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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20221220BHJP
   B60W 30/182 20200101ALI20221220BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W30/182
B60W40/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019099576
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192891
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100113011
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】金道 敏樹
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021506(JP,A)
【文献】特開2018-030479(JP,A)
【文献】特開2016-215769(JP,A)
【文献】特開2013-250663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
G08G 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を支援する運転支援システムであって、
複数のシーンと1対1で対応付けられた複数の制御モードを有する運転支援制御を行うプロセッサと、
前記車両の運転環境を示す運転環境情報と、前記複数のシーンをそれぞれ定義する複数のシーン記述情報とが格納される記憶装置と
を備え、
前記プロセッサは、前記運転環境情報と前記複数のシーン記述情報に基づいて、前記複数のシーンのうち前記運転環境に対応するシーンを対象シーンとして認識し、
選択制御モードは、前記複数の制御モードのうち前記対象シーンに対応付けられた1つであり、
選択シーン記述情報は、前記複数のシーン記述情報のうち前記対象シーンを定義する1つであり、且つ、前記選択制御モードの前記運転支援制御において用いられるパラメータを示し、
前記プロセッサは、前記選択シーン記述情報で示される前記パラメータに基づいて前記選択制御モードの前記運転支援制御を行い、前記選択シーン記述情報を切り替えることによって前記選択制御モードを切り替え、
前記対象シーンが第1シーンから第2シーンに変化する場合、前記プロセッサは、前記選択シーン記述情報及び前記選択制御モードの切り替えを実行する前に、前記車両の乗員に前記切り替えを通知し、
前記プロセッサは、前記乗員に前記切り替えを通知する際、前記乗員に前記切り替えの承認を要求し、
前記乗員が前記切り替えを承認した場合、前記プロセッサは、前記切り替えを実行し、
前記乗員が前記切り替えを拒否した場合、前記プロセッサは、前記車両のドライバに対して手動運転を行うよう要求する
運転支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援システムであって、
前記第2シーンに関する前記選択シーン記述情報で示される前記パラメータの少なくとも一部は、前記第1シーンに関する前記選択シーン記述情報で示されていない
運転支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転支援システムであって、
前記乗員が前記切り替えを拒否した場合、前記プロセッサは、前記手動運転の実行中に前記選択シーン記述情報をあらかじめ切り替え、前記運転支援制御の再開が可能であることを前記ドライバに通知する
運転支援システム。
【請求項4】
車両の運転を支援する運転支援システムであって、
複数のシーンと1対1で対応付けられた複数の制御モードを有する運転支援制御を行うプロセッサと、
前記車両の運転環境を示す運転環境情報と、前記複数のシーンをそれぞれ定義する複数のシーン記述情報とが格納される記憶装置と
を備え、
前記プロセッサは、前記運転環境情報と前記複数のシーン記述情報に基づいて、前記複数のシーンのうち前記運転環境に対応するシーンを対象シーンとして認識し、
選択制御モードは、前記複数の制御モードのうち前記対象シーンに対応付けられた1つであり、
選択シーン記述情報は、前記複数のシーン記述情報のうち前記対象シーンを定義する1つであり、且つ、前記選択制御モードの前記運転支援制御において用いられるパラメータを示し、
前記プロセッサは、前記選択シーン記述情報で示される前記パラメータに基づいて前記選択制御モードの前記運転支援制御を行い、前記選択シーン記述情報を切り替えることによって前記選択制御モードを切り替え、
前記対象シーンが第1シーンから第2シーンに変化する場合、前記プロセッサは、前記選択シーン記述情報及び前記選択制御モードの切り替えを実行する前に、前記車両の乗員に前記切り替えを通知し、
前記対象シーンが第3シーンから第4シーンに変化する場合、前記プロセッサは、前記乗員に前記切り替えを事前に通知することなく、前記切り替えを実行し、
前記第4シーンに関する前記選択シーン記述情報で示される前記パラメータの全てが、前記第3シーンに関する前記選択シーン記述情報で示される前記パラメータに包含されている
運転支援システム。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の運転支援システムであって、
前記複数のシーンの各々は、前記車両と前記車両の周囲の一定空間における移動体の配置によって定義される
運転支援システム。
【請求項6】
請求項に記載の運転支援システムであって、
前記パラメータは、
前記車両が存在するレーン、前記車両の位置、及び前記車両の速度を含む車両パラメータと、
前記移動体が存在するレーン、前記移動体の位置、及び前記移動体の速度を含む移動体パラメータと
を含む
運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシーンと1対1で対応付けられた複数の制御モードを有する運転支援制御を行う運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動運転制御を行う車両制御システムを開示している。自動運転モードは、第1自動運転モードと、第1自動運転モードよりも自動化率が低い第2自動運転モードを含んでいる。乗員によって運転操作子が操作されず、且つ、乗員の顔または視線の向きが第1角度範囲内である場合、第1自動運転モードが実行される。乗員によって運転操作子が操作されず、且つ、乗員の顔または視線の向きが第1角度範囲よりも広い第2角度範囲内である場合、第2自動運転モードが実行される。
