(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/16 20160101AFI20221220BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20221220BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221220BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20221220BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20221220BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20221220BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20221220BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20221220BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20221220BHJP
【FI】
B60W20/16 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60K6/445
B60K6/24
F02D45/00
F02D29/06 D
F01N3/023 A
B60L50/16
(21)【出願番号】P 2019066083
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 幸一
(72)【発明者】
【氏名】吉嵜 聡
(72)【発明者】
【氏名】前田 治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大吾
(72)【発明者】
【氏名】浅見 良和
(72)【発明者】
【氏名】板垣 憲治
(72)【発明者】
【氏名】尾山 俊介
(72)【発明者】
【氏名】牟田 浩一郎
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127130(JP,A)
【文献】特開2018-090202(JP,A)
【文献】特開2005-016459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
F02D 29/00-45/00
F01N 3/023
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
回転電機と、
前記内燃機関と前記回転電機と出力軸とが接続される遊星歯車機構と、
前記内燃機関の排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記内燃機関および前記回転電機を制御するように構成された制御装置とを備え、
前記内燃機関は、前記内燃機関からの排気のエネルギを利用して前記内燃機関への吸気を過給する過給機を含み、
前記内燃機関の回転速度と発生トルクとの関係を示すマップ上で定められる過給ラインは、前記マップ上の動作点で示される前記内燃機関の発生トルクが当該過給ラインを上回っている状態であるときに、前記過給機により吸気を過給するラインであり、
前記制御装置は、前記フィルタに堆積した前記粒子状物質を燃焼させる再生制御を実行する場合、前記フィルタの温度が前記再生制御を実行可能な再生温度範囲となるように、前
記マップ上の動作点を発生トルクが低い側に動かすよう前記内燃機関および回転電機を制御する
とともに、前記マップ上の動作点で示される前記内燃機関の発生トルクが前記過給ラインを上回っている状態であるときに、下回っている状態となるように前記動作点を動かす、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記動作点を動かすときに、等出力ライン上を移動させる、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ハイブリッド車両に関し、特に、過給機付きの内燃機関を備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-58924号公報(以下「特許文献1」という。)には、ターボ式過給機を備えた内燃機関とモータジェネレータとを搭載したハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなハイブリッド車両においては、ターボ式過給機による過給のために排気エネルギが用いられるため、排気温度が低くなる傾向にある。これにより、エンジンの排気に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するフィルタであるGPF(Gasoline Particulate Filter)へ流入する排気の温度が下がるため、高温の排気によるGPFの再生ができない。これにより、GPFの機能が低下してしまう虞がある。
【0005】
この開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、フィルタの機能の低下を抑制することが可能なハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係る車両の制御装置における車両は、内燃機関と、回転電機と、内燃機関と回転電機と出力軸とが接続される遊星歯車機構と、内燃機関の排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、内燃機関および回転電機を制御するように構成された制御装置とを備える。制御装置は、前記フィルタに堆積した前記粒子状物質を燃焼させる再生制御を実行する場合、フィルタの温度が再生制御を実行可能な再生温度範囲となるように、内燃機関の回転速度と発生トルクとの関係を示すマップ上の動作点を発生トルクが低い側に動かすよう内燃機関および回転電機を制御する。
【0007】
このような構成によれば、フィルタの温度が再生温度範囲となるようにすることができる。その結果、フィルタの機能の低下を抑制することが可能なハイブリッド車両を提供できる。
【0008】
好ましくは、制御装置は、動作点を動かすときに、等出力ライン上を移動させる。このような構成によれば、動作点を動かす場合であっても、内燃機関の出力を一定とすることができる。その結果、駆動力を一定に保ちつつ、バッテリの充放電量を大きく増減させずに走行を継続できる。
【0009】
