IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業車両 図1
  • 特許-作業車両 図2
  • 特許-作業車両 図3
  • 特許-作業車両 図4
  • 特許-作業車両 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/10 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A01B63/10 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019120555
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021006014
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-095313(JP,A)
【文献】特開2017-108687(JP,A)
【文献】特開平11-089312(JP,A)
【文献】特開2017-006023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に装着される作業機を前記走行車体に対して昇降する昇降装置と、
前記昇降装置を制御し、前記作業機を昇降させる制御装置と、
前記走行車体における走行モードを、作業走行モードと路上走行モードとに切り替える走行モード切替スイッチと
前記走行車体の後方に取り付けられた後方表示器と、
前記後方表示器の後方を遮蔽する遮蔽物を検知する遮蔽物検知センサと、
前記作業機の昇降位置を調整する調整スイッチと
を備え、
前記制御装置は
記走行モードが前記路上走行モードである場合に、路上走行が可能であり、かつ前記遮蔽物検知センサによって前記作業機が検知されない所定位置に前記作業機を昇降させ
前記走行モードが前記路上走行モードであり、かつ前記調整スイッチによって前記昇降位置が操作された場合に、前記遮蔽物検知センサによって前記作業機が検知されず、かつ所定下限位置以上となる範囲に前記作業機を昇降させる
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記作業機の種類に応じた前記所定位置を記憶し、
前記走行モードが前記路上走行モードである場合に、前記作業機を前記作業機の種類に応じた前記所定位置に昇降させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
端末装置との間で通信可能であり、
前記端末装置を介して前記走行車体に装着される前記作業機の情報が変更され、前記走行モードが前記路上走行モードである場合に、前記作業機を前記作業機の種類に応じた前記所定位置に昇降させる
ことを特徴とする請求項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体の後方に反射板を設け、走行車体に装着される作業機によって反射板が遮蔽されないように、遮蔽物を検知するセンサを設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-108687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両は、作業機を装着した状態で路上を走行する場合には、作業機の位置を、反射板などを遮蔽しない位置とすることが望ましい。また、作業車両は、作業機を装着した状態で圃場を旋回する場合には、コンパクトな旋回を実行するために、作業機の位置を高い位置まで上昇させることが望ましい。
【0005】
しかしながら、作業者が、作業機の位置を上記適した位置に変更することを忘れて走行するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、走行状態に応じて作業機の位置を適切な位置に変更する作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、走行車体(2)と、前記走行車体(2)に装着される作業機(W)を前記走行車体(2)に対して昇降する昇降装置(12)と、前記昇降装置(12)を制御し、前記作業機(W)を昇降させる制御装置(40)と、前記走行車体(2)における走行モードを、作業走行モードと路上走行モードとに切り替える走行モード切替スイッチ(28)と、前記走行車体(2)の後方に取り付けられた後方表示器(70)と、前記後方表示器(70)の後方を遮蔽する遮蔽物を検知する遮蔽物検知センサ(27)と、前記作業機(W)の昇降位置を調整する調整スイッチ(29)とを備え、前記制御装置(40)は、前記走行モードが前記路上走行モードである場合に、路上走行が可能であり、かつ前記遮蔽物検知センサ(27)によって前記作業機(W)が検知されない所定位置に前記作業機(W)を昇降させ、前記走行モードが前記路上走行モードであり、かつ前記調整スイッチ(29)によって前記昇降位置が操作された場合に、前記遮蔽物検知センサ(27)によって前記作業機(W)が検知されず、かつ所定下限位置以上となる範囲に前記作業機(W)を昇降させる。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様に係る作業車両によれば、走行状態に応じて作業機の位置を適切な位置に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る作業車両の概略左側面図である。
