(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0273 20160101AFI20221220BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/0276 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/0284 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221220BHJP
【FI】
H01M8/0273
H01M8/0247
H01M8/0276
H01M8/0284
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2019103135
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和則
(72)【発明者】
【氏名】岡田 祥夫
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186823(JP,A)
【文献】特開2014-053118(JP,A)
【文献】特開2000-182639(JP,A)
【文献】特開2006-310288(JP,A)
【文献】国際公開第2010/100906(WO,A1)
【文献】特開2016-072099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0273
H01M 8/0247
H01M 8/0276
H01M 8/0284
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を一対のガス拡散層により挟持した膜電極ガス拡散層接合体と、
前記膜電極ガス拡散層接合体の外周部に当接した枠状の絶縁部材と、
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材を挟持する第1及び第2セパレータと、を備え、
前記絶縁部材は、枠状の基材、及び前記第1セパレータに対向する前記基材の第1面に予め設けられており前記基材よりも弾性率が小さい第1弾性部、を含み、
前記第1セパレータは、第1方向に並設され第1反応ガスが流れる複数の第1溝部、前記複数の第1溝部よりも前記第1方向側に位置して前記第1反応ガスが流れる第1外側溝部、前記第1外側溝部に対して前記第1方向で隣接した第1ビード部、を含み、
前記第2セパレータは、前記第1ビード部との間で前記絶縁部材を挟持する第2ビード部を含み、
前記第1弾性部は、前記第1及び第2ビード部の間で前記第1ビード部により圧縮された第1圧縮領域、及び前記第1外側溝部内に位置した第1非圧縮領域を含
み、
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持された状態で、前記第1非圧縮領域は、前記第1圧縮領域よりも厚い、燃料電池。
【請求項2】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第1非圧縮領域及び第1圧縮領域は、厚さが同じである、
請求項1の燃料電池。
【請求項3】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第1非圧縮領域は、前記第1圧縮領域よりも厚い、
請求項1の燃料電池。
【請求項4】
前記第1弾性部は、前記基材の前記第1面の全面に形成されている、
請求項1乃至3の何れかの燃料電池。
【請求項5】
前記第1非圧縮領域は、前記基材よりも厚い、
請求項1乃至4の何れかの燃料電池。
【請求項6】
前記第1弾性部の材料は、ゴム及び熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含む、
請求項1乃至5の何れかの燃料電池。
【請求項7】
前記絶縁部材は、前記基材の前記第1面とは反対側の第2面に予め設けられており前記基材よりも弾性率が小さい第2弾性部、を含み、
前記第2セパレータは、前記第1方向に並設され第2反応ガスが流れる複数の第2溝部、及び前記複数の第2溝部よりも前記第1方向側に位置して且つ前記第2ビード部に対して前記第1方向と反対方向で隣接して前記第2反応ガスが流れる第2外側溝部、を含み、
前記第2弾性部は、前記第1及び第2ビード部との間で前記第2ビード部により圧縮された第2圧縮領域、及び前記第2溝部内に位置した第2非圧縮領域を含
み、
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持された状態で、前記第2非圧縮領域は、前記第2圧縮領域よりも厚い、請求項1乃至6の何れかの燃料電池。
【請求項8】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第2非圧縮領域及び第2圧縮領域は、厚さが同じである、
請求項7の燃料電池。
【請求項9】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第2非圧縮領域は、前記第2圧縮領域よりも厚い、
請求項7の燃料電池。
【請求項10】
前記第2非圧縮領域は、前記基材よりも厚い、
請求項7乃至9の何れかの燃料電池。
【請求項11】
前記第2弾性部は、前記基材の前記第2面の全面に形成されている、
請求項7乃至10の何れかの燃料電池。
【請求項12】
前記第2弾性部の材料は、ゴム及び熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含む、
請求項7乃至11の何れかの燃料電池。
【請求項13】
前記膜電極接合体は、電解質膜、前記電解質膜の前記第1セパレータ側の第1面に形成された第1触媒層、及び前記電解質膜の前記第1面とは反対側の第2面の当該膜電極接合体の縁領域を露出するように前記電解質膜の前記第2面に形成された第2触媒層、を含み、
前記一対のガス拡散層は、前記第1触媒層に接合された第1ガス拡散層、及び前記縁領域を露出するように前記第2触媒層に接合された第2ガス拡散層、を含み、
前記第1セパレータは、前記第1外側溝部に前記第1方向とは反対方向に隣接して前記第1ガス拡散層に当接した第1リブ部を含み、
前記第2セパレータは、前記第1リブ部との間で、前記絶縁部材、前記電解質膜の前記縁領域、前記第1触媒層、及び前記第1ガス拡散層を挟持する第2リブ部を含む、
請求項1乃至12の何れかの燃料電池。
【請求項14】
前記第1弾性部は、前記電解質膜の前記縁領域に当接するが、接着はされていない、
請求項13の燃料電池。
