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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】点火制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/00 20060101AFI20221220BHJP
   F02P 15/10 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F02P3/00 B
F02P15/10 301D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019073861
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172865
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 将嗣
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206354(JP,A)
【文献】特表2011-501022(JP,A)
【文献】特開2018-178997(JP,A)
【文献】特開2019-203489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 3/00、 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイル(21)を流れる一次電流(I1)の増減により、点火プラグ(P)に接続される二次コイル(22)に放電エネルギを発生させる点火コイル(2)と、
上記一次コイルへの通電を制御して、上記点火プラグに火花放電を生起する主点火動作を行う主点火回路部(3)と、
上記主点火動作により上記二次コイルを流れる二次電流(I2)に対して、同極性の電流を重畳させるエネルギ投入動作を行うエネルギ投入回路部(4)と、を備える点火制御装置(1)であって、
上記主点火動作を制御する主点火信号(IGT)と、上記エネルギ投入動作を制御するエネルギ投入信号(IGW)と、目標二次電流指令信号(IGA)とが統合された信号である点火制御信号(IG)を受信し、受信した上記点火制御信号に含まれる信号を分離する信号分離回路部(5)を備えており、
上記点火制御信号は、パルス状の第1信号(IG1)及び第2信号(IG2)からなり、かつ、上記主点火動作に先立って送信が開始される信号であり、
上記信号分離回路部は、上記点火制御信号の信号レベルが最初に第1レベル(L)から第2レベル(H)へ変化した上記第1信号の検出開始時点を起点として待機時間(twait)が経過し、かつ、上記点火制御信号の信号レベルが上記第2レベルであるときに、その時点を上記主点火信号の開始とし、その時点以降に上記点火制御信号の信号レベルが上記第1レベルとなった上記第2信号の検出終了時点を上記主点火信号の終了として、上記主点火信号を生成する主点火信号生成回路(52)を有し、
上記主点火回路部は、上記主点火信号の開始で上記一次コイルへ通電し、上記主点火信号の終了で上記一次コイルへの通電を遮断する、点火制御装置。
【請求項2】
上記信号分離回路部は、上記点火制御信号を波形整形して、上記第1信号及び上記第2信号を含む矩形波信号(1a)として出力する波形整形回路(51)を有し、
上記矩形波信号は、上記主点火信号生成回路に入力されると共に、上記主点火信号生成回路へリセット信号(RES)を出力するリセット信号生成回路(55)に入力され、上記リセット信号生成回路は、上記矩形波信号が2回目に上記第2レベルから第1レベルへ変化した時点から所定期間経過後に、上記主点火信号生成回路を初期状態にリセットする、請求項1に記載の点火制御装置。
【請求項3】
上記主点火信号生成回路は、上記矩形波信号の信号レベルに基づいて、上記第1レベルから上記第2レベルへの変化により上記第1信号の検出を開始した時点からの経過時間を検出し、上記待機時間に到達したときに信号(2b)を出力する、待機時間生成回路(521)を有する、請求項2に記載の点火制御装置。
【請求項4】
上記信号分離回路部は、上記第1信号及び上記第2信号のパルス波形情報に基づいて、上記エネルギ投入信号を生成し、上記第1信号のパルス波形情報に基づいて、上記目標二次電流指令信号を生成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の点火制御装置。
【請求項5】
上記信号分離回路部は、上記第1信号及び上記第2信号の検出間隔(tIGW_IN)に基づいて、上記エネルギ投入信号を生成するエネルギ投入信号生成回路(53)と、上記第1信号の検出期間(tIGA_IN)に基づいて、上記目標二次電流指令信号を生成する目標二次電流指令信号生成回路(54)を有する、請求項4に記載の点火制御装置。
【請求項6】
上記信号分離回路部にて上記エネルギ投入信号が生成されたときには、上記一次コイルへの通電遮断後に、上記エネルギ投入信号に対応するエネルギ投入期間(tIGW)よりも長いリセット期間(treswait)を設定し、上記エネルギ投入信号が生成されないときには、上記リセット期間を設定しない、請求項4又は5に記載の点火制御装置。
【請求項7】
上記一次コイルは、主一次コイル(21a)及び副一次コイル(21b)を有しており、上記エネルギ投入回路部は、上記副一次コイルへの通電を制御することにより、上記エネルギ投入動作を制御する、請求項1~6のいずれか1項に記載の点火制御装置。
【請求項8】
上記目標二次電流指令信号に基づいて、上記二次電流をフィードバック制御するフィードバック制御部(6)を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の点火制御装置。
【請求項9】
対応する気筒へ上記主点火動作の開始よりも上記待機時間の分だけ早いタイミングで、上記点火制御信号を生成して送信する点火制御信号送信部(100)を、さらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の点火制御装置。
【請求項10】
上記点火プラグは内燃機関用であり、上記待機時間は内燃機関の運転条件に応じて可変設定される、請求項1~9のいずれか1項に記載の点火制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内燃機関等の点火を制御する点火制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火式の車両エンジンにおける点火制御装置は、気筒ごとに設けられる点火プラグに、一次コイルと二次コイルを有する点火コイルを接続した点火装置を備え、一次コイルへの通電遮断時に二次コイルに発生する高電圧を印加して、火花放電を発生させている。また、火花放電による混合気への着火性を高めるために、火花放電の開始後に、放電エネルギを投入する手段を設けている。
【0003】
その際に、1つの点火コイルによる点火動作を繰り返す複数回点火を行うことも可能であるが、より安定した点火制御を行うために、主点火動作によって発生した火花放電中に、放電エネルギを追加して、二次電流を重畳的に増加させるようにしたものがある。例えば、特許文献1には、1気筒毎に2系統のエネルギ供給手段が設けられており、一方の系統のエネルギ供給手段にて主点火を開始した後に、他方の系統のエネルギ供給手段を動作させて、二次コイルに同一方向の二次電流を継続して流すことで、火花放電を継続させるように構成された点火装置が提案されている。
【0004】
特許文献1に開示される点火装置は、主点火回路とエネルギ投入回路の2系統のエネルギ供給手段を有すると共に、その一方の系統に共通の信号線を設けることで、制御側の出力端子の不足等を抑制している。共通の信号線は、一方の端部が、制御側の出力端子に接続されると共に、他方の端部が途中で分岐して、分岐した各信号線が、気筒毎に設けられるエネルギ投入回路とそれぞれ接続される。このようにすると、一本の信号線の追加で、複数気筒のエネルギ投入を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-210965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、共通の信号線を途中で分岐させるための分岐コネクタや分岐線が気筒毎に設けられる。そのため、気筒数が増えるほど配線が複雑となり、分岐部の信頼性を確保するために分岐部分が大型となって、体格が大きくなりやすい。また、少なくとも主点火用とエネルギ投入用の複数の信号が送信されることから、例えば、点火動作中に信号が入力されることでノイズ等が生じるおそれがあり、その影響を避けるためにノイズフィルタ等の対策が必要となる場合がある。
【0007】
そのため、装置間を接続する信号線をさらに統合して、コネクタ端子や接続ポートの数を低減し、また、点火動作が信号の送信等に影響されるのを抑制して、ノイズフィルタ等の追加を不要とし、システム構成を簡易にすることが望まれている。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、主点火動作とエネルギ投入動作を実施するための信号を、より少ない信号線を用いて送受信可能とし、小型で高性能な点火制御装置を提供しようとするものである
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
一次コイル(21)を流れる一次電流(I1)の増減により、点火プラグ(P)に接続される二次コイル(22)に放電エネルギを発生させる点火コイル(2)と、
上記一次コイルへの通電を制御して、上記点火プラグに火花放電を生起する主点火動作を行う主点火回路部(3)と、
上記主点火動作により上記二次コイルを流れる二次電流(I2)に対して、同極性の電流を重畳させるエネルギ投入動作を行うエネルギ投入回路部(4)と、を備える点火制御装置(1)であって、
上記主点火動作を制御する主点火信号(IGT)と、上記エネルギ投入動作を制御するエネルギ投入信号(IGW)と、目標二次電流指令信号(IGA)とが統合された信号である点火制御信号(IG)を受信し、受信した上記点火制御信号に含まれる信号を分離する信号分離回路部(5)を備えており、
上記点火制御信号は、パルス状の第1信号(IG1)及び第2信号(IG2)からなり、かつ、上記主点火動作に先立って送信が開始される信号であり
上記信号分離回路部は、上記点火制御信号の信号レベルが最初に第1レベル(L)から第2レベル(H)へ変化した上記第1信号の検出開始時点を起点として待機時間(twait)が経過し、かつ、上記点火制御信号の信号レベルが上記第2レベルであるときに、その時点を上記主点火信号の開始とし、その時点以降に上記点火制御信号の信号レベルが上記第1レベルとなった上記第2信号の検出終了時点を上記主点火信号の終了として、上記主点火信号を生成する主点火信号生成回路(52)を有し、
上記主点火回路部は、上記主点火信号の開始で上記一次コイルへ通電し、上記主点火信号の終了で上記一次コイルへの通電を遮断する、点火制御装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上記点火制御装置において、信号分離回路部にて受信される点火制御信号は、主点火信号、エネルギ投入信号及び目標二次電流指令信号の3つの信号の情報を含み、その信号波形に基づいて、各信号に分離することができる。例えば、主点火信号は、信号レベルが最初に第1レベルから第2レベルへ変化してから所定の待機時間が経過したときに、信号レベルが第2レベルにあることを開始条件とし、それ以降に第1レベルになることを終了条件として、生成される。主点火回路部は、生成された主点火信号に基づいて、一次コイルへの通電動作を行い、主点火動作を実施する。主点火動作に続いてエネルギ投入動作を行う場合には、信号分離回路部にてエネルギ投入信号及び目標二次電流指令信号がさらに分離生成される。
【0010】
