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特許7196799銅/セラミックス接合体、絶縁回路基板、及び、銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】銅/セラミックス接合体、絶縁回路基板、及び、銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20221220BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20221220BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C04B37/02 Z
H05K1/09 A
B23K20/00 310N
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019151166
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021031323
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】寺▲崎▼ 伸幸
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127432(JP,A)
【文献】特開2014-116353(JP,A)
【文献】特開2015-177045(JP,A)
【文献】特開2018-140929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 - 37/04
H05K 1/09
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金からなる銅部材と、酸素含有セラミックスからなるセラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、
前記銅部材と前記セラミックス部材との間においては、前記セラミックス部材側に酸化マグネシウム層が形成されており、
前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散していることを特徴とする銅/セラミックス接合体。
【請求項2】
前記酸化マグネシウム層の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の銅/セラミックス接合体。
【請求項3】
前記酸化マグネシウム層の内部に、Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子のいずれか一方又は両方が分散されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の銅/セラミックス接合体。
【請求項4】
前記酸化マグネシウム層の内部に分散する前記Cu粒子及び前記化合物粒子の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項3に記載の銅/セラミックス接合体。
【請求項5】
前記活性金属がTiであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の銅/セラミックス接合体。
【請求項6】
酸素含有セラミックスからなるセラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板であって、
前記セラミックス基板と前記銅板との間においては、前記セラミックス基板側に酸化マグネシウム層が形成されており、
前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散していることを特徴とする絶縁回路基板。
【請求項7】
前記酸化マグネシウム層の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項6に記載の絶縁回路基板。
【請求項8】
前記酸化マグネシウム層の内部に、Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子のいずれか一方又は両方が分散されていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の絶縁回路基板。
【請求項9】
前記酸化マグネシウム層の内部に分散する前記Cu粒子及び前記化合物粒子の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項8に記載の絶縁回路基板。
【請求項10】
前記活性金属がTiであることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の絶縁回路基板。
【請求項11】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の銅/セラミックス接合体を製造する銅/セラミックス接合体の製造方法であって、
前記銅部材と前記セラミックス部材との間に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属及びMgを配置する活性金属及びMg配置工程と、
前記銅部材と前記セラミックス部材とを、活性金属及びMgを介して積層する積層工程と、
活性金属及びMgを介して積層された前記銅部材と前記セラミックス部材とを積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下において加熱処理して接合する接合工程と、
を備えており、
前記活性金属及びMg配置工程では、活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内とし、
前記接合工程では、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内とされていることを特徴とする銅/セラミックス接合体の製造方法。
【請求項12】
請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法であって、
前記銅板と前記セラミックス基板との間に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属及びMgを配置する活性金属及びMg配置工程と、
前記銅板と前記セラミックス基板とを、活性金属及びMgを介して積層する積層工程と、
活性金属及びMgを介して積層された前記銅板と前記セラミックス基板とを積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下において加熱処理して接合する接合工程と、
を備えており、
前記活性金属及びMg配置工程では、活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内とし、