【0003】
特許文献2は、車両に搭載されるモード切替報知装置を開示している。モード切替報知装置は、自動運転モードと手動運転モードとの間の切り替わりを報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-203007号公報
【文献】特開2017-218031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転支援システムは、車両の運転を支援する運転支援制御を行う。ここで、複数のシーンと1対1で対応付けられた複数の制御モードを有する運転支援制御について考える。運転支援システムは、シーンを認識し、認識したシーンに対応付けられた制御モードの運転支援制御を行う。運転支援システムは、シーンが変化すると、それに応じて制御モードを切り替える。
【0006】
しかしながら、運転支援システムによって認識されるシーンの変化は、車両の乗員からは分からない。従って、運転支援システムによって制御モードが無断で切り替えられると、車両の乗員は、その切り替えに対して違和感を覚える可能性がある。
【0007】
本発明の1つの目的は、複数のシーンと1対1で対応付けられた複数の制御モードを有する運転支援制御に関して、シーンが変化した場合の車両の乗員の違和感を軽減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点において、車両の運転を支援する運転支援システムが提供される。
前記運転支援システムは、
複数のシーンと1対1で対応付けられた複数の制御モードを有する運転支援制御を行うプロセッサと、
前記車両の運転環境を示す運転環境情報と、前記複数のシーンをそれぞれ定義する複数のシーン記述情報とが格納される記憶装置と
を備える。
前記プロセッサは、前記運転環境情報と前記複数のシーン記述情報に基づいて、前記複数のシーンのうち前記運転環境に対応するシーンを対象シーンとして認識する。
選択制御モードは、前記複数の制御モードのうち前記対象シーンに対応付けられた1つである。
選択シーン記述情報は、前記複数のシーン記述情報のうち前記対象シーンを定義する1つであり、且つ、前記選択制御モードの前記運転支援制御において用いられるパラメータを示す。
前記プロセッサは、前記選択シーン記述情報で示される前記パラメータに基づいて前記選択制御モードの前記運転支援制御を行い、前記選択シーン記述情報を切り替えることによって前記選択制御モードを切り替える。
前記対象シーンが第1シーンから第2シーンに変化する場合、前記プロセッサは、前記選択シーン記述情報及び前記選択制御モードの切り替えを実行する前に、前記車両の乗員に前記切り替えを通知する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象シーンが第1シーンから第2シーンに変化する場合、運転支援システムは、選択シーン記述情報及び選択制御モードの切り替えを実行する前に、車両の乗員に当該切り替えを通知する。つまり、運転支援システムは、選択制御モードの切り替えを無断では実行せず、車両の乗員に事前に通知する。従って、その後に選択制御モードの切り替えが実行されたとしても、車両の乗員が覚える違和感は軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る運転支援システムを説明するための概念図である。
図2】本発明の実施の形態における複数のシーンと運転支援制御の複数の制御モードとの間の対応関係の一例を示す図である。
図3】シーンS1を説明するための概念図である。
図4】シーンS2を説明するための概念図である。
図5】シーンS3を説明するための概念図である。
図6】シーンS4を説明するための概念図である。
図7】シーンS5を説明するための概念図である。
図8】シーンS6を説明するための概念図である。
図9】シーンS7を説明するための概念図である。
図10】本発明の実施の形態におけるシーン記述情報の一例を説明するための概念図である。
図11】本発明の実施の形態に係るシーン認識処理の一例を説明するための概念図である。
図12】本発明の実施の形態に係るシーン認識処理の一例を説明するための概念図である。
図13】本発明の実施の形態に係るモード切替処理の一例を説明するための概念図である。
図14】本発明の実施の形態に係るモード切替処理の他の例を説明するための概念図である。
図15】本発明の実施の形態に係るモード切替処理の更に他の例を説明するための概念図である。
図16】本発明の実施の形態に係る運転支援システムの構成例を概略的に示すブロック図である。
図17】本発明の実施の形態に係る運転支援システムにおける情報取得装置及び運転環境情報の例を示すブロック図である。
図18】本発明の実施の形態に係る運転支援システムによる処理を示すフローチャートである。
図19】本発明の実施の形態に係るモード切替処理の第1の例を示すフローチャートである。
図20】本発明の実施の形態に係るモード切替処理の第2の例を示すフローチャートである。
図21】本発明の実施の形態に係るモード切替処理の第3の例を示すフローチャートである。
図22】本発明の実施の形態に係るモード切替処理の第4の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
1.シーンに応じた運転支援制御
1-1.運転支援制御
図1は、本実施の形態に係る運転支援システム100を説明するための概念図である。運転支援システム100は、車両10の運転を支援する「運転支援制御」を行う。典型的には、運転支援システム100は、車両10に搭載されている。あるいは、運転支援システム100は、車両10の外部の外部装置に配置され、リモートで運転支援制御を行ってもよい。あるいは、運転支援システム100は、車両10と外部装置とに分散的に配置されていてもよい。
【0013】
運転支援制御は、車両10に関する操舵制御、加速制御、及び減速制御のうち少なくとも1つを含む。つまり、運転支援システム100は、操舵制御、加速制御、及び減速制御のうち少なくとも1つを行うことにより、車両10の運転を支援する。そのような運転支援制御としては、自動運転制御、軌道追従制御(trajectory-following control)、車線維持支援制御(lane tracing assist control)、アダプティブクルーズコントロール(ACC: Adaptive Cruise Control)、等が例示される。
【0014】
1-2.シーンと制御モード
本実施の形態に係る運転支援制御は、複数のモードを有している。運転支援制御のモードは、以下、「制御モード」と呼ばれる。制御モードが異なると、運転支援制御の内容も異なる。制御モードを切り替えることによって、運転支援制御の内容を変えることができる。特に、本実施の形態によれば、「シーン」に応じて、運転支援制御の制御モードが動的に切り替えられる。