図2図2は、作業機が路上走行位置に保持された一例を示すトラクタの概略左側面図である。
図3図3は、実施形態に係る制御系の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る切替処理を説明するフローチャートである。
図5図5は、実施形態の変形例に係るトラクタの調整スイッチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、図1を参照して実施形態に係る作業車両1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1の説明図であり、作業車両1の概略左側面図である。なお、以下では、作業車両1としてトラクタを例に説明する。
【0012】
作業車両であるトラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクタである。また、トラクタ1は、操縦者(作業者ともいう。)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行する他、後述する制御装置40(図3参照)を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自動走行しながら所定の作業を実行する。
【0013】
また、以下において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクタ1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席8からステアリングホイール9に向かう方向である。
【0014】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、トラクタ1の操縦者が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0015】
上下方向とは、鉛直方向に平行する方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。なお、各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、トラクタ1を指して「機体」という場合がある。
【0016】
図1に示すように、トラクタ1は、走行車体2と、作業機Wとを備える。走行車体2は、車体フレーム3と、前輪4と、後輪5と、ボンネット6と、エンジンEと、操縦部7と、ミッションケース10とを備える。車体フレーム3は、走行車体2のメインフレームである。
【0017】
前輪4は、左右一対であり、主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪5は、左右一対であり、主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。トラクタ1は、後輪5が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪4および後輪5が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されてもよい。この場合、駆動輪は、前輪4および後輪5の両方である。なお、走行車体2は、車輪(前輪4および後輪5)に代えてクローラ装置を備えてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
【0018】
ボンネット6は、走行車体2の前部において開閉自在に設けられる。ボンネット6は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能である。ボンネット6は、閉じた状態で、車体フレーム3上に搭載されたエンジンEを覆う。エンジンEは、トラクタ1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
【0019】
操縦部7は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席8やステアリングホイール9などを備える。操縦部7は、走行車体2の上部に設けられたキャビン7aに覆われることで形成されてもよい。操縦席8は、操縦者の座席である。ステアリングホイール9は、操舵輪である前輪4を操舵する場合に操縦者により操作される。なお、操縦部7は、ステアリングホイール9の前方に、各種情報を表示する表示部(メータパネル)を備える。
【0020】
また、操縦部7は、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバーなどの各種操作レバーや、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどの各種操作ペダルを備える。
【0021】
ミッションケース10は、トランスミッション(変速機構)を収容している。トランスミッションは、エンジンEから伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪である後輪5や、PTO(Power Take-off)軸へ伝達する。
【0022】
