(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F02D 43/00 20060101AFI20221220BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F02D43/00 301Y
F02D29/02 321A
F02D43/00 301N
F02D43/00 301V
(21)【出願番号】P 2019190464
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 久幸
(72)【発明者】
【氏名】市川 晃次
(72)【発明者】
【氏名】山口 正晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏和
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-137531(JP,A)
【文献】特開2016-047676(JP,A)
【文献】特開2008-151041(JP,A)
【文献】特開2019-157770(JP,A)
【文献】特開2017-133372(JP,A)
【文献】特開2008-151064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの排気管と吸気管とを連絡する連絡管および前記連絡管に設けられたバルブを有する排気再循環装置と、
前記エンジンを制御すると共に前記バルブの目標開度に基づいて前記バルブを制御し、更に、自動停止条件の成立に基づいて前記エンジンの自動停止を行なうと共にその後の自動始動条件の成立に基づいて前記エンジンの自動始動を行なう制御装置と、
を備える車両であって、
前記制御装置は、前記バルブが異物を噛み込んだか否かの診断である噛み込み診断を行なっているときには、前記エンジンの自動停止を禁止
し、
前記制御装置は、前記自動停止条件の成立開始から所定時間以内に、前記噛み込み診断により前記バルブが異物を噛み込んでいないと確定したときには、前記エンジンの自動停止を許可する、
車両。
【請求項2】
請求項
1記載の車両であって、
前記制御装置は、前記自動停止条件の成立開始から所定時間以内に、前記噛み込み診断により前記バルブが異物を噛み込んでいないと確定しなかったときには、前記エンジンの自動停止の禁止を継続する、
車両。
【請求項3】
請求項
1または2記載の車両であって、
前記吸気管内の圧力を検出吸気圧として検出する圧力センサを備え、
前記制御装置は、
前記吸気管内の圧力を推定吸気圧として推定し、
前記目標開度が第1所定開度以上に至ってから前記第1所定開度よりも小さい第2所定開度以下に至った開度条件を含む診断条件が成立したときに、前記検出吸気圧と前記推定吸気圧との吸気圧差分と閾値との比較により、前記噛み込み診断を行なう、
車両。
【請求項4】
請求項
3記載の車両であって、
前記診断条件は、前記開度条件に加えて、前記推定吸気圧または前記検出吸気圧が所定圧力未満である吸気圧条件も含む、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、エンジンと、エンジンの排気管と吸気管とを連絡するEGR(Exhaust Gas Recirculation)パイプおよびそのEGRパイプに設けられたEGRバルブを有するEGR装置と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、エンジン停止要求があるときには、エンジンをアイドル運転させると共にEGR装置の作動を停止させ、吸入空気量に基づいて推定した吸気管内のEGRガスの残留量が所定値を下回ったときに、エンジンの停止処理を実行する。このようにして、エンジンの始動時における排気性状の悪化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした車両では、EGRバルブが異物を噛み込んだ状態でエンジンを停止させると、その後にエンジンを始動する際に、意に反してEGRガスが吸気管に供給され、エンジンの燃焼が安定せずに、エンジンの始動を失敗する可能性がある。
【0005】
本発明の車両は、エンジンの始動を失敗するという不都合が生じるのを回避することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の車両は、
エンジンと、
前記エンジンの排気管と吸気管とを連絡する連絡管および前記連絡管に設けられたバルブを有する排気再循環装置と、
前記エンジンを制御すると共に前記バルブの目標開度に基づいて前記バルブを制御し、更に、自動停止条件の成立に基づいて前記エンジンの自動停止を行なうと共にその後の自動始動条件の成立に基づいて前記エンジンの自動始動を行なう制御装置と、
を備える車両であって、
前記制御装置は、前記バルブが異物を噛み込んだか否かの診断である噛み込み診断により、前記バルブが異物を噛み込んだと確定したときには、前記エンジンの自動停止を禁止する、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の第1の車両では、バルブが異物を噛み込んだか否かの診断である噛み込み診断により、バルブが異物を噛み込んだと確定したときには、エンジンの自動停止を禁止する。これにより、バルブが異物を噛み込んだ状態でエンジンを自動停止して次回のエンジンの自動始動を失敗する、という不都合が生じるのを回避することができる。
【0009】
本発明の第2の車両は、
エンジンと、
前記エンジンの排気管と吸気管とを連絡する連絡管および前記連絡管に設けられたバルブを有する排気再循環装置と、