【請求項15】
前記第2リブ部の少なくとも一部は、前記第2ガス拡散層に当接し、前記第1リブ部との間で、前記膜電極接合体と前記一対のガス拡散層とを挟持する、
請求項13又は14の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、膜電極接合体を一対のガス拡散層により挟持した膜電極ガス拡散層接合体を有しており、反応ガスが膜電極接合体に到達することにより発電反応が生じる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、膜電極ガス拡散層接合体の周辺を通過し膜電極接合体にまでは到達しない反応ガスの流量が多いと、発電効率が低下する恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、発電効率が向上した燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、膜電極接合体を一対のガス拡散層により挟持した膜電極ガス拡散層接合体と、前記膜電極ガス拡散層接合体の外周部に当接した枠状の絶縁部材と、前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材を挟持する第1及び第2セパレータと、を備え、前記絶縁部材は、枠状の基材、及び前記第1セパレータに対向する前記基材の第1面に予め設けられており前記基材よりも弾性率が小さい第1弾性部、を含み、前記第1セパレータは、第1方向に並設され第1反応ガスが流れる複数の第1溝部、前記複数の第1溝部よりも前記第1方向側に位置して前記第1反応ガスが流れる第1外側溝部、前記第1外側溝部に対して前記第1方向で隣接した第1ビード部、を含み、前記第2セパレータは、前記第1ビード部との間で前記絶縁部材を挟持する第2ビード部を含み、前記第1弾性部は、前記第1及び第2ビード部の間で前記第1ビード部により圧縮された第1圧縮領域、及び前記第1外側溝部内に位置した第1非圧縮領域を含み、前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持された状態で、前記第1非圧縮領域は、前記第1圧縮領域よりも厚い、燃料電池によって達成できる。
【0007】
第1弾性部の第1非圧縮領域が第1外側溝部内に位置することにより、第1外側溝部により画定される流路の断面積を減少させることができる。これにより、第1流路部に供給される第1反応ガス全体の流量のうち、第1外側溝部内を流れる第1反応ガスの流量の割合は減少する。このため、第1外側溝部以外の溝部内を流れる第1反応ガスの流量の割合が確保され、膜電極接合体に到達して発電反応に供される第1反応ガスの流量が確保される。これにより、発電効率が向上している。
【0009】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第1非圧縮領域及び第1圧縮領域は、厚さが同じであってもよい。
【0010】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第1非圧縮領域は、前記第1圧縮領域よりも厚くてもよい。
【0011】
前記第1弾性部は、前記基材の前記第1面の全面に形成されていてもよい。
【0012】
前記第1非圧縮領域は、前記基材よりも厚くてもよい。
【0013】
前記第1弾性部の材料は、ゴム及び熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含んでもよい。
【0014】
前記絶縁部材は、前記基材の前記第1面とは反対側の第2面に予め設けられており前記基材よりも弾性率が小さい第2弾性部、を含み、前記第2セパレータは、前記第1方向に並設され第2反応ガスが流れる複数の第2溝部、及び前記複数の第2溝部よりも前記第1方向側に位置して且つ前記第2ビード部に対して前記第1方向と反対方向で隣接して前記第2反応ガスが流れる第2外側溝部、を含み、前記第2弾性部は、前記第1及び第2ビード部との間で前記第2ビード部により圧縮された第2圧縮領域、及び前記第2溝部内に位置した第2非圧縮領域を含み、前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持された状態で、前記第2非圧縮領域は、前記第2圧縮領域よりも厚くてもよい。
【0016】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第2非圧縮領域及び第2圧縮領域は、厚さが同じであってもよい。
【0017】
前記膜電極ガス拡散層接合体及び絶縁部材が前記第1及び第2セパレータに挟持される前の状態では、前記第2非圧縮領域は、前記第2圧縮領域よりも厚くてもよい。
【0018】
前記第2非圧縮領域は、前記基材よりも厚くてもよい。
【0019】
前記第2弾性部は、前記基材の前記第2面の全面に形成されていてもよい。
【0020】
前記第2弾性部の材料は、ゴム及び熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含んでもよい。
【0021】
前記膜電極接合体は、電解質膜、前記電解質膜の前記第1セパレータ側の第1面に形成された第1触媒層、及び前記電解質膜の前記第1面とは反対側の第2面の当該膜電極接合体の縁領域を露出するように前記電解質膜の前記第2面に形成された第2触媒層、を含み、前記一対のガス拡散層は、前記第1触媒層に接合された第1ガス拡散層、及び前記縁領域を露出するように前記第2触媒層に接合された第2ガス拡散層、を含み、前記第1セパレータは、前記第1外側溝部に前記第1方向とは反対方向に隣接して前記第1ガス拡散層に当接した第1リブ部を含み、前記第2セパレータは、前記第1リブ部との間で、前記絶縁部材、前記電解質膜の前記縁領域、前記第1触媒層、及び前記第1ガス拡散層を挟持する第2リブ部を含んでもよい。
【0022】
前記第1弾性部は、前記電解質膜の前記縁領域に当接するが、接着はされていなくてもよい。
【0023】
前記第2リブ部の少なくとも一部は、前記第2ガス拡散層に当接し、前記第1リブ部との間で、前記膜電極接合体と前記一対のガス拡散層とを挟持してもよい。
【発明の効果】
【0024】
発電効率が向上した燃料電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、燃料電池スタックの単セルの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、+Z方向側から見た場合のフレーム、MEGA、及びセパレータを示した透視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示したA-A線に対応する単セルの断面図である。
