になる。
【0043】
外部電極4~7は、いずれも、同一の多層構造を有している。具体的には、外部電極4~7は、
図2、
図3に示すように、それぞれ、容量素子1の外表面に形成されたNi下地電極層8と、Ni下地電極層8の外表面に形成されたCuめっき電極層9と、Cuめっき電極層9の外表面に形成されたNiめっき電極層10と、Niめっき電極層10の外表面に形成されたSnめっき電極層11とを有している。なお、Niめっき電極層10とSnめっき電極層11とを、Cuめっき電極層9の外表面に付加した、第2めっき電極と呼ぶ場合がある。
【0044】
そして、Ni下地電極層8は、容量素子1側に形成されたCuが拡散していないCu非拡散Ni下地電極層8aと、Cuめっき電極層9側に形成されたCuが拡散したCu拡散Ni下地電極層8bとで構成されている。また、Cuめっき電極層9は、Ni下地電極層8側に形成されたNiが拡散したNi拡散Cuめっき電極層9aと、第2めっき電極層側に形成されたNiが拡散していないNi非拡散Cuめっき電極層9bとで構成されている。
【0045】
Ni下地電極層8は、外部電極4~7のベースとなる部分である。Ni下地電極層8は、Niを主成分にしている。ただし、Ni下地電極層8に、セラミックスが含まれることも好ましい。この場合には、容量素子1とNi下地電極層8との密着性を向上させることができるからである。また、Ni下地電極層8に含まれるセラミックスの組成は、容量素子1を構成するセラミックスの組成と同じであることも好ましい。この場合には、容量素子1とNi下地電極層8との密着性をより向上させることができるからである。
【0046】
Ni下地電極層8の厚さは任意であるが、たとえば、9μm~150μm程度とすることができる。
【0047】
上述したとおり、Ni下地電極層8は、容量素子1側に形成されたCuが拡散していないCu非拡散Ni下地電極層8aと、Cuめっき電極層9側に形成されたCuが拡散したCu拡散Ni下地電極層8bとで構成されている。Cu非拡散Ni下地電極層8aとCu拡散Ni下地電極層8bとの境界は、Ni下地電極層8の断面をWDX(Wavelength-Dispersive X-ray spectrometry;波長分散型X線分光法)によって分析したとき、Cuが検出されるか否かで判断することができる。すなわち、Cuが検出されない部分がCu非拡散Ni下地電極層8aであり、Cuが検出される部分がCu拡散Ni下地電極層8bである。
【0048】
Cu拡散Ni下地電極層8bに含まれるCuは、熱処理によって、Cuめっき電極層9から拡散されたものである。Cu拡散Ni下地電極層8bは、Ni下地電極層8(Cu拡散Ni下地電極層8b)とCuめっき電極層9(Ni拡散Cuめっき電極層9a)との密着性を向上させることを目的として設けられたものである。
【0049】
Cu拡散Ni下地電極層8bは、熱処理によって、Cuめっき電極層9からCuが拡散される部分であるとともに、Ni拡散Cuめっき電極層9aに拡散されるNiを供給する部分でもある。すなわち、Cu拡散Ni下地電極層8bおよびNi拡散Cuめっき電極層9aにおいては、NiおよびCuが相互拡散している。
【0050】
なお、Cuめっき電極層9から多量のCuが拡散された場合には、Ni下地電極層8が、Cu非拡散Ni下地電極層8aを備えずに、Cu拡散Ni下地電極層8bのみで構成される場合もある。
【0051】
Cuめっき電極層9は、主に耐湿性を向上させる機能を果たしている。
【0052】
図3に示すCuめっき電極層9の厚さTXは、3μm以上、12μm以下である。Cuめっき電極層9の厚さTXが3μmよりも小さいと、Cuめっき電極層9の耐湿性の機能が低下してしまうからである。また、Cuめっき電極層9の厚さTXが12μmよりも大きいと、外部電極4~7の厚さが必要以上に大きくなってしまい、その分だけ容量素子1の寸法を小さくしなければならず、内部電極2、3の面積を小さくしたり、セラミック層1b、内部電極2、3の層数を減らしたりしなければならず、積層セラミックコンデンサ100の静電容量が小さくなってしまう虞があるからである。
【0053】
Cuめっき電極層9の表面粗さRAは任意であるが、たとえば、0.1μm~1.0μm程度とすることができる。
【0054】