前記エンジンを制御すると共に前記バルブの目標開度に基づいて前記バルブを制御し、更に、自動停止条件の成立に基づいて前記エンジンの自動停止を行なうと共にその後の自動始動条件の成立に基づいて前記エンジンの自動始動を行なう制御装置と、
を備える車両であって、
前記制御装置は、前記バルブが異物を噛み込んだか否かの診断である噛み込み診断を行なっているときには、前記エンジンの自動停止を禁止する、
ことを要旨とする。
【0010】
この本発明の第2の車両では、バルブが異物を噛み込んだか否かの診断である噛み込み診断を行なっているときには、エンジンの自動停止を禁止する。噛み込み診断を行なっているときには、バルブが異物を噛み込んでいないと確定していない、即ち、バルブが異物を噛み込んだ可能性があるから、エンジンの自動停止を禁止することにより、これにより、バルブが異物を噛み込んだ状態でエンジンを自動停止して次回のエンジンの自動始動を失敗する、という不都合が生じるのを回避することができる。
【0011】
本発明の第2の車両において、前記制御装置は、前記自動停止条件の成立開始から所定時間以内に、前記噛み込み診断により前記バルブが異物を噛み込んでいないと確定したときには、前記エンジンの自動停止を許可するものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記自動停止条件の成立開始から所定時間以内に、前記噛み込み診断により前記バルブが異物を噛み込んでいないと確定しなかったときには、前記エンジンの自動停止の禁止を継続するものとしてもよい。
【0012】
本発明の第1または第2の車両において、前記吸気管内の圧力を検出吸気圧として検出する圧力センサを備え、前記制御装置は、前記吸気管内の圧力を推定吸気圧として推定し、前記目標開度が第1所定開度以上に至ってから前記第1所定開度よりも小さい第2所定開度以下に至った開度条件を含む診断条件が成立したときに、前記検出吸気圧と前記推定吸気圧との吸気圧差分と閾値との比較により、前記噛み込み診断を行なうものとしてもよい。ここで、「第1所定開度」は、バルブが異物を噛み込んだときにその検出が所望される異物の最小径に対応する開度よりも若干大きい開度として設定される。したがって、診断条件が成立したときには、噛み込み診断を行なうことにより、バルブが異物を噛み込んだときにそれを検出することができる。また、診断条件が成立していないときには、噛み込み診断を行なわないことにより、バルブが異物を噛み込んだと誤検出するのを抑制することができる。
【0013】
この場合、前記診断条件は、前記開度条件に加えて、前記推定吸気圧または前記検出吸気圧が所定圧力未満である吸気圧条件も含むものとしてもよい。推定吸気圧や検出吸気圧が大きい(負圧として小さい)ときには、バルブの閉弁要求に対してバルブが異物を噛み込んで閉弁できないときでも、連絡管を流れる排気量が多くなりにくく、吸気圧差分が大きくなりにくいと想定される。即ち、バルブが異物を噛み込んでいないときと噛み込んだときとの吸気圧差分のずれが小さいと想定される。このため、推定吸気圧または検出吸気圧が所定圧力以上のときには、診断条件が成立していないとして噛み込み診断を行なわないことにより、バルブが異物を噛み込んだと誤検出するのをより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例としてのエンジン装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図3】EGRバルブ54の目標開度Ov*と開履歴フラグFoとカウンタCと診断条件フラグFdとの様子の一例を示す説明図である。
【
図4】電子制御ユニット70により実行される自動停止禁止フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図5】電子制御ユニット70により実行される自動停止許否ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図6】変形例の処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図7】エンジン12が或る回転数で回転していて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだときの推定吸気圧Pineと吸気圧差分ΔPinとの関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例としての自動車10の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図示するように、エンジン12と、排気再循環装置(以下、「EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置」という)50と、エンジン12のクランクシャフト14に接続されると共にデファレンシャルギヤ62を介して駆動輪64a,64bに接続される変速機60と、車両全体の制御を行なう電子制御ユニット70とを備える。
【0017】