このように、主点火及びエネルギ投入のための複数の信号を、1つの点火制御信号にまとめて、1つの信号線で送信できるので、気筒毎に複数の信号線を設けたり、共通の信号線から分岐させたりする必要がない。また、主点火動作の開始前にエネルギ投入動作のための信号が送信可能となるので、主点火のための通電動作がノイズの影響を受けにくくなる。したがって、配線数やコネクタ数、接続ポート数を削減してシステム構成の複雑化や大型化を抑制しながら、効率よい点火制御が可能になる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、主点火動作とエネルギ投入動作を実施するための信号を、より少ない信号線を用いて送受信可能とし、小型で高性能な点火制御装置を提供しようとすることができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1における、点火制御装置の回路構成図。
図2】実施形態1における、点火制御装置において受信される点火制御信号の波形図。
図3】実施形態1における、点火制御装置の点火装置を構成する信号分離回路部の回路構成図。
図4】実施形態1における、点火制御信号と主点火用及びエネルギ投入用ゲート信号との関係を示すタイムチャート図。
図5】実施形態1における、点火制御装置において生成される各種信号に基づく主点火動作及びエネルギ投入動作の推移を示すタイムチャート図。
図6】実施形態1における、点火装置を構成する波形整形回路の回路構成図。
図7】実施形態1における、点火制御信号と波形整形回路において生成される各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図8】実施形態1における、点火装置を構成するIGT生成回路の回路構成図。
図9】実施形態1における、点火制御信号とIGT生成回路において生成される各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図10】実施形態1における、点火装置を構成するIGW生成回路の回路構成図。
図11】実施形態1における、点火制御信号とIGW生成回路において生成される各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図12】実施形態1における、点火装置を構成するIGA生成回路にて生成される信号とエネルギ投入動作との関係を示すタイムチャート図。
図13】実施形態1における、波形整形回路を構成するリセット回路の回路構成図。
図14】実施形態1における、リセット回路において生成されるリセット信号と各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図15】実施形態2における、点火制御信号と信号分離回路部において生成される各種信号との関係と、主点火動作及びエネルギ投入動作の推移を示すタイムチャート図。
図16】実施形態3における、点火制御信号と信号分離回路部において生成される各種信号及び待機時間との関係を示すタイムチャート図。
図17】実施形態4における、点火制御信号と信号分離回路部において生成される各種信号との関係を、エンジン運転条件により待機時間を可変として比較したタイムチャート図。
図18】実施形態4における、エンジン運転条件と信号分離回路部において設定される待機時間との関係を示す図。
図19】実施形態5における、点火制御装置によって実施される主点火動作及びエネルギ投入動作の手順を示すフローチャート図。
図20】実施形態5における、図19に基づく主点火動作及びエネルギ投入動作の手順を、実施形態1~3について比較して示すフローチャート図。
図21】実施形態5における、点火制御装置にて実施される主点火動作及びエネルギ投入動作の例を、実施形態1について示すタイムチャート図。
図22】実施形態6における、点火装置を構成するIGT生成回路の回路構成図。
図23】実施形態6における、点火制御信号とIGT生成回路において生成される各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図24】実施形態6における、点火装置を構成するIGT生成回路の回路構成図。
図25】実施形態6における、点火制御信号とIGT生成回路において生成される各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図26】実施形態6における、点火装置を構成するIGW生成回路の回路構成図。
図27】実施形態6における、点火制御信号とIGW生成回路において生成される各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図28】実施形態6における、点火装置を構成するIGA生成回路にて生成される信号と各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図29】実施形態6における、点火装置を構成するIGA生成回路にて生成される信号と各種信号との関係を示すタイムチャート図。
図30】実施形態7における、点火制御装置の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
点火制御装置に係る実施形態1について、図1図14を参照して説明する。
図1において、点火制御装置1は、例えば、車載用の火花点火式エンジン等の内燃機関に適用されて、気筒毎に設けられる点火プラグPの点火を制御する。点火制御装置1は、点火コイル2と、主点火回路部3と、エネルギ投入回路部4と、信号分離回路部5とが設けられる点火装置10を備えると共に、点火装置10へ点火指令を与える点火制御信号送信部としてのエンジン用電子制御装置(以下、エンジンECU;Electronic Control Unitと略称する)100を備えている。
【0014】
点火コイル2は、一次コイル21を流れる一次電流I1の増減により、点火プラグPに接続される二次コイル22に放電エネルギを発生させる。主点火回路部3は、点火コイル2の一次コイル21への通電を制御して、点火プラグPに火花放電を生起する主点火動作を行う。エネルギ投入回路部4は、主点火動作により二次コイル22を流れる二次電流I2に対して、同極性の電流を重畳させるエネルギ投入動作を行う。
【0015】
一次コイル21は、例えば、主一次コイル21a及び副一次コイル21bを有しており、エネルギ投入回路部4は、副一次コイル21bへの通電を制御することにより、エネルギ投入動作を制御することができる。
【0016】
信号分離回路部5は、エンジンECU100から送信される点火制御信号IGを受信し、点火制御信号IGに含まれる信号を分離する。点火制御信号IGは、主点火動作を制御する主点火信号IGTと、エネルギ投入動作を制御するエネルギ投入信号IGWと、目標二次電流指令信号IGAとが統合された信号であり、例えば、パルス状の1つの信号、又は、2つの信号の組み合わせとして、受信される。点火制御信号IGは、信号分離回路部5において各信号に再び分離され、例えば、主点火信号IGTが分離生成されることで、主点火動作を実施可能となる。
【0017】
このとき、信号分離回路部5は、点火制御信号IGの信号レベルに基づいて、主点火信号IGTを生成する。具体的には、図2に示すように、信号レベルが最初に第1レベル(例えば、Lレベル)から第2レベル(例えば、Hレベル)へ変化した時点を起点として待機時間twaitが経過し、かつ、点火制御信号IGの信号レベルが第2レベル(例えば、Hレベル)であるときに、その時点を主点火信号IGTの開始とし、その時点以降に点火制御信号IGの信号レベルが第1レベル(例えば、Lレベル)となったときに、その時点を主点火信号IGTの終了とする。
待機時間twaitは、点火制御信号IGから主点火信号IGTを生成するために予め設定される時間であり、後述するように、点火制御信号IGの信号レベルの切り替わり(例えば、立ち上がり)から主点火信号IGTの信号レベルの切り替わり(例えば、立ち上がり)までの期間に相当する。
【0018】
これに伴い、主点火回路部3において、主点火信号IGTの開始で一次コイル21へ通電し、主点火信号IGTの終了で一次コイル21への通電を遮断する主点火動作が実施される。なお、点火制御信号IGの信号レベルは、HレベルとLレベルの2つの電圧レベルで表され、予め設定された閾値電圧に達するかそれよりも高いときにHレベルとなり、閾値電圧に満たないときはLレベルとなる。本形態では、以下、第1レベルがLレベルに対応し、第2レベルがHレベルに対応するものとして説明する。
【0019】
本形態において、点火制御信号IGは、パルス状の第1信号IG1及び第2信号IG2からなる信号として生成される。エンジンECU100は、1燃焼サイクル(例えば、720°CA)毎に、これら2つの信号IG1、IG2を組み合わせた点火制御信号IGを生成して、主点火動作に先立ち信号分離回路部5に送信する。
【0020】
なお、点火制御信号IGの第1信号IG1と第2信号IG2との識別は、例えば、点火制御装置1の動作が開始された後、エンジンECU100から点火装置10に入力される初回の入力信号を、第1信号IG1とし、次回の入力信号を、第2信号IG2とする。それ以降の入力信号についても、同様の動作を繰り返すことで、入力信号の識別が可能になる。
【0021】
その場合、図3に示すように、信号分離回路部5は、点火制御信号IGを受信し、受信した点火制御信号IGから、点火制御信号IGに含まれる3つの信号をそれぞれ分離する回路を有する。
具体的には、図4に示すように、第1信号IG1の検出開始時点(すなわち、立ち上がり)から待機時間twaitが経過し、かつ、第2信号IG2の信号レベルが第2レベル(すなわち、Hレベル)であるときに、その時点を主点火信号IGTの開始とし、第2信号IG2の検出終了時点(すなわち、立ち下がり)を、主点火信号IGTの終了として、主点火信号IGTを生成する、主点火信号生成回路(以下、IGT生成回路と称する)52を有する。IGT生成回路52は、待機時間twaitを生成する回路を備えることができる。
【0022】
また、信号分離回路部5は、第1信号IG1及び第2信号IG2のパルス波形情報に基づいてエネルギ投入信号IGWを生成し、第1信号IG1のパルス波形情報に基づいて、目標二次電流指令信号IGAを生成することができる。パルス波形情報とは、1つ以上のパルスの立ち上がり又は立ち下がりに基づいて定まる期間や間隔等の情報であり、パルスの立ち上がりや立ち下がりの期間、複数のパルスの立ち上がりや立ち下がりの間隔等を含む。
【0023】
本形態では、例えば、第1信号IG1及び第2信号IG2との検出間隔としての立ち上がり間隔tIGW_INに基づいて、エネルギ投入信号IGWを生成する、エネルギ投入信号生成回路(以下、IGW生成回路と称する)53を有する。また、第1信号IG1の検出期間としての立ち上がり期間tIGA_INに基づいて、目標二次電流指令信号IGAを生成する、目標二次電流指令信号生成回路(以下、IGA生成回路と称する)54を設けることができる。
【0024】
点火制御装置1は、主点火信号IGTに基づいて、主点火回路部3を作動させ、主点火動作を実施する。また、主点火後に、エネルギ投入信号IGWに基づいて、エネルギ投入回路部4を作動させ、エネルギ投入動作を実施して、火花放電を継続させる。この継続放電において投入されるエネルギは、目標二次電流指令信号IGAによって指示される。点火制御装置1は、さらに、二次電流I2をフィードバック制御するフィードバック制御部6を備えており、目標二次電流指令信号IGAに基づいて、点火コイル2の二次コイル22を流れる二次電流I2が目標二次電流値I2tgtとなるようにフィードバック制御する。
【0025】
以下、点火制御装置1の各部構成について、詳細に説明する。
本形態の点火制御装置1が適用されるエンジンは、例えば、4気筒エンジンであり、各気筒に対応して点火プラグP(例えば、図1中には、P#1~P#4として示す)が設けられると共に、点火プラグPのそれぞれに対応して点火装置10が設けられる。各点火装置10には、エンジンECU100から、点火制御信号IGがそれぞれ送信される。
