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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】燃料電池車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04029 20160101AFI20221220BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20221220BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221220BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20221220BHJP
   B60L 58/31 20190101ALI20221220BHJP
   B60L 58/34 20190101ALI20221220BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20221220BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221220BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20221220BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/04858
H01M8/00 Z
B60L50/75
B60L58/31
B60L58/34
H01M8/04225
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019145194
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021026935
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正也
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-014185(JP,A)
【文献】特開2001-143736(JP,A)
【文献】特開2008-166041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0298296(US,A1)
【文献】特開2010-129361(JP,A)
【文献】特開2006-179198(JP,A)
【文献】特開2011-068232(JP,A)
【文献】特開2009-289563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用電源としての燃料電池を搭載した燃料電池車両であって、
前記燃料電池に接続された冷媒流路と、
前記冷媒流路に冷媒を流通させる第1ポンプと、
前記冷媒を加熱するヒータと、
前記ヒータおよび前記第1ポンプと電気的に接続され、前記燃料電池車両の外部に設けられた外部電源と電気的に接続するための接続部と、
前記冷媒を冷却するラジエータと、
を備え、
前記ヒータおよび前記第1ポンプは、前記接続部を介して接続された前記外部電源からの電力供給を受けて駆動され
前記冷媒流路は、
前記燃料電池と前記ラジエータとの間で前記冷媒を循環させるメイン流路と、
前記メイン流路に両端が接続されて、前記ラジエータを迂回するように前記冷媒を流すと共に、前記ヒータおよび前記第1ポンプが設けられたバイパス流路と、
を備え、
前記第1ポンプおよび前記ヒータは、前記冷媒流路に設けられた着脱部を介して前記冷媒流路に備えられ、
前記着脱部は、前記メイン流路から前記バイパス流路が分岐する分岐部に設けられる
燃料電池車両。
【請求項2】
請求項に記載の燃料電池車両であって、
前記着脱部は、前記メイン流路と前記バイパス流路との間で前記冷媒の流れを切り替える切替弁に備えられている
燃料電池車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池車両であって、さらに、
充放電可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置と前記燃料電池とのうちの少なくとも一方から電力供給されて、前記冷媒流路に前記冷媒を流通させる第2ポンプと、
を備え、
前記外部電源は、前記第2ポンプの作動電圧よりも出力電圧が低い
燃料電池車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池車両であって、
前記外部電源は、商用電源である