【0015】
シーンとは、車両10が置かれている状況である。特に、シーンは、車両10と車両10の周辺の移動体の配置(configuration)によって定義される。移動体としては、車両10の周辺の他車両、歩行者、等が例示される。複数のシーンと複数の制御モードとが1対1で対応付けられ、シーンに応じて制御モードが動的に切り替えられる。
【0016】
図2は、複数のシーンと複数の制御モードとの間の対応関係の一例を示している。図2に示される例では、7種類のシーンS1~S7と7種類の制御モードM1~M7との対応関係が示されている。
【0017】
図3図9は、それぞれ、シーンS1~S7を説明するための概念図である。図3図9の各々に示されるコンフィグレーション空間CONは、車両10の周囲の一定空間である。シーンに寄与する移動体は、このコンフィグレーション空間CON内の移動体である。すなわち、各シーンは、車両10とコンフィグレーション空間CONにおける移動体の配置によって定義される。図3図9において、コンフィグレーション空間CONの形状は長方形であるが、その形状は任意である。また、コンフィグレーション空間CONの中心位置は、車両10の位置であってもよいし、車両10の位置からずれていてもよい。例えば、運転支援制御においては車両10の前方の移動体が特に重要であるため、車両10の前方のコンフィグレーション空間CONは、車両10の後方のコンフィグレーション空間CONよりも大きくてもよい。
【0018】
以下、図2図9を参照して、シーンS1~S7と制御モードM1~M7について説明する。
【0019】
<シーンS1>
図2及び図3を参照して、シーンS1及び制御モードM1について説明する。シーンS1は、コンフィグレーション空間CONに移動体が存在しないシーンである。制御モードM1は、このシーンS1に対応付けられる。例えば、制御モードM1の運転支援制御は、軌道追従制御及び車線維持支援制御の少なくとも1つを含む。軌道追従制御や車線維持支援制御における目標軌道は、例えば、車両10が走行している走行レーンL0の中心線である。
【0020】
<シーンS2>
図2及び図4を参照して、シーンS2及び制御モードM2について説明する。車両10は、走行レーンL0を走行している。シーンS2は、車両10と同じ走行レーンL0における前方位置に移動体11(例:先行車両)があるシーンである。制御モードM2は、このシーンS2に対応付けられる。制御モードM2の運転支援制御では、前方の移動体11が監視対象に含まれる。例えば、制御モードM2の運転支援制御は、上述の制御モードM1の運転支援制御に加えて、移動体11に追従して走行するアダプティブクルーズコントロール(ACC)を含む。
【0021】
<シーンS3>
図2及び図5を参照して、シーンS3及び制御モードM3について説明する。隣接レーンLAは、車両10が走行している走行レーンL0に隣接している。シーンS3は、隣接レーンLAに移動体12(例:並走車両)があるシーンである。制御モードM3は、このシーンS3に対応付けられる。制御モードM3の運転支援制御では、隣接レーンLAの移動体12が監視対象に含まれる。例えば、制御モードM3の運転支援制御は、上述の制御モードM1の運転支援制御に加えて、移動体12の車線変更(割り込み)に注意及び対処する制御を含む。車線変更に対処する制御は、例えば、減速制御を含む。
【0022】
<シーンS4>
図2及び図6を参照して、シーンS4及び制御モードM4について説明する。シーンS4は、上述のシーンS2とシーンS3の組み合わせである。すなわち、走行レーンL0に移動体11があり、且つ、隣接レーンLAに移動体12がある。制御モードM4は、このシーンS4に対応付けられる。制御モードM4の運転支援制御では、前方の移動体11と隣接レーンLAの移動体12の両方が監視対象に含まれる。制御モードM4の運転支援制御は、制御モードM2の運転支援制御と制御モードM3の運転支援制御の組み合わせである。
【0023】
<シーンS5>
図2及び図7を参照して、シーンS5及び制御モードM5について説明する。車両10の前方に、走行レーンL0と交差する交差レーンLBが存在する。シーンS5は、交差レーンLBの移動体13が走行レーンL0に合流(進入)してくるシーンである。制御モードM5は、このシーンS5に対応付けられる。制御モードM5の運転支援制御では、移動体13が監視対象に含まれる。例えば、制御モードM5の運転支援制御は、上述の制御モードM1の運転支援制御に加えて、移動体13との衝突を警戒及び回避する制御を含む。移動体13との衝突を回避する制御は、例えば、減速制御を含む。
【0024】
<シーンS6>
図2及び図8を参照して、シーンS6及び制御モードM6について説明する。車両10の前方に、走行レーンL0と交差する交差レーンLBが存在する。シーンS6は、走行レーンL0における前方の移動体14が交差レーンLBに移動(退出)するシーンである。制御モードM6は、このシーンS6に対応付けられる。制御モードM6の運転支援制御では、移動体14が監視対象に含まれる。例えば、制御モードM6の運転支援制御は、上述の制御モードM1の運転支援制御に加えて、移動体14には追従せず移動体14の挙動に注意する制御を含む。
【0025】
<シーンS7>
図2及び図9を参照して、シーンS7及び制御モードM7について説明する。車両10は、走行レーンL0を走行している。走行レーンL0の隣りに対向車線(反対車線)LCが存在する。シーンS7は、対向車線LCに移動体15(例:対向車両)があるシーンである。制御モードM7は、このシーンS7に対応付けられる。制御モードM7の運転支援制御では、対向車線LCの移動体15が監視対象に含まれる。例えば、制御モードM7の運転支援制御は、上述の制御モードM1の運転支援制御に加えて、移動体15の挙動に注意する制御を含む。
【0026】
1-3.シーン記述情報
シーン記述情報は、シーンを定義する情報であり、シーン毎に用意される。図2に示されるように、複数のシーン記述情報D1~D7は、それぞれ、複数のシーンS1~S7を定義する。複数のシーン記述情報D1~D7と複数の制御モードM1~M7とが1対1で対応付けられていると言うこともできる。
【0027】
より詳細には、シーン記述情報は、シーン(車両10と移動体の配置)を定義するパラメータを示す。シーンを定義するパラメータは、車両10に関する車両パラメータと、移動体に関する移動体パラメータとを含む。
【0028】
車両10に関する車両パラメータは、例えば、車両10が存在するレーンL(=走行レーンL0)、レーンLに沿った方向の車両10の位置X、車両10の速度V、及び車両10の向きHを含む。簡単のため、速度Vの方向が、向きHとみなされてもよい。
