(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】質量分析装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/10 20060101AFI20221220BHJP
H01J 49/26 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01J49/10
H01J49/26
(21)【出願番号】P 2019209499
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 真悟
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3141511(JP,U)
【文献】米国特許第6777672(US,B1)
【文献】特開2015-50085(JP,A)
【文献】特開2011-174761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧下で試料成分をイオン化するイオン化室と、該イオン化室で生成されたイオンが導入され、該イオン又は該イオンから派生するイオンを質量分析するための真空室と、を具備する質量分析装置であって、
イオン受入開口を有する真空室側前壁部と、
前記イオン受入開口と接続され、前記イオン化室から前記真空室へとイオンを輸送するイオン導入部を有するイオン化室側後壁部と、
前記真空室側前壁部と前記イオン化室後壁部との間の間隔が可変であるように該真空室側前壁部に対し該イオン化室側後壁部を保持する保持部と、
前記イオン化室を形成するものであり、試料をイオン化するための分析位置と前記イオン化室側後壁部が露出する開放位置との間で移動可能に配置され、前記開放位置から前記分析位置に移動される際に、前記保持部により保持されている前記イオン化室側後壁部に接触して前記真空室側前壁部との間の間隔が所定間隔になる位置まで該イオン化室側後壁部を押し込むイオン化チャンバと、
を備える質量分析装置。
【請求項2】
前記イオン化チャンバは前記真空室側前壁部に対して蝶動自在に取り付けられている、請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記イオン化チャンバが前記イオン化室側後壁部を所定位置まで押し込んだ状態で該イオン化チャンバを閉鎖状態にロックするロック部、をさらに備える、請求項1又は2に記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記イオン化室側後壁部は前記イオン化室内にガスを噴出するガス噴出口を有し、
前記保持部は、前記ガス噴出口から噴出するガスを、真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと輸送するガス配管を接続するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記イオン化室は大気圧化学イオン化法により試料成分をイオン化するものであり、
前記イオン化室側後壁部にはコロナ放電を生起させる針電極が設けられ、
前記保持部は、前記針電極に高電圧を印加するための電力を真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと供給する電気配線を接続するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記イオン化室は大気圧化学イオン化法により試料成分をイオン化するものであり、
前記イオン化室側後壁部は前記イオン化室内にガスを噴出するガス噴出口を有し、また該イオン化室側後壁部にはコロナ放電を生起させる針電極が設けられ、
前記ガス噴出口から噴出するガスを、真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと輸送するガス配管を接続する接続部と、前記針電極に高電圧を印加するための電力を真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと供給する電気配線を接続する接続部とが
、前記イオン化室側後壁部の中央に配置された前記イオン導入部を挟んで両側に設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【請求項7】
前記保持部は、前記真空室側前壁部と前記イオン化室側後壁部との両方の対向面の一方に設けられた突出部を、他方に設けられたボールプランジャで保持するものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【請求項8】
