IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図1
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図2
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図3
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図4
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図5
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図6
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図7
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図8
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図9
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図10
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図11
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図12
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図13
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図14
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図15
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図16
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図17
  • 特許-半導体モジュール及び電力変換装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】半導体モジュール及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/34 20060101AFI20221220BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L23/34 B
H01L23/50 F
H01L25/04 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019192904
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021068803
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】杉町 誠也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伸次
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-125826(JP,A)
【文献】特開2018-107364(JP,A)
【文献】特開2013-070026(JP,A)
【文献】特開2004-022968(JP,A)
【文献】特開2010-186907(JP,A)
【文献】特開2012-084708(JP,A)
【文献】特開2014-060344(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103681376(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0182719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34
H01L 23/50
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の放熱シートと、
前記放熱シートの上に設けられた半導体素子と、
一体的に構成されたリード端子とダイパッドを有するリードフレームと、
前記リードフレームと前記半導体素子を接続し、主電流経路となるワイヤと、
前記放熱シート、前記半導体素子、前記リードフレーム、及び前記ワイヤを封止するモールド樹脂とを備え、
前記リード端子が前記モールド樹脂から引き出され、
前記ダイパッドの下面に前記放熱シートが直接的に接触し、
前記ダイパッドと前記放熱シートの接触部分の真上において前記ワイヤが前記ダイパッドにボンディングされ
前記リードフレームは、前記リード端子と前記ダイパッドとの間に設けられ、前記リード端子と前記ダイパッドよりも小さい断面積を持つ繋ぎ部を有することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
前記リードフレームは、前記リード端子と前記ダイパッドとの間に段差を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記半導体素子は、N側半導体素子と、前記N側半導体素子のP側に接続されたP側半導体素子とを有し、
前記リードフレームは、前記N側半導体素子と前記ワイヤにより接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