好ましくは、内燃機関は、内燃機関からの排気のエネルギを利用して内燃機関への吸気を過給する過給機を含む。マップ上で定められる過給ラインは、マップ上の動作点で示される内燃機関の発生トルクが当該過給ラインを上回っている状態であるときに、過給機により吸気を過給するラインである。制御装置は、マップ上の動作点で示される内燃機関の発生トルクが過給ラインを上回っている状態であるときに、下回っている状態となるように動作点を動かす。
【0010】
このような構成によれば、動作点を動かさない場合と比較して、フィルタの温度が再生温度範囲以上となる時間を長くすることができる。その結果、フィルタがPMを捕集する能力を復元することができる。
【発明の効果】
【0011】
この開示によれば、フィルタの機能の低下を抑制することが可能なハイブリッド車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この開示の実施の形態に従うハイブリッド車両の駆動システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】ターボチャージャを備えたエンジンの構成の一例を示す図である。
【
図3】制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】エンジン、第1MG、および出力要素の回転速度およびトルクの関係を示す共線図である。
【
図6】エンジン、第1MG、および出力要素の回転速度およびトルクの関係を示す共線図である。
【
図7】エンジン、第1MG、および出力要素の回転速度およびトルクの関係を示す共線図である。
【
図8】エンジンの推奨動作ラインの一例である最適燃費ラインを示す図である。
【
図9】エンジン、第1MG、および第2MGの動作点を決定する基本算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】この実施の形態のGPF温度関連処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】GPF再生制御による動作点の動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
<ハイブリッド車両の駆動システムについて>
図1は、この開示の実施の形態に従うハイブリッド車両(以下、単に車両と記載する)10の駆動システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、車両10は、制御部11と、走行用の動力源となる、エンジン13と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)14と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)15とを駆動システムとして備えている。エンジン13は、ターボチャージャ47を含む。
【0015】
第1MG14および第2MG15は、いずれも駆動電力が供給されることによりトルクを出力するモータとしての機能と、トルクが与えられることにより発電電力を発生する発電機としての機能とを備える。第1MG14および第2MG15としては、交流回転電機が用いられる。交流回転電機は、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型などの同期電動機または誘導電動機である。
【0016】
第1MG14および第2MG15は、いずれもPCU(Power Control Unit)81を介してバッテリ18に電気的に接続されている。PCU81は、第1MG14と電力を授受する第1インバータ16と、第2MG15と電力を授受する第2インバータ17と、バッテリ18と、第1インバータ16および第2インバータ17との間で電力を授受するコンバータ83とを含む。
【0017】
コンバータ83は、たとえば、バッテリ18の電力を昇圧して第1インバータ16または第2インバータ17に供給可能に構成される。あるいは、コンバータ83は、第1インバータ16または第2インバータ17から供給される電力を降圧してバッテリ18に供給可能に構成される。
【0018】
第1インバータ16は、コンバータ83からの直流電力を交流電力に変換して第1MG14に供給可能に構成される。あるいは、第1インバータ16は、第1MG14からの交流電力を直流電力に変換してコンバータ83に供給可能に構成される。
【0019】
第2インバータ17は、コンバータ83からの直流電力を交流電力に変換して第2MG15に供給可能に構成される。あるいは、第2インバータ17は、第2MG15からの交流電力を直流電力に変換してコンバータ83に供給可能に構成される。
【0020】
バッテリ18は、再充電可能に構成された電力貯蔵要素である。バッテリ18は、たとえば、リチウムイオン電池もしくはニッケル水素電池等の二次電池、または、電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を含んで構成される。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池のほか、固体の電解質を用いた所謂全固体電池も含み得る。
【0021】
バッテリ18は、第1MG14が発電した電力を、第1インバータ16を通じて受けて蓄えることができ、蓄えられた電力を、第2インバータ17を通じて第2MG15へ供給することができる。また、バッテリ18は、車両の減速時等に第2MG15が発電した電力を、第2インバータ17を通じて受けて蓄えることもでき、蓄えられた電力を、エンジン13の始動時等に第1インバータ16を通じて第1MG14へ供給することもできる。
【0022】
すなわち、PCU81は、第1MG14あるいは第2MG15において発電された電力を用いてバッテリ18を充電したり、バッテリ18の電力を用いて第1MG14あるいは第2MG15を駆動したりする。
【0023】
エンジン13および第1MG14は、遊星歯車機構20に連結されている。遊星歯車機構20は、エンジン13が出力する駆動トルクを第1MG14と出力ギヤ21とに分割して伝達するものである。遊星歯車機構20は、シングルピニオン型の遊星歯車機構を有し、エンジン13の出力軸22と同一の軸線Cnt上に配置されている。
【0024】
遊星歯車機構20は、サンギヤSと、サンギヤSと同軸に配置されたリングギヤRと、サンギヤSおよびリングギヤRに噛み合うピニオンギヤPと、ピニオンギヤPを自転および公転可能に保持するキャリヤCとを含む。エンジン13の出力軸22は、キャリヤCに連結されている。第1MG14のロータ軸23は、サンギヤSに連結されている。リングギヤRは、出力ギヤ21に連結されている。
【0025】