【0026】
点火プラグPは、対向する中心電極P1と接地電極P2とを備える公知の構成であり、両電極の先端間に形成される空間を、火花ギャップGとしている。点火プラグPには、点火制御信号IGに基づいて点火コイル2にて発生する放電エネルギが供給されて、火花ギャップGに火花放電が生起し、図示しないエンジン燃焼室内の混合気への着火が可能となる。点火コイル2への通電は、点火制御信号IGに含まれる主点火信号IGT、エネルギ投入信号IGW及び目標二次電流指令信号IGAに基づいて制御される。
【0027】
点火コイル2は、一次コイル21となる主一次コイル21a又は副一次コイル21bと、二次コイル22とが、互いに磁気結合されて、公知の昇圧トランスを構成している。二次コイル22の一端は、点火プラグPの中心電極P1に接続されており、他端は、第1ダイオード221及び二次電流検出抵抗R1を介して接地されている。第1ダイオード221は、アノード端子が二次コイル22に接続しカソード端子が二次電流検出抵抗R1に接続するように配置されて、二次コイル22を流れる二次電流I2の方向を規制している。二次電流検出抵抗R1は、詳細を後述する二次電流フィードバック回路(例えば、図1中にI2F/Bとして示す)61と共に、フィードバック制御部6を構成している。
【0028】
主一次コイル21aと副一次コイル21bとは直列に接続されると共に、車両バッテリ等の直流電源Bに対して並列に接続される。具体的には、主一次コイル21aの一端と副一次コイル21bの一端との間に中間タップ23が設けられており、中間タップ23には、直流電源Bに至る電源線L1が接続されている。主一次コイル21aの他端は、主点火用のスイッチング素子(以下、主点火スイッチと略称する)SW1を介して接地され、副一次コイル21bの他端は、放電継続用のスイッチング素子(以下、放電継続スイッチと略称する)SW2を介して接地されている。
これにより、主点火スイッチSW1又は放電継続スイッチSW2のオン駆動時に、一次コイル21a又は副一次コイル21bへバッテリ電圧を印加可能となっている。主点火スイッチSW1は、主点火回路部3を構成し、放電継続スイッチSW2は、エネルギ投入回路部4を構成している。
【0029】
点火コイル2は、一次コイル21及び二次コイル22を、例えば、コア24の周りに配置される一次コイル用ボビン及び二次コイル用ボビンに巻回することにより、一体的に構成される。このとき、一次コイル21である主一次コイル21a又は副一次コイル21bの巻数と二次コイル22の巻数との比である巻数比を十分大きくすることで、巻数比に応じた所定の高電圧を、二次コイル22に発生させることができる。主一次コイル21aと副一次コイル21bとは、直流電源Bからの通電時に生じる磁束の向きが逆方向になるように巻回され、副一次コイル21bの巻数は、主一次コイル21aの巻数よりも少なく設定される。
これにより、主一次コイル21aへの通電の遮断で発生した電圧によって点火プラグPの火花ギャップGに放電が発生した後に、副一次コイル21bへの通電により同じ向きの重畳磁束を生じさせて、重畳的に放電エネルギを増加させることができる。
【0030】
主点火回路部3は、主点火スイッチSW1と、主点火スイッチSW1をオンオフ駆動する主点火動作用のスイッチ駆動回路(以下、主点火用駆動回路と称する)31と、を備えて構成される。主点火スイッチSW1は、電圧駆動型のスイッチング素子、例えば、IGBT(すなわち、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であり、ゲート端子に入力するゲート信号IGBT_gateに応じて、ゲート電位が制御されることにより、コレクタ端子とエミッタ端子の間が導通又は遮断される。主点火スイッチSW1のコレクタ端子は、主一次コイル21aの他端に接続され、エミッタ端子は接地されている。
【0031】
主点火用駆動回路31の入力端子には、信号分離回路部5から出力される主点火信号IGTが、出力信号線L2を介して入力されている。主点火用駆動回路31は、主点火信号IGTに応じて主点火スイッチSW1を駆動するようになっている。
主点火用駆動回路31は(例えば、図4参照)、主点火信号IGTに対応させたゲート信号IGBT_gateを生成し、所定のタイミングで、主点火スイッチSW1をオン駆動又はオフ駆動する。
【0032】
具体的には(例えば、図5参照)、主点火信号IGTの立ち上がりで主点火スイッチSW1をオンすると、主一次コイル21aへの通電が開始され、一次電流I1が流れる。次いで、主点火信号IGTの立ち下がりで主点火スイッチSW1をオフすると、主一次コイル21aへの通電が遮断され、相互誘導作用により二次コイル22に高電圧が発生する。この高電圧が、点火プラグPの火花ギャップGに印加されて、火花放電が発生し、二次電流I2が流れる。
なお、主点火信号IGTの立ち上がり期間tIGT(すなわち、立ち上がりから立ち下がりまでの期間)は、例えば、一次コイル21への通電の遮断時に、一次電流I1が所定の値となるように適宜設定される。
【0033】
エネルギ投入回路部4は、放電継続スイッチSW2と、放電継続スイッチSW2をオンオフ駆動するための駆動信号を出力して、副一次コイル21bの通電を制御する副一次コイル制御回路41と、を備えて構成される。また、副一次コイル21bに接続される還流経路L11を開閉するスイッチング素子(以下、還流スイッチと略称する)SW3が設けられ、副一次コイル制御回路41からの駆動信号によりオンオフ動作するようになっている。
【0034】
放電継続スイッチSW2及び還流スイッチSW3は、電圧駆動型のスイッチング素子、例えば、MOSFET(すなわち、電界効果型トランジスタ)であり、ゲート端子に入力するゲート信号MOS_gate1、MOS_gate2に応じて、それぞれゲート電位が制御されることにより、ドレイン端子とソース端子の間が導通又は遮断される。放電継続スイッチSW2のドレイン端子は、副一次コイル21bの他端に接続され、ソース端子は接地されている。
【0035】
還流経路L11は、副一次コイル21bの他端(すなわち、主一次コイル21aと反対側)と電源線L1との間に設けられる。還流スイッチSW3のドレイン端子は、副一次コイル21bの他端と放電継続スイッチSW2との接続点に接続し、ソース端子は、第2ダイオード11を介して電源線L1に接続される。また、電源線L1には、還流経路L11との接続点と直流電源Bとの間に、第3ダイオード12が設けられる。第2ダイオード11は電源線L1へ向かう方向を順方向とし、第3ダイオード12は一次コイル21へ向かう方向を順方向としている。
【0036】
副一次コイル制御回路41の入力端子には、信号分離回路部5から出力されるエネルギ投入信号IGWと、目標二次電流指令信号IGAとが、出力信号線L3、L4を介して入力されている。また、副一次コイル制御回路41には、フィードバック制御部6の二次電流フィードバック回路61からフィードバック信号SFBが入力されており、さらに、電源線L1からバッテリ電圧信号SBが入力される。
【0037】
副一次コイル制御回路41は(例えば、図4参照)、ゲート信号MOS_gate1、MOS_gate2を生成し、放電継続スイッチSW2及び還流スイッチSW3を駆動する。このとき、エネルギ投入信号IGWによって指示されるエネルギ投入期間tIGWの間、ゲート信号MOS_gate2がオンとなり、目標二次電流指令信号IGAによって指示される目標二次電流値I2tgtが維持されるように、ゲート信号MOS_gate1がオンオフ駆動される(例えば、図5参照)。
【0038】
二次電流フィードバック回路61は、例えば、二次電流検出抵抗R1に基づく二次電流I2の検出値を、フィードバック信号SFBとして出力し、副一次コイル制御回路41は、二次電流I2の検出値と、目標二次電流値I2tgtとの比較結果に基づいて、放電継続スイッチSW2及び還流スイッチSW3を駆動する。その際に、バッテリ電圧信号SBに基づいて、エネルギ投入動作の可否を判定するようにしてもよい。
【0039】
具体的には、主点火信号IGTの立ち下がりから所定の遅れ期間tfil後に、エネルギ投入信号IGWが立ち上がると、これと同期して、ゲート信号MOS_gate2が立ち上がり、還流スイッチSW3がオンとなる。次いで、主点火動作により二次コイル22を流れる二次電流I2(絶対値)が低下し、目標二次電流値I2tgtに達すると、ゲート信号MOS_gate1が立ち上がり、放電継続スイッチSW2がオンとなる。これによって、副一次コイル21bへの通電が開始され、副一次コイル21bを流れる電流INETによって、二次電流I2が重畳される。
【0040】
ここで、目標二次電流値I2tgtは、放電継続スイッチSW2をオンとするための下限閾値(絶対値)となるもので、目標二次電流指令信号IGAによって指示される。目標二次電流指令信号IGAは、第1信号IG1の立ち上がり期間tIGA_INに基づく関数f(tIGA_IN)として、主点火動作が開始される以前に設定されている。また、下限閾値に対応して、放電継続スイッチSW2をオフとするための上限閾値(絶対値)が設定される。したがって、エネルギ供給により二次電流I2(絶対値)が再び上昇して所定の上限閾値に達すると、ゲート信号MOS_gate1が立ち下がり、放電継続スイッチSW2がオフとなる。このようにして、ゲート信号MOS_gate1に応じて、放電継続スイッチSW2がオンオフを繰り返すことで、二次電流I2が目標二次電流値I2tgtの近傍に維持される。
【0041】
また、放電継続スイッチSW2のオフ時に、還流スイッチSW3をオンとすることで、還流経路L11を介して、副一次コイル21bの他端と電源線L1とが接続される。したがって、副一次コイル21bへの通電遮断時に還流電流が流れ、副一次コイル21bの電流が緩やかに変化するので、二次電流I2の急激な低下を抑制可能となる。
【0042】
所定の遅れ期間tfilは、例えば、主点火動作により流れる二次電流I2がある程度低下してから、エネルギ投入動作が実施されるように、適宜設定される。これは、エネルギ投入動作の実施期間を指示するエネルギ投入信号IGWを、主点火動作によって火花放電が開始された後の所定のタイミングで出力するためのもので、エネルギ投入により火花放電が効果的に維持される。
【0043】
次に、信号分離回路部5の詳細について、図2図5により説明する。
図2に示すように、点火制御信号IGは、第1信号IG1及び第2信号IG2を含み、点火制御信号IGの立ち上がりと共に出力される、前の信号を第1信号IG1とし、第1信号IG1の立ち下がり後に出力される、後の信号を第2信号IG2とする。
このとき、点火制御信号IGは、第1信号IG1の立ち上がりから第2信号IG2の立ち上がりまでの長さである立ち上がり間隔tIGW_INによって、エネルギ投入期間tIGWを設定する。また、第1信号IG1の立ち上がりから立ち下がりまでの長さである立ち上がり期間tIGA_INによって、目標二次電流値I2tgtを設定する。
【0044】
なお、点火制御信号IGの立ち上がりから立ち下がりまでの期間は、第1信号IG1の立ち上がりから第2信号IG2の立ち下がりまでの期間であり、待機時間twaitの長さと、主点火信号IGTの立ち上がり期間tIGTの長さとを合わせた長さとなる。言い換えれば、点火制御信号IGは、主点火信号IGTの立ち上がりよりも待機時間twait分だけ早いタイミングで出力されることになる。点火制御信号IGは主点火信号IGTと同時に立ち下がり、それ以降にエンジンECU100から信号送信はなされない。
【0045】
図3において、信号分離回路部5は、点火制御信号IGを波形整形する波形整形回路51と、主点火信号IGTを生成するIGT生成回路52と、エネルギ投入信号IGWを生成するIGW生成回路53と、目標二次電流指令信号IGAを生成するIGA生成回路54と、を有する。また、リセット信号RESを生成するリセット信号生成回路55が設けられる。
【0046】