【0029】
コンフィグレーション空間CONに含まれる移動体i(i=1~k;k=1以上の整数)を考える。移動体iに関する移動体パラメータは、例えば、移動体iの種類C、移動体iが存在するレーンL、レーンLに沿った方向の移動体iの位置X、移動体iの速度V、及び移動体iの向きHを含む。簡単のため、速度Vの方向が、向きHとみなされてもよい。
【0030】
尚、本実施の形態において、位置、速度等のパラメータは、絶対座標系におけるパラメータであってもよいし、相対座標系におけるパラメータであってもよい。相対座標系は、例えば、車両10に固定されており、車両10の移動と共に移動する。典型的には、相対座標系の原点は、車両10の所定位置であるが、それに限定されない。
【0031】
車両10に対する移動体iの相対関係は、δL=L-L、δX=X-X、δV=V-Vによって表される。これらδL、δX、δVが、L、X、Vの代わりに移動体パラメータとして用いられてもよい。
【0032】
図10を参照して、車両10に対する移動体iの相対関係のいくつかの例を説明する。車両10が左隣接レーンの移動体(i=1)を追い越した場合、その移動体(i=1)の相対関係は、「δL=-1、δX<0、δV<0」で表される。車両10と前方の移動体(i=2)との車間距離が減少しつつある場合、その移動体(i=2)の相対関係は、「δL=0、δX>0、δV<0」で表される。右隣接レーンの移動体(i=3)が車両10を追い越した場合、その移動体(i=3)の相対関係は、「δL3=1、δX3>0、δV3>0」で表される。
【0033】
シーンS1を定義するシーン記述情報D1は、パラメータセット[(L,X,V,H)]を含む。シーンS2~S7を定義するシーン記述情報D2~D7の各々は、パラメータセット[(L,X,V,H),(C,L,X,V,H)]、あるいは、[(L,X,V,H),(C,δL,δX,δV,H)]を含む。
【0034】
シーンを定義するシーン記述情報で示されるパラメータは、当該シーンに対応付けられた制御モードの運転支援制御において用いられる。つまり、制御モードM1~M7の運転支援制御は、それぞれ、シーン記述情報D1~D7に基づいて行われる。用いるシーン記述情報を切り替えることによって、制御モードを切り替えることができる。
【0035】
1-4.シーン認識処理
運転支援システム100は、シーンを認識する「シーン認識処理」を行う。このシーン認識処理では、上記のシーン記述情報D1~D7に加えて、運転環境情報が用いられる。
【0036】
運転環境情報は、車両10の運転環境を示す情報である。例えば、運転環境情報は、地図情報、車両位置情報、車両状態情報、周辺状況情報、等を含む。地図情報は、車両10の周囲のレーン配置を示す。車両位置情報は、車両10の位置及び向きを示す。車両状態情報は、車両10の状態(例:速度)を示す。周辺状況情報は、車両10の周囲の移動体に関する情報(位置、速度、等)を含む。典型的には、運転環境情報は、車両10に搭載されたセンサによって得られる。
【0037】
運転支援システム100は、運転環境情報とシーン記述情報D1~D7に基づいて、複数のシーンS1~S7のうち運転環境に対応するシーンを認識する。より詳細には、地図情報、車両位置情報、及び車両状態情報から、車両パラメータを認識することができる。また、地図情報、車両位置情報、車両状態情報、及び周辺状況情報から、移動体パラメータを認識することができる。従って、運転環境情報で示される運転環境がシーン記述情報D1~D7で定義されるシーンS1~S7のいずれに対応するかを判定することができる。
【0038】
例えば、図4で示されたように、走行レーンL0には移動体11が存在するが、隣接レーンLAには移動体が存在しない運転環境を考える。この運転環境はシーン記述情報D2に合致するため、シーンS2が運転環境に対応(合致)するシーンとして認識される。他の例として、図6で示されたように、走行レーンL0に移動体11が存在し、隣接レーンLAに移動体12が存在する運転環境を考える。この運転環境はシーン記述情報D4に合致するため、シーンS4が運転環境に対応(合致)するシーンとして認識される。
【0039】
シーン認識処理によって認識されるシーン、すなわち、運転環境に対応するシーンは、以下「対象シーンST」と呼ばれる。運転支援システム100は、対象シーンSTを繰り返し認識することにより、対象シーンSTの変化を検知することができる。
【0040】
他の例として、運転支援システム100は、確率の観点から、対象シーンST及びその変化を推定してもよい。図11及び図12を参照して、対象シーンST及びその変化の推定方法の一例を説明する。
【0041】
図11は、ある時刻tにおけるシーンを示している。図11に示される例では、時刻tにおけるシーンS(t)はシーンS3であり、隣接レーンLAに移動体12が存在している。移動体12の向きHとレーン延在方向とのなす角度は、θで表されている。
【0042】
図12は、時刻t+δtにおけるシーンS(t+δt)の例を示している。時間δtの間に移動体12が隣接レーンLAから走行レーンL0に移動した場合、シーンS(t+δt)はシーンS2である。この場合の移動体12を、便宜上、移動体12-2と呼ぶ。シーンS(t+δt)がシーンS2である確率P2は、次のように表される。
【0043】
P2=P(S(t+δt)=S2|S(t)=S3,θ)
【0044】
一方、時間δtの間、移動体12が隣接レーンLAを維持し続けた場合、シーンS(t+δt)はシーンS3である。この場合の移動体12を便宜上、移動体12-3と呼ぶ。シーンS(t+δt)がシーンS3である確率P3は、次のように表される。
【0045】
P3=P(S(t+δt)=S3|S(t)=S3,θ)
【0046】
これら確率P2、P3は、現実の交通環境の観測結果に基づいて、事前に定式化される。精度を向上させるために、角度θだけでなく他の確率変数も考慮されてもよい。例えば、移動体iの速度Vや、レーン内における移動体iの横位置が確率変数として用いられてもよい。移動体iの横位置としては、移動体iの中心位置とレーン中心線との間の距離、あるいは、移動体iの横端位置とレーン境界線との間の距離が用いられる。
【0047】
典型的には、時刻t+δtにおけるシーンS(t+δt)は、最も確率の高いシーンであると推定される。例えば、確率P2が最も高い場合、シーンS(t+δt)は、シーンS2であると推定される。この場合、シーンS3からシーンS2への変化が発生すると推定される。一方、確率P3が最も高い場合、シーンS(t+δt)は、シーンS3であると推定される。この場合、シーン変化は発生しないと推定される。
【0048】
最も高い確率と二番目に高い確率との間の差がほとんど無い場合もあり得る。この場合は、最も高い確率だけでなく、二番目に高い確率のシーンも考慮してもよい。
