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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】保護デバイス制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20221220BHJP
   B60R 21/38 20110101ALI20221220BHJP
   B60R 21/0136 20060101ALI20221220BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60R21/36 310
B60R21/36 350
B60R21/38 310
B60R21/38 320
B60R21/0136 320
B60R21/0134 311
B60R21/0134 312
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019090004
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020185828
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 亜星
(72)【発明者】
【氏名】中根 大祐
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-081052(JP,A)
【文献】特開平07-246908(JP,A)
【文献】特開2018-043635(JP,A)
【文献】特開2003-226211(JP,A)
【文献】特開2017-065293(JP,A)
【文献】特開2004-330825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対人衝突の際に歩行者等の保護対象者を保護する保護デバイス(30)の動作を制御するように構成された、保護デバイス制御装置(200)であって、
前記対人衝突の発生により車両(1)における車体(10)に作用する衝撃を検知する衝突検知センサ(201)による衝突検知結果を取得するように設けられた、第一結果取得部(211)と、
前記車両の周囲に存在する物体を検知する物体検知部(202)による物体検知結果を取得するように設けられた、第二結果取得部(212)と、
前記第一結果取得部が前記衝突検知結果を取得した場合、前記保護デバイスであって前記保護対象者を車体前面部(13)との二次衝突から保護するように構成された第一保護デバイスを起動するとともに、前記第二結果取得部にて取得した前記物体検知結果に応じて前記保護デバイスである第二保護デバイスを起動するように設けられた、デバイス起動部(214)と、
備え、
前記車体前面部は、前記車体におけるフロントフード(14)、カウルトップ(15)、フロントピラー(16)、およびウィンドシールド(17)を含み、
前記第一保護デバイスは、前記フロントフードにおける少なくとも後端側を押し上げるフードアクチュエータ(31a)を含み、
前記第二保護デバイスは、前記フードアクチュエータにより押し上げられた前記フロントフードをさらに押し上げる追加フードアクチュエータ(31b)を含む、
護デバイス制御装置。
【請求項2】
前記デバイス起動部は、前記第二結果取得部にて取得した前記物体検知結果に基づいて推定される前記保護対象者の挙動に応じて、前記第二保護デバイスを起動するように構成された、
請求項1に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項3】
前記第一保護デバイスは、前記車体前面部にて展開する前面エアバッグ(32a)を含む、
請求項1または2に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項4】
前記第二保護デバイスは、前記車体の前端部(11)と路面(R)との間にて展開する巻込防止エアバッグ(32e)、または、前記車体の側方もしくは前方にて前記路面上もしくは前記路面上方に展開する路面展開デバイス(32f、32g)を含む、
請求項1~3のいずれか1つに記載の保護デバイス制御装置。
【請求項5】
前記デバイス起動部は、前記路面展開デバイスの展開領域が前記路面上に確保されているか否かを判定するとともに、前記展開領域が前記路面上に確保されていると判定した場合に前記路面展開デバイスを展開するように構成された、
請求項4に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項6】
前記デバイス起動部は、前記展開領域が前記路面上に確保されていないと判定した場合、前記展開領域を確保するための前記車両の走行挙動制御を挙動制御システム(40)に要求するとともに、前記展開領域の確保を判定するまで前記路面展開デバイスの展開を待機するように構成された、
請求項5に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項7】
対人衝突の際に歩行者等の保護対象者を保護する保護デバイス(30)の動作を制御するように構成された、保護デバイス制御装置(200)であって、
前記対人衝突の発生により車両(1)における車体(10)に作用する衝撃を検知する衝突検知センサ(201)による衝突検知結果を取得するように設けられた、第一結果取得部(211)と、
前記車両の周囲に存在する物体を検知する物体検知部(202)による物体検知結果を取得するように設けられた、第二結果取得部(212)と、
前記第一結果取得部が前記衝突検知結果を取得した場合、前記保護デバイスである第一保護デバイスを起動するとともに、前記第二結果取得部にて取得した前記物体検知結果に応じて前記保護デバイスである第二保護デバイスを起動するように設けられた、デバイス起動部(214)と、
を備え、
前記第二保護デバイスは、前記車体の前端部(11)と路面(R)との間にて展開する巻込防止エアバッグ(32e)、または、前記車体の側方もしくは前方にて前記路面上もしくは前記路面上方に展開する路面展開デバイス(32f、32g)を含む、
護デバイス制御装置。
【請求項8】
前記デバイス起動部は、前記第二結果取得部にて取得した前記物体検知結果に基づいて推定される前記保護対象者の挙動に応じて、前記第二保護デバイスを起動するように構成された、
請求項7に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項9】
前記第一保護デバイスは、前記保護対象者を前記車体におけるフロントフード(14)、カウルトップ(15)、フロントピラー(16)、およびウィンドシールド(17)を含む車体前面部(13)との二次衝突から保護するように構成された、
請求項7または8に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項10】
前記第一保護デバイスは、前記車体前面部にて展開する前面エアバッグ(32a)を含む、
請求項9に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項11】
前記第一保護デバイスは、前記フロントフードにおける少なくとも後端側を押し上げるフードアクチュエータ(31a)を含み、
前記第二保護デバイスは、前記フードアクチュエータにより押し上げられた前記フロントフードをさらに押し上げる追加フードアクチュエータ(31b)を含む、
請求項9または10に記載の保護デバイス制御装置。
【請求項12】
前記デバイス起動部は、前記路面展開デバイスの展開領域が前記路面上に確保されているか否かを判定するとともに、前記展開領域が前記路面上に確保されていると判定した場合に前記路面展開デバイスを展開するように構成された、
請求項7~11のいずれか1つに記載の保護デバイス制御装置。
【請求項13】
前記デバイス起動部は、前記展開領域が前記路面上に確保されていないと判定した場合、前記展開領域を確保するための前記車両の走行挙動制御を挙動制御システム(40)に要求するとともに、前記展開領域の確保を判定するまで前記路面展開デバイスの展開を待機するように構成された、
