(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
B60P 1/02 20060101AFI20221220BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221220BHJP
【FI】
B60P1/02 Z
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2019187658
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊二
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】渡部 卓也
(72)【発明者】
【氏名】覚知 誠
(72)【発明者】
【氏名】角田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】福永 恵万
(72)【発明者】
【氏名】宮原 謙太
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0016070(US,A1)
【文献】特開2008-213568(JP,A)
【文献】特開2017-049694(JP,A)
【文献】特開2017-144778(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015010240(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00- 1/64
B60S 3/04- 3/06
B62D 61/10
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エリアから第2エリアに走行する移動体であって、
複数の車輪を有し、走行機能を有する走行機構と、
前記走行機構に車輪の清浄化動作を実行させてから前記移動体を前記第2エリアに進入させる制御部と、
を備え
、
前記複数の車輪は、複数の第1車輪と、複数の第2車輪とを含み、
前記制御部は、第1エリアにおいて、前記走行機構に前記複数の第2車輪を路面から離れさせるとともに前記複数の第1車輪を路面に接触させ、前記複数の第1車輪により前記移動体を走行させ、
車輪の清浄化動作は、前記走行機構が前記複数の第1車輪を路面から離れさせるとともに前記複数の第2車輪を路面に接触させる動作である、
ことを特徴とする移動体。
【請求項2】
前記制御部は、所定の清浄化条件が満たされた場合、前記走行機構に車輪の清浄化動作を実行させてから前記移動体を前記第2エリアに進入させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記制御部は、前記清浄化条件が満たされない場合、前記走行機構に車輪の清浄化動作を実行させずに前記移動体を前記第2エリアに進入させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
カメラで撮像された車輪または走行路の画像にもとづいて、車輪または走行路の汚れを検出する検出部を備え、
前記清浄化条件は、前記検出部で車輪または走行路の汚れが検出されたことである、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の移動体。
【請求項5】
前記第2エリアは、ユーザにより指定される、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行機能を備えた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、配送車両が配送先まで荷物を配送する配送システムを開示する。配送車両は、配送先に配送する配送ボックスを積載する。配送車両が配送先まで移動すると、配送車両の可動部材により、配送先に設けられた配送ボックス固定具に配送ボックスを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される配送システムでは、配送車両が配送先の建物に入ることは想定されていない。本発明者は、配送車両が配送先の建物内に入り、ユーザが指定した建物内の位置まで荷物を届けることで、利便性が高まることを認識した。しかし、配送車両が屋外から建物に入ると、車輪の汚れで建物内が汚れる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、第1エリアから第2エリアに走行するときに、第2エリアを汚れにくくできる移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の移動体は、第1エリアから第2エリアに走行する移動体であって、複数の車輪を有し、走行機能を有する走行機構と、前記走行機構に車輪の清浄化動作を実行させてから前記移動体を前記第2エリアに進入させる制御部と、を備える。前記複数の車輪は、複数の第1車輪と、複数の第2車輪とを含む。前記制御部は、第1エリアにおいて、前記走行機構に前記複数の第2車輪を路面から離れさせるとともに前記複数の第1車輪を路面に接触させ、前記複数の第1車輪により前記移動体を走行させる。車輪の清浄化動作は、前記走行機構が前記複数の第1車輪を路面から離れさせるとともに前記複数の第2車輪を路面に接触させる動作である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1エリアから第2エリアに走行するときに、第2エリアを汚れにくくできる移動体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、第1の実施の形態に係る荷物搬送ロボットの斜視図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、起立した姿勢の荷物搬送ロボットの斜視図である。