上述したとおり、Cuめっき電極層9は、Ni拡散Cuめっき電極層9aとNi非拡散Cuめっき電極層9bとで構成されている。Ni拡散Cuめっき電極層9aとNi非拡散Cuめっき電極層9bとの境界は、Cuめっき電極層9の断面をWDXによって分析したとき、Niが検出されるか否かで判断することができる。すなわち、Niが検出される部分がNi拡散Cuめっき電極層9aであり、Niが検出されない部分がNi非拡散Cuめっき電極層9bである。
【0055】
Ni拡散Cuめっき電極層9aに含まれるNiは、熱処理によって、Ni下地電極層8から拡散されたものである。Ni拡散Cuめっき電極層9aは、Ni下地電極層8(Cu拡散Ni下地電極層8b)とCuめっき電極層9(Ni拡散Cuめっき電極層9a)との密着性を上げ、固着性や耐湿信頼性を向上させることを目的として設けられたものである。
【0056】
Ni拡散Cuめっき電極層9aは、熱処理によって、Ni下地電極層8からNiが拡散される部分であるとともに、Cu拡散Ni下地電極層8bに拡散されるCuを供給する部分でもある。すなわち、上述したとおり、Cu拡散Ni下地電極層8bおよびNi拡散Cuめっき電極層9aにおいては、NiおよびCuが相互拡散している。
【0057】
Ni拡散Cuめっき電極層9aには、Cu拡散Ni下地電極層8bに供給したCuが抜けたあとに、小孔が形成される。そのため、Ni拡散Cuめっき電極層9aは、耐湿性が低い。
【0058】
Ni拡散Cuめっき電極層9aは、Ni拡散量が多いほど好ましい。この場合には、Ni下地電極層8(Cu拡散Ni下地電極層8b)とCuめっき電極層9(Ni拡散Cuめっき電極層9a)との密着性が更に向上するからである。
【0059】
Ni非拡散Cuめっき電極層9bは、Cuめっき電極層9において、熱処理をおこなっても、Ni下地電極層8からNiが拡散しなかった部分である。Ni非拡散Cuめっき電極層9bは、熱処理後においても、高い耐湿性が維持される。
【0060】
図3に示すNi非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYは、0.5μm以上である。熱処理後においても高い耐湿性が維持されるNi非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYが0.5μmよりも小さくなると、主に耐湿性を向上させるためにCuめっき電極層9を設けたにもかかわらず、Cuめっき電極層9の耐湿性が低下してしまうからである。
【0061】
Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYは、1μm以上であることが好ましい。この場合には、Cuめっき電極層9の高い耐湿性を確実に維持することができるからである。
【0062】
Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYは、2μm以上であることが更に好ましい。この場合には、Cuめっき電極層9の高い耐湿性を更に確実に維持することができるからである。
【0063】
上述したとおり、本実施形態においては、Niめっき電極層10とSnめっき電極層11との2層が、Cuめっき電極層9の外表面に形成された第2めっき電極層に該当する。ただし、第2めっき電極層の層数は任意であり、2層に代えて、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。また、第2めっき電極層の各層の材質も任意であり、Ni、Sn以外の金属からなるめっき電極層であってもよい。
【0064】
Niめっき電極層10は、主に、はんだ耐熱性を向上させるとともに、密着性を向上させる機能を果たしている。Snめっき電極層11は、主にはんだ付け性を向上させる機能を果たしている。
【0065】
Niめっき電極層10の厚さは任意であるが、たとえば、2μm~7μm程度とすることができる。
【0066】
Snめっき電極層11の厚さは任意であるが、たとえば、1μm~8μm程度とすることができる。
【0067】
Cuめっき電極層9、Niめっき電極層10、Snめっき電極層11は、それぞれ、不純物を含んでいてもよい。また、Cuめっき電極層9、Niめっき電極層10、Snめっき電極層11は、それぞれ、合金であってもよい。
【0068】