前記イオン導入部は、イオンが通過する管路と、該管路を囲むヒータ部と、を含み、前記イオン化チャンバが前記イオン化室側後壁部を押し込んだ状態で、前記管路の先端部が前記イオン受入開口に挿通され、前記ヒータ部の先端がシール部材を介して前記真空室側前壁部に当接する、請求項1~7のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析装置に関し、さらに詳しくは、大気圧イオン源を備える質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)に用いられる質量分析装置では、液体クロマトグラフ(LC)のカラムから溶出する成分を含む溶出液中の成分をイオン化するために、いわゆる大気圧イオン化法によるイオン源が使用される。大気圧イオン化法としては、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、大気圧化学イオン化(APCI)法、大気圧光イオン化(APPI)法などがよく知られている。
【0003】
こうした大気圧イオン源を搭載した質量分析装置では、略大気圧雰囲気であるイオン化室の内部で生成された試料成分由来のイオンを真空室に導入し、真空室内に配置された四重極マスフィルタ等の質量分離器により質量電荷比(m/z)に応じて分離して検出する。一般的に、質量分離器が配置される真空室の真空度は非常に高いため、この真空室の真空度を高く保つために、質量分離器が配置される高真空室とイオン化室との間に1又は複数の中間真空室が設けられ、イオン化室から高真空室まで段階的に真空度が高まるような構成が採られる。こうした構成は多段差動排気系と呼ばれる。
【0004】
例えば特許文献1に記載の質量分析装置では、イオン化室と次段の第1中間真空室とは脱溶媒管と呼ばれる細径の管路で連通しており、イオン化スプレーからイオン化室内に帯電噴霧された液体試料により生成されたイオンは、脱溶媒管を通って第1中間真空室まで輸送される。脱溶媒管には溶媒が十分に気化していない帯電液滴がそのまま飛び込む場合もあり、こうした液滴からの溶媒の気化を促進してイオン化を図るために、脱溶媒管は該管に周設されたカートリッジヒータ等によって加熱される。
【0005】
非特許文献1等に記載された従来の質量分析装置では、イオン化室の後壁と第1中間真空室の前壁との間に形成される空間(以下「配設空間」という)に、上記カートリッジヒータや、該ヒータに加熱電流を供給するための配線やコネクタ類(場合によっては回路基板)などが配設される。また、この配設空間に、帯電液滴の脱溶媒化を促進するために脱溶媒管の入口の周囲からイオン化室内へ乾燥ガスを噴出するためのガス配管、さらには、APCI法によるイオン化のためにスプレーからの噴霧流の進行方向前方に配置される針電極に高電圧を印加するための配線やコネクタ類などが配設されることもある。
【0006】
上記非特許文献1に記載の質量分析装置では、イオン化室の後壁となり、イオン導入部である脱溶媒管(DL:Desolvation Line)が取り付けられるDLフランジと、第1中間真空室の前壁である真空フランジとの間隔が所定間隔になるように、DLフランジを真空フランジに対して複数本の六角穴付ボルトで固定することで、イオン化室と第1中間真空室との間に配設空間を形成している。この構成では、ボルトを弛めDLフランジを取り外すことで、脱溶媒管や配設空間に配置されている上記部品のメンテナンスを行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】「LCMSTM-8060 超高速トリプル四重極型LC/MS/MSシステム}、[online]、[2019年11月1日検索]、株式会社島津製作所、インターネット<URL : https://www.an.shimadzu.co.jp/lcms/lcms8060/index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の質量分析装置では、上述したようにDLフランジを真空フランジに対してボルトで固定しているため、DLフランジを取り外す際に工具を用いてボルトを弛める必要があり、メンテナンス作業に手間が掛かる。また、分析実行時にイオン化室内は高温になるうえ、イオン化スプレーから噴霧された液体試料がイオン化室内部に突出しているボルト頭部に掛かるため、ボルトの焼付きが生じて該ボルトを外しにくくなる場合がある。また、担当者がDLフランジの汚れを拭き取る際に、ボルト頭部が邪魔になり、汚れが残り易いという問題もある。さらにまた、DLフランジを取り付ける際に、複数本のボルトをバランス良く締結しないと、DLフランジが傾いて損傷するおそれもある。
【0010】
本発明の目的とするところは、上述したようなボルトを用いてDLフランジを取り付けることにより生じる種々の問題点を解決し、装置のメンテナンスの作業性が良好である質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置の一態様は、大気圧下で試料成分をイオン化するイオン化室と、該イオン化室で生成されたイオンが導入され、該イオン又は該イオンから派生するイオンを質量分析するための真空室と、を具備する質量分析装置であって、
イオン受入開口を有する真空室側前壁部と、
前記イオン受入開口と接続され、前記イオン化室から前記真空室へとイオンを輸送するイオン導入部を有するイオン化室側後壁部と、
前記真空室側前壁部と前記イオン化室後壁部との間の間隔が可変であるように該真空室側前壁部に対し該イオン化室側後壁部を保持する保持部と、