【
図5】
図5Aは、セパレータにより挟持される前のフレームの部分拡大断面図であり、
図5Bは、セパレータにより挟持される前の、第1変形例の単セルのフレームの部分拡大断面図である。
【
図6】
図6Aは、第2変形例の単セルのフレームの部分拡大断面図であり、
図6Bは、第3変形例の単セルのフレームの部分拡大断面図である。
【
図7】
図7Aは、第4変形例の単セルの部分断面図であり、
図7Bは、第5変形例の単セルの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[燃料電池スタックの概略構成]
図1は、燃料電池スタック1の単セル2の分解斜視図である。燃料電池スタック1は、単セル2が複数積層されることで構成される。
図1では、一つの単セル2のみを示し、その他の単セルについては省略してある。尚、
図1には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を示している。X方向及びY方向は、略矩形状に形成された単セル2の短手方向及び長手方向に相当する。Z方向は、複数の単セル2が積層される方向に相当する。
【0027】
燃料電池スタック1は、反応ガスとしてアノードガス(例えば水素)とカソードガス(例えば酸素)の供給を受けて発電する固体高分子型燃料電池である。単セル2は、膜電極ガス拡散層接合体10(以下、MEGA(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly)と称する)と、枠状のフレーム50と、アノードセパレータ20及びカソードセパレータ40(以下、セパレータと称する)とを含む。セパレータ20は、MEGA10及びフレーム50よりも-Z方向側に配置されてこれらと対向している。セパレータ40は、MEGA10及びフレーム50よりも+Z方向側に配置されてこれらと対向している。MEGA10は、アノードガス拡散層16a及びカソードガス拡散層16c(以下、拡散層と称する)を有している。フレーム50は、絶縁性を有しており、内周部がMEGA10の外周部に接合された枠状の絶縁部材の一例である。セパレータ20及び40は、第1及び第2セパレータの一例である。
【0028】
セパレータ20及び40、及びフレーム50には、孔a1~a6が貫通するように形成されている。セパレータ20及び40、及びフレーム50の2つの短辺の一方側には孔a1~a3が形成され、他方側には孔a4~a6が形成されている。孔a1は、カソード入口マニホールドを画定する。孔a2は、冷却水入口マニホールドを画定する。孔a3は、アノード出口マニホールドを画定する。孔a4は、アノード入口マニホールドを画定する。孔a5は、冷却水出口マニホールドを画定する。孔a6は、カソード出口マニホールドを画定する。
【0029】
MEGA10に対向するセパレータ20の面には、アノード入口マニホールドとアノード出口マニホールドとを連通してアノードガスが流れるアノード流路部20A(以下、流路部と称する)が形成されている。MEGA10に対向するセパレータ20の面とは反対側の面には、冷却水入口マニホールドと冷却水出口マニホールドとを連通して冷却水が流れる冷却水流路部20B(以下、流路部と称する)が形成されている。MEGA10に対向するセパレータ40の面には、カソード入口マニホールドとカソード出口マニホールドとを連通してカソードガスが流れるカソード流路部40A(以下、流路部と称する)が形成されている。MEGA10に対向するセパレータ40の面とは反対側の面には、冷却水入口マニホールドと冷却水出口マニホールドとを連通して冷却水が流れる冷却水流路部40B(以下、流路部と称する)が形成されている。流路部20A及び20Bは、セパレータ20の長手方向であるY方向に延びX方向に並設された複数の溝部により構成されている。流路部40A及び40Bも同様である。
【0030】
流路部20Aの複数の溝部は、MEGA10から退避するように凹んでいる。流路部40Aの複数の溝部も同様に、MEGA10から退避するように凹んでいる。流路部20B及び40Bは、それぞれ、流路部20A及び40Aと表裏一体に形成されている。セパレータ20及び40は、ガス遮断性及び導電性を有する材料によって形成され、プレス成形されたステンレス鋼や、チタンやチタン合金といった金属によって形成される薄板状部材である。
【0031】
セパレータ20及び40の外周には、それぞれ、ビード部24及び44が周回するように形成されている。ビード部24は、流路部20A及び20Bや孔a1~a6を包囲するように形成されている。同様に、ビード部44は、流路部40A及び40Bや孔a1~a6を包囲するように形成されている。ビード部24及び44は、詳しくは後述するがフレーム50を挟持することにより、アノードガスやカソードガスの漏れを防止する。ビード部24及び44は、第1及び第2ビード部の一例である。
【0032】
図2は、+Z方向側から見た場合のフレーム50、MEGA10、及びセパレータ20を示した透視図である。アノードガスは、孔a4から流路部20Aを-Y方向に流れて孔a3に排出される。上方から見ると、拡散層16a及び16cは何れも矩形状であるが、拡散層16aは拡散層16cよりもXY平面方向に大きく形成されている。
図2には、拡散層16cの縁18c及び19cと、拡散層16aの縁18a及び19aとを示している。縁18c及び19cは、Y方向に平行であってX方向に対向している。縁18a及び19aは、Y方向に平行であってX方向に対向している。拡散層16aの方が拡散層16cよりもXY平面方向に大きいため、縁18aは縁18cよりも外側に位置し、同様に縁19aは縁19cよりも外側に位置する。縁18a及び19aは、流路部20Aの複数の溝部が延びた方向に略平行である。縁18c及び19cは、流路部40Aの複数の溝部が延びた方向に略平行である。
【0033】
図2には、セパレータ20と、このセパレータ20に隣接したセパレータとを溶接する溶接ラインLを示している。溶接ラインLは、ビード部24とセパレータ20の外周縁との間で延びている。尚、
図2には示していないが、孔a1、a3、a4、及びa6を包囲するように溶接ラインが設定される。
【0034】
図3は、
図2に示したA-A線に対応する単セル2の断面図である。
