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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20221220BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221220BHJP
   H01Q 1/44 20060101ALI20221220BHJP
   H04B 1/3827 20150101ALI20221220BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H05K9/00 C
H01Q1/44
H04B1/3827 110
H04M1/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019102106
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020198484
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤井 利一
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0322695(US,A1)
【文献】特開平06-053729(JP,A)
【文献】特開2003-060415(JP,A)
【文献】特開2015-164270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
H04B 1/38- 1/58
H04M 1/02- 1/23
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の通過を妨げるシールドケースと、
前記シールドケースの外側において所定の平面に沿って円環状に配線されている導体であって、前記シールドケースに内包される無線通信回路に接続する給電ループと、
前記給電ループが形成する円環を通過する軸である特定の軸の周りに回転可能に設定された操作つまみと、
前記操作つまみに固定された開ループ状の導体であるアンテナエレメントと、を備え
前記アンテナエレメントは、前記開ループ状の導体の開放端同士を接続するキャパシタをさらに有する、
電子機器。
【請求項2】
前記アンテナエレメントは、前記シールドケースの外側に配置され
前記給電ループは、前記アンテナエレメントと前記シールドケースの間に配置されている
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記操作つまみに嵌合するエンコーダをさらに備え、
前記エンコーダと前記給電ループが成す前記平面とは離間して配置される、
請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記シールドケースの外側で前記給電ループを支持するスペーサをさらに備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電波の送信機能または受信機能を有する電子機器においては、その機能を発揮するために充分な大きさのアンテナを確保したいという要求が存在する。一方、持ち運び可能な電子機器においては、かかるアンテナをできるだけ小さくして良好な取り扱い性を実現したいという要求も存在する。一見すると相反しているように見えるこれらの要求をいずれも満足させるために種々の提案が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された携帯用小型無線機は、無線機ケース背面に方形状凹部を設け、受信専用平面アンテナの一辺を凹部の一方の内側面に回転自在に取り付け、無線機を縦にして通話するときは凹部に収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-125290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
筐体の電磁的なシールド性を必要とする電子機器においては、内部の通信回路を電磁波シールドによって覆うため、内蔵アンテナを設けることができない。しかしながら、特許文献1に記載された技術を採用すると、結果的に無線機ケース背面が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、無線電波の送信機能または受信機能を有する電子機器において、本体を大きくすることなくアンテナ機能を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる電子機器は、シールドケース、給電ループ、操作つまみおよびアンテナエレメントを有する。シールドケースは、電磁波の通過を妨げる。給電ループは、シールドケースの外側において所定の平面に沿って円環状に配線されている導体であって、シールドケースに内包される無線通信回路に接続する。操作つまみは、給電ループが形成する円環を通過する軸である特定の軸の周りに回転可能に設定される。アンテナエレメントは、操作つまみに固定された開ループ状の導体である。
【0008】
このような構成により、電子機器は、操作部として突出して設けられている操作つまみをアンテナとして利用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、無線電波の送信機能または受信機能を有する電子機器において、本体を大きくすることなくアンテナ機能を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態にかかる電子機器の概観図である。
図2】実施の形態にかかる電子機器の操作つまみ部分の断面図である。
