(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両用外装部品
(51)【国際特許分類】
B60R 19/52 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B60R19/52 J
B60R19/52 E
(21)【出願番号】P 2019109384
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸範
(72)【発明者】
【氏名】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】内村 耕二
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-158311(JP,A)
【文献】実開平04-011149(JP,U)
【文献】実開昭58-194942(JP,U)
【文献】特開2010-228729(JP,A)
【文献】特開2011-161996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
B60R 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディ、あるいは前記車両ボディに固定された部品に対して締結機構により取付けられる車両用外装部品であって、
車両の意匠面を構成する外装部品本体部と、
前記外装部品本体部の裏面から裏面方向に突出する容器状に形成されており、前記締結機構の締結力を受ける座面を備える凹座部と、
前記凹座部の開口を覆う装飾板部と、
を有しており、
前記凹座部の開口縁部には、前記装飾板部の係合爪が通される爪受け穴が形成されおり、
前記凹座部は、前記外装部品本体部を介して衝突荷重を受けることで
起点部を変形の起点として潰れ変形可能に構成されて
おり、
前記起点部は、前記凹座部において前記開口縁部と前記座面を囲む周囲壁部との境界位置に形成された脆弱部である車両用外装部品。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用外装部品であって、
前記凹座部は、前記座面を備える底板部と、その底板部を囲む周囲壁部とを備えており、
前記起点部は、前記周囲壁部に段差状に設けられている車両用外装部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両用外装部品であって、
前記起点部は、前記凹座部の他の部位よりも脆弱に形成された
薄肉部を備えている車両用外装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディ、あるいは前記車両ボディに固定された部品に対して締結機構により取付けられる車両用外装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用外装部品であるバンパグリルに関する発明が特許文献1に記載されている。バンパグリル103は、
図9に示すように、バンパカバー101の空気取入れ口102に裏側から嵌め込まれて、この位置に固定される。そして、バンパグリル103は、バンパカバー101と共にボルト止めにより車両ボディ(図示省略)に取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ボルト止めされるバンパグリル103の座部103zは、
図9に示すように、強度が大きな肉厚部分に形成されている。このため、バンパグリル103が衝突荷重を受けたときに、座部103zはバンパグリル103と車両ボディ間で変形し難くなる。即ち、バンパグリル103の座部103zにおいて前記衝突荷重を効率的に吸収するのは難しい。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両用外装部品の凹座部において衝突荷重を効率的に吸収できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両ボディ、あるいは前記車両ボディに固定された部品に対して締結機構により取付けられる車両用外装部品であって、車両の意匠面を構成する外装部品本体部と、前記外装部品本体部の裏面から裏面方向に突出する容器状に形成されており、前記締結機構の締結力を受ける座面を備える凹座部と、前記凹座部の開口を覆う装飾板部とを有しており、前記凹座部の開口縁部には、前記装飾板部の係合爪が通される爪受け穴が形成されおり、前記凹座部は、前記外装部品本体部を介して衝突荷重を受けることで起点部を変形の起点として潰れ変形可能に構成されており、前記起点部は、前記凹座部において前記開口縁部と前記座面を囲む周囲壁部との境界位置に形成された脆弱部である。
【0007】
本発明によると、凹座部は、外装部品本体部の裏面から裏側に突出する容器状に形成されて、外装部品本体部を介して衝突荷重を受けることで潰れ変形可能に構成されている。このため、車両用外装部品の凹座部が潰れることで、衝突荷重を効率的に吸収できる。
また、凹座部には、変形の起点となる起点部が設けられている。このため、衝突荷重を受けたときの凹座部の潰れ方がほぼ一定になり、衝突荷重の吸収性能にばらつきが生じ難い。
【0009】
第2の発明によると、凹座部は、座面を備える底板部と、その底板部を囲む周囲壁部とを備えており、起点部は、前記周囲壁部に段差状に設けられている。このため、衝突荷重で凹座部が潰れ易くなる。
【0011】