以上の構造からなる積層セラミックコンデンサ100は、Ni下地電極層8にCu拡散Ni下地電極層8bが形成され、Cuめっき電極層9にNi拡散Cuめっき電極層9aが形成されているため、Ni下地電極層8(Cu拡散Ni下地電極層8b)とCuめっき電極層9(Ni拡散Cuめっき電極層9a)とが高い密着性で接合されている。したがって、積層セラミックコンデンサ100は、Ni下地電極層8とCuめっき電極層9とが剥離しにくく、両者の間に隙間が形成されにくい。そのため、積層セラミックコンデンサ100は、外部電極4~7が高い強度を備えている。
【0069】
また、積層セラミックコンデンサ100は、Cuめっき電極層9の厚さTXが3μm以上であるため、Cuめっき電極層9が高い耐湿性を備えている。
【0070】
また、積層セラミックコンデンサ100は、Cuめっき電極層9の厚さTXが12μm以下であるため、外部電極4~7の厚さが必要以上に大きくならず、容量素子1を十分に大きな寸法にすることができ、大きな静電容量を得ることができる。
【0071】
また、積層セラミックコンデンサ100は、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYが0.5μm以上であるため、熱処理後においても、Cuめっき電極層9の耐湿性が低下することがない。
【0072】
(耐湿負荷試験)
本発明の有効性を確認するために、以下の耐湿負荷試験をおこなった。
【0073】
まず、実施例にかかる試料を作製した。実施例にかかる試料は、積層セラミックコンデンサ100の構造において、Cuめっき電極層9の厚さTXを3μmとし、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYを0.5μmとした。
【0074】
次に、比較例1にかかる試料を作製した。比較例1にかかる試料は、Cuめっき電極層9の厚さTXを3μmとし、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYを3μmとした。すなわち、比較例1にかかる試料は、Cuめっき電極層9を形成した後に熱処をおこなわず、Ni拡散Cuめっき電極層9aを形成せず、Cuめっき電極層9の全てをNi非拡散Cuめっき電極層9bとした。
【0075】
次に、比較例2にかかる試料を作製した。比較例2にかかる試料は、Cuめっき電極層9の厚さTXを3μmとし、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYを0.4μmとした。
【0076】
次に、比較例3にかかる試料を作製した。比較例3にかかる試料は、Cuめっき電極層9の厚さTXを3μmとし、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYを0μmとした。すなわち、比較例3にかかる試料は、Cuめっき電極層9を形成した後の熱処によって、Cuめっき電極層9の全てをNi拡散Cuめっき電極層9aとし、Ni非拡散Cuめっき電極層9bを形成しなかった。
【0077】
次に、実施例にかかる試料と、比較例1~3にかかる試料とを、各10個ずつ、共晶半田を用いてガラスエポキシ基板に実装した。続いて、各試料の絶縁抵抗値を測定した。
【0078】
次に、各ガラスエポキシ基板を高温高湿槽内に入れ、125℃、相対湿度95%RHの環境下において、各試料に対して、3.2Vの電圧を72時間印加した。続いて、耐湿負荷試験後の各試料の絶縁抵抗値を測定した。
【0079】
各試料において、耐湿負荷試験の前後において、1桁以上、絶縁抵抗値が低下したものを耐湿不良としてカウントした。
【0080】
表1に、実施例および比較例1~3それぞれについて、耐湿不良の発生数を示す。
【表1】
【0081】
比較例1においては、10個のうち、10個に耐湿不良が発生した。比較例1においては、Ni下地電極層8がCu拡散Ni下地電極層8bを備えておらず、Cuめっき電極層9がNi拡散Cuめっき電極層9aを備えていないため、Ni下地電極層8とCuめっき電極層9との密着性が低い。そのため、比較例1においては、Ni下地電極層8とCuめっき電極層9との間に隙間が発生し、その隙間を経由して水分が内部電極に到達するなどして、耐湿不良が発生してしまったものと考えられる。
【0082】
一方、実施例においては、耐湿不良は発生しなかった。
【0083】
