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  • 特許-ナトリウム全固体電池の正極の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ナトリウム全固体電池の正極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20221220BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221220BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20221220BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/36 A
H01M10/0562
H01M10/054
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019195224
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021068672
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】桑田 紘子
(72)【発明者】
【氏名】穂積 正人
(72)【発明者】
【氏名】後田 伸
(72)【発明者】
【氏名】二井谷 啓太
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-160653(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム全固体電池の正極を製造する方法であって、
Na原子に加えて、Mn、Ni、Co、Fe、Crから選ばれる少なくとも1種類以上を含む遷移金属元素、及びO原子を含み、P2型の層状結晶構造を有する正極活物質と、NASICON型のリン酸化合物とを混合した後に、300℃以上600℃以下にて熱処理をおこなって複合活物質を合成し、前記複合活物質にナトリウムイオン伝導性を有する固体電解質を混合する工程を有する、正極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高容量で軽量である特性を生かして、モバイル機器や車載用電源として使用されている。ここで用いられる電解液は漏洩の可能性があるため、該電解液に替えて、固体電解質を使用することが検討されている。
【0003】
ところが、リチウムは原材料が高騰することが懸念されている。そこで、リチウムに替わる材料として、資源量が豊富なナトリウムを使用したナトリウムイオン全固体電池が注目されている。ナトリウムイオン全固体電池には、ナトリウムイオン伝導性が必要とされる。
【0004】
特許文献1には、ナトリウム二次電池において、その正極に、P2型の層状結晶構造を有する正極活物質及び固体電解質が用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-514908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、P2型の層状結晶構造の正極活物質と固体電解質との接触部位で反応が起こり、副生成物が生じて界面抵抗が大きくなるため、電池出力が不十分になることがある。
【0007】
本願は、該実情に鑑みてなされたものであり、P2型の層状結晶構造の正極活物質と固体電解質との界面抵抗を抑制することができるナトリウム全固体電池の正極の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決するための一つの手段として、ナトリウム全固体電池の正極を製造する方法であって、P2型の層状結晶構造を有する正極活物質と、NASICON型のリン酸化合物とを混合した後に、300℃以上600℃以下にて熱処理をおこなう工程を有する、正極の製造方法を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本願が開示するナトリウム全固体電池の正極の製造方法によれば、P2型の層状結晶構造の正極活物質と固体電解質との界面抵抗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願が開示する正極を備えたナトリウムイオン全固体電池の概略断面図である。
図2】実施例及び比較例の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ナトリウム全固体電池の正極の製造]
<正極活物質の準備>
正極活物質を準備する。本開示で正極活物質は、P2型の層状結晶構造を有するNaを含む複合酸化物である。
ここで、「Naを含む複合酸化物」とは、Na原子に加えて、Mn、Ni、Co、Fe、Crから選ばれる少なくとも1種類以上を含む遷移金属元素、及びO原子を含むことである。例えば、NaMO(0<x≦1、MはMn、Ni、Co、Fe、Crのうちの少なくとも1種以上)を挙げることができる。
【0012】
正極活物質が、P2型の層状結晶構造を有していることは、X線回折(XRD)測定等により確認することができる。