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業機Wが連結され、作業機Wを駆動する動力を伝達するPTO軸がミッションケース10から後方へ突出している。PTO軸は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の少なくとも後部に装着された作業機Wへ伝達する。
【0023】
また、走行車体2の後部には、作業機Wを昇降させる昇降装置12が設けられる。昇降装置12は、作業機Wを上昇させることで、作業機Wを非作業位置に移動させる。非作業位置は、例えば、走行車体2が後退する場合や、走行車体2が旋回する場合に、作業機Wを上昇させる位置である。また、昇降装置12は、作業機Wを下降させることで、作業機Wを対地作業位置に移動させる。
【0024】
また、昇降装置12は、作業機Wを路上走行位置(所定位置)に移動させる。路上走行位置は、作業機W毎に設定される位置であり、走行車体2が路上を走行する場合に、作業機Wが路面に当たらない位置であり、かつ作業機Wによって後方表示器70の後方が遮蔽されない位置である。具体的には、路上走行位置は、図2に示すように、路上走行時に作業機Wが路面に当たらない位置であり、かつ後方遮蔽物センサ27(遮蔽物検知センサ)によって作業機Wが検知されない位置である。路上走行位置は、対地作業位置よりも高く、かつ非作業位置よりも低い位置である。図2は、作業機Wが路上走行位置に保持された一例を示すトラクタ1の概略左側面図である。
【0025】
後方表示器70は、走行車体2の後部に取り付けられる。後方表示器70は、ブレーキランプ71や、反射板72や、ナンバープレート73などである。後方遮蔽物センサ27は、後方表示器70の近傍に設けられ、後方表示器70の後方を遮蔽する遮蔽物を検知する。例えば、後方遮蔽物センサ27は、ブレーキランプ71の後方を遮蔽する作業機Wを検知する。後方遮蔽物センサ27は、例えば、赤外線センサである。なお、作業機Wに後方遮蔽物センサ27に対応する感知用プレートを設けてもよい。
【0026】
図1に戻り、昇降装置12は、油圧式の昇降シリンダ121と、リフトアーム122と、リフトロッド123と、ロアリンク124と、トップリンク125とを備える。
【0027】
リフトアーム122は、昇降シリンダ121に作動油が供給されると、回動支点となる軸AXまわりに作業機Wを上昇させるように回動し、昇降シリンダ121から作動油が排出されると、軸AXまわりに作業機Wを下降させるように回動する。なお、リフトアーム122の基部(軸AX付近)には、リフトアーム122の回動角度を検知するリフトアームセンサ26が設けられる。作業機Wの高さは、リフトアームセンサ26の検知結果や、作業機Wに基づいて算出される。
【0028】
また、リフトアーム122は、リフトロッド123を介してロアリンク124に連結される。このように、昇降装置12は、ロアリンク124とトップリンク125とで、走行車体2に対して作業機Wを昇降可能に連結する。
【0029】
作業機Wは、圃場内で作業を行う機械である。図1に示す例では、作業機Wは、圃場において耕耘作業を行うロータリ耕耘機である。ロータリ耕耘機は、PTO軸から伝達された動力によって耕耘爪61が回転することで、圃場面(土壌)を耕耘する。
【0030】
また、トラクタ1は、制御装置40(図3参照)を備える。制御装置40は、エンジンEを制御するとともに、走行車体2の走行速度を制御する。また、制御装置40は、作業機Wを制御する。
【0031】
また、トラクタ1は、測位装置30を備える。測位装置30は、走行車体2の上部に設けられ、走行車体2の位置を測定する。測位装置30は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時を行うことができる。
【0032】
また、トラクタ1は、作業者による情報処理端末(タブレット端末などの携帯端末(端末装置))100の操作によって、特定の圃場における各種作業の設定などを行うことができる。情報処理端末100は、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部と、タッチパネルにより構成される表示部および操作部とを備える。なお、操作部として、各種キーやボタンなどが別に設けられてもよい。
【0033】
また、トラクタ1は、障害物センサ20を備える。障害物センサ20は、前方センサ21と、後方センサ22とを備える。前方センサ21は、たとえば、ボンネット6の前方に設けられたセンサ取付ステー13に取り付けられるなど、走行車体2の前部に配置され、走行車体2の前方に存在する障害物(人や、物体)を検知する。
【0034】
後方センサ22は、たとえば、キャビン7aの上部に取り付けられるなど、走行車体2の後部上側に配置され、走行車体2の後方に存在する障害物を検知する。
【0035】
また、前方センサ21および後方センサ22は共に、中距離センサであり、好ましくは赤外線センサである。前方センサ21および後方センサ22は、赤外線ビームを放射し、障害物からの反射光を検知する。前方センサ21は、前方に延びる検知領域を有する。また、後方センサ22は、後方へ延びる検知領域を有する。
【0036】
前方センサ21および後方センサ22は、たとえば、赤外線ビームを放射した後、障害物からの反射光を検知するまでの時間を測定することで、障害物までの距離を検知することができる。赤外線センサである前方センサ21および後方センサ22は、障害物を2次元的に検知し、たとえば、数メートルから数10メートル程度の検知領域である。なお、障害物センサ20として、赤外線センサ以外の他の中距離センサを用いることも可能である。