また、比較例2においては、10個のうち、1個に耐湿不良が発生した。Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYが0.4μmであり、0.5μmよりも小さかったため、Cuめっき電極層9の耐湿性が低下してしまったものと考えられる。
【0084】
また、比較例3においては、10個のうち、5個に耐湿不良が発生した。Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYが0μmであったため、Cuめっき電極層9の耐湿性が更に低下してしまったものと考えられる。
【0085】
以上の耐湿負荷試験により、本発明の有効性が確認できた。
【0086】
(積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例)
第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例について説明する。
【0087】
まず、内部に内部電極2、3が形成され、外表面に外部電極4~7のNi下地電極層8が形成された容量素子1を作製する。
【0088】
具体的には、まず、誘電体セラミックスの粉末、バインダー樹脂、溶剤などを用意し、これらを湿式混合してセラミックスラリーを作製する。
【0089】
次に、キャリアフィルム上に、セラミックスラリーをダイコータ、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなどを用いてシート状に塗布し、乾燥させて、セラミックグリーンシートを作製する。
【0090】
次に、所定のセラミックグリーンシートの主面に、内部電極2、3を形成するために、予め用意した導電性ペーストを所望のパターン形状に塗布(たとえば印刷)する。なお、外層となるセラミックグリーンシートには、導電性ペーストは塗布しない。なお、導電性ペーストには、たとえば、溶剤、バインダー樹脂、金属粉末(たとえばNi粉末)などを混合したものを使用することができる。
【0091】
次に、セラミックグリーンシートを所定の順番に積層し、加熱圧着して一体化させ、未焼成容量素子を作製する。
【0092】
次に、未焼成容量素子の外表面に、Ni下地電極層8を形成するために、導電性ペーストを所望の形状に塗布する。なお、導電性ペーストには、たとえば、溶剤、バインダー樹脂、Ni粉末、セラミックス粉末などを混合したものを使用することができる。
【0093】
次に、未焼成容量素子を、所定のプロファイルで焼成して容量素子1を完成させる。このとき、セラミックグリーンシートが焼成されてセラミック層1aになり、セラミックグリーンシートの主面に塗布された導電性ペーストが同時に焼成されて内部電極2、3になり、未焼成容量素子の外表面に塗布された導電性ペーストが同時に焼成されてNi下地電極層8になる。
【0094】
次に、外部電極4~7のNi下地電極層8の外表面に、Cuめっき電極層9を形成する。Cuめっき電極層9の厚さは、3μm以上、12μm以下にする。
【0095】
次に、外表面に外部電極4~7のNi下地電極層8、Cuめっき電極層9が形成された容量素子1を熱処理する。この結果、Ni下地電極層8にCu非拡散Ni下地電極層8aとCu拡散Ni下地電極層8bとが形成され、Cuめっき電極層9にNi拡散Cuめっき電極層9aとNi非拡散Cuめっき電極層9bとが形成される。
【0096】
熱処理の温度および時間は、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さが0.5μm以上となるように制御する。熱処理の温度は任意であるが、たとえば、300℃~1000℃程度とすることができる。熱処理の時間も任意であるが、たとえば、1分~240分程度とすることができる。時間が一定の場合、温度が高いほどNi非拡散Cuめっき電極層9bの厚さは小さくなり、温度が一定の場合、時間が長いほどNi非拡散Cuめっき電極層9bの厚さは小さくなる。
【0097】
次に、外部電極4~7のCuめっき電極層9の外表面に、Niめっき電極層10を形成する。なお、Niめっき電極層10を形成する際に、はんだボールをメディアとして使用すると、Cuめっき電極層9とNiめっき電極層10との界面に、Snの層が形成される場合がある。
【0098】