前記接合工程では、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内とされていることを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体、セラミックス基板の表面に銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板、及び、銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュール、LEDモジュール及び熱電モジュールにおいては、絶縁層の一方の面に導電材料からなる回路層を形成した絶縁回路基板に、パワー半導体素子、LED素子及び熱電素子が接合された構造とされている。
例えば、風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子は、動作時の発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えた絶縁回路基板が、従来から広く用いられている。なお、絶縁回路基板としては、セラミックス基板の他方の面に金属板を接合して金属層を形成したものも提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セラミックス基板の一方の面及び他方の面に、銅板を接合することにより回路層及び金属層を形成した絶縁回路基板が提案されている。この特許文献1においては、セラミックス基板の一方の面及び他方の面に、Ag-Cu-Ti系ろう材を介在させて銅板を配置し、加熱処理を行うことにより銅板が接合されている(いわゆる活性金属ろう付け法)。この活性金属ろう付け法では、活性金属であるTiが含有されたろう材を用いているため、溶融したろう材とセラミックス基板との濡れ性が向上し、セラミックス基板と銅板とが良好に接合されることになる。
【0004】
また、特許文献2においては、Cu-Mg-Ti系ろう材を用いて、セラミックス基板と銅板とを接合した絶縁回路基板が提案されている。
この特許文献2においては、窒素ガス雰囲気下にて560~800℃で加熱することによって接合する構成とされており、Cu-Mg-Ti合金中のMgは昇華して接合界面には残存せず、かつ、窒化チタン(TiN)が実質的に形成しないものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3211856号公報
【文献】特許第4375730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、SiC等を用いた高温半導体デバイスにおいては高密度に実装させることになるため、絶縁回路基板には、より高温での動作を保証する必要がある。このため、従来よりも厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、銅板とセラミックス基板との接合信頼性を確保することが求められている。
【0007】
さらに、上述の絶縁回路基板の回路層においては、端子材等が超音波接合されることがある。
ここで、特許文献1、2に記載された絶縁回路基板においては、端子材等を接合するために超音波を負荷させた際に、接合界面にクラックが発生し、回路層が剥離してしまうおそれがあった。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても銅部材とセラミックス部材との接合信頼性を確保でき、超音波接合を行った場合であってもセラミックス部材と銅部材との剥離を抑制することが可能な銅/セラミックス接合体、絶縁回路基板、及び、銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明の銅/セラミックス接合体は、銅又は銅合金からなる銅部材と、酸素含有セラミックスからなるセラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、前記銅部材と前記セラミックス部材との間においては、前記セラミックス部材側に酸化マグネシウム層が形成されており、前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散していることを特徴としている。
【0010】
本発明の銅/セラミックス接合体によれば、前記銅部材と前記セラミックス部材との間に酸化マグネシウム層が形成されているので、銅部材とセラミックス部材との熱膨張係数の差に起因した熱応力を酸化マグネシウム層によって軽減でき、冷熱サイクル負荷後の接合信頼性を向上させることが可能となる。
そして、前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散しているので、接合界面が強化され、超音波を負荷させた場合であっても、セラミックス部材と銅部材との剥離を抑制することが可能となる。
【0011】
ここで、本発明の銅/セラミックス接合体においては、前記酸化マグネシウム層の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、前記銅部材と前記セラミックス部材との間に形成された酸化マグネシウム層の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされているので、銅部材とセラミックス部材との熱膨張係数の差に起因した熱応力を酸化マグネシウム層によって十分に軽減でき、冷熱サイクル負荷後の接合信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の銅/セラミックス接合体においては、前記酸化マグネシウム層の内部に、Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子のいずれか一方又は両方が分散されていることが好ましい。
この場合、上述のCu粒子及び化合物粒子により、接合界面に形成された酸化マグネシウム層の強度が向上し、超音波を負荷させた際の、セラミックス部材と銅部材との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の銅/セラミックス接合体においては、前記酸化マグネシウム層の内部に分散する前記Cu粒子及び前記化合物粒子の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、上述のCu粒子及び化合物粒子の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされているので接合界面に形成された酸化マグネシウム層の強度が確実に向上し、超音波を負荷させた際の、セラミックス部材と銅部材との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明の銅/セラミックス接合体においては、前記活性金属がTiであることが好ましい。
この場合、前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、チタン酸化物相が分散することになり、接合界面を確実に強化することができ、超音波を負荷させた場合であっても、セラミックス部材と銅部材との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の絶縁回路基板は、酸素含有セラミックスからなるセラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板であって、前記セラミックス基板と前記銅板との間においては、前記セラミックス基板側に酸化マグネシウム層が形成されており、前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散していることを特徴としている。