図3】実施の形態にかかる電子機器のアンテナ部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は実施の形態にかかる電子機器の概観図である。本実施の形態にかかる電子機器10は、電波の送信または受信を行うトランシーバである。なお、電子機器10は、トランシーバとしたが、これに限定されず携帯電話、スマートフォンなど電波の送信または受信を行う機器であればよい。
【0013】
なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、図1は、右手系の直交座標系が付されている。また、図2以降において、直交座標系が付されている場合、図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
【0014】
電子機器10は、略直方体形状をしたケースに円筒状の操作つまみ11が突出した形状をしており、携帯容易な大きさに形成されている。電子機器10は、外観から観察できる主な構成として、操作つまみ11、送信ボタン12、チャネル選択ボタン13、表示パネル14、スピーカ部15、マイク部16およびケース17を有している。Y軸マイナス側であって、XZ面に平行な面が電子機器10の正面であり、Y軸プラス側であって、XZ面に平行な面が電子機器10の背面である。またZ軸プラス側であって、XY面に平行な面が電子機器10の上面であり、Z軸マイナス側であって、XY面に平行な面が電子機器10の底面である。X軸プラス側であって、YZ面に平行な面が電子機器10の右側面であり、X軸マイナス側であって、YZ面に平行な面が電子機器10の左側面である。
【0015】
操作つまみ11は、電子機器10の電源のオンオフを行うための電源スイッチおよびスピーカから出力される音声の音量を調整するための操作部である。操作つまみ11は、略直方体に形成されているケース17の上面から突出するように立設されている円筒状の突起であり、ケース17の上面に回転可能に係止されている。操作つまみ11は樹脂などの誘電体を成形することにより形成されており、ユーザが操作つまみ11を回転させることにより電源のオンオフ、スピーカから出力される音声の音量調整などの操作を行う。
【0016】
送信ボタン12は、トランシーバである電子機器10の音声を送信する場合に押圧されるボタンである。ユーザは通話相手に音声を送信する場合に、送信ボタン12を押しながらマイク部16に向かって発話する。
【0017】
チャネル選択ボタン13は、所定の操作をすることにより通話する際の送受信の周波数を選択するためのボタンである。表示パネル14は、選択されているチャネル番号、電子機器10の動作状態および電池残量など、ユーザに対して種々の情報を通知するためのディスプレイである。スピーカ部15は、ケース17に設けられた孔であって、孔を通じて内部に配置されたスピーカが発する音声を出力する。マイク部16は、ケース17に設けられた孔であって、ユーザの発話音声を内部に配置されたマイクが取得するように構成されている。
【0018】
ケース17は、略直方体に形成されている樹脂製の筐体である。ケース17の上面には操作つまみ11が設けられており、正面には表示パネル14、チャネル選択ボタン13、スピーカ部15およびマイク部16がそれぞれ配置されており、側面には送信ボタン12が設けられている。
【0019】
次に、図2および図3を参照しながら操作つまみ11および操作つまみ11内部に設けられている構成について説明する。図3は実施の形態にかかる電子機器のアンテナ部分の分解斜視図である。
【0020】
図2は実施の形態にかかる電子機器の操作つまみ部分の断面図である。図2は操作つまみ11をYZ面に沿って切り取った状態を示す断面図である。図に示すように、電子機器10は、ケース17の内部に基板18、エンコーダ19、給電ループ20、スペーサ21、アンテナエレメント22などを有している。
【0021】
ケース17は、樹脂ケース171およびシールドケース172により構成されている。樹脂ケース171は、成形された樹脂により形成された筐体である。シールドケース172は、樹脂ケース171の内側に構成されている金属製のケースである。
【0022】
シールドケース172は、電子機器10の外界に存在する電磁波が電子機器10の内部に侵入することを抑制するための電磁波シールドである。シールドケース172は、所定の電波の透過を抑制するための金属板をプレス加工することにより形成されるか、または金型にアルミニウムを流し込むことにより形成される。本実施の形態において、シールドケース172は、略直方体(6面体)に形成されており、無線通信回路等の各構成を内包するように構成されている。また、シールドケース172は、図2に示す通り、凹部が形成されている。シールドケース172に形成された凹部の底部には、エンコーダ19が固定されている。またこの凹部には、スペーサ21が嵌合している。
【0023】
基板18は、電子機器10が種々の機能を発揮するための回路が設けられている。例えば、基板18は、信号の送信および受信を行うための無線通信回路を有している。基板18の無線通信回路は、同軸ケーブル201に接続されている。また基板18はエンコーダ19が設置されている。
【0024】
エンコーダ19は、例えば可変抵抗器を内蔵することにより音量調整などを操作可能に構成されている。エンコーダ19は基板18に固定され、基板18の回路に接続している。またエンコーダ19はネジ部191および回転軸192を有している。
【0025】
ネジ部191は基板18に実装されたエンコーダ19の本体部から上方に延伸し、シールドケース172に設けられた孔に挿通するとともに、ボルト23により螺合されている。ネジ部191がボルト23に螺合されることにより、エンコーダ19はシールドケース172に固定される。
【0026】