エンジン12は、例えばガソリンや軽油などの燃料を用いて動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン12は、エアクリーナ22により清浄された空気を吸気管23に吸入してスロットルバルブ24やサージタンク25の順に流通させると共に吸気管23のサージタンク25よりも下流側で燃料噴射弁26から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ28を介して燃焼室29に吸入し、点火プラグ30による電気火花によって爆発燃焼させる。そして、爆発燃焼によるエネルギにより押し下げられるピストン32の往復運動をクランクシャフト14の回転運動に変換する。燃焼室29から排気バルブ31を介して排気管33に排出される排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒(三元触媒)34aを有する浄化装置34を介して外気に排出されると共に、EGR装置50を介して吸気管23に供給(還流)される。
【0018】
EGR装置50は、EGR管52とEGRバルブ54とを備える。EGR管52は、排気管33の浄化装置34よりも下流側と吸気管23のサージタンク25とを連絡する。EGRバルブ54は、EGR管52に設けられており、弁座54aおよび弁体54bを有する。弁座54aは、EGR管52の内径よりも小さい径の穴を有する。弁体54bは、ステッピングモータ55により駆動され、弁体54bの軸方向(図中上下方向)に移動する。このEGRバルブ54は、弁体54bが弁座54aに接近する側(図中下側)に移動して弁体54bの先端部(図中下端部)が弁座54aの穴を塞ぐことにより閉弁する。また、EGRバルブ54は、弁体54bが弁座54aから離間する側(図中上側)に移動して弁体54bの先端部が弁座54aから離間して弁座54aの穴を開口させることにより開弁する。このEGR装置50は、ステッピングモータ55によってEGRバルブ54の開度を調節することにより、排気管33の排気の還流量を調節して吸気管23に還流させる。エンジン12は、このようにして空気と排気と燃料との混合気を燃焼室29に吸引することができる。以下、この排気の還流を「EGR」といい、排気の還流量を「EGR量」という。
【0019】
電子制御ユニット70は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートを備える。電子制御ユニット70には、エンジン12を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。
【0020】
電子制御ユニット70に入力される信号としては、例えば、エンジン12のクランクシャフト14の回転位置を検出するクランクポジションセンサ40からのクランク角θcrや、エンジン12の冷却水の温度を検出する水温センサ42からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ28を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ31を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ44からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ24のポジションを検出するスロットルポジションセンサ46からのスロットル開度THや、吸気管23に取り付けられたエアフローメータ48からの吸入空気量Qa、吸気管23に取り付けられた温度センサ49からの吸気温Ta、サージタンク25に取り付けられた圧力センサ57からのサージタンク25内の圧力の検出値としての検出吸気圧Pindも挙げることができる。排気管33に取り付けられた空燃比センサ35aからの空燃比AFや、排気管33に取り付けられた酸素センサ35bからの酸素信号O2も挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号IGや、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPも挙げることができる。アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。
【0021】
電子制御ユニット70からは、エンジン12を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力される。電子制御ユニット70から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ24のポジションを調節するスロットルモータ36への制御信号や、燃料噴射弁26への制御信号、点火プラグ30への制御信号、EGRバルブ54の開度を調整するステッピングモータ55への制御信号を挙げることができる。また、変速機60への制御信号も挙げることができる。
【0022】
電子制御ユニット70は、クランクポジションセンサ40からのクランク角θcrに基づいてエンジン12の回転数Neを演算する。また、電子制御ユニット70は、エアフローメータ48からの吸入空気量Qaに基づいて、サージタンク25内の圧力の推定値としての推定吸気圧Pineを求める。ここで、推定吸気圧Pineは、例えば、吸入空気量Qaと推定吸気圧Pineとの実験や解析により予め定められた関係に吸入空気量Qaを適用して求めることができる。
【0023】
こうして構成された実施例の自動車10では、電子制御ユニット70は、アクセル開度Accや車速Vに基づいて変速機60の目標変速段Gs*を設定し、変速機60の変速段Gsが目標変速段Gs*となるように変速機60を制御する。また、アクセル開度Accや車速V、変速機60の変速段Gsに基づいてエンジン12の目標トルクTe*を設定し、エンジン12が目標トルクTe*に基づいて運転されるように、エンジン12の運転制御(例えば、吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)や、EGR装置50の制御を行なう。
【0024】