【
図3】荷物を積んで起立姿勢にある荷物搬送ロボットの斜視図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、走行機構に対する本体部の相対運動を説明するための図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、荷物搬送ロボットの構造について説明するための図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る荷物搬送システムの構成の概要を示す図である。
【
図7】
図1の荷物搬送ロボットの機能ブロックを示す図である。
【
図8】
図1の荷物搬送ロボットの配達動作および清浄化動作を説明する図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、第3の実施の形態に係る荷物搬送ロボットの側面図である。
【
図10】第4の実施の形態に係る2台の荷物搬送ロボットによる荷物の受け渡しを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
図1(a)および
図1(b)は、第1の実施の形態に係る荷物搬送ロボット10の斜視図を示す。荷物搬送ロボット10は、移動体とも呼べる。荷物搬送ロボット10の高さは、例えば1~1.5メートル程度であってよい。荷物搬送ロボット10は、自律走行機能を有する走行機構12と、走行機構12に支持されて、荷物等の物体を載せるための本体部14とを備える。走行機構12は、第1車輪体22および第2車輪体24を備え、第1車輪体22は、一対の前輪20aおよび一対の中輪20bを有し、第2車輪体24は、一対の後輪20cを備える。
図1(a)および
図1(b)には、前輪20a、中輪20b、後輪20cが、直線状に並んでいる状態を示す。
【0010】
本体部14は、矩形に形成された枠体40を有し、枠体40の内側は、荷物等の物体を載せる収容空間を構成する。枠体40は、一対の右側壁18a、左側壁18bと、一対の側壁を下側で繋ぐ底板18c、および一対の側壁を上側で繋ぐ上板18dを有して構成される。右側壁18aおよび左側壁18bの内面には、対向する一対の突条部(リブ)56a、56b、56c(以下、特に区別しない場合には「突条部56」と呼ぶ)が設けられる。本体部14は走行機構12に相対運動可能に連結される。荷物搬送ロボット10は、荷物を積んで、設定された目的地まで自律走行し、目的地に待機しているユーザに荷物を届ける宅配機能を有する。以下、本体部14の向きに関し、本体部14が走行機構12に対して直立した状態で枠体40の開口に垂直な方向を「前後方向」、一対の側壁を垂直に貫く方向を「左右方向」と呼ぶ。
【0011】
図2(a)および
図2(b)は、起立した姿勢の荷物搬送ロボット10の斜視図を示す。走行機構12における前輪20aおよび後輪20cが互いに接近し、第1車輪体22および第2車輪体24が接地面に対して互いに傾斜することで、荷物搬送ロボット10は起立姿勢をとる。たとえば荷物搬送ロボット10が目的地に到達し、目的地にいるユーザの前で起立姿勢をとることで、ユーザは本体部14に載せられた自分宛の荷物を取りやすくなる。
【0012】
図3は、荷物を積んで起立姿勢にある荷物搬送ロボット10の斜視図を示す。
図3には、本体部14に、第1荷物16a、第2荷物16bおよび第3荷物16cが積まれている様子が示される。第1荷物16a、第2荷物16bおよび第3荷物16cは、右側壁18aおよび左側壁18bの内面に形成された突条部56に載置または係合することで、本体部14に載せられる。
【0013】
図3に示す第1荷物16a、第2荷物16bおよび第3荷物16cは箱形状であるが、本体部14に載せられる物体は箱形状に限らない。たとえば一対の突条部56に、物体を収納するための容器が載置されて、物体は容器に入れられるようにしてもよい。また枠体40の上板18dの内面にフックが設けられ、物体を取っ手付きの袋に入れた上で、袋の取っ手がフックに掛けられて、袋が吊されてもよい。
【0014】
図4(a)および
図4(b)は、走行機構12に対する本体部14の相対運動を説明するための図である。
図4(a)は、枠体40の側壁を鉛直方向に対して傾斜させた状態を示す。枠体40は走行機構12に対して、左右方向に延在する連結軸により相対回転可能に支持され、前後方向のいずれにも傾斜できる。
【0015】
図4(b)は、枠体40が鉛直方向の軸回りに略90度回転した状態を示す。枠体40は走行機構12に対して、垂直方向に延在する連結軸により相対回転可能に支持され、その連結軸回りに枠体40と走行機構12とが相対回転することで、
図4(b)に示すように枠体40が回転する。枠体40は、360度回転可能であってよい。
【0016】
図5(a)および
図5(b)は、荷物搬送ロボット10の構造について説明するための図である。
図5(a)は、走行機構12の構造を示し、
図5(b)は、主に本体部14の構造を示す。実際には走行機構12および本体部14に、電源部および制御部が設けられるが、
図5(a)および
図5(b)では省略している。
【0017】
図5(a)に示すように、走行機構12は、前輪20a、中輪20b、後輪20c、第1車輪体22、第2車輪体24、軸体26、連結ギヤ28、起立アクチュエータ30、軸体支持部32、オブジェクト検出センサ34、前輪モータ36および後輪モータ38を有する。