請求項12に記載の保護デバイス制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対人衝突の際に歩行者等の保護対象者を保護する保護デバイスの動作を制御する、保護デバイス制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両用歩行者保護装置を開示する。この装置は、歩行者との当接を予知して、当該歩行者を受け止めるエアバッグ等の緩衝部材をフロントバンパ前方に展開させる。歩行者との当接を予知する手段としては、例えば、車両の進行方向に存在する物体との距離を測定するミリ波レーダ等の当接予知センサが用いられ得る。あるいは、歩行者との当接を予知する手段として、例えば、進行方向に存在する物体が歩行者か否かを検知する画像センサ等の歩行者検知センサが組み合わせられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-334895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の制御装置および制御方法において、保護対象者である歩行者等の保護性能を、よりいっそう高めることが求められている。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、保護対象者である歩行者等の保護性能がよりいっそう高められた、保護デバイス制御装置および保護デバイス制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
保護デバイス制御装置(200)は、対人衝突の際に保護対象者を保護する保護デバイス(30)の動作を制御するように構成されている。前記保護対象者は、歩行者等である。すなわち、例えば、前記対人衝突における衝突対象が前記歩行者である場合、前記保護対象者は当該歩行者である。あるいは、例えば、前記衝突対象が自転車等の二輪車あるいは軽車両である場合、前記保護対象者は当該二輪車あるいは軽車両の乗員である。
請求項1に記載の保護デバイス制御装置は、
前記対人衝突の発生により車両(1)における車体(10)に作用する衝撃を検知する衝突検知センサ(201)による衝突検知結果を取得するように設けられた、第一結果取得部(211)と、
前記車両の周囲に存在する物体を検知する物体検知部(202)による物体検知結果を取得するように設けられた、第二結果取得部(212)と、
前記第一結果取得部が前記衝突検知結果を取得した場合、前記保護デバイスであって前記保護対象者を車体前面部(13)との二次衝突から保護するように構成された第一保護デバイスを起動するとともに、前記第二結果取得部にて取得した前記物体検知結果に応じて前記保護デバイスである第二保護デバイスを起動するように設けられた、デバイス起動部(214)と、
備え、
前記車体前面部は、前記車体におけるフロントフード(14)、カウルトップ(15)、フロントピラー(16)、およびウィンドシールド(17)を含み、
前記第一保護デバイスは、前記フロントフードにおける少なくとも後端側を押し上げるフードアクチュエータ(31a)を含み、
前記第二保護デバイスは、前記フードアクチュエータにより押し上げられた前記フロントフードをさらに押し上げる追加フードアクチュエータ(31b)を含む。
請求項7に記載の保護デバイス制御装置は、
前記対人衝突の発生により車両(1)における車体(10)に作用する衝撃を検知する衝突検知センサ(201)による衝突検知結果を取得するように設けられた、第一結果取得部(211)と、
前記車両の周囲に存在する物体を検知する物体検知部(202)による物体検知結果を取得するように設けられた、第二結果取得部(212)と、
前記第一結果取得部が前記衝突検知結果を取得した場合、前記保護デバイスである第一保護デバイスを起動するとともに、前記第二結果取得部にて取得した前記物体検知結果に応じて前記保護デバイスである第二保護デバイスを起動するように設けられた、デバイス起動部(214)と、
を備え、
前記第二保護デバイスは、前記車体の前端部(11)と路面(R)との間にて展開する巻込防止エアバッグ(32e)、または、前記車体の側方もしくは前方にて前記路面上もしくは前記路面上方に展開する路面展開デバイス(32f、32g)を含む。
【0006】
前記対人衝突が発生した場合、上記構成を有する保護デバイス制御装置において、前記第一結果取得部は、前記衝突検知センサによる前記衝突検知結果を取得する。すると、前記デバイス起動部は、前記第一保護デバイスを起動する。前記第一保護デバイスは、典型的には、例えば、前記対人衝突が発生した場合に起動必要性が高いものであって、具体的には、前記保護対象者を前記車体におけるフロントフード等の前面部との二次衝突から保護するものである。これにより、前記対人衝突における前記保護対象者は、前記第一保護デバイスにより保護される。
【0007】
但し、前記対人衝突の状況によっては、前記第一保護デバイスによる保護に加えて、追加の保護が必要となる場合があり得る。すなわち、例えば、前記保護対象者が、前記第一保護デバイスによる保護範囲内から、保護範囲外に移動することがあり得る。前記保護対象者の移動先が、衝撃吸収性が低い路面等である場合、当該移動先においても前記保護対象者を保護することが望ましい。あるいは、例えば、前記保護対象者が身長の低い子供等の歩行者である場合、当該保護対象者が前記車体の前端部の下側に潜り込むことがあり得る。
【0008】
そこで、前記第二結果取得部は、前記車両の周囲に存在する前記物体を検知する前記物体検知部による前記物体検知結果を取得する。すると、前記デバイス起動部は、前記第二結果取得部にて取得した前記物体検知結果に応じて、前記第二保護デバイスを起動する。これにより、前記保護対象者は、前記第二保護デバイスにより追加的に保護される。
【0009】
このように、本開示に係る装置および方法は、前記衝突検知結果を取得した場合、前記第一保護デバイスを起動するとともに、前記物体検知結果に応じて前記第二保護デバイスを起動する。したがって、本開示によれば、前記保護対象者の保護性能がよりいっそう高められた、保護デバイス制御装置および保護デバイス制御方法が提供される。
【0010】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の単なる一例を示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る保護デバイス制御装置を搭載した車両の概略構成を示す平面図である。
図2図1に示された巻込防止エアバッグおよび前方エアバッグの展開状態を示す側面図である。
図3図1に示された前面エアバッグおよび側方エアバッグの展開状態を示す斜視図である。
図4図1に示された保護デバイス制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図4に示されたデバイス起動部におけるロジック構成の一例を示すブロック図である。
図6図4に示されたデバイス起動部におけるロジック構成の一例を示すブロック図である。
図7図4に示されたデバイス起動部におけるロジック構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0013】
(車両)
図1を参照すると、車両1は、いわゆる自動車であって、所定の剛性を有する箱状の車体10を備えている。車両1および車体10における「前」「後」「左」「右」を、図1中にて矢印で示された通りに定義する。なお、前後方向を「車両全長方向」を称し、左右方向を「車幅方向」と称し、車両全長方向と直交し且つ車幅方向と直交する方向を「車高方向」と称することがある。
【0014】
車体10の前端部11には、フロントバンパ12が装着されている。また、車体前面部13には、フロントフード14と、カウルトップ15と、フロントピラー16と、ウィンドシールド17とが設けられている。車体前面部13は、車体10の上面部における、前進時の進行方向側の空間に面する部分である。
【0015】
フロントフード14は、車体10の外板を構成する金属あるいは合成樹脂製の板材を有している。フロントフード14は、閉塞状態にて、前端部がフロントバンパ12の上方に位置するとともに後端部がカウルトップ15の近傍に位置するように設けられている。カウルトップ15は、左右一対のフロントピラー16の各々における前端部すなわち下端部の間に配置されている。
【0016】
カウルトップ15は、ウィンドシールド17における前端部すなわち下端部に対して前方側に隣接するように、車幅方向に沿って延設されている。カウルトップ15は、金属あるいは合成樹脂によって、所定の剛性を有するように形成されている。
【0017】