燃料電池車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を、氷点下などの低温環境下で始動する方法として、燃料電池スタックの冷媒入口部に外部電源で作動するヒータを設けて、低温始動時に、当該ヒータを用いて燃料電池を加熱する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、冷媒流路に設けた冷媒ポンプを停止した状態でヒータによる加熱を行なうことにより、ヒータ周りの冷媒を効率良く加熱すること、および、冷媒ポンプを駆動することにより、ヒータで加熱した冷媒を燃料電池に供給すること、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-143070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低温始動時に冷媒ポンプを駆動するために、車載されたバッテリの電力を用いる場合には、バッテリの残存容量(SOC)によっては、冷媒ポンプを駆動するための電力が不足して、加熱した冷媒を燃料電池に行き渡らせることができず、燃料電池の昇温が不十分になる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、駆動用電源としての燃料電池を搭載した燃料電池車両が提供される。この燃料電池車両は、前記燃料電池に接続された冷媒流路と、前記冷媒流路に冷媒を流通させる第1ポンプと、前記冷媒を加熱するヒータと、前記ヒータおよび前記第1ポンプと電気的に接続され、前記燃料電池車両の外部に設けられた外部電源と電気的に接続するための接続部と、を備え、前記ヒータおよび前記第1ポンプは、前記接続部を介して接続された前記外部電源からの電力供給を受けて駆動される。
この形態の燃料電池車両によれば、低温環境下における燃料電池車両の始動に先立って、外部電源を用いてヒータおよび第1ポンプを駆動して冷媒を加熱することにより、燃料電池を加熱することができる。そのため、低温始動時に燃料電池を速やかに昇温させることができる。
(2)上記形態の燃料電池車両において、前記第1ポンプおよび前記ヒータは、前記冷媒流路に設けられた着脱部を介して前記冷媒流路に備えられていることとしてもよい。この形態の燃料電池車両によれば、燃料電池車両において、ヒータおよび第1ポンプを備える寒冷地仕様を設定し、寒冷地仕様を含む複数のグレードの車両を用意することが容易になる。
(3)上記形態の燃料電池車両は、さらに、前記冷媒を冷却するラジエータを備え、前記冷媒流路は、前記燃料電池と前記ラジエータとの間で前記冷媒を循環させるメイン流路と、前記メイン流路に両端が接続されて、前記ラジエータを迂回するように前記冷媒を流すと共に、前記ヒータおよび前記第1ポンプが設けられたバイパス流路と、を備え、前記着脱部は、前記メイン流路から前記バイパス流路が分岐する分岐部に設けられることとしてもよい。この形態の燃料電池車両によれば、ヒータおよび第1ポンプをバイパス流路に設けるため、ヒータを用いて冷媒を加熱する際には、ラジエータを迂回させて冷媒を流すことができ、ヒータを用いて冷媒を加熱する効率を高めることができる。また、燃料電池の発電時に第2ポンプを駆動するときには、バイパス流路における冷媒の流通を抑えてメイン流路に冷媒を流すことで、第1ポンプが流路抵抗となることを抑え、第2ポンプの消費電力の増加を抑えることができる。
(4)上記形態の燃料電池車両において、前記着脱部は、前記メイン流路と前記バイパス流路との間で前記冷媒の流れを切り替える切替弁に備えられていることとしてもよい。この形態の燃料電池車両によれば、ヒータおよび第1ポンプを、バイパス流路ごと、メイン流路から容易に着脱することができる。
(5)上記形態の燃料電池車両は、さらに、充放電可能な蓄電装置と、前記蓄電装置と前記燃料電池とのうちの少なくとも一方から電力供給されて、前記冷媒流路に前記冷媒を流通させる第2ポンプと、を備え、前記外部電源は、前記第2ポンプの作動電圧よりも出力電圧が低いこととしてもよい。この形態の燃料電池車両によれば、外部電源と接続部とを接続するための配線における電圧を抑え、外部電源の消費電力を抑えつつ、第1ポンプを用いて冷媒流路に冷媒を流すことができる。
(6)上記形態の燃料電池車両において、前記外部電源は、商用電源であることとしてもよい。この形態の燃料電池車両によれば、ヒータおよび第1ポンプの電源の確保が容易になる。
本発明は、燃料電池車両以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料電池車両における暖機運転の補助方法、燃料電池車両の制御方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】燃料電池車両の概略構成を模式的に示す説明図。
図2】暖機運転の補助方法を実行する際に各部が行なう動作を表わす工程図。