前記イオン化室を形成するものであり、試料をイオン化するための分析位置と前記イオン化室側後壁部が露出する開放位置との間で移動可能に配置され、前記開放位置から前記分析位置に移動される際に、前記保持部により保持されている前記イオン化室側後壁部に接触して前記真空室側前壁部との間の間隔が所定間隔になる位置まで該イオン化室側後壁部を押し込むイオン化チャンバと、
を備えるものである。
【0012】
本発明に係る質量分析装置の上記態様において、真空室側前壁部及びイオン化室側後壁部はそれぞれ、上述した従来の質量分析装置における真空フランジ及びDLフランジに相当する。
【0013】
また本発明に係る質量分析装置の上記態様において、真空室は一室でもよいが、一般に、イオン化法として大気圧イオン化法が用いられる場合、多段差動排気系の構成が採られる。そのため、真空室は複数であり、上記真空室側前壁部は最も前段にある真空室(つまりは真空度が最も低い真空室)の前壁を構成する部材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る上記態様の質量分析装置では、イオン化チャンバが開放された状態から作業者がイオン化チャンバを閉じる、つまり分析位置まで移動させると、イオン化室側後壁部はイオン化チャンバによって真空室側前壁部に近づくように押し込まれる。そして、イオン化チャンバが完全に閉鎖されると、イオン化室側後壁部は適切な位置まで押し込まれて位置決めされ、イオン化室側後壁部と真空室側前壁部との間に所定間隔の空間が形成される。
【0015】
したがって、本発明に係る上記態様の質量分析装置によれば、従来のようにイオン化室側後壁部を真空室側前壁部に対してボルト等の別の部材で固定する必要がない。そのため、イオン化室側後壁部に設けられているイオン導入部や、イオン化室側後壁部と真空室側前壁部との間の空間に配置されているヒータ、各種の配線、コネクタ類、ガス配管等のメンテナンスを行う際に、工具を用いることなく容易にイオン化室側前壁部を取り外すことができ、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。また、イオン化室側にボルト頭部が突出していないので、担当者がイオン化室側後壁部の汚れを拭き取り易く、汚れが残りにくい。さらにまた、イオン化チャンバを閉める操作を行うだけでイオン化室側後壁部を適切に取り付けることができ、取り付け時にイオン化室側後壁部を損傷する等の不具合も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である質量分析装置の外観斜視図。
【
図3】本実施形態の質量分析装置においてイオン化チャンバが分析位置にあるときのイオン化ユニット周辺の概略構成図。
【
図4】本実施形態の質量分析装置においてイオン化チャンバが開放位置にあるときのイオン化ユニット周辺の概略構成図。
【
図5】本実施形態の質量分析装置の変形例におけるイオン化ユニット周辺の概略構成図。
【
図6】本実施形態の質量分析装置の別の変形例におけるイオン化ユニット周辺の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態である質量分析装置について、添付図面を参照して説明する。
この質量分析装置は、大気圧イオン源を搭載したシングルタイプの四重極型質量分析装置であり、大気圧イオン化法としてESI法、APCI法の両方を利用可能である。
【0018】
[本実施形態の質量分析装置の全体構成]
図1は、本実施形態の質量分析装置の外観斜視図である。
図2は、本実施形態の質量分析装置の要部の概略構成図である。なお、説明の便宜上、
図1中に示すように、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を定めている。つまり、Z軸方向は高さ方向であり、Y軸方向は奥行方向であり、X軸方向は幅方向である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の質量分析装置はその外形が略矩形状であり、イオン化室が内部に形成されるイオン化チャンバ20が前方に突出している。イオン化チャンバ20の後方には奥行き方向に細長い形状の真空チャンバ10が配置されている。また、真空チャンバ10の下方には、真空チャンバ10内を真空排気するための真空ポンプユニット50が配置され、真空チャンバ10の上方と左方は、様々な電気回路が収容されている回路ユニット60である。
【0020】
図2に示すように、真空チャンバ10の内部は奥行き方向(Y軸方向)に、第1中間真空室11、第2中間真空室12、及び高真空室13の三室に区画されている。また、真空チャンバ10の前方には、内部にイオン化室22を画成するイオン化チャンバ20及びDLフランジ21が取り付けられている。第1中間真空室11、第2中間真空室12、及び高真空室13の三室は、それぞれ上記真空ポンプユニット50内の又は本装置の外側に設置された真空ポンプにより真空排気され、第1中間真空室11、第2中間真空室12、高真空室13と段階的にその真空度は高くなる。一方、イオン化室22は外部に連通しており、その内部は略大気圧である。