図3には、単セル2よりも+Z方向側で単セル2に積層された他の単セルのアノード側のセパレータ20―aと、単セル2よりも-Z方向側で単セル2に積層された他の単セルのカソード側のセパレータ40-bとを示している。上述した溶接ラインLに沿って、セパレータ20とセパレータ40-bとは溶接されており、セパレータ40とセパレータ20-aとは溶接されている。尚、セパレータ20-aは、セパレータ20と同一の部材であり、セパレータ40―bは、セパレータ40と同一の部材であるが、説明の便宜上、異なる符号を付している。尚、
図3は、拡散層16a及び16cのそれぞれの縁18a及び18c側の構成を示しているが、縁19a及び19c側の構成も、YZ平面で縁18a及び18c側の構成と対称となるように設けられている。
【0035】
MEGA10は、拡散層16a及び16c、及び膜電極接合体(以下、MEA(Membrane Electrode Assembly)と称する)11を含む。MEA11は、電解質膜12、及びアノード触媒層14a及びカソード触媒層14c(以下、触媒層と称する)を含む。触媒層14aは、電解質膜12のセパレータ20側の面12aに形成されている。触媒層14cは、面12aの反対側の面である電解質膜12の面12cに形成されている。電解質膜12は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す固体高分子薄膜であり、例えばフッ素系のイオン交換膜である。触媒層14a及び14cは、例えば白金(Pt)などを担持したカーボン担体とプロトン伝導性を有するアイオノマとを含む触媒インクを、電解質膜12に塗布することにより形成される。拡散層16a及び16cは、ガス透過性及び導電性を有する材料、例えば炭素繊維や黒鉛繊維などの多孔質の繊維基材で形成されている。拡散層16a及び16cは、それぞれ触媒層14a及び14cに接合されている。
【0036】
触媒層14aは、電解質膜12の面12aの略全面にわたって形成されている。触媒層14cは、電解質膜12の面12cの中央部に形成され、電解質膜12の周縁領域には形成されていない。拡散層16aは、その端部が触媒層14aの端部に略揃う位置に設けられる。拡散層16cは、その端部が触媒層14cの端部に略揃う位置またはやや内側の位置に設けられている。これにより、電解質膜12の周縁領域が露出している。露出した電解質膜12の周縁領域に、フレーム50の内周部が接着されている。
【0037】
[セパレータ20の構成]
単セル2のセパレータ20について説明する。
図1及び
図2に示したセパレータ20の流路部20Aは、
図3に示すように、互いにY方向に延びた複数の溝部21及び外側溝部23を含む。複数の溝部21は、-X方向に並設されている。溝部21は、拡散層16aに対向し拡散層16aから退避するように-Z方向に凹んでいる。並んだ2つの溝部21の間には、Y方向に延びたリブ部22が設けられている。リブ部22は、拡散層16aに当接するように+Z方向に突出している。互いに隣接する溝部21及びリブ部22は、側壁部が共用されている。
【0038】
外側溝部23は、複数の溝部21に対して-X方向側に位置している。外側溝部23は、拡散層16aとフレーム50とに跨っており、拡散層16aとフレーム50とから退避するように-Z方向に凹んでいる。外側溝部23は、アノードガスが流れる流路部20Aを構成する溝部の中で、-X方向で最も外側に位置している。互いに隣接する外側溝部23及びリブ部22は、側壁部が共用されている。
【0039】
ビード部24は、外側溝部23に対して-X方向に隣接しており、外側溝部23に沿うように延びている。ビード部24は、セパレータ40のビード部44との間でフレーム50を挟持するように+Z方向に突出しており、リブ部22よりも+Z方向の突出量が大きい。互いに隣接するビード部24及び外側溝部23は、側壁部が共用されている。縁部25は、ビード部24よりも-X方向に隣接しており、フレーム50から退避するように-Z方向に凹んでいる。
【0040】
アノードガスは、溝部21及び外側溝部23内を-Y方向、即ち
図3の紙面手前側から奥側に流れる。溝部21内を流れるアノードガスの一部は、-Y方向に流れながら拡散層16a内に侵入して、拡散層16a内で+X方向及び-X方向に拡散して触媒層14aに到達する。触媒層14aにアノードガスが到達すると、アノードガス中の水素の酸化反応が促進される。ここで、拡散層16aの縁18aは、外側溝部23内に位置している。このため、外側溝部23内を流れるアノードガスの一部は、例えば拡散層16aの縁18aと、縁18aに対向する外側溝部23及びビード部24の共通の側壁部との間を流れ、触媒層14aに到達することなくMEGA10を通過する。
図3に示すように、外側溝部23、フレーム50、拡散層16a、触媒層14aの外縁、及び電解質膜12の外縁により包囲された空間を流路空間Faと称する。
【0041】
[セパレータ40の構成]
単セル2のセパレータ40について説明する。
図1に示したセパレータ40の流路部40Aは、
図3に示すように、互いにY方向に延びた複数の溝部41及び外側溝部43を含む。複数の溝部41は、-X方向に並設されている。溝部41は、拡散層16cから退避するように+Z方向に凹んでいる。並んだ2つの溝部41の間には、Y方向に延びたリブ部42が設けられている。リブ部42は、拡散層16cに当接するように-Z方向に突出している。互いに隣接する溝部41及びリブ部42は、側壁部が共用されている。
【0042】
外側溝部43は、複数の溝部41に対して-X方向側に位置している。外側溝部43は、拡散層16cとフレーム50とに跨った位置に設けられており、拡散層16cとフレーム50とから退避するように+Z方向に凹んでいる。外側溝部43は、カソードガスが流れる流路部40Aを構成する溝部の中で、-X方向で最も外側に位置している。互いに隣接する外側溝部43及びリブ部42は、側壁部が共用されている。
【0043】
ビード部44は、外側溝部43に対して-X方向に隣接しており、外側溝部43に沿うように延びている。ビード部44は、セパレータ20のビード部24との間でフレーム50を挟持するように-Z方向に突出しており、リブ部42よりも-Z方向の突出量が大きい。互いに隣接するビード部44及び外側溝部43は、側壁部が共用されている。縁部45は、ビード部44よりも-X方向に隣接しており、フレーム50から退避するように+Z方向に凹んでいる。
【0044】
カソードガスは、溝部41及び外側溝部43内を+Y方向、即ち