図3】燃料電池システムの始動時に燃料電池が昇温する様子を表わす説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.燃料電池車両の全体構成:
図1は、本発明の一実施形態としての燃料電池車両100の概略構成を模式的に示す説明図である。燃料電池車両100は、駆動用電源である燃料電池システム15と、車体110に設けられた車両側接続部120と、蓄電装置660と、を備える。燃料電池システム15は、燃料電池車両100に搭載された図示しない駆動モータで用いる電力を発生するための装置である。燃料電池システム15は、燃料電池600と、燃料ガス供給系200と、酸化ガス供給系300と、排ガス系400と、冷却系500と、制御部650と、を備える。後述する燃料ガス供給系200、酸化ガス供給系300、および排ガス系400の構成は一例であり、燃料電池600に対して燃料ガスおよび酸化ガスを供給可能であればよい。
【0009】
燃料電池600は、単セルが複数積層されたスタック構成を有しており、水素を含有する燃料ガスと、酸素を含有する酸化ガスの供給を受けて発電する。本実施形態の燃料電池600は、固体高分子形燃料電池である。燃料電池600を構成する各単セルでは、電解質膜を間に介して、アノード側に燃料ガスが流れる流路(アノード側流路)が形成され、カソード側に酸化ガスが流れる流路(カソード側流路)が形成されている。また、燃料電池600の内部には、燃料電池600を冷却するための冷媒が流れる冷媒流路が形成されている。なお、燃料電池600としては、固体高分子形燃料電池に限らず、固体酸化物形燃料電池等、他種の燃料電池を採用してもよい。
【0010】
燃料ガス供給系200は、燃料ガスタンク210と、燃料ガス供給管220と、燃料ガス還流管230と、水素ポンプ290と、を備える。燃料ガスタンク210は、燃料ガスとしての水素ガスが貯蔵される貯蔵装置であり、燃料ガス供給管220を介して燃料電池600に接続されている。なお、燃料ガスタンク210から燃料電池600へ供給される燃料ガスの流量は、燃料ガス供給管220に設けられた図示しない制御弁によって調節される。
【0011】
燃料ガス還流管230は、燃料電池600と燃料ガス供給管220とに接続され、燃料電池600から排出されたアノード排ガスを燃料ガス供給管220に循環させる。燃料ガス還流管230には、流路内で燃料ガスを循環させるための駆動力を発生して燃料ガスの流量を調節するために、既述した水素ポンプ290が設けられている。
【0012】
燃料ガス還流管230は、後述するパージ弁440を介して後述する燃料ガス排出管430に接続されている。アノード排ガスには、発電で消費されなかった水素と共に、窒素や水蒸気等の不純物が含まれる。パージ弁が開弁されることにより、上記不純物を含むアノード排ガスが、燃料ガス還流管230から燃料ガス排出管430へと排出される。
【0013】
酸化ガス供給系300は、エアコンプレッサ320と、酸化ガス供給管330と、を備える。本実施形態の燃料電池600は、酸化ガスとして、空気を用いる。エアコンプレッサ320は、燃料電池システム15の外部から取り込んだ空気を圧縮し、酸化ガス供給管330を介して、燃料電池600のカソード側流路に空気を供給する。
【0014】
排ガス系400は、排ガス管410と、燃料ガス排出管430と、パージ弁440と、を備える。排ガス管410は、燃料電池600からカソード排ガスが排出される流路である。燃料ガス排出管430は、既述したように、一端がパージ弁440を介して燃料ガス還流管230に接続されており、他端が排ガス管410に接続されている。これにより、パージ弁440を介して燃料ガス還流管230から排出されるアノード排ガス中の水素は、大気放出に先立ってカソード排ガスにより希釈される。
【0015】
冷却系500は、冷媒供給管515と、冷媒排出管510と、冷媒バイパス管550と、第1ポンプ520と、第2ポンプ525と、ラジエータ530と、ヒータ540と、切替弁560,565と、を備える。冷媒供給管515は、燃料電池600に冷媒を供給するための管である。冷媒排出管510は、燃料電池600から冷媒を排出するための管である。冷媒供給管515および冷媒排出管510は、「メイン流路」とも呼ぶ。冷媒排出管510の下流部と冷媒供給管515の上流部の間には、冷媒を冷却するためのラジエータ530が設けられている。ラジエータ530には、ラジエータ530からの放熱を促進するラジエータファン535が設けられている。冷媒排出管510には、冷媒排出管510に冷媒を流通させる第2ポンプ525が配置されている。第2ポンプ525は、燃料電池600が発電する際に、冷媒排出管510内を流れる冷媒の流量を調節する。
【0016】
