(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】回路装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20221220BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20221220BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20221220BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20221220BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20221220BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20221220BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20221220BHJP
H01G 4/40 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/13
H01G11/70
H01F5/00 F
H01F27/00 S
H01G11/52
H01G11/26
H01G4/40 321A
(21)【出願番号】P 2019234196
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 匠昭
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】中野 広幸
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-088019(JP,A)
【文献】特表2008-529208(JP,A)
【文献】特表2015-502012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 4/13
H01G 11/70
H01F 5/00
H01F 27/00
H01G 11/52
H01G 11/26
H01G 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1活物質を有し繊維状を含む柱状の第1電極と、
イオン伝導性及び絶縁性を有し前記第1電極を被覆する分離膜と、
前記分離膜上に形成され第2活物質を有する第2電極と、を備え、
外形がコイル状に形成されている
、蓄電デバイス
を備え、
前記蓄電デバイスは、インダクタンスによる電流平滑機能、インダクタンスによるフィルタ機能、及び電流センシング用閉磁路を形成する機能のうち1以上を有する、回路装置。
【請求項2】
前記蓄電デバイスは、電流によって生じる磁束を制御する、請求項1に記載の
回路装置。
【請求項3】
前記蓄電デバイスの外径Dに対する蓄電デバイスの長さXであるX/Dが10以上であり、前記蓄電デバイスの出力電流が脈動する負荷に対して設計されるコイル形状を有する、請求項1
又は2に記載の
回路装置。
【請求項4】
前記第1電極は、複数の繊維状の第1活物質が結束された結束体である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の
回路装置。
【請求項5】
前記蓄電デバイスは、前記第1電極と前記分離膜と前記第2電極とを備えた単セルが結束された構造を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の
回路装置。
【請求項6】
前記第1電極は、直径dが10μm以上500μm以下の範囲である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の
回路装置。
【請求項7】
前記分離膜は、厚さが15μm以下である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の
回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、蓄電デバイス及び回路装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電デバイスを備えた回路装置としては、バッテリ電源に並列のLISNに接続の第1、第2のコモンモードコアと、これにつながるノーマルモードコアおよびスイッチング電源と、この電源とノーマルモードコア間に並列の第1、第2のコモンモードコンデンサを備え、この第1、第2のコンデンサ間とスイッチング電源筐体は配線され、また筐体は接地され、各回路のL、Cが所定式を満たすものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この回路装置では、自動車用電装品スイッチング電源において国際規格CISPR25に規定のノイズ限度値内とすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の回路装置では、ノイズを低減する手段として回路中にコンデンサやコイルを配置するものとしているが、ノイズ低減がなされればこれらの構成は必須ではない。このように、回路装置の構成をより簡素化することが求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、回路構成をより簡素化することができる蓄電デバイス及び回路装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、蓄電デバイスを柱状で構成し、これをコイル形状とすることによって、別の構成としてのノイズ低減用のコイルを省略することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する蓄電デバイスは、