図3の紙面奥側から手前側に流れる。溝部41内を流れるカソードガスの一部も、アノードガスと同様に、+Y方向に流れながら拡散層16c内に侵入して、拡散層16c内で+X方向及び-X方向に拡散して触媒層14cに到達する。触媒層14cにカソードガスが到達すると、カソードガス中の酸素の還元反応が促進される。ここで、拡散層16cの縁18cは、外側溝部43内に位置している。このため、外側溝部43内を流れるカソードガスの一部は、例えば拡散層16cの縁18cと、縁18cに対向する外側溝部43及びビード部44の共通の側壁部との間を流れ、触媒層14cに到達することなくMEGA10を通過する。外側溝部43、フレーム50、拡散層16c、触媒層14c、及び電解質膜12の外縁により包囲された空間を流路空間Fcと称する。
【0045】
セパレータ20の溝部21、外側溝部23、及び縁部25は、それぞれ、セパレータ40-bの溝部41、外側溝部43、及び縁部45に当接する。セパレータ20のリブ部22及びビード部24は、それぞれ、セパレータ40-bのリブ部42及びビード部44にZ方向で対向する。セパレータ20のリブ部22とセパレータ40-bのリブ部42とにより包囲された空間内に冷却水が流れる。セパレータ20のビード部24とセパレータ40-bのビード部44とにより包囲された空間内には、冷却水や反応ガスは流れない。セパレータ20の縁部25とセパレータ40-bの縁部45とは、上述した溶接ラインLに従って溶接されている。セパレータ40の溝部41、外側溝部43、及び縁部45は、それぞれ、セパレータ20-aの溝部21、外側溝部23、及び縁部25に当接する。セパレータ40のリブ部42及びビード部44は、それぞれ、セパレータ20-aのリブ部22及びビード部24にZ方向で対向する。セパレータ40のリブ部42とセパレータ20-aのリブ部22とにより包囲された空間内に冷却水が流れる。セパレータ40のビード部44とセパレータ20-aのビード部24とにより包囲された空間内には、冷却水や反応ガスは流れない。セパレータ20-aの縁部25とセパレータ40の縁部45とは、上述した溶接ラインLに従って溶接されている。セパレータ20及び40―bの溶接、及びセパレータ40及び20-aとの溶接は、燃料電池スタック1として複数の単セル2を積層する前に予め実施されている。尚、セパレータ20及び40―bの接合やセパレータ40及び20-aの接合は、溶接に限定されず、接着剤により接合されていてもよい。
【0046】
[フレーム50の構成]
フレーム50は、基材51、弾性部52及び53を含む。基材51は、厚みが略均一な薄いシート状であり、合成樹脂製であり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PEI(ポリエーテルイミド)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PPSU(ポリフェニレンスルホン)、PSU(ポリスルホン)、PP(ポリプロピレン)、UHPE(超高分子量ポリエチレン)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)、COC(シクロオレフィンコポリマー)の少なくとも何れかである。弾性部52及び53は、薄いシート状であり、弾性を有している。具体的には、弾性部52及び53の各材料は、ゴム及び熱可塑性エラストマー樹脂の少なくとも一方を含み、例えば発泡ゴムや未発泡ゴムであってもよいし、ゴムと熱可塑性エラストマー樹脂との混合したものであってもよい。弾性部52及び53は、形状、大きさ、及び材料が同一であるが、説明の便宜上、異なる符号を付している。弾性部52は、基材51のセパレータ20側の面51aに予め設けられている。弾性部53は、基材51の面51aとは反対側の面51cに予め設けられている。弾性部52及び53のそれぞれは、弾性率が基材51よりも小さく、基材51よりも弾性変形が容易である。尚、弾性部52及び53は、接着成分を含有していないが、粘着成分は含有していてもよい。フレーム50の弾性部52は、電解質膜12の周縁領域に接着されている。弾性部52及び53は、第1及び第2弾性部の一例である。
【0047】
図4Aは、
図3の部分拡大図である。弾性部52は、非圧縮領域523及び圧縮領域524を含む。圧縮領域524は、ビード部24により+Z方向に圧縮されて弾性変形している。圧縮領域524とビード部24と間に作用する圧縮領域524の弾性復元力により、フレーム50とビード部24との間のシール性が確保され、アノードガスが外側溝部23から外部に漏れることが防止される。非圧縮領域523は、圧縮領域524よりも+X方向側に位置して外側溝部23内に位置しており、圧縮されていない。圧縮領域524は圧縮されているため、非圧縮領域523のZ方向での厚みT1は、圧縮領域524のZ方向での厚みT2よりも厚い。
【0048】
同様に、弾性部53は、圧縮領域534及び非圧縮領域533を含む。圧縮領域534は、ビード部44により-Z方向に圧縮されて弾性変形している。圧縮領域534とビード部44と間に作用する圧縮領域534の弾性復元力により、フレーム50とビード部44との間のシール性が確保され、カソードガスが外側溝部43から外部に漏れることが防止される。非圧縮領域533は、圧縮領域534よりも+X方向側に位置して外側溝部43内に位置しており、圧縮されていない。圧縮領域534は圧縮されているため、非圧縮領域533のZ方向での厚みT3は、圧縮領域534のZ方向での厚みT4よりも厚い。
【0049】
[比較例の構成]
図4Bは、比較例の単セル2xでの部分拡大断面図である。比較例においては、同一の構成については同一の符号を付して重複説明を省略する。
図4Bは、
図4Aに対応している。比較例の単セル2xのフレーム50xでは、弾性部52及び53は設けられておらず、代わりに基材51とビード部24との間にガスケット24xが設けられており、基材51とビード部44との間にガスケット44xが設けられている。ガスケット24x及び44xは、それぞれビード部24及び44により圧縮されて弾性変形している。ガスケット24x及び44xは、共に薄板状であってゴム製であり、それぞれ、ビード部24及び44の外側面の平坦な頂部に予め接合されている。
図4Bの比較例では、ガスケット24x及び44xのそれぞれのZ方向の厚みT2及びT4を、上述した本実施例の圧縮領域524及び圧縮領域534の厚みT2及びT4と同じものとして示している。尚、比較例での流路空間Faxは、外側溝部23、フレーム50x、拡散層16a、触媒層14a、及び電解質膜12により包囲された空間とし、流路空間Fcxは、外側溝部43、フレーム50x、拡散層16c、触媒層14c、及び電解質膜12により包囲された空間とする。
【0050】
[本実施例の詳細な構成]