ここで、EGR装置50の制御では、EGR条件が成立しているときには、エンジン12の運転ポイント(目標トルクTe*および回転数Ne)などに基づいて目標EGR量Vegr*を設定し、目標EGR量Vegr*に基づいてEGRバルブ54の目標開度Ov*を設定し、EGRバルブ54の目標開度Ov*に基づいてステッピングモータ55を制御する。一方、EGR条件が成立していないときには、EGRバルブ54の目標開度Ov*に値0を設定し、EGRバルブ54の目標開度Ov*に基づいてステッピングモータ55を制御する。EGR条件としては、エンジン12の暖機が完了している条件や、エンジン12の目標トルクTe*がEGR実行領域内にある条件などが用いられる。
【0025】
また、実施例の自動車10では、電子制御ユニット70は、
図2の処理ルーチンを実行することにより、EGRバルブ54が弁座54aと弁体54bとの間で異物を噛み込んだか否かの診断である噛み込み診断を行なう。このルーチンは、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定していないときに、繰り返し実行される。
【0026】
図2の処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、最初に、EGRバルブ54の目標開度Ov*を入力し(ステップS100)、入力したEGRバルブ54の目標開度Ov*を閾値Ovref1と比較する(ステップS110)。ここで、閾値Ovref1は、EGRバルブ54が異物を噛み込んだときにその検出が所望される異物の最小径に対応する開度よりも若干大きい開度として定められ、例えば、15%~30%程度の開度が用いられる。
【0027】
ステップS110でEGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref1未満のときには、診断条件フラグFdに値0を設定し(ステップS270)、カウンタCを値0にクリアし(ステップS280)、開履歴フラグFoに値0を設定して(ステップS290)、本ルーチンを終了する。ここで、診断条件フラグFdは、噛み込み診断の後述の診断条件が成立しているか否かを意味する。カウンタCは、診断条件の成立の継続時間に相当する値を意味する。開履歴フラグFoは、EGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref1以上に至った履歴があるか否かを意味する。
【0028】
ステップS110でEGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref1以上のときには、開履歴フラグFoに値1を設定し(ステップS120)、EGRバルブ54の目標開度Ov*を入力し(ステップS130)、入力したEGRバルブ54の目標開度Ov*を閾値Ovref1よりも小さい閾値Ovref2と比較する(ステップS140)。ここで、閾値Ovref2としては、0%~閾値Ovref1よりも若干小さい値程度の開度が用いられる。
【0029】
実施例では、噛み込み診断の診断条件として、EGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref1以上に至ってから閾値Ovref2以下に至る開度変化条件を用いるものとした。以下、この理由について説明する。前回の噛み込み診断でEGRバルブ54が異物を噛み込んでないと確定したときや、未だEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないとき(例えば、後述の異物除去制御の実行により異物を除去してから1回も診断条件が成立していないときなど)において、EGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref1に至る前は、EGRバルブ54の弁座54aと弁体54bとの間に異物が入り込む可能性は十分に低く、弁座54aと弁体54bとの間で異物を噛み込んだ可能性は十分に低いと想定される。これに対して、開度変化条件が成立しているときには、EGRバルブ54の開度を小さくしようとする(例えば、閉弁しようとする)際に、EGRバルブ54が弁座54aと弁体54bとの間で異物を噛み込んだ可能性があると想定される。実施例では、このことを踏まえて、ステップS110,S140の処理を実行するものとした。
【0030】
ステップS140でEGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref2よりも大きいときには、診断条件が成立していないと判断し、診断条件フラグFdに値0を設定すると共に(ステップS150)、カウンタCを値0にクリアして(ステップS160)、ステップS130に戻る。
【0031】
ステップS140でEGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref2以下のときには、診断条件が成立していると判断し、診断条件フラグFdに値1を設定し(ステップS170)、カウンタCを値1だけカウントアップし(ステップS180)、そのカウンタCを閾値Crefと比較する(ステップS190)。ここで、閾値Crefは、噛み込み診断の診断時間に相当する値として定められ、例えば、数百msec~1sec程度に相当する値が用いられる。
【0032】