図4図5に示すように、点火制御信号IGは、主点火信号IGTとエネルギ投入信号IGWと目標二次電流指令信号IGAとが合成された合成信号であり、まず、図3の波形整形回路51においてフィルタリング処理される。これにより、ノイズを取り除いた矩形波形の第1信号IG1及び第2信号IG2を含む矩形波信号1aとして、IGT生成回路52及びリセット信号生成回路55に出力される。リセット信号生成回路55からのリセット信号RESは、IGT生成回路52、IGW生成回路53、IGA生成回路54に、それぞれ出力される。
【0047】
また、矩形波信号1aに基づいて、主点火信号IGTを生成するための信号IGT_DCT、エネルギ投入信号IGWを生成するための信号IGW_DCT、目標二次電流指令信号IGAを生成するための信号IGT_DCTが、それぞれ生成される。これら信号IGT_DCT、信号IGW_DCT、信号IGA_DCTは、IGT生成回路52、IGW生成回路53、IGA生成回路54に、それぞれ出力される。
【0048】
以下に、信号分離回路部5を構成する、波形整形回路51、IGT生成回路52、IGW生成回路53、及び、IGA生成回路54の構成について、図6図13を参照しながら、それぞれ説明する。
図6に示すように、波形整形回路51は、第1コンパレータ511、ローパスフィルタ512、第1Dフリップフロップ513a~第3Dフリップフロップ513c、第1アンド回路514a~第4アンド回路514d、及び、第1インバータ回路515a~第3インバータ回路515cからなる。
【0049】
第1コンパレータ511において、負入力端子には閾値となる基準電位Vth1が印加されており、正入力端子に点火制御信号IGが入力されると、それらの比較結果に基づく出力信号が、出力端子からローパスフィルタ512へ入力される。ローパスフィルタ512は、抵抗R1とコンデンサC1からなる公知のフィルタ構成を有する。
【0050】
これにより、図7に示すように、第1コンパレータ511は、点火制御信号IGと基準電位Vth1との比較結果に応じて出力を上昇又は低下させ、Hレベル又はLレベルの二値信号に整形する。次いで、ローパスフィルタ512を通して、高周波ノイズが除去されることで、点火制御信号IGは、立ち上がり及び立ち下がりエッジを有する矩形波状に、波形整形される(すなわち、図中の矩形波信号1a)。
【0051】
波形整形された矩形波信号1aは、第1Dフリップフロップ513aに入力される。第1Dフリップフロップ513aは、点火制御信号IGの1回目の立ち上がりを検出して、信号IGT_DCTとして出力するための回路である。第1Dフリップフロップ513aは、クロック端子(以下、CLK端子と称する)に矩形波信号1aが入力されると共に、データ端子(以下、D端子と称する)に電源が接続されて、Hレベルに相当する電位が供給されている。これにより、矩形波信号1aの立ち上がりに同期して、D端子の信号レベルがラッチされると、出力端子(以下、Q端子と称する)から出力される信号IGT_DCTが、Hレベルに立ち上がる。
【0052】
なお、第1Dフリップフロップ513aのリセット端子(以下、RES端子と称する)には、リセット信号生成回路55からのリセット信号RESが入力されており、リセット信号RESがHレベルからLレベルに切り替わるのに同期して、ラッチがリセットされる。
【0053】
図7に示すように、リセット信号RESは、矩形波信号1aの2回目の立ち下がり(すなわち、第2信号IG2の立ち下がりに対応)から、所定のリセット期間treswaitの経過後に、HレベルからLレベルに切り替わる。これにより、点火制御信号IGが出力される毎に、第1Dフリップフロップ513aから、点火制御信号IGの立ち上がり(すなわち、第1信号IG1の立ち上がり)の検出信号である、信号IGT_DCTが出力され、リセット信号RESの立下りでリセットされる。
【0054】
第2Dフリップフロップ513bは、第1Dフリップフロップ513aと同等の構成を有し、第1アンド回路514aからCLK端子に入力される信号に基づいて、点火制御信号IGの2回目の立ち上がり(すなわち、第2信号IG2の立ち上がり)を検出するための回路である。第2Dフリップフロップ513bからの出力は、第1インバータ回路515aを介して、第2アンド回路514bへ入力され、点火制御信号IGの1回目の立ち上がりと再立ち上がりを検出するための信号IGW_DCTとして、出力される。
【0055】
また、第3Dフリップフロップ513cは、第1Dフリップフロップ513aと同等の構成を有し、第2インバータ回路515bを介して、第2アンド回路514bからCLK端子に入力される信号に基づいて、点火制御信号IGの1回目の立ち下がり(すなわち、第1信号IG1の立ち下がり)を検出するための回路である。第3Dフリップフロップ513cからの出力は、第3インバータ回路515cを介して、第4アンド回路514dへ入力され、点火制御信号IGの1回目の立ち上がりと立ち下がりを検出するための信号IGA_DCTとして、出力される。
【0056】
なお、第2Dフリップフロップ513b、第3Dフリップフロップ513cのRES端子にも、リセット信号生成回路55からのリセット信号RESが入力され、第1Dフリップフロップ513aと同じタイミングでラッチがリセットされる。
【0057】
第1アンド回路514aには、一方の端子に、矩形波信号1aが入力されると共に、他方の端子に、第3Dフリップフロップ513cのQ端子からの信号が入力されている。
このとき、第1アンド回路514aは、一方の端子が、矩形波信号1aの1回目の立ち下がりでHレベルとなり、その後、他方の端子が、矩形波信号1aの2回目の立ち上がりでHレベルとなるタイミングで、第2Dフリップフロップ513bのCLK端子へHレベルの信号を出力する。これにより、Q端子からの出力がHレベルとなり、この出力は、第1インバータ回路515aにより反転された信号1bとして、第2アンド回路514bの一方の端子に入力される。
【0058】
すなわち、図7に示すように、信号1bは、初期状態においてHレベルであり、点火制御信号IGの2回目の立ち上がりでLレベルとなる信号である。第2アンド回路514bの他方の端子には、第1Dフリップフロップ513aのQ端子からの信号IGT_DCTが入力されている。
このとき、第2アンド回路514bからは、信号1bがHレベルであり、かつ、信号IGT_DCTがHレベルであるときに、Hレベルとなる信号IGW_DCTが出力される。すなわち、信号IGW_DCTは、信号IGT_DCTがHレベルとなるタイミングで立ち上がり、信号1bがLレベルとなるタイミングで立ち下がる信号である。
【0059】
第3アンド回路514cは、一方の端子に、第1Dフリップフロップ513aのQ端子からの信号IGT_DCTが入力されると共に、他方の端子に、矩形波信号1aが、第2インバータ回路515bを介して入力されている。
このとき、第3アンド回路514cは、信号IGT_DCTがHレベルであり、かつ、矩形信号1aがLレベルであるときに、第3Dフリップフロップ513cのCLK端子へHレベルの信号を出力する。これにより、Q端子からの出力がHレベルとなり、さらに、第3インバータ回路515cを介して反転された信号1cとして、第4アンド回路514dの一方の端子に入力される。
【0060】
すなわち、図7に示すように、信号1cは、初期状態においてHレベルであり、点火制御信号IGの1回目の立ち下がりでLレベルとなる信号である。第4アンド回路514dの他方の端子には、第1Dフリップフロップ513aのQ端子からの信号IGT_DCTが入力されている。
このとき、第4アンド回路514dからは、信号1cがHレベルであり、かつ、信号IGT_DCTがHレベルであるときに、Hレベルとなる信号IGA_DCTが出力される。すなわち、信号IGA_DCTは、信号IGT_DCTがHレベルとなるタイミングで立ち上がり、信号1bがLレベルとなるタイミングで立ち下がる信号である。
【0061】
図8に示すように、IGT生成回路52は、待機時間twaitを生成するための待機時間生成回路(以下、twait生成回路と称する)521、アンド回路522、523、インバータ回路524からなる。IGT生成回路52には、波形整形回路51からの矩形波信号1a、信号IGT_DCTが入力され、twait生成回路521は、所定の待機時間twaitが保持されたことを確認する信号2bを生成する。アンド回路522は、twait生成回路521から出力される信号2bと、矩形波信号1aとに基づいて、主点火信号IGTを生成し、アンド回路523は、twait生成回路521から出力される信号2bをインバータ回路524にて反転させた信号と、信号IGT_DCTとに基づく信号2cを生成する。
【0062】
twait生成回路521は、例えば、複数段(N段)のJKフリップフロップ回路525を含むカウンタ回路を用いて構成される。第1段のJKフリップフロップ回路525は、J端子及びK端子に電源が接続されて、Hレベルに相当する電位が供給されている。各段のJKフリップフロップ回路525のCLK端子には、アンド回路526からの信号2aが、それぞれ入力されており、各段のJKフリップフロップ回路525のQ端子は、次段のJKフリップフロップ回路525のJ端子及びK端子に、それぞれ接続されている。最終段(第N段)のJKフリップフロップ回路525のQ端子は、Dフリップフロップ回路527のCLK端子に接続されている。
【0063】
各段のJKフリップフロップ回路525のクリア端子(以下、CLR端子と称する)には、リセット信号生成回路55からのリセット信号RESが入力されており、リセット信号RESがHレベルからLレベルに切り替わるのに同期してリセットされる。同様に、Dフリップフロップ回路527のRES端子には、リセット信号RESが入力されており、その立ち下がりでリセットされるようになっている。
【0064】
アンド回路526には、信号IGT_DCTと、外部のクロック発生回路からのクロック信号が入力されており、信号IGT_DCTの立ち上がり以降にクロック信号が立ち上がると、各段のJKフリップフロップ回路525に、クロック信号に同期して信号2aが出力される。
【0065】
これにより、図9に示すように、矩形波信号1aに同期して信号IGT_DCTがHレベルに立ち上がった後、アンド回路526からの信号2aがHレベルに立ち上がることで、カウンタ動作が開始される。初期状態においては、第1段のJKフリップフロップ回路525の出力3a、第2段のJKフリップフロップ回路525の出力3b、・・・最終段のJKフリップフロップ回路525の出力3cは、いずれもLレベルとなっている。次いで、信号2aが出力される度に、第1段のJKフリップフロップ回路525の出力3aが反転して、第2段のJKフリップフロップ回路525のJ端子及びK端子に入力される。第2段のJKフリップフロップ回路525は、第1段のJKフリップフロップ回路525の出力3aが立ち上がる度に、その出力3bが反転し、同様にして、次段以降のJKフリップフロップ回路525へ信号が伝達される。
【0066】
これを順次繰り返すことで、最終段のJKフリップフロップ回路525の出力3cが、その前段からの入力により反転する。そして、Dフリップフロップ回路527のCLK端子にHレベルの信号が入力されると、Dフリップフロップ回路527から出力される信号2bがHレベルに立ち上がる。
このとき、複数段のJKフリップフロップ回路525の段数は、所定の待機時間twaitに対応する時間計測が可能となるように、適宜設定される。
【0067】
アンド回路522から出力される主点火信号IGTは、信号2bと矩形波信号1aとがHレベルとなることで、矩形波信号1aの立ち上がりから所定の待機時間twait後に、Hレベルに立ち上がる。その後、主点火信号IGTは、矩形波信号1aの立ち下がりに同期して、Lレベルに立ち下がる。また、アンド回路523から出力される信号2cは、信号2bの反転信号と信号IGT_DCTとがHレベルとなることで、矩形波信号1aの立ち上がりから信号2bの立ち上がりまでの期間、Hレベルとなる。この期間は、所定の待機時間twaitに相当し、主点火信号IGTが立ちあがると、信号2cはLレベルに立ち下がる。
【0068】