エンジン13の出力トルクが伝達されるキャリヤCが入力要素に、出力ギヤ21にトルクを出力するリングギヤRが出力要素に、ロータ軸23が連結されるサンギヤSが反力要素として機能する。つまり、遊星歯車機構20は、エンジン13の出力を第1MG14側と出力ギヤ21側とに分割する。第1MG14は、エンジン13の出力トルクに応じたトルクを出力するように制御される。
【0026】
カウンタシャフト25は、軸線Cntと平行に配置されている。カウンタシャフト25は、出力ギヤ21に噛み合っているドリブンギヤ26に取り付けられている。また、カウンタシャフト25には、ドライブギヤ27が取り付けられており、このドライブギヤ27が終減速機であるデファレンシャルギヤ28におけるリングギヤ29に噛み合っている。さらに、ドリブンギヤ26には、第2MG15におけるロータ軸30に取り付けられたドライブギヤ31が噛み合っている。したがって、第2MG15の出力トルクが、ドリブンギヤ26において、出力ギヤ21から出力されるトルクに加えられる。このようにして合成されたトルクは、デファレンシャルギヤ28から左右に延びたドライブシャフト32,33を介して駆動輪24に伝達される。駆動輪24にトルクが伝達されることにより、車両10に駆動力が発生する。
【0027】
<エンジンの構成について>
図2は、ターボチャージャ47を備えたエンジン13の構成の一例を示す図である。エンジン13は、たとえば、直列4気筒型の火花点火型の内燃機関である。
図2に示すようにエンジン13は、たとえば、4つの気筒40a,40b,40c,40dが一方向に並べられて形成されるエンジン本体40を含む。
【0028】
気筒40a,40b,40c,40dには、エンジン本体40に形成される吸気ポートの一方端および排気ポートの一方端がそれぞれ接続されている。吸気ポートの一方端は、気筒40a,40b,40c,40dの各々に2つずつ設けられた吸気バルブ43にて開閉され、また排気ポートの一方端は、気筒40a,40b,40c,40dの各々に2つずつ設けられた排気バルブ44にて開閉される。気筒40a,40b,40c,40dの各々の吸気ポートの他方端は、インテークマニホールド46に接続されている。気筒40a,40b,40c,40dの各々の排気ポートの他方端は、エキゾーストマニホールド52に接続されている。
【0029】
本実施の形態においてエンジン13は、たとえば、直噴エンジンであって、各気筒の頂部に設けられる燃料噴射装置(図示せず)によって燃料が気筒40a,40b,40c,40dの各々の内部に噴射される。気筒40a,40b,40c,40d内における燃料と吸気との混合気は、気筒40a,40b,40c,40dの各々に設けられた点火プラグ45にて着火される。
【0030】
なお、
図2においては、気筒40aに設けられた吸気バルブ43、排気バルブ44および点火プラグ45を示しており、他の気筒40b,40c,40dに設けられた吸気バルブ43、排気バルブ44および点火プラグ45については省略している。
【0031】
エンジン13には、排気エネルギを利用して吸入空気を過給するターボチャージャ47が設けられている。ターボチャージャ47は、コンプレッサ48と、タービン53とを含む。
【0032】
インテークマニホールド46には、吸気通路41の一方端が接続されている。吸気通路41の他方端は吸気口に接続されている。吸気通路41の所定の位置には、コンプレッサ48が設けられている。吸気通路41の他方端(吸気口)とコンプレッサ48との間には、吸気通路41内を流れる空気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ50が設けられている。コンプレッサ48よりも下流側に設けられた吸気通路41には、コンプレッサ48で加圧された吸気を冷却するためのインタークーラ51が配設されている。インタークーラ51と吸気通路41のインテークマニホールド46との間には、吸気通路41内を流れる吸気の流量を調整できる吸気絞り弁(スロットル弁)49が設けられている。
【0033】
エキゾーストマニホールド52には、排気通路42の一方端が接続されている。排気通路42の他方端はマフラー(図示せず)に接続されている。排気通路42の所定の位置には、タービン53が設けられている。また、排気通路42には、タービン53より上流の排気をタービン53よりも下流にバイパスするバイパス通路54と、バイパス通路54に設けられ、タービン53に導かれる排気の流量を調整可能なウェイストゲートバルブ55とが設けられている。そのため、ウェイストゲートバルブ55の開度を制御することによりタービン53に流入する排気流量、つまり吸入空気の過給圧が調整される。タービン53またはウェイストゲートバルブ55を通る排気は、排気通路42の所定の位置に設けられるスタート触媒コンバータ56および後処理装置57により浄化されてから大気に放出される。スタート触媒コンバータ56、たとえば、三元触媒を含む。後処理装置57は、エンジン13の排気に含まれるPMを捕集するフィルタであるGPFに、三元触媒の機能を付加したものである。PMが燃焼する再生温度範囲以上の排気を、後処理装置57の内部のGPFに流すGPF再生制御を実行することによって、GPFに堆積したPMが燃焼して二酸化炭素等の気体となることで、GPFに堆積したPMが除去される。なお、スタート触媒コンバータ56が、GPFに三元触媒の機能を付加したものとし、後処理装置57が、GPFの機能を有さず、三元触媒の機能を有するものとしてもよい。
【0034】
三元触媒は、エンジン13の排気通路を流れる排気に含まれる窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、および、未燃焼炭化水素(HC)を浄化する触媒である。三元触媒は、還元性ガス(H2、COまたは炭化水素)の存在下でNOxを窒素および酸素に還元し、酸化性ガスの存在下で一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、酸化性ガスの存在下で未燃焼炭化水素(HC)を二酸化炭素および水に酸化する。三元触媒が効率良く酸化または還元するためには、エンジン13において、燃料が完全燃焼し、かつ、酸素の余らない理論空燃比(stoichiometry)で燃焼(ストイキ燃焼)することが必要である。酸素が余るリーン状態である場合、三元触媒によるNOxの浄化には好ましくない。触媒の温度が適正温度範囲(活性温度範囲)よりも低い場合、三元触媒の効率は低下する。
【0035】
スタート触媒コンバータ56は、排気通路42の上流部分(燃焼室に近い部分)に設けられているため、エンジン13の始動後、短時間のうちに活性温度まで上昇する。また、下流側に位置している後処理装置57は、スタート触媒コンバータ56で浄化することのできなかったHC,COおよびNOxを浄化する。
