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  • 特許-ワイヤハーネス 図1
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  • 特許-ワイヤハーネス 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20221220BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20221220BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221220BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20221220BHJP
   F16L 3/16 20060101ALI20221220BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20221220BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/30
H01B7/00 301
H01B7/18 G
F16L3/16 Z
F16L3/00 F
F16L57/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019118415
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021005947
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小畠 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】中西 誠志
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-037428(JP,A)
【文献】特開2015-146668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/30
H01B 7/00
H01B 7/18
F16L 3/16
F16L 3/00
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を有する電線群と、
前記電線群を収容する収容部材と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記電線群は、前記収容部材に収容されるとともに、前記電線群の延在方向と交差する方向においてテープ部材が巻回された巻回部を有しており、
前記テープ部材には、スリットが設けられていて、
前記巻回部は、前記スリットが前記電線群の延在方向と一致する方向に沿って延びるように構成されている、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記収容部材は、断面扁平状である、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記スリットは、前記テープ部材の幅方向に沿って延びており、
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記テープ部材は、複数の前記スリットを有しており、
複数の前記スリットは、前記テープ部材の長さ方向に互いに間隔をおいて設けられている、
請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
複数の前記スリットは、前記テープ部材の前記幅方向の両端に設けられているとともに、前記長さ方向において互い違いに配置されている、
請求項4に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内に配索されるワイヤハーネスが記載されている。このワイヤハーネスは、複数本の電線を有する電線群と、電線群を収容する収容溝及びエア通路が一体化されたダクトとを備えており、電線群は当該ダクトに沿わせて配索されている。収容溝は、ダクトの外面を凹ますように形成されている。収容溝には、テープ巻きされた電線群が収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-278605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうしたワイヤハーネスにおいて、作業者によっては、テープ部材を電線群に対して強く巻くことがあり、テープ部材と電線群との結束力が強くなり過ぎる場合がある。このため、テープ巻きしたワイヤハーネスを特定の形状のダクトなどの収容部材に収容する際に、電線群を変形させ難く、収容部材に収容することが困難になるといった問題があった。
【0005】
そこで、収容部材に容易に収容することができるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、複数本の電線を有する電線群と、前記電線群を収容する収容部材と、を備えるワイヤハーネスであって、前記電線群は、前記収容部材に収容されるとともに、前記電線群の延在方向と交差する方向においてテープ部材が巻回された巻回部を有しており、前記テープ部材には、スリットが設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、収容部材に容易に収容することができるワイヤハーネスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
図2図2は、同形態の電線群及びプロテクタを互いに離間して示す分解斜視図である。
図3図3は、図1の3-3線に沿った断面図である。
図4図4は、同形態のテープ部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスは、