さらに、矩形波信号1a及び主点火信号IGTの立ち下がりから、所定のリセット期間treswaitが経過し、リセット信号RESが立ち下がる。これに伴い、信号IGT_DCTと同様に、JKフリップフロップ回路525及びDフリップフロップ回路527のラッチがリセットされる。
このようにして、矩形波信号1aの出力に伴い、主点火信号IGTが生成される。
【0069】
IGW生成回路53は、例えば、図10に示すアップカウンタ回路531を用いて、図11に示すように、信号IGW_DCTの立ち上がり間隔tIGW_INを検出し、検出した立ち上がり間隔tIGW_INを用いて、エネルギ投入信号IGWを生成する。立ち上がり間隔tIGW_INは、そのまま、エネルギ投入期間tIGWとして設定してもよいし、あるいは、所定の係数を用いて、立ち上がり間隔tIGW_INを乗算(例えば、2倍あるいは1/2倍等)した値を、エネルギ投入期間tIGWとして設定してもよい。IGW生成回路53は、例えば、アップカウンタ回路531と同等構造のダウンカウンタ回路を備える。
【0070】
具体的には、図10において、アップカウンタ回路531は、複数段(N段)のJKフリップフロップ回路532と、アンド回路533とを含んで構成される。第1段のJKフリップフロップ回路532は、J端子及びK端子に電源が接続されて、Hレベルに相当する電位が供給されている。Q端子は、第2段のJKフリップフロップ回路532のJ端子及びK端子に接続されると共に、Nビットのビットカウンタ(IGW_COUNTER)へ至るバス線Lbに接続されている。同様に、第2段以降のJKフリップフロップ回路532のQ端子も、次段のJKフリップフロップ回路532のJ端子及びK端子に接続されると共に、バス線Lbに接続される。
【0071】
アンド回路533には、信号IGW_DCTと、図示しないクロック発生回路からのクロック信号が入力される。これにより、信号IGT_DCTの立ち上がり以降にクロック信号が立ち上がると、各段のJKフリップフロップ回路532のCLK端子に、アンド回路533からの信号が入力される。
各段のJKフリップフロップ回路532のCLR端子には、リセット信号生成回路55からのリセット信号RESが入力されており、その立ち下がりでリセットされるようになっている。
【0072】
これにより、図11に示すように、矩形波信号1aに同期して信号IGW_DCTがHレベルに立ち上がった後、アンド回路533からの信号がHレベルに立ち上がることで、アップカウンタ回路531によるカウンタ動作が開始される。初期状態において、第1段のJKフリップフロップ回路532の出力はLレベルであり、第2段以降のJKフリップフロップ回路532からの出力は、いずれもLレベルとなっている。次いで、各段のCLK端子に、アンド回路533からの信号が入力されると、第1段のJKフリップフロップ回路532の出力が反転し、バス線Lbへ出力されると共に、第2段のJKフリップフロップ回路532のJ端子及びK端子に入力される。
【0073】
すなわち、第1段のJKフリップフロップ回路532からの出力が、Hレベルに切り替わり、第2段以降の出力は、Lレベルのまま保持される。その後、アンド回路533からの信号が入力される度に、後段のJKフリップフロップ回路532へ信号が伝達され、出力が順次Hレベルに切り替わる。これら出力が、バス線Lbを介してビットカウンタIGW_COUNTERへ出力されることで、信号IGW_DCTがHレベルとなっている間、アップカウンタ回路531による時間計測を行うことができる。
【0074】
計測した信号IGW_DCTの長さは、立ち上がり間隔tIGW_IN(すなわち、矩形波信号1aの1回目の立ち上がりから2回目の立ち上がりまでの間隔)として保持される。IGW生成回路53は、次いで、矩形波信号1aの2回目の立ち下がりから所定の遅れ期間tfil後に、エネルギ投入信号IGWを立ち上げると共に、保持した立ち上がり間隔tIGW_INに対応する時間をダウンカウントさせる。ダウンカウンタ回路は、アップカウンタ回路531と同様の構成とすることができる。
このようにして、主点火信号IGT後のエネルギ投入期間tIGWの間、Hレベル信号が出力されることで、エネルギ投入信号IGWが生成される。
【0075】
図12に示すように、IGA生成回路54は、信号IGA_DCTの立ち上がり期間tIGA_INを検出し、検出した立ち上がり期間tIGA_INを用いて、目標二次電流指令信号IGAを生成する。信号IGA_DCTの立ち上がり期間tIGA_INの検出は、上述した立ち上がり間隔tIGW_INと同様に、例えば、図10に示すアップカウンタ回路531と同様の構成のアップカウンタ回路を用いることができる。
【0076】
立ち上がり期間tIGA_INは、下記の表1に一例を示すように、主点火動作後のエネルギ投入動作における、目標二次電流値I2tgt(絶対値)を指示する。すなわち、目標二次電流値I2tgtは、立ち上がり期間tIGA_INの関数f(tIGA_IN)で表され、立ち上がり期間tIGA_INの長さに応じて、目標二次電流値I2tgtが可変設定される。例えば、tIGA_IN<0.25msであるとき、目標二次電流値I2tgtを60mAとし、0.25ms≦tIGA_IN<0.75msであるとき、目標二次電流値I2tgtを90mAとし、0.75ms<tIGA_INであるとき、目標二次電流値I2tgtを120mAとすることができる。また、tIGA_INの立ち上がりが検出されないときは、エネルギ投入動作せず、目標二次電流値I2tgtは0mAとする。
【0077】
【表1】
【0078】
これにより、信号IGA_DCTがHレベルとなっている間、アップカウンタ回路によるカウントを行い、立ち上がり期間tIGA_IN(すなわち、矩形波信号1aの1回目の立ち上がりから立ち下がりまでの長さ)を検出して保持する。次いで、矩形波信号1aの2回目の立ち下がりによる主点火動作から所定の遅れ期間tfil後に、エネルギ投入信号IGWが立ち上がると、エネルギ投入期間tIGWの間、立ち上がり期間tIGA_INによって設定される、目標二次電流値I2tgtが維持されるように、二次電流フィードバック制御がなされる。
【0079】
具体的には、二次電流フィードバック回路61(例えば、図1参照)によって、二次電流I2の検出値に基づいて、副一次コイル制御回路4からゲート信号MOS_gate1、ゲート信号MOS_gate2が出力され、放電継続スイッチSW2、還流スイッチSW3がオンオフ制御されることで、二次電流I2が目標二次電流値I2tgtの近傍に維持される。
【0080】
図13に示すように、リセット信号RESの生成回路55は、例えば、リセット期間treswaitを生成するtreswait生成回路551と、パルス状のリセット信号RESを生成するリセットパルス生成回路552とを用いて構成される。treswait生成回路551の入力側に接続されるアンド回路553には、波形整形回路51からの矩形波信号1aがインバータ回路554aを介して反転された信号と、2回目の立ち上がりを検出する信号1bがインバータ回路554bを介して反転された信号1dと、IGT生成回路52からの信号2cがインバータ回路554cを介して反転された信号とが入力される。
【0081】
treswait生成回路551は、上述したIGW生成回路53やIGA生成回路54のようにカウンタ回路(デジタル回路)を用いた構成とすることもできるが、図示するように、定電流源555と、コンデンサC2と、コンパレータCMP1を含むアナログ回路にて構成とすることもできる。treswait生成回路551は、アンド回路553からの信号がHレベルであるときにスイッチSW5がオンとなり、コンデンサC2が定電流源555に接続されて、定電流が流れる。これにより、コンデンサC2が充電されて、コンデンサC2に接続されるコンパレータCMP1の正端子の入力電位4aが、負端子に供給される基準電位を上回ることで、コンパレータCMP1からの信号4bがHレベルとなる。
【0082】
コンデンサC2とコンパレータCMP1との間には、一端が接地される抵抗R2の他端が接続され、コンデンサC2と抵抗R2の時定数を用いて、所定のリセット期間treswaitに調整することができる。なお、抵抗R2と並列に、さらに放電用抵抗R3を設けて、接地電位との間を放電用スイッチSW6で開閉するようにしてもよい。これにより、例えば、ラッチリセットと同期させて放電用スイッチSW6をオンし、放電用抵抗R3を介してコンデンサC2の正端子側を接地電位に接続することで、速やかな放電が可能になる。
【0083】
また、リセットパルス生成回路552は、リセット信号RESを出力するナンド回路556を有する。ナンド回路556には、treswait生成回路551からの信号4bが入力されると共に、複数のインバータ回路554d、554eとそれらの間に配置される抵抗R4及びコンデンサC3を有する遅延回路からの信号4cとして入力される。
【0084】
このとき、図14に示すように、アンド回路553からの出力は、初期状態においてLレベルとなり、矩形波信号1aがLレベル、かつ信号1bがLレベル(信号1dがHレベル)、かつ信号2cがLレベルのときにのみ、Hレベルとなる。すなわち、初期状態においてスイッチSW5はオフとなっており、矩形波信号1aの2回目の立ち上がりで信号1bがLレベルとなった後に、待機時間twaitが経過して信号2cが立ち下がり、さらに矩形波信号1aが立ち下がることで、点火制御信号IGの終了と判断されて、スイッチSW5がオンとなる。
【0085】
これに伴い、コンデンサC2の電位が徐々に上昇して、コンパレータCMP1への入力電位4aが、所定の基準電位VthRESに達すると、コンパレータCMP1から出力される信号4bがHレベルとなる。次いで、所定のリセット期間treswait後に、スイッチSW5がオフとなり、コンデンサC2が放電して基準電位VthRESを下回ると、コンパレータCMP1からの信号4bがLレベルとなる。
【0086】
信号4bは、スイッチSW5がオンとなり、入力電位4aが基準電位VthRESを上回っている間、Hレベルとなる。信号4cは、信号4bを遅延させた信号である。初期状態において、スイッチSW5はオフであるので、コンパレータCMP1の出力はLレベルとなり、信号4cはLレベルとなっている。ナンド回路558には、この信号4cと、信号4bとが入力されており、これら信号の両方がHレベルであるときにのみ、出力されるリセット信号RESがLレベルとなる。
【0087】
すなわち、初期状態においてリセット信号RESはHレベルとなっており、矩形波信号1aの二回目の立ち下がりでスイッチSW5がオンとなると、所定の遅れを有して信号4bがHレベルになる。次いで、信号4bを遅延させた信号4cがHレベルになると、リセット信号RESが、Lレベルに立ち下がる。これにより、各回路のラッチがリセットされて、信号1dがLレベルになり、スイッチSW5がオフして、コンデンサC2の放電により、コンパレータCMP1の出力である信号4bが所定の期間tdischg後にLレベルになることで、リセット信号RESが再びHレベルに立ち上がり、初期状態に戻る。
【0088】
このようにして、リセットパルス生成回路552から、パルス状のリセット信号RESを出力させることができる。なお、リセット期間treswaitは、エネルギ投入動作時のリセット動作を避けるため、エネルギ投入期間tIGWよりも長く設定される。好適には、主点火動作後の遅れ期間tfilを考慮して、エネルギ投入期間tIGWが経過した後に、リセット動作が実施されるように、リセット期間treswaitに相当するスイッチSW5のオン期間が適宜設定されるのがよい。
【0089】
以上のように、本形態によれば、エンジンECU100から、主点火信号IGT、エネルギ投入信号IGW及び目標二次電流指令信号IGAの情報を含む点火制御信号IGを、予め点火装置10に送信し、信号分離回路部5において、各信号に分離することができる。そして、分離された信号を、所定のタイミングで出力することで、主点火動作及びエネルギ投入動作を実施することができる。すなわち、エンジンECU100は、主点火信号IGTに対して待機時間twait分早いタイミングで、点火制御信号IGを出力し、主点火及びエネルギ投入に必要な信号を、予め生成することができるので、装置間を接続する信号線を減らし、簡易な構成で、ノイズ等による影響を抑制可能な点火制御装置1を実現できる。