【0021】
イオン化室22には液体試料を噴霧するイオン化プローブ(スプレー)23が設けられ、イオン化プローブ23の前方には、APCI法によるイオン化の際にコロナ放電を生起させる針電極27が配置されている。イオン化室22と第1中間真空室11との間は細径の脱溶媒管24を通して連通している。イオン化室22側の脱溶媒管24の入口であるイオン導入口24aの周囲には、複数の乾燥ガス噴出口26が設けられ、乾燥ガス噴出口26からは加熱された窒素等の不活性ガスが噴出する。また、脱溶媒管24の周囲にはカートリッジヒータ25が設けられ、カートリッジヒータ25によって脱溶媒管24は所定温度に加熱されるようになっている。
【0022】
第1中間真空室11の内部には第1イオンガイド14が配置され、第1中間真空室11と第2中間真空室12とはスキマー15の頂部に形成された小孔を通して連通している。第2中間真空室12の内部には第2イオンガイド16が配置され、第2中間真空室12と高真空室13とはレンズ電極17の中心に形成された小孔を通して連通している。高真空室13の内部には、プリロッド電極とメインロッド電極とを含む四重極マスフィルタ18と、イオン検出器19とが配置されている。
【0023】
図2に示すように、脱溶媒管24、第1イオンガイド14、スキマー15、第2イオンガイド16、レンズ電極17、四重極マスフィルタ18、及びイオン検出器19は、概ね直線状のイオン光軸Cに沿って配置されている。
【0024】
[本実施形態の質量分析装置の分析動作]
本実施形態の質量分析装置における分析動作を簡単に説明する。
イオン化プローブ23には、図示しない液体クロマトグラフ(LC)のカラムで分離された成分を含む溶出液が供給される。イオン化プローブ23は溶出液を略大気圧雰囲気であるイオン化室22内に噴霧し、該溶出液に含まれる試料成分をイオン化する。
【0025】
イオン化法としてESI法を用いる場合には、イオン化プローブ23の先端に高電圧を印加する。その電圧により形成される電場によって液体試料は片寄った電荷を付与されつつ噴霧され、噴霧された帯電液滴中の溶媒が気化する過程で試料成分はイオン化される。一方、イオン化法としてAPCI法を用いる場合には、イオン化プローブ23の先端に高電圧を印加する代わりに、針電極27に高電圧を印加することでコロナ放電を生起させる。このコロナ放電によって、イオン化プローブ23から噴霧された液滴から生じた溶媒ガスをイオン化し、溶媒イオンと成分分子との化学反応により該成分分子をイオン化する。
【0026】
上述したようにしてイオン化室22内で生成された試料成分由来のイオンは、脱溶媒管24の両端の圧力差によって生じるガス流に乗ってイオン導入口24aから脱溶媒管24中に吸い込まれる。溶媒が十分に気化していない帯電液滴がイオン導入口24aに近づくと乾燥ガス噴出口26から吹き出す乾燥ガスに晒されるため、溶媒の気化が促進されてイオン化が進む。さらにまた、溶媒が十分に気化していない帯電液滴が脱溶媒管24中に吸い込まれた場合でも、高温になっている脱溶媒管24中で脱溶媒が進行し、イオン化が促進される。
【0027】
こうして脱溶媒管24を通して第1中間真空室11内へと送られたイオンは、第1イオンガイド14、スキマー15、第2イオンガイド16、レンズ電極17を経て高真空室13まで送られ、四重極マスフィルタ18に導入される。ロッド電極に印加されている電圧に対応する特定の質量電荷比を有するイオンのみが四重極マスフィルタ18を通り抜け、それ以外のイオンは途中で発散する。イオン検出器19は四重極マスフィルタ18を通り抜けて来たイオンを検出し、そのイオンの量に応じた検出信号を出力する。
【0028】
このようにして本実施形態の質量分析装置では、作業者から見て最も手前側に位置するイオン化室22において生成された試料成分由来のイオンが、その後方にある真空チャンバ10内に導入され、前方側から後方側へと向かって送られる。送られたイオンは、四重極マスフィルタ18で質量電荷比に応じて分離されたあと、最終段のイオン検出器19により検出される。
【0029】
[イオン化ユニット周辺の詳細な構成]
上述したように分析時にはイオン化プローブからイオン化室22内に溶出液が噴霧されるため、イオン化室22の内壁やイオン化室22内に配置されている部材には溶出液が付着して汚れる。また、脱溶媒管24の内部にも溶出液が付着して汚れる。さらにまた、カートリッジヒータ25や乾燥ガスを供給するガス配管など、イオン化室22と真空チャンバ10(第1中間真空室11)との間の空間に配置されている部材もメンテナンスする必要がある。そのため、本実施形態の質量分析装置では、イオン化チャンバ20を開放するとともに、イオン化チャンバ20を開放した状態でDLフランジ21を前方に取り外すことが可能となっている。次にこのイオン化ユニット周辺の構成を詳細に述べる。
【0030】
図3は、本実施形態の質量分析装置においてイオン化チャンバが分析位置にあるときのイオン化ユニット周辺の概略構成図である。
図4は、本実施形態の質量分析装置においてイオン化チャンバが開放位置にあるときのイオン化ユニット周辺の概略構成図である。
図3及び