冷媒バイパス管550は、メイン流路に両端が接続されている。すなわち、冷媒バイパス管550は、一方の端部が冷媒供給管515に接続されており、他方の端部が冷媒排出管510に接続されている。冷媒バイパス管550には、冷媒バイパス管550に冷媒を流通させる第1ポンプ520と、冷媒バイパス管550内を流れる冷媒を加熱するためのヒータ540とが設けられている。第1ポンプ520およびヒータ540は、後述するように、低温環境下で燃料電池車両100を始動する際に、燃料電池600の温度を予め高めるために用いられる。本実施形態では、第1ポンプ520は、第2ポンプ525に比べて駆動電圧が低く、駆動時の冷媒流量が少ない。ヒータ540は、電力供給を受けて発熱する装置であればよく、例えば、電熱ヒータとすることができる。ヒータ540は、冷媒バイパス管550に巻き付けて用いるリボンヒータとしてもよい。冷媒バイパス管550は、「バイパス流路」とも呼ぶ。
【0017】
冷媒排出管510から冷媒バイパス管550が分岐する分岐部には、切替弁560が配置されており、冷媒供給管515から冷媒バイパス管550が分岐する分岐部には、切替弁565が配置されている。切替弁560,565は、冷媒供給管515および冷媒排出管510を備えるメイン流路と、バイパス流路との間で、冷媒の流れを切り替える。すなわち、切替弁560,565により、冷媒がラジエータ530を経由して流れる状態と、冷媒がラジエータ530を経由することなくバイパス流路を流れる状態とを、切り替えることができる。また、切替弁560,565により、ラジエータ530を経由する冷媒流量と、バイパス流路を流れる冷媒流量と、の比率を変更することができる。
【0018】
切替弁560,565は、冷媒流路に対して第1ポンプ520およびヒータ540を着脱するための「着脱部」を備える。すなわち、第1ポンプ520およびヒータ540は、切替弁560,565において冷媒バイパス管550をメイン流路から着脱することにより、冷媒バイパス管550ごと、容易に着脱することができる。したがって、第1ポンプ520およびヒータ540は、冷媒バイパス管550ごと、後付け可能になっている。
【0019】
冷却系500が備える冷媒としては、例えば、エチレングリコールと水との混合液(不凍液)を用いることができる。
【0020】
制御部650は、マイクロコンピュータによって構成されており、CPUと、ROMと、RAMと、入出力ポートと、を有する。制御部650は、燃料電池システム15の発電制御を行なうと共に、燃料電池車両100全体の制御を行なう。制御部650は、燃料電池車両100の各部に設けられたセンサからの出力信号を取得する。このようなセンサとしては、例えば、燃料電池システム15の各部に設けたセンサ、アクセル開度センサ、ブレーキペダルセンサ、シフトポジションセンサ、および車速センサ等が挙げられる。そして、制御部650は、燃料電池車両における発電や走行等に係る各部に駆動信号を出力する。具体的には、制御部650は、例えば、エアコンプレッサ320や、水素ポンプ290および第2ポンプ525等のポンプ類や、各種バルブ等に駆動信号を出力する。なお、上記した機能を果たす制御部650は、単一の制御部として構成される必要はない。例えば、燃料電池システム15の動作に係る制御部や、燃料電池車両100の走行に係る制御部や、走行に関わらない車両補機の制御を行なう制御部など、複数の制御部によって構成し、これら複数の制御部間で、必要な情報をやり取りすることとしても良い。
【0021】
車両側接続部120は、ヒータ540および第1ポンプ520と電気的に接続されており、後述する外部電源700と電気的に接続するための構造である。車両側接続部120とヒータ540との間は、配線130により接続されており、車両側接続部120と第1ポンプ520との間は、配線140により接続されている。車両側接続部120は、単に「接続部」とも呼ぶ。
【0022】
蓄電装置660は、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池とすることができる。蓄電装置660は、二次電池以外の充放電可能な装置であってもよく、例えば、キャパシタとすることができる。燃料電池車両100の図示しない駆動モータ、エアコンプレッサ320や水素ポンプ290や第2ポンプ525を含む燃料電池補機、および、燃料電池600の発電に関わらない車両補機等は、燃料電池600と蓄電装置660とのうちの少なくとも一方から電力を供給される。
【0023】
B.システム停止時の動作:
本実施形態のヒータ540および第1ポンプ520は、低温環境下で燃料電池車両100を始動する際に、燃料電池600の温度を予め高めて、その後の暖機運転を補助し、燃料電池600を速やかに昇温させるために設けられている。なお、燃料電池600の暖機運転とは、燃料電池600に供給する酸素量を抑える等の方法により、通常運転時に比べて低効率で発電を行なわせて、燃料電池600で生じるエネルギ中の熱エネルギの割合を高めた運転状態を指す。
【0024】
