(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20221220BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20221220BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20221220BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/12 C
H01L23/36 A
(21)【出願番号】P 2019092435
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 崇功
(72)【発明者】
【氏名】門口 卓矢
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076440(JP,A)
【文献】特開2014-093421(JP,A)
【文献】特開2006-134990(JP,A)
【文献】国際公開第2009/150875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12-23/15
H01L 23/29
H01L 23/34-23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H01L 25/00-25/07
H01L 25/10-25/11
H01L 25/16-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層配置された上側導電板、中間導電板及び下側導電板と、
前記上側導電板と前記中間導電板との間に位置しており、前記上側導電板と前記中間導電板とのそれぞれに電気的に接続された第1半導体素子と、
前記中間導電板と前記下側導電板との間に位置しており、前記中間導電板と前記下側導電板とのそれぞれに電気的に接続された第2半導体素子と、
前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子を封止するとともに、前記上側導電板、前記中間導電板及び前記下側導電板を一体に保持する封止体と、
前記封止体の内部に位置するとともに、前記第1半導体素子と前記第2半導体素子とを電気的に接続する継手部材と、
を備え、
前記中間導電板の面内方向における線膨張係数は、前記上側導電板の面内方向における線膨張係数及び前記下側導電板の面内方向における線膨張係数よりも小さ
く、
前記中間導電板は、絶縁体基板と、前記絶縁体基板の上面に設けられているとともに前記第1半導体素子と電気的に接続された第1金属層と、前記絶縁体基板の下面に設けられているとともに前記第2半導体素子と電気的に接続された第2金属層とを有し、
前記継手部材の一端は前記中間導電板の前記第1金属層に接続されており、前記継手部材の他端は前記下側導電板に接続されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁体基板を構成する絶縁体の線膨張係数は、前記第1金属層を構成する金属の線膨張係数及び前記第2金属層を構成する金属の線膨張係数よりも小さい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁体基板は、セラミック基板である、請求項
1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記上側導電板及び前記下側導電板は、金属板である、請求項
1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子の各々は、第1主電極と、前記第1主電極よりも面積の大きい第2主電極とを有し、
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子の少なくとも一方は、前記第1主電極において前記中間導電板
の前記第1金属層又は前記第2金属層と電気的に接続されているとともに、前記第2主電極において前記上側導電板又は前記下側導電板と電気的に接続されている、請求項
1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子の両方は、前記第1主電極において前記中間導電板
の前記第1金属層又は前記第2金属層と電気的に接続されているとともに、前記第2主電極において前記上側導電板又は前記下側導電板と電気的に接続されている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子の各々は、前記第1主電極と同じ側に設けられた信号電極をさらに有し、