第3の発明によると、起点部は、凹座部の他の部位よりも脆弱に形成された薄肉部を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、車両用外装部品の凹座部において衝突荷重を効率的に吸収できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両外装部品であるロアグリルを備えるフロントバンパカバーの全体斜視図である。
【
図2】前記フロントバンパカバーの分解斜視図である。
【
図3】前記ロアグリルの凹座部、及びその近傍の拡大正面図(
図2のIII矢視拡大図)である。
【
図4】前記ロアグリルの凹座部、及びその近傍を前左下方から見た斜視図である。
【
図5】前記ロアグリルの凹座部、及びその近傍を前右下方から見た斜視図である。
【
図6】前記ロアグリルの凹座部、及びその近傍を後右上方から見た斜視図である。
【
図7】前記ロアグリルの凹座部、及びその近傍を後左上方から見た斜視図である。
【
図8】前記ロアグリルの凹座部の拡大平断面図(
図3のVIII-VIII矢視断面図)である。
【
図9】従来のロアグリルを備えるフロントバンパカバーの全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、
図1から
図8に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用外装部品であるロアグリル30の説明を行う。本実施形態に係るロアグリル30は、フロントバンパカバー10の構成部品である。ここで、図中における前後左右及び上下は、フロントバンパカバー10を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<フロントバンパカバー10、及びバンパカバー本体部20について>
フロントバンパカバー10は、
図1に示すように、車両のフロントバンパの外形意匠を構成する樹脂部品であり、バンパカバー本体部20とアッパグリル29とロアグリル30とを備えている。バンパカバー本体部20は、
図1、
図2に示すように、車両ボディ5(
図8参照)の前面を覆う正面カバー部21と、車両ボディ5の左前部から左側面を覆う左カバー部22と、車両ボディ5の右前部から右側面を覆う右カバー部23とから構成されている。バンパカバー本体部20の正面カバー部21には、高さ方向中央位置に、
図1、
図2に示すように、車幅方向に延びる帯状の装飾帯板部21xが設けられている。そして、正面カバー部21の装飾帯板部21xの上側に上部空気取入れ開口21uが形成されており、その装飾帯板部21xの下側に下部空気取入れ開口21dが形成されている。
【0016】
正面カバー部21の上部空気取入れ開口21uには、アッパグリル29が裏側から嵌め込まれており、そのアッパグリル29が係合爪等を利用して上部空気取入れ開口21uの周縁に固定されている。また、正面カバー部21の下部空気取入れ開口21dには、ロアグリル30が裏側から嵌め込まれており、そのロアグリル30が同じく係合爪等により下部空気取入れ開口21dの周縁に固定されている。また、バンパカバー本体部20の左カバー部22と右カバー部23とには、フォグランプ等が取付けられるランプ取付け部22r,23rが形成されている。バンパカバー本体部20の裏側には、所定位置にボルトが通される複数の座部(図示省略)が設けられており、それらの座部を利用してバンパカバー本体部20は車両ボディ5にボルト止めされる。
【0017】
<アッパグリル29とロアグリル30について>
アッパグリル29とロアグリル30とは、バンパカバー本体部20の上部空気取入れ開口21uの部分と下部空気取入れ開口21dの部分とをそれぞれ補強するとともに、その部分の装飾を兼ねる部材である。ここで、アッパグリル29とロアグリル30とは、基本構成がほぼ等しいため、代表してロアグリル30の構成について説明し、アッパグリル29の説明は省略する。
【0018】
ロアグリル30は、
図2等に示すように、横方向に長い略角形の外枠部31と、外枠部31に囲まれた空間内を格子状に仕切る複数本の横桟部32と複数本の縦桟部33とを備えている。そして、ロアグリル30の外枠部31がバンパカバー本体部20の下部空気取入れ開口21dに嵌め込まれた状態で、係合爪等により下部空気取入れ開口21dの周縁部に固定される。即ち、ロアグリル30の外枠部31と横桟部32と縦桟部33との表側が車両の意匠面を構成している。また、ロアグリル30の左上部と右上部とには、ロアグリル30を車両ボディ5に対してボルト止めする際に使用される容器状の凹座部35が設けられている。
【0019】
<ロアグリル30の凹座部35について>
ロアグリル30の左右の凹座部35は、等しい構成で左右対称に形成されている。このため、
図3~
図7を利用して右側の凹座部35の構成について詳細に説明する。ロアグリル30の凹座部35は、
図3に示すように、縦桟部33の間隙寸法とほぼ等しい幅寸法で、横桟部32の間隙の約二倍の高さ寸法に設定されており、
図6、
図7に示すように、ロアグリル30の裏面から裏側(後方)に突出している。ロアグリル30の凹座部35は、ロアグリル30の表側(前方)から見た形状が、
図4、
図5に示すように、表面側で拡開する略角錐台形の凹容器状に形成されており、ロアグリル30の裏側(後方)から見た形状が、
図6、
図7に示すように、略角錐台形をした先細の突起状に形成されている。
【0020】
ロアグリル30の凹座部35は、
図3~
図7に示すように、略角錐台形の上底に相当する位置(後端位置)に底板部351を備えており、その底板部351が上壁部352、下壁部353、左壁部354、右壁部355によって上下左右から囲まれている。即ち、上壁部352、下壁部353、左壁部354、右壁部355が略角錐台形の凹座部35の側壁を構成している。また、凹座部35の底板部351の中央には、ボルト孔351hが形成されている。このため、底板部351の底面におけるボルト孔351hの周縁がボルトBの頭部を受ける座面となる。また、凹座部35は、略角錐台形の下底に相当する位置、即ち、上壁部352、下壁部353、左壁部354、右壁部355の前端位置に開口縁部357を備えている。