【0037】
次に、図3を参照して制御装置40を中心とする作業車両(トラクタ)1の制御系について説明する。図3は、実施形態に係る制御系の一例を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置40は、エンジンECU(Electronic Control Unit)41と、走行系ECU42と、作業機昇降系ECU43とを備える。エンジンECU41は、エンジンEの回転数を制御する。走行系ECU42は、駆動輪の回転を制御することで、走行車体2(図1参照)の走行速度を制御する。作業機昇降系ECU43は、昇降装置12を制御して作業機Wを昇降制御する。
【0038】
制御装置40は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部をはじめ、各種プログラムや圃場ごとに予め設定された走行車体2の予定走行経路などの必要なデータ類が記憶される記憶部などを備える。
【0039】
図3に示すように、制御装置40には、測位装置(GNSS)30、エンジン回転センサ23、車速センサ24、切れ角センサ25、障害物センサ20(前方センサ21および後方センサ22)、リフトアームセンサ26、後方遮蔽物センサ27などの各種センサ類が接続される。なお、エンジン回転センサ23は、エンジンEの回転数を検知する。車速センサ24は、走行車体2(図1参照)の走行速度(車速)を検知する。切れ角センサ25は、操舵輪である前輪4(図1参照)の切れ角を検知する。切れ角センサ25は、機体の旋回を検知する。
【0040】
また、制御装置40には、走行モード切替スイッチ28が接続される。走行モード切替スイッチ28は、走行モードを、作業走行モード、または路上走行モードに切り替えるスイッチであり、作業者によって操作される。
【0041】
制御装置40には、測位装置30から圃場などにおける走行車体2の位置情報、エンジン回転センサ23からエンジンEの回転数、車速センサ24から走行車体2の走行速度、切れ角センサ25から前輪4の切れ角がそれぞれ入力される。制御装置40は、トラクタ1を自律走行させる場合、切れ角センサ25の検知結果を用いて、前輪4の切れ角をフィードバックしながらステアリングホイール9に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングホイール9を自動操舵する。
【0042】
また、制御装置40には、エンジンECU41がエンジンEに接続され、走行系ECU42が、操舵装置51、変速装置52および制動装置53などに接続され、作業機昇降系ECU43が昇降装置12に接続される。
【0043】
このうち、作業機昇降系ECU43は、昇降装置12に向けて作業機昇降信号を出力する。昇降装置12は、作業機昇降系ECU43から出力された作業機昇降信号に基づいて作業機Wを昇降駆動する。
【0044】
また、作業機昇降系ECU43は、走行モード切替スイッチ28の操作、すなわち、走行モード切替スイッチ28によって切り替えられる走行モードに基づいて作業機Wを昇降させる。
【0045】
作業機昇降系ECU43は、走行モードが作業走行モードである場合には、作業機Wを非作業位置、または対地作業位置とし、非作業位置と対地作業位置との間で作業機Wを昇降させる。
【0046】
また、作業機昇降系ECU43は、走行モードが路上走行モードである場合には、作業機Wを路上走行位置とし、作業機Wを路上走行位置に保持する。具体的には、作業機昇降系ECU43は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替えられると、非作業位置、または対地作業位置から路上走行位置に作業機Wを昇降し、路上走行位置に保持する。
【0047】
このように、作業機昇降系ECU43は、走行モード切替スイッチ28が路上走行モードに切り替えられた場合には、作業機Wを昇降させて、作業機Wを路上走行位置に保持する。
【0048】
また、作業機昇降系ECU43は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替えられ、作業機Wの位置が路上走行位置となる前に、走行車体2の走行が開始された場合には、走行車体2の走行を開始する前に、警報器(不図示)を作動させて、作業機Wが路上走行位置になっていないことを報知する。また、音声ガイドによって、作業機Wが路上走行位置になっていないことを報知してもよい。なお、警報器による報知と、音声ガイドによる報知とを、作業者によって切り替え可能であってもよい。
【0049】
また、走行系ECU42は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替えられ、作業機Wの位置が路上走行位置となっていない場合には、走行車体2の走行を禁止してもよい。また、このような走行車体2の走行の禁止は、作業者の設定により、切り替え可能であってもよい。
【0050】
また、制御装置40は、トラクタ1が自律走行しつつ作業を行うモードである「自動運転モード」を有する。制御装置40は、自動運転モードにおいては、作業機Wによる作業内容に応じた予定走行経路が予め圃場ごとに定められ、データ化されて記憶部に記憶され、測位装置30の測定結果に基づいて、記憶された予定走行経路に沿って走行するように、エンジンE、操舵装置51、変速装置52、制動装置53および昇降装置12などの各部を制御する。なお、予定走行経路は、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、さらには作物の種類などに応じて設定される。