図2は、本実施形態の燃料電池車両100で実行される、燃料電池600の暖機運転の補助方法を実行する際に各部が行なう一連の動作を表わす工程図である。図2に示す暖機運転の補助方法は、燃料電池車両100においてスタートスイッチがオフにされて、燃料電池システム15が停止されるときに開始される。本実施形態の燃料電池車両100では、燃料電池システム15が停止されるときには、冷媒がバイパス流路のみを流れるように、制御部650によって切替弁560,565が切り替えられて、システムが停止される(工程T100)。冷媒流路を流れる冷媒の一部がラジエータ530を流れることとしてもよいが、燃料電池600の温度をより高くする観点からは、冷媒の全量が冷媒バイパス管550を流れるように、切替弁560,565を切り替えることが望ましい。その後、燃料電池車両100の車両側接続部120と外部電源700とを接続する動作が、車両の使用者等により行なわれる(工程T110)。
【0025】
本実施形態では、外部電源700として、商用電源(例えば、交流の100V電源)を用いている。外部電源700には、外部電源700と車両側接続部120とを接続するための配線であるケーブル710が設けられている。ケーブル710の先端には、電源側接続部720が設けられている。工程T110では、電源側接続部720と車両側接続部120とが接続される。電源側接続部720と車両側接続部120とは、例えば、一方をプラグにより構成し、他方をレセプタクルにより構成すればよい。また、図1では、外部電源700がケーブル710を備えることとしたが、燃料電池車両100側にケーブル710を設けてもよい。あるいは、燃料電池車両100および外部電源700とは別体で用意したケーブル710を用いて、車両側接続部120と外部電源700とを接続してもよい。
【0026】
燃料電池システム15の停止時には、例えば、制御部650は、図示しない外気温センサから外気温を取得して、予め定めた基準温度よりも外気温が低いときには、車両側接続部120と外部電源700とを接続する動作を実行するように、車両の使用者に報知することとしてもよい。上記した報知は、報知内容を認識可能な態様で行なえばよく、例えば、燃料電池車両100の使用者が視認可能な表示を行なう装置を用いることができる。また、視認可能な表示に代えて、あるいは視認可能な表示に加えて、音声による報知を行なう装置を用いてもよい。
【0027】
上記のように車両側接続部120と外部電源700とを接続すると、車両側接続部120を介して、外部電源700から、ヒータ540および第1ポンプ520に電力供給されて、ヒータ540および第1ポンプ520が駆動される(工程T120)。これにより、冷媒バイパス管550を流れる冷媒がヒータ540によって加熱されると共に、冷媒バイパス管550と燃料電池600との間で冷媒が循環する。その結果、加熱された冷媒によって燃料電池600が温められる。第1ポンプ520を用いて冷媒を循環させることにより、冷媒流路における燃料電池600から離間した位置にヒータ540が設けられていても、ヒータ540における発熱を利用して燃料電池600を加熱することができる。本実施形態の燃料電池車両100では、外部電源700に接続することにより、燃料電池システム15の停止中、継続して、上記のような加熱が行なわれる。
【0028】
その後、燃料電池車両100の使用者が、車両の使用を開始するときには、使用者等により、車両側接続部120と外部電源700との接続が解除される(工程T130)。すなわち、車両側接続部120から電源側接続部720が取り外される。その結果、外部電源700から、ヒータ540および第1ポンプ520に対する電力供給が遮断されて、ヒータ540および第1ポンプ520が停止する(工程T140)。これにより、燃料電池600の暖機運転の補助方法を実行する際に行なわれる一連の動作が終了する。本実施形態の燃料電池車両100では、その後、燃料電池600の温度や外気温等に応じて、暖機運転が行なわれる。
【0029】
以上のように構成された本実施形態の燃料電池車両100によれば、氷点下などの低温環境下における燃料電池600の始動に先立って、外部電源700を用いてヒータ540および第1ポンプ520を駆動して冷媒を加熱することにより、燃料電池600を加熱している。すなわち、ヒータ540を駆動することによって冷媒を昇温させ、第1ポンプ520を駆動することによって昇温した冷媒を燃料電池600内に流して、燃料電池600を加熱している。このとき、外部電源700を用いるため、燃料電池システム15の停止中であっても、燃料電池車両100が搭載する蓄電装置660のSOC(残存容量)にかかわらず、ヒータ540による冷媒の加熱および第1ポンプ520による冷媒の循環を行なうことができる。そして、低温環境下であっても、停止中の燃料電池600の温度を、より高く保つことが可能になる。そのため、次回にスタートスイッチがオンになったときには、低温環境下であっても、燃料電池600を速やかに昇温させて、燃料電池システム15を支障無く起動させることができる。また、燃料電池600の温度を保つために蓄電装置660の電力を消費する必要がないため、低温環境下でスタートスイッチがオンになって燃料電池システム15の暖機運転を行なう際に、蓄電装置660の電力不足を抑えることができる。そのため、蓄電装置660のSOC不足に起因して暖機運転が滞ることを抑制し、燃料電池600を速やかに昇温させることができる。