【0090】
なお、点火制御信号IGは、必ずしも第1信号IG1と第2信号IG2とからなる必要はなく、例えば、主点火信号IGTより待機時間twait分早いタイミングで立ち上がり、主点火信号IGTと同時に立ち下がる信号とすることもできる。その場合には、エンジンECU100から主点火信号IGTより待機時間twait分早いタイミングで、主点火信号IGTより待機時間twait分長い、1つの点火制御信号IGが出力されることになる。これにより、エネルギ投入を伴わない通常の点火動作にも適用可能となる。
このような点火制御信号IGの変形例について、以下の実施形態2~4により説明する。
【0091】
(実施形態2)
点火制御装置に係る実施形態2について、図15を参照して説明する。
上記実施形態1では、上記図1に示した点火制御装置1の信号分離部5において、点火制御信号IGが各信号に分離され、主点火動作及びエネルギ投入動作が実施される場合について説明したが、本形態では、点火制御信号IGの信号波形が異なっており、点火制御信号IGから分離生成される主点火信号IGTに基づいて、主点火動作のみが実施される。以下、相違点を中心に説明する。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0092】
本形態において、点火制御装置1の基本構成及び基本動作は、上記実施形態1と同様であり、説明を省略する。
図15に示すように、点火制御信号IGは、パルス状の1つの信号からなり、実質的に、第1信号IG1と第2信号IG2とが一体化された信号として受信される。その場合には、点火制御信号IGを波形整形した矩形波信号1aも、パルス状の1つの信号となり、その立ち上がりと立ち下がりに基づいて、主点火信号IGTが生成される。
【0093】
具体的には、信号分離回路部5の波形整形回路51において、点火制御信号IGが波形整形され、矩形波信号1aが出力されると、IGT生成回路52において、矩形波信号1aの立ち上がりから待機時間twaitが経過し、かつ、信号レベルがHレベルであるとき、その時点が、主点火信号IGTの立ち上がりとなる。また、立ち上がり時点以降において、矩形波信号1aの信号レベルがLレベルとなったとき、その時点を、主点火信号IGTの立ち下がりとして、主点火信号IGTが生成される。
【0094】
これに伴い、主点火用駆動回路31が主点火スイッチSW1を駆動し、主点火信号IGTの立ち上がりで、主一次コイル21aへの通電が開始されることで、一次電流I1が流れる。そして、主一次コイル21aへの通電の遮断により、二次コイル22に高電圧が発生し、二次電流I2が流れる。
【0095】
同様に、IGW生成回路53、IGA生成回路54は、矩形波信号1aに基づくエネルギ投入信号IGW、目標二次電流指令信号IGAを生成する。ただし、矩形波信号1aの立ち上がりから待機時間twaitが経過するまでに、矩形波信号1aの立ち下がりと再立ち上がりが検出されないので、エネルギ投入信号IGW及び目標二次電流指令信号IGAはLレベルのままとなり、エネルギ投入動作は実施されない。
【0096】
このように、点火制御信号IGを1つ又は2つのパルスを含む信号波形とすることで、主点火動作を開始させ、さらに、エネルギ投入動作の実施の有無を指示することができる。エンジンECU100からの信号は、エネルギ投入動作を実施しない場合には、エンジン運転条件に対して要求される主点火信号IGTの立ち上がり期間tIGTが、待機時間twaitの経過中に開始されるように設定される。すなわち、点火制御信号IGは、待機時間twaitが立ち上がり期間tIGTと重なる長さとなり、第1信号IG1と第2信号IG2とが区別されない1つの信号として、送信される。つまり、エンジンECU100からの信号は、立ち上がり期間tIGTに対し待機時間twait分を遡って送信することで、主点火動作のみでエネルギ投入を実施しない場合にも容易に適用可能となる。
【0097】
また、待機時間twait中に、点火制御信号IGの立ち上がり信号が検出されないことは、IGW生成回路のIGW_counterが待機時間twaitと等価となることで判断可能である。その場合には、エネルギ投入動作が不要となるため、主点火動作から所定の遅れ期間tfil後に、主点火信号IGT、エネルギ投入信号IGW、目標二次電流指令信号IGA等のカウンタを速やかにリセットすることで、リセット期間treswaitを待たずに、次の点火動作への移行が可能となる。
【0098】
(実施形態3)
点火制御装置に係る実施形態3について、図16を参照して説明する。
上記実施形態2では、上記図1に示した点火制御装置1において、点火制御信号IGの信号波形に基づいて主点火動作のみが実施される場合について説明したが、本形態では、信号波形における待機時間twaitに基づいて、主点火動作の実施の有無が判断され、主点火動作が実施されない場合を例示している。
【0099】
本形態において、点火制御装置1の基本構成及び基本動作は、上記実施形態1、2と同様であり、以下、相違点を中心に説明する。
図16左図[A]に示す点火制御信号IGは、パルス状の1つの信号からなり、例えば、第1信号IG1に相当する、比較的短いパルス幅を有する。その場合には、波形整形された矩形波信号1aの立ち上がりから待機時間twaitが経過した時点において、信号レベルがLレベルとなり、主点火信号IGTは出力されない。
【0100】
具体的には、信号分離回路部5の波形整形回路51から、点火制御信号IGが波形整形された矩形波信号1aが出力されると、IGA生成回路54において、その立ち上がり期間tIGA_INに基づいて、目標二次電流指令信号IGAが生成される。ただし、それ以降に第2信号IG2に相当する信号は受信されず、矩形波信号1aの立ち上がりから待機時間twaitが経過するまでに、再立ち上がりが検出されないので、主点火信号IGT及びエネルギ投入信号IGWは出力されない。
【0101】
このとき、主一次コイル21aへの通電は開始されず、一次電流I1は流れない。すなわち、主点火動作及びエネルギ投入動作は実施されず、二次電流I2、電流INETも流れない。
【0102】
したがって、第1信号IG1の受信後、エンジン運転条件の変更等、何らかの理由で主点火動作が不要になった場合には、エンジンECU100からの第2信号IG2の送信が停止されることで、主点火動作を停止することができる。
また、例えば、他気筒の点火動作に伴うノイズ等が入力した場合に、信号分離回路部5において第1信号IG1とみなされても、第2信号IG2の入力がない場合には主点火信号IGTは生成されないので、誤動作を回避することができる。
【0103】
また、図16右図[B]に示すように、点火制御信号IGが、パルス状の2つの信号からなる場合であっても、矩形波信号1aの立ち上がりから待機時間twaitが経過する前に、第2信号IG2の信号レベルがLレベルとなる場合には、主点火信号IGTは生成されない。この場合には、矩形波信号1aの立ち上がりから待機時間twaitが経過するまでに、再立ち上がりが検出されることで、立ち上がり間隔tIGW_INは設定されるが、主点火信号IGTが出力されないので、エネルギ投入信号IGWも出力されない。
【0104】
したがって、エンジンECU100からの第2信号IG2の送信が開始された後であっても、待機時間twaitが経過する前に、第2信号IG2の送信が停止されることで、主点火動作を停止することができる。
【0105】
これにより、例えば、点火装置10に外部から、第1信号IG1に類似するパルス状のノイズが入力しても、続く第2信号IG2が入力されない場合には、主点火信号IGTが生成されない。したがって、誤った信号に基づいて主点火動作が開始されることがなく、ノイズに強い点火制御装置1とすることができる。
【0106】
(実施形態4)
点火制御装置に係る実施形態4について、図17図18を参照して説明する。
上記実施形態3では、上記図1に示した点火制御装置1において、点火制御信号IGの信号波形における待機時間twaitと、主点火動作との関係について説明したが、本形態では、信号波形における待機時間twaitを、エンジン運転条件に応じて可変とした場合を例示している。
【0107】
本形態において、点火制御装置1の基本構成及び基本動作は、上記実施形態1~3と同様であり、以下、相違点を中心に説明する。
図17において、左図に示す点火制御信号IGと右図に示す点火制御信号IGとは、第1信号IG1と第2信号IG2からなる同じ波形であり、エンジン運転条件に応じて可変設定される待機時間twaitが異なっている。エンジン運転条件は、例えば、エンジンの回転数であり、回転数が高くなるほど、待機時間twaitが短くなるように設定される。
【0108】
具体的には、図17左図に示すように、回転数1000rpm(すなわち、周期120ms)の低回転域の例では、待機時間twaitがより長く設定され、待機時間twaitが経過する前に、第2信号IG2が立ち下がる。この場合には、待機時間twaitが経過した時点において、矩形波信号1aの信号レベルはLレベルとなっているので、上記実施形態3と同様に、目標二次電流指令信号IGAのみ出力される。すなわち、主点火信号IGTは出力されず、主点火動作は実施されない。
【0109】
例えば、ハイブリッド車のように所定の低回転領域ではモータ駆動とし、点火動作を停止する設定とすることもできる。その場合には、対応する低回転領域において、待機時間twaitが長くなる設定とすることで、待機時間twaitが経過する前に第2信号IG2が立ち下がるようにする。これにより、主点火信号IGTが出力されず、主点火動作が実施されない設定とすることができる。
【0110】
一方、図17右図に示すように、回転数6000rpm(すなわち、周期20ms)の高回転域の例では、待機時間twaitがより短く設定され、待機時間twaitが経過した後に、第2信号IG2が立ち下がる。そのため、待機時間twaitが経過した時点において、矩形波信号1aの信号レベルはHレベルとなり、上記実施形態1と同様に、信号分離回路部5から、主点火信号IGT、エネルギ投入信号IGW及び目標二次電流指令信号IGAが出力される。
【0111】
これに伴い、主点火信号IGTの立ち上がりに同期して、主一次コイル21aへの通電が開始されることで、一次電流I1が流れ、次いで遮断されることで、二次電流I2が流れる。さらに、エネルギ投入信号IGWで規定される期間に、目標二次電流指令信号IGAにて設定されるエネルギ投入動作が実施され、二次電流I2が維持されると共に、電流INETが流れる。
【0112】
エンジンの回転数が変化すると、点火周期が変化するために、点火タイミングに応じた通電タイミングで、主点火信号IGTが出力されるように、待機時間twaitが設定されることが望ましい。上述したように、主点火信号IGTは、矩形波信号1aの立ち上がりから待機時間twaitが経過した時点において、信号レベルがHレベルであるときに立ち上がる。したがって、点火周期が短くなる高回転域ほど、待機時間twaitが短くなる設定とすることが望ましい。
【0113】
図18に示すように、エンジン運転条件、例えば、エンジンの回転数に応じて、待機時間twaitを変更する場合には、連続的に変化させても、段階的に変化させてもよい。具体的には、回転数が高くなるのに従い、左図に示すように、連続的に、待機時間twaitが短くなるように設定してもよいし、右図に示すように、ある回転数N1までは一定とし、その後は段階的に、より高い回転数N2、回転数N3に達する度に待機時間twaitが短くなるように設定してもよい。
【0114】
(実施形態5)
点火制御装置に係る実施形態5について、図19図21を参照して説明する。
本形態では、上記実施形態1に示した点火制御装置1の点火装置10を用いた主点火動作及びエネルギ投入動作の手順の一例を示す。