ステップS190でカウンタCが閾値Cref未満のときには、圧力センサ57からの検出吸気圧Pindと電子制御ユニット70により推定された推定吸気圧Pineとを入力する(ステップS200)。続いて、検出吸気圧Pindと推定吸気圧Pineとの差分として吸気圧差分ΔPin(=|Pind-Pine|)を演算し(ステップS210)、演算した吸気圧差分ΔPinを閾値ΔPinrefと比較する(ステップS220)。ここで、閾値ΔPinrefは、EGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを判定するのに用いられる閾値であり、実験や解析により予め定められる。
【0033】
ステップS220で吸気圧差分ΔPinが閾値ΔPinref未満のときには、その継続時間(以下、「差分小継続時間」という)を確定時間T1と比較する(ステップS230)。ここで、確定時間T1は、EGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定するのに要する時間であり、例えば、噛み込み診断の診断時間(閾値Crefに相当する時間)よりも若干短い時間として定められる。差分小継続時間が確定時間T1未満のときには、EGRバルブ54が異物を噛み込んでいないと確定せずに、ステップS130に戻る。差分小継続時間が確定時間T1以上のときには、EGRバルブ54が異物を噛み込んでいないと確定して(ステップS240)、ステップS130に戻る。
【0034】
ステップS220で吸気圧差分ΔPinが閾値ΔPinref以上のときには、その継続時間(以下、「差分大継続時間」という)を確定時間T1と比較する(ステップS250)。差分大継続時間が確定時間T1未満のときには、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定せずに、ステップS130に戻る。差分大継続時間が確定時間T1以上のときには、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定して(ステップS260)、ステップS130に戻る。
【0035】
なお、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定すると、その情報を図示しない不揮発性メモリに記憶させたり、その情報を図示しない警告灯の点灯や図示しないスピーカからの音声出力などにより運転者に報知したりするものとしてもよい。また、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定すると、その後に適切なタイミングでEGRバルブ54を所定回数や所定時間だけ開閉させる異物除去制御を実行して、異物を除去するのが好ましい。こうして異物を除去すると、EGRバルブ54が異物を噛み込んだとの確定を解除して、本ルーチンの繰り返しの実行を再開する。
【0036】
このように、開度変化条件が成立しているときには、噛み込み診断を行なうことにより、EGRバルブ54が異物を噛み込んだときにそれを検出することができる。これに対して、開度変化条件が成立していないときには、噛み込み診断を行なわないことにより、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと誤検出(誤確定)するのを抑制することができる。
【0037】
開度変化条件が成立していないときに噛み込み診断を行なわないことの意義は、EGR装置50として、EGR管52の径が大きい大流量EGR装置が用いられる場合に、EGR管52の径が小さい小流量EGR装置が用いられる場合に比してより大きい。前者の場合、後者の場合に比して、EGRバルブ54が噛み込んでも不都合が生じない(噛み込みを許容できる)異物の大きさが小さい。これは、EGRバルブ54の閉弁要求に対してEGRバルブ54が異物を噛み込んで閉弁できないときに、前者の場合、後者の場合に比して、意に反するEGR量が多く、エンジン12で失火やストール等の不都合を生じやすいためである。このため、大流量EGR装置が用いられる場合、閾値ΔPinrefを小さくするのが好ましいものの、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと誤検出(誤確定)しやすくなる。こうした理由により、大流量EGR装置が用いられる場合、開度変化条件が成立していないときに噛み込み診断を行なわないことの意義がより大きいのである。
【0038】
こうしてステップS130,S140,S170~S240の処理またはステップS130,S140,S170~S220,S250,S260の処理を繰り返し実行して、ステップS190でカウンタCが閾値Cref以上に至ると、噛み込み診断を終了するとして診断条件フラグFdに値0を設定し(ステップS270)、カウンタCを値0にクリアし(ステップS280)、開履歴フラグFoに値0を設定して(ステップS290)、本ルーチンを終了する。
【0039】
図3は、EGRバルブ54の目標開度Ov*と開履歴フラグFoとカウンタCと診断条件フラグFdとの様子の一例を示す説明図である。
図3では、閾値Ovref2として値0が用いられる場合を図示した。図示するように、開履歴フラグFoが値0のときに、EGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref1以上に至ると(時刻t1,t4)、開履歴フラグFoを値1に切り替えて、その後にEGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref2以下に至ると(時刻t2,t5)、診断条件フラグFdを値0から値1に切り替えると共にカウンタCのカウントアップを開始し、噛み込み診断を開始する。そして、カウンタCが閾値Cref以上に至ると(時刻t3,t6)、噛み込み診断を終了し、診断条件フラグFdを値0に切り替えると共にカウンタCを値0にクリアすると共に開履歴フラグFoを値0に切り替える。