本実施例では、弾性部52の非圧縮領域523は外側溝部23内に位置するが、比較例では、ガスケット24xは外側溝部23内にまで延びていない。従って、比較例の流路空間Faxの、外側溝部23が延びたY方向に垂直な断面積(以下、単に流路空間の断面積と称する場合には流路空間における外側溝部が延びた方向に垂直な断面の面積を意味する)は、本実施例の流路空間Faの断面積よりも大きい。
【0051】
ここで、例えば流路空間Faxのように断面積の大きいと、単セル2xに供給されるアノードガス全体の流量のうち流路空間Faxを流れるアノードガスの流量の割合が増大する。このため、流路空間Fax内で拡散層16aの縁18aに沿って流れて、触媒層14aには供給されずに発電反応に寄与しないアノードガスの流量が増大する。これにより、本来溝部21内から拡散層16aを介して触媒層14aにまで到達して発電反応に供されるアノードガスの流量が減少し、発電効率が低下する。このような発電効率の低下を抑制するためには、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの流量を増量する必要があり、燃費が悪化する可能性がある。また、アノードオフガスを燃料電池スタック1に再循環させるために循環ポンプを使用するシステムにおいては、循環量を増大させるために、循環ポンプの消費電力が増大する可能性がある。
【0052】
本実施例では流路空間Faの断面積は小さいため、単セル2に供給されるアノードガス全体の流量のうち流路空間Faを流れるアノードガスの流量の割合が減少している。このため、発電反応に供されるべきアノードガスの流量が確保されている。これにより、単セル2に供給されるアノードガスを効率的に利用することができ、発電効率が向上して燃費も向上している。また、アノードオフガスを燃料電池スタック1に再循環させるために循環ポンプを用いる場合には、消費電力を低減できる。
【0053】
同様に、例えば流路空間Fcxのように断面積が大きいと、単セル2xに供給されるカソードガス全体の流量のうち流路空間Fcxを流れるカソードガスの流量の割合が増大する。このため、流路空間Fcx内で外側溝部43の内面とフレーム50xとの間を流れて、触媒層14cに到達せずに発電反応に寄与しないカソードガスの流量が増大する。これにより、発電効率が低下する。このような発電効率の低下を抑制するためには、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を増量する必要があり、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するためのエアコンプレッサの消費電力が増大する可能性がある。本実施例の流路空間Fcの断面積は小さいため、発電効率が向上し、エアコンプレッサの消費電力も低減できる。
【0054】
図5Aは、セパレータ20及び40により挟持される前のフレーム50の部分拡大断面図である。尚、挟持前の状態では弾性部52及び53は圧縮されている箇所は存在しないが、説明の便宜上、
図5Aには圧縮領域524及び圧縮領域534を示している。挟持前の状態では、圧縮領域524及び非圧縮領域523は同じ厚みT1であり、同様に圧縮領域534及び非圧縮領域533も同じ厚みT2である。このように弾性部52及び53のそれぞれは厚みが均一であるため、フレーム50の製造が容易であり、製造コストが削減されている。尚、厚みT1及びT2は、圧縮代を考慮して設定することが好ましい。
【0055】
上述した弾性部52の厚みT1と弾性部53の厚みT2とは、略同じであるがこれに限定されず、一方が他方よりも厚くてもよい。例えば、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するエアコンプレッサの電力消費量を十分に低下させたい場合には、カソード側の弾性部53をアノード側の弾性部52よりも厚くして、流路空間Fcの断面積をできる限り小さくしてもよい。また、燃料電池スタック1にアノードガスを循環させる循環ポンプの電力消費量を十分に低下させたい場合には、弾性部52を弾性部53よりも厚くして、流路空間Faの断面積をできる限り小さくしてもよい。
【0056】
また、弾性部52及び53は、基材51の面51a及び51cのそれぞれに全面に亘って形成されている。これにより、フレーム50全体での耐久性や剛性を確保することができる。
【0057】
ここで、燃料電池スタック1の稼働中は、発電反応によりフレーム50は高温となって熱膨張する。一方、燃料電池スタック1が停止状態で低温環境下に置かれた場合には、フレーム50は冷却されて熱収縮する。このようなフレーム50の熱変形の際に、フレーム50のアノード側の面の熱変形量とカソード側の面の熱変形量との差が大きいと、フレーム50に反るような力が作用する場合がある。この場合に、フレーム50と電解質膜12とが接着されていたとしても、接着力によっては、フレーム50から電解質膜12が受ける面圧が低下し、フレーム50と電解質膜12との間のシール性が低下する可能性がある。本実施例では、基材51の面51a及び51cのそれぞれに弾性部52及び53が形成されている。このため、面51a及び51cの一方の面にのみ弾性部が設けられている場合と比較して、フレーム50のアノード側の面の熱変形量とカソード側の面の熱変形量との差の増大が抑制されている。従って、上記のような問題が生じることが抑制されている。
【0058】
本実施例では、
図4Aに示したように、MEGA10及びフレーム50がセパレータ20及び40に挟持された状態で、弾性部52の非圧縮領域523の厚みT1は圧縮領域524の厚みT2よりも厚いがこれに限定されず、例えば、挟持された状態で、厚みT1は厚みT2以下であってもよい。非圧縮領域523が外側溝部23内に位置していれば、このような非圧縮領域523が存在しない比較例の流路空間Faxよりも本実施例の流路空間Faの断面積を削減でき、発電効率を向上させることができるからである。同様に、弾性部53の非圧縮領域533の厚みT3は圧縮領域534の厚みT4以下であってもよい。
【0059】
本実施例では、挟持前の状態で圧縮領域524及び非圧縮領域523は同じ厚みであるが、これに限定されない。例えば、挟持前の状態で圧縮領域524の厚さは非圧縮領域523の厚さよりも厚くてもよい。圧縮領域534及び非圧縮領域533の厚みについても同様である。
【0060】
[第1変形例]
次に、複数の変形例について説明する。変形例については、上述した本実施例と同一の構成については同一の符号を用いて説明する。
図5Bは、セパレータ20及び40により挟持される前の、第1変形例の単セル2aのフレーム50aの部分拡大断面図である。
図5Bは、