【0030】
図3は、燃料電池システムの始動時に燃料電池が昇温する様子を表わす説明図である。図3では、実施形態として、ヒータ540および第1ポンプ520を用いて燃料電池600の温度を予め高める動作を行なった場合の昇温の様子と共に、比較例として、ヒータ540および第1ポンプ520を用いない場合の昇温の様子を示している。図3では、横軸は時間を示しており、縦軸は燃料電池温度を示している。図3では、燃料電池車両100のスタートスイッチがオンになる時間を、時間t0として示している。
【0031】
図3に実施形態として示すように、燃料電池システム15の停止中にヒータ540および第1ポンプ520を駆動する場合には、始動のタイミングである時間t0において、燃料電池温度は、外気温よりも温度Taだけ高い温度である温度T1となっている。例えば、外気温が-30℃程度のような極低温環境下であっても、燃料電池システム15の停止中に、冷媒温度を、0℃により近い比較的高い温度に保つことができる。そのため、スタートスイッチがオンになって燃料電池600の暖機運転が開始されると、燃料電池600は速やかに昇温して、時間T1において0℃以上となり、支障無く暖機運転を終了して、負荷要求に応じて燃料電池600が発電する通常発電を開始することが可能になる。
【0032】
これに対して、図3に比較例として示すように、燃料電池システム15の停止中にヒータ540および第1ポンプ520を駆動しない場合には、始動のタイミングである時間t0において、燃料電池温度は、外気温と同等の温度となっている。このような状態でスタートスイッチがオンになって燃料電池600の暖機運転が開始されると、暖機運転によって燃料電池600内部が発熱しても、燃料電池600を昇温させるためには、より長い時間を要することになる。例えば、時間T1が経過しても、燃料電池600の温度は0℃を超えることができない。このように、燃料電池600の昇温のために、より長い時間を要する場合には、暖機運転に伴って燃料電池補機が電力消費することにより、蓄電装置660のSOCが低下して、暖機運転の進行が抑制される可能性がある。本実施形態では、図3に示すように暖機運転時の冷媒温度を高めることにより、暖機運転を補助して、燃料電池600を速やかに昇温させることができる。
【0033】
また、本実施形態の燃料電池車両100によれば、ヒータ540および第1ポンプ520を、着脱部を備える切替弁560,565において容易に着脱可能となっている。そのため、燃料電池車両において、ヒータ540および第1ポンプ520を備える寒冷地仕様を設定し、寒冷地仕様を含む複数のグレードの車両を用意することが容易になる。例えば、ヒータ540および第1ポンプ520を備える冷媒バイパス管550と、ヒータ540および第1ポンプ520を有しない冷媒バイパス管550とを用意して、カスタマーが要求する仕様に応じて、いずれかの冷媒バイパス管を適宜選択してメイン流路に接続すればよい。具体的には、低温環境下における始動を考慮する必要の無い標準仕様の車両においては、切替弁560,565において、ヒータ540および第1ポンプ520を有しない冷媒バイパス管を接続すればよい。これにより、寒冷地で使用する予定の無い車両には、不要なヒータ540および第1ポンプ520を設けないため、製造コストを抑えることができる。また、寒冷地で使用する予定の車両には、暖機運転の補助のための機能を容易に加えることができる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、ヒータ540および第1ポンプ520を冷媒バイパス管550に設けるため、ヒータ540を用いて冷媒を加熱する際には、ラジエータ530を迂回させて冷媒を流すことができる。そのため、ヒータ540で加熱した冷媒がラジエータ530で冷却されることを抑え、システム停止中に冷媒を加熱する効率を高めることができる。また、ヒータ540および第1ポンプ520を冷媒バイパス管550に設けるため、制御部650によって切替弁560,565を切り替えることにより、燃料電池600の発電時には、冷媒バイパス管550における冷媒の流通を抑えることができる。燃料電池車両100の始動時には、外部電源700と車両側接続部120との接続が解除されるため、燃料電池600の発電時には、ヒータ540および第1ポンプ520は停止している。このような状態で冷媒バイパス管550内を冷媒が流れると、停止中の第1ポンプ520が流路抵抗となり、燃料電池600の発電時に駆動される第2ポンプ525の消費電力が増加し得る。本実施形態では、第1ポンプ520が停止する燃料電池600の発電時には、冷媒バイパス管550における冷媒の流通が抑えられるため、上記した第2ポンプ525の消費電力の増加に起因するエネルギ効率の低下を抑えることができる。