第1活物質を有し繊維状を含む柱状の第1電極と、
イオン伝導性及び絶縁性を有し前記第1電極を被覆する分離膜と、
前記分離膜上に形成され第2活物質を有する第2電極と、を備え、
外形がコイル状に形成されているものである。
【0008】
本明細書で開示する回路装置は、上述した蓄電デバイスを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、回路構成をより簡素化することができる。このような効果が得られる理由を、例えば、以下に説明する。一般的に、二次電池などの蓄電デバイスを用いた回路では、ノイズの発生が問題になる場合がある。ノイズの原因は種々あるが、高周波成分を減衰させる場合には回路にローパスフィルタとして働く素子を入れるのが一般的である。ローパスフィルタには、インダクタ(コイル)を直列に挿入する方法と、コンデンサをノイズ発生源の前後に跨がせて挿入する方法とがある。本開示では、回路に直列に配置される蓄電デバイスをコイル状に成形することによって、デバイスそのものにインダクタ成分を持たせ、ローパスフィルタとしてのコイルがなくてもローパスフィルタを配置したのと同等のノイズ低減を可能とする。このように、電源である蓄電デバイスがノイズ低減に有用なコイル形状をしており、回路装置では、ノイズ低減用のコイルを省略することができる。このため、本開示では、回路構成をより簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】蓄電デバイス20を備えた回路装置10の一例を示す模式図。
【
図2】蓄電デバイス20Bを備えた回路装置10Bの一例を示す模式図。
【
図3】蓄電デバイス20Cを備えた回路装置10Cの一例を示す模式図。
【
図4】従来の回路装置110及び回路装置210の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(回路装置)
本開示である回路装置および蓄電デバイスの実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、回路装置10及び蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。
図2は、繊維結束体21Bを備えた蓄電デバイス20Bを有する回路装置10Bの一例を示す模式図である。
図3は、セル結束体21Cからなる蓄電デバイス20Cを備えた回路装置10Cの一例を示す模式図である。
図4は、コイル130を備えた従来の回路装置110及びコンデンサ230を備えた従来の回路装置210の一例を示す模式図である。
【0012】
回路装置10は、負荷12と、ノイズ源15と、蓄電デバイス20とを備えている。負荷12は、蓄電デバイス20から供給される電力により作動するものであり、例えば、駆動部や、素子などが挙げられる。駆動部としては、例えば、同期モータや誘導モータ、ステッピングモータなどが挙げられる。素子としては、半導体素子、圧電素子、光学素子、熱電素子などが挙げられる。ノイズ源15は、回路装置10の作動時にノイズを発生するものであり、例えば、上記負荷12とは異なる構成でもよいし、上記負荷12がこのノイズ源15に該当するものとしてもよい。
【0013】
蓄電デバイス20は、回路装置10の電源であり、ノイズ源15からのノイズを低減する機能を兼ね備えている。蓄電デバイス20は、第1活物質を有し柱状の第1電極21と、イオン伝導性及び絶縁性を有し第1電極21を被覆する分離膜24と、分離膜24上に形成され第2活物質を有する第2電極22と、を備えている。この蓄電デバイス20において、第1電極21は負極であり、第2電極22は正極であることが好ましいが、第1電極21が正極であり、第2電極22が負極であるものとしてもよい。また、「柱状」とは、屈曲しない太さのもののほか、屈曲可能な繊維状の太さのものも含むものとする。この第1電極は、柱状であればよく、その断面は円形であってもよいし、多角形であってもよい。この蓄電デバイス20は、第1電極21、第2電極22及び分離膜24のうち1以上に電解液を含むものとしてもよい。また、第1電極21及び第2電極22には、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。また、蓄電デバイス20は、アルカリ金属二次電池やアルカリ金属イオン二次電池、キャパシタ、ハイブリッドキャパシタなどとしてもよい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウムなどが挙げられ、リチウムが好ましい。ここでは、説明の便宜のため、第1電極21を円柱状の負極とし、第2電極22を正極とし、リチウムイオンをキャリアとするリチウム二次電池をその主たる一例として以下説明する。
【0014】