図4は本実施形態の質量分析装置を上から見たときの概略的な横断面図であるが、内部構造を見易く示したものであり、必ずしもX-Y面に平行な面での断面ではない。また、一部は簡略的に示している。
【0031】
イオン化チャンバ20は、イオン化室22の底面、天面(上面)、両側面、及び前面という後面以外の五面を形成する略箱状の部材である。DLフランジ21はイオン化室22の後面を形成する略平板状の部材である。イオン化チャンバ20及びDLフランジ21は例えばステンレス等の金属から成る。真空フランジ10aは、真空チャンバ10において第1中間真空室11の前壁を構成する部材である。
【0032】
イオン化チャンバ20は、垂直方向(Z軸方向)に延伸するヒンジ200を介して真空フランジ10aに取り付けられている。イオン化チャンバ20はヒンジ200を中心として蝶動自在であり、
図3に示す状態(つまり分析位置)では、イオン化チャンバ20はDLフランジ21とともにイオン化室22を画成している。一方、
図4に示す状態(開放位置)では、イオン化チャンバ20は開放されており、DLフランジ21がほぼ完全に露出している。また、イオン化チャンバ20には、該イオン化チャンバ20を分析位置に移動した状態で該チャンバ20の位置を固定するロック機構28が設けられている。このロック機構28は真空フランジ10aや外装カバーなどに設けられていてもよい。
【0033】
DLフランジ21の略中央には脱溶媒ユニット210が取り付けられている。脱溶媒ユニット210は、Y軸方向に延伸する脱溶媒管24と、脱溶媒管24が貫通するカートリッジヒータ25と、乾燥ガス噴出口26にまで乾燥ガスを導く内部ガス管路211と、を含む。脱溶媒管24は例えばステンレスなどの金属から成る。カートリッジヒータ25は、アルミニウムなどの熱伝導率が高い金属により形成される略円柱状の加熱ブロックと、加熱ブロックを加熱するヒータと、を含む。加熱ブロックにはその流れ方向に貫通孔が形成され、その貫通孔の内周面に接触するように脱溶媒管24が挿通されている。
【0034】
イオン導入口24aと反対側の脱溶媒管24の先端部は、脱溶媒ユニット210の後方側に突出しており、この先端部にはフランジ部材212が装着されている。フランジ部材212は脱溶媒管24が貫通する筒状の部材であり、外側に張り出した板状部212aがカートリッジヒータ25の加熱ブロックの端面25aに当接している。フランジ部材212の板状部212aにあって、加熱ブロックの端面25aとの当接面と反対側の面には、Oリング等のシール部材213が設けられている。
【0035】
真空フランジ10aの略中央には、フランジ部材212の筒状部212bの外径よりも一回り大きな内径のイオン受入開口100が穿設されている。
図3に示すように、DLフランジ21が奥側に最も押し込まれた状態では、脱溶媒管24の先端部はイオン受入開口100に挿通され、第1中間真空室11内に突出している。また、このようにDLフランジ21が奥側に押し込まれた状態では、シール部材213が真空フランジ10aの前面に接触する。DLフランジ21が押し込まれると、シール部材213が潰れ、真空フランジ10aとフランジ部材212との間の隙間が閉塞される。
【0036】
真空フランジ10aの前面には、イオン受入開口100を挟んでその両側に、ガス配管中継部110と高電圧配線中継部120とが設けられている。ガス配管中継部110は、側方にガス供給口を有し、該ガス供給口には外部から乾燥ガスを供給するガス配管が接続される。また、ガス配管中継部110は前方に開口したガス配管部が内部に形成され、前方に突出する接続軸を有する。また、高電圧配線中継部120は、その内部に高電圧配線が設けられ、前方に突出する接続軸を有する。この高電圧配線は真空フランジ10a側から外部の高電圧電源に接続される。
【0037】
一方、DLフランジ21には、真空フランジ10aのガス配管中継部110及び高電圧配線中継部120にそれぞれ対応する位置に、ガス配管二次中継部220と高電圧配線二次中継部221とが設けられている。即ち、ガス配管二次中継部220と高電圧配線二次中継部221とは脱溶媒ユニット210を挟んでその両側に設けられている。
ガス配管二次中継部220は、真空フランジ10a側のガス配管中継部110の接続軸が挿入される被接続軸を有する。被接続軸はその内部にガス配管を備え、この被接続軸に接続軸を或る程度の深さまで挿入すると、両方のガス配管が繋がるようになっている。また、このガス配管二次中継部220のガス配管は別のガス配管によって、脱溶媒ユニット210の内部ガス管路211に接続されている。
【0038】
高電圧配線二次中継部221も、真空フランジ10a側の高電圧配線中継部120の接続軸が挿入される被接続軸を有する。被接続軸はその内部に高電圧配線を備え、この被接続軸に接続軸を或る程度の深さまで挿入すると、両方の高電圧配線が繋がるようになっている。また、この高電圧配線はDLフランジ21の前面側にまで配設され、針電極27に接続されている。また、高電圧配線二次中継部221の被接続軸には、挿入された接続軸を保持するボールプランジャ221aが内装されている。そのため、高電圧配線中継部120の接続軸を高電圧配線二次中継部221の被接続軸に挿入すると、ボールプランジャ221aによってその接続軸はY軸方向に摺動自在に保持される。これによって、接続軸が被接続軸から抜けにくくなり、後述するようにDLフランジ21を取り付ける際にDLフランジ21の脱落を防止することができる。