最後に、Niめっき電極層10の外表面に、Snめっき電極層11を形成し、外部電極4~7を完成させて、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100を完成させる。
【0099】
なお、Snめっき電極層11を形成する際のめっき液には、多量の界面活性剤が混合される場合があり、めっき液が外部電極4~7の内側に浸入しやすく、更にはめっき液が内部電極2、3に到達しやすい。そして、めっき液が内部電極2、3に到達することによって、特性不良(耐湿不良)を招くことがある。しかしながら、積層セラミックコンデンサ100においては、外部電極4~7のCuめっき電極層9の厚さTXが3μm以上であり、かつ、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYが0.5μm以上であり、Cuめっき電極層9が高い耐湿性を備えているため、そのような特性不良が発生しにくい。
【0100】
[第2実施形態]
図5、
図6に、第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200を示す。ただし、
図5は、積層セラミックコンデンサ200の斜視図である。
図6は、積層セラミックコンデンサ200の断面図であり、
図5に一点鎖線矢印で示したY-Y部分を示している。
【0101】
第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200は、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100の構成の一部に変更を加えた。具体的には、積層セラミックコンデンサ100は3端子型コンデンサであったが、積層セラミックコンデンサ200は2端子型コンデンサとした。
【0102】
積層セラミックコンデンサ200は、容量素子1が、複数のセラミック層1aと、複数の内部電極22、23とが積層されたものからなる。内部電極22、23は、いずれも、長さ方向Lに伸び、平面視において矩形形状をしている。そして、内部電極22が容量素子1の端面1Cに引出され、内部電極23が容量素子1の端面1Dに引出されている。
【0103】
容量素子1の外表面に、外部電極24、25が形成されている。
【0104】
外部電極24は、容量素子1の端面1Cに形成されている。外部電極24は、キャップ形状に形成されており、縁の部分が、容量素子1の端面1Cから、主面1A、1B、側面1E、1Fに延出して形成されている。
【0105】
外部電極25は、容量素子1の端面1Dに形成されている。外部電極25は、キャップ形状に形成されており、縁の部分が、容量素子1の端面1Dから、主面1A、1B、側面1E、1Fに延出して形成されている。
【0106】
積層セラミックコンデンサ200においては、容量素子1の端面1Cに引出された内部電極22が、外部電極24に接続されている。また、容量素子1の端面1Dに引出された内部電極23が、外部電極25に接続されている。
【0107】
外部電極24、25は、それぞれ、容量素子1の外表面に形成されたNi下地電極層8と、Ni下地電極層8の外表面に形成されたCuめっき電極層9と、Cuめっき電極層9の外表面に形成されたNiめっき電極層10と、Niめっき電極層10の外表面に形成されたSnめっき電極層11とを有している。
【0108】
積層セラミックコンデンサ200においても、Ni下地電極層8がCu非拡散Ni下地電極層8aとCu拡散Ni下地電極層8bとで構成され、Cuめっき電極層9がNi拡散Cuめっき電極層9aとNi非拡散Cuめっき電極層9bとで構成されている。
【0109】
積層セラミックコンデンサ200においても、Cuめっき電極層9の厚さTXは3μm以上、12μm以下であり、Ni非拡散Cuめっき電極層9bの厚さTYは0.5μm以上である。
【0110】
このように、本発明の積層セラミックコンデンサは、2端子型コンデンサとして構成してもよい。
【0111】
以上、第1実施形態、第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100、200について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0112】
たとえば、積層セラミックコンデンサ100、200では、第2めっき層として、Niめっき電極層10とSnめっき電極層11との2層を設けたが、第2めっき層の層数、材質などは任意であり、適宜、変更することができる。