【0051】
また、制御装置40は、たとえば、作業者が携行可能な情報処理端末100と無線接続される。制御装置40は、作業者の操作による情報処理端末100からの指示信号に基づいてトラクタ1の各部を制御する。また、制御装置40は、トラクタ1の機体情報データベースを保持し、型式などの情報の受け渡しを情報処理端末100などからも行うことができるように構成してもよい。
【0052】
また、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、走行車体2を停止させる。また、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、エンジンEを停止させたり、PTO軸への回転動力の伝達を中止させたりする。また、制御装置40は、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、警報器(不図示)を作動させて、障害物が検知されたことを報知してもよい。
【0053】
制御装置40は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替えられた場合には、作業機Wを昇降させて、作業機Wの位置を路上走行位置とする。
【0054】
作業機Wが対地作業位置にある場合には、制御装置40は、作業機Wを対地作業位置から上昇させる。制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されるまで作業機Wを上昇させる。そして、制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知された位置よりも所定高さ低くした位置を路上走行位置として設定する。制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって遮蔽物を検出しない位置を路上走行位置として設定する。制御装置40は、作業機Wを路上走行位置まで降下させ、作業機Wを路上走行位置に保持する。
【0055】
また、作業機Wが非作業位置にある場合には、制御装置40は、作業機Wを非作業位置から降下させる。制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが一旦検知された後に、作業機Wが検知されなくなるまで、作業機Wを降下させる。そして、制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されなくなる位置を路上走行位置として設定し、作業機Wを路上走行位置に保持する。
【0056】
このように、制御装置40は、走行モードが路上走行モードである場合には、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されない位置に作業機Wを昇降させる。
【0057】
次に、走行モードが、作業走行モードから路上走行モードに切り替えられた場合の切替処理について図4を参照し説明する。図4は、実施形態に係る切替処理を説明するフローチャートである。
【0058】
制御装置40は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替わったか否かを判定する。具体的には、制御装置40は、走行モード切替スイッチ28が操作され、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替わったか否かを判定する(S100)。
【0059】
制御装置40は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替わっていない場合(S100:No)、すなわち、走行モードが作業走行モードである場合には、今回の処理を終了する。
【0060】
制御装置40は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替わった場合には(S100:Yes)、作業機Wが対地作業位置にあるか否かを判定する(S101)。
【0061】
制御装置40は、作業機Wが対地作業位置にある場合には(S101:Yes)、作業機Wを上昇させる(S102)。制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知された否かを判定する(S103)。
【0062】
制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されない場合には(S103:No)、作業機Wの上昇を継続する(S102)。
【0063】
制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知された場合には(S103:Yes)、作業機Wが検知された位置よりも所定高さ低い位置を路上走行位置に設定する(S104)。
【0064】
制御装置40は、設定した路上走行位置まで作業機Wを降下させて、作業機Wを路上走行位置に保持する(S105)。
【0065】
制御装置40は、作業機Wが対地作業位置ではない場合(S101:No)、すなわち作業機Wが非作業位置にある場合には、作業機Wを降下させる(S106)。
【0066】