前記中間導電板の前記第1金属層は、前記第1半導体素子の前記第1主電極と電気的に接続された第1主回路部と、前記第1主回路部から分離されているとともに、前記第1半導体素子の前記信号電極と電気的に接続された第1信号回路部とを有し、
前記中間導電板の前記第2金属層は、前記第2半導体素子の前記第1主電極と電気的に接続された第2主回路部と、前記第2主回路部から分離されているとともに、前記第2半導体素子の前記信号電極と電気的に接続された第2信号回路部とを有する、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記継手部材の前記一端は、前記第1金属層の前記第1主回路部に接続されている、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記中間導電板の面積は、前記上側導電板の面積及び前記下側導電板の面積よりも小さい、請求項1から
8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記中間導電板の面積は、前記上側導電板の面積及び前記下側導電板の面積よりも
大きい、請求項1から
8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、半導体装置が開示されている。この半導体装置は、積層配置された上側導電板、中間導電板及び下側導電板と、上側導電板と中間導電板との間に位置する第1半導体素子と、中間導電板と下側導電板との間に位置する第2半導体素子とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した半導体装置では、第1半導体素子及び第2半導体素子のそれぞれが、通電によって発熱する。第1半導体素子及び第2半導体素子が発熱すると、それらに隣接する三つの導電板の温度も上昇して、各々の導電板には熱膨張が生じる。特に、第1半導体素子と第2半導体素子との間に位置する中間導電板は、上側導電板及び下側導電板よりも高温となりやすく、比較的に大きく熱膨張する傾向がある。このような不均一な熱膨張は、半導体装置内に生じる歪を局所的に増大させることがあり、例えば半導体装置の耐久性を低下させるおそれがある。
【0005】
本明細書は、三以上の導電板が積層された半導体装置において、それらの導電板に生じる不均一な熱膨張を抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置は、積層配置された上側導電板、中間導電板及び下側導電板と、上側導電板と中間導電板との間に位置しており、上側導電板と中間導電板とのそれぞれに電気的に接続された第1半導体素子と、中間導電板と下側導電板との間に位置しており、中間導電板と下側導電板とのそれぞれに電気的に接続された第2半導体素子とを備える。そして、中間導電板の面内方向における線膨張係数は、上側導電板の面内方向における線膨張係数及び下側導電板の面内方向における線膨張係数よりも小さい。
【0007】
上記した半導体装置では、中間導電板の線膨張係数が、上側導電板の線膨張係数及び下側導電板の線膨張係数よりも小さい。従って、中間導電板の温度が、上側導電板の温度及び下側導電板の温度よりも高温となったときでも、三つの導電板に不均一な熱膨張が生じることを抑制することができる。
【0008】
ここで、上側導電板の面内方向における線膨張係数とは、上側導電板に対して平行な方向(即ち、上側導電板の法線に対して垂直な方向)における上側導電板の線膨張係数を意味する。中間導電板の面内方向における線膨張係数及び下側導電板の面内方向における線膨張係数についても同様である。上側導電板、中間導電板及び下側導電板の各面内方向は互いに平行であり、それらの三つの導電板は、それらの面内方向に対して垂直は方向に積層配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1中のII-II線における断面図を示す。
【
図3】
図1中のIII-III線における断面図を示す。
【
図4】実施例1の半導体装置10の回路構造を示す。
【
図5】一変形例の半導体装置10’の構成を模式的に示す断面図であって、
図2に示す断面図に対応する。
【
図6】一変形例の半導体装置10’’の構成を模式的に示す断面図であって、
図2に示す断面図に対応する。
【
図7】実施例2の半導体装置10Aの構成を模式的に示す断面図であって、
図2に示す断面図に対応する。
【
図8】実施例2の半導体装置10Aの構成を模式的に示す断面図であって、