【0021】
そして、凹座部35の上壁部352が、
図4~
図7に示すように、開口縁部357を介してロアグリル30の外枠部31の裏面に接合されている。また、凹座部35の下壁部353が、
図5に示すように、開口縁部357を介してロアグリル30の横桟部32の裏面に接合されている。さらに、凹座部35の左壁部354と右壁部355とが、
図4~
図7に示すように、開口縁部357を介してロアグリル30の隣合う縦桟部33の裏面に接合されている。
【0022】
凹座部35の右壁部355には、
図4、
図6に示すように、階段状の段部355dが形成されている。即ち、凹座部35の右壁部355は、
図8の平断面図に示すように、右前側壁部355fと段部355dと右後側壁部355bから階段状に形成されており、右前側壁部355fと段部355dとの境界位置に薄肉部355tが設けられている。また、段部355dと右後側壁部355bとの境界位置に薄肉部355tが設けられている。また、凹座部35の右壁部355と開口縁部357との境界位置、及び左壁部354と開口縁部357との境界位置にそれぞれ薄肉部358が設けられている。
【0023】
また、ロアグリル30の縦桟部33に接合される凹座部35の開口縁部357の左右両側には、
図8等に示すように、凹座部35の開口を覆う装飾板部36(二点鎖線参照)の係合爪36kが通される爪受け穴357xが形成されている。
【0024】
ロアグリル30を車両ボディ5に取付けるには、
図8に示すように、ロアグリル30の凹座部35のボルト孔351hにボルトBを通し、そのボルトBを車両ボディ5のボルト孔5hと同軸に固定されたナットNに締付ける。そして、ボルトBの締付けが完了した後、ロアグリル30の凹座部35の開口を装飾板部36によって塞ぐようにする。これにより、車両ボディ5に対するロアグリル30の取付けが完了する。
【0025】
上記構成により、車両が前方衝突すると、衝突荷重Fがバンパカバー本体部20、及びロアグリル30の外枠部31、横桟部32、縦桟部33を介して凹座部35に加わるようになる。これにより、ロアグリル30の凹座部35が右壁部355の段部355dの薄肉部355tを起点にして潰れ変形する。そして、ロアグリル30の凹座部35の潰れ変形により、衝突荷重Fが効率的に吸収される。
【0026】
<本実施形態で使用した用語と本発明における用語との対応>
前記ロアグリル30が本発明の車両用外装部品に相当し、ロアグリル30の外枠部31、横桟部32、縦桟部33が本発明の外装部品本体部に相当する。また、ボルトBとナットNとが本発明の締結機構に相当する。さらに、凹座部35を構成する底板部351の底面が本発明の座面に相当し、上壁部352、下壁部353、左壁部354、右壁部355が本発明の周囲壁部に相当する。また、凹座部35の右壁部355の段部355d、薄肉部355tが本発明の起点部、及び脆弱部に相当する。
【0027】
<本実施形態に係るロアグリル30の長所について>
本実施形態に係るロアグリル30によると、凹座部35は、ロアグリル30の裏面から裏側に突出する容器状に形成されて、衝突荷重Fを受けることで潰れ変形可能に構成されている。このため、ロアグリル30の凹座部35が潰れ変形することで、衝突荷重Fを効率的に吸収できる。また、凹座部35には、変形の起点となる段部355d、薄肉部355t(起点部)が設けられているため、衝突荷重Fを受けたときの凹座部35の潰れ方がほぼ一定になり、衝突荷重Fの吸収性能にばらつきが生じ難い。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ロアグリル30の凹座部35を構成する右壁部355に段部355dと薄肉部355tとを形成する例を示した。しかし、凹座部35を構成する上壁部352、あるいは下壁部353、あるいは左壁部354のいずれかに段部355dと薄肉部355tとを形成することも可能である。また、上壁部352、下壁部353、左壁部354、右壁部355の全てに段部355dと薄肉部355tとを形成することも可能である。また、本実施形態では、脆弱部として薄肉部355tを例示したが、薄肉部355tの代わりにその部分の材質を他の部分と比較して強度の小さい材質を使用することも可能である。また、薄肉部355tの代わりに穴等を形成することで強度を小さくすることも可能である。
【0029】
また、本実施形態では、車両用外装部品としてロアグリル30を例示したが、アッパグリル29、あるいはバンパカバー本体部20等の凹座部に本発明を適用することも可能である。さらに、本実施形態では、ロアグリル30の凹座部35をボルトB、ナットN(締結機構)により車両ボディ5に固定する例を示した。しかし、ロアグリル30の凹座部35をボルトB、ナットN(締結機構)により車両ボディ5に取付けられた部品、例えば、支持具等に固定する構成でも可能である。
【符号の説明】
【0030】
5・・・・車両ボディ
30・・・ロアグリル(車両用外装部品)
31・・・外枠部(外装部品本体部)
32・・・横桟部(外装部品本体部)
33・・・縦桟部(外装部品本体部)
35・・・凹座部
351・・底板部
352・・上壁部(周囲壁部)
353・・下壁部(周囲壁部)
354・・左壁部(周囲壁部)
355・・右壁部(周囲壁部)
355d・段部(起点部)
355t・薄肉部(起点部、脆弱部)
357・・開口縁部
B・・・・ボルト(締結機構)
N・・・・ナット(締結機構)