回転軸192は、ネジ部191と同軸上に回転可能に配置された軸であって、ネジ部191の上部から上方に延伸している。回転軸192は、操作つまみ11に設けられた凹部110に嵌合している。これにより操作つまみ11と回転軸192とは図に示した軸A1を中心に一体となって回転する。
【0027】
給電ループ20は、円環状に配線されている導線であって、同軸ケーブル201を介して基板18の無線通信回路に接続している。図3に示すように、給電ループ20は平面P1に沿って円環状に配線されており、その円環の中心は軸A1(特定の軸)に一致している。給電ループ20の一方の端面は同軸ケーブル201の内導体と接続され、他方の端面は同軸ケーブル201の外導体と接続されている。給電ループ20は同軸ケーブル201から所定の周波数の電流を受け取り、受け取った電流を円環状に配線されている導線に流している。なお、給電ループ20の円環の中心は軸A1に一致しているとしたが、必ずしも一致している必要はない。
【0028】
給電ループ20はスペーサ21の上面に設けられている溝部に嵌合している。同軸ケーブル201は、給電ループ20に接続する部分から、スペーサ21に設けられている溝部に沿って下方に延び、シールドケース172に設けられている孔部173を通り、基板18に接続される。なお、軸A1は平面P1に直交している。平面P1は、電子機器10の上面に平行に設定されている。
【0029】
スペーサ21は、シールドケース172に設けられた凹部に配置され、シールドケース172の外側で給電ループ20を支持する。スペーサ21は樹脂により形成されている。スペーサ21の上面に給電ループ20が支持されていることにより、電子機器10は、シールドケース172の外側において所望の位置で給電ループ20を固定することができる。またスペーサ21を軟質の樹脂により形成することにより、電子機器10は、シールドケース172の内部に水や埃などが侵入することを抑制することもできる。
【0030】
スペーサ21の上面は平面P1に一致している。平面P1は、シールドケース172の上面よりも上方に設定されている。換言すると、平面P1は、シールドケース172の外側に配置されている。平面P1をこのように設定することにより、給電ループ20がシールドケース172から受ける影響を抑制することができる。
【0031】
また、平面P1は、回転軸192の上端よりも上方に設定されている。回転軸192は、アルミニウムなどの金属で形成されている。そのため、このように平面P1を回転軸192から離間させることにより、給電ループ20が回転軸192から受ける影響を抑制することができる。
【0032】
アンテナエレメント22は、開ループ状に形成された銅や金などの導体である。図3に示すように、アンテナエレメント22は、下方が底面となる円錐の斜面に沿って螺旋状に形成された線材である。アンテナエレメント22は、下側に一方の開放端である第1端部221を有し、上側に他方の開放端である第2端部222を有している。第1端部221と第2端部222とは導電体により接続されておらず、開ループの状態となっている。このような構成により、アンテナエレメント22は、給電ループ20から所定の周波数の磁場を受け取る。これによりアンテナエレメント22は、電子機器10のアンテナとして機能することができる。
【0033】
なお、アンテナエレメント22は開ループを形成するものであれば、その形状は螺旋状に限られない。アンテナエレメント22の形状や材質などは、電子機器10が利用する電波の周波数、出力その他の特性により決定される。また、第1端部221と第2端部222とは誘電体ないしキャパシタを介して接続されていてもよい。
【0034】
図2に示すように、操作つまみ11は、軸A1の周りに回転可能に設定されている。軸A1は、給電ループ20が形成する円環の中心を通過して平面P1に直交する。そして、アンテナエレメント22は、操作つまみ11の内側に固定されている。そのため、操作つまみ11を回転させても給電ループ20とアンテナエレメント22との相対的な位置関係は、変化しない。よって、電子機器10のアンテナの特性は、操作つまみ11を操作しても変化しない。なお、アンテナエレメント22は操作つまみに接着ないし圧入されていてもよいし、操作つまみ11を射出成形する場合に、インサート成形により固定されてもよい。
【0035】
以上、実施の形態について説明した。実施の形態にかかる電子機器10は、操作つまみ11内にアンテナエレメント22が配置されている。そのため、電子機器10のケースから突出するホイップアンテナが不要となる。またこのような構成により、電子機器10から突出する部分を減らすことができる。また、操作つまみ11に固定されたアンテナエレメント22は、給電ループ20とは接触していない。また、操作つまみ11を回転させてもアンテナエレメント22が摩耗したり変形したりすることがない。よって、電子機器10は、シンプルな構造で耐久性に優れた構造となっている。よって、実施の形態によれば、無線電波の送信機能または受信機能を有する電子機器において、本体を大きくすることなくアンテナ機能を有する電子機器を提供することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の電子機器は、トランシーバの他に、例えば、携帯型送信機、携帯型受信機、携帯型ラジオ、スマートフォンまたは携帯電話などの電波の送信または受信を行う装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 電子機器
11 操作つまみ
12 送信ボタン
13 チャネル選択ボタン
14 表示パネル
15 スピーカ部
16 マイク部
17 ケース
18 基板
19 エンコーダ
20 給電ループ
21 スペーサ
22 アンテナエレメント
23 ボルト
110 凹部
171 樹脂ケース
172 シールドケース
173 孔部
191 ネジ部
192 回転軸
201 同軸ケーブル
A1 軸
P1 平面
図1
図2
図3