【0049】
例えば、図11及び図12で示された例において、確率P2と確率P3がほとんど同じであるとする。そのような状況は、移動体12が隣接レーンLAから走行レーンL0へ車線変更している最中に発生し得る。この場合、図12中の右段に示されるように、移動体12-2が走行レーンL0に存在し、且つ、移動体12-3が隣接レーンLAに存在するとみなされる。すなわち、確率P2のシーンS2と確率P3のシーンS3とが合成される。結果として、時刻t+δtにおけるシーン(t+δt)は、シーンS4であると推定される。
【0050】
尚、上記の例では、時刻tにおけるシーンS(t)がシーンS3の場合が説明されたが、他の場合も同様である。
【0051】
1-5.対象シーンに応じた運転支援制御
上述の通り、運転支援システム100は、シーン認識処理を行うことによって、対象シーンSTを認識する。複数のシーン記述情報D1~D7のうち対象シーンSTを定義する1つは、以下「選択シーン記述情報DS」と呼ばれる。また、複数の制御モードM1~M7のうち対象シーンSTに対応付けられた1つは、以下「選択制御モードMS」と呼ばれる。対象シーンST、選択シーン記述情報DS、及び選択制御モードMSは、互いに対応付けられている。
【0052】
運転支援システム100は、選択シーン記述情報DSに基づいて、運転支援制御を行う。より詳細には、選択シーン記述情報DSは、選択制御モードMSの運転支援制御において用いられるパラメータを示している。運転支援システム100は、選択シーン記述情報DSで示されるパラメータに基づいて、選択制御モードMSの運転支援制御を行う。
【0053】
1-6.モード切替処理
更に、運転支援システム100は、シーン認識処理を繰り返し行うことによって、対象シーンSTの変化を検知する。対象シーンSTが変化した場合、それに応じて、選択制御モードMSを切り替える必要がある。運転支援システム100は、対象シーンSTの変化に応じて選択シーン記述情報DSを切り替えることによって、選択制御モードMSを切り替えることができる。
【0054】
しかしながら、運転支援システム100によって認識される対象シーンSTの変化は、車両10の乗員(例:ドライバ)からは分からない。従って、運転支援システム100によって選択制御モードMSが無断で突然切り替えられると、車両10の乗員は、その切り替えに対して違和感を覚える可能性がある。そのような違和感を軽減するために、本実施の形態に係る運転支援システム100は、以下に説明されるような「モード切替処理」を行う。
【0055】
1-6-1.通知を行う場合
変化前の対象シーンSTを「第1シーン」と呼び、変化後の対象シーンSTを「第2シーン」と呼ぶ。対象シーンSTが第1シーンから第2シーンに変化する場合、運転支援システム100は、選択シーン記述情報DS及び選択制御モードMSの切り替えを実行する前に、車両10の乗員に当該切り替えを通知する。つまり、運転支援システム100は、選択制御モードMSの切り替えを無断では実行せず、車両10の乗員に事前に通知する。従って、その後に選択制御モードMSの切り替えが実行されたとしても、車両10の乗員が覚える違和感は軽減される。
【0056】
図13は、本実施の形態に係るモード切替処理の一例を説明するための概念図である。変化前の対象シーンST(第1シーン)は、シーンS2である。つまり、走行レーンL0に移動体11が存在しており、隣接レーンLAには移動体が存在していない。運転支援システム100は、シーン記述情報D2に基づいて、制御モードM2の運転支援制御を行う。
【0057】
その後、コンフィグレーション空間CONに含まれる移動体の数が増加する。具体的には、隣接レーンLAの移動体12が増加する。つまり、対象シーンSTが、シーンS2からシーンS4に変化する。この場合、選択シーン記述情報DSをシーン記述情報D2からシーン記述情報D4に切り替え、選択制御モードMSを制御モードM2から制御モードM4に切り替える必要がある。本実施の形態に係る運転支援システム100は、当該切り替えを実行する前に、車両10の乗員に対して当該切り替えを通知する。従って、その後に選択制御モードMSの切り替えが実行されたとしても、車両10の乗員が覚える違和感は軽減される。
【0058】
特に、図13で示される例の場合、運転支援制御において考慮すべき移動体の数が増加する。言い換えれば、選択シーン記述情報DSの切り替えにより、運転支援制御において用いられるパラメータの数及び種類が増加する。従って、選択シーン記述情報DS(選択制御モードMS)の切り替え時に、制御不連続が発生し、車両10の挙動が不連続的に変化する可能性が高い。本実施の形態によれば、車両10の乗員に対して切り替えが事前に通知されるため、車両10の挙動が不連続的に変化したとしても、乗員が覚える違和感は軽減される。
【0059】
図14は、本実施の形態に係るモード切替処理の他の例を説明するための概念図である。変化前の対象シーンST(第1シーン)は、シーンS3である。つまり、隣接レーンLAに移動体12が存在している。運転支援システム100は、シーン記述情報D3に基づいて、制御モードM3の運転支援制御を行う。
【0060】
その後、コンフィグレーション空間CONに含まれる移動体の種類が変化する。具体的には、隣接レーンLAの移動体12がコンフィグレーション空間CONの外に移動し、同時に、走行レーンL0と交差する交差レーンLBの移動体13がコンフィグレーション空間CONに進入してくる。つまり、対象シーンSTが、シーンS3からシーンS5に変化する。この場合、選択シーン記述情報DSをシーン記述情報D3からシーン記述情報D5に切り替え、選択制御モードMSを制御モードM3から制御モードM5に切り替える必要がある。本実施の形態に係る運転支援システム100は、当該切り替えを実行する前に、車両10の乗員に対して当該切り替えを通知する。従って、その後に選択制御モードMSの切り替えが実行されたとしても、車両10の乗員が覚える違和感は軽減される。
【0061】
特に、図14で示される例の場合、運転支援制御において考慮すべき移動体の種類が変化する。言い換えれば、選択シーン記述情報DSの切り替えにより、運転支援制御において用いられるパラメータの種類が変化する。従って、選択シーン記述情報DS(選択制御モードMS)の切り替え時に、制御不連続が発生し、車両10の挙動が不連続的に変化する可能性が高い。本実施の形態によれば、車両10の乗員に対して切り替えが事前に通知されるため、車両10の挙動が不連続的に変化したとしても、乗員が覚える違和感は軽減される。
【0062】
