(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20221220BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20221220BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20221220BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20221220BHJP
【FI】
F02D29/02 311J
F02D29/00 B
F02D29/00 C
B60W10/00 104
(21)【出願番号】P 2019119348
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-179374(JP,A)
【文献】特開2006-304737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
F02D 45/00
A01B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)に作業機(18)を
リフトアーム(15)の回動により昇降可能に装着した作業車において、走行制御装置(30)を設け、前記作業機(18)の作業機情報(26)と昇降センサ(32)が検出する前記作業機(18)
を上昇させるリフトアーム(15)の上昇角度を前記走行制御装置(30)に入力し、作業機
データ(29)に基づいて、前記走行
制御装置(30)が
、前記昇降センサ(32)
により、リフトアーム(15)の上昇角度が予め設定された作業機データ(29)に登録された上昇角度まで上昇したことで
、前記作業機(18)の上昇を検出すると
、最高走行速度を所定の低速に規制制御
し、
フロントパネル(20)に規制された最高走行速度を含む制御情報(28)が表示され、エンジン(E)と変速装置(34)が制御されて規制された最高走行速度までの速度で走行するように制御されることを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記作業機(18)に前記作業機情報(26)を持たせて前記走行車体(1)に前記作業機(18)を装着すると前記作業機情報(26)が前記走行制御装置(30)に送信されて前記走行
制御装置(30)の前記作業機データ(29)に照合されて所定の最高走行速度に規制制御されることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記作業機(18)の上昇角度が所定角度より小さい場合は最高速度規制を行わないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体に耕耘作業機等の対地作業機を搭載するトラクタ等の作業車における速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対地作業機を搭載した作業車は、対地作業機を地上から浮かせた状態で路上を走行するので重心位置が高くなって不安定になり、走行速度が速くなり過ぎないように気を付けなくてはならない。
【0003】
このために、例えば、特許文献1には、作業車の最高走行速度を高低の二段階に規制する走行モード設定手段を設け、重い作業機を走行車体に装着した場合には、自動的に最高速度を低速にして不用意に速く走行しないようにして安全を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラクタに耕耘作業機を搭載した農作業車は、耕耘作業を行う場合に耕耘作業機を圃場に降ろして低速で耕耘走行し、路上を移動走行する場合は耕耘作業機を地面から浮かせて走行するが、耕耘作業機を地上から高く上昇させた状態で速く走行すると旋回時に転倒の危険性が高まる。
【0006】
そのために、本発明は、走行車体に作業機を昇降可能に装着した作業車において、路上走行を安全に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
第1の本発明は、走行車体(1)に作業機(18)をリフトアーム(15)の回動により昇降可能に装着した作業車において、走行制御装置(30)を設け、前記作業機(18)の作業機情報(26)と昇降センサ(32)が検出する前記作業機(18)を上昇させるリフトアーム(15)の上昇角度を前記走行制御装置(30)に入力し、作業機データ(29)に基づいて、前記走行制御装置(30)が、前記昇降センサ(32)により、リフトアーム(15)の上昇角度が予め設定された作業機データ(29)に登録された上昇角度まで上昇したことで、前記作業機(18)の上昇を検出すると、最高走行速度を所定の低速に規制制御し、
フロントパネル(20)に規制された最高走行速度を含む制御情報(28)が表示され、エンジン(E)と変速装置(34)が制御されて規制された最高走行速度までの速度で走行するように制御されることを特徴とする作業車である。
第2の本発明は、前記作業機(18)に前記作業機情報(26)を持たせて前記走行車体(1)に前記作業機(18)を装着すると前記作業機情報(26)が前記走行制御装置(30)に送信されて前記走行制御装置(30)の前記作業機データ(29)に照合されて所定の最高走行速度に規制制御されることを特徴とする第1の本発明の作業車である。
第3の本発明は、前記作業機(18)の上昇角度が所定角度より小さい場合は最高速度規制を行わないことを特徴とする第1または第2の本発明の作業車である。