絶縁性の放熱シートと、
前記放熱シートの上に設けられた半導体素子と、
一体的に構成されたリード端子とダイパッドを有するリードフレームと、
前記リードフレームと前記半導体素子を接続し、主電流経路となるワイヤと、
前記放熱シート、前記半導体素子、前記リードフレーム、及び前記ワイヤを封止するモールド樹脂と、
前記半導体素子のN側に接続されたN側半導体素子と、
前記N側半導体素子とワイヤ接続されたN側リードフレームとを備え、
前記リード端子が前記モールド樹脂から引き出され、
前記ダイパッドの下面に前記放熱シートが直接的に接触し、
前記ダイパッドと前記放熱シートの接触部分の真上において前記ワイヤが前記ダイパッドにボンディングされ、
前記N側リードフレームのワイヤボンディング部分の下面は前記放熱シートで覆われておらず、前記モールド樹脂から露出していることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項5】
前記N側リードフレームの下面に塗布された絶縁材を更に備えることを特徴とする請求項に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記半導体素子は3相交流電圧回路用の半導体素子を有し、
1つの前記リードフレームが前記3相交流電圧回路用の半導体素子とそれぞれワイヤにより接続されていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記モールド樹脂から引き出された前記リード端子の先端部の厚みが前記リード端子の根元部よりも厚いことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記モールド樹脂から引き出された前記リード端子の先端部に接合された金属製のアタッチメントを更に備えることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記半導体素子はワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
入力される電力を変換して出力する請求項1~の何れか1項に記載の半導体モジュールと、
前記半導体モジュールを制御する制御信号を前記半導体モジュールに出力する制御回路と、
前記半導体モジュールの熱を放熱するヒートシンクとを備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体モジュール内部において半導体素子とリード端子がワイヤにより接続されている。近年、SiC MOSチップを筆頭にパワー半導体素子の高性能化に伴うチップシュリンクが加速している。これに伴ってワイヤの本数も制限される。ワイヤの本数が減少すると、モジュール動作時のワイヤ発熱量が増加する。これにより、リード端子とそれに接続された外部のプリント基板の温度上昇を誘発する。従って、エンドユーザーでの冷却コストが増加するという問題があった。
【0003】
この問題を解決する手法として、放熱シートの上に中継電極を設け、ワイヤとリード端子を中継電極に接続した構成が提案されている(例えば、特許文献1(図1(b))参照)。これにより、モジュール動作時にワイヤに発生する熱を中継電極と放熱シートを介して放熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6024750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、中継電極を追加することで部品点数と生産工程が増えるため、生産コストが上昇する。従って、従来の構成は大量生産が求められる製品への適用が困難であった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は放熱性を向上し、製造コストを低減することができる半導体モジュール及び電力変換装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体モジュールは、絶縁性の放熱シートと、前記放熱シートの上に設けられた半導体素子と、一体的に構成されたリード端子とダイパッドを有するリードフレームと、前記リードフレームと前記半導体素子を接続し、主電流経路となるワイヤと、前記放熱シート、前記半導体素子、前記リードフレーム、及び前記ワイヤを封止するモールド樹脂とを備え、前記リード端子が前記モールド樹脂から引き出され、前記ダイパッドの下面に前記放熱シートが直接的に接触し、前記ダイパッドと前記放熱シートの接触部分の真上において前記ワイヤが前記ダイパッドにボンディングされ、前記リードフレームは、前記リード端子と前記ダイパッドとの間に設けられ、前記リード端子と前記ダイパッドよりも小さい断面積を持つ繋ぎ部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ダイパッドの下面に放熱シートが直接的に接触し、ダイパッドと放熱シートの接触部分の真上においてワイヤがダイパッドにボンディングされている。これにより、モジュール動作時にワイヤに発生する熱が放熱シートを介して放熱されるため、放熱性を向上することができる。また、ワイヤの放熱のために新たに部品を追加する必要が無い。このため、部品点数と生産工程を減らし、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る半導体モジュールを実装した状態を示す断面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体モジュールの内部構成を示す平面図である。
図3図2の一部を拡大した平面図である。