フロントピラー16は、車体10の外板を構成する金属あるいは合成樹脂製の板材により、所定の剛性を有するように形成されている。ウィンドシールド17は、左右一対のフロントピラー16の間に設けられている。また、車体10におけるフロントフェンダ部分およびドアパネル部分を含む車体側面部18は、車体10の外板を構成する金属あるいは合成樹脂製の板材を有している。
【0018】
(対人保護システム)
車両1には、対人保護システム20が搭載されている。対人保護システム20は、対人衝突の際に保護対象者を保護するように構成されている。「対人衝突」における、車両1との衝突対象は、歩行者、乗員付き二輪車、乗員付き車椅子、等である。「二輪車」には、自転車、自動二輪車、等が含まれる。「自転車」には子供用三輪車が含まれる。すなわち、対人衝突における保護対象者には、歩行者と保護対象車両の乗員とが含まれる。「保護対象車両」は、実施形態に係る対人保護システム20を搭載した車両1と衝突する他車両であって、当該他車両の乗員を車両1における車体10または路面Rとの衝突から保護すべき当該他車両である。「保護対象車両」には、自転車、車椅子、自動二輪車、等が含まれる。「対人衝突」における車両1との衝突対象物体である、歩行者と保護対象車両とを総称して、以下「特定物体」と称する。「特定物体」は「保護対象物体」あるいは「交通弱者」とも称され得る。
【0019】
このように、対人保護システム20が動作する「対人衝突」は、歩行者等である保護対象者が車両1と直接的に衝突した場合に限定されない。すなわち、保護対象者が乗員として搭乗する自転車等の保護対象車両が車両1と衝突することで、当該乗員が車両1と直接的あるいは間接的に衝突した場合も、「対人衝突」に含まれる。対人保護システム20は、交通弱者保護システムとも称され得る。以下、図1図3を参照しつつ、本実施形態に係る対人保護システム20の具体的構成について詳述する。
【0020】
対人保護システム20は、対人衝突の際に保護対象者を保護する保護デバイス30を備えている。保護デバイス30は、車両1と特定物体との一次衝突が発生した場合に、保護対象者が車体10等と二次衝突することによって受ける衝撃を軽減するように設けられている。「一次衝突」とは、対人衝突における、車両1と特定物体との最初の衝突であり、典型的にはフロントバンパ12と特定物体との衝突である。「二次衝突」とは、一次衝突に続いて発生する、保護対象者の車体10または路面Rとの衝突である。なお、「一次衝突」は、1回の対人衝突において1回しか発生し得ないものである。これに対し、「二次衝突」は、1回の対人衝突において複数回発生し得るものである。すなわち、例えば、一次衝突後に保護対象者がフロントフード14に衝突した後に路面Rに落下する場合、保護対象者とフロントフード14との衝突も、保護対象者と路面Rとの衝突も、ともに「二次衝突」である。
【0021】
対人保護システム20は、保護デバイス30として、ポップアップフード装置31を備えている。ポップアップフード装置31は、フロントフード14における少なくとも後端側を押し上げることで、二次衝突時に保護対象者に加わる衝撃を緩和するように構成されている。
【0022】
本実施形態においては、ポップアップフード装置31は、フードアクチュエータ31aと追加フードアクチュエータ31bとを有している。図2に示されているように、フードアクチュエータ31aは、フロントフード14における後端部を、閉止位置P0から第一押上位置P1に押し上げるように設けられている。追加フードアクチュエータ31bは、フードアクチュエータ31aにより押し上げられたフロントフード14をさらに押し上げるように設けられている。具体的には、追加フードアクチュエータ31bは、フロントフード14における後端部を、第一押上位置P1よりもさらに上方の第二押上位置P2に押し上げるように構成されている。
【0023】
また、対人保護システム20は、保護デバイス30として、歩行者エアバッグ装置32を備えている。すなわち、本実施形態においては、対人保護システム20は、保護デバイス30を複数種類備えている。歩行者エアバッグ装置32は、対人衝突発生時にエアバッグを展開することで、保護対象者を保護するように構成されている。
【0024】
歩行者エアバッグ装置32は、車体前面部13にて展開する前面エアバッグ32aを有している。前面エアバッグ32aは、上面エアバッグ32bと、右ピラーエアバッグ32cと、左ピラーエアバッグ32dとを有している。上面エアバッグ32bは、カウルトップ15に沿って展開するように設けられている。右ピラーエアバッグ32cは、上面エアバッグ32bの右端部から右側のフロントピラー16に沿って斜め上方に展開するように設けられている。左ピラーエアバッグ32dは、上面エアバッグ32bの左端部から左側のフロントピラー16に沿って斜め上方に展開するように設けられている。
【0025】
図3に示されているように、前面エアバッグ32aは、一体的に展開するように構成されている。具体的には、右ピラーエアバッグ32cは、上面エアバッグ32bの右端部と連通するように設けられている。また、左ピラーエアバッグ32dは、上面エアバッグ32bの左端部と連通するように設けられている。すなわち、右ピラーエアバッグ32cと、上面エアバッグ32bと、左ピラーエアバッグ32dとは、連続した1個の前面エアバッグ32aとして、一体的に形成されている。
【0026】
本実施形態においては、歩行者エアバッグ装置32は、さらに、巻込防止エアバッグ32eと、前方エアバッグ32fと、側方エアバッグ32gとを有している。図2に示されているように、巻込防止エアバッグ32eは、車体10の前端部11と路面Rとの間にて展開するように構成されている。すなわち、巻込防止エアバッグ32eは、一次衝突後の保護対象者が車体10の前端部11と路面Rとの間に潜り込むことを防止するようになっている。
【0027】
図2に示されているように、路面展開デバイスである前方エアバッグ32fは、車体10の前方にて路面R上に展開するように設けられている。すなわち、前方エアバッグ32fは、一次衝突後の保護対象者が車体10の前方にて路面R上に落下する際に保護対象者に加わる衝撃を緩和するように構成されている。
【0028】
図3に示されているように、側方エアバッグ32gは、車体側面部18におけるフロントフェンダ部分の上にて展開するとともに、車体10の側方にて路面R上に展開するように設けられている。すなわち、側方エアバッグ32gは、一次衝突後の保護対象者がフロントフェンダ部分と二次衝突する際に保護対象者に加わる衝撃を緩和するように構成されている。また、路面展開デバイスである側方エアバッグ32gは、一次衝突後の保護対象者が車体10の側方にて路面R上に落下する際に保護対象者に加わる衝撃を緩和するように構成されている。さらに、側方エアバッグ32gは、側方エアバッグ32gにおける車体側面部18上にて展開する部分との二次衝突後の保護対象者が車体10の側方にて路面R上に落下する際に保護対象者に加わる衝撃を緩和するように構成されている。
【0029】
図1に示されているように、対人保護システム20は、車両1に搭載された挙動制御システム40と情報通信可能に接続されている。挙動制御システム40は、車両1の走行挙動制御を実行するように構成されている。具体的には、いわゆるプリクラッシュセーフティシステムを構成する挙動制御システム40は、挙動制御ECU41と、駆動系ECU42と、制動系ECU43と、操舵系ECU44とを有している。ECUはElectronic Control Unitの略である。
【0030】
挙動制御ECU41は、衝突回避等のために必要な車両1の走行挙動制御量を算出するようになっている。また、挙動制御ECU41は、算出した走行挙動制御量を、駆動系ECU42、制動系ECU43、および操舵系ECU44に送信するようになっている。駆動系ECU42は、挙動制御ECU41から受信した走行挙動制御量に基づいて、車両1における不図示のエンジン等の駆動系を制御するようになっている。制動系ECU43は、挙動制御ECU41から受信した走行挙動制御量に基づいて、車両1における不図示の制動系を制御するようになっている。操舵系ECU44は、挙動制御ECU41から受信した走行挙動制御量に基づいて、車両1における不図示の操舵系を制御するようになっている。
【0031】
(保護デバイス制御装置)
車両1には、保護デバイス制御装置200が搭載されている。保護デバイス制御装置200は、保護デバイス30の動作を制御するように構成されている。具体的には、保護デバイス制御装置200は、車両1と特定物体との衝突である対人衝突が検知された場合に、対人保護システム20を動作させるように構成されている。以下、保護デバイス制御装置200を構成する各部について説明する。