【0039】
なお、この実施形態では、高電圧配線二次中継部221の被接続軸にのみボールプランジャを設けているが、ガス配管二次中継部220の被接続軸にもボールプランジャを設けてもよい。それにより、DLフランジ21の脱落をより確実に防止することができる。
【0040】
図4に示すように、ロック機構28によるロックが解除されてイオン化チャンバ20が開放された状態では、DLフランジ21はY軸方向に固定されていない。そのため、
図4中の矢印Bで示すようにDLフランジ21は移動可能であり、作業者がDLフランジ21を手前側に引き出すと、ガス配管中継部110とガス配管二次中継部220との接続、及び、高電圧配線中継部120と高電圧配線二次中継部221との接続がいずれも外れ、また、脱溶媒管24の先端部がイオン受入開口100から抜け、DLフランジ21を取り出すことができる。このようにDLフランジ21を外部に取り外し、該DLフランジ21に取り付けられている脱溶媒管24やカートリッジヒータ25等のメンテナンスを行ったり、露出している真空フランジ10aの前面に設けられている部品等のメンテナンスを行ったりすることができる。
【0041】
メンテナンス作業の終了後、作業者は、脱溶媒管24の先端部が真空フランジ10aのイオン受入開口100に挿入され、ガス配管中継部110とガス配管二次中継部220、及び、高電圧配線中継部120と高電圧配線二次中継部221、がそれぞれ接続されるDLフランジ21を取り付ける。ガス配管二次中継部220と高電圧配線二次中継部221とは脱溶媒ユニット210を挟んで両側に位置しているため、ガス配管二次中継部220と高電圧配線二次中継部221とのそれぞれの被接続軸と、ガス配管中継部110と高電圧配線中継部120とのそれぞれの接続軸とが嵌め合うように二つの軸を合わせることで、真空フランジ10aに対しDLフランジ21を適切な位置に取り付けることができる。即ち、二つの軸によってDLフランジ21の位置決めを行うことができる。
【0042】
また、上述したように高電圧配線中継部120と高電圧配線二次中継部221とを嵌合させると、ボールプランジャ221aによって高電圧配線二次中継部221が高電圧配線中継部120に対し保持されるので、DLフランジ21を奥側に押さえ付けなくてもDLフランジ21は真空フランジ10aから脱落せずに保持される。
【0043】
上述したようにDLフランジ21を真空フランジ10aに装着したあと、作業者は
図3に示したようにイオン化チャンバ20を分析位置まで閉じロック機構28によりロックを掛ける。イオン化チャンバ20を閉じると、該イオン化チャンバ20に取り付けられているガスケット222がDLフランジ21の前面に接触し、ガスケット222が潰れながらDLフランジ21を後方へと押圧する。押されたDLフランジ21は真空フランジ10aに近づくように後退し、フランジ部材212に取り付けられているシール部材213が真空フランジ10aの前面に接触する。
【0044】
ロック機構28によりロックされることでイオン化チャンバ20が完全に閉鎖されると、カートリッジヒータ25の加熱ブロックに押されてシール部材213は十分に潰れる。これにより、イオン受入開口100とフランジ部材212との間の隙間がシール部材213で塞がれ、第1中間真空室11が気密状態となる。このとき、DLフランジ21と真空フランジ10aとの間の間隔dは、概ねカートリッジヒータ25のY軸方向の長さで決まる。
【0045】
このようにDLフランジ21が十分に押し込まれて所定の位置に来ると、真空フランジ10a側のガス配管とDLフランジ21側のガス配管とが十分に接続され、外部の乾燥ガス供給源から真空フランジ10aに供給されたガスは、ガス配管中継部110→ガス配管二次中継部220→脱溶媒ユニット210の内部ガス管路211、を経て乾燥ガス噴出口26からイオン化室22内へと噴出する。一方、外部の高電圧電源から真空フランジ10aに供給されたコロナ放電用の電力は、高電圧配線中継部120→高電圧配線二次中継部221を経て針電極27に供給され、コロナ放電が生起される。このようにイオン化チャンバ20によってDLフランジ21が所定位置まで確実に押し込まれることで、ガス配管、高電圧配線はいずれも確実に接続され、ガスや電力の供給が行われる。
【0046】
このように本実施形態の質量分析装置では、着脱に工具が必要であるボルト等の部品を用い、真空フランジ10aに対してDLフランジ21を固定する必要がない。したがって、DLフランジ21を着脱する作業が容易であり、メンテナンスに要する手間を軽減することができる。また、ボルトの焼き付き等のためにDLフランジ21が取り外しにくいといった事態も回避することができる。また、DLフランジ21を取り付けるためのボルトの頭部がイオン化室22内に突出しないので、DLフランジ21の前面の汚れの拭き取り作業が容易で且つ汚れ残りも軽減することができる。
【0047】