【0018】
第1車輪体22は、一対のサイドメンバ22aと、一対のサイドメンバ22aを連結して車幅方向に延在するクロスメンバ22bとを有する。一対のサイドメンバ22aは、クロスメンバ22bの両端から垂直な方向に延びるように設けられる。一対の前輪20aは、一対のサイドメンバ22aの前端の位置にそれぞれ設けられ、一対の中輪20bは、クロスメンバ22bの両端側の位置にそれぞれ設けられる。一対の前輪20aには、車輪軸を回転させる前輪モータ36がそれぞれ設けられる。
【0019】
第2車輪体24は、車幅方向に延在するクロスメンバ24aと、クロスメンバ24aの中央位置から垂直方向に延在する連結メンバ24bとを有する。連結メンバ24bは、第1車輪体22のクロスメンバ22bに挿入され、第1車輪体22に相対回転可能に連結する。クロスメンバ24aの両端側に後輪20cがそれぞれ設けられる。
【0020】
一対の後輪20cには、車輪軸を回転させる後輪モータ38がそれぞれ設けられる。一対の前輪20aおよび一対の後輪20cは各モータにより独立して回転することができ、走行機構12は左右輪の回転量の差によって左右に曲がることが可能である。
【0021】
クロスメンバ22bの内部には車幅方向に延在する軸体26と、軸体26の両端部を支持する軸体支持部32とが設けられる。第2車輪体24の連結メンバ24bは、連結ギヤ28によって軸体26に対して回転可能に連結する。起立アクチュエータ30は、連結メンバ24bを軸体26の軸回りに回転させることができる。第1車輪体22および第2車輪体24は、起立アクチュエータ30の駆動によって相対回転して、
図2(a)および
図2(b)に示す起立姿勢をとることができ、起立姿勢から
図1(a)および
図1(b)に示す水平姿勢に戻ることができる。
【0022】
走行機構12は、道路の段差などを走行可能なロッカーボギー構造で構成される。第1車輪体22および第2車輪体24を連結する軸体26は、中輪20bの車輪軸からずれて位置し、車幅に垂直な方向において前輪20aの車輪軸および中輪20bの車輪軸の間に位置する。これにより第1車輪体22と第2車輪体24は軸体26を支点として、走行中の路面形状に合わせて折れ曲がることができる。
【0023】
オブジェクト検出センサ34は、第1車輪体22に設けられ、進行方向の物体を検出する。オブジェクト検出センサ34は、ミリ波レーダ、赤外線レーザ、音波センサなどであってよく、またはそれらの組合せであってよい。オブジェクト検出センサ34は、後方または横方向の物体を検出するため、第1車輪体22の前部のみならず、第1車輪体22および第2車輪体24の様々な位置に設けられてよい。
【0024】
図5(b)に示すように、荷物搬送ロボット10は、枠体40、連結軸42、外周歯部43、回転アクチュエータ44、連結軸45、傾斜アクチュエータ46、第1カメラ50a、第2カメラ50b、通信部52を備える。枠体40には、ディスプレイ48a、48b、48c(以下、特に区別しない場合は「ディスプレイ48」と呼ぶ)、フック54、一対の第1突条部56a、一対の第2突条部56b、一対の第3突条部56cが設けられる。なお説明の便宜上、
図5(b)には、連結軸42、外周歯部43、回転アクチュエータ44、連結軸45、傾斜アクチュエータ46を簡略化して一体に示しているが、連結軸42、外周歯部43および回転アクチュエータ44と、連結軸45および傾斜アクチュエータ46とは別体として設けられてよい。
【0025】
突条部56は、荷物等を載置するために、右側壁18a、左側壁18bの内面から突出して設けられる。枠体40の上板18dの内面には、荷物を吊すためのフック54が形成される。フック54は、枠体40の上板内面から常時表出してよいが、上板内面内に収容可能に設けられて、必要なときに取り出せるようにしてよい。
【0026】
ディスプレイ48a、48bは、それぞれ右側壁18a、左側壁18bの外面に設けられ、ディスプレイ48cは、上板18dの外面に設けられて、画像を表示可能である。底板18cおよび上板18dには、第1カメラ50aおよび第2カメラ50b(これらを区別しない場合「カメラ50」という)がそれぞれ設けられる。なお荷物搬送ロボット10は、第1カメラ50a、第2カメラ50b以外にもカメラを搭載して、周囲の全ての状況を監視できることが好ましい。カメラ50は、枠体40の収容空間を撮影する位置に設けられてもよい。上板18dには、さらに通信部52が設けられ、通信部52は無線通信ネットワークを介して、外部のサーバ装置と通信可能である。
【0027】
底板18cは、連結軸42の外周歯部43に、回転アクチュエータ44側のギヤ(図示せず)を介して回転可能に取り付けられ、連結軸42により第1車輪体22に連結される。回転アクチュエータ44は、外周歯部43とギヤとを相対回転させることで、枠体40を連結軸42に対して軸回りに回転させる。回転アクチュエータ44により、
図4(b)に示すように、枠体40を回転させることが可能となる。
【0028】
傾斜アクチュエータ46は、連結軸45を回転して、連結軸42を鉛直方向に対して傾斜させる。左右方向に延在する連結軸45は、連結軸42の下端部に一体として設けられ、傾斜アクチュエータ46が連結軸45を回転することで、連結軸42の傾斜運動を実現する。傾斜アクチュエータ46は、連結軸42を傾斜することで、
図4(a)に示すように、枠体40を前後方向に傾斜させることが可能となる。
【0029】