【0016】
本発明の絶縁回路基板によれば、前記銅板と前記セラミックス基板との間に酸化マグネシウム層が形成されているので、銅板とセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因した熱応力を酸化マグネシウム層によって軽減でき、冷熱サイクル負荷後の接合信頼性を向上させることが可能となる。
そして、前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散しているので、接合界面が強化され、超音波を負荷させた場合であっても、セラミックス基板と銅板との剥離を抑制することが可能となる。
【0017】
ここで、本発明の絶縁回路基板においては、前記酸化マグネシウム層の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、前記銅板と前記セラミックス基板との間に形成された酸化マグネシウム層の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされているので、銅板とセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因した熱応力を酸化マグネシウム層によって十分に軽減でき、冷熱サイクル負荷後の接合信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の絶縁回路基板においては、前記酸化マグネシウム層の内部に、Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子のいずれか一方又は両方が分散されていることが好ましい。
この場合、上述のCu粒子及び化合物粒子により、接合界面に形成された酸化マグネシウム層の強度が向上し、超音波を負荷させた際の、セラミックス基板と銅板との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の絶縁回路基板においては、前記酸化マグネシウム層の内部に分散する前記Cu粒子及び前記化合物粒子の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、上述のCu粒子及び化合物粒子の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされているので接合界面に形成された酸化マグネシウム層の強度が確実に向上し、超音波を負荷させた際の、セラミックス基板と銅板との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0020】
また、本発明の絶縁回路基板においては、前記活性金属がTiであることが好ましい。
この場合、前記酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、チタン酸化物相が分散することになり、接合界面を確実に強化することができ、超音波を負荷させた場合であっても、セラミックス基板と銅板との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0021】
本発明の銅/セラミックス接合体の製造方法は、上述の銅/セラミックス接合体を製造する銅/セラミックス接合体の製造方法であって、前記銅部材と前記セラミックス部材との間に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属及びMgを配置する活性金属及びMg配置工程と、前記銅部材と前記セラミックス部材とを、活性金属及びMgを介して積層する積層工程と、活性金属及びMgを介して積層された前記銅部材と前記セラミックス部材とを積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下において加熱処理して接合する接合工程と、を備えており、前記活性金属及びMg配置工程では、活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内とし、前記接合工程では、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0022】
この構成の銅/セラミックス接合体の製造方法によれば、前記活性金属及びMg配置工程では、活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内としているので、界面反応に必要な液相を十分に得ることができる。よって、銅部材とセラミックス部材とを確実に接合することができる。
そして、接合工程において、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内としているので、界面反応に必要な液相を一定時間以上保持することができ、均一な界面反応を促進し、接合界面に酸化マグネシウム層が形成され、さらに、酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散することになる。
【0023】
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、上述の絶縁回路基板を製造する絶縁回路基板の製造方法であって、前記銅板と前記セラミックス基板との間に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属及びMgを配置する活性金属及びMg配置工程と、前記銅板と前記セラミックス基板とを、活性金属及びMgを介して積層する積層工程と、活性金属及びMgを介して積層された前記銅板と前記セラミックス基板とを積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下において加熱処理して接合する接合工程と、を備えており、前記活性金属及びMg配置工程では、活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内とし、前記接合工程では、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0024】
この構成の絶縁回路基板の製造方法によれば、前記活性金属及びMg配置工程では、活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内としているので、界面反応に必要な液相を十分に得ることができる。よって、銅板とセラミックス基板とを確実に接合することができる。