図4図3の内部構成の出力側リードフレームに沿った断面図である。
図5図3の内部構成のN側リードフレームに沿った断面図である。
図6】比較例に係る半導体モジュールの内部構成の一部を拡大した平面図である。
図7図6の内部構成の出力側リードフレームに沿った断面図である。
図8図6の内部構成のN側リードフレームに沿った断面図である。
図9】実施の形態1にかかる半導体モジュールの変形例の内部構成の一部を拡大した平面図である。
図10】実施の形態2にかかる半導体モジュールを示す断面図である。
図11】実施の形態3にかかる半導体モジュールを示す断面図である。
図12】実施の形態3にかかる半導体モジュールの変形例を示す断面図である。
図13】実施の形態4にかかる半導体モジュールを示す断面図である。
図14】リード端子の先端部がプリント基板のスルーホールに挿入された状態を示す斜視図である。
図15】リード端子の先端部がプリント基板のスルーホールに挿入された状態を示す斜視図である。
図16】リード端子の先端部がプリント基板のスルーホールに挿入された状態を示す斜視図である。
図17】実施の形態5にかかる半導体モジュールを示す断面図である。
図18】実施の形態6に係る電力変換装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態に係る半導体モジュール及び電力変換装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る半導体モジュールを実装した状態を示す断面図である。半導体モジュール1が、放熱フィンを有するヒートシンク2の上にグリース3を介して実装されている。プリント基板4が半導体モジュール1の上方に配置されている。半導体モジュール1のリード端子5がモールド樹脂6から突出してプリント基板4のスルーホール7に挿入され、プリント基板4の回路に接続されている。
【0012】
図2は、実施の形態1に係る半導体モジュールの内部構成を示す平面図である。図3図2の一部を拡大した平面図である。3つのN側リードフレーム8、3つの出力側リードフレーム9、1つのP側リードフレーム10、制御側リードフレーム11が設けられている。これらのリードフレームは一枚の金属板から切り出され、製造段階では互いに繋がった単一のリードフレームである。従って、これらのリードフレームの材質及び厚みは同一である。
【0013】
N側リードフレーム8、出力側リードフレーム9、P側リードフレーム10は絶縁性の放熱シート12の上に設けられている。3相のN側半導体素子13,14が3つの出力側リードフレーム9の上にそれぞれダイボンドされている。3相のP側半導体素子15,16が1つのP側リードフレーム10の上にダイボンドされている。例えば、N側半導体素子13とP側半導体素子15はIGBTであり、N側半導体素子14とP側半導体素子16は還流ダイオードである。N側半導体素子15はP側半導体素子13の低圧側に接続されている。制御IC17,18が制御側リードフレーム11に接続されている。
【0014】
N側半導体素子13,14の上面電極同士がワイヤ19により接続され、下面電極は出力側リードフレーム9に接続されている。N側半導体素子14の上面電極がワイヤ20によりN側リードフレーム8に接続されている。P側半導体素子15,16の上面電極同士がワイヤ21により接続され、下面電極はP側リードフレーム10に接続されている。P側半導体素子16の上面電極がワイヤ22により出力側リードフレーム9に接続されている。N側半導体素子13の制御電極がワイヤ23により制御IC17に接続されている。P側半導体素子15の制御電極がワイヤ24により制御IC18に接続されている。
【0015】
図4は、図3の内部構成の出力側リードフレームに沿った断面図である。出力側リードフレーム9は一体的に構成されたリード端子9aとダイパッド9bを有する。ダイパッド9bの下面に放熱シート12が直接的に接触している。ダイパッド9bと放熱シート12の接触部分の真上においてワイヤ22がダイパッド9bにボンディングされている。
【0016】
図5は、図3の内部構成のN側リードフレームに沿った断面図である。N側リードフレーム8は一体的に構成されたリード端子8aとダイパッド8bを有する。ダイパッド8bの下面に放熱シート12が直接的に接触している。ダイパッド8bと放熱シート12の接触部分の真上においてワイヤ20がダイパッド8bにボンディングされている。ワイヤ20,22はモジュール動作時に大きな主電流が流れる主電流経路となる。
【0017】
モールド樹脂6が放熱シート12、N側半導体素子13,14、P側半導体素子15,16、N側リードフレーム8、出力側リードフレーム9、P側リードフレーム10、制御側リードフレーム11及びワイヤ19~24を封止する。N側リードフレーム8のリード端子8a、出力側リードフレーム9のリード端子9a、P側リードフレーム10のリード端子、制御リードフレーム11のリード端子がモールド樹脂6から引き出される。リード端子8a,9aは図1のリード端子5に対応する。
【0018】
続いて、本実施の形態の効果を比較例と比較して説明する。図6は、比較例に係る半導体モジュールの内部構成の一部を拡大した平面図である。図7は、図6の内部構成の出力側リードフレームに沿った断面図である。図8は、図6の内部構成のN側リードフレームに沿った断面図である。P側半導体素子16にワイヤ22により接続された出力側リードフレーム9は、比較例でも放熱シート12と密着している。しかし、N側半導体素子14にワイヤ20により接続されたN側リードフレーム8は放熱シート12とは密着していない。放熱シート12と接触していないN側リードフレーム8のリード端子8aにワイヤ20がボンディングされている。放熱シート12と接触していない出力側リードフレーム9のリード端子9aにワイヤ22がボンディングされている。従って、モジュール動作時にワイヤ20,22に発生する熱を放熱シート12を介して放熱することができない。