図6は、第1の実施の形態に係る荷物搬送システム1の構成の概要を示す。荷物搬送システム1は、荷物などの集配サービスを提供する。荷物搬送システム1は、複数の荷物搬送ロボット10、サーバ装置60、複数の端末装置62および無線局64を備える。サーバ装置60および無線局64は、インターネットなどのネットワークを介して接続される。荷物搬送ロボット10の通信部52は、基地局である無線局64経由でサーバ装置60と接続する。サーバ装置60は、複数の荷物搬送ロボット10を管理する管理装置として機能し、データセンタに設置される。
【0030】
端末装置62は、ユーザが操作するスマートフォンやパーソナルコンピュータなどであり、無線局64経由でサーバ装置60と接続する。端末装置62は、荷物搬送ロボット10と直接通信してもよい。
【0031】
たとえば、物流センターなどにおいて、荷物搬送ロボット10に荷物が積まれ、それぞれ荷物を積んだ複数の荷物搬送ロボット10が大型配送車両に搭載され、大型配送車両が中継地点まで走行する。中継地点において、荷物搬送ロボット10が大型配送車両から降車する。荷物搬送ロボット10への荷物の積み込みは、他のロボットにより自動的に行われてもよいし、スタッフにより行われてもよい。それぞれ配達先が異なる複数の荷物が荷物搬送ロボット10に積まれてもよい。荷物搬送ロボット10は、集荷も可能である。大型配送車両を用いずに、中継地点の施設で荷物搬送ロボット10に荷物が積まれてもよい。
【0032】
枠体40には載せられた荷物を枠体40にロック(固定)するための機構が備えられる。荷物搬送ロボット10の走行中は、荷物がロック機構により枠体40に固定されることで、走行中に落下せず、また受取人でない第三者に抜き取られないようにされる。
【0033】
中継地点で降車した荷物搬送ロボット10は、荷物の集配先まで道路を自律走行する。さらに荷物搬送ロボット10は、集配先の建物内に進入し、ユーザに指定された建物内の集配位置まで建物内を自律走行する。建物は、たとえばバリアフリー設計された住宅や会社の建物であることが想定され、荷物搬送ロボット10が容易に進入および走行できる。集配先が住宅である場合、ユーザは、玄関で荷物を受け取ったり預けたりする必要がなく、住宅内の指定した位置で荷物を受け取ったり預けたりできるため、特にユーザが高齢者や身体の不自由な人である場合、利便性が向上する。集配先が会社である場合、会社内で他の従業員が荷物を受け取ってからユーザに配る必要がなく、発送時にユーザが会社内の集荷場所に荷物を運ぶ必要もない。
【0034】
荷物搬送ロボット10は集配先まで道路を走行するため、車輪20が汚れる可能性がある。特に、雨や雪が降った後の泥汚れのある道路や、動物の糞やゴミなどで汚れた道路を走行すると、車輪20の汚れの度合いが高まる。汚れた車輪20で建物内を走行すると、車輪20の汚れが建物内に拡散し、建物内が汚れる可能性がある。そこで、荷物搬送ロボット10は、後述するように、建物内に入る前に車輪20の清浄化動作を実行する。
【0035】
集配サービスのユーザは、予め端末装置62に対して荷物の集配先の情報、および、床面や路面の汚れを防ぎたい第2エリアを指定する情報を入力する。集配先の情報は、住所および建物内の集配位置の情報を含む。建物内の集配位置は、緯度と経度で指定される。第2エリアは、たとえば集配先の建物の全体に設定されてもよいし、建物を含む敷地の全体に設定されてもよい。集配先が集合住宅である場合、第2エリアは自宅の範囲に設定されてよい。第2エリアは、緯度と経度で指定される。汚されたくないエリアをユーザが決定できるので、ユーザの事情に柔軟に対応できる。
【0036】
端末装置62は、入力された情報をサーバ装置60に送信する。送信される情報には、ユーザを識別するための情報が添付される。サーバ装置60は、荷物の集配先の情報、および、第2エリアを指定する情報をユーザごとに保持し、それらの情報を当該ユーザの荷物の集配を担当する荷物搬送ロボット10に送信する。
【0037】
図7は、
図1の荷物搬送ロボット10の機能ブロックを示す。荷物搬送ロボット10は、制御部100、受付部102、通信部52、GPS(Global Positioning System)受信機104、センサデータ処理部106、マップ保持部108、アクチュエータ機構110、ディスプレイ48、前輪モータ36および後輪モータ38を備える。制御部100は、走行制御部120、運動制御部122、表示制御部124および情報処理部126を有し、アクチュエータ機構110は、起立アクチュエータ30、回転アクチュエータ44、傾斜アクチュエータ46を含む。通信部52は無線通信機能を有して、他の荷物搬送ロボット10の通信部と車車間通信でき、またユーザのスマートフォンなどの携帯端末装置から送信される情報を受信できる。GPS受信機104は衛星からの信号にもとづいて現在位置を検出する。
【0038】
図7において、さまざまな処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0039】
以下、荷物の配達について説明するが、集荷も同様に実行できる。
通信部52は、サーバ装置60から荷物の集配先および第2エリアの情報を取得し、取得した情報を走行制御部120に供給する。
【0040】
マップ保持部108は、道路位置および集配先の建物内の通路位置を示すマップ情報を保持する。
【0041】
走行制御部120は、マップ保持部108に保持されたマップ情報、GPS受信機104から供給される現在位置情報、および、荷物の集配先の情報にもとづいて、荷物搬送ロボット10の走行の目標となる走行経路を決定する。走行経路は、サーバ装置60から取得してもよい。
【0042】