なお、上記実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲でさらに適宜、変形、追加、修正を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【0048】
例えば上記実施形態では、ガス配管と高電圧配線という二つの軸で真空フランジ10aに対するDLフランジ21の位置を決めるようにしていたが、この軸は三以上でもよい。また、高電圧配線はコロナ放電用ではなく、ESI法によるイオン化のためにイオン化プローブ23の先端に高電圧を印加するための配線でもよい。
また、上記実施形態では、DLフランジ21を押し入れたときにカートリッジヒータ25がシール部材213を介して真空フランジ10aを押しているが、カートリッジヒータ25以外の部材が真空フランジ10aを押す構成としてもよい。
【0049】
また上記実施形態の質量分析装置では、DLフランジ21がイオン化チャンバ20と共にイオン化室22を画成していたが、実質的にイオン化チャンバ20のみがイオン化室22を画成し、DLフランジ21はイオン化室22の外側にあってもよい。
図5は一変形例におけるイオン化ユニット周辺の概略構成図である。この例では、イオン化チャンバ20は後壁面20aを有しており、該後面20aには、脱溶媒ユニット210の前方の凸部や針電極27及びそのホルダが挿通し得る開口や切欠が形成されている。イオン化チャンバ20を閉じると後壁面20aによってDLフランジ21が後方へと押され、所定の位置に収まることは上記実施形態と同じである。
【0050】
また上記実施形態の質量分析装置では、イオン化チャンバ20はヒンジ200を介して真空フランジ10aに蝶動自在に取り付けられているが、こうした構造でなくても前方から真空フランジ10a又は装置の外装等にイオン化チャンバ20を取り付け可能な構造であればよい。
図6は一変形例におけるイオン化ユニット周辺の概略構成図である。この例では、二つ(又はそれ以上でもよい)のロック機構29により、イオン化チャンバ20を真空フランジ10aに対し取り付けるようになっている。
図6中の符号29’はロック機構29のロックを解除した状態を示しており、このようにロック解除状態では、イオン化チャンバ20は前方に取り外し可能である。この場合でも、イオン化チャンバ20を適切な位置に取り付けるとDLフランジ21が後方へと押され、所定の位置に収まることは上記実施形態と同じである。
【0051】
また、上記実施形態は本発明をシングルタイプの四重極型質量分析装置に適用した例であるが、本発明は大気圧イオン源を用いた、他のタイプの質量分析装置、具体的には、トリプル四重極型質量分析装置などにも適用することができる。
また、大気圧イオン源は、ESI法、APCI法に限らず、大気圧光イオン化(APPI)法、探針エレクトロスプレーイオン化(PESI)法、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)法等を用いることもできる。
【0052】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0053】
(第1項)本発明に係る質量分析装置の一態様は、大気圧下で試料成分をイオン化するイオン化室と、該イオン化室で生成されたイオンが導入され、該イオン又は該イオンから派生するイオンを質量分析するための真空室と、を具備する質量分析装置であって、
イオン受入開口を有する真空室側前壁部と、
前記イオン受入開口と接続され、前記イオン化室から前記真空室へとイオンを輸送するイオン導入部を有するイオン化室側後壁部と、
前記真空室側前壁部と前記イオン化室後壁部との間の間隔が可変であるように該真空室側前壁部に対し該イオン化室側後壁部を保持する保持部と、
前記イオン化室を形成するものであり、試料をイオン化するための分析位置と前記イオン化室側後壁部が露出する開放位置との間で移動可能に配置され、前記開放位置から前記分析位置に移動される際に、前記保持部により保持されている前記イオン化室側後壁部に接触して前記真空室側前壁部との間の間隔が所定間隔になる位置まで該イオン化室側後壁部を押し込むイオン化チャンバと、
を備えるものである。
【0054】
第1項に記載の質量分析装置によれば、従来のようにイオン化室側後壁部を真空室側前壁部に対してボルトで固定する必要がない。そのため、イオン化室側後壁部と真空室側前壁部との間の空間に配置されているカートリッジヒータや各種の配線、コネクタ類、ガス配管等のメンテナンスを行う際に、工具を用いることなく容易にイオン化室側後壁部を取り外すことができ、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。また、イオン化室側にボルト頭部が突出していないので、担当者がイオン化室側後壁部の汚れを拭き取り易く、汚れが残りにくい。さらにまた、イオン化チャンバを閉める操作だけでイオン化室後壁部を適切な位置に取り付けることができ、イオン化室側後壁部を損傷する等の不具合も防止することができる。
【0055】
(第2項)第1項に記載の質量分析装置では、前記イオン化チャンバは前記真空室側前壁部に対して蝶動自在に取り付けられているものとすることができる。