図3に示す断面図に対応する。
【
図9】実施例2の半導体装置10Aの回路構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本技術の一実施形態において、中間導電板は、絶縁体基板と、絶縁体基板の上面に設けられているとともに、第1半導体素子と電気的に接続された第1金属層と、絶縁体基板の下面に設けられているとともに、第2半導体素子と電気的に接続された第2金属層とを有してもよい。そして。絶縁体基板を構成する絶縁体の線膨張係数が、第1金属層を構成する金属の線膨張係数及び第2金属層を構成する金属の線膨張係数よりも小さくてもよい。このような構成によると、第1金属層及び第2金属層によって中間導電板の導電性を確保しつつ、絶縁体基板によって中間導電板の全体としての線膨張係数を小さくすることができる。
【0011】
上記した実施形態において、絶縁体基板はセラミック基板であってもよい。この場合、特に限定されないが、中間導電板は、DBC(Direct Bonded Cupper)基板、DBA(Direct Bonded Aluminum)、AMC(Active Metal Brazed Cupper)基板であってもよい。
【0012】
上記した実施形態において、上側導電板及び下側導電板は、金属板であってもよい。金属板は優れた熱伝導性を有するので、上側導電板及び下側導電板を介した半導体素子の放熱性(即ち、冷却性)を高めることができる。
【0013】
本技術の一実施形態において、第1半導体素子と第2半導体素子の各々は、第1主電極と、第1主電極よりも面積の大きい第2主電極とを有してもよい。この場合、各々の半導体素子は、第1主電極よりも第2主電極を介して、より多く熱を外部へ放出する。そのことから、第1半導体素子と第2半導体素子との一方又は両方は、第1主電極において中間導電板と電気的に接続されているとともに、第2主電極において上側導電板又は下側導電板と電気的に接続されているとよい。中間導電板は、第1半導体素子と第2半導体素子との両者から熱を受け取るので、その温度が上昇し易い。しかしながら、放熱量の少ない第1主電極が中間導電板に接続されていると、中間導電板の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
上記した実施形態において、第1半導体素子と第2半導体素子の各々は、第1主電極と同じ側に設けられた信号電極をさらに有してもよい。この場合、中間導電板の第1金属層は、第1半導体素子の第1主電極と電気的に接続された第1主回路部と、第1主回路部から分離されているとともに、第1半導体素子の信号電極と電気的に接続された第1信号回路部とを有してもよい。同様に、中間導電板の第2金属層は、第2半導体素子の第1主電極と電気的に接続された第2主回路部と、第2主回路部から分離されているとともに、前記第2半導体素子の前記信号電極と電気的に接続された第2信号回路部とを有してもよい。このような構成によると、半導体装置の構造を複雑にするとなく、各々の半導体素子の信号電極に接続する回路を構成することができる。
【0015】
本技術の一実施形態において、中間導電板の面積は、上側導電板の面積及び下側導電板の面積よりも小さくてもよい。即ち、上側導電板の面積及び下側導電板の面積は、中間導電板の面積より大きくてもよい。このような構成によると、各々の半導体素子の熱が、面積の大きな上側導電板及び下側導電板を介して、半導体装置の外部へ効率よく放出される。ここで、中間導電板の面積とは、中間導電板を垂直な方向から見たときの面積を意味する。他の導電板の面積についても同様である。
【0016】
あるいは、中間導電板の面積は、上側導電板の面積及び下側導電板の面積より大きくてもよい。このような構成によると、中間導電板の熱容量が大きくなるので、中間導電板の温度上昇を抑制することができる。
【0017】
本技術の一実施形態において、半導体素子は、第1半導体素子及び第2半導体素子を封止するとともに、上側導電板、中間導電板及び下側導電板を一体に保持する封止体をさらに備えてもよい。この場合、特に限定されないが、上側導電板及び下側導電板は、封止体の表面に露出しているとよい。このような構成によると、各々の半導体素子の熱が、上側導電板及び下側導電板を介して、半導体装置の外部へ効率よく放出される。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
図1-