【0036】
エンジン13には、吸気通路41に排気を流入させるためのEGR装置(Exhaust Gas Recirculation装置)58が設けられている。EGR装置58は、EGR通路59、EGR弁60、およびEGRクーラ61を備える。EGR通路59は、排気通路42から排気の一部をEGRガスとして取り出して吸気通路41に導く。EGR弁60は、EGR通路59を流れるEGRガスの流量を調整する。EGRクーラ61は、EGR通路59を流れるEGRガスを冷却する。EGR通路59は、スタート触媒コンバータ56と後処理装置57との間の排気通路42の部分と、コンプレッサ48とエアフローメータ50との間の吸気通路41の部分との間を接続している。
【0037】
<制御部の構成について>
図3は、制御部11の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部11は、HV(Hybrid Vehicle)-ECU(Electronic Control Unit)62と、MG-ECU63と、エンジンECU64とを備える。
【0038】
HV-ECU62は、エンジン13、第1MG14および第2MG15を協調制御するための制御装置である。MG-ECU63は、PCU81の動作を制御するための制御装置である。エンジンECU64は、エンジン13の動作を制御するための制御装置である。
【0039】
HV-ECU62、MG-ECU63およびエンジンECU64は、いずれも接続された各種センサや他のECUとの信号の授受をする入出力装置、各種の制御プログラムやマップなどの記憶に供される記憶装置(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含む)、制御プログラムを実行する中央処理装置(CPU(Central Processing Unit))、および計時するためのカウンタなどを備えて構成されている。
【0040】
HV-ECU62には、車速センサ66と、アクセル開度センサ67と、第1MG回転速度センサ68と、第2MG回転速度センサ69と、エンジン回転速度センサ70と、タービン回転速度センサ71と、過給圧センサ72と、バッテリ監視ユニット73と、第1MG温度センサ74と、第2MG温度センサ75と、第1INV温度センサ76と、第2INV温度センサ77と、触媒温度センサ78と、タービン温度センサ79とがそれぞれ接続されている。
【0041】
車速センサ66は、車両10の速度(車速)を検出する。アクセル開度センサ67は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出する。第1MG回転速度センサ68は、第1MG14の回転速度を検出する。第2MG回転速度センサ69は、第2MG15の回転速度を検出する。エンジン回転速度センサ70は、エンジン13の出力軸22の回転速度(エンジン回転速度)を検出する。タービン回転速度センサ71は、ターボチャージャ47のタービン53の回転速度を検出する。過給圧センサ72は、エンジン13の過給圧を検出する。第1MG温度センサ74は、第1MG14の内部温度、たとえば、コイルや磁石に関連する温度を検出する。第2MG温度センサ75は、第2MG15の内部温度、たとえば、コイルや磁石に関連する温度を検出する。第1INV温度センサ76は、第1インバータ16の温度、たとえば、スイッチング素子に関連する温度を検出する。第2INV温度センサ77は、第2インバータ17の温度、たとえば、スイッチング素子に関連する温度を検出する。触媒温度センサ78は、後処理装置57の温度を検出する。タービン温度センサ79は、タービン53の温度を検出する。各種センサは、検出結果を示す信号をHV-ECU62に出力する。
【0042】
バッテリ監視ユニット73は、バッテリ18の満充電容量に対する残存充電量の比率である充電率(SOC:State of Charge)を取得し、取得したSOCを示す信号をHV-ECU62に出力する。バッテリ監視ユニット73は、たとえば、バッテリ18の電流、電圧および温度を検出するセンサを含む。バッテリ監視ユニット73は、検出されたバッテリ18の電流、電圧および温度を用いてSOCを算出することによってSOCを取得する。なお、SOCの算出方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、または、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法など、種々の公知の手法を採用できる。
【0043】
<車両の走行制御について>
以上のような構成を有する車両10は、エンジン13および第2MG15を動力源としたハイブリッド(HV)走行モードやエンジン13を停止状態にするとともに第2MG15をバッテリ18に蓄積した電力で駆動して走行する電気(EV)走行モードなどの走行モードに設定または切り替えが可能である。各モードの設定や切り替えは、HV-ECU62により実行される。HV-ECU62は、設定または切り替えられた走行モードに基づいてエンジン13、第1MG14および第2MG15を制御する。
【0044】
EV走行モードは、たとえば、低車速かつ要求駆動力が小さい低負荷の運転領域の際に選択されるモードであり、エンジン13の運転を停止して第2MG15が駆動力を出力する走行モードである。
【0045】
HV走行モードは、高車速かつ要求駆動力が大きい高負荷の運転領域の際に選択されるモードであり、エンジン13の駆動トルクと第2MG15の駆動トルクとを合算したトルクを出力する走行モードである。
【0046】
HV走行モードでは、エンジン13から出力された駆動トルクを駆動輪24に伝達する際に、第1MG14により反力を遊星歯車機構20に作用させる。そのため、サンギヤSが反力要素として機能する。つまり、エンジントルクを駆動輪24に作用させるために、エンジントルクに対する反力トルクを第1MG14に出力させるように制御する。この場合には、第1MG14を発電機として機能させる回生制御を実行することができる。
【0047】
以下、車両10の運転時におけるエンジン13、第1MG14および第2MG15の協調制御について説明する。
【0048】
HV-ECU62は、アクセルペダルの踏み込み量によって決まるアクセル開度などに基づいて要求駆動力を算出する。HV-ECU62は、算出された要求駆動力と車速などに基づいて車両10の要求走行パワーを算出する。HV-ECU62は、要求走行パワーにバッテリ18の充放電要求パワーを加算した値を要求システムパワーとして算出する。
【0049】