【0032】
車体10の前端部11には、衝突検知センサ201が備えられている。衝突検知センサ201は、対人衝突の発生により車体10に作用する衝撃を検知するように設けられている。具体的には、衝突検知センサ201は、物体とフロントバンパ12との衝突により印加された衝撃に応じた出力を発生するように構成されている。
【0033】
本実施形態においては、衝突検知センサ201は、車幅方向に沿った長手方向を有する長尺状に形成された圧力チューブ式センサであって、フロントバンパ12内に収容されている。具体的には、衝突検知センサ201は、チューブ部材201aと、右側圧力センサ201bと、左側圧力センサ201cとを有している。
【0034】
チューブ部材201aは、車幅方向に沿って延設された管状部材であって、合成ゴム等の合成樹脂によって形成されている。チューブ部材201aの一端部には、右側圧力センサ201bが装着されている。チューブ部材201aの他端部には、左側圧力センサ201cが装着されている。右側圧力センサ201bは、当該右側圧力センサ201bに作用した、チューブ部材201a内の流体圧力に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。左側圧力センサ201cは、当該左側圧力センサ201cに作用した、チューブ部材201a内の流体圧力に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。このような、圧力チューブ式センサである衝突検知センサ201の具体的な構成および配置については、本願の出願時点で既に公知あるいは周知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0035】
車体10には、物体検知部202が搭載されている。物体検知部202は、車両1の周囲に存在する物体を検知するように設けられている。すなわち、物体検知部202は、フロントバンパ12に対する物体の衝突前に、当該物体の種別を認識可能に検知するとともに、当該物体までの距離を取得するように構成されている。物体検知部202は、「予防センサ」あるいは「ADASセンサ」とも称され得る。ADASはAdvanced Driver Assistance Systemの略である。
【0036】
本実施形態においては、物体検知部202は、画像センサ202aと、測距センサ202bと、センサECU202cとを備えている。画像センサ202aは、「カメラセンサ」とも称されるものであって、CMOSまたはCCD等の撮像素子を有している。CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの略である。CCDはCharge Coupled Deviceの略である。具体的には、画像センサ202aは、車両1の前方を含む撮像範囲に存在する物体に対応する画像を撮像して、撮像結果に対応する画像信号を出力するように構成されている。この場合の、車両1の「前方」は、車両1の斜め前方も含む。具体的には、画像センサ202aは、車両1の前方、および、車体10におけるフロントフェンダ部分の側方を撮像範囲とするように設けられている。
【0037】
測距センサ202bは、車両1の前方に存在する物体との距離に対応する測距信号を出力するように構成されている。具体的には、測距センサ202bは、いわゆるミリ波レーダセンサであって、ミリ波の送受信によって、画像センサ202aの撮像範囲内に存在する物体に対応する測距信号を取得および出力するようになっている。
【0038】
センサECU202cは、画像センサ202aおよび測距センサ202bの出力に基づいて、車両1の前方に存在する物体を検知するように構成されている。すなわち、センサECU202cは、画像信号と測距信号とを対応付けることで、車両1の前方に存在する物体における、種別と車両1との相対位置とを取得するようになっている。「種別」は、例えば、人間、自転車、車椅子、動物、障害物、等である。「動物」は、例えば、鹿等の、対人保護システム20を動作させる必要がない小動物である。「障害物」は、例えば、柱、壁、建物、他車両、等である。
【0039】
このように、物体検知部202は、カメラセンサとミリ波レーダセンサとを備えた、いわゆるフュージョンセンサとして構成されている。このような物体検知部202の具体的な構成および配置については、本願の出願時点で既に公知あるいは周知であるので、本明細書においてはこれ以上の説明は省略する。
【0040】
車体10には、車速センサ203と、操舵角センサ204と、ヨーレートセンサ205と、加速度センサ206とが搭載されている。車速センサ203は、車両1の走行速度に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。車両1の走行速度を、以下単に「車速」と称する。操舵角センサ204は、車両1の操舵角に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。ヨーレートセンサ205は、車体10に作用するヨーレートに対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。加速度センサ206は、車体10に作用する加速度に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。
【0041】
デバイス制御ECU210は、複数の保護デバイス30の各々および衝突検知センサ201と、ASRBあるいはDSI等の所定の車載通信回線を介して接続されている。ASRBはAutomotive Safety Restraints Busの略である。DSIはDistributed System Interfaceの略である。また、デバイス制御ECU210は、物体検知部202、車速センサ203、操舵角センサ204、ヨーレートセンサ205、および加速度センサ206と、CAN等の所定の車載通信回線を介して接続されている。CANは国際登録商標でありController Area Networkの略である。さらに、デバイス制御ECU210は、挙動制御システム40における挙動制御ECU41と、CANあるいはFlexRay等の所定の車載通信回線を介して接続されている。FlexRayは国際登録商標である。
【0042】
保護デバイス制御装置200の主要部をなすデバイス制御ECU210は、対人保護システム20の動作を制御するように構成されている。具体的には、デバイス制御ECU210は、いわゆる車載マイクロコンピュータであって、不図示のCPU、ROM、不揮発性リライタブルメモリ、RAM、入出力インタフェース、等を備えている。CPUはCentral Processing Unitの略である。ROMはRead Only Memoryの略である。不揮発性リライタブルメモリは、例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、等である。EPROMはErasable Programmable Read Only Memoryの略である。EEPROMはElectrically Erasable Programmable Read Only Memoryの略である。RAMはRandom access memoryの略である。ROM、不揮発性リライタブルメモリ、およびRAMは、非遷移的実体的記憶媒体である。デバイス制御ECU210のCPU、ROM、RAMおよび不揮発性リライタブルメモリを、以下単に「CPU」、「ROM」、「RAM」および「不揮発性RAM」と略称する。
【0043】
デバイス制御ECU210は、CPUがROMまたは不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで、各種の制御動作を実現可能に構成されている。また、ROMまたは不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータが、あらかじめ格納されている。各種のデータには、例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ、等が含まれている。
【0044】
(デバイス制御ECU)
図4を参照すると、デバイス制御ECU210は、車載マイクロコンピュータにて実現される機能上の構成として、第一結果取得部211と、第二結果取得部212と、車両情報取得部213と、デバイス起動部214とを有している。