走行制御部120は、マップ保持部108に保持されたマップ情報と、GPS受信機104から供給される現在位置情報とを用いて、設定された走行ルートを走行するように走行機構12を制御する。具体的に走行制御部120は、前輪モータ36および後輪モータ38を駆動して、荷物搬送ロボット10を荷物の集配位置まで走行させる。
【0043】
センサデータ処理部106は、オブジェクト検出センサ34による検出データおよびカメラ50による撮影画像をもとに、荷物搬送ロボット10の周囲に存在するオブジェクトに関する情報を取得し、走行制御部120に提供する。対象となるオブジェクトは、構造物や側溝などの走行に障害となる静的なオブジェクトと、人や他の荷物搬送ロボット10などの移動可能なオブジェクト(移動オブジェクト)を含む。走行制御部120は、他のオブジェクトとの衝突を回避するように進行方向および走行速度を決定し、前輪モータ36および後輪モータ38を駆動制御する。表示制御部124は、ディスプレイ48の表示を制御する。
【0044】
走行制御部120は、走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させてから荷物搬送ロボット10を第2エリアに進入させる。車輪20の清浄化動作の一例は、走行機構12が汚れ除去マット上を走行する動作であり、車輪20の清掃動作とも呼べる。汚れ除去マットにより車輪20の汚れの少なくとも一部を落とすことができる。
【0045】
図8は、
図1の荷物搬送ロボット10の配達動作および清浄化動作を説明する図である。荷物搬送ロボット10は、走行経路P1に沿って第1エリアA1から第2エリアA2に走行する。ユーザの自宅の建物が第2エリアに指定されているとする。第1エリアA1は、第2エリアA2以外のエリアである。第1エリアA1におけるユーザの自宅の入り口E1付近に汚れ除去マット70が配置される。汚れ除去マット70としては、ブラシと吸水性部材とが設けられたマットなどの周知のものを利用できる。
【0046】
センサデータ処理部106は、カメラ50の撮像画像を画像認識し、認識結果にもとづいて汚れ除去マット70の荷物搬送ロボット10に対する相対位置を取得し、取得した相対位置の情報を走行制御部120に供給する。この場合、画像認識により汚れ除去マット70を簡単に特定できるように、汚れ除去マット70の色、模様などを適宜定めてよい。
【0047】
走行制御部120は、供給された汚れ除去マット70の位置情報にもとづいて、荷物搬送ロボット10に走行経路P1から離れて汚れ除去マット70上を走行させる。走行制御部120は、荷物搬送ロボット10に汚れ除去マット70上を往復走行させてもよい。
【0048】
あるいは、ユーザは、予め端末装置62に対して汚れ除去マット70の位置情報を入力してもよい。この場合、汚れ除去マット70の位置情報は、サーバ装置60に保持された集配先の情報に含まれ、通信部52がサーバ装置60から汚れ除去マットの位置情報を取得し、取得した情報を走行制御部120に供給してよい。この場合、走行制御部120は、汚れ除去マット70を経由する走行経路を導出してよい。
【0049】
走行制御部120は、荷物搬送ロボット10に汚れ除去マット70上を走行させてから、走行経路P1に戻し、入り口E1前で一時停止させる。入り口E1の位置情報は、予め集配先の情報に関連付けられてサーバ装置60に保持されてもよいし、センサデータ処理部106での画像認識により特定されてもよい。情報処理部126は、通信部52を介してユーザの端末装置62に到着を通知する。端末装置62で到着通知を確認したユーザやユーザの介助者などは、入り口E1のドアを開ける。自動ドアがあれば、ユーザ等は入り口に行く必要はない。画像認識により入り口E1のドアが開いたことを特定した場合、走行制御部120は、荷物搬送ロボット10を第2エリアA2の建物に進入させ、集配位置P2まで移動させる。
【0050】
このように荷物搬送ロボット10は、第1エリアA1の道路を走行した場合、汚れ除去マット70上を走行する車輪20の清浄化動作を実行してから第2エリアA2の建物に進入する。これにより、第2エリアA2を汚れ難くできる。
【0051】
荷物搬送ロボット10が集配位置P2に到達すると、走行制御部120はモータ駆動を停止する。ユーザは、自分宛の荷物のロックを解除するためのパスコードをサーバ装置60から事前に取得している。ユーザは、端末装置62を用いてパスコードを荷物搬送ロボット10に送信すると、通信部52がロック解除用のパスコードを受信し、情報処理部126が荷物のロックを解除する。このとき運動制御部122は起立アクチュエータ30を駆動して、荷物搬送ロボット10に起立姿勢をとらせる。これによりユーザは、荷物を受け取り可能であることを認識し、また本体部14に載せられた自分宛の荷物を取りやすくなる。荷物がユーザにより受け取られると、走行制御部120は、次の目的地まで自律走行する。
【0052】
車輪20の清浄化動作は、走行制御部120の制御により走行機構12が汚れ除去マット70上で車輪20を空転させる動作であってもよい。この場合、一対の中輪20bには、車輪軸を回転させる中輪モータ(図示せず)がそれぞれ設けられる。一対の中輪20bは各モータにより独立して回転することができる。走行制御部120は、各モータを制御して、一部の車輪20を固定し、残りの車輪20を回転させる。走行制御部120は、固定する車輪20を変更しつつ、この制御を繰り返し、全ての車輪20を空転させる。これにより、車輪20の汚れを汚れ除去マット70に擦りつけることができ、汚れ除去マット70上を走行するだけの場合よりも車輪20の汚れを多く落とすことができる。荷物搬送ロボット10がほとんど移動しないように車輪20を空転させれば、汚れ除去マット70の面積を小さくすることもできる。
【0053】