本発明に関連する第1の発明は、走行車体1に作業機18を昇降可能に装着した作業車において、走行制御装置30を設け、作業機18の作業機情報26と昇降センサ32が検出する作業機18の上昇角度を走行制御装置30に入力し、作業機データ29に基づいて、走行速度制御装置30が昇降センサ32で作業機18の上昇を検出すると最高走行速度を所定の低速に規制制御することを特徴とする作業車とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、作業機18に作業機情報26を持たせて走行車体1に作業機18を装着すると作業機情報26が走行制御装置30に送信されて走行速度制御装置30の作業機データ29に照合されて所定の最高走行速度に規制制御されることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車とする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、作業機18の上昇角度が所定角度より小さい場合は最高速度規制を行わないことを特徴とする本発明に関連する第1または第2の発明の作業車とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明で、安全な路上走行が可能になる。
本発明に関連する第1の発明で、走行車体1に装着した作業機18を上昇させると、走行制御装置30が作業機情報26を作業機データ29に照合して作業機18をどの程度上昇させると転倒危険性の高い最高速度になるかを認識して最高走行速度を規制するので、作業機18の機種ごとに的確な最高速度規制を行って、安全な路上走行が可能になる。
【0012】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、作業機18を走行車体1に装着するだけで走行制御装置30が作業機18の作業機情報26を認識するので、作業者が作業機情報26を走行制御装置30に入力する手間が省ける。
【0013】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第1または第2の発明の効果に加えて、走行制御装置30が昇降センサ32の検出情報を判断して、作業機18の上昇角度が小さく安全であると判断されると低い最高速度での規制が行わず、迅速な走行が行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本実施例の作業車として示す農業用トラクタの側面図である。
【0017】
農業用トラクタは、走行車体1の下部に前輪2,2と後輪3,3とからなる走行装置40を備え、走行車体1前部のエンジンルーム5内に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース6内の変速装置によって適宜減速して、動力を前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。前記エンジンルーム5はボンネット7で覆う構成である。
【0018】
また、走行車体1の後部にロータリ耕耘装置で構成した作業機18を装着し、トランスミッションケース6から後方へ突出するPTO軸で作業機18を駆動する構成としている。
【0019】
走行車体1の上部には、キャビン9が支持されている。キャビン9の内部では、トランスミッションケース6の上部位置に運転座席8が配置され、この運転座席8の前方には、ステアリングハンドル10や、前後進レバー11、駐車ブレーキ(図示せず)等が配置されている。また、運転座席8の前方には、
図2に示す、速度メータ20aや、操作用の各種スイッチなどが配置された操作表示パネル20bが設けられたフロントパネル20が設けられている。運転座席8の前方下部には、クラッチペダル12や、アクセルペダル13、左右ブレーキペダル(図示せず)等の走行操作具が配置されている。
【0020】
ミッションケース6の後部上方には油圧シリンダケース14が設けられ、この油圧シリンダケース14の左右両側にはリフトアーム15,15が回動自在に枢着されている。リフトアーム15,15とロワーリンク16,16との間にはリフトロッド17,17が介装連結され、ロワーリンク16,16の後部には作業機であるロータリ耕耘装置18が連結されている。
【0021】
油圧シリンダケース14内に収容されている油圧シリンダに作動油が供給されるとリフトアーム15,15が上昇側に回動され、リフトロッド17、ロワーリンク16等を介して作業機(ロータリ耕耘装置)18が上昇する。反対に油圧シリンダ14a内の作動油が油圧タンクを兼ねるミッションケース5内に排出されると、リフトアーム15,15は下降する。油圧シリンダケース14内の設けた昇降センサ32でリフトアーム15の上昇角度が検出される。
【0022】
また、走行車体1のトランスミッションケース6上に走行制御装置30を設け、この走行制御装置30内に
図4に示す各種作業機の速度規制対象情報と上昇傾斜角度等の作業機データ29が入力され、ロータリ耕耘装置18の機種等の作業機情報26がケーブル付きのカプラ27で連結されて走行制御装置30に認識され、昇降センサ32で検出される上昇角度が速度規制される上昇傾斜角かどうかを判定される。例えば、上昇角度が40°となると最高走行速度が15km/hに規制される。
【0023】
前記ロータリ耕耘装置18は、耕耘部18aと、耕耘部18aの上方を覆うメインカバー18bと、メインカバー18bの後部に枢着されたリヤカバー18c等を有する。
【0024】
図3は、トラクタ1とロータリ耕耘装置18の制御ブロック図で、ロータリ耕耘装置18の作業機制御部25に前記作業機情報26を持たせてトラクタ1の制御部30とカプラ27で連結することで作業機情報26が制御部30で認識する。
【0025】
制御部30には作業機データ29が記憶され、車速センサ31からトラクタ1の走行速度が入力し、トラクタ1のリフトアーム15の昇降センサ32による上昇角度が入力し、トラクタ1のトランスミッションケース6内の変速装置の変速比が変速センサ33から入力し、エンジンEへの制御信号が出力し、トランスミッションケース6内の変速装置34に変速信号が出力し、フロントパネル20に制御情報28を表示する。制御情報25は、
図2に示す走行速度限界である。
【0026】
自動制御は、次の如く行われる。
【0027】
トラクタ1とロータリ耕耘装置18がカプラ27で連結されると、作業機情報26がトラクタ1の制御部30に入力され、記憶された作業機データ29と照合されて機種が認識され、機種ごとに上昇角度による最高走行速度限界を取り出されてフロントパネル20に制御情報28が表示され、エンジンEと変速装置34が制御されて最高走行速度限界までの速度で走行するように制御される。
【符号の説明】
【0028】
1 走行車体
18 作業機
26 作業機情報
29 作業機データ
30 走行制御装置
32 昇降センサ