制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知された後に、作業機Wが検知されなくなったか否かを判定する(S107)。
【0067】
制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されている場合には(S107:Yes)、作業機Wの降下を継続する(S106)。
【0068】
制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されない場合には(S107:No)、作業機Wが検知されなくなった位置を路上走行位置に設定し(S108)、作業機Wを路上走行位置に保持する(S109)。
【0069】
次に、実施形態に係るトラクタ1の効果について説明する。
【0070】
トラクタ1は、走行車体2と、作業機Wを走行車体2に対して昇降する昇降装置12と、昇降装置12を制御し、作業機Wを昇降させる制御装置40と、走行モードを作業走行モードと路上走行モードとに切り替える走行モード切替スイッチ28とを備える。制御装置40は、走行モードが路上走行モードである場合に、作業機Wを路上走行位置に昇降させる。
【0071】
これにより、トラクタ1は、走行モードが路上走行モードとなった場合に、作業機Wを路上走行位置に自動的に昇降する。そのため、作業者が作業機Wを路上走行に適した位置に変更することを忘れて路上走行が行われることを抑制することができる。すなわち、トラクタ1は、走行車体2の走行状態に応じて作業機Wを適切な位置に変更することができる。また、作業者は、走行モードを路上走行モードとするだけでよく、作業機Wを路上走行に適した位置に容易に変更し、保持することができる。
【0072】
また、トラクタ1は、走行車体2の後方に取り付けられた後方表示器70の後方を遮蔽する遮蔽物(作業機W)を検知する後方遮蔽物センサ27を備える。制御装置40は、走行モードが路上走行モードである場合に、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されない位置を路上走行位置として設定し、路上走行位置に作業機Wを昇降させる。
【0073】
これにより、トラクタ1は、作業機Wによって後方表示器70の後方が遮蔽されない路上走行位置に作業機Wを昇降し、保持することができる。そのため、トラクタ1は、路上走行時に、後方表示器70の後方が作業機Wによって遮蔽されることを抑制し、トラクタ1の安全性を向上させることができる。
【0074】
変形例に係るトラクタ1は、作業機Wの種類に応じた路上走行位置を記憶してもよい。変形例に係るトラクタ1は、作業機Wの種類と、路上走行位置とを紐付けて記憶する。そして、トラクタ1は、走行モードが路上走行モードに設定された場合に、走行車体2に装着された作業機Wの種類に応じて、路上走行位置を読み出し、作業機Wを路上走行位置に昇降させる。
【0075】
これにより、変形例に係るトラクタ1は、走行モードが路上走行モードに切り替えた場合に、作業機Wを容易に路上走行位置に昇降させて、路上走行を早期に開始することができる。
【0076】
なお、変形例に係るトラクタ1では、情報処理端末100を介して作業機Wの情報が変更された場合に、作業機Wの種類に応じて路上走行位置を変更してもよい。路上走行位置は、情報処理端末100に記憶されてもよい。この場合、作業機Wの種類に応じた路上走行位置の情報が、情報処理端末100から制御装置40に送信される。
【0077】
これにより、変形例に係るトラクタ1は、情報処理端末100を介して、作業機Wを容易に路上走行位置に昇降させて、路上走行を早期に開始することができる。
【0078】
また、変形例に係るトラクタ1は、図5に示すように、路上走行位置を変更可能な調整スイッチ29を設けてもよい。図5は、実施形態の変形例に係るトラクタ1の調整スイッチ29を示す図である。調整スイッチ29は、作業者の操作に応じて路上走行位置を変更するスイッチである。すなわち、調整スイッチ29は、路上走行モードにおける作業機Wの昇降位置を調整するスイッチである。調整スイッチ29は、操縦部7(図1参照)に設けられる。
【0079】
制御装置40(図3参照)は、調整スイッチ29の操作に応じて路上走行位置を調整する。制御装置40は、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知されない範囲であり、かつ所定下限位置以上となる範囲に路上走行位置を調整する。所定下限位置は、路上走行する場合に、作業機Wが路上に当たらない下限位置である。所定下限位置は、予め設定される。
【0080】
これにより、変形例に係るトラクタ1は、走行モードが路上走行モードである場合の作業機Wの高さを、作業者によって調整することができる。
【0081】
また、変形例に係るトラクタ1は、走行モードが作業走行モードから路上走行モードに切り替えられ、作業機Wを対地作業位置から上昇する場合に、後方遮蔽物センサ27によって作業機Wが検知された位置を路上走行位置として設定し、作業機Wを路上走行位置に保持してもよい。
【0082】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 トラクタ(作業車両)
2 走行車体
12 昇降装置
27 後方遮蔽物センサ(遮蔽物検知センサ)
28 走行モード切替スイッチ
29 調整スイッチ
40 制御装置
43 作業機昇降系ECU
70 後方表示器
100 情報処理端末(端末装置)
W 作業機
図1
図2
図3
図4
図5