図4を参照して、実施例1の半導体装置10を説明する。本実施例の半導体装置10は、例えば電気自動車の電力制御装置に採用され、コンバータやインバータといった電力変換回路の一部を構成することができる。なお、本明細書における電気自動車は、車輪を駆動するモータを有する自動車を広く意味し、例えば、外部の電力によって充電される電気自動車、モータに加えてエンジンを有するハイブリッド車、及び燃料電池を電源とする燃料電池車等を含む。
【0019】
半導体装置10は、複数の半導体素子12、14と、複数の導電板16、18、20と、封止体30とを備える。封止体30は、複数の半導体素子12、14を封止するとともに、複数の導電板16、18、20を一体に保持している。封止体30は、絶縁性の材料で構成されている。特に限定されないが、本実施例における封止体30は、例えばエポキシ樹脂といった、封止用の樹脂材料で構成されている。封止体30は、概して板形状を有しており、上面30a、下面30b、第1端面30c、第2端面30d、第1側面30e及び第2側面30fを有する。
【0020】
複数の半導体素子12、14は、第1半導体素子12と、第2半導体素子14とを含む。第1半導体素子12と第2半導体素子14は、パワー半導体素子であって、互いに同一の構造を有する。各々の半導体素子12、14は、半導体基板12a、14a、第1主電極12b、14b、第2主電極12c、14c及び複数の信号電極12d、14dを備える。半導体基板12a、14aは、特に限定されないが、シリコン基板、炭化シリコン基板又は窒化物半導体基板であってもよい。
【0021】
第1主電極12b、14bは、半導体基板12a、14aの表面に位置しており、第2主電極12c、14cは、半導体基板12a、14aの裏面に位置している。なお、第1半導体素子12は反転されて配置されており、
図2、
図3において、半導体基板12aの表面は下方を向いている。第1主電極12b、14bと第2主電極12c、14cは、半導体基板12a、14aを介して互いに電気的に接続される。特に限定されないが、各々の半導体素子12、14は、スイッチング素子であり、第1主電極12b、14bと第2主電極12c、14cとの間を、選択的に導通及び遮断することができる。複数の信号電極12d、14dは、第1主電極12b、14bと同じく、半導体基板12a、14aの表面に位置している。なお、各々の信号電極12d、14dは、第1主電極12b、14b及び第2主電極12c、14cよりも十分に小さい。但し、半導体基板12a、14aの表面には、第1主電極12b、14bと複数の信号電極12d、14dの両者が位置するので、第1主電極12b、14bの面積は、第2主電極12c、14cの面積よりも小さい。第1主電極12b、14b、第2主電極12c、14c及び信号電極12d、42dは、アルミニウム、ニッケル又は金といった、一又は複数種類の金属を用いて構成されることができる。
【0022】
一例ではあるが、
図4に示すように、本実施例における各々の半導体素子12、14は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードとが一体化されたRC(Reverse Conducting)-IGBTである。第1主電極12b、14bは、IGBTのエミッタ及びダイオードのアノードに接続されており、第2主電極12c、14cは、IGBTのコレクタ及びダイオードのカソードに接続されている。そして、複数の信号電極12d、14dの一つは、IGBTのゲートに接続されている。なお、他の実施形態として、第1半導体素子12及び/又は第2半導体素子14は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってもよい。この場合、第1主電極12b、14bは、MOSFETのソースに接続され、第2主電極12c、14cは、MOSFETのドレインに接続される。そして、複数の信号電極12d、14dの一つは、MOSFETのゲートに接続される。
【0023】
複数の導電板16、18、20は、上側導電板16、中間導電板20及び下側導電板18を含む。各々の導電板16、20、18は、少なくとも部分的に導電性を有する板状の部材である。三つの導電板16、20、18は積層配置されており、それらの間に複数の半導体素子12、14が配置されている。即ち、第1半導体素子12は、上側導電板16と中間導電板20との間に位置しており、上側導電板16と中間導電板20とのそれぞれに電気的に接続されている。第2半導体素子14は、中間導電板20と下側導電板18との間に位置しており、中間導電板20と下側導電板18とのそれぞれに電気的に接続されている。なお、上側導電板16と中間導電板20との間には、二以上の第1半導体素子12が設けられてもよい。この場合、二以上の第1半導体素子12は、同じ種類(即ち、同じ構造)の半導体素子であってもよいし、互いに異なる種類(即ち、異なる構造)の半導体素子であってもよい。同様に、中間導電板20と下側導電板18との間には、二以上の同じ種類又は異なる種類の第2半導体素子14が設けられてもよい。