蓄電デバイス20は、外形がコイル状に形成されている。この蓄電デバイス20は、シート状の電極を積層したものではなく、所定方向を長手方向として柱状且つコイル状の形状を有する。蓄電デバイス20は、例えば、らせん状に形成された構造が柔軟性を有するものとしてもよいし、柔軟性を有さないものとしてもよい。蓄電デバイス20のサイズは、回路装置10に要求される性能に応じて任意の値としてもよい。また、蓄電デバイス20は、コイル形状であるが、そのコイル長Aやコイル径R、コイル巻き数N、コイル形状などは、回路装置10に要求される性能に応じて任意の値とすることができる。例えば、コイル長Aは、5mm~100mmの範囲とすることができる。コイル径Rは、5mm~100mmの範囲とすることができる。コイル巻き数Nは、例えば、2~100の範囲とすることができる。コイル形状は、例えば、円筒状が一般的であるが、矩形筒状や六角筒状など、多角形状としてもよい。また、蓄電デバイス20は、コイルの中央にコアを有してもよい。なお、コイル径Rや、蓄電デバイス20の外径D、第1電極21の直径dなどは、対象の形状が多角形状や楕円状の場合、その外形の長さのうち最大値をいうものとする。
【0015】
コイル形状によるローパスフィルタは回路によって様々な設計が考えられるが、具体例としては、以下のようなケースが挙げられる。例えば、動作周波数10kHzのローパスフィルタとした場合、48Vに対してインダクタンスが10μH程度に見積もられる。この場合は、蓄電デバイス20の電圧を4Vに想定すると、セルで1μH程度であり、蓄電デバイス20のコイル径Rが40mmであれば、コイル巻き数Nは5程度に見積もられる。また、動作周波数100kHzの小型システムのローパスフィルタでは、48Vに対してインダクタンスが1μH程度に見積もられる。この場合は、蓄電デバイス20の電圧を4Vに想定すると、セルで100mH程度であり、蓄電デバイス20のコイル径Rが20mmであれば、コイル巻き数Nは5程度に見積もられる。
【0016】
このコイル状の蓄電デバイスにおいて、
図2に示す蓄電デバイス20Bのように、第1電極21は、第1活物質を含む複数の繊維23が結束された繊維結束体21Bであるものとしてもよい。繊維結束体21Bは、繊維23を束ねたのち固着したものとしてもよいし、繊維23を紡糸したものとしてもよい。この蓄電デバイス20Bでは、柔軟性の高い繊維23を用いるため、第1電極21をコイル状に形成しやすく好ましい。繊維23の太さは、例えば、0.5μm以上や1μm以上、あるいは10μm以上とすることができ、50μm以下や20μm以下、あるいは15μm以下とすることができる。また、
図3に示す蓄電デバイス20Cのように、第1電極21と分離膜24と第2電極22とを備えた単セルが結束されたセル結束体21Cの構造を有するものとしてもよい。この蓄電デバイス20Cでは、単セルを結束することによって、コイル形状の強度をより高めることができ、また、蓄電デバイスの容量をより高めることができ好ましい。この蓄電デバイス20Cにおいて、セル結束体21Cの単セルが有する第1電極21は、
図1に示す第1電極21のように一体物としてもよいし、
図2,3に示す繊維結束体21Bとしてもよい。また、第2電極22は、分離膜24を介して第1電極21の周りに存在するものとしてもよいし、第1電極21同士の間の空間に充填されているものとしてもよい。
【0017】
蓄電デバイス20は、電流によって生じる磁束を制御することができる。この蓄電デバイス20は、インダクタンスによる電流平滑機能、インダクタンスによるフィルタ機能、及び電流センシング用閉磁路を形成する機能のうち1以上を有するものとしてもよい。また、蓄電デバイス20は、その外径Dに対する蓄電デバイス20の長さXの比であるX/Dが10以上であり、蓄電デバイス20の出力電流が脈動する負荷に対して設計されるコイル形状を有するものとしてもよい。X/Dが10以上では、例えば、コイル状にしやすい。このX/Dは、100以上としてもよいし、1000以上としてもよく、10000以下としてもよい。蓄電デバイス20は、長手方向に垂直な断面の外径Dが20μm以上であることが好ましく、100μm以上であるものとしてもよい。また、蓄電デバイス20の外径Dは、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であるものとしてもよい。この外径Dが20μm以上では、十分な放電容量を確保することができる。また、この外径Dが1000μm以下ではキャリアのイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。また、この外径Dが100μm~500μmの範囲では、高出力性能と放電容量とを両立することができる。また、この外径Dは、例えば、1μm以上100μm以下の範囲としてもよい。この範囲では、微小形状のコイル状の蓄電デバイス20とすることができる。蓄電デバイス20の長手方向の長さXは、回路装置10の用途などに応じて適宜定めることができ、例えば、20mm以上200mm以下の範囲などとしてもよい。
【0018】
第1電極21は、負極活物質を含む柱状体である。第1電極21は、少なくとも端面以外の外周が分離膜24を介して第2電極22に対向している。第1電極21は、長手方向に垂直な断面の直径dが10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、第1電極21の直径dは、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。この直径dが10μm以上では、強度を担保することができ安定した充放電ができる。また、この直径dが500μm以下ではキャリアのイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。また、この直径dが50μm~200μmの範囲では、キャリアのイオンの移動距離をより短くすることができ、より大きな電流で充放電を行うことができる。