【0013】
正極活物質は、例えばMn源、Ni源、Co源等の遷移金属元素を含む酸性混合液と、Na源を含む塩基性混合液とを混ぜて加熱撹拌し、その後に濾過することで前駆体を得て、この前駆体をさらなるNa源と混ぜて700℃以上1000℃以下、好ましくは900℃で加熱反応させることで得ることができる。加熱反応が700℃より低い温度になるとO3型の結晶構造となる。
【0014】
正極活物資の形状は、取扱い性が良いという観点から粒子状であることが好ましい。正極活物質の粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、0.5μm以上20μm以下とすることができる。
本願において、粒子の平均粒径は、特記しない限り、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される体積基準のメディアン径(D50)の値である。また、メディアン径(D50)とは、粒径の小さい粒子から順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体の半分(50%)となる径(体積平均径)である。
【0015】
<複合活物質の合成>
上記準備した正極活物質に、Na原子、Zr原子、Si原子、P原子、及びO原子を含んだNASICON型のリン酸化合物を混合して熱処理することにより複合活物質を得る。
本開示ではこの熱処理は300℃以上600℃以下で行われる。
この範囲内の温度で熱処理することにより、得られた複合活物質を正極に用いたときに界面抵抗を小さくすることができ、出力の大きい全固体電池とすることができる。これは当該温度範囲内での熱処理により、正極活物質に副生成物の生成を抑制する効果のある被膜が形成されるためであると考えられる。そして、この被膜により副生成物の生成が抑えられて界面抵抗の上昇が抑制されると推測する。
【0016】
NASICON型の化合物は、MO八面体(Mは、遷移金属であり本開示ではNa、Zr、Si)と、XO四面体(本開示でXは、P)とが頂点を共有して3次元的に配列した構造である。具体的なNASICON型リン酸化合物としては、NaZrSiPO12などが挙げられる。
【0017】
NASICON型のリン酸化合物の態様は、取扱い性が良いという観点から粒子状であることが好ましい。また、その粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、0.5μm以上2μm以下とすることができる。
この場合には上記した正極活物質の粉末、及び、NASICON型のリン酸化合物の粉末を混合し、これを真空封入して上記した温度範囲内で熱処理することにより複合活物質が合成される。
【0018】
ただし、正極活物質及びNASICON型のリン酸化合物の両方が粒子状である必要はなく、いずれかを液相として混ぜ和せて上記温度範囲内で熱処理することで複合活物質を合成することもできる。
【0019】
<固体電解質の準備>
固体電解質はナトリウムイオン伝導性を有する固体電解質であればよく特に限定されることはなく、種々の固体電解質を適用することができる。
例えば、NaMXが挙げられる。ここで、Mは、Yb、Y、In又はLaであり、Xは、Cl、BrまたはIである。より具体的には、NaYbCl6、NaYbBr、NaYbI、NaYCl、NaYBr、NaYI、NaInCl6、NaInBr、NaInI、NaLaCl6、NaLaBr、NaLaIが挙げられる。
その他、NaPS、NaSbSや、NaYSi12、NaAlSi1032、Na86Al86Si16384、及び、NaCB10とNaCB1112との混合物等も挙げられる。
【0020】
<正極活物質層の作製>
正極活物質層は、上記合成した複合活物質、固体電解質、及び、必要に応じて導電材、結着材により正極活物質層を作製する。正極活物質層の作製方法は特に限定されるものではなく、乾式で、又は、湿式で作製可能である。すなわち、上記の成分を溶媒に添加してスラリーとし、当該スラリーを基材(後述の正極集電体又は固体電解質層であってもよい。)の表面に塗布した後に乾燥させることによって、所定の厚み(例えば、0.1μm以上1mm以下)を有する正極活物質層を湿式で作製できる。または、上記の成分を乾式混合し、プレス成形する等して正極活物質層を得てもよい。
【0021】
正極活物質層における正極活物質(P2型の結晶構造を有する正極活物質)が正極活物質層に占める体積割合は特に限定されることはないが45体積%以上であることが好ましく、60体積%以上がより好ましい。
【0022】