【0024】
上側導電板16と下側導電板18は金属板であり、例えば銅といった金属で構成されている。上側導電板16は、接合層52を介して、第1半導体素子12の第2主電極12cに接合されている。接合層52は、例えばはんだ層であって、上側導電板16と第1半導体素子12との間を電気的に、かつ熱的に接続する。上側導電板16は、封止体30の上面30aに露出している。従って、上側導電板16は、第1半導体素子12に接続された電気回路の一部を構成するだけでなく、第1半導体素子12の熱を外部へ放出する放熱板としても機能する。下側導電板18は、接合層62を介して、第2半導体素子14の第2主電極14cに接合されている。この接合層62も、例えばはんだ層であって、下側導電板18と第2半導体素子14との間を電気的に、かつ熱的に接続する。下側導電板18は、封止体30の下面30bに露出している。従って、下側導電板18は、第2半導体素子14に接続された電気回路の一部を構成するだけでなく、第2半導体素子14の熱を外部へ放出する放熱板としても機能する。
【0025】
中間導電板20は、絶縁体基板22と、第1金属層24と、第2金属層26とを含む積層構造を有する。絶縁体基板22は、絶縁体で構成された基板であり、例えばセラミック基板であってもよい。第1金属層24は、例えば銅といった金属で構成されており、絶縁体基板22の上面に設けられている。第2金属層26も、例えば銅といった金属で構成されており、絶縁体基板22の下面に設けられている。第1金属層24は、第1半導体素子12と電気的に接続されており、第2金属層26は、第2半導体素子14と電気的に接続されている。中間導電板20は、特に限定されないが、DBC(Direct Bonded Cupper)基板、DBA(Direct Bonded Aluminum)、AMC(Active Metal Brazed Cupper)基板であってもよい。
【0026】
中間導電板20の第1金属層24は、第1主回路部24aと、複数の第1信号回路部24bとを有する。第1主回路部24aと複数の第1信号回路部24bは、互いに分離されており、互いに電気的に絶縁されている。第1主回路部24aは、接合層50を介して、第1半導体素子12の第1主電極12bに接合されている。接合層50は、例えばはんだ層であって、第1主回路部24aと第1半導体素子12の第1主電極12bとの間を電気的に、かつ熱的に接続している。複数の第1信号回路部24bは、接合層54を介して、第1半導体素子12の複数の信号電極12dにそれぞれ接合されている。これらの接合層54も、例えばはんだ層であって、複数の第1信号回路部24bと第1半導体素子12の複数の信号電極12dとの間を電気的に、かつ熱的に接続している。
【0027】
同様に、中間導電板20の第2金属層26は、第2主回路部26aと、複数の第2信号回路部26bとを有する。第2主回路部26aと複数の第2信号回路部26bは、互いに分離されており、互いに電気的に絶縁されている。を有する第2主回路部26aは、接合層60を介して、第2半導体素子14の第1主電極14bに接合されている。接合層60は、例えばはんだ層であって、第2主回路部26aと第2半導体素子14の第1主電極14bとの間を電気的に、かつ熱的に接続している。複数の第2信号回路部26bは、接合層64を介して、第1半導体素子12の複数の信号電極12dにそれぞれ接合されている。これらの接合層64も、例えばはんだ層であって、複数の第2信号回路部26bと第2半導体素子14の複数の信号電極14dとの間を電気的に、かつ熱的に接続している。
【0028】
半導体装置10は、複数の電力端子32、34、36、38と、複数の信号端子40、42とを備える。これらの端子32、34、36、38、40、42は、特に限定されないが、銅といった金属で構成されている。複数の電力端子32、34、36、38は、封止体30の第2端面30dから突出している。複数の信号端子40、42は、封止体30の第1端面30cから突出している。但し、これらの端子32、34、36、38、40、42の位置や形状といった具体的な構造は、特に限定されない。
【0029】