【0019】
これに対して、本実施の形態では、N側リードフレーム8のダイパッド8bの下面と出力側リードフレーム9のダイパッド9bの下面が同一平面において接着剤などを介さずに放熱シート12に直接的に接している。モールド樹脂6により封止されることでダイパッド8b,9bと放熱シート12は密着される。N側リードフレーム8のダイパッド8bと放熱シート12の接触部分の真上において、主電流経路となるワイヤ20がダイパッド8bにボンディングされている。出力側リードフレーム9のダイパッド9bと放熱シート12の接触部分の真上において、主電流経路となるワイヤ22がダイパッド9bにボンディングされている。
【0020】
これにより、モジュール動作時にワイヤ20,22に発生する熱が放熱シート12を介してヒートシンク2に放熱されるため、放熱性を向上することができる。従って、リード端子8a,9a側への伝熱を抑制し、リード端子8a,9a及び実装後の外部のプリント基板4の温度上昇を抑えることができ、システムの冷却コストを抑制することができる。
【0021】
また、上記の構成は単一リードフレームを用いたモールドタイプの半導体モジュールに適用でき、ワイヤ20,22の放熱のために新たに部品を追加する必要が無い。このため、部品点数と生産工程を減らし、製造コストを低減することができ、大量生産が求められる製品への適用も可能である。
【0022】
また、N側リードフレーム8は、リード端子8aとダイパッド8bとの間に段差を有する。これにより放熱シート12及びその下に設けられる放熱板(不図示)を薄くできるため、モジュールの熱抵抗を改善することができる。出力側リードフレーム9の構成も同様である。
【0023】
図9は、実施の形態1にかかる半導体モジュールの変形例の内部構成の一部を拡大した平面図である。図3は、3つのN側リードフレーム8が3相の半導体素子14とそれぞれワイヤ20により接続された3シャント構成である。これに対して、図9は、1つのN側リードフレーム8が3相の半導体素子14とそれぞれワイヤ20により接続された1シャント構成である。3相分のN側リードフレームを結合することにより、N側リードフレーム8の面積が増大して放熱能力が向上し、N側リードフレーム8のリード端子8aの温度上昇を抑制することができる。
【0024】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2にかかる半導体モジュールを示す断面図である。N側リードフレーム8は、リード端子8aとダイパッド8bとの間に設けられ、リード端子8aとダイパッド8bよりも小さい断面積を持つ繋ぎ部8cを有する。これにより、ワイヤ20がボンディングされるダイパッド8bとリード端子8aとの間の熱抵抗が上昇するため、リード端子8a側への伝熱を更に抑制することができる。なお、繋ぎ部8cは直線的な形状でもよいし、屈曲した形状でもよい。また、出力側リードフレーム9に繋ぎ部を設けても同様の効果を得ることができる。
【0025】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3にかかる半導体モジュールを示す断面図である。出力側リードフレーム9とP側リードフレーム10の下面には放熱シート12が密着している。一方、N側リードフレーム8の下面は放熱シート12で覆われていない。放熱シート12の下面とN側リードフレーム8の下面はモールド樹脂6から露出し、互いに面一になっている。モジュール実装時には、露出した放熱シート12の下面とN側リードフレーム8の下面がヒートシンク2と密着する。ここで、実施の形態1の構成では比較例よりも放熱シート12の面積を拡大する必要がある。これに対して、本実施の形態では放熱シート12の必要面積を実施の形態1よりも縮小することができるため、製品コストを低減することができる。
【0026】
図12は、実施の形態3にかかる半導体モジュールの変形例を示す断面図である。N側リードフレーム8の下面に絶縁材25が塗布されている。なお、絶縁材25は耐熱性・耐寒性に優れたシリコーングリースなどが望ましい。半導体モジュール1をヒートシンク2に実装した際に、N側リードフレーム8とヒートシンク2との間に絶縁材25があるため、両者の絶縁を確保することができる。従って、モジュール内部と外部の絶縁が必要なアプリケーションにも対応可能となる。
【0027】
実施の形態4.
図13は、実施の形態4にかかる半導体モジュールを示す断面図である。モールド樹脂6から引き出されたリード端子5の先端部の厚みがリード端子5の根元部よりも厚い。
【0028】
リード端子5の先端部はシステム実装時にプリント基板4のスルーホール7に挿入され、はんだ付けで固定される。モジュール動作時にはリード端子5の発熱がプリント基板4へと伝熱する。これに対して、本実施の形態はリード端子5の体積が増加して放熱能力が向上するため、リード端子5及びプリント基板4の温度上昇も抑えることができる。
【0029】
図14から図16はリード端子の先端部がプリント基板のスルーホールに挿入された状態を示す斜視図である。複数のリード端子5がX方向に配列している。図14はリード端子5の先端部の厚みが厚くなっていない。リード端子5の厚みはX方向とY方向のどちらにも厚くすることができる。ただし、図16のようにX方向に厚くすると、リード端子5間のピッチが縮小して絶縁不良を起こす可能性がある。従って、図15のようにY方向に厚くすることが好ましい。
【0030】
実施の形態5.