導電材を用いる場合にはその種類については特に限定されるものではなく、ナトリウムイオン全固体電池の導電材として公知のものをいずれも採用できる。例えば、炭素材料が好ましく、特に結晶性の高い炭素材料が好ましい。炭素材料の結晶性が高いと、ナトリウムイオンが炭素材料に挿入され難くなり、ナトリウムイオン挿入による不可逆容量を低減できるからである。その結果、サイクル特性に一層優れるナトリウムイオン全固体電池を得ることができる。炭素材料の結晶性は、例えば層間距離d002及びD/G比で規定できる。層間距離d002とは、炭素材料における(002)面の面間隔をいい、具体的にはグラフェン層間の距離に該当する。層間距離d002は、例えばCuKα線を用いたX線回折(XRD)法により得られるピークから求めることができる。D/G比とは、ラマン分光測定(波長532nm)において観察される、1590cm-1付近のグラファイト構造に由来するG-bandのピーク強度に対する、1350cm-1付近の欠陥構造に由来するD-bandのピーク強度をいう。本発明においては、例えば、d002の上限が好ましくは3.54Å以下、より好ましくは3.50Å以下である。下限は通常3.36Å以上である。また、D/G比の上限が好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.50以下、特に好ましくは0.20以下である。正極活物質層における導電材の含有量は、特に限定されるものではない。
【0023】
結着材を用いる場合には、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系結着材、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系結着材、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系結着材等を挙げることができる。正極における結着材の含有量は、特に限定されるものではない。
【0024】
<正極の作製>
上記正極活物質層に正極集電体が積層されて正極とされる。ただし、正極活物質層に含まれる材料によっては、正極集電体を省略できる場合もある。この場合、正極活物質層自体が単独で正極となる。
正極集電体の材料としては、例えばステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン及びカーボン等を挙げることができる。正極集電体の形状は、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。
【0025】
[ナトリウムイオン全固体電池]
上記のようにして製造された正極は全固体電池の正極に適用することができる。本願の正極の製造方法により製造された正極は、正極活物質と固体電解質との界面抵抗を低く抑えることができ、その結果電池出力を高めることができる。
【0026】
図1に、本開示の正極の製造方法により製造された正極20(正極活物質層22及び正極集電体24)を備えた、ナトリウムイオン全固体電池100の概略断面図を示す。図1に示したナトリウムイオン全固体電池100は、正極活物質層22、負極活物質層32、正極活物質層22と負極活物質層32との間に形成された固体電解質層10、正極活物質層22の集電を行う正極集電体24、及び負極活物質層32の集電を行う負極集電体34を有する。上記のように正極活物質層22と正極集電体24とが正極20を構成している。また、負極活物質層32と負極集電体34とが負極30を構成する。
【0027】
<固体電解質層10>
本形態で固体電解質層10は、上記正極に含まれる固体電解質と同様の固体電解質により構成することができる。固体電解質層の厚みは、電池の構成によって適宜調整され、特に限定されるものではなく、通常0.1μm以上1mm以下である。
【0028】
<正極20>
正極20は正極活物質層22及び正極集電体23を有し、上記した正極の製造方法により製造された正極が適用される。
【0029】
<負極活物質層32>
負極活物質層32には、負極活物質が含まれている。より具体的には、負極活物質の他、任意に固体電解質、導電材、結着材を含み得る。固体電解質は上記正極の製造方法で説明した固体電解質と同様に考えることができる。
【0030】
(負極活物質)
負極活物質については特に限定されるものではなく、ナトリウムイオン全固体電池の負極活物質として公知のものをいずれも採用できる。例えば、ナトリウム金属やナトリウム合金等のナトリウムを含む金属材料;グラファイト、ハードカーボン、カーボンブラック等の炭素材料;チタン酸ナトリウム等のナトリウム-遷移金属複合酸化物;SiOx等のナトリウム以外の元素からなる酸化物;等が挙げられる。負極活物質は正極活物質と同様に粒子状であることが好ましい。
【0031】
(導電材及び結着材)
負極活物質層32では、正極活物質層22に採用可能な導電材や結着材を採用できる。導電材や結着材は任意成分であり、その含有量も特に限定されるものではない。
【0032】
負極活物質層32の作製方法としては特に限定されるものではなく、正極活物質層22と同様に、乾式で、又は、湿式で作製可能である。
【0033】
(負極集電体34)
負極活物質層32には、通常、負極集電体34が備えられている。負極集電体34の材料としては、例えばステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅及びカーボン等を挙げることができる。負極集電体34の形状は、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。負極集電体34を上記した負極活物質層32に積層することで容易に負極30を作製することができる。ただし、負極活物質層32に含まれる材料によっては、負極集電体34を省略できる場合もある。この場合、負極活物質層32自体が負極30となる。