【0035】
また、本実施形態の燃料電池車両100によれば、外部電源700として商用電源を用いて、ヒータ540および第1ポンプ520を駆動している。そのため、システム停止時に用いるヒータ540および第1ポンプ520の電源の確保が容易になる。外部電源700は、例えば、内燃機関を搭載する車両用に寒冷地において広く用いられているブロックヒータ用の電源を用いることとしてもよい。また、外部電源700として、商用電源のように、第2ポンプ525等の燃料電池補機の作動電圧よりも出力電圧が低い電源を用いるため、燃料電池車両100の車両側接続部120と外部電源700とを接続する配線の電圧を抑えることができる。そのため、外部電源700の消費電力を抑えつつ、第1ポンプ520を用いて冷媒流路に冷媒を流すことができる。また、車両側接続部120と外部電源700とを接続する動作の安全性を高めることができる。
【0036】
また、本実施形態のヒータ540および第1ポンプ520は、車両側接続部120を介して外部電源700から電力供給されるため、ヒータ540および第1ポンプ520に電力供給する電気配線は、燃料電池車両100に搭載される他の機器とは独立している。そのため、車両が搭載する他の電気機器の影響を受けることなく、車両側接続部120との間で容易に電気的な接続を行なうことができる。また、車両が搭載する他の電気機器、および、車両が搭載する電源の種類等の影響を受けることなく、ヒータ540および第1ポンプ520を適宜選択することができる。例えば、燃料電池600や蓄電装置660から電力供給されるエアコンプレッサ320や第2ポンプ525等の燃料電池補機は、300V程度の比較的高電圧の直流電流により駆動される。これに対して、ヒータ540および第1ポンプ520は、外部電源700である商用電源から供給される比較的低電圧の交流電流で駆動する機器を選択すればよい。そのため、ヒータ540および第1ポンプ520を設けることに起因するシステムの大型化を抑えることができる。
【0037】
C.他の実施形態:
(C1)上記実施形態では、燃料電池車両100の車両側接続部120と外部電源700とを接続することにより、ヒータ540および第1ポンプ520の駆動が開始され、上記接続を解除することにより、ヒータ540および第1ポンプ520が停止されることとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、制御部650が、車両側接続部120と外部電源700との接続状態、燃料電池600の温度、外気温、燃料電池システム15が停止されてからの経過時間等を取得して、予め定めた条件を満たすときに、ヒータ540および第1ポンプ520を駆動することとしてもよい。すなわち、燃料電池システム15の停止後、始動時の暖機運転の進行に支障を来たす程度に燃料電池600が降温したと判断するときに、ヒータ540および第1ポンプ520を駆動することとしてもよい。例えば、車両側接続部120と外部電源700とが接続された状態で、燃料電池システム15が停止されてからの経過時間が、予め定めた基準時間を超えたときに、ヒータ540および第1ポンプ520の駆動を開始してもよい。あるいは、車両側接続部120と外部電源700とが接続された状態で、システム停止中の外気温や燃料電池600の温度が、予め定めた基準温度以下となったときに、ヒータ540および第1ポンプ520の駆動を開始してもよい。このような構成としても、実施形態と同様の効果が得られる。
【0038】
(C2)上記実施形態では、燃料電池システム15を停止してから、次回にスタートスイッチをオンにするまでの間、ヒータ540および第1ポンプ520を駆動したが、異なる構成としてもよい。例えば、低温環境下でスタートスイッチをオンにするときに、ヒータ540および第1ポンプ520への電力供給を行なってもよい。この場合、ヒータ540および第1ポンプ520を駆動することにより燃料電池600の温度がある程度上昇してから、燃料電池600の暖機運転を開始してもよく、また、ヒータ540および第1ポンプ520の駆動と、燃料電池600の暖機運転とを、同時に開始してもよい。このような構成としても、ヒータ540を用いた冷媒の加熱により暖機運転を補助して、燃料電池600を速やかに昇温させる同様の効果が得られる。また、ヒータ540および第1ポンプ520の駆動を暖機運転と共に行なう場合には、暖機運転中は第2ポンプ525を用いない制御が可能になるため、暖機運転中に、第2ポンプ525を駆動することに起因して蓄電装置660のSOCが低下することを抑えることができる。