図5Aに対応している。フレーム50aの弾性部52aの非圧縮領域523aの厚みT1aは、圧縮領域524aの厚みT1よりも厚い。同様に、フレーム50aの弾性部53aの非圧縮領域533aの厚みT2aは、圧縮領域534aの厚みT2よりも厚い。このため、上述した縁流路の断面積をより減少させることができ、発電効率が更に向上している。
【0061】
ここで、ガスケット等の弾性部材は、厚みが薄い方がシール性は向上することが知られている。第1変形例では、圧縮前の圧縮領域524aの厚みT1及び圧縮領域534aの厚みT2のそれぞれは、非圧縮領域523aの厚みT1a及び非圧縮領域533aの厚みT2aの何れよりも薄いため、シール性が確保されている。
【0062】
厚みT1a及びT2aのそれぞれは、基材51の厚みT0よりも厚いがこれに限定されない。また、外側溝部23内に位置する非圧縮領域523aを本変形例のように厚くし、圧縮領域524aよりも-X方向側の領域を圧縮領域524aと同じ厚みにしてもよい。同様に、外側溝部43内に位置する非圧縮領域533aのみを上記のように厚くし、圧縮領域534aよりも-X方向側の領域を圧縮領域534aと同じ厚みにしてもよい。
【0063】
[第2変形例]
図6Aは、第2変形例の単セル2bのフレーム50bの部分拡大断面図である。
図6Aは、
図4Aに対応している。フレーム50bは、基材51及び弾性部52から構成され、上述した弾性部53は設けられていない。基材51とビード部44との間には、上述したガスケット44xが設けられている。ガスケット44xは、ビード部44の外側面の平坦な頂部に予め設けられている。このようなフレーム50bによって、流路空間Faの断面積は削減されており、アノードガスを効率的に発電反応に利用でき燃費が向上している。また、フレーム50bには弾性部53が設けられていないため、材料費を削減でき、フレーム50bの製造コストが低減されている。第2変形例では、弾性部52は第1弾性部の一例であり、セパレータ20は第1セパレータの一例である。尚、第2変形例において、弾性部52の代わりに第1変形例の弾性部52aを用いてもよいし、挟持された状態で、非圧縮領域の厚みは圧縮領域の厚み以下であってもよい。
【0064】
[第3変形例]
図6Bは、第3変形例の単セル2cのフレーム50cの部分拡大断面図である。
図6Bは、
図4Aに対応している。フレーム50cは、基材51及び弾性部53から構成され、上述した弾性部52は設けられていない。基材51とビード部24との間には、上述したガスケット24xが設けられている。このようなフレーム50cによって、流路空間Fcの断面積は削減されており、カソードガスを効率的に発電反応に利用することができ、エアコンプレッサの消費電力の増大を抑制できる。また、フレーム50cには弾性部52が設けられていないため、材料費を削減でき、フレーム50cの製造コストが低減されている。尚、第3変形例では、基材51の面51aの内周部は、電解質膜12の外周部に接着剤により直接接合されている。第3変形例では、弾性部53は第1弾性部の一例であり、セパレータ40の第1セパレータの一例である。尚、第3変形例において、弾性部53の代わりに第1変形例の弾性部53aを用いてもよいし、挟持された状態で、非圧縮領域の厚みは圧縮領域の厚み以下であってもよい。
【0065】
[第4変形例]
図7Aは、第4変形例の単セル2dの部分断面図である。
図7Aは、
図3に対応している。第4変形例では、上述したセパレータ20、20-a、40、及び40―bの代わりにセパレータ20a、20a-a、40a、40a―bが用いられている。セパレータ20a及び20a-aは同一の部材であり、セパレータ40a及び40a―bは同一の部材である。セパレータ20aのリブ部22aは、リブ部22aに隣接する溝部21から拡散層16aの縁18aの近傍にまでY方向のリブ幅が拡大しており、具体的には、フレーム50、電解質膜12、触媒層14a、及び拡散層16aが重なる領域まで延在している。
【0066】
セパレータ40aのリブ部42aは、当接部42a1及び押圧部42a2を含む。当接部42a1は、拡散層16cに当接している。押圧部42a2は、当接部42a1よりも-Y方向側に位置して、当接部42a1よりも-Z方向に突出している。押圧部42a2は、触媒層14a及び電解質膜12と重なったフレーム50の領域で弾性部53を圧縮している。従って、押圧部42a2とリブ部22aとにより、拡散層16a、触媒層14a、電解質膜12、及びフレーム50が、Z方向で挟持されている。このため、フレーム50と電解質膜12との間のシール性が確保されている。更に、フレーム50と電解質膜12とを接着させることなく、フレーム50と電解質膜12との間のシール性を確保することができる。このため、製造時にフレーム50と電解質膜12とを接着させる工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。第4変形例では、弾性部52は第1弾性部の一例であり、弾性部53は第2弾性部の一例であり、リブ部22aは第1リブ部の一例であり、リブ部42aは第2リブ部の一例である。
【0067】
また、押圧部42a2は、弾性部53を圧縮している。このため、例えば、拡散層16c内を流れるカソードガスの一部が、押圧部42a2と弾性部53との間から外側溝部43a内に侵入することが抑制されている。これにより、拡散層16c内を流れるカソードガスを有効利用でき、発電効率が向上している。
【0068】
更に、上述した本実施例と同様に、フレーム50の基材51の面51a及び51cのそれぞれに弾性部52及び53が設けられており、フレーム50に熱変形に伴って反りが発生することが抑制されている。これによっても、フレーム50と電解質膜12との間のシール性が確保されている。
【0069】
また、上述した場合と同様に、外側溝部23a内で弾性部52は圧縮されておらず、外側溝部43a内でも弾性部53は圧縮されていない。このため、流路空間Faa及びFcaの各断面積が削減されており、発電効率が向上している。
【0070】
また、リブ部22aの幅は上述した本実施例のリブ部22よりも拡大していることにより、外側溝部23aの幅は本実施例の外側溝部23よりも縮小している。このため、流路空間Faaの断面積は、本実施例の流路空間Faの断面積よりも削減されており、発電効率が向上している。同様に、外側溝部43aの幅も本実施例の外側溝部43よりも縮小しており、流路空間Fcaの断面積は、本実施例の流路空間Fcの断面積よりも削減されており、発電効率が向上している。
【0071】
また、幅が拡大したリブ部22a及び42aにより、拡散層16a、MEA11、及び拡散層16cを挟持することができる。このため、MEGA10を安定して支持することができる。