更に、第1電極21の直径dは、0.5μm以上50μm以下の範囲としてもよい。この範囲では、微小形状のコイル状の蓄電デバイス20とすることができる。この柱状体の第1電極21の長手方向の長さXは、回路装置10の用途などに応じて適宜定めることができ、例えば、20mm以上200mm以下の範囲などとしてもよい。柱状体の長さXが20mm以上では、電池容量をより高めることができ好ましく、200mm以下では、電極の電気抵抗をより低減することができ好ましい。この第1電極21は、負極活物質として、金属、合金及び炭素材料のうち1以上を含むものとしてもよい。金属としては、リチウム金属が挙げられ、合金としては、リチウム合金、スズ化合物などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、グラファイト類や、コークス類、ガラス状炭素類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上が挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、グラファイト構造を有する炭素繊維としてもよい。このような炭素繊維は、例えば、繊維方向である長手方向に結晶が配向したものが好ましい。また、長手方向(繊維方向)に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。あるいは、柱状の第1電極21は、キャリアのイオンを吸蔵放出可能な複合酸化物を柱状体に成形したものとしてもよい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物などが挙げられる。この第1電極21は、その表面の少なくとも一部に導電成分が形成されているものとしてもよい。この導電成分により、導電性をより高めることができる。この導電成分は、導電性の高い材料であれば特に限定されないが、例えば、金属としてもよい。
【0019】
分離膜24は、キャリアであるイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し第1電極21と第2電極22とを絶縁するものである。分離膜24は、第2電極22と対向する第1電極21の外周面の全体に形成されており、第1電極21と第2電極22との短絡を防止している。分離膜24は、イオン伝導性と絶縁性とを有する樹脂からなるものとしてもよい。この分離膜24は、例えば、樹脂を含む原料溶液から自立膜を作製し、第1電極21の表面をこの自立膜で被覆させることにより形成されてもよいし、原料溶液へ第1電極21を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。この樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF-HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。この分離膜24は、例えば、その厚さが2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であるものとしてもよい。厚さLが2μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。特に、分離膜24の厚さが2μm以上であれば、作製しやすい。また、分離膜24の厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。厚さLが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。厚さLが2~15μmの範囲では、イオン伝導性及び絶縁性が好適である。
【0020】
分離膜24は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、蓄電デバイス20のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0021】
第2電極22は、正極活物質を含み、第1電極21の外周に分離膜24を介して形成されている。第2電極22は、それ自体に導電性を有するものとし、集電部材などは省略されているものとしてもよい。第2電極22は、その外面の一部又は全部に集電体が直接接続されているものとしてもよい。この第2電極22は、例えば、第1電極21の外周に分離膜24を形成したのち、その外周に第2電極22の原料を塗布して形成されたものとしてもよい。第2電極22は、正極活物質を含んでいるが、正極活物質が導電性を有さない場合は、例えば導電性を有する導電材を混合してもよい。この第2電極22は、例えば、正極活物質と、必要に応じて導電材と、結着剤とを混合し成形したものとしてもよい。正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMncO2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMncO4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。あるいは、正極活物質は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている炭素質材料としてもよい。炭素質材料としては、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素質材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。