複数の電力端子32、34、36、38には、第1電力端子32、第2電力端子34、第3電力端子36及び第4電力端子38が含まれる。第1電力端子32は、封止体30の内部において、上側導電板16と電気的に接続されている。これにより、第1半導体素子12の第2主電極12cは、上側導電板16を介して第1電力端子32と電気的に接続されている。特に限定されないが、第1電力端子32は、上側導電板16と一体に形成されてもよい。第2電力端子34は、封止体30の内部において、中間導電板20の第1金属層24の第1主回路部24aと電気的に接続されている。これにより、第1半導体素子12の第1主電極12bは、中間導電板20の第1主回路部24aを介して、第2電力端子34と電気的に接続されている。特に限定されないが、第2電力端子34は、例えばはんだ層といった接合層56を介して、第1主回路部24aに接合されてもよい。
【0030】
第3電力端子36は、封止体30の内部において、中間導電板20の第2金属層26の第2主回路部26aと電気的に接続されている。これにより、第2半導体素子14の第1主電極14bは、中間導電板20の第2主回路部26aを介して、第3電力端子36と電気的に接続されている。特に限定されないが、第3電力端子36は、例えばはんだ層といった接合層66を介して、第2主回路部26aに接合されてもよい。第4電力端子38は、封止体30の内部において、下側導電板18と電気的に接続されている。これにより、第2半導体素子14の第2主電極14cは、下側導電板18を介して第4電力端子38と電気的に接続されている。特に限定されないが、第4電力端子38は、下側導電板18と一体に形成されてもよい。
【0031】
複数の信号端子40、42には、複数の第1信号端子40と複数の第2信号端子42が含まれる。複数の第1信号端子40は、封止体30の内部において、中間導電板20の第1金属層24の複数の第1信号回路部24bとそれぞれ電気的に接続されている。これにより、第1半導体素子12の各々の信号電極12dは、第1信号回路部24bを介して、対応する一つの第1信号端子40と電気的に接続されている。特に限定されないが、複数の第1信号端子40は、例えばはんだ層といった接合層58を介して、複数の第1信号回路部24bとそれぞれ接合されてもよい。同様に、複数の第2信号端子42は、封止体30の内部において、中間導電板20の第2金属層26の複数の第2信号回路部26bとそれぞれ電気的に接続されている。これにより、第2半導体素子14の各々の信号電極14dは、第2信号回路部26bを介して、対応する一つの第2信号端子42と電気的に接続されている。特に限定されないが、複数の第2信号端子42についても、例えばはんだ層といった接合層68を介して、複数の第2信号回路部26bとそれぞれ接合されてもよい。
【0032】
以上の構成により、本実施例の半導体装置10は、コンバータやインバータといった電力変換回路に組み込まれ、電流を導通及び遮断するスイッチング回路を構成することができる。このとき、第2電力端子34と第4電力端子38とを互いに接続すると、第1半導体素子12と第2半導体素子14とを直列に接続することができる。あるいは、第1電力端子32と第4電力端子38とを互いに接続するとともに、第2電力端子34と第3電力端子36とを互いに接続すると、第1半導体素子12と第2半導体素子14とを並列に接続することができる。
【0033】
第1半導体素子12及び第2半導体素子14に電流が流れると、第1半導体素子12及び第2半導体素子14がそれぞれ発熱する。第1半導体素子12及び第2半導体素子14が発熱すると、それらに隣接する三つの導電板16、18、20の温度も上昇して、各々の導電板16、18、20には熱膨張が生じる。特に、第1半導体素子12と第2半導体素子14との間に位置する中間導電板20は、上側導電板16及び下側導電板18よりも高温となりやすい。
【0034】
そのことから、本実施例の半導体装置10では、上側導電板16及び下側導電板18が金属板であるのに対して、中間導電板20は絶縁体基板22を含む積層構造を有している。絶縁体基板22は例えばセラミック基板であり、絶縁体基板22を構成する材料は、第1金属層24を構成する材料や第2金属層26を構成する材料よりも線膨張係数が小さい。これにより、中間導電板20の面内方向における線膨張係数は、上側導電板16の面内方向における線膨張係数及び下側導電板18の面内方向における線膨張係数よりも小さくなっている。従って、中間導電板20の温度が、上側導電板16の温度及び下側導電板18の温度よりも高温となったときでも、三つの導電板16、18、20に不均一な熱膨張が生じることが抑制される。
【0035】