【0040】
実施例の自動車10では、電子制御ユニット70は、自動停止条件の成立に基づいてエンジン12の自動停止を行なうと共に自動始動条件の成立に基づいてエンジン12の自動始動を行なう。自動停止条件としては、車速Vが値0やそれよりも若干大きい値以下である条件や、ブレーキペダル85が踏み込まれている条件などが用いられる。エンジン12の自動停止では、エンジン12をアイドル運転しながらEGRバルブ54の目標開度Ov*に値0を設定してEGRバルブ54を制御し、その後にエンジン12の運転制御(吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)を停止する。このため、EGRバルブ54が異物を噛み込んでいなければ、EGRバルブ54が閉弁する。自動始動条件としては、ブレーキペダル85の踏み込みが解除された条件などが用いられる。また、エンジン12の始動では、図示しないスタータによりエンジン12をクランキングし、エンジン12の運転制御を開始する。以下、エンジン12の自動停止に関する部分について説明する。
【0041】
図4は、電子制御ユニット70により実行される自動停止禁止フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートであり、
図5は、電子制御ユニット70により実行される自動停止許否ルーチンの一例を示すフローチャートである。以下、
図4のルーチン、
図5のルーチンの順に説明する。
【0042】
図4の自動停止禁止フラグ設定ルーチンについて説明する。このルーチンは、繰り返し実行される。このルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、最初に、
図2の処理ルーチンによりEGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定しているか否かを判定する(ステップS300)。そして、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定しているときには、自動停止禁止フラグFsに値1を設定して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。自動停止禁止フラグFsの詳細については後述する。
【0043】
ステップS300でEGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定していないときには、
図2の処理ルーチンにより設定される診断条件フラグFdの値を調べる(ステップS320)。そして、診断条件フラグFdが値0のときには、診断条件が成立していないと判断し、自動停止禁止フラグFsに値0を設定して(ステップS360)、本ルーチンを終了する。なお、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定していないときで且つ診断条件が成立していないときとしては、前回の噛み込み診断でEGRバルブ54が異物を噛み込んでないと確定してから新たに診断条件が成立していないときや、未だEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないとき(異物除去制御の実行により異物を除去してから新たに診断条件が成立していないときなど)を挙げることができる。そして、これらのときには、上述したように、EGRバルブ54の弁座54aと弁体54bとの間に異で異物を噛み込んだ可能性は十分に低いと想定される。
【0044】
ステップS320で診断条件フラグFdが値1のときには、診断条件が成立していると判断し、自動停止禁止フラグFsに値1を設定する(ステップS330)。そして、
図2の処理ルーチンによりEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定しているか否かを判定する(ステップS340,S350)。そして、EGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないときには、ステップS320に戻る。したがって、診断条件が成立して噛み込み診断を行なっていて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないときには、自動停止禁止フラグFsを値1で保持することになる。
【0045】
ステップS340でEGRバルブ54が異物を噛み込んでいないと確定しているときには、自動停止禁止フラグFsに値0を設定して(ステップS360)、本ルーチンを終了する。また、ステップS350でEGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定しているときには、自動停止禁止フラグFsに値1を設定して(ステップS370)、本ルーチンを終了する。
【0046】
次に、
図5の自動停止許否ルーチンについて説明する。このルーチンは、自動停止条件が成立したときに実行される。このルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、最初に、本ルーチンの実行開始(自動停止条件の成立開始)からの経過時間Tcoの計時を開始する(ステップS400)。続いて、
図4の自動停止禁止フラグ設定ルーチンにより設定される自動停止禁止フラグFsの値を調べる(ステップS410)。
【0047】
ステップS410で自動停止禁止フラグFsが値0のときには、エンジン12の自動停止を許可して(ステップS440)、本ルーチンを終了する。エンジン12の自動停止を許可すると、電子制御ユニット70は、エンジン12の自動停止を行なう。