図13及び図14で示された例を一般化すると、次の通りである。変化後の第2シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されるパラメータの少なくとも一部は、変化前の第1シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されていない。言い換えれば、変化後の第2シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されるパラメータの少なくとも一部は、変化前の第1シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されるパラメータと異なっている。この場合、選択シーン記述情報DS(選択制御モードMS)の切り替え時に、制御不連続が発生し、車両10の挙動が不連続的に変化する可能性が高い。従って、車両10の乗員に当該切り替えを事前に通知することが特に好適である。
【0063】
運転支援システム100は、車両10の乗員に切り替えを通知する際、当該切り替えの“承認”を要求してもよい。乗員が当該切り替えを承認した場合、運転支援システム100は、当該切り替えを実行する。一方、乗員が当該切り替えを拒否した場合、運転支援システム100は、車両10のドライバに対して手動運転を行うよう要求する。これにより、車両10の乗員の意思をモード切替処理に反映することが可能となる。これは、利便性の観点から好適である。
【0064】
1-6-2.通知を行わない場合
車両10の乗員に対する通知が常に行われるとは限らない。場合によっては、運転支援システム100は、車両10の乗員に事前に通知することなく、選択シーン記述情報DS及び選択制御モードMSの切り替えを実行してもよい。これにより、過剰な通知が抑制される。
【0065】
例えば、図15に示される場合を考える。変化前の対象シーンSTは、シーンS4である。つまり、走行レーンL0に移動体11が存在し、また、隣接レーンLAに移動体12が存在している。運転支援システム100は、シーン記述情報D4に基づいて、制御モードM4の運転支援制御を行う。
【0066】
その後、コンフィグレーション空間CONに含まれる移動体の数及び種類が減少する。具体的には、隣接レーンLAの移動体12がコンフィグレーション空間CONの外に移動する。つまり、対象シーンSTが、シーンS4からシーンS2に変化する。この場合、選択シーン記述情報DSをシーン記述情報D4からシーン記述情報D2に切り替え、選択制御モードMSを制御モードM4から制御モードM2に切り替える必要がある。
【0067】
図15に示される例の場合、選択シーン記述情報DSの切り替えにより、運転支援制御において用いられるパラメータの数及び種類が減少する。この場合、選択シーン記述情報DS(選択制御モードMS)の切り替え時に、制御不連続は発生せず、車両10の挙動が不連続的に変化することもない。このような場合、違和感は生じないため、車両10の乗員に切り替えを事前に通知する必要は必ずしもない。
【0068】
一般化すると、次の通りである。上述の通知を行う場合(セクション1-6-1)と区別するため、変化前の対象シーンSTを「第3シーン」と呼び、変化後の対象シーンSTを「第4シーン」と呼ぶ。対象シーンSTが第3シーンから第4シーンに変化する場合、運転支援システム100は、車両10の乗員に事前に通知することなく、選択シーン記述情報DS及び選択制御モードMSの切り替えを実行する。過剰な通知が抑制されるため、運転支援システム100の処理負荷が軽減される。また、通知が省略されるため、選択制御モードMSの切り替えが素早く実現される。更に、過剰な通知に対する煩わしさが抑制される。
【0069】
特に、第4シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されるパラメータの全てが、第3シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されるパラメータに包含されている場合、制御不連続は発生せず、車両10の挙動が不連続的に変化することもない。この場合、選択シーン記述情報DS及び選択制御モードMSの切り替えに対して車両10の乗員は違和感を感じない。従って、車両10の乗員に事前に通知することなく、当該切り替えを実行することが好適である。不必要な通知が抑制されるため、運転支援システム100の処理負荷が軽減される。また、通知が省略されるため、選択制御モードMSの切り替えが素早く実現される。更に、不必要な通知に対する煩わしさが抑制される。
【0070】
以下、本実施の形態に係る運転支援システム100について更に詳しく説明する。
【0071】
2.運転支援システムの構成例
図16は、本実施の形態に係る運転支援システム100の構成例を概略的に示すブロック図である。運転支援システム100は、制御装置110、情報取得装置120、走行装置130、及びHMI(Human-Machine Interface)ユニット140を備えている。
【0072】
情報取得装置120は、運転環境情報200を取得する。運転環境情報200は、車両10の運転環境を示す情報であり、運転支援制御に必要である。
【0073】
図17は、情報取得装置120及び運転環境情報200の例を示すブロック図である。情報取得装置120は、地図情報取得装置121、位置情報取得装置122、車両状態センサ123、周辺状況センサ124、及び通信装置125を備えている。運転環境情報200は、地図情報210、位置情報220、車両状態情報230、周辺状況情報240、及び配信情報250を含んでいる。
【0074】
地図情報取得装置121は、地図情報210を取得する。地図情報210は、少なくともレーン配置を示す。地図情報210を参照することによって、レーン数、レーン合流、レーン分岐、レーン交差、等を把握することができる。地図情報取得装置121は、地図データベースから、必要なエリアの地図情報210を取得する。地図データベースは、車両10に搭載されている所定の記憶装置に格納されていてもよいし、車両10の外部の管理サーバに格納されていてもよい。後者の場合、地図情報取得装置121は、管理サーバと通信を行い、必要な地図情報210を取得する。
【0075】
位置情報取得装置122は、車両10の位置及び姿勢を示す位置情報220を取得する。例えば、位置情報取得装置122は、車両10の位置及び向き(方位)を計測するGPS(Global Positioning System)装置を含んでいる。位置情報取得装置122は、更に、車両10の姿勢を検出する姿勢センサを含んでいてもよい。
【0076】
車両状態センサ123は、車両10の状態を示す車両状態情報230を取得する。例えば、車両状態センサ123は、車速センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサ、及び舵角センサ、等を含んでいる。車速センサは、車速(車両10の速度)を検出する。ヨーレートセンサは、車両10のヨーレートを検出する。加速度センサは、車両10の加速度(横加速度、前後加速度、上下加速度)を検出する。舵角センサは、車両10の操舵角を検出する。