HV-ECU62は、算出された要求システムパワーに応じてエンジン13の作動が要求されるか否かを判定する。HV-ECU62は、たとえば、要求システムパワーがしきい値を超える場合にはエンジン13の作動が要求されると判定する。HV-ECU62は、エンジン13の作動が要求される場合には、HV走行モードを走行モードとして設定する。HV-ECU62は、エンジン13の作動が要求されない場合には、EV走行モードを走行モードとして設定する。
【0050】
HV-ECU62は、エンジン13の作動が要求される場合には(すなわち、HV走行モードが設定される場合には)、エンジン13に対する要求パワー(以下、要求エンジンパワーと記載する)を算出する。HV-ECU62は、たとえば、要求システムパワーを要求エンジンパワーとして算出する。なお、HV-ECU62は、たとえば、要求システムパワーが要求エンジンパワーの上限値を超える場合には、要求エンジンパワーの上限値を要求エンジンパワーとして算出する。HV-ECU62は、算出された要求エンジンパワーをエンジン運転状態指令としてエンジンECU64に出力する。
【0051】
エンジンECU64は、HV-ECU62から入力されたエンジン運転状態指令に基づき、吸気絞り弁49、点火プラグ45、ウェイストゲートバルブ55およびEGR弁60など、エンジン13の各部に対して各種の制御を行う。
【0052】
また、HV-ECU62は、算出された要求エンジンパワーを用いてエンジン回転速度とエンジントルクとによって規定される座標系におけるエンジン13の動作点を設定する。HV-ECU62は、たとえば、当該座標系において要求エンジンパワーと等出力の等パワー線と、予め定められた動作線との交点をエンジン13の動作点として設定する。
【0053】
予め定められた動作線は、当該座標系における、エンジン回転速度の変化に対するエンジントルクの変化軌跡を示し、たとえば、燃費効率のよいエンジントルクの変化軌跡が実験等によって適合されて設定される。
【0054】
HV-ECU62は、設定された動作点に対応するエンジン回転速度を目標エンジン回転速度として設定する。
【0055】
HV-ECU62は、目標エンジン回転速度が設定されると、現在のエンジン回転速度を目標エンジン回転速度にするための第1MG14のトルク指令値を設定する。HV-ECU62は、たとえば、現在のエンジン回転速度と目標エンジン回転速度との差分に基づくフィードバック制御によって第1MG14のトルク指令値を設定する。
【0056】
HV-ECU62は、設定された第1MG14のトルク指令値からエンジントルクの駆動輪24への伝達分を算出し、要求駆動力を満足するように第2MG15のトルク指令値を設定する。HV-ECU62は、設定された第1MG14および第2MG15のトルク指令値をそれぞれ第1MGトルク指令および第2MGトルク指令としてMG-ECU63に出力する。
【0057】
MG-ECU63は、HV-ECU62から入力された第1MGトルク指令および第2MGトルク指令に基づき、第1MG14および第2MG15に発生させるトルクに対応した電流値およびその周波数を算出し、算出した電流値およびその周波数を含む信号をPCU81に出力する。
【0058】
HV-ECU62は、たとえば、アクセル開度がターボチャージャ47を始動させるしきい値を超える場合に過給圧上昇を要求してもよいし、要求エンジンパワーがしきい値を超える場合に過給圧上昇を要求してもよいし、あるいは、設定された動作点に対応するエンジントルクがしきい値を超える場合に過給圧上昇を要求してもよい。
【0059】
なお、
図3では、HV-ECU62、MG-ECU63およびエンジンECU64を分けた構成を一例として説明しているが、これらを集約した1つのECUによって構成されてもよい。
【0060】
図4は、エンジン13の動作点を説明する図である。
図4において、縦軸は、エンジン13のトルクTeを示し、横軸は、エンジン13の回転速度Neを示す。
【0061】
図4を参照して、線L1は、エンジン13が出力可能な最大トルクを示す。点線L2は、ターボチャージャ47による過給が開始されるライン(過給ライン)を示す。エンジン13のトルクTeが過給ラインL2を超えると、全開であったウェイストゲートバルブ55を閉方向に作動させる。ウェイストゲートバルブ55の開度を調整することにより、ターボチャージャ47のタービン53に流入する排気流量を調整し、コンプレッサ48を通じて吸入空気の過給圧を調整することができる。トルクTeが過給ラインL2を下回っているときは、ウェイストゲートバルブ55を全開とすることにより、ターボチャージャ47を非作動にすることができる。
【0062】
この車両10においては、エンジン13および第1MG14を制御することでエンジン13の動作点を変更することができる。また、最終的な車両駆動力は、第2MG15を制御することで調整可能であるので、車両駆動力を調整しつつ(たとえば維持しつつ)エンジン13の動作点を移動させることができる。ここで、エンジン13の動作点を移動させる手法について以下に説明する。
【0063】
図5から
図7は、エンジン13、第1MG14、および出力要素の回転速度およびトルクの関係を示す共線図である。
図5は、エンジン13の動作点を変更する前の各要素の回転速度およびトルクの関係を示す共線図である。
図6は、
図5に示す状態からエンジン13の回転速度Neを上昇させたときの各要素の回転速度およびトルクの関係を示す共線図である。
図7は、
図5に示す状態からエンジン13のトルクTeを上昇させたときの各要素の回転速度およびトルクの関係を示す共線図である。
【0064】
図5~
図7の各々において、出力要素は、カウンタシャフト25(
図1)に連結されるリングギヤRである。縦軸における位置は、各要素(エンジン13、第1MG14、および第2MG15)の回転速度を示し、縦軸の間隔は、遊星歯車機構20のギヤ比を示す。「Te」は、エンジン13のトルクを示し、「Tg」は、第1MG14のトルクを示す。「Tep」は、エンジン13の直行トルクを示し、「Tm1」は、第2MG15のトルクTmを出力要素上に換算したトルクである。TepとTm1との和は、駆動軸(カウンタシャフト25)へ出力されるトルクに相当する。上向き矢印は、正方向のトルクを示し、下向き矢印は、負方向のトルクを示し、矢印の長さは、トルクの大きさを示している。
【0065】
図5および
図6を参照して、
図6中の点線は、回転速度Neを上昇させる前の関係を示しており、
図5に示される線に相当する。エンジン13のトルクTeと第1MG14のトルクTgとの関係は、遊星歯車機構20のギヤ比によって一意に決まるので、第1MG14のトルクTgを維持しつつ第1MG14の回転速度が上昇するように第1MG14を制御することによって、駆動トルクを維持しつつエンジン13の回転速度Neを上昇させることができる。