【0072】
第4変形例では、押圧部42a2は、フレーム50の厚みに応じて当接部42a1よりも-Z方向に突出しているが、これに限定されない。例えば、押圧部42a2及び当接部42a1は-Z方向の突出量が同じであってもよい。この場合も押圧部42a2により弾性部53が圧縮されるように、この圧縮代を除いたフレーム50の厚みが、触媒層14c及び拡散層16cの合計の厚みと略同じであることが好ましい。また、押圧部42a2の-Z方向の突出量が当接部42a1よりも少なくてもよい。この場合も、押圧部42a2により弾性部53が圧縮されるように、この圧縮代を除いたフレーム50の厚みが、触媒層14c及び拡散層16cの合計の厚みよりも厚いことが好ましい。
【0073】
[第5変形例]
図7Bは、第5変形例の単セル2eの部分断面図である。
図7Bは、
図3に対応している。第5変形例では、上述したセパレータ20、20-a、40、及び40―bの代わりにセパレータ20b、20b-a、40b、40b―bが用いられている。セパレータ20b及び20b-aは同一の部材であり、セパレータ40b及び40b―bは同一の部材である。
【0074】
セパレータ20bのリブ部22とビード部24との間には、リブ部22bが形成されている。具体的には、リブ部22bは、溝部21bを介してリブ部22に隣接し、外側溝部23bを介してビード部24に隣接している。溝部21bは、溝部21よりも幅が狭く形成されている。同様に、セパレータ40bのリブ部42とビード部44との間には、リブ部42bが形成されている。具体的には、リブ部42bは、溝部41bを介してリブ部42に隣接し、外側溝部43bを介してビード部44に隣接している。溝部41bは、溝部41よりも幅が狭く形成されている。
【0075】
リブ部22bは、フレーム50、触媒層14a、及び拡散層16aがZ方向で重なる領域内で、拡散層16aに当接している。同様に、リブ部42bは、フレーム50、触媒層14a、及び拡散層16aがZ方向で重なる領域内で、フレーム50を圧縮している。従って、リブ部22b及び42bにより、拡散層16a、触媒層14a、電解質膜12、及びフレーム50が挟持されている。
【0076】
リブ部22b及び42bのそれぞれは、上述した第4変形例のリブ部22a及び42aのそれぞれよりも幅が狭く形成されている。このため、リブ部22bの拡散層16aに当接する部位が、拡散層16aからの反力によって-Z方向に突出するように湾曲することが抑制される。同様に、リブ部42bのフレーム50に当接する部位が、フレーム50からの反力によって+Z方向に突出するように湾曲することが抑制される。このように、リブ部22b及び42bは、それぞれ拡散層16a及びフレーム50からの反力に対して変形しにくい。従って、リブ部22b及び42bは、拡散層16a、触媒層14a、電解質膜12、及びフレーム50を挟む挟持力が向上している。従って、フレーム50と電解質膜12との間のシール性が確保されており、製造時にフレーム50と電解質膜12とを接着させる工程を省くことができる。第5変形例では、弾性部52は第1弾性部の一例であり、弾性部53は第2弾性部の一例であり、リブ部22bは第1リブ部の一例であり、リブ部42bは第2リブ部の一例である。
【0077】
また、溝部41bは、拡散層16cと支持フレーム50に跨って形成されている。このため、溝部41b内を流れるカソードガスの一部を、拡散層16cを介して触媒層14cの端部にまで到達させることができ、MEA11の発電部分の不均一を抑制できる。
【0078】
また、第4変形例と同様に、外側溝部23b内で弾性部52は圧縮されておらず、外側溝部43b内でも弾性部53は圧縮されていないため、流路空間Fab及びFcbの各断面積が削減されており、発電効率が向上している。また、リブ部22bがリブ部22とビード部24との間に設けられているため、流路空間Fabの断面積は、本実施例の流路空間Faの断面積よりも削減されており、発電効率が向上している。同様に、流路空間Fcbの断面積は、本実施例の流路空間Fcの断面積よりも削減されており、発電効率が向上している。
【0079】
尚、
図7Aに示したセパレータ40aと、
図6Aに示したフレーム50bを用いる場合には、セパレータ40aの押圧部42a2とフレーム50bの基材51との間にガスケットを配置してもよい。
図7Bに示したセパレータ40bと、
図6Aに示したフレーム50bを用いる場合には、セパレータ40bのリブ部42bとフレーム50bの基材51との間にガスケットを配置してもよい。
【0080】
[その他]
上記実施例及び変形例では、基材51の少なくとも一方の面に全面に亘って弾性部が設けられている場合を示したがこれに限定されず、部分的に弾性部が設けられていてもよい。即ち、弾性部は、ビード部に圧縮された圧縮領域と、外側溝部内に位置して圧縮領域の厚さよりも厚い非圧縮領域とを有していればよい。例えば、
図4Aに示した本実施例では、圧縮領域524よりも-X方向側には弾性部52が設けられておらずに基材51の面51aが露出していてもよいし、圧縮領域534よりも-X方向側には、弾性部53が設けられておらずに基材51の面51cが露出していてもよい。
図5Aに示した第1変形例やその他の第2及び第3変形例も同様である。また、上記実施例及び変形例では、基材51の一方の面に形成された弾性部の圧縮領域と非圧縮領域とは、連続的に設けられているが、これに限定されず、分断されて設けられてもよい。
図7Aに示した第4変形例において、押圧部42a2が基材51の面51cを直接押圧するように、弾性部53が押圧部42a2から退避して設けられていてもよい。
図7Bに示した第5変形例においても同様である。
【0081】
第4及び第5変形例ではフレーム50と電解質膜12とは接着しない方が製造工程を簡略化できるため好ましいが、接着剤を補助的に用いて両者を接着してもよい。
【0082】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 燃料電池スタック
2、2a、2b、2c、2d、2e 単セル
10 膜電極ガス拡散層接合体
11 膜電極接合体
12 電解質膜
14a アノード触媒層
14c カソード触媒層
16a アノードガス拡散層
16c カソードガス拡散層
20 アノードセパレータ
40 カソードセパレータ
21、41 溝部
22、22a、22b、42、42a、42b リブ部
23、23a、23b、43、43a、43b 外側溝部
24、44 ビード部
50、50a、50b、50c フレーム
51 基材
52、52a、53、53a 弾性部