【0077】
周辺状況センサ124は、車両10の周囲の状況を認識(検出)する。例えば、周辺状況センサ124は、カメラ、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)、及びレーダの少なくとも1つを含んでいる。周辺状況情報240は、周辺状況センサ124による認識結果を示す。例えば、周辺状況情報240は、周辺状況センサ124によって認識された物標に関する物標情報を含む。物標としては、周辺車両、白線、障害物、路側物、等が例示される。物標情報は、車両10に対する物標の相対位置及び相対速度の情報を含んでいる。
【0078】
通信装置125は、車両10の外部と通信を行う。例えば、通信装置125は、車両10の外部の外部装置と、通信ネットワークを介して通信を行う。通信装置125は、周囲のインフラとの間でV2I通信(路車間通信)を行ってもよい。通信装置125は、周辺車両との間でV2V通信(車車間通信)を行ってもよい。配信情報250は、通信装置125を通して得られる情報である。例えば、配信情報250は、V2V通信を通して得られる周辺車両の情報(位置、向き、速度等)を含んでいる。
【0079】
走行装置130は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車両10の車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0080】
HMIユニット140は、車両10の乗員(例:ドライバ)に情報を提供し、また、乗員から情報を受け付けるためのインタフェースである。具体的には、HMIユニット140は、入力装置と出力装置を有している。入力装置としては、タッチパネル、スイッチ、マイク、等が例示される。出力装置としては、表示装置、スピーカ、等が例示される。
【0081】
制御装置(コントローラ)110は、プロセッサ111及び記憶装置112を備えている。例えば、制御装置110は、マイクロコンピュータである。記憶装置112には、各種情報が格納される。例えば、記憶装置112には、複数のシーンS1~Snのそれぞれを定義するシーン記述情報D1~Dnが格納される(nは2以上の整数)。また、記憶装置112には、情報取得装置120によって取得された運転環境情報200が格納される。
【0082】
プロセッサ111は、コンピュータプログラムを実行することにより各種処理を行う。コンピュータプログラムは、記憶装置112に格納されている、あるいは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。
【0083】
例えば、プロセッサ111は、情報取得装置120から運転環境情報200を取得し、その運転環境情報200を記憶装置112に格納する。
【0084】
また、プロセッサ111は、車両10の走行を制御する車両走行制御を行う。具体的には、プロセッサ111は、走行装置130の動作を制御することによって車両走行制御を行う。車両走行制御は、操舵制御、加速制御、及び減速制御を含んでいる。操舵制御は、操舵装置を通して行われる。加速制御は、駆動装置を通して行われる。減速制御は、制動装置を通して行われる。
【0085】
プロセッサ111は、車両走行制御を適宜行うことによって運転支援制御を行う。具体的には、プロセッサ111は、運転環境情報200に基づいて、運転支援制御に必要な走行プランを生成する。例えば、走行プランは、目標位置及び目標速度を含む目標軌道を含む。プロセッサ111は、運転環境情報200に基づいて、目標軌道を生成する。そして、プロセッサ111は、車両10が走行プランに従って走行するように車両走行制御を行う。
【0086】
以下、シーンに応じた運転支援制御の処理フローについて説明する。
【0087】
3.処理フロー
図18は、本実施の形態に係る運転支援システム100による処理を示すフローチャートである。
【0088】
ステップS100において、情報取得装置120は、運転環境情報200を取得する(図17参照)。制御装置110(プロセッサ111)は、情報取得装置120から運転環境情報200を受け取り、運転環境情報200を記憶装置112に格納する。
【0089】
ステップS200において、プロセッサ111は、シーン認識処理を行う(セクション1-4参照)。記憶装置112には、シーン記述情報D1~Dnと運転環境情報200が格納されている。プロセッサ111は、シーン記述情報D1~Dnと運転環境情報200に基づいて、運転環境情報200で示される運転環境に対応するシーンを「対象シーンST」として認識する。
【0090】
より詳細には、レーン配置は、地図情報210から得られる。車両10の位置及び向きは、位置情報220から得られる。車両10の速度は、車両状態情報230から得られる。車両10の周囲の移動体iに関する情報(位置、向き、速度)は、周辺状況情報240あるいは配信情報250から得られる。つまり、運転環境情報200に基づいて車両パラメータ及び移動パラメータを認識することができる。従って、運転環境情報200で示される運転環境がいずれのシーン記述情報で定義されるシーンに対応するかを判定することができる。
【0091】
ステップS300において、プロセッサ111は、対象シーンSTの変化が発生したか否かを判定する。対象シーンSTの変化が発生した場合(ステップS300;Yes)、処理はステップS400に進む。一方、対象シーンSTが変化していない場合(ステップS300;No)、処理は、ステップS400をスキップして、ステップS500に進む。
【0092】
ステップS400において、プロセッサ111は、モード切替処理を実行する。モード切替処理の様々な例については後述される。
【0093】
続くステップS500において、プロセッサ111は、選択シーン記述情報DSに基づいて、運転支援制御を行う。より詳細には、選択シーン記述情報DSは、選択制御モードMSの運転支援制御において用いられるパラメータを示している。プロセッサ111は、選択シーン記述情報DSで示されるパラメータに基づいて、選択制御モードMSの運転支援制御を行う。
【0094】
以下、モード切替処理(ステップS400)の様々な例について説明する。
【0095】
3-1.第1の例
図19は、モード切替処理の第1の例を示すフローチャートである。ステップS420において、プロセッサ111は、HMIユニット140(出力装置)を通して、選択制御モードMSの切り替えを車両10の乗員に通知する。例えば、通知は、表示による通知及び音声による通知の少なくとも一方を含む。
【0096】