【0056】
第2項に記載の質量分析装置によれば、作業者は簡単にイオン化チャンバを開閉することができる。また、イオン化チャンバを装置本体から取り外さないので、メンテナンス作業時にイオン化チャンバを保管する場所の確保も不要である。
【0057】
(第3項)第1項又は第2項に記載の質量分析装置では、前記イオン化チャンバが前記イオン化室側後壁部を所定位置まで押し込んだ状態で該イオン化チャンバを閉鎖状態にロックするロック部、をさらに備えることができる。
【0058】
第3項に記載の質量分析装置によれば、作業者がロック部によりイオン化チャンバを完全に閉鎖することで、イオン化室側後壁部を所定の位置に固定することができる。
【0059】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記イオン化室側後壁部は前記イオン化室内にガスを噴出するガス噴出口を有し、
前記保持部は、前記ガス噴出口から噴出するガスを、真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと輸送するガス配管を接続するものとすることができる。
【0060】
(第5項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記イオン化室は大気圧化学イオン化法により試料成分をイオン化するものであり、
前記イオン化室側後壁部にはコロナ放電を生起させる針電極が設けられ、
前記保持部は、前記針電極に高電圧を印加するための電力を真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと供給する電気配線を接続するものとすることができる。
【0061】
第4項又は第5項に記載の質量分析装置によれば、外部からイオン化室内に供給するガス又は電力の供給路を、イオン化室側後壁部を真空室側前壁部に対して保持する保持部として用いることができる。
【0062】
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、
前記イオン化室は大気圧化学イオン化法により試料成分をイオン化するものであり、
前記イオン化室側後壁部は前記イオン化室内にガスを噴出するガス噴出口を有し、また該イオン化室側後壁部にはコロナ放電を生起させる針電極が設けられ、
前記ガス噴出口から噴出するガスを、真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと輸送するガス配管を接続する接続部と、前記針電極に高電圧を印加するための電力を真空室側前壁部側からイオン化室側後壁部側へと供給する電気配線を接続する接続部とが、前記イオン化室側後壁部の中央に配置された前記イオン導入部を挟んで両側に設けられているものとすることができる。
【0063】
第6項に記載の質量分析装置によれば、真空室側前壁部に対しイオン化室側後壁部を二つの軸において位置決めすることができる。それにより、イオン導入部を中心とする周方向にイオン化室側後壁部の位置が確実に決まり、真空室側前壁部に対しイオン化室側後壁部を的確に取り付けることができる。
【0064】
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記保持部は、前記真空室側前壁部と前記イオン化室側後壁部との両方の対向面の一方に設けられた突出部を、他方に設けられたボールプランジャで保持するものとすることができる。
【0065】
第7項に記載の質量分析装置によれば、イオン化室側後壁部が抜け落ちることを回避しながら、イオン化チャンバによりイオン化室側後壁部を適切な位置まで押し込むことができる。
【0066】
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記イオン導入部は、イオンが通過する管路と、該管路を囲むヒータ部と、を含み、前記イオン化チャンバが前記イオン化室側後壁部を押し込んだ状態で、前記管路の先端部が前記イオン受入開口に挿通され、前記ヒータ部の先端がシール部材を介して前記真空室側前壁部に当接するものとすることができる。
【0067】
第8項に記載の質量分析装置によれば、イオン導入部とイオン受入開口とを適切に接続しつつ、シール部材によってイオン受入開口が設けられている真空室の気密性を確保することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…真空チャンバ
10a…真空フランジ
100…イオン受入開口
11…第1中間真空室
20…イオン化チャンバ
20a…後壁面
110…ガス配管中継部
120…高電圧配線中継部
200…ヒンジ
21…DLフランジ
210…脱溶媒ユニット
211…内部ガス管路
212…フランジ部材
212a…板状部
212b…筒状部
213…シール部材
22…イオン化室
220…ガス配管二次中継部
221…高電圧配線二次中継部
221a…ボールプランジャ
222…ガスケット
23…イオン化プローブ
24…脱溶媒管
24a…イオン導入口
25…カートリッジヒータ
25a…端面
26…乾燥ガス噴出口
27…針電極
28、29…ロック機構