【0113】
また、積層セラミックコンデンサ100では、3端子型コンデンサを構成するにあたり、グランドに接続する電極として2つの外部電極6、7を形成したが、容量素子1の外表面において外部電極6と外部電極7とを繋ぎ、1つの共通外部電極としてもよい。この場合において、内部電極3は、容量素子1の両方の側面1E、1Fにおいて共通外部電極に接続されることが好ましいが、電気的には側面1E、1Fの少なくとも一方において共通外部電極に接続されていればよい。
【0114】
本発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサは、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0115】
この積層セラミックコンデンサにおいて、第2めっき電極層が、Snめっき電極層を含むことも好ましい。この場合には、Snめっき電極層によって外部電極のはんだ付け性を向上させることができる。
【0116】
また、第2めっき電極層が、Cuめっき電極層の外表面に形成されたNiめっき電極層と、Niめっき電極層の外表面に形成されたSnめっき電極層と、を含むことも好ましい。この場合には、Niめっき電極層によってはんだ耐熱性を付与するとともに密着性を向上させ、Snめっき電極層によってはんだ付け性を向上させることができる。
【0117】
また、Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが1μm以上であることも好ましい。この場合には、Cuめっき電極層の高い耐湿性を、確実に維持することができるからである。
【0118】
また、Ni非拡散Cuめっき電極層の厚さが2μm以上であることも好ましい。この場合には、Cuめっき電極層の高い耐湿性を、更に確実に維持することができるからである。
【0119】
また、Ni拡散Cuめっき電極層に、CuとNiとの合金が存在することも好ましい。この場合には、Ni下地電極層とCuめっき電極層との密着性が更に向上するからである。
【0120】
また、Ni下地電極層が、容量素子側に形成されたCuが拡散していないCu非拡散Ni下地電極層と、Cuめっき電極層側に形成されたCuが拡散したCu拡散Ni下地電極層とで構成されることも好ましい。この場合には、Ni下地電極層とCuめっき電極層との密着性が更に向上するからである。
【0121】
また、内部電極が第1内部電極と第2内部電極とを有し、第1内部電極が、両方の端面から容量素子の外表面に引出されて、外部電極に接続され、第2内部電極が、少なくとも一方の側面から容量素子の外表面に引出されて、外部電極に接続され、3端子型コンデンサが構成されることも好ましい。
【0122】
本発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサの製造方法は、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0123】
この積層セラミックコンデンサの製造方法において、第2めっき電極層が、Snめっき電極層を含むことも好ましい。この場合には、Snめっき電極層によって外部電極のはんだ付け性を向上させることができる。
【0124】
また、第2めっき電極層が、Cuめっき電極層の外表面に形成されたNiめっき電極層と、Niめっき電極層の外表面に形成されたSnめっき電極層と、を含むことも好ましい。この場合には、Niめっき電極層によってはんだ耐熱性を付与するとともに密着性を向上させ、Snめっき電極層によってはんだ付け性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0125】
1…容量素子
1a・・・セラミック層
1A、1B・・・主面
1C、1D・・・端面
1E、1F・・・側面
2、3、22、23・・・内部電極
4、5、6、7・・・外部電極
8・・・Ni下地電極層
8a・・・Cu非拡散Ni下地電極層
8b・・・Cu拡散Ni下地電極層
9・・・Cuめっき電極層
9a・・・Ni拡散Cuめっき電極層
9b・・・Ni非拡散Cuめっき電極層
10・・・Niめっき電極層(第2めっき電極層)
11・・・Snめっき電極層(第2めっき電極層)