図17は、実施の形態5にかかる半導体モジュールを示す断面図である。モールド樹脂6から引き出されたリード端子5の先端部に金属製のアタッチメント26が接合されている。このようにリード端子5に外付けのアタッチメント26を取り付けて端子厚みを増大させても実施の形態4と同様の効果が得られる。アタッチメント26はリード端子5とプリント基板4の導電性を確保するために種々の金属素材で形成される。
【0031】
なお、半導体素子13~16は、珪素によって形成されたものに限らず、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成されたものでもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドである。このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成された半導体素子は、耐電圧性や許容電流密度が高いため、小型化できる。この小型化された半導体素子を用いることで、この半導体素子を組み込んだ半導体装置も小型化・高集積化できる。また、半導体素子の耐熱性が高いため、ヒートシンク2を小型化でき、水冷部を空冷化できるので、半導体装置を更に小型化できる。また、半導体素子の電力損失が低く高効率であるため、半導体装置を高効率化できる。
【0032】
実施の形態6.
本実施の形態は、実施の形態1~5に係る半導体モジュールを電力変換装置に適用したものである。本発明は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態6として、三相のインバータに本発明を適用した場合について説明する。
【0033】
図18は、実施の形態6に係る電力変換装置を示すブロック図である。電力変換装置は、電源27、半導体モジュール1、誘導負荷28、制御回路29、ヒートシンク2から構成される。制御回路29は図1のプリント基板4に対応する。電源27は直流電源であり、半導体モジュール1に直流電力を供給する。電源27は種々のもので構成することが可能であり、例えば直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができ、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成してもよい。また、電源27を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成してもよい。
【0034】
半導体モジュール1は、電源27と誘導負荷28の間に接続された三相のインバータであり、電源27から供給された直流電力を交流電力に変換し、誘導負荷28に交流電力を供給する。
【0035】
誘導負荷28は、半導体モジュール1から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、誘導負荷28は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0036】
以下、半導体モジュール1の詳細を説明する。半導体モジュール1は、スイッチング素子と還流ダイオード(図示せず)を備える主変換回路であり、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源27から供給される直流電力を交流電力に変換し、誘導負荷28に供給する。半導体モジュール1の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる半導体モジュール1は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち半導体モジュール1の3つの出力端子は、誘導負荷28に接続される。半導体モジュール1は上述した実施の形態1~5の何れかの半導体モジュールによって構成する。
【0037】
半導体モジュール1に内蔵される制御用ICは、同じく半導体モジュール1に内蔵されるスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成する。具体的には、後述する制御回路29からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号と、スイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0038】
制御回路29は、誘導負荷28に所望の電力が供給されるよう半導体モジュール1のスイッチング素子を制御する。具体的には、誘導負荷28に供給すべき電力に基づいて半導体モジュール1の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって半導体モジュール1を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、半導体モジュール1が備える同制御用ICに制御指令(制御信号)を出力する。同制御用ICは、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0039】
ヒートシンク2は半導体モジュール1の駆動によって生じた熱を外部に放出する。具体的にはヒートシンク2と半導体モジュール1との間に接合用グリースを塗布し、ヒートシンク2および接合用グリースの熱伝導を利用して半導体モジュール1が生成した熱を外部に放出する。なお、ヒートシンク2は半導体モジュール1の1側面のみに取り付けてもよいし、両面に取り付けてもよい。
【0040】
本実施の形態にかかる電力変換装置では、実施の形態1~5の何れかの半導体モジュールを使用するため、電力変換装置の小型化・低コスト化および信頼性向上を実現することができる。
【0041】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本発明を適用する例を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本発明を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本発明を適用することも可能である。
【0042】
また、本発明を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体モジュール、2 ヒートシンク、6 モールド樹脂、8 N側リードフレーム、9 出力側リードフレーム、8a,9a リード端子、8b,9b ダイパッド、8c 繋ぎ部、12放熱シート、13,14 N側半導体素子、15,16 P側半導体素子、20,22 ワイヤ、25 絶縁材、26 アタッチメント、29 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18