走行制御部120は、一部の車輪20を一方向に回転させ、残りの車輪20を逆方向に回転させてもよい。この場合、同時に全ての車輪20を空転させることができ、より短時間で汚れを落とすことができる。
【0054】
汚れ除去マット70が用意されていないなどの理由で、汚れ除去マット70の位置情報を取得できない場合、走行機構12は、走行制御部120の制御により第1エリアA1の路面上で車輪20を空転させる。具体的に走行機構12は、第1エリアA1の走行経路P1上の第2エリアA2まで所定距離の地点で車輪20を空転させる。所定距離は、ユーザが予め設定してよい。路面上で車輪20が空転することにより、車輪20の汚れを路面に擦りつけることができ、汚れを落とすことができる。
【0055】
また、集配サービスにおいて汚れ除去マット70を利用しなくてもよく、車輪20の清浄化動作は、走行機構12が第1エリアA1の路面上で車輪20を空転させる動作であってもよい。この場合、汚れ除去マット70のコストを削減できる。ユーザは、汚れ除去マット70を設置する必要がないため、負担が少なく、集配サービスを利用しやすくなる。
【0056】
なお、集配先が魚屋や工場などの床面が濡れたり汚れたりしている建物である場合、第2エリアは集配先の建物の入り口に隣接する建物外の道路に設定されてもよい。つまり、第1エリアが集配先の建物に設定される。この場合、魚屋などの建物内を走行して車輪20が濡れたり汚れたりしても、荷物搬送ロボット10は清浄化動作を実行してから第2エリアの外に走行するため、建物の入り口付近の道路を汚れ難くできる。
【0057】
(第2の実施の形態)
たとえば土足で入る住宅または会社の場合、車輪20が比較的きれいであれば、車輪20を清浄化せずに荷物搬送ロボット10が建物内に入ってもユーザは気にしないと考えられる。車輪20を清浄化しなければ、より短時間で集配が完了し、ユーザおよび集配サービスの提供者の両者にメリットがある。そこで第2の実施の形態では、制御部100は、所定の清浄化条件が満たされた場合に走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させ、清浄化条件が満たされない場合に清浄化動作を実行させない。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0058】
[第1の清浄化条件]
第1の清浄化条件は、ユーザによる清浄化指示が入力されたことである。情報処理部126は、通信部52を介してユーザの端末装置62に走行経路の情報を通知する。たとえば走行経路の情報は、走行経路が示された地図画像と、走行中にカメラ50で撮像された走行経路の路面の画像の少なくとも一方を含む。走行経路の路面の画像は、動画または静止画である。地図画像の通知タイミングは、荷物搬送ロボット10が集配先へ移動開始した時または集配先の入り口前に一時停止した時であってよい。走行経路の路面の画像の通知タイミングは、荷物搬送ロボット10が集配先の入り口前に一時停止した時であってよい。荷物搬送ロボット10が入り口前で一時停止中、ディスプレイ48が走行経路の路面の画像を表示してもよい。端末装置62またはディスプレイ48は、「車輪をきれいにしますか?」という文字などの清浄化指示の入力を確認する情報も表示してもよい。ユーザは、これらの情報をもとに清浄化指示を入力するか否か決める。
【0059】
例えば、雨や雪が降った後で走行経路が屋外の道路である場合、ユーザは清浄化指示を入力することが想定される。走行経路が集合住宅内のきれいな通路、または、地下街である場合、ユーザは清浄化指示を入力しないことが想定される。ユーザは、汚れが気になる走行経路であれば、車輪20があまり汚れていないように視認されても念のため清浄化指示を入力し、清浄化動作を実行させることもできる。
【0060】
受付部102は、ユーザによる清浄化指示の入力を受け付け、受け付けた清浄化指示を走行制御部120に供給する。受付部102は、例えば、タッチパネルとして構成されたディスプレイ48や、図示しないマイクによってユーザによる清浄化指示の入力を検出する。ユーザは、入り口前で一時停止している荷物搬送ロボット10に清浄化指示を入力する。あるいは、ユーザは、端末装置62に清浄化指示を入力し、端末装置62が清浄化指示を荷物搬送ロボット10に送信してもよい。この場合、通信部52は、送信された清浄化指示を受信し、受信した清浄化指示を走行制御部120に供給する。
【0061】
走行制御部120は、清浄化指示が供給された場合、走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させてから荷物搬送ロボット10を第2エリアに進入させる。走行制御部120は、集配先の建物の入り口前で一時停止してから所定時間が経過しても清浄化指示が供給されない場合、走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させずに荷物搬送ロボット10を第2エリアに進入させる。これにより、ユーザが不要と判断した場合には清浄化動作を実行しないようにできる。
【0062】
[第2の清浄化条件]
第1の清浄化条件に替えて第2の清浄化条件を利用してもよい。第2の清浄化条件は、車輪20の画像から車輪20の汚れが検出されたことである。
【0063】
カメラ50は、複数の車輪20を撮影する位置に設けられる。センサデータ処理部106は、第2エリアに入る前に、カメラ50から複数の車輪20の画像を取得し、取得された画像を画像認識して、車輪20の汚れを検出する。センサデータ処理部106は、検出部として機能する。車輪20の汚れは、たとえば泥汚れ、動物の糞による汚れ、ゴミによる汚れなどである。