【0034】
<全固体電池の製造>
全固体電池の製造は特に限定されることはないが、例えば次のような方法が挙げられる。
1つの方法としては、上記の製造方法で得た正極活物質層となる成分を溶媒に添加してスラリーとし、当該スラリーを、固体電解質層の一方の面に塗布した後乾燥させ、同様に、負極となる成分を溶媒に添加してスラリーとし、当該スラリーを、固定電解質層の他方の面に塗布した後乾燥させることが挙げられる。そしてその後に正極集電体層及び負極集電体層を積層する。
その他の方法としては、固体電解質層を作製した後に、当該成型体の一方の面に上記のように作製した正極活物質層、他方の面に負極活物質層を重ねて積層体とし、この積層体に圧力を加えて、焼結を行うことが挙げられる。そしてその後に正極集電体層及び負極集電体層を積層する。
【0035】
<その他の構成>
電池ケースとしては、一般的な電池ケースを使用でき、特に限定されない。例えば、ステンレス製の電池ケースを挙げることができる。また、ナトリウムイオン全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型及び角型等を挙げることができる。
【実施例
【0036】
以下、実施例を用いて本開示の正極の製造方法について説明する。
【0037】
[正極活物質の作製]
<第1の溶液(酸性混合液)の作製>
硝酸マンガン4水和物(Mn(NO・4HO、シグマアルドリッチジャパン)5.02g、硝酸ニッケル6水和物(Ni(NO・6HO、ナカライテスク株式会社)2.40g、及び、硝酸コバルト6水和物(Co(NO・6HO、シグマアルドリッチジャパン)3.60gを純水33.0gに溶解し、第1の溶液である酸性混合液を得た。
<第2の溶液(塩基性混合液)の作製>
炭酸ナトリウム(NaCO、シグマアルドリッチジャパン)4.25gを純水40.0gに溶解し、アンモニア水(NHOH、キシダ化学株式会社)2mLを加えて撹拌して第2の溶液である塩基性混合液を得た。
<前駆体の合成>
第1の溶液44.0gと第2の溶液45.0gとを共沈させ1晩、加熱撹拌を行った。合成された前駆体を吸引ろ過により洗浄して乾燥させた。
<正極活物質の合成>
得られた前駆体と炭酸ナトリウム(NaCO、シグマアルドリッチジャパン)を混ぜ、大気雰囲気中で900℃で反応させ、P2型の層状結晶構造であるNa0.7Mn0.5Ni0.2Co0.3の正極活物質を得た。
【0038】
[複合活物質の合成]
得られた正極活物質とNASICON型のリン酸化合物であるNaZrSiPO12の粉末とを混合し、これを真空封入して決められた温度で熱処理し、複合活物質を得た。ここで、決められた温度は、実施例1が300℃、実施例2が400℃、実施例3が500℃、実施例4が600℃、比較例1が200℃、比較例2が700℃である。
なお、全ての例についてX線回折装置(Ultima IV、株式会社リガク)により結晶構造を調べ、全ての正極活物質がP2型の層状結晶構造であることが確認された。
【0039】
[固体電解質の合成]
不活性雰囲気下で、硫化ナトリウム(NaS、シグマアルドリッチジャパン)、硫化アンチモン(Sbシグマアルドリッチジャパン)、硫黄(S、アルファ・エイサー)をmol比で3:2:1の割合で秤量後にこれを混合した。この混合体をメカニカルミリング処理、不活性雰囲気下で合成し、NaSbS固体電解質を得た。
【0040】
[正極の作製]
合成した複合活物質、合成した固体電解質、及び、導電材(本例ではカーボン)を質量で50:45:5の比率で測り取り、乳鉢で混合し、直径φ11、厚さ50μmの円柱状の正極活物質層を得た。
得られた正極活物質層に円柱状のステンレスからなる集電体を積層し、正極とした。
【0041】
[負極の作製]
オイル漬けにされたナトリウム金属(シグマアルドリッチジャパン)を加工して円盤状とし、これに円柱状のステンレスからなる集電体を積層して負極とした。
【0042】
[固体電解質層の作製]
固体電解質層は、上記正極活物質層に用いた固体電解質により作製した。具体的には、円環状(ドーナツ状)の評価セルの下側に円柱状のステンレスをはめ、さらにその下に円柱状のステンレスを保護する冶具をおく。固体電解質を円環状の評価セルの環内(穴の中)に入れ、円柱状のステンレスで上側にふたをし、さらに上に円柱状のステンレスを保護する冶具をはめ、6トンでプレスをして押し固めて作製した。
【0043】
[全固体電池の作製]
以上により得られた固体電解質層の一方に正極、他方に負極を積層して全固体電池とした。これをガラスデシケータに封入した。
【0044】
[評価]
各例に対して界面抵抗の測定を行った。この測定は各例の全固体電池に、開回路電圧に対して±10mVの電圧を印加し、0.01Hz以上1MHz以下の範囲において界面抵抗を測定した。表1及び図2に結果を示す。
【0045】
【表1】
表1、図2からわかるように、複合活物質を作製する際の熱処理温度が界面抵抗に大きく影響していることがわかった。
【符号の説明】
【0046】
100 ナトリウムイオン全固体電池
10 固体電解質層
22 正極活物質層
24 正極集電体
32 負極活物質層
34 負極集電体
図1
図2