ここで、中間導電板20は、絶縁体基板22を含む積層構造に限定されず、その構造や材料は適宜変更することができる。上側導電板16及び下側導電板18もまた、金属板に限定されず、その構造や材料は適宜変更することができる。中間導電板20の面内方向における線膨張係数が、上側導電板16の面内方向における線膨張係数及び下側導電板18の面内方向における線膨張係数よりも小さくなる限りにおいて、三つの導電板16、18、20の構造や材料は、様々に変更することができる。
【0036】
本実施例の半導体装置10では、中間導電板20の面積が、上側導電板16の面積及び下側導電板18の面積よりも小さい。言い換えると、上側導電板16の面積及び下側導電板18の面積は、中間導電板20の面積より大きい。前述したように、上側導電板16及び下側導電板18は、封止体30の上面30a又は下面30bに露出しており、放熱板として機能する。そのことから、上側導電板16の面積及び下側導電板18の面積が大きいと、各々の半導体素子12、14の熱が、上側導電板16及び下側導電板18を介して半導体装置10の外部へ効率よく放出される。しかしながら、
図5に示すように、一変形例の半導体装置10’では、中間導電板20の面積が、上側導電板16の面積及び下側導電板18の面積よりも大きくてもよい。このような構成によると、中間導電板20の熱容量が大きくなるので、中間導電板20の温度上昇を抑制することができる。
【0037】
本実施例の半導体装置10では、第1半導体素子12と第2半導体素子14との両方が、第1主電極12b、14bにおいて、中間導電板20と電気的に接続されており、第2主電極12c、14cにおいて、上側導電板16又は下側導電板18と電気的に接続されている。前述したように、第2主電極12c、14cの面積は、第1主電極12b、14bの面積よりも大きい。従って、各々の半導体素子12、14は、第1主電極12b、14bよりも第2主電極12c、14cを介して、より多く熱を外部へ放出する。そして、中間導電板20は、第1半導体素子12と第2半導体素子14との両者から熱を受け取るので、その温度が上昇し易い。そのことから、第1半導体素子12と第2半導体素子14との両方が、放熱量の少ない第1主電極12b、14bにおいて中間導電板20に接続されていると、中間導電板20の温度上昇を抑制することができる。なお、
図6に示す一変形例の半導体装置10’’のように、第2半導体素子14(又は第1半導体素子12)のみが、第1主電極12b、14bにおいて中間導電板20に接続されていてもよい。
【0038】
(実施例2)
図7-
図9を参照して、実施例2の半導体装置10Aを説明する。本実施例の半導体装置10Aは、二つの継手部材70をさらに備えており、この点において実施例1の半導体装置10と相違する。また、本実施例の半導体装置10Aは、第2電力端子34を有しておらず、この点においても実施例1の半導体装置10と相違する。本実施例の半導体装置10Aの他の構成については、実施例1の半導体装置10と共通又は対応している。従って、
図7-
図9では、実施例1の半導体装置10と共通又は対応する構成に同一の符号が付されており、ここでは重複する説明を省略する。
【0039】
各々の継手部材70は、封止体30の内部に位置しており、金属といった導電体で構成されている。継手部材70の一端は、中間導電板20の第1金属層24の第1主回路部24aに接続されている。継手部材70の他端は、下側導電板18に接続されている。これにより、中間導電板20の第1主回路部24aが、各々の継手部材70を介して、下側導電板18に電気的に接続されている。このような構成によると、
図9に示すように、第1半導体素子12と第2半導体素子14を、封止体30の内部で直列に接続することができる。従って、第2電力端子34が省略されている。なお、第2電力端子34に代えて、第4電力端子38を省略してもよい。
【0040】
本実施例の半導体装置10Aは、二つの継手部材70を備えるが、継手部材70の数は二つに限定されない。半導体装置10Aは、単一の、又は三つ以上の継手部材70を備えてもよい。また、継手部材70による接続箇所を変更することによって、第1半導体素子12と第2半導体素子14を、封止体30の内部で並列に接続してもよい。
【0041】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
10:半導体装置
12:第1半導体素子
14:第2半導体素子
16:上側導電板
18:下側導電板
20;中間導電板
22:中間導電板の絶縁体基板
24:中間導電板の第1金属層
24a:第1金属層の第1主回路部
24b:第1金属層の第1信号回路部
26:中間導電板の第2金属層
26a:第1金属層の第1主回路部
26b:第1金属層の第1信号回路部
30:封止体
32、34、36、38:電力端子
40、42:信号端子
70:継手部材