上記図1に示したように、点火装置10は、エンジンECU100から送信される点火制御信号IGを、信号分離回路5にて受信し、分離された主点火信号IGTを、主点火回路部3の主点火用駆動回路31へ送信すると共に、エネルギ投入回路部4の副一次コイル制御回路41へ送信する。
【0115】
図19に示すフローチャートは、点火装置10において、点火制御信号IGから、各信号を分離生成するために実行される手順を示している。図20には、同じフローチャートにおいて、上記実施形態1~3にてそれぞれ実行される手順を、図中に示す矢印を用いて、比較している。上記実施形態1~3では、それぞれ異なる点火制御信号IGから、異なる手順を経て各信号が分離される。図21に示すタイムチャートは、実施形態1に対応しており、上記図2に示したように、点火制御信号IGは、第1信号IG1及び第2信号IG2からなり、主点火動作及びエネルギ投入動作の両方が実施される。
以下、実施形態1の手順について、図21を参照しながら、主に説明する。
【0116】
図19図20において、信号分離回路5にて信号分離処理が開始されると、まず、ステップ101で、点火制御信号IGの立ち上がりが検出されたか否かを判定する。ここでは、点火制御信号IGを、波形整形回路51にて波形整形した矩形波信号1aについて、その最初の立ち上がり(すなわち、第1信号IG1の立ち上がり)が検出されたか否かを判定する。
ステップ101が肯定判定されたときには、ステップ102へ進み、否定判定されたときには、肯定判定されるまでステップ101を繰り返す。
【0117】
ステップ102では、IGA生成回路54において、矩形波信号1aの立ち上がり期間tIGA_INの検出を開始すると共に、IGW生成回路53において、矩形波信号1aの立ち上がり間隔tIGA_INの検出を開始する。立ち上がり期間tIGA_INは、矩形波信号1aの1回目の立ち上がりから立ち下がりまでの期間であり、実施形態1では、第1信号IG1の立ち上がり期間に対応する。立ち上がり間隔tIGW_INは、矩形波信号1aの1回目の立ち上がりから2回目の立ち下がりまでの期間であり、実施形態1では、第1信号IG1の立ち上がりと第2信号IG2の立ち上がりとの間隔に対応する。
【0118】
次いで、ステップ103へ進み、IGA生成回路54において、矩形波信号1aの最初の立ち下がり(すなわち、第1信号IG1の立ち下がり)が検出されたか否かを判定する。ステップ103が肯定判定されたときには、ステップ104へ進み、否定判定されたときには、ステップ105へ進む。
このとき、ステップ103が肯定判定されることで、ステップ104において、立ち上がり期間tIGA_INが確定し、その関数f(tIGA_IN)で表される目標二次電流値I2tgtが確定される。
【0119】
図21に示されるように、実施形態1では、第1信号IG1の立ち上がりと立ち下がりが検出されることで、矩形波信号1aの立ち上がり期間tIGA_INが検出される(例えば、0.5ms)。これに伴い、IGA生成回路54から出力される目標二次電流指令信号IGAが徐々に上昇した後、一定値に保持される。この立ち上がり期間tIGA_INの長さに応じて、目標二次電流値I2tgtが可変設定され、上述の表1に示したように、例えば、0.5msであるとき、目標二次電流値I2tgtは、90mAである。
【0120】
次いで、ステップ106へ進み、IGW生成回路53において、矩形波信号1aの2回目の立ち上がり(すなわち、第2信号IG2の立ち上がり)が検出されたか否かを判定する。ステップ106が肯定判定されたときには、ステップ107へ進み、否定判定されたときには、ステップ108へ進む。
このとき、ステップ106が肯定判定されることで、ステップ107において、立ち上がり間隔tIGW_IN期間が確定し、これに基づいて、エネルギ投入期間tIGWが確定される。
【0121】
図21に示されるように、実施形態1では、第1信号IG1の立ち上がりと第2信号IG2の立ち上がりが検出されることで、矩形波信号1aの立ち上がり間隔tIGW_INが検出される(例えば、2.5ms)。これに伴い、立ち上がり間隔tIGW_INと同等長さのエネルギ投入期間tIGWが設定され(例えば、2.5ms)、所定の待機時間twait後に、エネルギ投入信号IGAが出力される。
【0122】
次いで、ステップ109へ進み、所定の待機時間twaitに到達したか否かを判定する。待機時間twaitは、IGT生成回路52のtwait生成回路521にて、矩形波信号1aの立ち上がりからの経過時間として別途生成されている。ステップ109が肯定判定されたときには、ステップ110へ進み、エネルギ供給用動作を開始実施する。ここで、エネルギ供給用動作とは、主点火動作及びエネルギ投入動作であり、実施形態1では、その両方が実施される。
【0123】
具体的には、まずステップ111において、矩形波信号1aの信号レベルがHレベルか否かを判定し、肯定判定されたときには、ステップ112へ進む。ステップ112では、主点火用駆動回路31から出力されるゲート信号IGBT_gateをHレベルとし、主点火スイッチSW1をオン駆動する。
これにより、図21において、主点火信号IGTが立ち上がり、主点火動作のための一次コイル21への通電が開始されて、一次電流I1が上昇する。
ステップ111が否定判定されたときには、ステップ116へ進む。
【0124】
ステップ113では、矩形波信号1aの信号レベルがLレベルか否かを判定し、肯定判定されたときには、ステップ114へ進む。ステップ114では、ゲート信号IGBT_gateをLレベルとして、主点火スイッチSW1をオフする。
これにより、図21において、主点火信号IGTが立ち下がり(例えば、立ち上がりから4ms後)、一次コイル21への通電が遮断される。そして、二次コイル22に発生する高電圧により、点火プラグPに火花放電が生起する。
【0125】
続いて、ステップ115において、エネルギ投入動作が実施される。具体的には、エネルギ投入動作のためのゲート信号MOS_gate1、MOS_gate2が、上記ステップ104、107で確定された目標二次電流値I2tgt、エネルギ投入期間tIGWに基づいて、副一次コイル制御回路41から所定のタイミングで出力され、放電継続スイッチSW2及び還流スイッチSW3が駆動される。
これにより、図21において、主点火信号IGTの立ち下がりから所定の遅れ期間tfil後(例えば、立ち上がりから0.1ms後)に、エネルギ投入動作が開始される。エネルギ投入動作は、所定のエネルギ投入期間tIGW(例えば、2.5ms)の間、目標二次電流値I2tgt(例えば、90mA)を維持するように実施され、二次電流I2、電流INETが流れる。
【0126】
その後、ステップ116へ進み、エネルギ投入動作のためのエネルギ投入期間tIGW及び目標二次電流値I2tgtをリセットする。その後、本処理を一旦終了する。
これにより、図21において、矩形波信号1aの立ち下がりから、所定のリセット期間treswaitが経過した後(例えば、立ち下がりから4ms後)に、エネルギ投入動作のための設定がリセットされ、初期状態に戻る。
このようにして、上記実施形態1に示した点火制御信号IGから、主点火信号IGT、エネルギ投入信号IGW及び目標二次電流指令信号IGAを生成し、主点火動作及びエネルギ投入動作を実施することができる。
【0127】
上記実施形態2に示した点火制御信号IGの場合には、上記したステップ103において、矩形波信号1aの立ち下がりが検出されず、否定判定される。その場合には、ステップ105へ進み、所定の待機時間twaitに到達したか否かを判定する。ステップ105以降の動作は、上述したステップ109以降の動作とほぼ同様であり、ステップ105が肯定判定されたときには、ステップ117へ進み、エネルギ供給用動作を開始する。
ステップ105が否定判定されたときには、ステップ102へ戻って、以降の動作を繰り返す。
【0128】
エネルギ供給用動作を開始する場合、具体的には、まずステップ118において、矩形波信号1aの信号レベルがHレベルか否かを判定する。肯定判定されたときには、ステップ119へ進んで、ゲート信号IGBT_gateをHレベルとし、主点火スイッチSW1をオン駆動する。
ステップ118が否定判定されたときには、ステップ122へ進む。
【0129】
ステップ120では、矩形波信号1aの信号レベルがLレベルか否かを判定する。肯定判定されたときには、ステップ121へ進んで、ゲート信号IGBT_gateをLレベルとして、主点火スイッチSW1をオフする。これにより、一次コイル21への通電が遮断されて、二次コイル22に発生する高電圧により、点火プラグPに火花放電が生起する。
【0130】
実施形態2では、主点火動作の後、エネルギ投入動作が実施されないので、続いて、ステップ122へ進み、矩形波信号1aの立ち下がりからリセット期間treswaitが経過した後に、エネルギ投入動作のためのエネルギ投入期間tIGW及び目標二次電流値I2tgtをリセットする。その後、本処理を一旦終了する。
【0131】
このようにして、上記実施形態2に示した点火制御信号IGから、主点火動作のための、主点火信号IGTを生成することができる。
【0132】
上記実施形態3[A]に示した点火制御信号IGの場合には、上記したステップ106において、矩形波信号1aの2回目の立ち上がりが検出されず、否定判定される。その場合には、ステップ108へ進み、所定の待機時間twaitに到達したか否かを判定する。ステップ108以降の動作は、上述したステップ109以降の動作とほぼ同様であり、ステップ108が肯定判定されたときには、ステップ117へ進み、エネルギ供給用動作を開始する。ステップ108が否定判定されたときには、ステップ106へ戻って、以降の動作を繰り返す。
【0133】
ステップ117において、エネルギ供給用動作が開始されると、続くステップ118において、矩形波信号1aの信号レベルがHレベルか否かが判定される。
実施形態3[A]では、矩形波信号1aが待機時間twaitより前に立ち下がるので、ステップ118は否定判定される。その場合には、ステップ122へ進み、矩形波信号1aの立ち下がりからリセット期間treswaitが経過した後に、エネルギ投入動作のためのエネルギ投入期間tIGW及び目標二次電流値I2tgtをリセットする。その後、本処理を一旦終了する。
【0134】
なお、実施形態3[B]の場合には、第1信号IG1と第2信号IG2を有するので、上記したステップ106において、矩形波信号1aの2回目の立ち上がりが検出される。その場合には、実施形態1と同様のフローとなり、ステップ107へ進んで、立ち上がり間隔tIGW_IN期間に基づいて、エネルギ投入期間tIGWを確定する。その後、ステップ109へ進み、所定の待機時間twaitに到達したか否かを判定する。ステップ109が肯定判定されたときには、ステップ110へ進み、エネルギ供給用動作を開始する。ステップ109が否定判定されたときには、ステップ106へ戻って、以降の動作を繰り返す。
【0135】
ステップ110において、エネルギ供給用動作が開始されると、続くステップ111において、矩形波信号1aの信号レベルがHレベルか否かが判定される。
実施形態3[B]では、第1信号IG1と第2信号IG2の両方が、待機時間twaitより前に立ち下がるので、ステップ111は否定判定される。その場合には、ステップ116へ進み、矩形波信号1aの立ち下がりからリセット期間treswaitが経過した後に、エネルギ投入動作のためのエネルギ投入期間tIGW及び目標二次電流値I2tgtをリセットする。その後、本処理を一旦終了する。
【0136】
このように、上記実施形態3[A]、[B]に示した点火制御信号IGの場合には、信号分離回路5にて主点火信号IGTが分離生成されず、主点火動作及びエネルギ投入動作は実施されない。
【0137】
(実施形態6)
点火制御装置に係る実施形態6について、図22図29を参照して説明する。
本形態では、上記実施形態1に示した点火制御装置1の点火装置10において、信号分離回路5にて受信される点火制御信号IGから、主点火信号IGTを分離生成するためのIGT生成回路52の他の構成例を示す。また、エネルギ投入信号IGWを分離生成するためのIGW生成回路53、目標二次電流指令信号IGAを分離生成するためのIGA生成回路54の他の構成例を示す。