ステップS420の後のステップS450において、プロセッサ111は、選択制御モードMSの切り替えを実行する。具体的には、プロセッサ111は、対象シーンSTの変化に応じて選択シーン記述情報DSを切り替えることによって、選択制御モードMSを切り替える。
【0097】
第1の例によれば、選択制御モードMSの切り替えは、無断では実行されず、車両10の乗員に事前に通知される。従って、当該切り替えに対して乗員が覚える違和感が軽減される。
【0098】
3-2.第2の例
図20は、モード切替処理の第2の例を示すフローチャートである。第1の例と重複する説明は適宜省略する。
【0099】
ステップS420の前のステップS410において、プロセッサ111は、「通知条件」が成立するか否かを判定する。通知条件は、ステップS420を実行するための条件である。具体的には、通知条件は、「変化後の第2シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されるパラメータの少なくとも一部が、変化前の第1シーンに関する選択シーン記述情報DSで示されていないこと」である(セクション1-6-1、図13図14を参照)。
【0100】
通知条件が成立する場合(ステップS410;Yes)、処理はステップS420に進み、車両10の乗員に対して事前に通知が行われる。通知条件が成立する場合、モード切り替え(ステップS450)において、制御不連続が発生し、車両10の挙動が不連続的に変化する可能性が高い。しかしながら、車両10の乗員に対して切り替えが事前に通知されるため、車両10の挙動が不連続的に変化したとしても、乗員が覚える違和感は軽減される。
【0101】
一方、通知条件が成立しない場合(ステップS410;No)、処理は、ステップS420をスキップして、ステップS450に進む。すなわち、車両10の乗員に対して事前に通知することなく、モード切り替え(ステップS450)が実行される。通知条件が成立しない場合は、制御不連続は発生せず、車両10の挙動が不連続的に変化することもない(セクション1-6-2、図15を参照)。不必要な通知が抑制されるため、運転支援システム100の処理負荷が軽減される。また、通知が省略されるため、選択制御モードMSの切り替えが素早く実現される。更に、不必要な通知に対する煩わしさが抑制される。
【0102】
3-3.第3の例
図21は、モード切替処理の第3の例を示すフローチャートである。第1の例と重複する説明は適宜省略する。
【0103】
ステップS420において、プロセッサ111は、HMIユニット140(出力装置)を通して、選択制御モードMSの切り替えを車両10の乗員に通知する。このステップS420は、乗員に切り替えの“承認”を要求するステップS425を含んでいる。
【0104】
乗員(例:ドライバ)は、HMIユニット140(入力装置)を用いて、切り替えを承認あるいは拒否する。乗員が切り替えを承認した場合(ステップS430;Yes)、処理はステップS450に進む。これにより、第1の例の場合と同じ効果が得られる。
【0105】
一方、乗員が切り替えを拒否した場合(ステップS430;No)、処理はステップS460に進む。ステップS460において、プロセッサ111は、HMIユニット140(出力装置)を通して、車両10のドライバに対して手動運転を行うよう要求する。同時に、プロセッサ111は、警報を発してもよい。
【0106】
手動運転の要求に応答して、車両10のドライバは、手動運転を行う(ステップS600)。手動運転の実行中、プロセッサ111は、選択シーン記述情報DSをあらかじめ切り替えてもよい。更に、プロセッサ111は、HMIユニット140(出力装置)を通して、「選択制御モードMSの運転支援制御の再開が可能であること」をドライバに通知してもよい。ドライバは、HMIユニット140(入力装置)を用いて、運転支援制御の再開を運転支援システム100に指示する。このようにして、効率的に運転支援制御を再開することが可能となる。
【0107】
以上に説明されたように、第3の例によれば、車両10の乗員に対して、選択制御モードMSの切り替えの承認が要求される。乗員が切り替えを承認した場合、当該切り替えが実行される。一方、乗員が切り替えを拒否した場合、当該切り替えは自動的には実行されず、その代わりに、手動運転が要求される。このように、車両10の乗員の意思をモード切替処理に反映することが可能となる。これは、利便性の観点から好適である。
【0108】
3-4.第4の例
図22は、モード切替処理の第4の例を示すフローチャートである。第4の例は、第2の例と第3の例の組み合わせである。第2、第3の例と重複する説明は適宜省略する。
【0109】
ステップS410において、プロセッサ111は、通知条件が成立するか否かを判定する。通知条件が成立する場合(ステップS410;Yes)、処理はステップS420に進む。一方、通知条件が成立しない場合(ステップS410;No)、処理はステップS450に進む。
【0110】
ステップS420において、プロセッサ111は、選択制御モードMSの切り替えを車両10の乗員に通知する。このとき、プロセッサ111は、乗員に切り替えの承認を要求する(ステップS425)。
【0111】
乗員が切り替えを承認した場合(ステップS430;Yes)、処理はステップS450に進む。ステップS450において、プロセッサ111は、選択制御モードMSの切り替えを実行する。
【0112】
一方、乗員が切り替えを拒否した場合(ステップS430;No)、処理はステップS460に進む。ステップS460において、プロセッサ111は、車両10のドライバに対して手動運転を行うよう要求する。
【0113】
第4の例によれば、第2の例による効果と第3の例による効果の両方が得られる。
【0114】
3-5.第5の例
変化後の対象シーンSTが著しく危険な場合、プロセッサ111は、車両10の乗員に対して通知を行うだけでなく、緊急回避モードを強制的に起動させてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 車両
11 移動体
12 移動体
13 移動体
14 移動体
15 移動体
100 運転支援システム
110 制御装置
111 プロセッサ
112 記憶装置
120 情報取得装置
121 地図情報取得装置
122 位置情報取得装置
123 車両状態センサ
124 周辺状況センサ
125 通信装置
130 走行装置
140 HMIユニット
200 運転環境情報
210 地図情報
220 位置情報
230 車両状態情報
240 周辺状況情報
250 配信情報
D1~D7 シーン記述情報
DS 選択シーン記述情報
M1~M7 制御モード
MS 選択制御モード
S1~S7 シーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22