【0064】
走行制御部120は、車輪20の汚れが検出された場合、走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させる。走行制御部120は、車輪20の汚れが検出されない場合、走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させない。
【0065】
これにより、車輪20が汚れている可能性がある場合に車輪20の清浄化動作を実行でき、必要性の低い清浄化動作を抑制できる。
【0066】
[第3の清浄化条件]
第1の清浄化条件に替えて第3の清浄化条件を利用してもよい。第3の清浄化条件は、走行路の画像から走行路の汚れが検出されたことである。
【0067】
カメラ50は、走行路を撮影する位置に設けられる。センサデータ処理部106は、第2エリアに入る前に、カメラ50から第1エリアの走行路の画像を取得し、取得された画像を画像認識して、走行路の汚れを検出する。走行路の汚れは、たとえば泥汚れ、動物の糞による汚れ、ゴミによる汚れなどである。
【0068】
走行制御部120は、走行路の汚れが検出された場合、走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させる。走行制御部120は、走行路の汚れが検出されない場合、走行機構12に車輪20の清浄化動作を実行させない。
【0069】
この場合にも、車輪20が汚れている可能性がある場合に車輪20の清浄化動作を実行でき、必要性の低い清浄化動作を抑制できる。
【0070】
なお第1、第2および第3の清浄化条件のうち少なくとも2つを併用し、併用した条件のいずれかが満たされた場合、清浄化動作を実行させてもよい。
【0071】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第2エリアへの進入時に路面に接地する車輪20を変更することが第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0072】
図9(a)および
図9(b)は、第3の実施の形態に係る荷物搬送ロボット10の側面図である。荷物搬送ロボット10は、2台の
図1の荷物搬送ロボット10と、一対の連結部材80aおよび80bとを備える。一方の連結部材80aは、一方の枠体40の上板18dと他方の枠体40の上板18dとを連結し、他方の連結部材80bは、一方の枠体40の底板18cと他方の枠体40の底板18cとを連結する。1つの制御部100が荷物搬送ロボット10の全体を制御する。一対の中輪20bには、車輪軸を回転させる中輪モータ(図示せず)がそれぞれ設けられる。2つの枠体40で1つの荷物を保持できるので、長尺物を安定して保持できる。
【0073】
以下、4つの前輪20aおよび4つの後輪20cを複数の第1車輪20Aという。4つの中輪20bを複数の第2車輪20Bという。
【0074】
運動制御部122は、第1エリアでは、起立アクチュエータ30を駆動して、
図9(a)に示すように2つの走行機構12のそれぞれを起立姿勢に制御する。つまり、運動制御部122は、走行機構12に複数の第2車輪20Bを路面から離れさせるとともに複数の第1車輪20Aを路面に接触させ、8つの第1車輪20Aにより荷物搬送ロボット10を走行させる。走行制御部120は、中輪モータを駆動せず、中輪20bを回転させない。複数の第2車輪20Bは路面に接しないため、第1エリアの走行中に第2車輪20Bが汚れないようにできる。
【0075】
車輪20の清浄化動作は、運動制御部122の制御により走行機構12が、
図9(b)に示すように複数の第1車輪20Aを路面から離れさせるとともに複数の第2車輪20Bを路面に接触させる動作である。つまり運動制御部122は、2つの走行機構12のそれぞれを略V字姿勢に制御し、4つの第2車輪20Bにより荷物搬送ロボット10を走行させる。第1車輪体22および第2車輪体24が接地面に対して起立姿勢のときとは逆方向に互いに傾斜し、走行機構12が略V字姿勢をとることができる。これにより、汚れていない第2車輪20Bで第2エリアを走行できる。走行制御部120は、中輪モータを駆動して中輪20bを回転させ、前輪モータ36および後輪モータ38を駆動せず前輪20aおよび後輪20cを回転させない。
【0076】
なお、第1エリアを第1車輪20Aで走行でき、第2エリアを第2車輪20Bで走行できれば、車輪20の数は
図9(a),(b)の例に限定されない。たとえば、第1車輪20Aと第2車輪20Bを4つずつ設け、走行機構12の構成を変更してもよい。また、枠体40は1つであってもよい。
【0077】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、車輪20の清浄化動作を行わず、第1エリア内の荷物搬送ロボット10と第2エリア内の別の荷物搬送ロボット10との間で荷物を移動させることが第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0078】
荷物を配達する荷物搬送ロボット10は、第2エリアに進入せず、配達先の入り口前で停止する。情報処理部126は、通信部52を介して、配達先の建物内に位置する別の荷物搬送ロボット10に対して荷物受け渡し指示を送信する。荷物受け渡し指示を受信した別の荷物搬送ロボット10は、配達先の建物内を走行し、入り口まで移動する。別の荷物搬送ロボット10は、第1エリアには進入せず、配達先の建物内だけを走行するため、車輪20が汚れ難い。
【0079】