【0045】
第一結果取得部211は、衝突検知センサ201による衝突検知結果を取得するようになっている。具体的には、本実施形態においては、第一結果取得部211は、圧力チューブ式センサである衝突検知センサ201に設けられた右側圧力センサ201bおよび左側圧力センサ201cからの出力信号を受信するようになっている。
【0046】
第二結果取得部212は、物体検知部202による物体検知結果を取得するようになっている。具体的には、本実施形態においては、第二結果取得部212は、車両1の前方に存在する物体についての、種別と車両1に対する相対位置および相対速度とを、物体検知部202から受信するようになっている。また、第二結果取得部212は、受信した物体検知結果を、所定時間分、時系列で記憶保持するようになっている。
【0047】
車両情報取得部213は、車速センサ203、操舵角センサ204、ヨーレートセンサ205、および加速度センサ206等による、車両1の走行挙動の検知結果を取得するようになっている。「走行挙動」は、車両1における車速、車速変化、制動量、操舵量、ヨーレート、等を含み、「車両挙動」あるいは「走行状態」とも称され得る。「走行挙動」には、車速が「0km/h」であり且つ車速変化、制動量、操舵量、およびヨーレートがともに「0」である、「停車」も含まれる。
【0048】
デバイス起動部214は、第一結果取得部211が衝突検知結果を取得した場合、第一保護デバイスを起動するようになっている。「第一保護デバイス」は、複数の保護デバイス30のうちの一部であって、保護対象者を車体前面部13との二次衝突から保護するものである。
【0049】
本実施形態においては、デバイス起動部214は、衝突検知結果に基づいて、対人衝突の発生を判定するようになっている。具体的には、デバイス起動部214は、衝突検知結果である、右側圧力センサ201bおよび左側圧力センサ201cにより検知された圧力波形に基づいて、フロントバンパ12に衝突した物体が特定物体であるか否かを判定するようになっている。また、デバイス起動部214は、かかる圧力波形に基づいて、一次衝突位置を判定するようになっている。「一次衝突位置」は、フロントバンパ12における、一次衝突時に特定物体が衝突した車幅方向位置である。さらに、デバイス起動部214は、対人衝突の発生を判定した場合、第一保護デバイスとしてのフードアクチュエータ31aおよび前面エアバッグ32aを起動するようになっている。
【0050】
また、デバイス起動部214は、対人衝突の発生を判定した場合、第一保護デバイスを起動するとともに、第二結果取得部212にて取得した物体検知結果に応じて第二保護デバイスを起動するようになっている。「第二保護デバイス」は、複数の保護デバイス30のうちの一部であって、第二結果取得部212にて取得した物体検知結果に応じて起動されるものである。典型的には、「第二保護デバイス」は、「第一保護デバイス」とは異なる保護デバイス30である。換言すれば、「第二保護デバイス」は、「第一保護デバイス」とは異なる態様で保護対象者を保護する保護デバイス30である。あるいは、「第二保護デバイス」は、「第一保護デバイス」による保護に追加して保護対象者を保護する保護デバイス30である。具体的には、本実施形態においては、第二保護デバイスは、追加フードアクチュエータ31b、巻込防止エアバッグ32e、前方エアバッグ32f、および側方エアバッグ32gである。デバイス起動部214は、物体検知結果に対応する保護対象者の種類と、物体検知結果に基づいて推定される保護対象者の挙動とに応じて、複数の第二保護デバイスのうちから必要なものを選択して起動するようになっている。
【0051】
また、デバイス起動部214は、路面展開デバイスである、前方エアバッグ32fまたは側方エアバッグ32gの展開領域が路面R上に確保されているか否かを判定するようになっている。そして、デバイス起動部214は、展開領域が路面R上に確保されていると判定した場合に、路面展開デバイスを展開するようになっている。
【0052】
また、デバイス起動部214は、展開領域が路面R上に確保されていないと判定した場合、展開領域を確保するための車両1の走行挙動制御を挙動制御システム40に要求するようになっている。さらに、この場合、デバイス起動部214は、展開領域の確保を判定するまで路面展開デバイスの展開を待機するようになっている。
【0053】
具体的には、デバイス起動部214は、車載マイクロコンピュータにて実現される機能上の構成として、第一起動部241と、第二起動部242と、挙動推定部243と、領域算出部244と、制御量算出部245とを有している。
【0054】
第一起動部241は、第一結果取得部211にて取得した衝突検知結果に基づいて、対人衝突の発生を判定するようになっている。また、第一起動部241は、対人衝突の発生を判定した場合、第一保護デバイスを起動するようになっている。
【0055】
第二起動部242は、第一起動部241が対人衝突の発生を判定した場合、保護対象者の種類、および、一次衝突後の保護対象者の挙動推定結果に基づいて、起動が必要な第二保護デバイスを選択するようになっている。また、第二起動部242は、選択した第二保護デバイスが路面展開デバイスである場合、展開領域が路面R上に確保されていることを条件として当該路面展開デバイスを起動するようになっている。
【0056】
挙動推定部243は、第一結果取得部211、第二結果取得部212、および車両情報取得部213による取得結果に基づいて、一次衝突後の保護対象者の挙動を推定するようになっている。すなわち、挙動推定部243は、二次衝突位置を推定するようになっている。「二次衝突位置」は、特定物体が二次衝突する、車体10または路面R上の位置である。領域算出部244は、第二結果取得部212による取得結果に基づいて、路面R上における路面展開デバイスの展開領域を算出するようになっている。また、領域算出部244は、算出した展開領域が、路面R上にて確保されているか否かを判定するようになっている。
【0057】
制御量算出部245は、展開領域が路面R上にて確保されていないことを領域算出部244が判定した場合に、第二結果取得部212および車両情報取得部213による取得結果に基づいて、展開用制御量を算出するようになっている。「展開用制御量」は、路面R上における路面展開デバイスの展開領域を確保するために必要な走行挙動制御量である。
【0058】
(ロジック構成)
図5は、路面展開デバイスではない第二保護デバイスとしての追加フードアクチュエータ31bに対応する起動ロジック構成の一例を示す。すなわち、図5に示されたロジック構成例は、展開領域が路面R上にて確保されているか否かの判定が不要な種類の第二保護デバイスに対応するものである。
【0059】
図5に示されているように、第一起動部241は、衝突検知結果に基づいて、対人衝突判定ロジックD101にて対人衝突の発生の有無を判定するようになっている。すなわち、対人衝突判定ロジックD101は、対人衝突の判定結果に対応する論理値を出力するようになっている。具体的には、対人衝突判定ロジックD101は、対人衝突の発生を判定していない場合、論理値「0」を出力するようになっている。一方、対人衝突判定ロジックD101は、対人衝突の発生を判定した場合、論理値「1」を出力するようになっている。
【0060】
対人衝突判定ロジックD101の出力先には、第一起動出力ロジックD102が設けられている。第一起動出力ロジックD102は、対人衝突判定ロジックD101から論理値「1」の入力を受けた場合、第一起動信号を出力するようになっている。「第一起動信号」は、第一保護デバイスを起動するための信号である。
【0061】
第二起動部242は、物体検知結果に基づいて、追加保護判定ロジックD103にて追加保護動作の要否を判定するようになっている。すなわち、追加保護判定ロジックD103は、物体検知結果に対応する保護対象者の種類が、第二保護デバイスによる追加保護が必要なものであるか否かを判定するようになっている。また、追加保護判定ロジックD103は、挙動推定部243による挙動推定結果が、第二保護デバイスによる追加保護が必要なものであるか否かを判定するようになっている。そして、追加保護判定ロジックD103は、判定結果に応じて、「0」または「1」の論理値を出力するようになっている。具体的には、追加保護判定ロジックD103は、第二保護デバイスによる追加保護が必要である場合、論理値「1」を出力するようになっている。一方、追加保護判定ロジックD103は、第二保護デバイスによる追加保護が不要である場合、論理値「0」を出力するようになっている。