[1]複数本の電線を有する電線群と、前記電線群を収容する収容部材と、を備えるワイヤハーネスであって、前記電線群は、前記収容部材に収容されるとともに、前記電線群の延在方向と交差する方向においてテープ部材が巻回された巻回部を有しており、前記テープ部材には、スリットが設けられている。
【0010】
上記態様によれば、スリットによってテープ部材の強度が弱められているため、作業者が電線群に対してテープ部材を一定程度以上の結束力にて巻くことができなくなる。すなわち、巻回部の結束力が弱められるため、巻回部を容易に変形させることができる。また、スリットが設けられているため、テープ部材が伸びやすくなる。このため、巻回部を押圧すると、テープ部材が伸びることで巻回部の断面形状を容易に変形させることができる。したがって、収容部材に電線群を容易に収容することができる。
【0011】
[2]前記収容部材は、断面扁平状であることが好ましい。
この態様によれば、作業者が巻回部を押圧することによって、巻回部の断面形状を収容部に収容可能な断面扁平状に変形させることができる。
【0012】
[3]前記スリットは、前記テープ部材の幅方向に沿って延びていることが好ましい。
作業者によって巻回部が押圧されると、巻回部はその周方向、すなわちテープ部材の長さ方向に変形しようとする。この態様によれば、テープ部材においてスリットが設けられている部分は、他よりも幅が狭くなるため、当該部分を起点として長さ方向に伸びやすくなる。したがって、巻回部を容易に変形させることができる。
【0013】
[4]前記テープ部材は、複数の前記スリットを有しており、複数の前記スリットは、前記テープ部材の長さ方向に互いに間隔をおいて設けられていることが好ましい。
この態様によれば、テープ部材は複数のスリットにより、長さ方向に一層伸びやすくなる。したがって、巻回部を一層変形させやすくすることができる。
【0014】
[5]複数の前記スリットは、前記テープ部材の前記幅方向の両端に設けられているとともに、前記長さ方向において互い違いに配置されていることが好ましい。
テープ部材の長さ方向の同位置に一対のスリットが設けられている場合、これらスリットが設けられている部分の幅が狭くなることでテープ部材の強度が不足し、テープ部材が破断されるおそれがある。この点、上記態様によれば、複数のスリットが長さ方向において互い違いに配置されているため、テープ部材の破断を抑制しつつ、テープ部材を長さ方向に伸ばすことができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図1図4を参照して、ワイヤハーネスの一実施形態について説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
図1に示すワイヤハーネス10は、車両に設置された機器11,12同士を電気的に接続する。
ワイヤハーネス10は、複数本の電線21を有する電線群20と、電線群20を収容するプロテクタ30とを備えている。本実施形態において、電線群20は、7本の電線21を有している。プロテクタ30が、収容部材の一例に相当する。
【0017】
図1に示すように、電線群20の両端部には、一対のコネクタC1が設けられている。本実施形態において、電線群20のうち、プロテクタ30外に位置する部分には、電線21を一括して包囲する外装部材25が設けられている。電線群20の一端部はコネクタC1を介して機器11と接続され、電線群20の他端部はコネクタC1を介して機器12と接続されている。
【0018】
外装部材25は、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材25の内部空間には、電線群20が収容されている。外装部材25は、例えば、電線群20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。外装部材25は、内部に収容した電線群20を飛翔物や水滴から保護する。外装部材25は、例えば、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブなどである。
【0019】
(電線21の構成)
図2及び図3に示すように、電線21は、導体よりなる芯線22と、芯線22の外周を被覆する絶縁被覆23とを有している。芯線22としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線などを用いることができる。芯線22の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0020】
絶縁被覆23は、例えば、芯線22の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆23は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆23の材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂を用いることができる。絶縁被覆23の材料としては、1種の材料を単独で、又は2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。
【0021】
(プロテクタ30の構成)
図2及び図3に示すように、プロテクタ30は、本体40と、本体40に対して係脱可能に設けられ、本体40の開口44を覆うカバー50とを備えている。本体40及びカバー50は、共に硬質の樹脂製である。
【0022】
本体40は、樋状であり、平面視長方形状の底壁41と、底壁41の短手方向の両側に設けられる一対の側壁42とを有している。
底壁41の長手方向は、電線群20の延在方向に沿っている。以降において、底壁41の短手方向を短手方向Xとして、電線群20の延在方向を延在方向Yとして説明する。
【0023】
各側壁42は、延在方向Yの全体にわたって延在している。各側壁42の外面には、ロック枠部43が設けられている。ロック枠部43は、その中央に係止爪部53が係止可能な係止孔43aを有している。