【0138】
図22において、IGT生成回路52は、待機時間twaitを生成するためのtwait生成回路521、アンド回路522、523、インバータ回路524からなる。上記実施形態1と同様に、IGT生成回路52には、波形整形回路51からの矩形波信号1a、信号IGT_DCTが入力され、twait生成回路521から出力される信号2bと、矩形波信号1aとに基づいて、主点火信号IGTと信号2cを生成する
【0139】
上記実施形態1では、上記図8に示したように、IGT生成回路52を構成するtwait生成回路521を、カウンタ回路を用いたデジタル回路にて構成したが、本形態では、図示するように、定電流源528とコンデンサC4とコンパレータCMP2を含むアナログ回路にて構成している。定電流源528とコンデンサC4とは、スイッチSW7を介して接続され、コンデンサC4と並列に抵抗R5が配置されている。スイッチSW7は、初期状態においてオフとなっており、信号IGT_DCTがHレベルのときに、オンとなるように構成されている。
【0140】
図23に示すように、波形整形回路51からの矩形波信号1a、信号IGT_DCTが立ち上がると、定電流源528からコンデンサC4へ定電流が流れ、コンパレータCMP2の正端子に入力される電圧信号5aが徐々に上昇する。コンデンサC4の電圧が、コンパレータCMP2の負端子に入力される基準電位Vth2に到達すると、コンパレータCMP2から出力される信号2bがHレベルとなる。
【0141】
このとき、twait生成回路521において、信号IGT_DCTがHレベルとなってから信号2bがHレベルとなるまでの時間が、所定の待機時間twaitに相当する。待機時間twait後に、信号2bがHレベルとなると、信号2bと矩形波信号1aとの論理和に基づくアンド回路522の出力がHレベルとなる。すなわち、待機時間twaitの経過後に矩形波信号1aがHレベルであった場合のみ、主点火信号IGTをHレベルとすることが可能になる。
【0142】
なお、アンド回路523には、信号2bの反転信号と信号IGT_DCTとが入力され、これらの論理積に基づいて出力される信号2cは、所定の待機時間twaitの間、Hレベルとなる。
【0143】
あるいは、図24に示すように、IGT生成回路52のtwait生成回路521を、複数のインバータ回路524a、524bとCR時定数回路を含む遅延回路として構成することもできる。CR時定数回路は、コンデンサC5と抵抗R6の時定数を用いた回路であり、その入力側及び出力側に、インバータ回路524a、524bがそれぞれ接続される。
【0144】
その場合には、図25に示すように、波形整形回路51からの信号IGT_DCTが立ち上がると、twait生成回路521において、遅延された波形を有する信号5bが出力される。信号5bは、立ち上がりが緩やかとなるために、基準電位Vth3に到達するまでに一定の時間を要し、その2回反転信号である信号2bは、Lレベルのままとなる。基準電位Vth3に到達すると、信号5bはHレベルとなり、信号2bもHレベルに立ち上がる。
【0145】
したがって、twait生成回路521における遅延時間を、所定の待機時間twaitに対応させることで、同様にして主点火信号IGTの出力が可能になる。その場合には、コンパレータや基準電圧、定電流源等を用いる必要がないため、回路構成を簡素化することができる。
また、デジタル回路のカウンタを用いて待機時間twaitを検出するようにしてもよい。
【0146】
また、図26に示すように、IGW生成回路53を、アナログ積分回路を用いて構成とすることもできる。
具体的には、IGW生成回路53は、オペアンプAMPと抵抗RIGWとコンデンサCIGWとを有する積分回路534と、コンパレータCOMPと、アンド回路535及びインバータ回路536と、複数のスイッチSW1IGW~SW3IGWと、リセットスイッチRESIGWとを有する。積分回路534には、波形整形回路51から信号IGW_DCTが入力され、積分回路534からの出力は、コンパレータCOMPを介して、アンド回路535の一方の端子に入力される。アンド回路535の他方の端子には、波形整形回路51からの矩形波信号1aが、インバータ回路536を介して反転させた信号が入力される。
【0147】
積分回路534の入力側には、電源(例えば、5V)に接続されたスイッチSW1IGWと接地電位のスイッチSW2IGWとが、切り替え可能に接続され、抵抗RIGWとコンデンサCIGWとの間には、スイッチSW3IGWが介設されている。コンデンサCIGWの両端子間には、リセットスイッチRESIGWが接続される。
【0148】
図27に示すように、初期状態において、スイッチSW1IGWはオン、スイッチSW2IGW、SW3IGWはオフとなっている。次いで、信号IGW_DCTの立ち上がりを検出して、スイッチSW3IGWをオンすることで、コンデンサCIGWへの通電が開始され、信号IGW_DCTがHレベルとなっている間、コンデンサCIGWに電荷が充電されて、充電時間が電圧VCIGWに変換される。その後、信号IGW_DCTの再立ち上がりを検出して、スイッチSW1IGW、SW3IGWをオフすることで、コンデンサCIGWの電圧VCIGWが保持される。その際、スイッチSW2IGWをオンとすることで、コンデンサCIGWの電荷を放電する準備をする。
【0149】
その間、アンド回路535へ矩形波信号1aの反転信号が入力されるが、コンパレータCOMPへの入力は基準電圧VthIGWを下回り、エネルギ投入信号IGWはLレベルのままとなる。その後、IGT生成回路52にて生成される待機時間twaitが経過し、かつ、矩形波信号1aがHレベルであった場合には、矩形波信号1aの立ち下がり(主点火放電)から所定の遅れ期間tfil後に、スイッチSW3IGWをオンとすることで、コンデンサCIGWの電荷が放電される。
【0150】
これにより、コンパレータCOMPからの出力が上昇して、アンド回路535からの出力がHレベルとなる。コンデンサCIGWの電圧VCIGWは、充電時間に対応する放電時間を有して徐々に低下し、基準電圧VthIGWを下回るまでの期間をエネルギ投入期間tIGWとして、Hレベルのエネルギ投入信号IGWが出力される。その後、スイッチSW1IGW~SW3IGWは、初期状態に戻る。
【0151】
さらに、図28に示すように、IGA生成回路54を、アナログ回路にて構成とすることもできる。具体的には、IGA生成回路54は、上記実施形態1のようなアップカウンタ回路を用いる代わりに、定電流源541とコンデンサCIGAとを用いて、矩形波信号1a基づく信号IGA_DCTから、その立ち上がり期間tIGA_INを検出する。定電流源541とコンデンサCIGAはスイッチSW1IGAを介して接続され、コンデンサCIGAと並列にスイッチSW2IGAが配置されている。
【0152】
このとき、図29に示すように、初期状態において、スイッチSW1IGAはオフ、スイッチSW2IGAはオンとなっている。次いで、信号IGA_DCTの立ち上がりを検出して、スイッチSW1IGAをオン、スイッチSW2IGAはオフとすることで、信号IGA_DCTがHレベルとなっている間、コンデンサCIGAに電荷が充電され、目標二次電流指令信号IGAが上昇する。次いで、信号IGA_DCTがLレベルとなると、スイッチSW1IGA、SW2IGAはオフとなり、目標二次電流指令信号IGAが保持される。
【0153】
その後、IGT生成回路52にて生成される待機時間twaitが経過し、かつ、矩形波信号1aがHレベルであった場合には、矩形波信号1aの立ち下がりで主点火放電が実施され、さらに所定の遅れ期間tfil後に、エネルギ投入信号IGWが立ち上がる。これにより、エネルギ投入期間tIGWの間、目標二次電流指令信号IGAに基づいて、エネルギ投入動作が実施される。目標二次電流指令信号IGAは、上記実施形態1の表1と同様にして、例えば、その電圧値が大きくなるほど、目標二次電流値I2tgtが大きくなるように設定される。エネルギ投入信号IGWが立ち下がると、スイッチSW1IGA、SW2IGAは、初期状態に戻る。
【0154】
このように、IGT生成回路52、IGW生成回路53、IGA生成回路54は、デジタル回路又はアナログ回路を用いた、種々の構成とすることができる。
【0155】
(実施形態7)
点火制御装置に係る実施形態7について、図30を参照して説明する。
上記実施形態では、点火コイル2の一次コイル21を、主一次コイル21aと副一次コイル21bとで構成して、直流電源Bに対して並列に接続されるようにしたが、これに限らず、図30に示すように、点火コイル2は、一次コイル21と二次コイル22とで構成してもよい。また、エネルギ投入回路部4に、昇圧回路42とコンデンサ43とを設けて、コンデンサ43に蓄積されたエネルギを、一次コイル21の接地側へ重畳的に投入するようにしてもよい。
【0156】
本形態において、昇圧回路42は、昇圧用のスイッチング素子(以下、昇圧用スイッチと称する)SW8と、昇圧用スイッチSW8を駆動するための昇圧用ドライバ回路421と、チョークコイル422と、ダイオード423とを備える。昇圧用ドライバ回路421は、昇圧用スイッチSW8をスイッチング動作させ、チョークコイル422に発生させたエネルギを、コンデンサ43へ蓄積させる。放電継続スイッチSW9は、一次コイル21と主点火スイッチSW1との間に、ダイオード44を介して接続され、エネルギ投入用ドライバ回路45によって駆動される。ダイオード423はコンデンサ43へ向かう方向を、ダイオード44は、一次コイル21へ向かう方向を、それぞれ順方向としている。
【0157】
昇圧用ドライバ回路421は、主点火信号IGTに基づいて駆動されて、主点火動作中にコンデンサ43に充電する。エネルギ投入用ドライバ回路45は、目標二次電流指令信号IGAとエネルギ投入信号IGWに基づいて、主点火動作後のエネルギ投入期間tIGWに、放電継続スイッチSW9を駆動させることで、コンデンサ43に蓄積されたエネルギを一次コイル21への接地側へ重畳的に投入する。このような構成によっても、二次電流I2と同極性の電流を増加させることで、エネルギ投入動作を実施して、火花放電を継続させることができる。
【0158】
このように、点火コイル2やエネルギ投入回路部4の構成は、任意に変更することができる。例えば、上記第1実施形態の構成において、実施形態7の昇圧回路42を設けて、副一次コイル21bへ昇圧回路42から給電して、エネルギ投入動作を行ってもよい。また、一次コイル21と二次コイル22からなる点火コイル2を、複数組、例えば2組設けて、一方の点火コイル2にて、主点火動作を行うと共に、他方の点火コイル2を用いて、エネルギ投入動作を行ってもよい。
【0159】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、点火制御信号IGは、信号電圧がHレベルであるときに論理「1」とする正論理信号の場合で説明したが、電位が逆になる負論理信号であってもよい。点火制御信号IG以外の信号も同様であり、適宜設定することができる。
【0160】
点火制御装置1が適用される内燃機関は、自動車用のガソリンエンジンの他、火花点火式の各種内燃機関とすることができる。また、点火コイル2や点火装置10の構成は、取り付けられる内燃機関に応じて適宜変更することができ、主点火動作後にエネルギ投入動作が可能な構成となっていればよい。例えば、点火コイル2を2組設けて、二次コイル22同士を直列接続した構成とし、一方で発生した二次電流を他方へ供給可能とすることもできる。
【符号の説明】
【0161】
P 点火プラグ
1 点火制御装置
10 点火装置
2 点火コイル
21 一次コイル
22 二次コイル
3 主点火回路部
4 エネルギ投入回路部
5 信号分離回路部
100 点火制御信号送信部
図1
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