【0066】
また、
図5および
図7を参照して、エンジン13の出力(パワー)が上昇するようにエンジン13を制御することによって、エンジン13のトルクTeを上昇させることができる。このとき、第1MG14の回転速度が上昇しないように第1MG14のトルクTgを上昇させることによって、エンジン13の回転速度Neを維持しつつエンジン13のトルクTeを上昇させることができる。なお、トルクTeが上昇することによりエンジン直行トルクTepが増加するので、トルクTm1が低下するように第2MG15を制御することによって、駆動軸のトルクを維持することができる。
【0067】
なお、エンジン13のトルクTeを上昇させると、第1MG14のトルクTgが上昇するので、第1MG14の発電電力が増加する。このとき、バッテリ18の充電が制限されていなければ、増加した発電電力をバッテリ18に充電することができる。
【0068】
一方、特に図示していないが、エンジン13の出力(パワー)が低下するようにエンジン13を制御することによって、エンジン13のトルクTeを低下させることができる。このとき、第1MG14の回転速度が低下しないように第1MG14のトルクTgを低下させることによって、エンジン13の回転速度Neを維持しつつエンジン13のトルクTeを低下させることができる。そして、この場合は、第1MG14のトルクTgが低下するので、第1MG14の発電電力が減少する。このとき、バッテリ18の放電が制限されていなければ、バッテリ18の放電を増加させることによって、第1MG14の発電低下分を補うことができる。
【0069】
再び、
図4を参照して、線L3は、エンジン13の推奨動作ラインを示す。すなわち、エンジン13は、通常、トルクTeと回転速度Neとで決まる動作点が予め設定された推奨動作ライン(線L3)上を移動するように制御される。
【0070】
図8は、エンジン13の推奨動作ラインの一例である最適燃費ラインを示す図である。
図8を参照して、線L5は、エンジン13の燃料消費が最小となるように、事前評価試験やシミュレーション等によって予め定められた動作ラインである。エンジン13の動作点が線L5上に制御されることにより、要求パワーに対するエンジン13の燃費が最適(最小)となる。点線L6は、要求パワーに対応するエンジン13の等パワーラインである。なお、
図4においては、点線L41が、等パワーラインである。エンジン13の動作点が点線L6と線L5との交点E0になるようにエンジン13を制御することによって、エンジン13の燃費が最適(最小)となる。なお、図中の閉曲線群ηは、エンジン13の等効率線を示し、中心に向かう程エンジン13の効率が高い。
【0071】
<動作点の基本算出処理の説明>
図9は、エンジン13、第1MG14、および第2MG15の動作点を決定する基本算出処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、HV-ECU62において所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0072】
図9を参照して、HV-ECU62は、アクセル開度、選択中のシフトレンジ、車速等の情報を取得する(ステップS10)。アクセル開度は、アクセル開度センサ67によって検出され、車速は、車速センサ66によって検出される。車速に代えて、駆動軸やペラ軸の回転速度を用いてもよい。
【0073】
次いで、HV-ECU62は、シフトレンジごとに予め準備された、要求駆動力とアクセル開度と車速との関係を示す駆動力マップを用いて、ステップS10において取得された情報から要求駆動力(トルク)を算出する(ステップS15)。そして、HV-ECU62は、算出された要求駆動力に車速を乗算し、所定の損失パワーを上乗せして、車両の走行パワーを算出する(ステップS20)。
【0074】
続いて、HV-ECU62は、バッテリ18の充放電要求(パワー)がある場合には、算出された走行パワーに充放電要求(充電を正値とする)を加算した値をシステムパワーとして算出する(ステップS25)。なお、充放電要求は、たとえば、バッテリ18のSOCが低い程、大きな正値とし、SOCが高い場合には、負値とすることができる。
【0075】
次いで、HV-ECU62は、算出されたシステムパワーおよび走行パワーにより、エンジン13の運転/停止を判断する(ステップS30)。たとえば、システムパワーが第1のしきい値よりも大きい場合、あるいは走行パワーが第2のしきい値よりも大きい場合に、エンジン13を運転するものと判断される。
【0076】
そして、エンジン13を運転するものと判断されると、HV-ECU62は、ステップS35以降の処理を実行する(HV走行モード)。なお、特に図示しないが、エンジン13の停止が判断されたときは(EV走行モード)、要求駆動力に基づいて第2MG15のトルクTmが算出される。
【0077】
エンジン13の運転中(HV走行モード中)、HV-ECU62は、ステップS25において算出されたシステムパワーからエンジン13のパワーPeを算出する(ステップS35)。このパワーPeは、システムパワーに対して各種補正や制限等を行なうことによって算出される。ここで算出されたエンジン13のパワーPeは、エンジン13のパワー指令としてエンジンECU64へ出力される。
【0078】
次いで、HV-ECU62は、エンジン13の回転速度Ne(目標エンジン回転速度)を算出する(ステップS40)。この実施の形態では、上述のように、エンジン13の動作点が
図4等で示した線L3(推奨動作ライン)上に乗るように回転速度Neが算出される。具体的には、エンジン13の動作点が線L3(推奨動作ライン)上となるパワーPeと回転速度Neとの関係が予めマップ等として準備され、当該マップを用いて、ステップS35で算出されたパワーPeから回転速度Neが算出される。なお、回転速度Neが決定されると、エンジン13のトルクTe(目標エンジントルク)も決定される。これにより、エンジン13の動作点が決定される。
【0079】
次に、HV-ECU62は、第1MG14のトルクTgを算出する(ステップS45)。エンジン13の回転速度Neからエンジン13のトルクTeを推定することができ、トルクTeとトルクTgとの関係は、遊星歯車機構20のギヤ比によって一意に決まるので、回転速度NeからトルクTgを算出することができる。ここで算出されたトルクTgは、第1MG14のトルク指令としてMG-ECU63へ出力される。
【0080】
さらに、HV-ECU62は、エンジン直行トルクTepを算出する(ステップS50)。エンジン直行トルクTepとトルクTe(またはトルクTg)との関係は、遊星歯車機構20のギヤ比によって一意に決まるので、算出されたトルクTeまたはトルクTgからエンジン直行トルクTepを算出することができる。