図2の処理ルーチンにより、EGRバルブ54が異物を噛み込んでいないと確定しているときには、
図4の自動停止禁止フラグ設定ルーチンにより、自動停止禁止フラグFsに値0が設定される。したがって、自動停止条件が成立したときに、EGRバルブ54が異物を噛み込んでいないと確定しているときには、直ちにエンジン12の自動停止を行なうことになる。
【0048】
ステップS410で自動停止禁止フラグFsが値1のときには、エンジン12の自動停止を禁止する(ステップS420)。エンジン12の自動停止を禁止すると、電子制御ユニット70は、エンジン12の運転制御を継続する。自動停止条件が成立しているときを考えているから、例えば、エンジン12をアイドル回転数でアイドル運転(無負荷運転)する。
【0049】
続いて、経過時間Tcoを所定時間Tco1と比較する(ステップS430)。ここで、所定時間Tco1としては、例えば、数秒程度が用いられる。経過時間Tcoが所定時間Tco1以下のときには、ステップS410に戻る。こうしてステップS410~S430の処理を繰り返し実行しているときに、ステップS410で自動停止禁止フラグFsが値0であると判定すると、エンジン12の自動停止を許可して(ステップS440)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS410~S430の処理を繰り返し実行して、ステップS430で経過時間Tcoが所定時間Tco1よりも長くなると、エンジン12の自動停止を許可することなく、本ルーチンを終了する。
【0050】
図2の処理ルーチンにより、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定しているときや、診断条件が成立していて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないときには、
図4の自動停止禁止フラグ設定ルーチンにより、自動停止禁止フラグFsに値1が設定される。したがって、自動停止条件が成立したときにおいて、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定しているときや、診断条件が成立していて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないときには、エンジン12の自動停止を禁止することになる。そして、自動停止条件の成立が開始してから所定時間Tco1以内に、
図2の処理ルーチンによりEGRバルブ54が異物を噛み込んでいないと確定して
図4の自動停止禁止フラグ設定ルーチンにより自動停止禁止フラグFsに値0が設定されると、エンジン12の自動停止を行なうことになる。また、自動停止条件の成立が開始してから所定時間Tco1以内に、
図4の自動停止禁止フラグ設定ルーチンにより自動停止禁止フラグFsに値0が設定されないときには、エンジン12の自動停止の禁止を継続することになる。
【0051】
EGRバルブ54が異物を噛み込んだ状態でエンジン12を自動停止させると、その後にエンジン12を自動始動する際に、意図しないEGRが行なわれ、エンジン12の燃焼が安定せずに、エンジン12の始動を失敗する可能性がある。これを踏まえて、実施例では、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定したときや、診断条件が成立していて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないときには、エンジン12の自動停止を禁止するものとした。これにより、EGRバルブ54が異物を噛み込んだ状態でエンジン12を自動停止して次回のエンジン12の始動を失敗する、という不都合が生じるのを回避することができる。
【0052】
以上説明した実施例の自動車10では、電子制御ユニット70は、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定したときや、診断条件が成立して噛み込み診断を行なっていて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないときには、エンジン12の自動停止を禁止する。これにより、EGRバルブ54が異物を噛み込んだ状態でエンジン12を自動停止して次回のエンジン12の始動を失敗する、という不都合が生じるのを回避することができる。
【0053】
実施例の自動車10では、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定したときや、診断条件が成立して噛み込み診断を行なっていて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定していないときには、エンジン12の自動停止を禁止するものとした。しかし、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定したときには、エンジン12の自動停止を禁止するものの、診断条件が成立して噛み込み診断を行なっていて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだと確定していないときには、エンジン12の自動停止を禁止しないものとしてもよい。
【0054】
実施例の自動車10では、電子制御ユニット70は、噛み込み診断を行なっているときに、カウンタCが閾値Cref以上に至ると、噛み込み診断を終了するものとした。しかし、カウンタCが閾値Cref未満でも、EGRバルブ54が異物を噛み込んだか否かを確定すると、噛み込み診断を終了し、診断条件フラグFdに値0を設定するものとしてもよい。