そして、接合工程において、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内としているので、界面反応に必要な液相を一定時間以上保持することができ、均一な界面反応を促進し、接合界面に酸化マグネシウム層が形成され、さらに、酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散することになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても銅部材とセラミックス部材との接合信頼性を確保でき、超音波接合を行った場合であってもセラミックス部材と銅部材との剥離を抑制することが可能な銅/セラミックス接合体、絶縁回路基板、及び、銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板の回路層(金属層)とセラミックス基板との接合界面の拡大説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板の製造方法のフロー図である。
図4】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板の製造方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態に係る接合体は、セラミックスからなるセラミックス部材としてのセラミックス基板11と、銅又は銅合金からなる銅部材としての銅板22(回路層12)及び銅板23(金属層13)とが接合されてなる絶縁回路基板10である。図1に、本実施形態である絶縁回路基板10を備えたパワーモジュール1を示す。
【0028】
このパワーモジュール1は、回路層12及び金属層13が配設された絶縁回路基板10と、回路層12の一方の面(図1において上面)に接合層2を介して接合された半導体素子3と、金属層13の他方側(図1において下側)に配置されたヒートシンク30と、を備えている。
【0029】
半導体素子3は、Si等の半導体材料で構成されている。この半導体素子3と回路層12は、接合層2を介して接合されている。
接合層2は、例えばSn-Ag系、Sn-In系、若しくはSn-Ag-Cu系のはんだ材で構成されている。
【0030】
ヒートシンク30は、前述の絶縁回路基板10からの熱を放散するためのものである。このヒートシンク30は、Cu又はCu合金で構成されており、本実施形態ではりん脱酸銅で構成されている。このヒートシンク30には、冷却用の流体が流れるための流路31が設けられている。
なお、本実施形態においては、ヒートシンク30と金属層13とが、はんだ材からなるはんだ層32によって接合されている。このはんだ層32は、例えばSn-Ag系、Sn-In系、若しくはSn-Ag-Cu系のはんだ材で構成されている。
【0031】
そして、本実施形態である絶縁回路基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に配設された金属層13と、を備えている。
【0032】
セラミックス基板11は、絶縁性および放熱性に優れた酸素含有セラミックスで構成されており、本実施形態では、酸化アルミニウム(Al)で構成されている。このセラミックス基板11の厚さは、例えば、0.2mm以上1.5mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0033】
回路層12は、図4に示すように、セラミックス基板11の一方の面(図4において上面)に、銅又は銅合金からなる銅板22が接合されることにより形成されている。
本実施形態においては、回路層12は、無酸素銅の圧延板からなる銅板22がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。
なお、回路層12となる銅板22の厚さは0.1mm以上2.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。
【0034】
金属層13は、図4に示すように、セラミックス基板11の他方の面(図4において下面)に、銅又は銅合金からなる銅板23が接合されることにより形成されている。
本実施形態においては、金属層13は、無酸素銅の圧延板からなる銅板23がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。
なお、金属層13となる銅板23の厚さは0.1mm以上2.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。
【0035】
そして、セラミックス基板11と回路層12(金属層13)との接合界面においては、図2に示すように、セラミックス基板11側に酸化マグネシウム層41が形成され、この酸化マグネシウム層41に積層するように銅層45が形成されている。
この銅層45には、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相46が分散している。なお、本実施形態では、活性金属としてTiを用いることが好ましい。
【0036】
ここで、本実施形態においては、酸化マグネシウム層41の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
なお、酸化マグネシウム層41の厚さの下限は80nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。一方、酸化マグネシウム層41の厚さの上限は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
また、本実施形態においては、酸化マグネシウム層41の内部に、Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子のいずれか一方又は両方からなるCu含有粒子42が分散されていることが好ましい。
さらに、本実施形態においては、酸化マグネシウム層41の内部に分散するCu含有粒子42の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
なお、酸化マグネシウム層41の内部に分散するCu含有粒子42の円相当径の下限は15nm以上であることがさらに好ましく、20nm以上であることがより好ましい。一方、上述のCu含有粒子42の円相当径の上限は70nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
【0038】
以下に、本実施形態に係る絶縁回路基板10の製造方法について、図3及び図4を参照して説明する。
【0039】
(活性金属及びMg配置工程S01)
まず、酸化アルミニウム(Al)からなるセラミックス基板11を準備し、図4に示すように、回路層12となる銅板22とセラミックス基板11との間、及び、金属層13となる銅板23とセラミックス基板11との間に、それぞれTi,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属及びMgを配置する。
本実施形態では、回路層12となる銅板22とセラミックス基板11との間、及び、金属層13となる銅板23とセラミックス基板11との間に、Mg箔25と活性金属箔26を配設している。
【0040】
ここで、活性金属及びMg配置工程S01では、配置する活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内とする。