図10は、第4の実施の形態に係る2台の荷物搬送ロボット10による荷物16の受け渡しを説明するための図である。第2エリアA2の別の荷物搬送ロボット10は、カメラ50の撮像画像とオブジェクト検出センサ34の検出結果にもとづいて、荷物16を受け取れる程度の所定距離まで第1エリアA1の荷物搬送ロボット10に接近する。荷物搬送ロボット10と別の荷物搬送ロボット10は、枠体40の開口が同じ方向を向いてほぼ直線上に整列する。
【0080】
荷物搬送ロボット10は、第1エリアA1において、第2エリアA2内の別の搬送ロボット10との間で荷物の受け渡しを行う。荷物搬送ロボット10の運動制御部122は、別の荷物搬送ロボット10に荷物16を移動させる場合、起立アクチュエータ30を駆動して、走行機構12を起立姿勢に制御し、傾斜アクチュエータ46を駆動して、別の荷物搬送ロボット10側に枠体40を傾斜させる。情報処理部126は、荷物16のロックを解除する。これにより、荷物16は傾斜した第2突条部56b上を滑る。
【0081】
別の荷物搬送ロボット10の運動制御部122は、走行機構12を水平姿勢に維持し、枠体40を直立状態に維持する。
【0082】
このように荷物搬送ロボット10は、別の荷物搬送ロボット10の第2突条部56bより高い位置から荷物16を滑らせ、別の荷物搬送ロボット10の第2突条部56b上に荷物16を移動させる。
【0083】
別の荷物搬送ロボット10の運動制御部122は、荷物搬送ロボット10の枠体40の傾斜方向に別の荷物搬送ロボット10の枠体40を傾斜させてもよい。別の荷物搬送ロボット10の枠体40の傾斜角度は、荷物搬送ロボット10の枠体40の傾斜角度より小さい。これにより、別の荷物搬送ロボット10が荷物を受け入れやすくなる。
【0084】
荷物搬送ロボット10の突条部56に搬送用ローラ(図示せず)が配置され、枠体40を傾斜させた状態でモータにより搬送用ローラを回転させて荷物16を送り出してもよい。別の荷物搬送ロボット10の突条部56にも搬送用ローラが配置され、搬送用ローラを回転させて荷物16を受け入れてもよい。これにより、荷物16をより移動させやすくなる。
【0085】
あるいは荷物搬送ロボット10は、枠体40を傾斜させた状態で別の荷物搬送ロボット10に向けて荷物16を押し出すマニピュレータ(図示せず)を備えてもよい。マニピュレータは枠体40に設けられてよい。また、2台のマニピュレータを設け、枠体40を傾斜させず、2台のマニピュレータが荷物16を挟んで保持し、保持した荷物16を別の荷物搬送ロボット10の枠体40内に移動させてもよい。
【0086】
別の荷物搬送ロボット10の枠体40内に荷物16が移動すると、別の荷物搬送ロボット10の情報処理部126は、荷物16のロックを行い、走行制御部120は、別の荷物搬送ロボット10を予め定められた配達位置に向けて走行させる。
【0087】
動物の糞などが付着したことなどにより車輪20の汚れの度合いが高い場合、第1の実施の形態の清浄化動作によって車輪20の汚れを落とすか、または、第3の実施の形態の清浄化動作によって接地する車輪20を変更しても、ユーザは荷物搬送ロボット10が建物内を走行することに抵抗感を持つ可能性がある。本実施の形態では、第1エリアA1を走行した荷物搬送ロボット10は第2エリアA2に進入しないので、より確実に建物内を汚れ難くでき、ユーザに抵抗感を持たせる恐れもない。
【0088】
荷物の配達を説明したが、集荷も同様に行える。この場合、第2エリアA2においてユーザにより別の荷物搬送ロボット10に荷物16が積まれ、別の荷物搬送ロボット10は、荷物受け渡し指示を受信すると第1エリアA1の荷物搬送ロボット10に接近する。この後、荷物搬送ロボット10と別の荷物搬送ロボット10との荷物の受け渡し動作は、上述の説明とは逆に実行される。
【0089】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態はあくまでも例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0090】
たとえば、第2の実施の形態と、第3または第4の実施の形態とを組み合わせてもよい。
【0091】
本発明の一態様の搬送ロボットは、次のように表現することもできる。
[項目1]
物体を収集または配達する搬送ロボットであって、
走行機能を有する走行機構と、
前記走行機構に支持され、前記物体を載せるための本体部と、を備え、
第1エリアにおいて、第2エリア内の別の搬送ロボットとの間で前記物体の受け渡しを行う、
ことを特徴とする搬送ロボット。
【0092】
[項目2]
前記本体部は、内側が前記物体を収容する収容空間を構成する枠体を有し、
前記搬送ロボットは、前記別の搬送ロボットに前記物体を移動させる場合、前記走行機構を起立姿勢に制御し、前記別の搬送ロボット側に前記枠体を傾斜させる制御部を備える、ことを特徴とする項目1に記載の搬送ロボット。
【符号の説明】
【0093】
10・・・荷物搬送ロボット(移動体)、12・・・走行機構、14・・・本体部、20・・・車輪、20a・・・前輪、20b・・・中輪、20c・・・後輪、20A・・・第1車輪、20B・・・第2車輪、22・・・第1車輪体、24・・・第2車輪体、30・・・起立アクチュエータ、36・・・前輪モータ、38・・・後輪モータ、40・・・枠体、44・・・回転アクチュエータ、46・・・傾斜アクチュエータ、48・・・ディスプレイ、50・・・カメラ、54・・・フック、70・・・汚れ除去マット、100・・・制御部、102・・・受付部、104・・・GPS受信機、106・・・センサデータ処理部、108・・・マップ保持部、110・・・アクチュエータ機構、120・・・走行制御部、122・・・運動制御部、124・・・表示制御部、126・・・情報処理部。