【0022】
第2電極22に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
【0023】
第2電極22において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、第2電極22の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、第2電極22の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、第2電極22の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0024】
この蓄電デバイス20において、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量の比である正負極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。第2電極22の形成厚さは、第1電極21の直径d及び正負極容量比に応じて適宜設定されるが、例えば、5μm以上50μm以下の範囲としてもよい。正極の形成厚さは、例えば、第1電極21上に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとする。
【0025】
蓄電デバイス20は、以下に説明する製造方法で製造することができる。蓄電デバイス20の製造方法は、例えば、第1電極21をコイル状に成形したのちに、分離膜24や第2電極22を形成するものとしてもよい。この成形は、例えば、活物質を含む原料を押出成形することによって行うことができる。ここで、
図3のセル結束体21Cの構造を有する蓄電デバイス20Cを作製する場合は、コイル状に成形され分離膜24をその表面に形成した複数の第1電極21を互いに接触しないように固定したのち、その第1電極21の間に第2電極22を充填するものとしてもよい。また、第1電極21に柔軟性がある場合は、第1電極21上に分離膜24や第2電極22を形成して直線状の蓄電デバイス20を得たのちに蓄電デバイス20をコイル状に変形させるものとしてもよい。分離膜24の形成工程では、例えば、イオン伝導性及び絶縁性を有する樹脂を、活物質を含む第1電極21上に形成し、加熱溶融して第1電極21上に分離膜24を形成するものとしてもよい。このとき、溶媒に樹脂を溶解した原料液を調製し、この原料液を第1電極21上に塗布するか、原料液中に第1電極21を浸漬させるものとしてもよい。また、第2電極22の形成工程では、第1電極21の表面に分離膜24を形成したのち、その分離膜24の上に第2電極22の電極合材を形成するものとしてもよい。このとき、溶媒に電極合材を入れたスラリーを調製し、このスラリーを分離膜24上に塗布するか、スラリー中に第1電極21を浸漬させるものとしてもよい。このようにして、外形がコイル状の蓄電デバイス20を作製することができる。
【0026】
以上詳述した蓄電デバイス20を備えた回路装置10では、回路構成をより簡素化することができる。このような効果が得られる理由を以下に説明する。一般的に、例えば、二次電池などの蓄電デバイスを用いた回路では、ノイズの発生が問題になる場合がある。ノイズの原因は種々あるが、高周波成分を減衰させる場合には回路にローパスフィルタとして働く素子を入れるのが一般的である。ローパスフィルタには、コイル130を直列に挿入する方法(
図4A)と、コンデンサ230をノイズ発生源の前後に跨がせて挿入する方法(
図4B)とがある。上述した回路装置10では、回路に直列に配置される蓄電デバイスをコイル状に成形することによって、デバイスそのものにインダクタ成分を持たせ、ローパスフィルタとしてのコイルがなくてもローパスフィルタを配置したのと同等のノイズ低減を可能とする。このように、電源である蓄電デバイス20がノイズ低減に有用なコイル形状をしており、回路装置10では、ノイズ低減用のコイル130を省略することができる。このため、本開示では、回路構成をより簡素化することができる。なお、回路装置10B,10Cについても、上記と同様である。
【0027】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
例えば、上述した実施形態では、蓄電デバイス20において、負極や正極は、集電部材を内包しないものについて説明したが、特にこれに限定されず、各電極は、集電線などの集電部材を埋設していてもよい。
【0029】
また、上述した実施形態では、蓄電デバイス20のキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、第1電極21や蓄電デバイス20の断面形状は、円柱状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱、楕円柱などの形状としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10,10B,10C,110,210 回路装置、12 負荷、15 ノイズ源、20,20B,20C,120 蓄電デバイス、21 第1電極、21B 繊維結束体、21C セル結束体、22 第2電極、23 繊維、24 分離膜、130 コイル、230 コンデンサ、A コイル長、d 直径、D 外径、N コイル巻き数、R コイル径、X 長さ。