【0062】
対人衝突判定ロジックD101および追加保護判定ロジックD103の出力先には、2入力のアンドゲートD104が設けられている。第二起動部242は、アンドゲートD104にて、対人衝突判定ロジックD101の出力と追加保護判定ロジックD103の出力との論理積を算出するようになっている。
【0063】
すなわち、アンドゲートD104は、対人衝突判定ロジックD101の出力と追加保護判定ロジックD103の出力とがともに論理値「1」である場合、論理値「1」を出力するようになっている。アンドゲートD104が論理値「1」を出力する場合は、対人衝突判定および追加保護判定がともに成立して第二保護デバイスを駆動する場合である。これに対し、アンドゲートD104は、対人衝突判定ロジックD101の出力または追加保護判定ロジックD103の出力が論理値「0」である場合、論理値「0」を出力するようになっている。
【0064】
アンドゲートD104の出力先には、第二起動出力ロジックD105が設けられている。第二起動出力ロジックD105は、論理値「1」の入力を受けた場合、第二起動信号を出力するようになっている。「第二起動信号」は、第二保護デバイスすなわち追加フードアクチュエータ31bを起動するための信号である。
【0065】
図6は、図5に示されたロジック構成の一部を変容したものである。すなわち、図6のロジックは、第一起動部241における対人衝突判定の際に用いられる閾値が、物体検知結果に応じて変更される例である。衝突物の種別に応じた衝突判定閾値の設定については、本願の出願時点で既に公知である。よって、衝突物の種別に応じた衝突判定閾値の設定の詳細については、本明細書においては説明を省略する(例えば特開2016-215786号公報等参照)。
【0066】
本ロジック例においては、第一起動部241は、対人衝突判定に対人衝突判定ロジックD201および保護対象者判定ロジックD202を用いるようになっている。具体的には、保護対象者判定ロジックD202は、物体検知結果に応じて、対人衝突判定ロジックD201における対人衝突判定用の閾値を設定するようになっている。そして、対人衝突判定ロジックD201は、衝突検知結果と、保護対象者判定ロジックD202により設定された閾値とに基づいて、対人衝突の発生の有無を判定するようになっている。
【0067】
対人衝突判定ロジックD201の出力先には、第一起動出力ロジックD203が設けられている。第一起動出力ロジックD203は、対人衝突判定ロジックD201から論理値「1」の入力を受けた場合、第一起動信号を出力するようになっている。すなわち、第一起動出力ロジックD203は、図5における第一起動出力ロジックD102と同様である。
【0068】
追加保護判定ロジックD204は、図5における追加保護判定ロジックD103と同様である。アンドゲートD205は、図5におけるアンドゲートD104と同様である。第二起動出力ロジックD206は、図5における第二起動出力ロジックD105と同様である。
【0069】
図7は、路面展開デバイスである第二保護デバイスとしての側方エアバッグ32gに対応する起動ロジック構成の一例を示す。すなわち、図7に示されたロジック構成例は、展開領域が路面R上にて確保されているか否かの判定が必要な種類の第二保護デバイスに対応するものである。
【0070】
図7に示されているように、第一起動部241は、衝突検知結果に基づいて、対人衝突判定ロジックD301にて対人衝突の発生の有無を判定するようになっている。また、第一起動出力ロジックD302は、対人衝突判定ロジックD301から論理値「1」の入力を受けた場合、第一起動信号を出力するようになっている。すなわち、対人衝突判定ロジックD301および第一起動出力ロジックD302は、図5における対人衝突判定ロジックD101および第一起動出力ロジックD102と同様である。
【0071】
第二起動部242は、物体検知結果に基づいて、追加保護判定ロジックD303にて追加保護動作の要否を判定するようになっている。すなわち、追加保護判定ロジックD303は、図5における追加保護判定ロジックD103と同様である。
【0072】
第二起動部242は、展開領域判定ロジックD304にて、第二保護デバイスの展開領域が確保されているか否かを物体検知結果に基づいて判定するようになっている。すなわち、展開領域判定ロジックD304は、領域算出部244にて算出された展開領域と、車両1の周囲における物体の存在状態とに基づいて、展開領域が確保されているか否かを判定するようになっている。具体的には、展開領域判定ロジックD304は、算出された展開領域内に、路面展開デバイスの展開を阻害する障害物が存在するか否かを判定するようになっている。そして、展開領域判定ロジックD304は、展開領域が確保されていると判定した場合、論理値「1」を出力するようになっている。一方、展開領域判定ロジックD304は、展開領域が確保されていないと判定した場合、論理値「0」を出力するようになっている。
【0073】
追加保護判定ロジックD303および展開領域判定ロジックD304の出力先には、2入力のアンドゲートD305が設けられている。第二起動部242は、アンドゲートD305にて、追加保護判定ロジックD303の出力と展開領域判定ロジックD304の出力との論理積を算出するようになっている。
【0074】
すなわち、アンドゲートD305は、追加保護判定ロジックD303の出力と展開領域判定ロジックD304の出力とがともに論理値「1」である場合、論理値「1」を出力するようになっている。これに対し、アンドゲートD305は、追加保護判定ロジックD303の出力または展開領域判定ロジックD304の出力が論理値「0」である場合、論理値「0」を出力するようになっている。アンドゲートD305が論理値「1」を出力する場合は、第二保護デバイスによる追加保護が必要であり、且つ、当該第二保護デバイスの展開領域が確保されていて駆動すなわち展開が可能な場合である。
【0075】
対人衝突判定ロジックD301およびアンドゲートD305の出力先には、2入力のアンドゲートD306が設けられている。第二起動部242は、アンドゲートD306にて、対人衝突判定ロジックD301の出力とアンドゲートD305の出力との論理積を算出するようになっている。
【0076】
すなわち、アンドゲートD306は、対人衝突判定ロジックD301の出力とアンドゲートD305の出力とがともに論理値「1」である場合、論理値「1」を出力するようになっている。アンドゲートD306が論理値「1」を出力する場合は、対人衝突判定、追加保護判定、および展開領域判定が成立して、第二保護デバイスを駆動する場合である。これに対し、アンドゲートD306は、対人衝突判定ロジックD301の出力またはアンドゲートD305の出力が論理値「0」である場合、論理値「0」を出力するようになっている。
【0077】
アンドゲートD306の出力先には、2入力のオアゲートD307が設けられている。第二起動部242は、アンドゲートD306が論理値「1」を出力した場合に、オアゲートD307にて、論理値「1」を出力するようになっている。
【0078】
オアゲートD307の出力先には、第二起動出力ロジックD308が設けられている。第二起動出力ロジックD308は、論理値「1」の入力を受けた場合、第二起動信号を出力するようになっている。「第二起動信号」は、第二保護デバイスすなわち側方エアバッグ32gを起動するための信号である。
【0079】
第二起動部242は、挙動制御判定ロジックD309にて、路面R上における路面展開デバイスの展開領域を確保するための走行挙動制御が必要であるか否かを判定するようになっている。すなわち、挙動制御判定ロジックD309は、路面R上における路面展開デバイスの展開領域を確保するための走行挙動制御が可能であって制御量算出部245が展開用制御量を算出した場合、論理値「1」を出力するようになっている。一方、挙動制御判定ロジックD309は、路面R上における路面展開デバイスの展開領域を確保するための走行挙動制御が不可能であって制御量算出部245が展開用制御量を算出しなかった場合、論理値「0」を出力するようになっている。また、挙動制御判定ロジックD309は、路面R上における路面展開デバイスの展開領域が確保されていて制御量算出部245が展開用制御量を算出しなかった場合、論理値「0」を出力するようになっている。
【0080】