【0081】
そして、最後に、HV-ECU62は、第2MG15のトルクTmを算出する(ステップS50)。トルクTmは、ステップS15において算出された要求駆動力(トルク)を実現できるように決定され、出力軸上に換算された要求駆動力からエンジン直行トルクTepを差し引くことによって算出することができる。ここで算出されたトルクTmは、第2MG15のトルク指令としてMG-ECU63へ出力される。
【0082】
以上のようにして、エンジン13の動作点、ならびに第1MG14および第2MG15の動作点が算出される。
【0083】
<排気温度の制御について>
この開示の車両10においては、ターボチャージャ47による過給のために排気エネルギが用いられるため、排気温度が低くなる傾向にある。これにより、エンジン13の排気に含まれるPMを捕集するGPFを含む後処理装置57へ流入する排気の温度が下がるため、高温の排気によるGPFの再生ができない。これにより、GPFの機能が低下してしまう虞がある。
【0084】
そこで、この開示に係るHV-ECU62は、GPFに堆積したPMを燃焼させる再生制御を実行する場合、GPFの温度が再生制御を実行可能な再生温度範囲となるように、エンジン13の回転速度と発生トルクとの関係を示すマップ上の動作点を発生トルクが低い側に動かすようエンジン13および第1MG14を制御する。これにより、GPFの温度が再生温度範囲となるようにすることができる。その結果、GPFの機能の低下を抑制できる。
【0085】
以下、この実施の形態での制御について説明する。
図10は、この実施の形態のGPF温度関連処理の流れを示すフローチャートである。このGPF温度関連処理は、HV-ECU62のCPUによって、上位の処理から所定の制御周期ごとに呼出されて実行される。
【0086】
図10を参照して、HV-ECU62は、後述するGPF再生制御を実行中であるか否かを判断する(ステップS111)。GPF再生制御の実行中でない(ステップS111でNO)と判断した場合、HV-ECU62は、前回のGPFの再生からの走行距離を取得する(ステップS112)。前回のGPFの再生からの走行距離は、HV-ECU62によって積算される。
【0087】
そして、HV-ECU62は、GPFの再生の開始条件が成立したか否かを判断する(ステップS113)。GPFの再生の開始条件は、たとえば、ステップS112で取得された、前回のGPFの再生からの走行距離が所定距離に達したとの条件である。
【0088】
しかし、GPFの再生の開始条件は、これに限定されず、GPFへのPMの堆積が相当程度、進んでいると判断するための条件であればよく、たとえば、前回のGPFの再生からのエンジン13の運転時間であってもよい。PMが発生し易い温度でのエンジン13の運転時間または走行距離であってもよい。後処理装置57の入口と出口との差圧を計測するためのセンサを備え、差圧がGPFに所定量以上のPMが堆積したと判断できる所定値以上となったとの条件であってもよい。後処理装置57の入口側と出口とに温度センサを備え、GPFに堆積したPMの燃焼による加温による、入口側の温度と出口の温度との差が所定値以上であるとの条件であってもよい。
【0089】
また、GPFの再生の開始条件は、GPFへのPMの堆積が相当程度、進んでいるか否かに関わらず、車両10の毎回の走行中のいずれかのタイミングであるという条件であってもよい。この場合は、後述のGPF再生制御の終了条件におけるGPF再生制御を開始してからの時間は、GPFへのPMの堆積が相当程度、進んだときの終了条件における時間と比較して、大幅に短い時間とすることができる。
【0090】
触媒の回復の開始条件が成立していない(ステップS113でNO)と判断した場合、HV-ECU62は、実行する処理をこのGPF温度関連処理の呼出元の上位の処理に戻す。
図11は、GPF再生制御による動作点の動きを説明するための図である。GPFの再生の開始条件が成立した(ステップS113でYES)と判断した場合、
図11で示すように、推奨動作ラインL3上の動作点を等出力ラインL6上で後処理装置57内のGPFの温度が所定温度高い動作点に変更するGPF再生制御の実行を開始する(ステップS114)。その後、HV-ECU62は、実行する処理をこのGPF温度関連処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0091】
図11を参照して、たとえば、動作ラインL3上を動作点が移動するように制御している場合に、動作ラインL3上の黒丸で示す動作点E1を等出力ラインL6上で触媒の温度が所定温度高い星印で示す動作点E2に変更するGPF再生制御の実行を開始する。なお、等出力ラインL6と異なるエンジン13の出力に対応する等出力ラインは、図示していないが、等出力ラインL6と並行して存在する。
【0092】
等触媒温度ラインL7より右側の後処理装置57の温度は、等触媒温度ラインL7上の後処理装置57の温度より高く、等触媒温度ラインL7より左側の後処理装置57の温度は、等触媒温度ラインL7上の後処理装置57の温度より低い。なお、等触媒温度ラインL7と異なる後処理装置57の温度に対応する等触媒温度ラインは、図示していないが、等触媒温度ラインL7と並行して存在する。
【0093】
過給ラインL2より発生トルクTeが高い過給域では、低いNA域と比較して、エンジン13の出力が同じであれば、過給のために排気エネルギが奪われるため、GPFを含む後処理装置57の温度が低くなる。
【0094】
動作ラインL3上の動作点で示される回転速度Neおよび発生トルクTeを上昇させる制御を実行している場合には、移動される動作点E1に対応する動作点E2に連続的に変更されることによって動作ラインL5上を動作点が移動することとなる。
【0095】
また、動作ラインL3上の動作点E1を保持してエンジン13を運転している場合には、動作点E1に対応する動作ラインL5上の動作点E2に、動作点が変更されてエンジン13が運転されることとなる。
【0096】
図10に戻って、GPF再生制御を実行中である(ステップS111でYES)と判断した場合、HV-ECU62は、GPF再生制御の終了条件が成立したか否かを判断する(ステップS115)。GPF再生制御の終了条件は、たとえば、GPF再生制御の開始から所定時間が経過したとの条件である。しかし、GPF再生制御の終了条件は、これに限定されず、GPFに堆積したPMが相当程度、除去されたと判断するための条件であればよく、たとえば、GPF再生制御の開始から後処理装置57の温度がGPFの再生に適した温度となっている積算時間が所定時間に達したとの条件であってもよいし、GPF再生制御の開始からの走行距離が所定距離に達したとの条件であってもよい。GPF再生制御の終了条件が成立した(ステップS115でYES)と判断した場合、HV-ECU62は、GPF再生制御を終了し、動作点を推奨動作ラインL3上に戻すよう制御する(ステップS116)。