【0024】
カバー50は、本体40の底壁41に対向する平面視長方形状の頂壁51と、頂壁51の短手方向Xの両側に設けられる一対の側壁52とを有している。
各側壁52は、延在方向Yの全体にわたって延在している。各側壁52には、各ロック枠部43の係止孔43aに挿通及び係止される係止爪部53が突設されている。
【0025】
上記短手方向X及び上記延在方向Yの双方に直交する方向を高さ方向Zとすると、プロテクタ30の高さ方向Zの長さは、本体40の短手方向Xの長さよりも短い。すなわち、プロテクタ30の短手方向Xに沿った断面形状が扁平状である(図3参照)。
【0026】
(巻回部24の構成)
図1図3に示すように、電線群20のうち上記プロテクタ30に収容される部分には、外装部材25が設けられておらず、電線21が露出している。当該部分の電線群20は、延在方向Yと交差する方向においてテープ部材60が巻回された巻回部24を複数有している。本実施形態においては、巻回部24が延在方向Yに互いに間隔をおいて3箇所に設けられている。テープ部材60は、例えば、ポリ塩化ビニルなどの軟質の樹脂製である。
【0027】
図4に示すように、テープ部材60の幅方向Wの両端には、幅方向Wに沿って延びる複数のスリット61が設けられている。複数のスリット61は、テープ部材60の長さ方向Lにおいて互い違いに配置されている。なお、本実施形態では、巻回部24において、テープ部材60の幅方向Wが上記延在方向Yと一致する。すなわち、テープ部材60の長さ方向Lが巻回部24の周方向と一致する。
【0028】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)ワイヤハーネス10は、複数本の電線21を有する電線群20と、電線群20を収容するプロテクタ30とを備える。電線群20は、プロテクタ30に収容されるとともに、電線群20の延在方向Yと交差する方向においてテープ部材60が巻回された巻回部24を有している。テープ部材60には、スリット61が設けられている。
【0029】
上記態様によれば、スリット61によってテープ部材60の強度が弱められているため、作業者が電線群20に対してテープ部材60を一定程度以上の結束力にて巻くことができなくなる。すなわち、巻回部24の結束力が弱められるため、巻回部24を容易に変形させることができる。また、スリット61が設けられているため、テープ部材60が伸びやすくなる。このため、巻回部24を押圧すると、テープ部材60が伸びることで巻回部24の断面形状を容易に変形させることができる。したがって、プロテクタ30に電線群20を容易に収容することができる。これらのことから、電線群20が本体40とカバー50との間に噛み込まれることを抑制できる。
【0030】
(2)プロテクタ30は、断面扁平状である。
上記態様によれば、作業者が巻回部24を押圧することによって、巻回部24の断面形状をプロテクタ30に収容可能な断面扁平状に変形させることができる。
【0031】
(3)スリット61は、テープ部材60の幅方向Wに沿って延びている。
作業者によって巻回部24が押圧されると、巻回部24はその周方向、すなわちテープ部材60の長さ方向Lに変形しようとする。
【0032】
上記態様によれば、テープ部材60においてスリット61が設けられている部分は、他よりも幅が狭くなるため、当該部分を起点として長さ方向Lに伸びやすくなる。したがって、巻回部24を容易に変形させることができる。
【0033】
(4)テープ部材60は、複数のスリット61を有しており、複数のスリット61は、テープ部材60の長さ方向Lに互いに間隔をおいて設けられている。
上記態様によれば、テープ部材60は複数のスリット61により、長さ方向Lに一層伸びやすくなる。したがって、巻回部24を一層変形させやすくすることができる。
【0034】
(5)複数のスリット61は、テープ部材60の幅方向Wの両端に設けられているとともに、長さ方向Lにおいて互い違いに配置されている。
テープ部材の長さ方向Lの同位置に一対のスリット61が設けられている場合、これらスリット61が設けられている部分の幅が狭くなることでテープ部材の強度が不足し、テープ部材が破断されるおそれがある。
【0035】
この点、上記態様によれば、テープ部材60には複数のスリット61が長さ方向Lにおいて互い違いに配置されているため、テープ部材60の破断を抑制しつつ、テープ部材60を長さ方向Lに伸ばすことができる。
【0036】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・電線群20が有する電線21の本数は、適宜変更することができる。
【0037】
・電線群20のうち、プロテクタ30に収容される部分に設けられる巻回部24の位置及び数は、適宜変更することができる。
・巻回部24において、電線群20の延在方向Yに対してテープ部材60が螺旋状に巻回されていてもよい。
【0038】
・テープ部材60の幅方向Wの片側の端のみにスリット61を設けた構成としてもよい。
・テープ部材60の長さ方向Lの同位置に一対のスリット61を設けた構成としてもよい。
【0039】
・スリット61は、少なくとも1つ設けられていればよい。
・スリット61は、テープ部材60の幅方向Wの中央部に幅方向Wに沿って延びていてもよい。
【0040】
・プロテクタ30は、例えば断面正方形状など、他の断面形状であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
C1…コネクタ
L…長さ方向
W…幅方向
X…短手方向
Y…延在方向
Z…高さ方向
10…ワイヤハーネス
11,12…機器
20…電線群
21…電線
22…芯線
23…絶縁被覆
24…巻回部
25…外装部材
30…プロテクタ(収容部材)
40…本体
41…底壁
42…側壁
43…ロック枠部
43a…係止孔
44…開口
50…カバー
51…頂壁
52…側壁
53…係止爪部
60…テープ部材
61…スリット
図1
図2
図3
図4