【0039】
(C3)上記実施形態では、ヒータ540および第1ポンプ520は、共通する車両側接続部120から電力供給されることとしたが、異なる構成としてもよい。すなわち、燃料電池車両100において、ヒータ540に電力供給するための接続部と、第1ポンプ520に電力供給するための接続部とを、別々に設けて、各々の接続部に対して外部電源700を接続することとしてもよい。
【0040】
(C4)上記実施形態では、ヒータ540および第1ポンプ520はバイパス流路に設けることとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、燃料電池600とラジエータ530との間で冷媒を循環させるメイン流路にヒータ540および第1ポンプ520を設けることとしてもよい。あるいは、燃料電池600の発電中に燃料電池600を冷却する冷媒が流れるメイン流路とは接続されずに独立した系統の冷媒流路において、ヒータ540および第1ポンプ520を設けてもよい。燃料電池システム15の停止中に、外部電源を用いて、ヒータ540で加熱した冷媒を燃料電池600に流すことができれば、低温環境下で冷媒の温度低下を抑えて始動時に燃料電池600を速やかに昇温させる同様の効果が得られる。
【0041】
(C5)上記実施形態では、ヒータ540と第1ポンプ520とを別々に設けたが、両者を一体で設けてもよい。例えば、第1ポンプ520内にヒータ540を配置してもよい。あるいは、第1ポンプ520を駆動する際の発熱量が十分に多ければ、冷媒を循環させるための第1ポンプ520を、冷媒を加熱するためのヒータとして用いてもよい。例えば、燃料電池システム15の停止後に、冷媒における温度収支において加熱量が放熱量を下回る場合には、冷媒を循環させることにより、燃料電池600の熱が冷媒に持ち去られて、システム停止後の燃料電池600の温度低下の速度が速くなる。ここで、ポンプの駆動時の発熱量が、冷媒の放熱量を超える場合には、ポンプを駆動して冷媒を循環させることにより燃料電池600の温度低下を抑えることができ、次回のシステム始動時における燃料電池600の温度を高めて、燃料電池600を速やかに昇温させる同様の効果が得られる。
【0042】
(C6)上記実施形態では、ヒータ540および第1ポンプ520を冷媒流路から着脱するための着脱部を、冷媒のメイン流路とバイパス流路との間で冷媒の流れを切り替える切替弁560,565に設けることとしたが、切替弁とは異なる構造において着脱部を設けてもよい。また、上記実施形態では、着脱部を、冷媒のメイン流路からバイパス流路が分岐する分岐部に設けたが、異なる場所に設けてもよい。ヒータ540および第1ポンプ520を冷媒流路に対して着脱するための着脱部を設けることで、寒冷地仕様を含む複数のグレードの車両を用意することが容易になるという同様の効果が得られる。ただし、着脱部を設けないこととしてもよく、外部電源700を用いて駆動されるヒータ540および第1ポンプ520を設けるならば、低温環境下で冷媒の温度低下を抑えて低温始動時に燃料電池600を速やかに昇温させる同様の効果が得られる。
【0043】
(C7)上記実施形態では、外部電源700として商用電源を用いたが、異なる構成としてもよい。外部電源700としては、例えば、太陽光パネルや定置型の燃料電池装置など、種々の電源を用いることができる。また、外部電源700として商用電源を用いる上記実施形態では、外部電源700の出力電圧は、燃料電池600や蓄電装置660から電力供給される第2ポンプ525等の燃料電池補機の作動電圧よりも低いこととしたが、異なる構成としてもよい。ただし、燃料電池車両100の車両側接続部120と外部電源700とを接続する動作における安全性を高める観点からは、外部電源700の出力電圧は低い方が望ましい。
【0044】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
15…燃料電池システム、100…燃料電池車両、110…車体、120…車両側接続部、130,140…配線、200…燃料ガス供給系、210…燃料ガスタンク、220…燃料ガス供給管、230…燃料ガス還流管、290…水素ポンプ、300…酸化ガス供給系、320…エアコンプレッサ、330…酸化ガス供給管、400…排ガス系、410…排ガス管、430…燃料ガス排出管、440…パージ弁、500…冷却系、510…冷媒排出管、515…冷媒供給管、520…第1ポンプ、525…第2ポンプ、530…ラジエータ、535…ラジエータファン、540…ヒータ、550…冷媒バイパス管、560,565…切替弁、600…燃料電池、650…制御部、660…蓄電装置、700…外部電源、710…ケーブル、720…電源側接続部
図1
図2
図3