【0097】
GPF再生制御の終了条件が成立していない(ステップS115でNO)と判断した場合、および、ステップS116の後、HV-ECU62は、実行する処理をこのGPF温度関連処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0098】
<変形例>
(1) 前述した実施の形態においては、触媒が三元触媒であることとした。しかし、これに限定されず、触媒は、三元触媒と異なる種類の触媒であってもよい。
【0099】
(2) 前述した実施の形態においては、
図2で示したように、過給機は、排気のエネルギで駆動する、いわゆるターボチャージャ47であることとした。しかし、これに限定されず、過給機は、エンジンの回転または電動機によって駆動する機械式の過給機であってもよい。また、過給機を備えていなくてもよい。
【0100】
(3) 前述した実施の形態においては、
図11で示したように、発生トルクTeの低い領域において、回転速度を特に制限しないようにした。しかし、これに限定されず、GPF再生制御を実行するときに、動作点で示されるエンジン13の回転速度が所定値未満となるように制御してもよい。なお、所定値は、回転速度が当該所定値以上となると、車両10に乗っている人が騒音や振動を不快と感じる平均的な回転速度の値である。これにより、GPFの温度が再生温度範囲となるように制御する場合であっても、エンジン13から発生する騒音および振動を抑制することができる。
【0101】
(4) 前述した実施の形態においては、
図10のステップS114で示したように、等出力ライン上で動作点を変更するようにした。しかし、排気温度が異なる動作点に変更するものであれば、これに限定されず、等出力ラインを多少ずれた動作点に変更してもよい。
【0102】
(5) 前述した実施の形態を、車両10などのハイブリッド車両の開示と捉えることができる。また、前述した実施の形態を、HV-ECU62などのハイブリッド車両の制御装置の開示と捉えることができる。また、前述した実施の形態を、制御装置が
図10で示したGPF温度関連処理を実行する制御方法の開示と捉えることができる。また、前述した実施の形態を、制御装置によって実行される
図10で示したGPF温度関連処理のプログラムの開示と捉えることができる。
【0103】
<効果>
(1)
図1から
図3で示したように、車両10は、エンジン13と、第1MG14と、エンジン13と第1MG14とカウンタシャフト25とが接続される遊星歯車機構20と、エンジン13の排気に含まれるPMを捕集する後処理装置57内のGPFと、エンジン13および第1MG14を制御するように構成されたHV-ECU62とを備える。
図10および
図11で示したように、HV-ECU62は、GPFに堆積したPMを燃焼させる再生制御を実行する場合、GPFの温度が再生制御を実行可能な再生温度範囲となるように、エンジン13の回転速度と発生トルクとの関係を示す
図4で示したマップ上の動作点を発生トルクが低い側に動かすようエンジン13および第1MG14を制御する。
【0104】
これにより、GPFの温度が再生温度範囲となるようにすることができる。その結果、後処理装置57のGPFの機能の低下を抑制できる。
【0105】
(2)
図10および
図11で示したように、HV-ECU62は、動作点を動かすときに、等出力ライン上を移動させる。これにより、動作点を動かす場合であっても、エンジン13の出力を一定とすることができる。その結果、駆動力を一定に保ちつつ、バッテリ18の充放電量を大きく増減させずに走行を継続できる。
【0106】
(3)
図2で示したように、エンジン13は、エンジン13からの排気のエネルギを利用してエンジン13への吸気を過給するターボチャージャ47を含む。
図4で示したように、マップ上で定められる過給ラインL2は、マップ上の動作点で示されるエンジン13の発生トルクが当該過給ラインL2を上回っている状態であるときに、ターボチャージャ47により吸気を過給するラインである。
図10および
図11で示したように、HV-ECU62は、マップ上の動作点で示されるエンジン13の発生トルクが過給ラインL2を上回っている状態であるときに、下回っている状態となるように動作点を動かす。
【0107】
これにより、動作点を動かさない場合と比較して、GPFの温度が再生温度範囲以上となる時間を長くすることができる。その結果、GPFがPMを捕集する能力を復元することができる。なお、動作点を過給ラインL2を下回っている状態とすることによって、動作点がNA域に入るため、過給域と比較して、空燃比が低いリーン雰囲気でエンジン13を動作させることができるため、排気中のPMを抑制できる。
【0108】
今回開示された各実施の形態は、適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
10 車両、11 制御部、13 エンジン、14 第1MG、15 第2MG、16 第1インバータ、17 第2インバータ、18 バッテリ、20 遊星歯車機構、21 出力ギヤ、22 出力軸、23,30 ロータ軸、24 駆動輪、25 カウンタシャフト、26 ドリブンギヤ、27,31 ドライブギヤ、28 デファレンシャルギヤ、29 リングギヤ、32,33 ドライブシャフト、40 エンジン本体、40a,40b,40c,40d 気筒、41 吸気通路、42 排気通路、43 吸気バルブ、44 排気バルブ、45 点火プラグ、46 インテークマニホールド、47 ターボチャージャ、48 コンプレッサ、49 吸気絞り弁、50 エアフローメータ、51 インタークーラ、52 エキゾーストマニホールド、53 タービン、54 バイパス通路、55 ウェイストゲートバルブ、56 スタート触媒コンバータ、57 後処理装置、58 EGR装置、59 EGR通路、60 EGR弁、61 EGRクーラ、62 HV-ECU、63 MG-ECU、64 エンジンECU、66 車速センサ、67 アクセル開度センサ、68 第1MG回転速度センサ、69 第2MG回転速度センサ、70 エンジン回転速度センサ、71 タービン回転速度センサ、72 過給圧センサ、73 バッテリ監視ユニット、74 第1MG温度センサ、75 第2MG温度センサ、76 第1INV温度センサ、77 第2INV温度センサ、78 触媒温度センサ、79 タービン温度センサ、81 PCU、83 コンバータ。