展開領域判定ロジックD304の出力先には、NOTゲートD310が設けられている。NOTゲートD310は、展開領域判定ロジックD304の出力論理値を反転させるようになっている。
【0081】
対人衝突判定ロジックD301、挙動制御判定ロジックD309、およびNOTゲートD310の出力先には、3入力のアンドゲートD311が設けられている。アンドゲートD311は、対人衝突判定ロジックD301、挙動制御判定ロジックD309、およびNOTゲートD310の出力がともに論理値「1」である場合、論理値「1」を出力するようになっている。アンドゲートD311が論理値「1」を出力する場合は、対人衝突判定が成立している一方で第二保護デバイスすなわち側方エアバッグ32gの展開領域が未だ確保されていないものの、展開領域を確保するための走行挙動制御が可能な場合である。これに対し、アンドゲートD311は、対人衝突判定ロジックD301、挙動制御判定ロジックD309、およびNOTゲートD310の出力のうちの何れかが論理値「0」である場合、論理値「0」を出力するようになっている。
【0082】
アンドゲートD311の出力先には、挙動制御出力ロジックD312が設けられている。挙動制御出力ロジックD312は、アンドゲートD311から論理値「1」の入力を受けた場合、挙動制御信号を出力するようになっている。「挙動制御信号」は、挙動制御システム40に車両1の走行挙動制御を実行させるための信号であり、制御量算出部245にて算出された展開用制御量の情報を含む信号である。
【0083】
また、アンドゲートD311の出力先には、遅延ロジックD313が設けられている。遅延ロジックD313は、アンドゲートD311から論理値「1」の入力を受けた場合、所定の遅延時間経過後に論理値「1」を出力するようになっている。
【0084】
遅延ロジックD313の出力先には、2入力のオアゲートD307が設けられている。第二起動部242は、遅延ロジックD313が論理値「1」を出力した場合に、オアゲートD307にて、論理値「1」を出力するようになっている。すなわち、遅延ロジックD313は、挙動制御出力ロジックD312から挙動制御信号が出力されることで走行挙動制御が開始されてから展開領域が確保されるまでの時間に相当する遅延時間分、第二起動信号の出力を遅延させるようになっている。
【0085】
(動作概要)
以下、上記構成による動作の概要について、同構成により奏される効果とともに説明する。
【0086】
特許文献1に記載の装置構成と同様に、物体検知部202を用いて衝突可能性に関する指標値を算出し、かかる指標値により第一保護デバイスを起動するための衝突判定を行うことは、技術的に可能である。かかる指標値は、例えば、TTCである。TTCはTime to Collisionの略である。
【0087】
しかしながら、このような、衝突可能性に関する指標値を用いた衝突判定手法は、実際の対人衝突の発生による衝撃を検知する衝突検知センサ201よりも、衝突検知の性能あるいは感度が低い。よって、車体前面部13と保護対象者との二次衝突という典型的な保護必要場面においては、実際の対人衝突を検知する性能あるいは感度がより高い衝突検知センサ201を用いて、第一保護デバイスの起動制御を行うことが好ましい。
【0088】
そこで、本実施形態においては、対人衝突が発生した場合、第一結果取得部211は、衝突検知センサ201による衝突検知結果を取得する。すると、デバイス起動部214すなわち第一起動部241は、第一保護デバイスであるフードアクチュエータ31aおよび前面エアバッグ32aを起動する。かかる第一保護デバイスは、保護対象者を車体10におけるフロントフード14等の車体前面部13との二次衝突から保護するものであって、対人衝突が発生した場合に起動必要性が高いものである。よって、対人衝突における保護対象者は、対人衝突時に典型的に発生する二次衝突被害から、第一保護デバイスにより良好に保護される。
【0089】
一方、対人衝突の形態は様々である。このため、対人衝突の状況によっては、第一保護デバイスによる一次的保護に加えて、追加の保護が必要となる場合があり得る。すなわち、例えば、保護対象者が、第一保護デバイスによる保護範囲内から保護範囲外に移動することがあり得る。保護対象者の移動先が、衝撃吸収性が低い路面R等である場合、当該移動先においても保護対象者を保護することが望ましい。あるいは、例えば、保護対象者が身長の低い子供等の歩行者である場合、当該保護対象者が車体10の前端部11の下側に潜り込むことがあり得る。
【0090】
この点、物体検知部202を用いた物体検知結果を、第一保護デバイスの起動後にも用いることで、追加の保護デバイス30すなわち第二保護デバイスによる保護を実現することが可能である。そこで、本実施形態においては、第二結果取得部212は、物体検知部202による物体検知結果を取得する。そして、デバイス起動部214は、第二結果取得部212にて取得した物体検知結果に応じて、第二保護デバイスを起動する。
【0091】
具体的には、挙動推定部243は、一次衝突後の保護対象者の挙動を、第一結果取得部211、第二結果取得部212、および車両情報取得部213による取得結果に基づいて推定する。第二起動部242は、保護対象者の種類および挙動に応じて、追加フードアクチュエータ31b、巻込防止エアバッグ32e、前方エアバッグ32f、および側方エアバッグ32gのうちから、必要なものを選択して起動する。これにより、保護対象者は、第二保護デバイスにより追加的に保護される。
【0092】
例えば、保護対象者が前面エアバッグ32aによる保護範囲よりも車両1における後方側に飛ばされる可能性がある場合がある。この場合、第二起動部242は、追加フードアクチュエータ31bを起動する。これにより、保護対象者の車両1における後方側への移動が制限され、保護対象者が前面エアバッグ32aにより良好に保護される。
【0093】
あるいは、例えば、保護対象者が、フロントバンパ12との一次衝突後に、車体10の前端部11と路面Rとの間の空間に潜り込む可能性がある場合がある。特に、車両1が普通乗用車であり、保護対象者が身長の低い子供等の歩行者である場合、このような潜り込みが発生しやすい。そこで、この場合、第二起動部242は、巻込防止エアバッグ32eを起動する。これにより、保護対象者の、車体10の前端部11と路面Rとの間の空間への潜り込みによる被害が、良好に抑制され得る。
【0094】
あるいは、例えば、保護対象者が、フロントバンパ12との一次衝突後に、車両1の前方の路面Rに落下したり倒れ込んだりする場合があり得る。この場合、第二起動部242は、前方エアバッグ32fを起動する。これにより、保護対象者の頭部が、良好に保護され得る。
【0095】
あるいは、例えば、保護対象者が、前面エアバッグ32aによる保護範囲から、車体10におけるフロントフェンダ部分に移動したり、フロントフェンダ部分の側方の路面Rに落下したりする場合があり得る。この場合、第二起動部242は、側方エアバッグ32gを起動する。これにより、保護対象者の頭部が、良好に保護され得る。
【0096】
このように、本実施形態に係る装置および同装置により実行される保護デバイス制御方法は、衝突検知結果を取得して対人衝突の発生を判定した場合、第一保護デバイスを起動する。これにより、保護対象者の一次的な保護が迅速あるいは的確に行われる。また、同装置および方法は、対人衝突の発生を判定した場合、第一保護デバイスの起動に加えて、物体検知結果に応じて第二保護デバイスを起動する。これにより、第一保護デバイスを用いた一次的保護とともに、必要に応じた追加的あるいは二次的な保護が第二保護デバイスにより行われる。したがって、同装置および方法によれば、保護対象者の保護性能がよりいっそう高められた、保護デバイス制御装置200および保護デバイス制御方法が提供される。
【0097】
本実施形態に係る装置および方法は、路面展開デバイスの展開領域が路面R上に確保されているか否かを判定する。また、同装置および方法は、展開領域が路面R上に確保されていると判定した場合に路面展開デバイスを展開する。一方、同装置および方法は、展開領域が路面R上に確保されていないと判定した場合、展開領域を確保するための車両1の走行挙動制御を挙動制御システム40に要求する。この場合、同装置および方法は、展開領域の確保を判定するまで路面展開デバイスの展開を待機する。したがって、同装置および方法によれば、路面展開デバイスの展開制御がよりいっそう適切に行われ得る。