【0055】
実施例の自動車10では、電子制御ユニット70は、
図2の処理ルーチンを実行するものとした。しかし、これに代えて、
図6の処理ルーチンを実行するものとしてもよい。
図6の処理ルーチンは、ステップS130の処理がステップS132の処理に置き換えられている点や、ステップS142の処理が追加されている点を除いて、
図2の処理ルーチンと同一である。したがって、
図6の処理ルーチンのうち
図2の処理ルーチンと同一の処理については、同一のステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0056】
図6の処理ルーチンでは、電子制御ユニット70は、ステップS120で開履歴フラグFoに値1を設定すると、EGRバルブ54の目標開度Ov*に加えて推定吸気圧Pineを入力する(ステップS132)。そして、EGRバルブ54の目標開度Ov*を閾値Ovref2と比較すると共に(ステップS140)、推定吸気圧Pineを閾値Pinerefと比較する(ステップS142)。ここで、閾値Pinerefとしては、例えば、数十kPa程度が用いられる。この変形例では、噛み込み診断の診断条件として、開度変化条件に加えて、推定吸気圧Pineが閾値Pineref未満である吸気圧条件も用いるものとした。この理由については後述する。
【0057】
ステップS140でEGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref2よりも大きいときや、ステップS142で推定吸気圧Pineが閾値Pineref以上のときには、診断条件が成立していないと判断し、ステップS150以降の処理を実行する。
【0058】
ステップS140でEGRバルブ54の目標開度Ov*が閾値Ovref2以下で、且つ、ステップS142で推定吸気圧Pineが閾値Pineref未満のときには、診断条件が成立していると判断し、ステップS170以降の処理を実行する。
【0059】
ここで、診断条件として、開度変化条件に加えて吸気圧条件も用いる理由について説明する。
図5は、エンジン12が或る回転数で回転していて且つEGRバルブ54が異物を噛み込んだときの推定吸気圧Pineと吸気圧差分ΔPinとの関係の一例を示す説明図である。この関係は、発明者らが実験や解析により予め求めた。
図5から、推定吸気圧Pineが大きいほど吸気圧差分ΔPin(=|Pind-Pine|)が小さくなることが分かる。これは、推定吸気圧Pineが大きい(負圧として小さい)ときには、EGRバルブ54の閉弁要求に対してEGRバルブ54が異物を噛み込んで閉弁できないときでも、意に反したEGR量が多くなりにくく、吸気圧差分ΔPinが大きくなりにくいためである。EGRバルブ54が異物を噛み込んでいないときと噛み込んだときとの吸気圧差分ΔPinのずれが小さい場合、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと誤検出(誤確定)しやすくなる。これを踏まえて、この変形例では、診断条件として、開度変化条件に加えて吸気圧条件も用いるものとした。これにより、EGRバルブ54が異物を噛み込んだと誤検出(誤確定)するのをより抑制することができる。
【0060】
この変形例では、噛み込み診断の診断条件として、開度変化条件と、推定吸気圧Pineが閾値Pineref未満である吸気圧条件と、が用いられるものとした。しかし、吸気圧条件では、推定吸気圧Pineに代えて、検出吸気圧Pindが用いられるものとしてもよい。
【0061】
実施例の自動車10やこの変形例では、噛み込み診断の診断条件として、開度変化条件として用いたり、開度変化条件および吸気圧条件を用いたりするものとした。しかし、診断条件として、これらに代えて、例えば、EGR条件の成立中にアクセルペダル83が大きく踏み込まれて(例えば、アクセル開度Accが100%となって)エンジン12の目標トルクTe*がEGR実行領域の上限よりも大きくなったことによりEGR条件が成立しなくなった条件や、EGR条件の成立中にアクセルオフされてエンジン12の目標トルクTe*がEGR実行領域の下限よりも小さくなったことによりEGR条件が成立しなくなった条件などが用いられるものとしてもよい。
【0062】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン12が「エンジン」に相当し、EGR装置50が「排気再循環装置」に相当し、電子制御ユニット70が「制御装置」に相当する。
【0063】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0064】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、22 エアクリーナ、23 吸気管、24 スロットルバルブ、25 サージタンク、26 燃料噴射弁、28 吸気バルブ、29 燃焼室、30 点火プラグ、31 排気バルブ、32 ピストン、33 排気管、34 浄化装置、35a 空燃比センサ、35b 酸素センサ、36 スロットルモータ、40 クランクポジションセンサ、42 水温センサ、44 カムポジションセンサ、46 スロットルポジションセンサ、48 エアフローメータ、49 温度センサ、50 EGR装置、52 EGR管、54 EGRバルブ、54a 弁座、54b 弁体、55 ステッピングモータ、57 圧力センサ、60 変速機、62 デファレンシャルギヤ、64a,64b 駆動輪、70 電子制御ユニット。