なお、配置する活性金属量の下限は0.9μmol/cm以上とすることが好ましく、2.8μmol/cm以上とすることがさらに好ましい。一方、配置する活性金属量の上限は20μmol/cm以下とすることが好ましく、10μmol/cm以下とすることがさらに好ましい。
また、配置するMg量の下限は21μmol/cm以上とすることが好ましく、28μmol/cm以上とすることがさらに好ましい。一方、配置するMg量の上限は107μmol/cm以下とすることが好ましく、72μmol/cm以下とすることがさらに好ましい。
【0041】
(積層工程S02)
次に、銅板22とセラミックス基板11を、活性金属箔26及びMg箔25を介して積層するとともに、セラミックス基板11と銅板23を、活性金属箔26及びMg箔25を介して積層する。
【0042】
(接合工程S03)
次に、積層された銅板22、活性金属箔26、Mg箔25、セラミックス基板11、Mg箔25、活性金属箔26、銅板23を、積層方向に加圧するとともに、真空炉内に装入して加熱し、銅板22とセラミックス基板11と銅板23を接合する。
ここで、接合工程S03における熱処理条件は、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内とされる。このように熱処理条件を規定することにより、接合界面にCu-Mg系の液相を高温状態で維持することができ、接合界面に酸化マグネシウム層41及び銅層45が形成され、この銅層45の内部にTi,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相46が分散することになる。
【0043】
なお、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度の下限は7℃/min以上とすることが好ましく、9℃/min以上とすることがさらに好ましい。一方、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度の上限に特に制限はないが、15℃/min以下とすることが好ましく、12℃/min以下とすることがさらに好ましい。
また、保持温度の下限は700℃以上とすることが好ましく、750℃以上とすることがさらに好ましい。一方、保持温度の上限は830℃以下とすることが好ましく、800℃以下とすることがさらに好ましい。
さらに、保持時間の下限は30min以上とすることが好ましく、45min以上とすることがさらに好ましい。一方、保持時間の上限は150min以下とすることが好ましく、120min以下とすることがさらに好ましい。
【0044】
なお、接合工程S03における加圧荷重は、0.049MPa以上3.4MPa以下の範囲内とすることが好ましい。
さらに、接合工程S03における真空度は、1×10-6Pa以上5×10-2Pa以下の範囲内とすることが好ましい。
【0045】
以上のように、活性金属及びMg配置工程S01と、積層工程S02と、接合工程S03とによって、本実施形態である絶縁回路基板10が製造されることになる。
【0046】
(ヒートシンク接合工程S04)
次に、絶縁回路基板10の金属層13の他方の面側にヒートシンク30を接合する。
絶縁回路基板10とヒートシンク30とを、はんだ材を介して積層して加熱炉に装入し、はんだ層32を介して絶縁回路基板10とヒートシンク30とをはんだ接合する。
【0047】
(半導体素子接合工程S05)
次に、絶縁回路基板10の回路層12の一方の面に、半導体素子3をはんだ付けにより接合する。
上述の工程により、図1に示すパワーモジュール1が製出される。
【0048】
以上のような構成とされた本実施形態の絶縁回路基板10(銅/セラミックス接合体)によれば、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との間に酸化マグネシウム層41が形成されているので、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との熱膨張係数の差に起因した熱応力を酸化マグネシウム層41によって軽減でき、冷熱サイクル負荷後の接合信頼性を向上させることが可能となる。
【0049】
そして、酸化マグネシウム層41と接する銅層45の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相46が分散しているので、接合界面が強化され、超音波を負荷させた場合であっても、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との剥離を抑制することが可能となる。よって、超音波接合性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態において、酸化マグネシウム層41の厚さが50nm以上1000nm以下の範囲内とされている場合には、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との熱膨張係数の差に起因した熱応力を酸化マグネシウム層41によって十分に軽減でき、冷熱サイクル負荷後の接合信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態において、酸化マグネシウム層41の内部に、Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子のいずれか一方又は両方からなるCu含有粒子42が分散されている場合には、Cu含有粒子42によって、接合界面に形成された酸化マグネシウム層41の強度が向上し、超音波を負荷させた際の、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態において、酸化マグネシウム層41の内部に分散するCu含有粒子42の円相当径が10nm以上100nm以下の範囲内とされている場合には、接合界面に形成された酸化マグネシウム層41の強度が確実に向上し、超音波を負荷させた際の、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態において、活性金属がTiである場合には、酸化マグネシウム層41と接する銅層45の内部に、活性金属酸化物相46としてチタン酸化物相が分散することになり、接合界面を確実に強化することができ、超音波を負荷させた場合であっても、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0054】
本実施形態である絶縁回路基板の製造方法によれば、活性金属及びMg配置工程01では、活性金属量を0.4μmol/cm以上47.0μmol/cm以下の範囲内、Mg量を14μmol/cm以上180μmol/cm以下の範囲内としているので、界面反応に必要な液相を十分に得ることができる。よって、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11とを確実に接合することができる。