【0098】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0099】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。すなわち、例えば、車両1は、四輪自動車に限定されない。具体的には、車両1は、三輪自動車であってもよいし、貨物トラック等の六輪または八輪自動車でもよい。ドアパネルの枚数を含む、車体10の細部の形状および構造についても、特段の限定はない。但し、本発明の内容に鑑み、車両1は、対人衝突の際に保護対象者を二次衝突から保護する必要性が生じるような車体10を備えているものとする。かかる車体10は、典型的には、金属および/または合成樹脂によって所定の剛性を有するように箱状に形成されている。
【0100】
保護デバイス30の種類、個数、および構造についても、特段の限定はない。例えば、前面エアバッグ32aは、フロントフード14上にて展開するものであってもよい。また、前面エアバッグ32aは、フロントフード14上にて展開する部分と、カウルトップ15近辺にて展開する部分とを有していてもよい。
【0101】
上記実施形態においては、上面エアバッグ32bと右ピラーエアバッグ32cと左ピラーエアバッグ32dとが一体的に形成されていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、上面エアバッグ32bと、右ピラーエアバッグ32cと、左ピラーエアバッグ32dとは、それぞれ異なる起動手段によって個別に起動されるようになっていてもよい。この場合、上面エアバッグ32bが「第一保護デバイス」に対応し得るとともに、右ピラーエアバッグ32cおよび左ピラーエアバッグ32dが「第二保護デバイス」に対応し得る。
【0102】
前方エアバッグ32f、側方エアバッグ32g、等の路面展開デバイスは、エアバッグに限定されない。すなわち、例えば、路面展開デバイスは、網であってもよい。また、側方エアバッグ32gは、車両全長方向について、前輪付近から後輪付近に至るまで設けられていてもよい。
【0103】
例えば、車両1が車高の低いスポーツカーである場合、車体10の前端部11と路面Rとの間には、車止めの高さ程度の空間しか存在しない。このため、この場合、巻込防止エアバッグ32eは不要である。
【0104】
第一保護デバイスおよび第二保護デバイスの設定は、上記実施形態に示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、対人衝突の対象が歩行者である場合、ポップアップフード装置31による保護で充分である場面が多い。そこで、前面エアバッグ32aは、第二保護デバイスとしてもよい。これに対し、対人衝突の対象が乗員付き自転車である場合、ポップアップフード装置31に加えて前面エアバッグ32aも必要となる場面が多い。そこで、これらの事情を考慮して、ポップアップフード装置31におけるフードアクチュエータ31aが、第一保護デバイスに設定され得る。また、ポップアップフード装置31における追加フードアクチュエータ31bと前面エアバッグ32aとが、第二保護デバイスに設定され得る。
【0105】
車体10の形状に応じて、第一保護デバイスおよび第二保護デバイスの設定は、上記実施形態にて示された具体例から適宜変更され得る。すなわち、例えば、車両1が大型トラックである場合、車体10の前端部11と路面Rとの間には、大きな空間が存在している。このため、この場合、保護対象者の体格にかかわらず、車体10の前端部11と路面Rとの間の空間への保護対象者の潜り込みが発生しやすい。そこで、この場合、巻込防止エアバッグ32eは、第一保護デバイスに設定され得る。
【0106】
ポップアップフード装置31における、フードアクチュエータ31aと追加フードアクチュエータ31bとは、ともに、ポップアップフード装置31に含まれており、且つ、フロントフード14を押し上げる点で、共通する。しかしながら、両者は、押し上げ量が異なる。このため、追加フードアクチュエータ31bは、フードアクチュエータ31aとは異なる態様で保護対象者を保護する保護デバイス30であるということが可能である。あるいは、追加フードアクチュエータ31bは、フードアクチュエータ31aによる保護に追加して保護対象者を保護する保護デバイス30であるということが可能である。したがって、追加フードアクチュエータ31bは、フードアクチュエータ31aとは「異なる保護デバイス」であるということが可能である。
【0107】
衝突検知センサ201の構成は、上記の具体例に限定されない。すなわち、例えば、衝突検知センサ201は、圧力チャンバ式センサであってもよいし、光ファイバ式センサであってもよいし、圧電性高分子フィルム素子によって形成された圧電フィルムセンサであってもよい。衝突検知センサ201は、車幅方向および/または車高方向について複数に分割されていてもよい。
【0108】
物体検知部202の構成も、上記の具体例に限定されない。すなわち、物体検知部202は、例えば、カメラセンサ、レーザレーダセンサ、ミリ波レーダセンサ、および超音波センサ等の中から選択される周知のセンサを、一種以上または一個以上備えることで構成され得る。具体的には、例えば、物体検知部202は、二個以上のカメラセンサを備えた、いわゆるステレオカメラとして構成され得る。あるいは、物体検知部202は、ステレオカメラとミリ波レーダセンサ等とを備えていてもよい。
【0109】
上記実施形態においては、対人衝突の発生の判定は、第一起動部241にて実行されていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。具体的には、例えば、対人衝突の発生の判定は、第一起動部241および第二起動部242にてそれぞれ実行されてもよい。
【0110】
上記実施形態においては、対人衝突の発生の判定は、デバイス起動部214にて実行されていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。具体的には、例えば、対人衝突の発生の判定は、第一結果取得部211にて実行されてもよい。
【0111】
上記のロジック構成も、あくまで、本発明の一具体例を説明するための便宜的なものにすぎない。よって、本発明は、上記の各ロジック構成に限定されない。すなわち、例えば、図6のロジック構成と図7のロジック構成とは、統合され得る。すなわち、図6における第一起動部241の構成が、図7に適用され得る。
【0112】
図7において、2入力のアンドゲートD305と、2入力のアンドゲートD306とが、3入力のアンドゲートに統合されてもよい。あるいは、オアゲートD307および遅延ロジックD313は、省略され得る。
【0113】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な動作例および処理態様に限定されない。具体的には、例えば、対人衝突判定に際して、衝突検知センサ201の出力に加えて、加速度センサ206の出力も用いられ得る。
【0114】
変形例も、上記の例示に限定されない。例えば、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。また、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【0115】
上記の各機能構成および方法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0116】
具体的には、デバイス制御ECU210は、CPU等を備えた周知のマイクロコンピュータに限定されない。すなわち、デバイス制御ECU210の全部または一部は、上記のような機能を実現可能に構成されたデジタル回路、例えばゲートアレイ等のASICあるいはFPGAであってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。
【0117】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、本発明に係る装置あるいは方法は、上記の各機能あるいは方法を実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 車両
10 車体
20 対人保護システム
30 保護デバイス
200 保護デバイス制御装置
201 衝突検知センサ
202 物体検知部
211 第一結果取得部
212 第二結果取得部
214 デバイス起動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7