そして、接合工程S03において、480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が5℃/min以上とされるとともに、保持温度が650℃以上850℃以下の範囲内、保持温度での保持時間が10min以上180min以下の範囲内としているので、界面反応に必要な液相を一定時間以上保持することができ、均一な界面反応を促進し、接合界面に酸化マグネシウム層41が形成され、さらに、酸化マグネシウム層41と接する銅層45の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相46が分散することになる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、絶縁回路基板に半導体素子を搭載してパワーモジュールを構成するものとして説明したが、これに限定されることはない。例えば、絶縁回路基板の回路層にLED素子を搭載してLEDモジュールを構成してもよいし、絶縁回路基板の回路層に熱電素子を搭載して熱電モジュールを構成してもよい。
【0056】
また、本実施形態の絶縁回路基板では、回路層と金属層がともに銅又は銅合金からなる銅板によって構成されたものとして説明したが、これに限定されることはない。
例えば、回路層とセラミックス基板とが本発明の銅/セラミックス接合体で構成されていれば、金属層の材質や接合方法に限定はなく、金属層がなくてもよいし、金属層がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよく、銅とアルミニウムの積層体で構成されていてもよい。
一方、金属層とセラミックス基板とが本発明の銅/セラミックス接合体で構成されていれば、回路層の材質や接合方法に限定はなく、回路層がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよく、銅とアルミニウムの積層体で構成されていてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、銅板とセラミックス基板との間に、活性金属箔とMg箔を積層する構成として説明したが、これに限定されることはなく、Mgと活性金属の合金箔を配設してもよい。また、セラミックス基板及び銅板の接合面に、Mg、活性金属、Mgと活性金属の合金等からなる薄膜を、スパッタ法や蒸着法等によって成膜してもよい。
【実施例
【0058】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0059】
まず、酸化アルミニウム(Al)からなるセラミックス基板(40mm×40mm×0.635mm)を準備した。
このセラミックス基板の両面に、無酸素銅からなる銅板(37mm×37mm×厚さ0.3mm)を表1に示す条件で接合し、絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体)を得た。なお、接合時の真空炉の真空度は8×10-3Paとした。
【0060】
得られた絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体)について、接合界面における酸化マグネシウム層の厚さ、酸化マグシウム層中のCu含有粒子(Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子のいずれか一方又は両方)の有無及び円相当径、銅層中の活性金属酸化物相の有無、超音波接合性について、以下のようにして評価した。
【0061】
(酸化マグネシウム層)
銅板とセラミックス基板との接合界面を、透過型電子顕微鏡(FEI社製Titan ChemiSTEM)を用いて加速電圧200kV、倍率2万倍で観察し、Mgと酸素(O)が共存する領域を酸化マグネシウム層とし、この領域の厚さを測定した。評価結果を表2に示す。
また、MgとOが共存する領域においてCuが検出された場合に、Cu含有粒子が「有」と判断し、その円相当径を測定した。評価結果を表2に示す。
【0062】
(銅層中の活性金属酸化物相)
銅板とセラミックス基板との接合界面を、透過型電子顕微鏡(FEI社製Titan ChemiSTEM)を用いて加速電圧200kV、倍率2万倍で観察し、銅層において、活性金属と酸素(O)が共存する領域が存在した場合を、活性金属酸化物相が「有」と判断した。評価結果を表2に示す。
【0063】
(超音波接合性)
得られた絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体)に対して、冷熱サイクル(-50℃×5min←→150℃×5min、200回)を負荷した。
冷熱サイクルを負荷した絶縁回路基板に対して、超音波金属接合機(超音波工業株式会社製:60C-904)を用いて、銅端子(10mm×5mm×1mm厚)をコプラス量0.3mmの条件で超音波接合した。なお、銅端子はそれぞれ10個ずつ接合した。
接合後に、超音波探傷装置(株式会社日立ソリューションズ製FineSAT200)を用いて、銅板とセラミックス基板の接合界面を検査した。10個中3個以上で剥離又はセラミックス割れが観察されたものを「×」、10個中1個以上2個以下で剥離又はセラミックス割れが観察されたものを「○」、10個全てで剥離又はセラミックス割れが観察されなかったものを「◎」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
接合界面に配置するMg量が少ない比較例1においては、接合界面に酸化マグネシウム層が形成されず、銅層中に活性金属酸化物相は存在しなかった。また、冷熱サイクル負荷後に銅板とセラミックス基板とが剥離したため、超音波接合性については評価できなかった。
480℃以上650℃未満の温度領域における昇温速度が1℃/minとされた比較例2においては、銅層中に活性金属酸化物相は存在せず、酸化マグネシウム層内にCu含有粒子は存在しなかった。そして、冷熱サイクル負荷後の超音波接合性については「×」となった。
【0067】
これに対して、接合界面に酸化マグネシウム層が形成され、酸化マグネシウム層と接する銅層の内部に、Ti,Zr,Nb,Hfから選択される1種又は2種以上の活性金属の酸化物からなる活性金属酸化物相が分散している本発明例1-9においては、冷熱サイクル負荷においても接合信頼性に優れており、その後に超音波接合を実施しても、銅板とセラミックス基板との剥離の発生が少なく、超音波接合性に優れていた。
【0068】
以上の結果、本発明例によれば、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても銅部材とセラミックス部材との接合信頼性を確保でき、超音波接合を行った場合であってもセラミックス部材と銅部材との剥離を抑制することが可能な銅/セラミックス接合体、絶縁回路基板、及び、銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法を提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
10 絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体)
11 セラミックス基板(セラミックス部材)
12 回路層(銅部材)
13 金属層(銅部材)
41 酸化マグネシウム層
42 Cu含有粒子(Cu粒子、及び、Cuと活性金属の化合物粒子)
45 銅層
46 活性金属酸化物相
図1
図2
図3
図4